はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part32 ≪亜空間の旅≫

2015年08月07日 | しょうぎ
≪月4二歩図≫

    [りんごの花びらが風に散ったよな]
 りんごの花びらが 風に散ったよな
 月夜に月夜に そっと ええ―――えええ―――
 つがる娘は 泣いたとさ
 つらい別れを 泣いたとさ
 りんごの花びらが 風に散ったよな
 ああ―――あああ―――
      (楽曲『りんご追分』歌・美空ひばり 作詞・小沢不二夫 作曲・米山正夫 から一番の歌詞)



≪月2二玉図≫
 〔一〕4一銀  → 後手勝ち
 〔二〕2五玉  → 後手勝ち
 〔三〕6六角  → 後手勝ち
 〔四〕4五玉  → 後手勝ち
 〔五〕7三歩成 → 後手勝ち
 〔六〕9一竜  → 後手勝ち
 〔七〕8二飛  → 後手勝ち
 〔八〕6四角  → 後手勝ち

 とにかく、我々(終盤探検隊)は、ここから先手の勝ち筋を見つけなければならない。そうでなければ、我々の≪亜空間の闘い≫は敗北で終わる。


〔九〕3三歩

 3三歩(下の図)はあるだろうか。
 
3三歩図1
 これを(F)同桂なら先手が勝ちになるし、(G)同銀も先手にとって希望のある変化となる。
 まずそれを確認しておく。
 3三歩に(F)同桂は、3一角と角を打ち捨て、同玉に、4一金と指す(次の図)

3三歩図2  
 4一金と打って、同銀に1一飛とする。(これを手順前後して4一金の手で先に1一飛、2一銀打、4一金だと2二玉とされ詰まない)
 図での4一金なら同銀の一手。そこで1一飛、2一桂合、4一桂成、3二玉、2一飛成、同玉、2二銀、同玉、3一角、3二玉、4四桂、同歩、4二成桂――という手順で“詰み”。 先手勝ち。

3三歩図3
 次に、3三歩に、(G)同銀の場合。これは、この図のように、4五玉と逃げる。
 ここで4二桂だと後手玉は詰んでしまう。先手のねらいは5四→6四→7三の“入玉”で、それが実現すると先手の勝ちになる。
 ここで後手5三金が成立するかどうか、それがカギとなる。
 5三金には、3一銀、同玉、5一竜とし、後手は4一銀と合駒することになる。

3三歩図4
 この図の「銀合」は必然で、これを桂合なら、4二角、同銀、2二金で後手玉が詰んでしまう。
 「銀合」なら詰まないので、先手は5三竜とすることになる。後手は4二桂。
 以下、同龍、同銀上、5四玉、5三飛、6五玉で、次の図となる。


3三歩図5
 この図のソフト「激指」の形勢判断は「互角」である。我々としてはここから頑張って先手の勝ち筋を見つけられるのではと希望を抱いている。

 が、しかし、それ以前の問題があるのだ。
 初めの図に戻る。

3三歩図6
 「3三歩図1」まで戻って、そこで(H)4二桂と打たれる手がある。
 これは2五玉とするしかないが、そこで3三桂とされ、「3三歩」と打った一手が全くの無駄手にされてしまった。
 この変化で、「後手勝ち」となる。
 以下、先手の負けを確認しておこう。2五玉、3三桂、2六玉、3四桂、1七玉、2五桂、1八玉、3八金(詰めろ)、6五飛(詰めろの防ぎ)、1七銀(次の図)

3三歩図7
 1七同桂に、3七桂成で、先手、受けなし。後手玉は詰まない。

 ということで、結論は 〔九〕3三歩は「後手勝ち」、である。




≪月2二玉図≫
 なんとしても我々は“先手の勝ち筋”を見つけたい。
 しかしこの図で先手がぼやぼやしていると、「3三桂打」と「4二桂」という2通りの有力手が後手にあって、それで先手が負けになる。
 ではこの図で、その2つの後手の手をかいくぐる手はないものだろうか。
 そう考えて浮かんだ手が、次の手である。


〔十〕4二歩

4二歩図1
 この手はソフト「激指13」の候補手にはなかった手である。我々が苦吟の末、ひねりだした手だ。(これで先手が勝ちになれば嬉しいのだが!)
 この図では3一銀、同玉、4一金以下の“詰めろ”が後手玉に掛かっているので、ここで後手の<I>3三桂打はない。しかも次に4一歩成という有効な攻めがある。

 後手はどう指してくるか。
 <J>3三銀打だと、4五玉、6二桂、4一歩成で、これは先手勝ち。後手は6二桂で先手の“入玉”を阻止したが、持駒の銀桂を使ってしまったので、先手にせまる手がない。
 かといって<K>3三銀も、4五玉、6二桂の時に、今度は3一銀以下、後手玉が一気に詰んでしまう。
 したがって<J>3三銀打も、<K>3三銀も、先手が勝ち。

