はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

次の一手 問7

2013年10月30日 | 次の一手
 「次の一手 問7 問題図」です。
 先手を勝ちにみちびく「次の一手」は何でしょうか。


 前問「問6」の類似問題。

 先手玉に掛かっている“詰めろ”(7手詰め)をお忘れなく。 



【以下、ヒントとして】

 「問6」と違う点は次の2点。
  
  1.後手の4筋の歩が「4四歩」。 (「問6」では「4三歩」)
  2.先手の1筋の歩が「1六歩」。 (「問6」では「1七歩」)

 将棋は少し違うと、結論が変わることが多いですが、変わらない場合もある。
 この場合はどうでしょう。


 
 前問「問6」の答えは、「3四桂」でしたが、この「問7」ではその手はどうなのか。
 ちょっと考えてみましょうか。


 この場合も、前問と同じく、これは3四同歩と後手は取るしかない。
 玉が逃げると詰んでしまうことを確認してください。(この図から5手詰めです。)


 3四桂、同歩に、4二角と打つ。
 前問で正解だったこの順、さて、今回もこれで先手が勝てるのかどうか。

 この4二角は、やはり3三銀(または金)からの“詰めろ”になっていますね。つまりこの手は、先手玉に掛かっている7手詰の“詰み”を防いでいますので、“詰めろ逃れの詰めろ”というやつです。
 しかしだからといって、これが正解という保証はどこにもない。

 4二角に、後手はどう指すでしょうか。3三銀からの“詰めろ”を逃れる必要がありますが、案外、手がない。
 後手の応手は次の2つくらいしか考えられません。
 「1二玉」と、「4一桂」です。 (前問では4四角がありましたが、今回はそれはないですね)

 
 「1二玉」に対しては、前問「問6」の解答編で示した通り、先手が勝てます。
1二玉の変化
 3二銀と打つのがよく、2二銀の受けに、2一銀不成、同玉、2四桂。

1二玉の変化
 これで先手の勝ちが確定します。
 (2三銀打なら3三桂成、同銀、同角成で、後手の持駒が「角桂桂桂」なので、先手玉の7五角以下の“7手詰の詰めろ”もなくなっている。)

 よって、問題の焦点は「4一桂」以下の変化に絞られます。

<課題図>
 4二角の“詰めろ”に対し、後手が「4一桂」と受けた局面。
 これを先手が攻め切るか、後手が受け切るか。そういう問題です。
 この図を<課題図>としましょう。

 この<課題図>で、先手はやはり“詰めろ”(または王手)で迫らなければいけません。
 するとここでの候補手は次の3つ。
  (a)3一銀
  (b)4三銀
  (c)6三成香

  (4三銀、それから6三成香が、それぞれ“詰めろ”になっていることを確認してください。なお、9一金は詰めろになっていないので先手負ける。)

 このうちのどれかの手で、先手は勝てるかどうか。
 もしも<課題図>が「先手勝ち」となれば、やはりこの「問7」の答えも、「3四桂、同歩、4二角」が正解手順となります。
 しかしそうでない場合、つまり先手が「勝ちきれない」となれば、別の手を検討する必要があります。

 自玉の“詰み”にも気をつけないといけませんね。
 この問題図では(前問でも同じですが)、後手の現状の「角銀桂」の持ち駒では、先手玉は8八竜とされても詰みません。桂馬が一枚増えて「角銀桂桂」でも詰みません。
 しかし、「角角桂」となった時は8八竜~6六角から詰む、ということを頭に入れておいてください。




【ここからは、おまけの話】

 3四桂、同歩、4二角、1二玉と進んだ時、「3二銀で先手勝ち」と書きました。それが僕の結論ですが、それ以外の有力手に触れておきます。
 1二玉に、「3三桂成、同桂、3一角成」という手です。


 先手玉は、後手の持駒が「角銀桂桂桂」ではまだ詰みはないし、後手は金を持っていないのであちらは“受けなし”に見えます。
 単に3一角成だと2二銀とはじかれるのですが、3三桂成、同桂を入れることで、今度は2二銀にも2一銀~3二馬で詰みますね。なかなか気の利いた手順に思える。
 ところがこの図は受けがあって後手が勝ちとなる。図で5三角が鮮やかな返し技。


