はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part134 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第33譜

2019年10月12日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第33譜 指始図≫ 8七玉まで

指し手 △6七と


    [ハリー・ポッターの “両面鏡” ]

 これは両面鏡だ。わたしが対の鏡の片方を持っている。わたしと話す必要があれば、鏡に向かってわたしの名前を呼べばいい。わたしの鏡には君が映り、わたしは君の鏡の中から話すことができる。ジェームズとわたしが別々に罰則を受けていたとき、よくこの鏡を使ったものだ。
          (『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』)

 ハリーは、マントルピースの上にある何かに気をとられた。少女の絵の真下に、小さな長方形の鏡が立てかけてある。
    (中略)
 「僕がいままで鏡の中に見ていたのは、あなたの目だった」
          (『ハリー・ポッターと死の秘宝』)

   ( J.K.ローリング著  松岡佑子訳 『ハリー・ポッター・シリーズ』より)




<第33譜 かくれていた手がもう一つ>


≪最終一番勝負 第33譜 指始図≫ 8七玉まで
 「最終一番勝負」は、図の ▲8七玉 まで進行している。

 ここで後手「7五桂」でどうなっていたか。それをまず研究したい(実戦はこう進まなかった)


[調査研究1:変化7五桂]

7五桂図
 ここで「7五桂」(図)は、後手としては打ってみたい手である。
 しかし、「先手良し」になる。それをここで証明しておきたい。
 なお、「7五桂」に代えて、7六歩という手もあるが、それには先手は7八歩と受けておく。そこで7五桂か6七とだが、結局「7五桂」を打つ攻めを採用すれば、同じ形に合流する。
 ここでは、「7五桂」に、9七玉、7六歩、7八歩(やっぱり受けたほうがよい)、6七とと進んだことにしよう(次の図)

変化7五桂図01
 7五桂を早めに打った場合、「7六歩、7八歩」の交換を入れないと、ここで先手からの7六歩(桂取り)があった。
 6七と(図)として、後手に余裕ができれば、次に7八と から7七歩成で勝てるが、その余裕をつくらないように先手は攻めていく方針が良い。
 ここで、7八と を恐れて8八金と受けるのは―――(次の図)

変化7五桂図02
 8八金 には、7七歩成、同歩、6六銀(図)で、後手の攻めがむしろ勢いづいてしまう。
 この図で先手の最も早い攻めは「2五香+2六飛」だが、後手の7七銀不成のほうが一歩早い。
 6六銀に、7九香と受けるのも、7七と、同香、7六歩で、後手の6四桂が活躍しはじめる。
 というわけで、8八金と受けても先手は勝てない。

変化7五桂図03
 「変化7五桂図01」からは、なにも受けないで攻めるのが正しい。この形でも、3三歩成、同銀、5二角成(図)と攻めていくのが有効である。
 5二同歩なら、3一飛で、先手が良い(9七玉と逃げている形なので後手5四角の筋もない)
 なので、5二角成に、後手は7七歩成。以下、同歩、同と。

変化7五桂図04
 先手玉に“詰めろ”がかかった。
 これを8九香 と受けると、5二歩で先手負けだ(8九香は効果的な受けになっていなかった。7九角以下の詰めろになっている)
 そして 9八金 と受けるのは、5二歩、3一飛に、この場合はそこで4二銀左が好手となる。
 以下2一飛成、3三玉、4五金、7九角(次の図)

変化7五桂図05
 こう進んで、後手が良い。
 先手の4五金では代えて3五金と打って後手玉を縛りたいところだったが、それは7九角で金を取られてしまう。そこで4五金(3七香以下の詰めろ)だが、7九角(図)が厳しく、先手玉が先に寄せられてしまう。
 8八桂でも、8八香でも、同とと取って、先手玉は“必至”である。たとえば8八桂合に、同と、同金は、同角成、同玉、7六桂以下の詰みである。また8八桂合、同とに、3七香は、7九角が打ってあるので、後手玉は詰みを逃れている。
 9八金 は、後手優勢になる。

変化7五桂図06(4三馬図)
 後手の「7七と」に、8九香9八金 では先手勝てない。
 しかし、後手の「7七と」に、4三馬(図)があった。これが、唯一の先手勝ち筋になっている。
 この図で、「先手良し」なのである。

