≪最終一番勝負 第78譜 指始図≫ 7七角まで
指し手 ▲8九飛 △6八角成
[あったためしがないわよ]
ねんねんころり アリスのひざに
ご馳走(ちそう)できるまでおねんねしましょ
ご馳走すんだらおどりにゆこう
赤と白の女王さまもアリスもみんな
「さあ、文句はわかったでしょ」赤の女王さまは、アリスのあいた肩に自分も頭をもたせかけると、「こんどはあんたがおしまいまでうたってちょうだい。あたしもねむくなってきちゃったから」次の瞬間には、女王は二人ともぐっすりと、大きないびきをかいてねむりこけていた。
「いったいどうすりゃいいのよ」アリスは途方にくれてあたりを見まわす。まず片方の頭がごろん、つづいてもう一方が、肩からすべりおちて、重石みたいにアリスのひざにのっかった。「いちどに二人の女王さまのねんねのお守りをしなきゃならないなんて、こんなことってぜったいあったためしがないわよ。そうだわ、イギリス史ぜんぶひっくりかえしたって――そもそも一度に二人も女王さまがいたことなんて、あったためしがないもの。ねえ、おきてよ、重いひとたち!」アリスはいらいらしていいつづけたけれど答えるのはおだやかないびきばかりだ。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
女王になったアリスの両サイドに「赤の女王」と「白の女王」
最初に「白の女王」が眠たくなったといって、すると「赤の女王」がアリスに子守唄をうたってやれという。アリスが子守唄がわからないというと、「赤の女王」はそれならわたしがと唄い始めた。
そしてとうとう「赤の女王」も眠りに落ち、アリスの両サイドから肩にもたれかかってくる二人の「女王さま」。
「どうすりゃいいのよ」とアリス。
すでに何度も説明しているが、この両サイドの女王の正体は、黒の子猫(キティ)と白の子猫(名前がない)である。
<第78譜 先手良しの世界>
≪最終一番勝負 第78譜 指始図≫ 7七角まで
「亜空間戦争最終一番勝負」はここまで進んでいる。
今後手の ≪亜空間の主(ぬし)≫ は △7七角 と指してきた。
この手に代えて、【ロ】9五歩 の手を、コンピューター・ソフト(「激指14」、「水匠2/やねうら王」ともに)を、最善手として推してきている。
(【イ】7七角 は第2または第3候補手である)
[研究調査 【ロ】9五歩]
5九飛図
【イ】7七角 = 実戦の指し手
【ロ】9五歩
【ハ】8八角 → 先手良し
【ニ】6八角 → 先手良し
【ホ】6八桂成 → 先手良し
【ヘ】6六歩 → 先手良し
【ト】5四香 → 先手良し
【チ】7七歩 → 先手良し
【リ】6二銀右 → 先手良し
一手前のこの図は、前回の譜で、ここまでその調査結果を明らかにした。
結果を言うと、【イ】7七角、【ロ】9五歩、いずれの手も「先手良し」となる。
つまりこの「5九飛図」は、先手良しなのである。つまり我々終盤探検隊が選んできた道はまちがった道ではなかった、というのは確かである。
しかし、もしも後手が【ロ】9五歩 を選んでいたら、我々は「正解手順」を選べていただろうか?
9五歩図
5九飛に、【ロ】9五歩((図)の場合。
ここで「激指14」の第一候補手は(b)7七銀 で、以下6七歩で、ほぼ互角の勝負となる(この変化は後述する)
また(c)9五同歩 は、9六歩、同玉、8八桂成で、先手悪い。
“戦後研究調査” でわかったことだが、ここで(a)7八金 以下、はっきり「先手良し」となる手順がある(次の図)
変化9五歩図01
【ロ】9五歩には、(a)7八金(図)が最善手。
これで先手良しになるとすでに前譜の最後に述べている(解説はまだしていない)
これにはしかし、7七歩があり―――(次の図)
変化9五歩図X(宿題図)
「ここからどうやって勝つか?」というのが、我々が前譜の最後に出した「宿題」であった。
以下はその「宿題」の、「解答編」である。
「5三飛成、同歩、4二金」というのが考えられるが、それはいい線を行っているが、この場合はうまくいかない(次の図)
変化9五歩図X1
「5三飛成、同歩、4二金」に、2四歩(図)で後手良し。
9五歩が入っているので、4一竜、同銀、1五桂とすると、9六歩、同玉、9五飛、8七玉、8九飛から詰まされてしまうので、2四歩のこの場面で先手に勝てる手がない。
図で8四馬(同銀なら3一銀、2三玉、3五銀で先手勝ち)は、7八歩成で後手勝ちになる。
「5三飛成、同歩、4二金」では先手勝てない―――というわけで、7八金に7七歩とされたこの「宿題図」は先手の負けに思えるところだったが、その陰にかくれて「勝ち筋」は存在していたのだった。
3手一組のその正解手順は―――
変化9五歩図X2
正解は「5三飛成、同歩、5一竜」(図)である。
これで先手勝ちになるというのは、気づきづらいと思う(5一竜は心細い攻めに見える)
ここで2四歩や1四歩という上部脱出を狙う手に対しては、3一銀と打って、同銀なら1一銀で後手玉を挟撃で寄せられるのである。銀を一枚後手に渡しても先手玉は詰まないというのが、この寄せを成立させている。
