≪最終一番勝負 第86譜 指始図≫ 7六歩まで
指し手 △4三馬 ▲6八桂 △7六香 ▲同桂 △7五歩
[あんたなんかもう、こうやって――]
――ところが女王さまはもう、となりにはいなくってね――ふいに小さなお人形くらいにちぢまっちゃって、テーブルの上をぐるぐるたのしそうに、うしろにひきずっている自分のショールと追いかけっこをしているところなんだ。
ほかのときならば、アリスもさぞたまげたにちがいないけれど、いまはもう興奮のあまり、何だってかまいやしない。「あんたなんかもう」くりかえしざまアリスは、そのちっぽけな生き物がちょうどテーブルにまいおりてきた瓶をぴょんととびこえようとしたところをぱっとひっとらえて、「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
<第86譜 決着は泥の中で(五)>
≪最終一番勝負 第86譜 指始図≫ 7六歩まで
「亜空間最終一番勝負」は、いま、先手を持つ我々終盤探検隊が、▲7六歩 と指したところ。
だが、これは「悪手」であった。6七歩成 なら「後手良し」だった。
―――「だった」と書いたのは、実際はその手を後手の ≪ぬし≫ は見送ったからである。
(この手が見えないはずはない。見えていて別の手を選んだのである)
まずは「6七歩成 の変化」について、解説しておこう。
[6七歩成 の変化]
変化6七歩成図00
6七歩成(図)の変化。
同銀、同馬、7七金と進む(次の図)
変化6七歩成図01
後手に7六馬を許すわけにはいかないので、7七金(図)と打つ。
そこで後手は6六歩もあるが、以下6八歩、8九馬、同金、5九飛、7九桂のように進み、この「6六歩、6八歩」の手交換は、後手にとって少し損。
なので、ここは単に8九馬といく。同金に、7六香(次の図)
変化6七歩成図02
あっさりした攻撃手順だが、これが受けにくい。7六同金に、7五歩。
そこで7七金は、4七飛、6八金、7六歩、同玉、7五銀、8七玉、7六歩で後手優勢になる。
よって、7五同金と取るが、そこで6四銀右がうまい継続手になる(次の図)
変化6七歩成図03
8四金(6四同銀)に、4七飛と打ち、7七歩、7六歩と進む(次の図)
変化6七歩成図04
先手、支え切れない。9五歩と脱出に望みをかけるしかない。
以下7七歩成、9六玉、8四歩、同馬、4六飛成、8五玉、7五銀打(次の図)
変化6七歩成図05
後手優勢。
つまり、後手が 6七歩成 を選んでいれば、後手がそのまま勝っていた―――ということになる。
やはり先手の▲7六歩はキケンな選択だったのだ。
しかし 6七歩成 を後手は選ばなかったのだから、結果的には先手の指した ▲7六歩 は正解手だったのかもしれない。
≪途中図1 4三馬まで≫
実戦での後手の ≪ぬし≫ の指し手は、△4三馬。
後手の目には、この手が(6七歩成よりも)より魅力的に映ったということだ。
先手(我々)は、▲6八桂 と打って「7六」を支えた。
実戦は先手は ≪a≫6八桂 と指したわけだが、他の手もあったかもしれない。
他に、≪b≫6八歩、≪c≫8八玉、≪d≫7七金 の “変化” も考えられたところなので、以下それらの手の検討手順を示していく。
変化6八歩図00
≪b≫6八歩(図)には、7六馬がある。以下8八玉に、6七歩成、同歩、6六歩が好手順(次の図)
変化6八歩図01
この手があるので、どうやら後手良しになるようだ。
6六同歩は、同馬で、次の7八歩成が厳しく、先手は支えきれない。
したがって6六歩は取れず、ここで6八桂と受ける。以下6七馬に、6一竜。