 ここで〔な〕8七桂成、〔に〕4二銀右、〔ぬ〕4二歩、〔ね〕7六桂などがある。
 〔な〕8七桂成はすぐに「8七」で清算する手。
 〔な〕8七桂成、同馬、同と、同玉、6二銀右、5四歩(次の図)

変化7五桂図07
 5四同銀に、3四歩、同銀、6一竜のように攻めていって、先手優勢。
 〔な〕8七桂成はこのようになる。

変化7五桂図08
 手順に5一を守ることのできる〔に〕4二銀右(図)のほうが、後手は一手早く攻めることができる。
 〔に〕4二銀右には、5四馬。
 以下、やはり8七桂成、同馬、同と、同玉。
 そこで6九角、7八歩、7七歩が後手の攻めの一例だが、先手は4三歩(次の図)

変化7五桂図09
 やはりこれでも先手の攻めのほうが早い。
 図の4三歩では代えて7七同玉、7六歩、8八玉、6六銀、7九金のような展開も先手は選べたが、それはまだ手数のかかる戦いになる。
 4三歩は決着をつけに行った手で、次の4二歩成の後の後手玉の攻め方(詰ませ方)がわかっていれば、この手が指せる(もちろん4三同銀なら5一竜で先手が勝ちに近づく)
 後手7八角成がちょっと怖い。以下9八玉(9七玉は7九馬で先手負け)、7六桂、8九香、8五金(同歩なら8九馬、同玉、8六香の狙い)、4二歩成、8六金。
 後手玉を詰ませることができれば先手勝ち。3一銀、1一玉、2二金、同銀、同玉、3一銀、3三玉、5三飛、2四玉、3六桂(次の図)

変化7五桂図10
 先手勝ち。

変化7五桂図11
 〔ぬ〕4二歩。 この手には9八馬だが、そこで8七桂成から清算して馬を取りにくるのは〔な〕8七桂成の場合とほぼ同じになる。
 だからここで、それ以外の手段があるかどうかを考える。
 そこで、6一歩だ(次の図)

変化7五桂図12
 6一歩(図)が“ひねりだした”というような手。
 同竜は、8七桂成、同馬、同と、同玉、4三角が、“王手竜取り”で、こうなると後手良し。
 だからここでは、8九香と受ける手が考えられる手だが、他に、攻める手で4一飛がある。
 以下はこの4一飛の後の展開を見ていく。4一飛は、次に3一金のねらい。
 4一飛に、8七桂成、同馬、同と、同玉、7四角(次の図)

変化7五桂図13
 後手は、先手に3一金と打たれてからでは忙しくなるので、8七桂成以下、清算して角を取って、7四角(図)と、またまた工夫の手を指してきた。
 以下、5一飛成、6二銀右、6一竜右、5一歩、5四歩(次の図)

変化7五桂図14
 ここで5四歩を受けるなら、6五角 がある。しかし9七玉、5四角に、5七香があり、以下4三角、5二歩で先手良し。5二歩を同角は、同竜、同歩、3一角、1一玉、3四歩で、先手勝ち。
 ここからは 2九角成(桂馬を取って攻め合い)以下を示しておく。
 以下、5三歩成、7五桂、9七玉、6五馬、8八香、9五歩、6二竜(次の図)

変化7五桂図15
 後手の攻め駒が足らない。先手は次に5一竜右と入ればよい。
 先手勝ち。

変化7五桂図16
 最後は、〔ね〕7六桂。 6四桂に打った桂馬を活用する手。
 これには、先手8九香と受ける(9八金もある)
 以下4二銀左(4二銀右だと5四馬がまた銀取りになる)、2五馬、6六銀、7八歩、同と、3四金(次の図)

変化7五桂図17
 2三金以下の“詰めろ”。 先手勝ち。


変化7五桂図06(4三馬図、再掲)
 結論。 後手の「7五桂」からの攻めには、9七玉、7六歩、7八歩、6七と、3三歩成、同銀、5二角成、7七歩成、同歩、同とに、この “4三馬”(図)の好手があって、先手優勢となる。