 では、〔十〕4二歩を<L>4二同金だとどうなるのか。
 3一銀、同玉、5一竜で、次の図。

4二歩図2
 ここで後手は「4一桂合」か「4一銀合」の2択だが、「桂合」だと、4二竜、同玉、5一角、同玉、6一飛以下詰み。
 だから「4一銀合」だが、それには同桂成、同銀、5三角(次の図)とする。

4二歩図3
 これは先手の勝ち。(3三銀には2三玉と行く)

4二歩図4
 だから戻って、〔十〕4二歩には、<M>3一歩(図)と受けるのが最善のようだ。

 ここで先手に好手があるかどうか。
 (a)4五玉は5三金でまずい。(b)2五玉は、3三桂、2六玉、3四桂、1七玉、3八金で、これも後手勝ち。
 「3一歩」の補強が盤石で後手玉にスキがない。

 図で(c)4一歩成で勝ちならよいのだが、それは――

4二歩図5
 図の3三桂打で先手勝てないようだ。3六銀などで“詰めろ”を受けるしかないが、そこで2四歩(または4四歩)で後手勝ちである。


4二歩図6(4二歩図4から4一銀、3三銀と進んだ)
 だから後手<M>3一歩に対し、(d)4一銀でどうか。
 これは3二銀成、同玉、4一角以下の“詰めろ”になっている。
 したがって、後手は3三銀(図)とする。
 以下、2五玉、2四銀打、2六玉、2五桂(詰めろ)、1五歩、5三金(次の図)

4二歩図7
 5三金と桂馬を取ったところ。これは3四桂、1六玉、1四歩のねらい。
 受けがむつかしいが、しかし詰めろではないので、5一竜でどうか。この5一竜は“詰めろ”(3二飛以下)だが、5一竜、3四桂、1六玉、1四歩となった時、後手1四歩が逆に“詰めろ逃れの詰めろ”になっている。
 以下、3二飛、同歩、同銀成、1三玉、3一角、2二飛(次の図)

4二歩図8
 これで後手勝ち。続けるなら2六歩くらいだが、1五歩、2七玉、3七銀成、同桂、同金、1八玉、2六桂、2九玉、3八金まで詰み。

 以上の検討の結果、〔十〕4二歩は「後手勝ち」、と出た。 (まことに残念!)


〔十一〕4二銀

 〔十〕4二歩は発想は良かったが後手“3一歩”の応手があって先手が敗れた。
 それなら、〔十一〕4二銀(下図)ならどうか。歩を銀に代えてみた。(この手も「激指」の候補手群の中にはない)

4二銀図1
 この〔十一〕4二銀に対する後手の次の手は、<R>3一歩、<S>3三銀打、<T>4二同金とあって、どれも有力。
 <R>3一歩、<S>3三銀打、この2つはいずれも調査はまだ十分とは言えないが、「互角」にちかい微妙な形勢となり結論ははっきりしないところがあるも、“先手良しの可能性あり”と我々は手ごたえを感じている。
 しかし最も気になるのは<T>4二同金である。これで駄目なら他の変化を調べてもしかたがないし、後手にとってもおそらくは<T>4二同金が一番指したい手のはずである。だから<T>4二同金をまず調べていく。 

4二銀図2
 先手の4二銀に、同金と後手が応じたところ。
 ここで3一角、同玉、5一竜(次の図)と攻めるのが、先手の予定だ。

4二銀図3
 これは先ほど〔十〕4二歩の検討で調べた変化(4二歩図2)と同じ攻め方だが、持駒が違う。今度は先手の持駒の「角」が一枚少ない(反対に後手の持駒に「角」がある)、という違いがある。
 ここで後手「4一桂合」か「4一銀合」か。
 実はこの場合も、やはり「桂合」だと、4二竜から後手玉は詰むのだ。4二同玉に、7二飛と打つ。5二歩合なら5一角から、5三玉なら4二角から詰みとなる。7二飛に5二飛合なら、同飛成、同玉、6二金、同玉、6一飛から。
 したがって後手は「4一銀合」。以下、同桂成、同銀で次の図

4二銀図4
 〔十〕4二歩で現れた図(4二歩図3)と同じ図だが、持駒が違う。後手は「角銀桂桂」と持っているために、先手玉が“詰めろ”になっており、その詰めろも一通りではない。(最も単純な詰み筋は3三金以下)
 なので先手の指し手が難しい。うまい攻防の手はないか。
 (ア)1一角は、3三歩、4五玉、6三角、5四歩、4四銀以下、詰まされる。
 (イ)6四角、(ウ)5三角を考えてみる。