しかし8九馬、同玉、6二飛と応じられ―――
変化6八歩図02
後手優勢。もう少し続けてみよう。
6二同竜、同銀右。そのままだと6七歩成~7八歩成で、先手陣は崩壊するので3七飛と受けてチャンスが来るのを待つ。
以下、5九飛、8八玉、2九飛成、4三歩(次の図)
変化6八歩図03
4三歩(図)と打って、攻め味をつくる。4三同銀には6五角がある。また、6七桂は4二金で先手良しになる。
後手は、1九竜、4二金、3一香はあるところだが、もっと早い決め手がある。
「7八歩成、同銀に、6七桂」とする手順である。これなら、先手玉への詰めろになっている。
以下8九金に、7七歩(次の図)
変化6八玉歩04
7六歩、7八歩成、同金、7七歩、同玉、7九桂成、8八金、2八竜、5七飛、7六香(次の図)
変化6八玉歩05
後手勝ち。7六同桂は6八銀があり、7六同玉は6八竜が6七銀以下の詰めろになる。
変化8八玉図00
≪c≫8八玉(図)には、[山]7六馬 と [川]7六香 とがある。どちらも有力。
本筋は [山]7六馬 のほうと見るが、先に [川]7六香 から見ておく。
変化8八玉図01
[川]7六香(図)には、6八歩として後手の6七歩成を消しておく。
以下7八香成、同金、7七歩、同玉(代えて同金、7六歩、8七金、7七銀の変化は先手悪いと見る)、8二銀打(次の図)
変化8八玉図02
8四馬、同銀、6一竜(8二竜は5五角で先手不利になる)、7五銀、8七金打(次の図)
変化8八玉図03
「互角」の形勢。
つまり、[川]7六香 は 「互角」。
変化8八玉図04
さて、“本筋” の、[山]7六馬(図)の場合。
ここは、【ラ】8七金、【リ】6八歩、【ル】6一竜 が候補手だが、正解手は【ル】6一竜 である。
【ラ】8七金は、同馬、同玉、6七歩成、同銀、7七金、9八玉、6七金と進んで、その局面は後手良し。
また、【リ】6八歩 だと、上の ≪b≫6八歩 の変化に合流する。それは後手良しだった。
変化8八玉図05
ということで、[山]7六馬 に、【ル】6一竜(図)。 これが最善手。
ここで (1)7七歩 でどうなるかが重要な変化。8七銀、同馬、同玉、7八銀(次の図)
変化8八玉図06
先手は6五角と打つ手が後手玉攻略の期待の手で、3二角成以下の “詰めろ” になっている。
当面は玉が王手されているが、9八玉だと8九銀不成と王手で取られ、同金、9六歩、8七金、7八歩成、6五角、4二飛で、先手悪い。
9七玉が正解手で、後手は7九銀成とする(8九銀成は6五角、4二飛、8九金、7八歩成、9五歩、8九と、4三歩で、先手良し)
そこで6五角と打つ(次の図)
変化8八玉図07
6五角(図)は、3二角成、同玉、5二竜(6一竜とした意味の一つがこの手にある)以下の“詰めろ”
これを受けるために後手は4二金とし、7九飛、7八歩成と進む。
そこで9五歩、7九と、4三歩は、7四銀で後手優勢になる。9五歩~4三歩では遅い。
3一金が剛速球の攻め手(次の図)
変化8八玉図08
3一同玉に、1一銀、2二金。
そこで5一金(次の図)
変化8八玉図09
7九とに、4三桂(次の図)
変化8八玉図10
4三同銀には、同角成で、受けが困難(たとえば3二金左には4二馬で詰む)
よって4三同金、同馬、4二飛と後手は応じる。
これには6五馬と引き返す。
そこで9六歩、同玉、9五歩なら、8七玉としておいて、先手は一歩を得たので次に4三歩があって、先手良し。
後手7八とには、4一金(4一同飛は2二銀成、同玉、3二馬、同玉、5二竜以下詰み)、同銀、5一金(次の図)
変化8八玉図11