≪最終一番勝負 第33譜 指了図≫ 6七とまで

 後手≪亜空間の主(ぬし)≫の指し手は、△6七と だった。

 実戦中の“感覚”では、後手の△6四桂がさえない手で、「先手がよくなったのでは?」と思っていた。
 実際には、後で調べた結果からすれば、△6四桂以外でも後手が良くなる手はなかったので、仮に△6四桂以下の実戦の進行が先手良しなのだとすれば、その一手前、先手が▲6七歩と歩を打って受けたところでは、すでに「先手良し」になっていたことになる。 
 (ただし、コンピューターソフト「激指14」の評価値は▲6七歩のところでは[ -350 互角 ]であった)


 そうであるなら――つまり、▲6七歩のところで後手がすでに悪いとすれば――その前に、先手が4一角と打った時に、そこで「6六と、8七玉」としてから、3二歩と受ける手ならどうだったか。
 ――――というのが、次の研究である。


[調査研究2:3二歩に代えて6六との変化]

4一角図
 先手が4一角と打ったところまで戻る。
 ここで実戦の進行は3二歩だったが、その前に 6六と を入れてどうか(次の図)

6六と図
 6六とに、8七玉。そして3二歩と手を戻す。
 これなら、実戦の3二歩に「6七歩」という手はないということだ。後手はこの手順を選ぶこともできたわけである。
 この変化を研究調査していこう。

研究6六と図01
 その場合は、先手は[A]8九香(図)と打つのが良さそうだ。
 するとこの図は、前譜で研究調査した、3二歩図での「8九香」の変化に合流する。この図は、すでに結論が出ている局面ということになる。「先手良し」である。
 そのときの研究では、この図から 後手7五桂 を本筋として調査したが、ここで他の手はないのだろうか。

 ここで 後手7七桂 という手がある。

研究6六と図02
 しかしそれは、3三歩成、同銀、5二角成と攻めていって、先手が良い。以下、5二同歩に、3一金(図)である(3一飛でも先手良しだがこの場合3一金がよりきびしく迫れる)
 ここで8一桂はあるが、同竜と取り、5四角、9七玉、8一角に、6一飛、1四歩、2一金、1三玉、3五金、2四歩、3四歩で、先手勝勢になる。

研究6六と図03
 ところが、7七桂 と打つ前に、9五歩、同歩と突き捨てを入れる(9五歩は手抜きできない)と状況が変わることがわかった。このまだ未調査の変化が、先手にとって容易ではない。
 「9五歩、同歩、7七桂」に、同じように3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一金と進めば、そこで7五桂(図)で、これは後手が良いのだ。つまり結論が逆になる。
 7五桂に、9筋に玉を逃げるが、たとえば9八玉と逃げても、9七歩、同玉、9六歩、同玉と結局9六まで玉を吊り上げられ、そこで6九角と打つ手がある(次の図)

研究6六と図04
 これで、先手が悪い。これが9筋突き捨ての意味。だから「9五歩、同歩、7七桂」なら、先手は簡単に攻めていけない。
 ならばどうすればよいのか。

研究6六と図05
 研究の結果、「9五歩、同歩、7七桂」には、5四歩(図)で、先手良しになるようだ。ただし、かなり難解な変化になる。
 先手の5四歩に、同銀や6二銀と後手が応じると、5二角成、同歩、4一飛、3一角という展開になり、これは先手良し。
 だから5四歩には、後手は手抜きして攻めの手を選ぶことになる。7五桂だ。
 先手は9六玉と応じる(9筋の突き捨てを逆用して入玉含みに指す)
 以下、9四歩に、8五金(次の図)

研究6六と図06
 6二銀左、5三歩成、同金(同銀右には7四歩。同銀左には5二角成から攻めがある)、8四金、同銀、同馬、同歩、9四歩(次の図)

研究6六と図07
 こう進んで、少しだが、先手が指せる形勢のようだ。最新ソフトの評価値は[+500]くらい。
 先手が持駒が多く、たしかに先手が良さそうではあるが、実戦的にはまだまだわからない展開だ。後手としては、他の変化で悪いとはっきりしているなら、この順を“勝負”として選ぶのもあったかもしれない。

研究6六と図01(再掲)
 結論としては、この「研究6六と図01」についての、「先手良し」の評価は変わらない。
 ただし、「9五歩、同歩、7七桂」という手があって、実戦的には「互角」に近い変化になり得るということも、新たに判明した。

 しかし、この変化を先手がつまらないと思うなら、この[A]8九香(図)に代えて、[B]9七玉がある(次の図)