4二銀図5
 (イ)6四角は、この図のように2五銀で先手負けである。先手玉は詰んでいる。
 2五同玉は、3三桂、3六玉、2四桂、2六玉、3五角、1五玉、1四歩まで。

4二銀図6
 それなら(ウ)5三角(図)はどうか。この角は3五にも利かせている。
 しかし2二桂、4五玉(代えて2三玉には6七角がある)、6三角、5四歩、4四銀、同角、同歩、同玉、3二桂(次の図)

4二銀図7
 となって、これも“詰み”である。以下、4五玉、3三桂、3六玉、2四桂、2六玉、3五角、1五玉、1四歩まで。
 「4二銀図4」では、攻めるどころか、どうやっても一気に詰まされてしまうようだ。

 そういうわけで、結論はこうなる。
 〔十一〕4二銀は、同金と取られて「後手勝ち」、である。



≪月2二玉図≫再掲
 〔一〕4一銀  → 後手勝ち
 〔二〕2五玉  → 後手勝ち
 〔三〕6六角  → 後手勝ち
 〔四〕4五玉  → 後手勝ち
 〔五〕7三歩成 → 後手勝ち
 〔六〕9一竜  → 後手勝ち
 〔七〕8二飛  → 後手勝ち
 〔八〕6四角  → 後手勝ち
 〔九〕3三歩  → 後手勝ち
 〔十〕4二歩  → 後手勝ち
 〔十一〕4二銀  → 後手勝ち

 もはやこれまで。他に有効手は思いつかない。
 この≪月2二玉図≫はどうやら、「後手勝ち」のようだ。



≪月5二金図≫
  (猪)3一銀  → 後手勝ち
  (鹿)2五玉  →後手勝ち
  (蝶)4五玉  →後手勝ち
  (蛙)4一桂成 →後手勝ち
  (燕)9一竜  →後手勝ち
  (雁)6四角  →後手勝ち
  (鶴)7七角  →後手勝ち  

 この≪月5二金図≫から、「3一銀、5一歩、2二銀成、同玉」と進んだ局面が、上で調べてきた≪月2二玉図≫である。 我々は(猪)3一銀をこの≪月5二金図≫での“先手最後の希望”としていたが、3一銀以下の変化である ≪月2二玉図≫=「後手勝ち」 となったため、≪月5二金図≫は結局「後手勝ち」という結論になる。
 5二金に対して、先手の勝ち筋は、ついに見つからなかった。

 すなわち、≪亜空間戦争≫の結果は、「後手の5二金で後手勝ち」、となった。


 我々は、闘いに敗れたのである。
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終盤探検隊 part31 ≪亜空間の旅≫

2015年08月01日 | しょうぎ
≪月6四角図≫


    [月の沙漠をはるばると]

 月の沙漠を はるばると 旅の駱駝(らくだ)が 行きました
 金と銀との 鞍(くら)置いて 二つならんで 行きました

 金の鞍には 銀の甕(かめ) 銀の鞍には 金の甕
 二つの甕は それぞれに 紐で結んでありました

 先の鞍には 王子さま 後の鞍には お姫さま
 乗った二人は おそろいの 白い上着を 着てました

 広い沙漠を ひとすじに 二人はどこへ 行くのでしょう
 朧(おぼろ)にけぶる 月の夜を 対の駱駝は とぼとぼと  

 砂丘を越えて 行きました
 黙って越えて 行きました

            (楽曲『月の沙漠』作詞・加藤まさお 作曲・佐々木すぐる)



 童謡『月の沙漠』は、日本人なら誰もが知っているであろう楽曲だが、この曲は海外から輸入したものではなく、日本人による作詞作曲である。
 この曲は1923年(大正12年)、雑誌『少女倶楽部』編集部の依頼によってつくられ、その雑誌に掲載されたものである。加藤まさおが、沙漠を歩く駱駝を空想しながら詩を創った。
 雑誌『少女倶楽部』は、講談社によってこの年1923年に創刊された少女向けの月刊雑誌である。『月の沙漠』はこの年の3月号に発表された。
 1962年まで続いたこの少女雑誌は、その後、少女向け漫画雑誌『少女フレンド』へと発展したのである。