変化9五歩図X4
というわけで、5一竜に、後手3一角(図)という受けになるのだが、それには4二銀とし、以下同角、同竜、3一香(3一銀は1一銀、同玉、3一竜、2二銀、4二銀で先手勝ち)、5一銀(次の図)
変化9五歩図X5
これは先手勝ちになっている。
2四歩としても、5六角がある。1四歩には、3一竜(同玉は4二金以下詰み)、1三玉、4六角、2四歩、3二竜。
変化9五歩図X6
実は、5一竜に、3四歩(図)という手が後手最強の応手かもしれない。
対して(2四歩や1四歩の場合と同じように)3一銀、同玉、1一銀の寄せは、この場合は成立しないのだ。それは9六歩、同玉、9五歩、8七玉、8九飛、7六玉、7四香、6七玉、6九飛成、6八金打、6六歩、5六玉、5九竜、5七歩と玉を右辺に追われたときに、3三角の攻防手が生じて後手が良しになるから。
しかし、ここで正着を指せば、先手が勝てる。
8四馬が正着手である。同銀に、後手玉に詰みがある。詰手順は、3一銀、同玉、4二銀、2二玉、3三金(次の図)
変化9五歩図X7
3三同桂に、打った銀をすぐに捨てる3一銀不成が面白い手。同玉に、4二金と打ち換えて、2一玉、3二金、同玉、2一銀(次の図)
変化9五歩図X8
2一同玉に、4一竜以下、“詰み”
以上の解説の通り、「9五歩」には、「7八金、7七歩、5三飛成、同歩、5一竜」で先手が勝てる。
9五歩図(再掲)
ソフト「激指」(激指13、14)を相棒として闘っていた我々終盤探検隊は、もしも後手の ≪亜空間の主(ぬし)≫ が、9五歩とやってきていたら、「7八金、7七歩、5三飛成、同歩、5一竜」の勝ち手順を発見できただろうか? 判ってみれば明快な手順だが、最新ソフトでも見逃しそうなこの手順を「激指」を使って発見できたかどうか疑わしい。
そもそもわれらが「激指14」は、ここで (b)7七銀 を最善手と見ていた(評価値は+183)
その手でどうなるか、少しその先を見ておこう。
変化9五歩図02
(b)7七銀(図)には、6七歩で、形勢はほぼ互角。
先手は3四歩。同歩なら、3三歩、同桂、7六銀、6八歩成、2六桂で、先手良し。
よって、6八歩成、3三歩成と進む(次の図)
変化9五歩図03
同銀は、4一竜で、先手良し。
しかし同桂と同玉は、どちらも難解な形勢になる(最新ソフトのこの図の評価値は -91)
(b)7七銀 は、このような勝負になる。
後手の ≪ぬし≫ が、【ロ】9五歩 を指していたら、おそらくこの道に進んだであろう。
5九飛図(指始図 再掲)
【イ】7七角
【ロ】9五歩 → 先手良し
【ハ】8八角 → 先手良し
【ニ】6八角 → 先手良し
【ホ】6八桂成 → 先手良し
【ヘ】6六歩 → 先手良し
【ト】5四香 → 先手良し
【チ】7七歩 → 先手良し
【リ】6二銀右 → 先手良し
以上のとおり、【ロ】9五歩 は、研究調査上は「先手良し」だが、もしも後手がこの手を指して来たら、その場合には「形勢不明」の道(変化9五歩図03)に進んだ可能性が高い。
実戦は、後手が【イ】7七角 を選んだ。これもまた「先手良し」で、【ロ】9五歩に比べれば先手がより戦いやすい。
つまり、我々は、「【ロ】9五歩 を逃した後手に助けられた」といえるかもしれない。
7七角図(指始図)
ともあれ、後手の≪ぬし≫は、△7七角 を指したのであった。
ここは ▲8九飛 が実戦の道。
もう一つ、「5八飛」も有力な変化なのでこれを確認しておきたい。
【変化5八飛】
「5八飛」(図)は9九角成と香車を取らせてしまうが、その代わり先手は飛車を5筋に置いて、攻め味を残している。
9九角成に、6一竜が好手になる(次の図)
変化5八飛図01
この6一竜は受けに利かすと同時に、攻めの準備になっていて、ねらい筋を言うと、9八金と受けて馬を引かせた後、5三飛成、同歩に、3一銀、同玉、4二金、同玉、5一銀、3一玉、4二金、2二玉、3二金、同玉、5二竜で、後手玉詰みというもの。
ただし、ここでの “6一竜の発見” は難しいことだと思われる。
さて、ここで後手6七歩や7四香なら、9八金と打って、先手良しのようだ。 9八金に4四馬なら、5四歩、4二銀、5二竜の攻めで先手勝てる。
だから、香車の持駒を生かして、後手は9五歩とする手が考えられる。
これには、8七玉(次の図)
変化5八飛図02
この図の最新ソフト(「水匠2/やねうら王」)評価値は -95。
しかし我々の “戦後研究” では、どうやら先手良しという結果になっている。その手順をこれから簡単に解説しておく。
ここで後手の手が広いため実戦でこれを読み切るのは難しい。しかし、7四香は、7七歩、7五金、7九金で、どうやら先手良し。6六歩や6七歩は、先ほど示した5三飛成、同歩、3一銀以下の寄せで先手勝ち。
よってここは6四香が後手の最善手とみる。
以下6五歩に、6六歩が後手の狙い。これなら、5三飛成には、8八馬、7六玉、7五香で、先手玉が先に詰まされてしまうというわけだ。