研究6六と図08
 [B]9七玉(図)と先逃げした。
 ここで後手は先手玉にどう迫るか。
 〔a〕7七とと〔b〕7五桂が有力手(〔c〕7六とは3三歩成、同玉、5二角成で先手良し)
 〔a〕7七とには、3七飛が絶好手となる(次の図)

研究6六と図09
 3七飛(図)と打って、次に3三香という攻めがある(と金を守る6六銀なら3三香で先手が勝ち)
 それを受けるために3一銀という手があるが(3三香なら4二金で後手良し)、7七飛、6二銀右、3三歩成、同歩、2六香、3二銀、5二角成、同歩、6一竜以下、先手優勢である。

研究6六と図10
 後手〔b〕7五桂(図)ならどうだろう。
 これには、8九香と受ける。
 そこで7七となら、7六歩(同となら3三歩成、同玉、5二角成)で先手良し。この変化は前譜ですでに示してある。
 気になるのは、ここで「9五歩、同歩、7七桂」の変化である(次の図)
 
研究6六と図11
 これは先手がまずい変化に入ってしまったように見える。ここで3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一金は、手順の違いはあるが、9六歩、同玉、6九角で先手が悪いと、すでに上で述べている(研究6六と図03)
 しかし、上の変化と微妙な違いがあるのだ。この場合、後手はすでに二枚の桂馬を盤上に放っている。(「研究6六と図02」ではまだ7五桂は打っていない)
 その違いがあって、先手はここで鮮やかな「勝ち筋」があるのである。
 3三歩成、同銀、5二角成、同歩、2一竜(!)と行く手である(次の図)

研究6六と図12
 なんと、2一竜(図)という手が成立した!
 2一同玉に、6一飛と打つ。この時に、後手の持駒に「桂」があれば、3一桂合でこの攻めは無効だった。しかしこの場合、桂はすでに使ってしまっているので、合駒は「角」か「飛」しかない。
 3一角合なら、後手のねらいの9六歩、同玉、6九角の手がなくなり、4一金(詰めろ)と打たれて後手が悪い。角は攻めに使いたい。
 ということなら、3一飛合でどうかということとなるが、以下同飛成、同飛、6一飛、4一飛(4一角には5一金)、同飛成、同玉、5一金、同玉、6三桂(次の図)

研究6六と図13
 なんと、後手玉が詰んでしまった。少し働きの弱かった9一の竜と9三の馬を使った詰筋であり、これは先手にとって相当に気分のよい勝ち方である。

 「後手3二歩(本譜)に代えて6六と」の変化は、以上の研究調査の結果、先手良しである。


[調査研究3:新発見の2六飛]

7三同銀図
 3つめの研究調査は、4一角と打つ前のこの図、「7三同銀図」まで戻る。
 この図では、4つの手―――「8七玉」、「6七歩」、「4一角」、「8九香」―――が有力であったことが、これまでの研究からわかってきている。この4つなら、「先手の勝ち筋」があった。
 「8九香」が「かくれていた手」で、これで先手良しになることが前回の報告で確認された(それは「4一角、3二歩」の後の「8九香」の研究だったが、この4一角打ちは後でも入る)

 そしてさらに、ここで“5つ目の手”があったのではないか―――というのがここからの研究報告である。

2六飛図
 「2六飛」(図)とここで打つ手があったのではないか。これが “かくれていたもう一つの手” である。
 この手を調べてみたいと思ったのは、「一番勝負」が終わったあとのことだが、しかし戦闘中に我々が使っていた「激指14」も、この手を2番目の候補手として候補に挙げていたのであった(評価値は-671)
 (我々が選んだ手は4一角。「激指14」の第1候補手でもあったし、前々から我々は4一角を打ちたくてうずうずしていた)

 もしも「2六飛」を選んでいたら、どうなっただろうか。

 さて、「2六飛」には、後手〔昼〕7五桂〔夜〕6六と が有力手である。 
 先手のこの「2六飛」のねらいは、次に2五香と打って、さらに4五角と打って、「2三」に火力を集中させる狙いである。後手としては、その先手の攻めを空振りにさせたい。