 「少女向け雑誌」はこのように大正時代には存在していた。
 もちろん「少年向け雑誌」もすでにあったし、「婦人向け雑誌」もあった。そう考えると日本という国の大衆の“雑誌好き”がよくわかる。(調査しているわけではなので確かなことはわからないが、これほどに少年・少女・婦人向けの雑誌が普及・発展していた国は他にないのではないだろうか)
 こうした雑誌の中で有名なのは、1918年(大正7年)に鈴木三重吉が創刊した『赤い鳥』だろう。これは童話・童謡を載せた児童向け雑誌であった。しかし『赤い鳥』はこうした大衆雑誌の1号というわけではない。もっと古いものがあるのだ。大正時代よりも前、実は明治時代からこうした少年少女向け雑誌は存在していたのである。
 少年雑誌は1895年(明治28年)に『少年世界』が博文館により創刊されているし、さらにそれよりも早くから他社の少年雑誌が存在していたようである。
 少女雑誌では『少女世界』(博文館)が1906年(明治39年)に誕生している。また、婦人雑誌は、1913年(大正2年)創刊の『婦女界』(同文館)があった。それ以上に古いものもあったかもしれない。
 このように、日本の大衆雑誌の歴史は古い。100年以上の歴史をもつのである。

 以下、少女向け雑誌について述べる。

 明治・大正・昭和初期にあった少女雑誌の主要なものは次のとうりである。
  『少女世界』(博文館) 1906年~1931年
  『少女の友』(実業之日本社) 1908年~1955年
  『少女画報』(東京社) 1912年~1942年
  『少女倶楽部』(講談社) 1923年~1962年 (→『少女フレンド』へ)

 この他にもあったが、有名なのはこの4つである。
 これらの雑誌は、競争に勝って売り上げを伸ばすために、編集者がさまざまな工夫をしたが、それが形となって表われたのが「付録」である。もちろん「付録」は少年雑誌にもあったのだが、日本の少年少女雑誌の“付録文化”はすでにこの時代から生まれ、盛んだったのである。
 トータルで売れていたのは『少女倶楽部』だったようだが、当時の読者の記憶に強く印象に刻まれたのは『少女の友』のようである。『少女の友』は華やかであり、それが少女たちの心を掴んだ。とくに1938年(昭和13年)に中原淳一がその表紙絵や挿絵、付録のデザイン画等に起用された頃から、『少女の友』の盛り上がりは最高潮となる。中原淳一は、画家としてのみならず、編集にも(たとえば付録の企画など)参加している。
 『少女の友』の読者のコーナーでは、熱狂的な愛読者が意見を交わし、読者同士のコミュニティが生まれた。読者の作品(絵や詩や小説)も掲載され、その中から実力者や人気者――現代の表現を使えば“カリスマ読者”――も生まれたのであった。それだけでなく、全国各地でその「愛読者大会」が自主的に開催されたほどの盛り上がりだったのである。
 女性で、自分のことを「ボク」と言い、相手のことを「キミ」と呼ぶ、そういう流行が生まれたのも、この時代の少女雑誌コミュニティの中からである。

 日本特有の、「少女を愛する文化」はどこから来たのか、とそれを考える時、『少女の友』や『少女倶楽部』といった昭和初期の少女向け雑誌の熱狂を考えることになるのである。少女漫画のあのキラキラした絵の源流がここにある。
 とはいえ、これを当時愛好していた読者は100パーセント近く女子であった。「少女を愛する文化」を育てたのは、少女たち自身なのである。
 しかし中には密かに少年時代にこれら少女雑誌を読んでいた男子もいたことだろう。川端康成は『少女の友』や『少女倶楽部』に少女小説を書いて人気を得た人気作家だが、もともと少年時にはこれらの少女雑誌の愛好者であったことを述べている。

 さて、1930年代、一方で、海の向こうアメリカでは、SF野郎たちがSF雑誌『アメージングストーリーズ』や『アスタウンディング』の新作SF小説に熱狂し、彼らは読むだけではその興奮がおさまらず、集会を開いていた。
 それと同じ時期、日本では、少女雑誌の中で、絵の中の少女がキラキラと瞳を輝かせており、読者である10代少女たちがその雑誌のもたらす絵と文字にウキウキしていたというのは、ある種の“同時性”ではないだろうか。

 やがて戦争が始まって、それが終わり、日本のその大衆雑誌文化は、大戦後、少年漫画雑誌・少女漫画雑誌(および婦人雑誌、ファッション雑誌)に受け継がれていく。
 ここでふたたび中原淳一が登場する。中原淳一は1947年に少女雑誌『ひまわり』を創刊。この少女雑誌は(中原が渡仏のため)1952年に廃刊するが、1954年に中原淳一は再び少女雑誌を創刊する。それが『ジュニアそれいゆ』である。ここで中原が起用したのが内藤ルネ(イラストレーター、男性)である。1950~60年代に、内藤ルネが、この『ジュニアそれいゆ』や、少女漫画雑誌(『りぼん』『少女クラブ』『なかよし』など)に描いた少女のイラスト画が、今の少女漫画の「キラキラした瞳大きなの女の子」の原型になっているといえるだろう。
 中原淳一が『少女の友』時代に描いた少女画は18歳くらいの大人の女性になる一歩手前の女子であったが(ただしどこか遠くを見つめている)、内藤ルネの少女画はもっと年齢の若い少女で、黒く大きな瞳をしている。