これで先手勝ち。5一金(図)と打って、後手玉に4一金、同飛、2二銀成、同玉、3二金以下の “詰めろ” を掛けた。5四桂なら、8四馬と金を入手した手が、4一金、同飛、4三桂以下の “詰めろ” になっている。4三桂には3五桂とすればよい。
変化8八玉図12
6一竜に、(2)6四銀右(図)がある。次に6七歩成がある。
ここで先手の候補手は、〈i〉6八歩 と 〈J〉8七金。
〈J〉8七金を調べると、「千日手」の結果となった(解説は省く)
〈i〉6八歩 以下を見ていく。
これには、7七歩、6九銀(8七銀は同馬、同玉、7八銀で先手悪い。先手6五角が打てないため)で、次の図になる。
変化8八玉図13
後手としては、ここで 6七歩成 、同歩、6六歩(同歩、同馬なら後手良し)で、攻め切りたい。
しかし、6八桂、8六馬(6七馬は5四歩で先手良し)、8七金、8五金、8六金、同金、8七金、8五金、9八角(次の図)
変化8八玉図14
千日手模様だったところを、9八角で打開。角筋が通れば3二角成~5二竜で後手玉に詰み筋ができる。こうなると先手良し。
変化8八玉図15
ということで、〈i〉6八歩 に、後手は 6五馬(図)とすることになる。
ここからは変化が多く、調べ切れない。
「互角」を結論とするしかない。
以上のような調査内容を経て、≪c≫8八玉 は、形勢不明(互角) とする。
変化7七金図00
≪d≫7七金 (図)は、7六香に、6六金と歩と消しながら逃げる手で対応する。
以下7八香成、同玉、7六歩(次の図)
変化7七金図01
ソフトの評価値は -350 くらいでやや後手寄り。ここから手も広いので実戦的にはこれからの勝負。
以下、変化の一例を示しておく。
6七玉、6四銀右、6一竜、6五銀打、4七金(次の図)
変化7七金図03
先手は “右側” へ逃げるつもり。
6六銀、同玉、6五馬。この「6五馬」の位置にいる馬が攻防の要となる。
5七玉、7七歩成、4八玉、6七と、5九香、4五歩(次の図)
変化7七金図04
3七玉(対して4六歩には5六金とするつもり)、6六と、3八銀、4六金、同金、同歩、4二歩(次の図)
変化7七金図05
4八歩と受けるのでは受け一方になって勝ち目がないと見て、4二歩(図)と攻める。
4二同銀なら5二香成があって勝負形になる。
後手は5六とで攻め合いになる。以下4一歩成、4七歩成、2六玉、2四歩、4七銀、同と、3一と、2八銀打(次の図)
変化7七金図06
2八銀打(図)で、どうやら先手玉は捕まっている。
しかし実戦的にはまだ “あや” がありそう。1七桂と受け、4六と。
3六歩では4四銀があるので3五金と受けるが、2九銀成で―――(次の図)
変化7七金図07
後手3四桂からの “詰めろ” で、これは後手の勝ちが決まった。
≪d≫7七金 の変化は、手が広いので実戦的な “あや” はあるが、後手に主導権がある局面が続き、正確に手を選ばれると先手が勝てない。
4三馬図(途中図1)
≪a≫6八桂 = 実戦の指し手
≪b≫6八歩 → 後手良し
≪c≫8八玉 → 互角
≪d≫7七金 → 後手良し
この「4三馬図(途中図1)」の調査結果のまとめは、こうなる。
つまり先手としては、≪c≫8八玉 を選ぶのもあった、ということだ。
≪途中図2 6八桂まで≫
先手は、▲6八桂(図)として、7六に利かせた。
以下、△7六香、▲同桂、△7五歩 と進んだ。
≪最終一番勝負 第86譜 指了図≫ 7五歩まで
このまま放置すると、7六馬、8八玉、6七歩成で、先手不利になる。
では、どう受けるか。
第87譜につづく
指し手 △4三馬 ▲6八桂 △7六香 ▲同桂 △7五歩