2六飛7五桂図
 〔昼〕7五桂 (図)は、放っておくと次に後手6六とが来る。
 先手が、「2六飛」ではなく2五香と打った場合は、7五桂で後手良しとすでに調査結果が出ている(第27譜
 「2六飛」と打った場合に、後手〔昼〕7五桂 だと、どうなるか。まず、それをこれから調べる。
 この手にはやはり8五歩と突く。以下、6六と、7四桂、9七玉(次の図)

研究2六飛図01
 後手は7七と。
 ここで、この場合「香車」を手持ちにしているので、“8九香”と受けに使うことができるわけである。また、2六に打った飛車も受けに利いている。

 なお、もしここで “9八金” なら、8五金、2五香、8六金、同飛、同桂、同玉、8四銀となり―――(次の図)

研究2六飛図02
 こうなって後手良しになる。

 だから “8九香” と受けるのだが、問題はそれでどっちの形勢がよいかである。
 以下、8五金に、4五角(次の図)

研究2六飛図03
 4五角(図)で“詰めろ”が後手玉にかかった。

 ここで〈1〉1一玉、〈2〉3二歩、〈3〉8六金が後手の応手として考えられる。
 〈1〉1一玉に、3三歩成、同銀、2三飛成と飛び込んでいくと、8六金から先手玉が詰まされてしまう。3三歩成、同銀、2三角成も、2二歩で止められて先手が勝てない。
 〈1〉1一玉には、8七歩が正着になる。これで次に2三飛成をねらえばよい。7六金なら、7五馬、同金、2三飛成だ。
 8七歩に、後手からの8七同桂成、同香、同と、同玉、2四香という手が気になるところだが、それには、2四同飛、同歩、3二金(次の図)

研究2六飛図04
 先手勝ちになっている。

研究2六飛図05
 また、〈2〉3二歩と受けるのは、3三歩成、同銀、2三角成、3一玉に、ここでもやはり7五馬(桂馬を取る)がある。同金に、3四桂(図)として、先手勝勢である(7九角、8八歩、8六金、同飛、2二歩には、3三馬、同歩、2三金)

研究2六飛図06
 ということで、後手の最有力手は〈3〉8六金(図)である。以下同飛、同桂、同玉(次の図)

研究2六飛図07
 そこで 8四銀 があるが、この場合は先手が持駒に「金金桂」と持っているので、8四銀には、同馬、同歩の瞬間に、後手玉が、3二金、同玉、2四桂、同歩、3三歩成、同銀、2三銀以下“詰み”となる。
 この図では、後手は 4四歩 と歩を突くのが好手である。7二角成なら、8四銀と指せる(それは形勢互角)
 なので、先手は、角を見捨てて8五玉とする。
 以下、4五歩、9四玉(次の図)

研究2六飛図08
 わずかながら先手良し。8九香が役立って、“入玉”はできそうだ。
 しかし、“相入玉”(持将棋)になってしまう不安はある。
 最新ソフトの評価値は[+600]くらい。

 〔昼〕7五桂 は、先手良し(ただし実戦的には互角に近い)

2六飛6六と図
 「2六飛」に対する、後手のもう一つの有力手〔夜〕6六と(図)を調査しよう。
 以下、8七玉に、7五桂と打って、以下、9七玉、7七とを決めるのが最善の対応と思われる(受けさせて先手の攻め駒を減らす意味がある)

 先手は、〈ア〉8九香 と〈イ〉9八金 があり、はたしてどちらが良いか(次の図)

研究2六飛図09
 〈ア〉8九香(図)の場合。
 ここで後手は7六歩と打つ(先手から7六歩と打たれると後手は困ってしまう)
 以下7八歩(これを同とは4五角、3一桂、8五歩以下形勢不明の戦いになる)
 7八歩に、後手6九金。先手は4五角と打つが、3一桂と受けられて―――(次の図) 

研究2六飛図10
 先手の攻めの継続がなく、後手良し(7二角成は7九金で後手優勢)
 4五角に代えて、7七歩は、同歩成、7八歩、7六歩以下、“千日手”になる。千日手は先手不満である(この一番勝負の特別ルールで千日手は“亜空間初形図”から先後を入れ替えての指し直しになるが、後手番で勝つ自信がない)
 〈ア〉8九香は、先手よくて千日手という結果になった(先手7八歩を同ととすれば形勢不明のコースに入るが手の選択権は後手にある)