6四香、6五歩、6六歩まで後手の読み筋通りにすすめ、7八金と受ける(次の図)
変化5八飛図03
そこで6七歩成、同金、6六歩と攻めるのが後手のねらい筋なのだが、7六金、7五歩に、そこで5三飛成があって先手勝ちになる。
だから後手はここで1四歩とする。これで先手からの5三飛成の狙いは消えた。
しかし手番は先手にまわってきた。5四歩、4二銀、5二竜の攻めがある(次の図)
変化5八飛図04
ここで 3一銀 と 7七歩 が考えられる後手の手。
3一銀 には、1五歩がある。同歩なら、1三歩、同香、1二歩などの攻めで先手勝てる。
後手は5一歩とするが、かまわず1四歩として、5二歩に、1三銀(次の図)
変化5八飛図05
後手玉は詰んでいる。1三同香、同歩成、同桂、同香成、同玉、1四歩、同玉(2四玉なら3六桂)、1五香、同玉、5五飛(次の図)
変化5八飛図06
2五に合駒をすることになるが飛、銀、香、どれを合しても、2六金以下詰みとなる。
変化5八飛図07
戻って、7七歩 の変化。
これは7九金として(同金もあるところ)、6七歩成に、4二竜(後手玉への詰めろ)、3一香、5三歩成(次の図)
変化5八飛図08
こう進んでみると、先手の勝ちになっている。後手玉は “詰めろ”(3一竜、同玉、4二金、2二玉、3二金、同玉、4三と、同玉、3二銀、同玉、5二飛成以下)だし、5八とと飛車を取っても、4三とで、先手玉に詰みはないので、先手勝ちである。
このように、“戦後研究” においては、「5八飛」の変化は、どうやら先手良しとわかった。
しかし、「9九角成に6一飛で先手良し」という判断はあの段階では難しい(実際最新ソフトもわかっていない)
香車を一枚余分に取らせるのは、かなり怖い。
8九飛図
だから △7七角 に ▲8九飛(図)は、当然の一手ということになるだろう。実戦でも先手(終盤探検隊)は迷わずこの手を指した。
さて、後手の手番。後手は何を指してくるだろうか。
[P]5五角成、[Q]9五歩、[R]8八桂成、[S]6八桂成、[T]6八角成 の5つが考えられる。
実戦での後手(≪亜空間の主(ぬし)≫)の指し手は[T]6八角成 であったが、それ以外の変化でどうなるか確認しておこう。
変化5五角成図01
[P]5五角成(図)には、7七歩と指す。以下同馬、8七金、6七馬、7八歩、同馬、7九金(次の図)
変化5五角成図02
8九馬、同金で、飛車と馬の交換になったが、形勢は先手良し。
以下、変化の一例を示しておく。
4九飛に、6六角と打つ。4一竜~3四桂があるので8九飛成とは取れない。
4四歩に、4二歩(次の図)
変化5五角成図03
8九竜は、4一歩成で先手が勝つ。
よって4二同銀だが、4三歩がある。同銀直に、4二金(次の図)
変化5五角成図04
先手は持ち歩をすべて使って4筋から攻め立てた。
ここで3一香と受けるのなら、いったんは9八金として、次に4三金、同銀、4一竜がある。
後手としては、香車は9筋からの端攻めのために受けに使いたくない。なので2四歩とする。
4三金、8九竜、3二金、同玉、4三銀(次の図)
変化5五角成図05
4三同玉に、4一竜で、先手勝勢。
後手からの攻めの余裕を与えず、先手が攻め切った。
変化9五歩図01
[Q]9五歩(図)には、7八金と打つ。
対して、後手 (1)6八角成 と (2)4四角成 とがある。
変化9五歩図02
(1)6八角成(図)
これには6九金ともう一枚金を受けに投入する。5七馬なら7七歩だ。
馬を引かずに6七歩と頑張る手がある。それには、5一金(次の図)
変化9五歩図03
6九馬、同飛、6八歩成が後手の狙いの攻めだったが、4一金以下の先手の攻めのほうが早い。これで先手良しだ。
1四歩には、4一金、同銀-――そこで6八金上、同歩成と角を取って、4一竜とし、3二金に―――(次の図)
変化9五歩図04
1三銀(図)が鮮やかな寄せである。同香は1一角、同玉、1二銀、同玉、3二竜以下詰み。
よって1三同玉だが、3二竜で、先手の勝ち。
(なお、3二金に代えて3一金の受けには3四桂、同歩、3三銀の寄せがある)
変化9五歩図05
(2)4四角成(図)と、深く引いて角を成った場合(6六角成だと6七金打があるし、5五角成は後で先手5九飛が入る可能性がある)
以下7七歩に、6七歩(次の図)
変化9五歩図06
ここで7六歩なら7七香と打つつもり。以下8八金、6八歩成の変化は後手良し。
先手はしかたないので6九歩と打つ。これで飛車の活用は望めなくなったが‥‥
後手は7四香。これは7六歩なら同香だし、このままなら6八桂成、同歩、7七香成がある。
先手は5一金と、ここで攻め合いに出る(次の図)
変化9五歩図07
5一金(図)で、先手がよい。後手は駒がないので、適当な受けがない。
4二銀なら、5二金、3一銀、4二銀(歩でもよい)で、先手優勢だ。
変化9五歩図08
今の変化は 7四香 が攻めをあせった手だった。その手に代えて、9六歩(図)が修正案 。