[あんたなんかもう、こうやって――]
――ところが女王さまはもう、となりにはいなくってね――ふいに小さなお人形くらいにちぢまっちゃって、テーブルの上をぐるぐるたのしそうに、うしろにひきずっている自分のショールと追いかけっこをしているところなんだ。
ほかのときならば、アリスもさぞたまげたにちがいないけれど、いまはもう興奮のあまり、何だってかまいやしない。「あんたなんかもう」くりかえしざまアリスは、そのちっぽけな生き物がちょうどテーブルにまいおりてきた瓶をぴょんととびこえようとしたところをぱっとひっとらえて、「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
<第86譜 決着は泥の中で(五)>
≪最終一番勝負 第86譜 指始図≫ 7六歩まで
「亜空間最終一番勝負」は、いま、先手を持つ我々終盤探検隊が、▲7六歩 と指したところ。
だが、これは「悪手」であった。6七歩成 なら「後手良し」だった。
―――「だった」と書いたのは、実際はその手を後手の ≪ぬし≫ は見送ったからである。
(この手が見えないはずはない。見えていて別の手を選んだのである)
まずは「6七歩成 の変化」について、解説しておこう。
[6七歩成 の変化]
変化6七歩成図00
6七歩成(図)の変化。
同銀、同馬、7七金と進む(次の図)
変化6七歩成図01
後手に7六馬を許すわけにはいかないので、7七金(図)と打つ。
そこで後手は6六歩もあるが、以下6八歩、8九馬、同金、5九飛、7九桂のように進み、この「6六歩、6八歩」の手交換は、後手にとって少し損。
なので、ここは単に8九馬といく。同金に、7六香(次の図)
変化6七歩成図02
あっさりした攻撃手順だが、これが受けにくい。7六同金に、7五歩。
そこで7七金は、4七飛、6八金、7六歩、同玉、7五銀、8七玉、7六歩で後手優勢になる。
よって、7五同金と取るが、そこで6四銀右がうまい継続手になる(次の図)
変化6七歩成図03
8四金(6四同銀)に、4七飛と打ち、7七歩、7六歩と進む(次の図)
変化6七歩成図04
先手、支え切れない。9五歩と脱出に望みをかけるしかない。
以下7七歩成、9六玉、8四歩、同馬、4六飛成、8五玉、7五銀打(次の図)
変化6七歩成図05
後手優勢。
つまり、後手が 6七歩成 を選んでいれば、後手がそのまま勝っていた―――ということになる。
やはり先手の▲7六歩はキケンな選択だったのだ。
しかし 6七歩成 を後手は選ばなかったのだから、結果的には先手の指した ▲7六歩 は正解手だったのかもしれない。
≪途中図1 4三馬まで≫
実戦での後手の ≪ぬし≫ の指し手は、△4三馬。
後手の目には、この手が(6七歩成よりも)より魅力的に映ったということだ。
先手(我々)は、▲6八桂 と打って「7六」を支えた。
実戦は先手は ≪a≫6八桂 と指したわけだが、他の手もあったかもしれない。
他に、≪b≫6八歩、≪c≫8八玉、≪d≫7七金 の “変化” も考えられたところなので、以下それらの手の検討手順を示していく。
変化6八歩図00
≪b≫6八歩(図)には、7六馬がある。以下8八玉に、6七歩成、同歩、6六歩が好手順(次の図)
変化6八歩図01
この手があるので、どうやら後手良しになるようだ。
6六同歩は、同馬で、次の7八歩成が厳しく、先手は支えきれない。
したがって6六歩は取れず、ここで6八桂と受ける。以下6七馬に、6一竜。
しかし8九馬、同玉、6二飛と応じられ―――
変化6八歩図02