 さて、1970年頃までは、男の子は少年漫画を読み、女の子は少女漫画を愛すのがふつうであった。棲み分けができていた。
 それが1970年代後半になると、両者が垣根をこえてクロスオーバーする現象がはっきり見えるようになった。
 その結果として、少年漫画の中にも“キラキラした女の子”が存在感を放つようになって、現実の“男の子”たちは徐々にその魅力に降参するしかなくなってきたのである。
 明治・大正時代の少年雑誌を読んで少年読者たちが心を弾ませたのは戦艦や戦闘飛行機であり、それは戦後になっても継続してゆくが、そこに「美少女」という存在がするりと入り込んできたのである。異質な輝きを放つ「美少女」が。
 TVや映画のアニメの中では、「SF」と「美少女」がフュージョンを始め、さらには「アイドル歌手」がそのながれに合流するようになった。「コスプレ」が普及し、「メイドカフェ」が生まれ、まるでマンガ・アニメの絵のように、街の若者の髪の毛の色がカラフルになってきた。“アイドル文化”の勢いはは衰えを知らず、地方にまで拡がってきている。
 はじまりは一次元(文字)、二次元(画)だったものが、今では三次元にまで及んできた。

 アメリカからやってきた「1930年代SF雑誌文化」と、日本独自の「1930年代少女雑誌文化」とが、1970年代後半、日本で合体し、ついにこのような“複合体”が形成されたのであった。
 「オタク文化」がこうして生まれた。その根っこは、1930年代のアメリカSF雑誌の読者コミュニティと、同じ時期の日本の少女雑誌の読者コミュニティとにあったと思うのである。

 また、(昭和初期にあった)読者参加型少女雑誌のながれは、いまも少女向けファッション雑誌で続いている。
 (なお、今回は触れなかったが、日本の少女複合文化について触れるならば、少女雑誌のながれとは別に、「宝塚」の少女歌劇も見逃してはならないながれである。こちらのルーツも明治・大正時代までさかのぼる。)

 それにしても、日陰の文化だった「少女文化」がこれほどまでに堂々と中央を歩く時代になろうとは! 
 


≪月2二玉図≫
 〔一〕4一銀  → 後手勝ち
 〔二〕2五玉  → 後手勝ち
 〔三〕6六角  → 後手勝ち
 〔四〕4五玉  → 後手勝ち
 〔五〕7三歩成 → 後手勝ち
 〔六〕9一竜  → 後手勝ち
 〔七〕8二飛  → 後手勝ち

 我々終盤探検隊は初めはただの≪亜空間≫と名付けたある局面を調べる調査隊であったが、≪亜空間戦争≫に巻き込まれ先手応援部隊となって、その運命を共有することになった。
 そういうわけで、我々の未来は、この戦争を先手勝利へと導く道を発見することができるかどうかに懸っているのである。
 この≪月2二玉図≫が問題の図で、なんとしてもこの局面での“先手勝利”の道を発見したい。
 しかし今のところ、それが発見できていない。


〔八〕6四角

≪月6四角図≫
 8番目の候補手、〔八〕6四角に期待したい。この図が本日のテーマである。
 この6四角は攻防手である。4六や3七に受けに利かせつつ、後手が何もしなければ3一銀、同玉、4一桂成以下、後手玉を詰ます攻めを狙っている。
 そこで後手としてはここで4つの有力手がある。
 【W】3三銀打、【X】3三銀、【Y】4二桂、【Z】3一歩、この4つ。
 しかし【W】3三銀打、【X】3三銀、この2つはどうやら先手良しになりそうだ。

 【W】3三銀打は、2五玉、3一歩、3四歩(次の図)

3三銀打の変化図
 これで先手良し。

 また≪月6四角図≫から【X】3三銀は、2五玉、2四銀打、2六玉、2五桂に、3二金(次の図)

3三銀の変化図1
 この金を同玉は4一角、2二玉、3一銀、1一玉に、「4六角」が“詰めろ逃れの詰めろ”で先手勝ち。
 したがって後手は3二金には1一玉と逃げるが、その場合は3六歩と先手は“詰み”を受けておく。そこで5三金(桂馬を取った)がまた先手玉への“詰めろ”。で、次の図。