以下、8七玉に、7五歩。これは6八桂成、同歩、5四馬という攻めを狙っている。香車を手にしているので、侮れない攻めである。
そこで5一金と攻め合うのはなくはないが、6八桂成、4一金、5四馬、7六桂、3四歩で、もつれる。
ここは先手の模様が良いところなので、安全に勝ちたい。
5六金が良い(次の図)
変化9五歩図09
5六金は、後手の指したい5四馬に対応している。6八桂成、同歩、5四馬なら、6五銀で受ける。
5五香なら、4六金とかわしておき、6八桂成、同歩、5四馬には、8八玉で大丈夫。後手が香車を使ったので8七香の攻めがないのである。
7四銀なら、5五歩と打って中央を征圧する。
5五歩を打たれては希望がないということで、後手は6四銀右とする。
それには、4五金打。馬の捕獲だ。以下4五同馬、同金、8八香、7九飛、8九金が予想される。先手は、4四歩(次の図)
変化9五歩図10
8九金で先手の飛車が捕まったが、4四歩(図)が攻めの急所。同歩に、4三銀が “決め手” である。4五歩なら、1一角、同玉、3二銀成だ。
4三同銀に、4一竜。そこで3一銀打なら(4三竜ではなく)3五桂と打つ。
4二銀打には―――(次の図)
変化9五歩図11
4四桂(図)で、先手勝勢(3一銀には4二角)
変化8八桂成図01
[R]8八桂成(図)は、コンピューター・ソフト的には(後手として)評価の低い手なのだが、実戦で先手番の立場としては読んでおけなければいけない変化。
8八同飛、同角成、同玉と進んで―――(次の図)
変化8八桂成図02(8八玉図)
これは後手の攻め駒が足らず、先手良しで間違いないが、実戦的には後手の手が広く、まだまだたいへん。この後を具体的に見ておこう。
〈ヤ〉2八飛なら、7八歩。
そこで7七歩なら、3四桂、同歩、5五角(王手飛車取り)がある。
よって2九飛成だが、5五角と打ち、4四歩に、4二歩(次の図)
変化8八桂成図03
ここでも、4筋のこの攻めが登場する。4二同銀、4三歩、同銀直、4二金、3一桂、3五桂と攻めていく。先手勝勢。
変化8八桂成図04
〈ユ〉3八飛には、6八歩(図)。 6八同飛成には7八金で先手が取れる。
7四香なら、6九金と受ける。以下6七歩に、4二歩、同銀、5四桂と攻めていって、先手が勝てる。
変化8八桂成図05
〈ヨ〉7七歩(図)にはどう対処するか。
いろいろあって迷うところだが、3四歩と攻めるのが良さそうだ。
以下3八飛に、9七玉。そして9五歩に、3三歩成(次の図)
変化8八桂成図06
3三同桂なら5六角と打って、3九(3六)飛成に、3四桂と打てる。3三同玉には1一角がある。
そして3三同飛成には、5五角、4四歩、7三角成、7八歩成、2五金(次の図)
変化8八桂成図07
2五金(図)と打って先手優勢。
7七と(先手玉詰めろ)が予想されるが、9五歩と取っておいて先手良し。この変化は先手玉がまだ安全ではないので油断は許されないが、しっかり指せば先手が勝てる。
なお、3九竜は、3四桂と打つ手があって無効である(3三玉なら、2二銀、4三玉、4二金以下後手玉詰み)
変化8八桂成図08
戻って、[S]8八桂成、同飛のときに、飛車を取らずに 9五歩(図)の変化がある。これにはどうするか。
ここでも、3四歩が急所の攻め(次の図)
変化8八桂成図09
以下7六歩、7八歩、9六歩、8七玉、9七歩成、同香、7四香に、6七金(次の図)
変化8八桂成図10
以下4四角成に、3三歩成、同馬、3五歩として、先手良し。
変化6八桂成図01
[S]6八桂成(図)は、4二歩といく。同銀に、「5一銀」と攻める(次の図)
変化6八桂成図02
5一同銀 に、同竜、3一銀、4二金と進む。以下4二同銀、同竜、3一金、1一銀、同玉、3一竜、2二銀、3二竜、3一香、4一竜、7八成桂(次の図)
変化6八桂成図03
ここで案外、難しい。3二金と行くのが正解だ。先手玉がまだ詰まないこの瞬間に攻め切るのだ。
3二同香に、1五桂(次の図)
変化6八桂成図04
2四金、3一金、同銀、同竜、2二金、4二銀、3四歩、8七金(次の図)
変化6八桂成図05
4四角成に、3三歩、同馬、同銀成、同香に、4二銀で、先手勝ち。
変化6八桂成図06
「5一銀」に 5三銀(図)の場合。
4二金、7八成桂、3一金打(次の図)
変化6八桂成図07
2四歩、3二金引、2三玉、2二金(3四玉なら4六金)、同玉、3二銀(次の図)
変化6八桂成図08
2三香は3一銀以下詰みなので、これを受けるには2三金しかないが、8四馬(2一金以下詰めろ)で、先手勝ちが確定する。
8九飛図
[P]5五角成 → 先手良し
[Q]9五歩 → 先手良し
[R]8八桂成 → 先手良し
[S]6八桂成 → 先手良し
[T]6八角成
実戦の進行は、[T]6八角成。
≪最終一番勝負 第78譜 指始図≫ 6八角成まで
△7七角に、▲8九飛、△6八角成 と進んだ。
ソフトの評価値は、「激指14」+297 「水匠2/やねうら王」 +667
先手良しになったとみて間違いないようである。