後手優勢。もう少し続けてみよう。
6二同竜、同銀右。そのままだと6七歩成~7八歩成で、先手陣は崩壊するので3七飛と受けてチャンスが来るのを待つ。
以下、5九飛、8八玉、2九飛成、4三歩(次の図)
変化6八歩図03
4三歩(図)と打って、攻め味をつくる。4三同銀には6五角がある。また、6七桂は4二金で先手良しになる。
後手は、1九竜、4二金、3一香はあるところだが、もっと早い決め手がある。
「7八歩成、同銀に、6七桂」とする手順である。これなら、先手玉への詰めろになっている。
以下8九金に、7七歩(次の図)
変化6八玉歩04
7六歩、7八歩成、同金、7七歩、同玉、7九桂成、8八金、2八竜、5七飛、7六香(次の図)
変化6八玉歩05
後手勝ち。7六同桂は6八銀があり、7六同玉は6八竜が6七銀以下の詰めろになる。
変化8八玉図00
≪c≫8八玉(図)には、[山]7六馬 と [川]7六香 とがある。どちらも有力。
本筋は [山]7六馬 のほうと見るが、先に [川]7六香 から見ておく。
変化8八玉図01
[川]7六香(図)には、6八歩として後手の6七歩成を消しておく。
以下7八香成、同金、7七歩、同玉(代えて同金、7六歩、8七金、7七銀の変化は先手悪いと見る)、8二銀打(次の図)
変化8八玉図02
8四馬、同銀、6一竜(8二竜は5五角で先手不利になる)、7五銀、8七金打(次の図)
変化8八玉図03
「互角」の形勢。
つまり、[川]7六香 は 「互角」。
変化8八玉図04
さて、“本筋” の、[山]7六馬(図)の場合。
ここは、【ラ】8七金、【リ】6八歩、【ル】6一竜 が候補手だが、正解手は【ル】6一竜 である。
【ラ】8七金は、同馬、同玉、6七歩成、同銀、7七金、9八玉、6七金と進んで、その局面は後手良し。
また、【リ】6八歩 だと、上の ≪b≫6八歩 の変化に合流する。それは後手良しだった。
変化8八玉図05
ということで、[山]7六馬 に、【ル】6一竜(図)。 これが最善手。
ここで (1)7七歩 でどうなるかが重要な変化。8七銀、同馬、同玉、7八銀(次の図)
変化8八玉図06
先手は6五角と打つ手が後手玉攻略の期待の手で、3二角成以下の “詰めろ” になっている。
当面は玉が王手されているが、9八玉だと8九銀不成と王手で取られ、同金、9六歩、8七金、7八歩成、6五角、4二飛で、先手悪い。
9七玉が正解手で、後手は7九銀成とする(8九銀成は6五角、4二飛、8九金、7八歩成、9五歩、8九と、4三歩で、先手良し)
そこで6五角と打つ(次の図)
変化8八玉図07
6五角(図)は、3二角成、同玉、5二竜(6一竜とした意味の一つがこの手にある)以下の“詰めろ”
これを受けるために後手は4二金とし、7九飛、7八歩成と進む。
そこで9五歩、7九と、4三歩は、7四銀で後手優勢になる。9五歩~4三歩では遅い。
3一金が剛速球の攻め手(次の図)
変化8八玉図08
3一同玉に、1一銀、2二金。
そこで5一金(次の図)
変化8八玉図09
7九とに、4三桂(次の図)
変化8八玉図10
4三同銀には、同角成で、受けが困難(たとえば3二金左には4二馬で詰む)
よって4三同金、同馬、4二飛と後手は応じる。
これには6五馬と引き返す。
そこで9六歩、同玉、9五歩なら、8七玉としておいて、先手は一歩を得たので次に4三歩があって、先手良し。
後手7八とには、4一金(4一同飛は2二銀成、同玉、3二馬、同玉、5二竜以下詰み)、同銀、5一金(次の図)
変化8八玉図11