研究2六飛図11
 そこで、先手は〈イ〉9八金(図)に期待することになる。
 後手の手番。ここで(s)7六歩は、2五香、3一桂、4五角で先手良しになる。
 また(t)4四銀上(先手の4五角を消し次に3五銀の狙いがある)は有力だが、調査の結果は先手7六歩以下、先手が良くなった(詳細は省略する)
 そこで(u)8七桂成(8七と)が後手期待の手になる。以下、同金、同と、同玉、7五桂、7八玉。そこで―――(次の図)

研究2六飛図12
 8七で駒を清算したのは、この3五金(図)と打つのが後手の狙いだった。先手の飛車を2筋から追う。
 7六飛に、6六歩、6八歩、6四銀右、4七桂(次の図)

研究2六飛図13
 4七桂(図)と打って、どうやら先手が良いようだ。
 ここで後手の応手はいろいろあるが、3四金 は、5五桂、同銀、3八香(3五歩に8五歩、同金、7五馬から攻め駒を増やして4一銀や2六桂をねらいにする)が効果的になる。
 また4七桂に 6五銀 は、7五飛、同金、同馬で、次に3五桂が残り、先手優勢。飛車を取りにいって逆に悪くなるのでは後手としてもこの作戦は失敗だ。

 4七桂に、後手4五金 以下を解説しておこう。
 その手には2六香と打って、次に7五飛で桂馬を取って1五桂と打つ手(詰めろになっている)をねらいとする。後手は3二歩と打って1五桂が詰めろにならないようにする(今度7五飛は同金、1五桂、8六金で後手良し)
 そこで先手3七桂(金取り)がある。
 以下、4四金、4五歩、3四金、8五歩(次の図)

研究2六飛図14
 8五同金に、7五馬からの“二枚替え”で攻め駒を増やし、先手優勢である。

研究2六飛図15
 どうやら先手良しか―――と結論付けそうになったところで、まだ(v)9五歩(図)が残っているので、これを最後に調査した。すると先手良しの判断は早すぎたと反省することとなったのである。
 9五歩を手抜きして2五香は、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、3一桂、4五角、4四銀上で、後手玉が詰めろになっておらず、後手良し。
 よって、9五歩は、同歩と取る。以下、9六歩、同玉、9四歩。
 これには 同歩9七玉 が考えられる。
 まず 同歩 は、9五歩、9七玉。そこで8五桂がある(次の図)

研究2六飛図16
 8五同歩、同金、1五桂、9六歩、同飛、8四銀(次の図)

研究2六飛図17
 ここで2六飛は、9六歩、同飛、8七とが妙手順で、以下8七同金、9六金、同玉、9五飛以下、先手玉が詰んでいる。
 この図では、2三桂成が最善手で、以下2三同玉、2六飛、2四歩、8六歩(単に8二馬だと9五銀で先手はっきり悪い)、9五金、8二馬、6四銀上、7八歩(単に4五角は8五桂で後手良し)、同と、4五角、6七桂成(次の図)

研究2六飛図18
 6七桂成(図)がまさに“妙手”。
 先手玉は“打ち歩禁”の状態で後手は9六歩が打てなかったが、それを解消する意味の6七桂成である。これで先手玉はこの瞬間、9六歩、8七玉、7七成桂の詰めろになっている。
 後手は、後の変化を考慮して、3三歩成、同玉と、“歩成”を入れてから、6七角と成桂を取る。
 9六歩、8七玉に、7五桂が“両取り”になる。以下、7八玉、6七桂成、同玉に、4七角(次の図)

研究2六飛図19
 後手ペースの終盤である。次に後手は5八角成や7五銀右が狙いになる。
 (最新ソフトの評価値は-500くらい)

研究2六飛図20
 後手の9四歩に、( 同歩 と取らず)9七玉(図) の場合。これならどうか。
 後手は9五歩だが、そこで7八歩は、8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂、7七玉、6六歩、6八歩、3五金で、後手良し。この変化は後手が「桂」を手に持っているから生じた。
 だからここでは2五香と打って、3一桂と後手に桂馬を使わせる。
 そこで 4五角7八歩 がある。