3三銀の変化図2
 先手玉への1四桂または3四桂の“詰めろ”を受けるなら1五歩しかないが、それは6四金(3七角からの詰めろ)で後手勝ち。
 しかしこの図では、2一金から先手が勝てる。後手玉は“詰み”なのである。
 2一金、同玉、5一竜、3一歩、同竜、同玉、5三角成、4二金(最善のがんばり)となるが、そこで5一飛または、4一金、同玉、1一飛から詰みである。

 そういうわけで≪月6四角図≫から、【W】3三銀打、【X】3三銀、は「先手勝ち」となるとわかった。
 
4二桂図
 【Y】4二桂(図)が後手の本命だろう。後手玉に掛かっている“詰めろ”をこれで防いでいる。しかも“王手”なので、ここで主導権をとれる。

2五玉図
 先手は2五玉(図)。
 ここで後手の有力手は〔t〕3三桂(次の図) 

3三桂図1
 ただし守備の桂馬を攻めに使うこの手〔t〕3三桂は、後手にとって玉が弱体化するのでリスクもある。
 3三桂には、2六玉しかない(次の図)

3三桂図2
 この図で後手の次の一手が難しい。
 (ぱ)3四桂と指したいところだが、この手は後手玉への▲3一銀からの攻めが復活するのでキケンも伴うが、どうなるか。
 3四桂、1七玉、2五桂、1八玉、3八金、6五飛(次の図)

3三桂図3
 後手は2五桂、1八玉を決めることで、「3三」への脱出口を開き、3八金と先手玉へ“詰めろ”(1七桂成、同玉、2八銀、1八玉、2九銀不成、1七玉、2五桂)を掛けたのだが、そこで6五飛(図)が絶好手となる。“詰めろ逃れの詰めろ”だ。後手玉は3一銀以下の“詰めろ”。
 これでどうやらこの変化は「先手勝ち」となるようだ。

 そういうわけで「3三桂図2」での(ぱ)3四桂では後手まずい。

3三桂図4
 それでは(ぴ)3七銀打はどうだろうか。 
 同桂、同銀不成、同角、3四桂、3五玉、3七金、3一銀、同玉、1一飛(次の図)

3三桂図5
 2一桂、4一金、同銀、同桂成、2二玉、2一飛成、同玉、2二銀(次の図)

3三桂図6
 2二同玉、3一銀、3二玉、4二成桂、同金、同銀成、3一角以下詰み。
 先手勝ち。 後手は3七銀打以下、先手に銀を二枚渡したのでこの“詰み”が生まれたのである。
 (ぴ)3七銀打も後手まずかった。

3三桂図7
 3つ目の手は、(ぷ)2八銀である。
 これはまだ先手玉への詰めろにはなっていないが…先手はどうするか。
 ここはいったん1五歩としてふところを広げておく。後手は5八とから金を取りに来るが、そこで 先手、4一銀と攻める。同銀なら、3一銀、同玉、1一飛、2一銀、4一桂成以下、詰む。
 なので4一銀に後手は3一歩だが、3二銀成、同玉、4一角(次の図)

3三桂図8
 これは先手勝ちの図。後手2一玉に、そこで先手にあと一枚銀が入ると3二銀以下詰む。その銀は4六に落ちている。2一玉に4六角で、先手勝ちである。
 (ぷ)2八銀も「先手勝ち」となった。 さあ、後手に他に手はあるのか。

3三桂図9
 「3三桂図2」(後手3三桂に先手2六玉の局面)で、(ぱ)3四桂、(ぴ)3七銀打、(ぷ)2八銀はいずれも「先手勝ち」という結果が出た。
 どうやら4つ目の候補手(ぺ)4八と(この図)が後手の最善と目される手である。
 この手に対し、6九金と逃げるのでは、「3八と」(詰めろ)で後手が良くなる。
 (ぺ)4八とを同金も、同金で先手が悪い。(以下、4六角なら、3四桂がある)

 4一銀と攻めてみよう。
 3四桂、1七玉、2五桂、1八玉、4一銀、3一角、3三玉(次の図)

3三桂図10
 タイミングよく「3三」の脱出口を開けた後手が勝ちの図である。

3三桂図11
 (ぺ)4八とに4一銀は先手勝てないとわかった。しかしその手に代えて3四歩(図)がなかなかの手である。  この3四歩は、ここで3四桂と跳ねる手を後手に強要するという勝負手だ。
 3四歩、同桂、1七玉、3一歩で次の図。

3三桂図12
 ここで先手の狙い筋は“5四飛”なのだが、ここで5四飛は、4五銀で、以下4一桂成は、2五桂、1八玉、5四銀、3一角成、3三玉で、後手玉に逃げられ先手の負け。
 そこでここでは、3五歩とここに歩を打つ。同銀と取らせて、そこで“5四飛”と打つ(次の図)