これで先手勝ち。5一金(図)と打って、後手玉に4一金、同飛、2二銀成、同玉、3二金以下の “詰めろ” を掛けた。5四桂なら、8四馬と金を入手した手が、4一金、同飛、4三桂以下の “詰めろ” になっている。4三桂には3五桂とすればよい。
変化8八玉図12
6一竜に、(2)6四銀右(図)がある。次に6七歩成がある。
ここで先手の候補手は、〈i〉6八歩 と 〈J〉8七金。
〈J〉8七金を調べると、「千日手」の結果となった(解説は省く)
〈i〉6八歩 以下を見ていく。
これには、7七歩、6九銀(8七銀は同馬、同玉、7八銀で先手悪い。先手6五角が打てないため)で、次の図になる。
変化8八玉図13
後手としては、ここで 6七歩成 、同歩、6六歩(同歩、同馬なら後手良し)で、攻め切りたい。
しかし、6八桂、8六馬(6七馬は5四歩で先手良し)、8七金、8五金、8六金、同金、8七金、8五金、9八角(次の図)
変化8八玉図14
千日手模様だったところを、9八角で打開。角筋が通れば3二角成~5二竜で後手玉に詰み筋ができる。こうなると先手良し。
変化8八玉図15
ということで、〈i〉6八歩 に、後手は 6五馬(図)とすることになる。
ここからは変化が多く、調べ切れない。
「互角」を結論とするしかない。
以上のような調査内容を経て、≪c≫8八玉 は、形勢不明(互角) とする。
変化7七金図00
≪d≫7七金 (図)は、7六香に、6六金と歩と消しながら逃げる手で対応する。
以下7八香成、同玉、7六歩(次の図)
変化7七金図01
ソフトの評価値は -350 くらいでやや後手寄り。ここから手も広いので実戦的にはこれからの勝負。
以下、変化の一例を示しておく。
6七玉、6四銀右、6一竜、6五銀打、4七金(次の図)
変化7七金図03
先手は “右側” へ逃げるつもり。
6六銀、同玉、6五馬。この「6五馬」の位置にいる馬が攻防の要となる。
5七玉、7七歩成、4八玉、6七と、5九香、4五歩(次の図)
変化7七金図04
3七玉(対して4六歩には5六金とするつもり)、6六と、3八銀、4六金、同金、同歩、4二歩(次の図)
変化7七金図05
4八歩と受けるのでは受け一方になって勝ち目がないと見て、4二歩(図)と攻める。
4二同銀なら5二香成があって勝負形になる。
後手は5六とで攻め合いになる。以下4一歩成、4七歩成、2六玉、2四歩、4七銀、同と、3一と、2八銀打(次の図)
変化7七金図06
2八銀打(図)で、どうやら先手玉は捕まっている。
しかし実戦的にはまだ “あや” がありそう。1七桂と受け、4六と。
3六歩では4四銀があるので3五金と受けるが、2九銀成で―――(次の図)
変化7七金図07
後手3四桂からの “詰めろ” で、これは後手の勝ちが決まった。
≪d≫7七金 の変化は、手が広いので実戦的な “あや” はあるが、後手に主導権がある局面が続き、正確に手を選ばれると先手が勝てない。
4三馬図(途中図1)
≪a≫6八桂 = 実戦の指し手
≪b≫6八歩 → 後手良し
≪c≫8八玉 → 互角
≪d≫7七金 → 後手良し
この「4三馬図(途中図1)」の調査結果のまとめは、こうなる。
つまり先手としては、≪c≫8八玉 を選ぶのもあった、ということだ。
≪途中図2 6八桂まで≫
先手は、▲6八桂(図)として、7六に利かせた。
以下、△7六香、▲同桂、△7五歩 と進んだ。
≪最終一番勝負 第86譜 指了図≫ 7五歩まで
このまま放置すると、7六馬、8八玉、6七歩成で、先手不利になる。
では、どう受けるか。
第87譜につづく
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