第79譜につづく
指し手 ▲8九飛 △6八角成
[あったためしがないわよ]
ねんねんころり アリスのひざに
ご馳走(ちそう)できるまでおねんねしましょ
ご馳走すんだらおどりにゆこう
赤と白の女王さまもアリスもみんな
「さあ、文句はわかったでしょ」赤の女王さまは、アリスのあいた肩に自分も頭をもたせかけると、「こんどはあんたがおしまいまでうたってちょうだい。あたしもねむくなってきちゃったから」次の瞬間には、女王は二人ともぐっすりと、大きないびきをかいてねむりこけていた。
「いったいどうすりゃいいのよ」アリスは途方にくれてあたりを見まわす。まず片方の頭がごろん、つづいてもう一方が、肩からすべりおちて、重石みたいにアリスのひざにのっかった。「いちどに二人の女王さまのねんねのお守りをしなきゃならないなんて、こんなことってぜったいあったためしがないわよ。そうだわ、イギリス史ぜんぶひっくりかえしたって――そもそも一度に二人も女王さまがいたことなんて、あったためしがないもの。ねえ、おきてよ、重いひとたち!」アリスはいらいらしていいつづけたけれど答えるのはおだやかないびきばかりだ。
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
女王になったアリスの両サイドに「赤の女王」と「白の女王」
最初に「白の女王」が眠たくなったといって、すると「赤の女王」がアリスに子守唄をうたってやれという。アリスが子守唄がわからないというと、「赤の女王」はそれならわたしがと唄い始めた。
そしてとうとう「赤の女王」も眠りに落ち、アリスの両サイドから肩にもたれかかってくる二人の「女王さま」。
「どうすりゃいいのよ」とアリス。
すでに何度も説明しているが、この両サイドの女王の正体は、黒の子猫(キティ)と白の子猫(名前がない)である。
<第78譜 先手良しの世界>
≪最終一番勝負 第78譜 指始図≫ 7七角まで
「亜空間戦争最終一番勝負」はここまで進んでいる。
今後手の ≪亜空間の主(ぬし)≫ は △7七角 と指してきた。
この手に代えて、【ロ】9五歩 の手を、コンピューター・ソフト(「激指14」、「水匠2/やねうら王」ともに)を、最善手として推してきている。
(【イ】7七角 は第2または第3候補手である)
[研究調査 【ロ】9五歩]
5九飛図
【イ】7七角 = 実戦の指し手
【ロ】9五歩
【ハ】8八角 → 先手良し
【ニ】6八角 → 先手良し
【ホ】6八桂成 → 先手良し
【ヘ】6六歩 → 先手良し
【ト】5四香 → 先手良し
【チ】7七歩 → 先手良し
【リ】6二銀右 → 先手良し
一手前のこの図は、前回の譜で、ここまでその調査結果を明らかにした。
結果を言うと、【イ】7七角、【ロ】9五歩、いずれの手も「先手良し」となる。
つまりこの「5九飛図」は、先手良しなのである。つまり我々終盤探検隊が選んできた道はまちがった道ではなかった、というのは確かである。
しかし、もしも後手が【ロ】9五歩 を選んでいたら、我々は「正解手順」を選べていただろうか?
9五歩図
5九飛に、【ロ】9五歩((図)の場合。
ここで「激指14」の第一候補手は(b)7七銀 で、以下6七歩で、ほぼ互角の勝負となる(この変化は後述する)
また(c)9五同歩 は、9六歩、同玉、8八桂成で、先手悪い。
“戦後研究調査” でわかったことだが、ここで(a)7八金 以下、はっきり「先手良し」となる手順がある(次の図)
変化9五歩図01
【ロ】9五歩には、(a)7八金(図)が最善手。
これで先手良しになるとすでに前譜の最後に述べている(解説はまだしていない)
これにはしかし、7七歩があり―――(次の図)
変化9五歩図X(宿題図)
「ここからどうやって勝つか?」というのが、我々が前譜の最後に出した「宿題」であった。
以下はその「宿題」の、「解答編」である。
「5三飛成、同歩、4二金」というのが考えられるが、それはいい線を行っているが、この場合はうまくいかない(次の図)
変化9五歩図X1
「5三飛成、同歩、4二金」に、2四歩(図)で後手良し。
9五歩が入っているので、4一竜、同銀、1五桂とすると、9六歩、同玉、9五飛、8七玉、8九飛から詰まされてしまうので、2四歩のこの場面で先手に勝てる手がない。
図で8四馬(同銀なら3一銀、2三玉、3五銀で先手勝ち)は、7八歩成で後手勝ちになる。
「5三飛成、同歩、4二金」では先手勝てない―――というわけで、7八金に7七歩とされたこの「宿題図」は先手の負けに思えるところだったが、その陰にかくれて「勝ち筋」は存在していたのだった。
3手一組のその正解手順は―――
変化9五歩図X2
正解は「5三飛成、同歩、5一竜」(図)である。
これで先手勝ちになるというのは、気づきづらいと思う(5一竜は心細い攻めに見える)
ここで2四歩や1四歩という上部脱出を狙う手に対しては、3一銀と打って、同銀なら1一銀で後手玉を挟撃で寄せられるのである。銀を一枚後手に渡しても先手玉は詰まないというのが、この寄せを成立させている。