3三桂図13
 今度は4五銀の受けには、4一桂成、5四銀、3一角成以下、後手玉が“詰み”なので先手の勝ちとなる。今度は後手の3五の銀が後手玉の逃げる道をふさいでいる。この手順の途中、4一桂成を同銀は、「5二飛成」がある。同歩に、3二金から後手玉は“詰み”となる。
 また5四飛に6三銀は、3四飛、2五桂、1八玉、6四銀、3五飛。これは次に3四桂があり先手優勢。
 これが“5四飛”のねらいだが、それを防いで4二銀と受けるのでは、3四飛で先手優勢。
 よって、図では、後手は2つの先手のねらいを阻止できないので、5九とと開き直ってみよう。この5九とで後手は金を入手したので、先手玉には2六銀打以下の“詰めろ”が掛かっている。したがって4一桂成は間に合わない。
 だから先手は3四飛。桂馬をはずして先手玉の“詰めろ”は消えた。
 以下2五桂、1八玉で、次の図である。
 
3三桂図14
 この図は先後どちらが勝っているだろうか。
 3八金(詰めろ)、2八銀、4四金、4一桂成、5三銀、3三角(次の図)と進めてみると――

3三桂図15
 3三同銀に、3一成桂、3二角、同成桂、同玉、2一角、同玉、3三飛成となって、これは先手勝ち。

 この変化は先手がうまくいって勝ちになった。
 しかしここは≪亜空間≫という特殊空間での戦争である。時間を遡って何度でもやり直しのきく世界である。
 「3三桂図12」まで戻って、その図からの先手3五歩に(同銀でなく)、5九と(次の図)が後手の正着手のようだ。

3三桂図16
 3五歩に、“5九と”としたところ。
 ここで3四歩は2五桂で先手玉が詰んでしまう。
 よって、7七角としてみよう。これなら2五桂と跳べない。そして次に3四歩が先手の狙いである。
 しかしそこで5三金(次の図)がある。

3三桂図17
 5三に「桂馬」が落ちていた。これで2五桂打以下の先手玉への“詰めろ”が復活した。
 以下、2五銀、6四金、3四歩と進めば、2八銀、同玉、3九角、1八玉、2六桂、同歩、2八金から“詰み”となる。 

 今度は、「後手勝ち」になった。

 先手の工夫としては、3五歩のところで、いったん1八玉と変化する手が考えられるが、それも5九とと金を入手されると、そこで3五歩、同銀、5四飛のねらいは実現しても、これはやはり先手やや苦しめの形勢と思われる。そのコースは、「互角」にちかい「激指」の評価にはなっているが、我々はそこから先手の勝ち筋を発見できていない。


 
 というわけで、この期待の〔八〕6四角も、どうやら先手の旗色が悪そうだとわかってきたが、さらにそれにとどめを刺すのが次の手である。

3六歩図1
 〔t〕3三桂に代えて、〔u〕3六歩という手がある。

 この手に対し、先手の手(ざ)4一銀、(じ)6六角、(ず)2六玉、(ぜ)3八歩、をそれぞれ検討していく。

3六歩図2
 (ざ)4一銀は、後手に銀を渡すので、後手が一気に勝ちにもっていくルートができてしまう。
 4一同銀(このとき2一の桂馬を跳ねていないので後手玉には3一角、同玉、1一飛という怖い筋がない)、同桂成、3三桂、2六玉、3四桂、1七玉、2五桂、1八玉、2六桂(次の図) 

3六歩図3
 2六同歩に、2七銀から“詰み”。
 というわけで(ざ)4一銀はない。

3六歩図4
 (じ)6六角には、3三桂(図)
 対して先手2六玉では、3七歩成、1五歩、1四歩、3五歩、1五歩でこれは先手勝てない。
 よって3三桂に、同角成としてみよう。後手は3三同銀。
 続く3一銀(取ると4一飛)には、2一玉(次の図)とかわす。

3六歩図5
 これで後手の勝ち。攻めきれなかった。

3六歩図6
 (ず)2六玉はどうなるか。
 2六玉には3七歩成。これは△3四桂以下の“詰めろ”なので、1五歩とそれを防ぐ。後手は1四歩。
 先手3五歩、後手4四銀(次の図)

3六歩図7
 この4四銀は次3五銀上の予定だが、この手では3四歩の方が銀を節約しつつ次に3五銀をねらえるので得なように見える。が、それは先手に4六角、同金、5五角という技があって、後手危険である。それを防ぐ意味もこの4四銀にはある。
 ここで先手の指す手が難しいが、9一竜とする。
 以下、3五銀上、1七玉、1五歩、1三歩、同香、1二歩(次の図)
 後手が1五歩とした瞬間の1三歩が先手のねらっていた手。