研究2六飛図21
 4五角(図)で、後手“受けなし”に見えるが、まだこの手は詰めろにはなっていない。
 後手は4四銀上と対応する(先手の攻めの催促をした)
 香を渡すと9六香で先手玉がすぐ詰まされるので、3三歩成、同銀、2三角成と、角を犠牲に攻める。以下2三同桂、同香成、1一玉、8四馬(次の図)

研究2六飛図22
 このタイミングで、8四馬(図)で、質駒になっていた金を取った(同銀なら2二金で後手玉詰み)
 後手は2五歩、同飛、2四歩と受ける(同飛なら7九角がある)
 以下、9五馬に、7八角(次の図)

研究2六飛図23
 この図は、後手優勢である。(最新ソフトの評価値は-1200くらい)
 ここで先手7三馬なら、2五歩と飛車を取った手が、次に9六歩、同竜、8七飛以下の“詰めろ”になっている。
 また、2六飛には、8七桂成、9六玉、8四歩で、後手勝勢となる。
 だからこの図で7九歩が考えられるが、以下9六歩、同馬、2三角成で、後手良し。

研究2六飛図24
 4五角 に代えて、7八歩(図)。 これでどうか
 この手はしかし先手にとって“希望のもてない”手である。というのは、ここで後手が7六歩とすれば、ここでもまた千日手がちらつくからだ。
 しかも、実はここから別の“後手有望”の順がある。以下その順を確認する。

 ここで2四歩と、後手から突く手が有効になるのである。
 以下、2四同香、2三歩、同香成、同桂と、後手は無理矢理「香」を入手した。もちろん目的は9六香だ。
 先手は7七歩とするが、それでも後手は9六香(次の図)

研究2六飛図25
 8八玉、9八香成、同香、8七金、9九玉、7八金(詰めろ)、8九香、4四銀上(次の図)

研究2六飛図26
 形勢はともかく、珍しい、面白い図が出現した。とうとう先手玉が“穴熊”になり、先手は大駒四枚を有しているのに対し、後手はなんと 金銀八枚(!)を盤上に散らばせている。

 さて、4四銀上(図)は、先手のねらいの4五角を打たせない意味。
 後手には次に、6九金寄(次に7九金寄が詰めろ)と3五銀(飛車取り)の狙いがある。
 しかし先手にそれを上回る有効手がないようだ(5三歩は6九金寄で後手良し)
 ということでこの図は、後手良しである。(最新ソフト評価値は-600くらい)

 以上の調査の結果、結論は出た。


2六飛図(再掲)
 「2六飛」は、〔夜〕6六と、8七玉、7五桂、9七玉、7七と、〈イ〉9八金、9五歩以下、後手良しである。7七とに、先手が 〈ア〉8九香 を選ぶと、後手がそのつもりなら“千日手”になる。

 結論は、「後手良し、または千日手」。
 つまり、「2六飛」では、「先手の勝ち筋」はなかった

 実はこの今回の報告を書き始めた段階では「2六飛で先手勝ちがある」と考えており、それを報告するつもりでいた。
 ところが本報告のためにしっかり調べなおしていく段階で、結論がくつがえったのであった(それまでは後手9五歩を軽視していた)
 こういうことは、非常によくある。「報告する」という目的があると、調査の精度が急に高まって、研究のレベルが上がるのである。



7三同銀図(再掲)
 なお、今回の「2六飛」の研究手順は、以前に第29譜において研究したことのある、この「7三同銀図」から “8七玉” からの一変化に合流する。8七玉、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七とと進んだとき、そこで「2六飛」と打つ変化だ。以下、7七歩成、同歩、同と(次の参考図)

参考図
 その時の研究報告は、以下8九香、7六歩、7八歩、同と、4五角、3一桂、8五歩以下、“形勢不明”としている。
 これは、今回の調査の〔夜〕6六と 以下、〈ア〉8九香 の変化に合流しており、まったく同じ図になっている。
 今回の研究調査は、その時の研究をより深めたものとなっており、この手順の7八同とに代えて「6九金」が新研究の手になる。すると以下、7七歩からの「千日手」が先手の最善手段となるというのが、今回の新研究の結果である。
 我々(終盤探検隊)としては、「千日手」は選びたくない。それは「形勢不利」と同じだから。

 「2六飛」は、先手が選ぶべき手ではなかったと、この調査研究ではっきりした。




≪最終一番勝負 第33譜 指了図(再掲)≫ 6七とまで


第34譜に続く
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