変化9五歩図X4
というわけで、5一竜に、後手3一角(図)という受けになるのだが、それには4二銀とし、以下同角、同竜、3一香(3一銀は1一銀、同玉、3一竜、2二銀、4二銀で先手勝ち)、5一銀(次の図)
変化9五歩図X5
これは先手勝ちになっている。
2四歩としても、5六角がある。1四歩には、3一竜(同玉は4二金以下詰み)、1三玉、4六角、2四歩、3二竜。
変化9五歩図X6
実は、5一竜に、3四歩(図)という手が後手最強の応手かもしれない。
対して(2四歩や1四歩の場合と同じように)3一銀、同玉、1一銀の寄せは、この場合は成立しないのだ。それは9六歩、同玉、9五歩、8七玉、8九飛、7六玉、7四香、6七玉、6九飛成、6八金打、6六歩、5六玉、5九竜、5七歩と玉を右辺に追われたときに、3三角の攻防手が生じて後手が良しになるから。
しかし、ここで正着を指せば、先手が勝てる。
8四馬が正着手である。同銀に、後手玉に詰みがある。詰手順は、3一銀、同玉、4二銀、2二玉、3三金(次の図)
変化9五歩図X7
3三同桂に、打った銀をすぐに捨てる3一銀不成が面白い手。同玉に、4二金と打ち換えて、2一玉、3二金、同玉、2一銀(次の図)
変化9五歩図X8
2一同玉に、4一竜以下、“詰み”
以上の解説の通り、「9五歩」には、「7八金、7七歩、5三飛成、同歩、5一竜」で先手が勝てる。
9五歩図(再掲)
ソフト「激指」(激指13、14)を相棒として闘っていた我々終盤探検隊は、もしも後手の ≪亜空間の主(ぬし)≫ が、9五歩とやってきていたら、「7八金、7七歩、5三飛成、同歩、5一竜」の勝ち手順を発見できただろうか? 判ってみれば明快な手順だが、最新ソフトでも見逃しそうなこの手順を「激指」を使って発見できたかどうか疑わしい。
そもそもわれらが「激指14」は、ここで (b)7七銀 を最善手と見ていた(評価値は+183)
その手でどうなるか、少しその先を見ておこう。
変化9五歩図02
(b)7七銀(図)には、6七歩で、形勢はほぼ互角。
先手は3四歩。同歩なら、3三歩、同桂、7六銀、6八歩成、2六桂で、先手良し。
よって、6八歩成、3三歩成と進む(次の図)
変化9五歩図03
同銀は、4一竜で、先手良し。
しかし同桂と同玉は、どちらも難解な形勢になる(最新ソフトのこの図の評価値は -91)
(b)7七銀 は、このような勝負になる。
後手の ≪ぬし≫ が、【ロ】9五歩 を指していたら、おそらくこの道に進んだであろう。
5九飛図(指始図 再掲)
【イ】7七角
【ロ】9五歩 → 先手良し
【ハ】8八角 → 先手良し
【ニ】6八角 → 先手良し
【ホ】6八桂成 → 先手良し
【ヘ】6六歩 → 先手良し
【ト】5四香 → 先手良し
【チ】7七歩 → 先手良し
【リ】6二銀右 → 先手良し
以上のとおり、【ロ】9五歩 は、研究調査上は「先手良し」だが、もしも後手がこの手を指して来たら、その場合には「形勢不明」の道(変化9五歩図03)に進んだ可能性が高い。
実戦は、後手が【イ】7七角 を選んだ。これもまた「先手良し」で、【ロ】9五歩に比べれば先手がより戦いやすい。
つまり、我々は、「【ロ】9五歩 を逃した後手に助けられた」といえるかもしれない。
7七角図(指始図)
ともあれ、後手の≪ぬし≫は、△7七角 を指したのであった。
ここは ▲8九飛 が実戦の道。
もう一つ、「5八飛」も有力な変化なのでこれを確認しておきたい。
【変化5八飛】
「5八飛」(図)は9九角成と香車を取らせてしまうが、その代わり先手は飛車を5筋に置いて、攻め味を残している。
9九角成に、6一竜が好手になる(次の図)
変化5八飛図01
この6一竜は受けに利かすと同時に、攻めの準備になっていて、ねらい筋を言うと、9八金と受けて馬を引かせた後、5三飛成、同歩に、3一銀、同玉、4二金、同玉、5一銀、3一玉、4二金、2二玉、3二金、同玉、5二竜で、後手玉詰みというもの。
ただし、ここでの “6一竜の発見” は難しいことだと思われる。
さて、ここで後手6七歩や7四香なら、9八金と打って、先手良しのようだ。 9八金に4四馬なら、5四歩、4二銀、5二竜の攻めで先手勝てる。
だから、香車の持駒を生かして、後手は9五歩とする手が考えられる。
これには、8七玉(次の図)
変化5八飛図02
この図の最新ソフト(「水匠2/やねうら王」)評価値は -95。
しかし我々の “戦後研究” では、どうやら先手良しという結果になっている。その手順をこれから簡単に解説しておく。
ここで後手の手が広いため実戦でこれを読み切るのは難しい。しかし、7四香は、7七歩、7五金、7九金で、どうやら先手良し。6六歩や6七歩は、先ほど示した5三飛成、同歩、3一銀以下の寄せで先手勝ち。
よってここは6四香が後手の最善手とみる。
以下6五歩に、6六歩が後手の狙い。これなら、5三飛成には、8八馬、7六玉、7五香で、先手玉が先に詰まされてしまうというわけだ。