3六歩図8
 この1二歩は“詰めろ”。同玉と取るのも3一角でまずい。だからここはふところを広げる1四香しかない。
 以下、1一角、1三玉、3九香、1六歩、1八玉、3八歩、4六角、同金、2五飛(詰めろ)、2四銀、5一竜が考えられる進行。
 途中、3九香、3八歩の交換をすることで、この瞬間、「3八金」や、角を後手が手にした時の「3九角」がなくなっている。この瞬間に攻めるのだ。

3六歩図9
 5一竜で先手は「歩」を入手。素直に同金なら、1三歩から後手玉が詰む。
 しかし後手にはまだ“切り返し”がある。1七歩成、同桂、同香成、同玉、4四角(次の図)

3六歩図10
 王手で4四に角を設置。3五歩や2六歩なら、5一金と竜を取って後手勝ち(角が2二に利いているので後手玉は詰まなくなっている)
 4四角に、3五銀の場合が複雑だ。
 3五銀、同角、2六金(3五同飛は1六歩、同玉、1五歩以下先手玉が詰む)、1六歩、同玉、2五銀、同金、3六飛、2六銀、1五歩、同玉、2四銀、同金、同角、2五玉、1三桂打(次の図)

3六歩図11
 1三同香成、同桂、1四玉(代えて1三同銀成は、同角でやはり後手勝ち)、5一金で、後手勝ち。

 これで、(ず)2六玉は後手勝ちとわかった。

3六歩図12
 では、〔u〕3六歩に、(ぜ)3八歩と受ける手を考えてみる。
 これを同金なら、4六角、3三桂、2六玉、3四桂、3五玉、4六桂、同玉が想定されるが、こうなると先手有望。
 (ぜ)3八歩には、後手6三歩が有力な手である。6三歩に7五角、3八金、6六角、4四歩の展開は後手良し。なので7三角成以下を検討する。
 7三角成、3三桂、2六玉、3四桂、1七玉、3八金と進んで次の図。 

3六歩図13
 3四桂で手順に4六の銀にひもをつけ、この図の3八金で、後手はさきの“3八歩”の一手を無駄にすることができた。
 このままだと次に△2八銀から詰まされていまうので、先手は1五歩。後手は2九金。これまた“詰めろ”だ。
 そこで3一銀、同玉、4一金(次の図)

3六歩図14
 これを4一同銀は、同桂成、同玉、5一馬、同金、3一飛から詰む。
 だから図の4一金には2二玉と逃げ、3一角、1一玉となる。そこで4六馬(銀を取った)、2一銀打(次の図)

3六歩図15
 4六馬と銀を取った瞬間は先手が勝ったように見えるが、2一銀打とこの図のように受けられて見ると、まだ勝敗ははっきりしない。
 しかしこの図、なんとなく雰囲気は先手がイケそうだ。 ただ、ここで何を指すか。
 3五馬や5七馬、5五馬も有力に思えるし、4二金、同金、5一竜もありそう…。だが調べてみると、いずれも届かない、とわかった。
 “2二飛”はどうだろうか。これは取ると後手玉が詰んでしまうし、次に3二飛成がある。
 2二飛以下、4六桂、3二飛成、4四角(次の図)

3六歩図16
 この4四角で受かっている。2六歩に、2五桂、1六玉、3二銀で、「後手勝ち」となる。
 なお、図で1八玉は、1九金、同玉、1六香で、合駒が金か銀しかないため、先手玉が詰まされてしまう。

 以上のように、〔u〕3六歩(3六歩図1)も後手にとって有力で、我々終盤探検隊の検討では、「後手勝ち」の結論。


6三歩図
 また、「2五玉図」から、〔t〕3三桂、〔u〕3六歩で後手良しと判明したが、3つ目の手〔v〕6三歩(図)でも、どうやら先手苦しい。(解説は省略)


3一歩図
 また、初めまで戻って、本日のテーマ〔八〕6四角に、【Z】3一歩と後手が受けた図。
 ここからも、我々は先手の勝ち筋を見つけることはできなかった。(これも解説は省略する)


 こんなに後手にとって有力な筋が多いのでは、たまったものではない。
 〔八〕6四角では先手勝てない、とあきらめるしかないようだ。


≪月2二玉図≫再掲
 〔一〕4一銀  → 後手勝ち
 〔二〕2五玉  → 後手勝ち
 〔三〕6六角  → 後手勝ち
 〔四〕4五玉  → 後手勝ち
 〔五〕7三歩成 → 後手勝ち
 〔六〕9一竜  → 後手勝ち
 〔七〕8二飛  → 後手勝ち
 〔八〕6四角  → 後手勝ち

 先手の勝ち筋が、見えない…。


         →part32に続く
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