6四香、6五歩、6六歩まで後手の読み筋通りにすすめ、7八金と受ける(次の図)
変化5八飛図03
そこで6七歩成、同金、6六歩と攻めるのが後手のねらい筋なのだが、7六金、7五歩に、そこで5三飛成があって先手勝ちになる。
だから後手はここで1四歩とする。これで先手からの5三飛成の狙いは消えた。
しかし手番は先手にまわってきた。5四歩、4二銀、5二竜の攻めがある(次の図)
変化5八飛図04
ここで 3一銀 と 7七歩 が考えられる後手の手。
3一銀 には、1五歩がある。同歩なら、1三歩、同香、1二歩などの攻めで先手勝てる。
後手は5一歩とするが、かまわず1四歩として、5二歩に、1三銀(次の図)
変化5八飛図05
後手玉は詰んでいる。1三同香、同歩成、同桂、同香成、同玉、1四歩、同玉(2四玉なら3六桂)、1五香、同玉、5五飛(次の図)
変化5八飛図06
2五に合駒をすることになるが飛、銀、香、どれを合しても、2六金以下詰みとなる。
変化5八飛図07
戻って、7七歩 の変化。
これは7九金として(同金もあるところ)、6七歩成に、4二竜(後手玉への詰めろ)、3一香、5三歩成(次の図)
変化5八飛図08
こう進んでみると、先手の勝ちになっている。後手玉は “詰めろ”(3一竜、同玉、4二金、2二玉、3二金、同玉、4三と、同玉、3二銀、同玉、5二飛成以下)だし、5八とと飛車を取っても、4三とで、先手玉に詰みはないので、先手勝ちである。
このように、“戦後研究” においては、「5八飛」の変化は、どうやら先手良しとわかった。
しかし、「9九角成に6一飛で先手良し」という判断はあの段階では難しい(実際最新ソフトもわかっていない)
香車を一枚余分に取らせるのは、かなり怖い。
8九飛図
だから △7七角 に ▲8九飛(図)は、当然の一手ということになるだろう。実戦でも先手(終盤探検隊)は迷わずこの手を指した。
さて、後手の手番。後手は何を指してくるだろうか。
[P]5五角成、[Q]9五歩、[R]8八桂成、[S]6八桂成、[T]6八角成 の5つが考えられる。
実戦での後手(≪亜空間の主(ぬし)≫)の指し手は[T]6八角成 であったが、それ以外の変化でどうなるか確認しておこう。
変化5五角成図01
[P]5五角成(図)には、7七歩と指す。以下同馬、8七金、6七馬、7八歩、同馬、7九金(次の図)
変化5五角成図02
8九馬、同金で、飛車と馬の交換になったが、形勢は先手良し。
以下、変化の一例を示しておく。
4九飛に、6六角と打つ。4一竜~3四桂があるので8九飛成とは取れない。
4四歩に、4二歩(次の図)
変化5五角成図03
8九竜は、4一歩成で先手が勝つ。
よって4二同銀だが、4三歩がある。同銀直に、4二金(次の図)
変化5五角成図04
先手は持ち歩をすべて使って4筋から攻め立てた。
ここで3一香と受けるのなら、いったんは9八金として、次に4三金、同銀、4一竜がある。
後手としては、香車は9筋からの端攻めのために受けに使いたくない。なので2四歩とする。
4三金、8九竜、3二金、同玉、4三銀(次の図)
変化5五角成図05
4三同玉に、4一竜で、先手勝勢。
後手からの攻めの余裕を与えず、先手が攻め切った。
変化9五歩図01
[Q]9五歩(図)には、7八金と打つ。
対して、後手 (1)6八角成 と (2)4四角成 とがある。
変化9五歩図02
(1)6八角成(図)
これには6九金ともう一枚金を受けに投入する。5七馬なら7七歩だ。
馬を引かずに6七歩と頑張る手がある。それには、5一金(次の図)
変化9五歩図03
6九馬、同飛、6八歩成が後手の狙いの攻めだったが、4一金以下の先手の攻めのほうが早い。これで先手良しだ。
1四歩には、4一金、同銀-――そこで6八金上、同歩成と角を取って、4一竜とし、3二金に―――(次の図)
変化9五歩図04
1三銀(図)が鮮やかな寄せである。同香は1一角、同玉、1二銀、同玉、3二竜以下詰み。
よって1三同玉だが、3二竜で、先手の勝ち。
(なお、3二金に代えて3一金の受けには3四桂、同歩、3三銀の寄せがある)
変化9五歩図05
(2)4四角成(図)と、深く引いて角を成った場合(6六角成だと6七金打があるし、5五角成は後で先手5九飛が入る可能性がある)
以下7七歩に、6七歩(次の図)
変化9五歩図06
ここで7六歩なら7七香と打つつもり。以下8八金、6八歩成の変化は後手良し。
先手はしかたないので6九歩と打つ。これで飛車の活用は望めなくなったが‥‥
後手は7四香。これは7六歩なら同香だし、このままなら6八桂成、同歩、7七香成がある。
先手は5一金と、ここで攻め合いに出る(次の図)
変化9五歩図07
5一金(図)で、先手がよい。後手は駒がないので、適当な受けがない。
4二銀なら、5二金、3一銀、4二銀(歩でもよい)で、先手優勢だ。
変化9五歩図08
今の変化は 7四香 が攻めをあせった手だった。その手に代えて、9六歩(図)が修正案 。
以下、8七玉に、7五歩。これは6八桂成、同歩、5四馬という攻めを狙っている。香車を手にしているので、侮れない攻めである。
そこで5一金と攻め合うのはなくはないが、6八桂成、4一金、5四馬、7六桂、3四歩で、もつれる。
ここは先手の模様が良いところなので、安全に勝ちたい。
5六金が良い(次の図)
変化9五歩図09
5六金は、後手の指したい5四馬に対応している。6八桂成、同歩、5四馬なら、6五銀で受ける。
5五香なら、4六金とかわしておき、6八桂成、同歩、5四馬には、8八玉で大丈夫。後手が香車を使ったので8七香の攻めがないのである。
7四銀なら、5五歩と打って中央を征圧する。
5五歩を打たれては希望がないということで、後手は6四銀右とする。
それには、4五金打。馬の捕獲だ。以下4五同馬、同金、8八香、7九飛、8九金が予想される。先手は、4四歩(次の図)
変化9五歩図10
8九金で先手の飛車が捕まったが、4四歩(図)が攻めの急所。同歩に、4三銀が “決め手” である。4五歩なら、1一角、同玉、3二銀成だ。
4三同銀に、4一竜。そこで3一銀打なら(4三竜ではなく)3五桂と打つ。
4二銀打には―――(次の図)
変化9五歩図11
4四桂(図)で、先手勝勢(3一銀には4二角)
変化8八桂成図01
[R]8八桂成(図)は、コンピューター・ソフト的には(後手として)評価の低い手なのだが、実戦で先手番の立場としては読んでおけなければいけない変化。
8八同飛、同角成、同玉と進んで―――(次の図)
変化8八桂成図02(8八玉図)
これは後手の攻め駒が足らず、先手良しで間違いないが、実戦的には後手の手が広く、まだまだたいへん。この後を具体的に見ておこう。
〈ヤ〉2八飛なら、7八歩。
そこで7七歩なら、3四桂、同歩、5五角(王手飛車取り)がある。
よって2九飛成だが、5五角と打ち、4四歩に、4二歩(次の図)
変化8八桂成図03
ここでも、4筋のこの攻めが登場する。4二同銀、4三歩、同銀直、4二金、3一桂、3五桂と攻めていく。先手勝勢。
変化8八桂成図04
〈ユ〉3八飛には、6八歩(図)。 6八同飛成には7八金で先手が取れる。
7四香なら、6九金と受ける。以下6七歩に、4二歩、同銀、5四桂と攻めていって、先手が勝てる。
変化8八桂成図05
〈ヨ〉7七歩(図)にはどう対処するか。
いろいろあって迷うところだが、3四歩と攻めるのが良さそうだ。
以下3八飛に、9七玉。そして9五歩に、3三歩成(次の図)
変化8八桂成図06
3三同桂なら5六角と打って、3九(3六)飛成に、3四桂と打てる。3三同玉には1一角がある。
そして3三同飛成には、5五角、4四歩、7三角成、7八歩成、2五金(次の図)
変化8八桂成図07
2五金(図)と打って先手優勢。
7七と(先手玉詰めろ)が予想されるが、9五歩と取っておいて先手良し。この変化は先手玉がまだ安全ではないので油断は許されないが、しっかり指せば先手が勝てる。
なお、3九竜は、3四桂と打つ手があって無効である(3三玉なら、2二銀、4三玉、4二金以下後手玉詰み)
変化8八桂成図08
戻って、[S]8八桂成、同飛のときに、飛車を取らずに 9五歩(図)の変化がある。これにはどうするか。
ここでも、3四歩が急所の攻め(次の図)
変化8八桂成図09
以下7六歩、7八歩、9六歩、8七玉、9七歩成、同香、7四香に、6七金(次の図)
変化8八桂成図10
以下4四角成に、3三歩成、同馬、3五歩として、先手良し。
変化6八桂成図01
[S]6八桂成(図)は、4二歩といく。同銀に、「5一銀」と攻める(次の図)
変化6八桂成図02
5一同銀 に、同竜、3一銀、4二金と進む。以下4二同銀、同竜、3一金、1一銀、同玉、3一竜、2二銀、3二竜、3一香、4一竜、7八成桂(次の図)
変化6八桂成図03
ここで案外、難しい。3二金と行くのが正解だ。先手玉がまだ詰まないこの瞬間に攻め切るのだ。
3二同香に、1五桂(次の図)
変化6八桂成図04
2四金、3一金、同銀、同竜、2二金、4二銀、3四歩、8七金(次の図)
変化6八桂成図05
4四角成に、3三歩、同馬、同銀成、同香に、4二銀で、先手勝ち。
変化6八桂成図06
「5一銀」に 5三銀(図)の場合。
4二金、7八成桂、3一金打(次の図)
変化6八桂成図07
2四歩、3二金引、2三玉、2二金(3四玉なら4六金)、同玉、3二銀(次の図)
変化6八桂成図08
2三香は3一銀以下詰みなので、これを受けるには2三金しかないが、8四馬(2一金以下詰めろ)で、先手勝ちが確定する。
8九飛図
[P]5五角成 → 先手良し
[Q]9五歩 → 先手良し
[R]8八桂成 → 先手良し
[S]6八桂成 → 先手良し
[T]6八角成
実戦の進行は、[T]6八角成。
≪最終一番勝負 第78譜 指始図≫ 6八角成まで
△7七角に、▲8九飛、△6八角成 と進んだ。
ソフトの評価値は、「激指14」+297 「水匠2/やねうら王」 +667
先手良しになったとみて間違いないようである。
第79譜につづく