 5三角、同馬、8五桂、8六玉、6六銀。
 5三角は“王手”なので取るしかない。


 後手玉は詰まず、先手玉は“必至”になっています。


 後手が「1二玉」の時に、「やった、3三桂成、同桂、3一角成で勝ちだ!」などと思ったら、すってんころりんと負けになるというお話でした。 (僕自身が最初、そう思ったのでした。)
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次の一手 問6 答えあわせ

2013年10月28日 | 次の一手
                  「次の一手 問6 問題図」


 「次の一手 問6」の解答編です。次の順に解説します。

  〔1〕1二金
  〔2〕6八金打
  〔3〕8六銀 (次善手)
  〔4〕7七桂 (第3有力手)
  〔5〕4二角
  〔6〕3四桂 (正解手)

 正解は、「3四桂」 でした。

 「問題図」の先手玉は、ヒントにあった通り、7手詰の“詰めろ”が掛かっています。
 たとえば先手が「問題図」で、4一角と指したとしましょう。
 すると後手から7五角という手が飛んできます。

 詰み筋は、7五角(図)、同歩、8五桂、8六玉、9七銀、同銀、7七竜。

 その“詰めろ”を受けるか、または攻めながら“詰めろ”を解除するかです。
 この問題図の場合、攻めの取っ掛かりのとぼしい後手玉をどう攻略するか、それが問題です。


〔1〕1二金

 まず、「1二金」から。これは見るからにダメそうな筋ですが、まあ、やってみましょう。

1二金図
 1二金、同玉、2四桂、2二玉、2三銀、同玉、1二角、2四玉、7八角成。

1二金図
 こうやって、敵の攻め駒の「竜」を素抜くのがねらいです。実現しましたが、しかし強引に駒を次々使ったので、後手の持ち駒が潤沢になりました。
 この図から、8五桂、8六玉、7四桂、7五玉、6四銀打から、金を持っているので詰み。
 8六玉で、9八玉と逃げるのが正しいでしょうが、それも3四角からつくった馬を消された後に9七銀から攻められて、先手が悪い。
 先手、これは負けです。




〔2〕6八金打

 「6八金打」と、7七の地点をがっちり受けるのはどうなるか。

6八金打図
 「6八金打」には、4二角と打たれて先手は困ります。7五で受けるのは、何を打ってもそれを同角と取られて先手は詰んでしまう。6四に駒を打って受けるしかないが、それも8五桂、8六玉、6四銀で、受けがありません。

 

〔3〕8六銀

 この「8六銀」は有力。先手良しにはならないけれど、後手がすぐ良くするのも難しい。ということで、これは“次善手”とします。

8六銀図1
 やってみると、後手の攻めがなかなかむつかしいです。9五歩が筋ですが、この場合、9一金と根っこの香車を取られるので、「後手が優勢」とはいえ、入玉されるのが怖い。逆転の可能性が生まれてくる。
 後手の攻め、何が一番良いか、と、僕が(「激指」と相談しながら)考えたのは次の手順。

8六銀図2
 「8六銀」に、6六角、7七桂、9五桂。
 これが良いのではないかと思います。

 〔3〕8六銀も「後手優勢」は確かと思います。よって、「次の一手」の正解手にはならない。



〔4〕7七桂

 この手は、やはり受けるだけの手ですが、なかなかしっかりした手で、「後手優勢」ですが、後手もうまく指さないと逆転する。
 ここでは、後手の立場に立って、「どう攻めるか」を勉強します。

7七桂図1
 「7七桂」に対して、“本筋”は3一角と、この筋に角を打つ手のようです。しかしこれも、まだむつかしいところがある。「激指」と格闘しつつ僕は“華麗な攻め筋”を見つけたので、それをここで紹介します。
 この図は、「7七桂」に、6六角と後手が打ったところ。これは8五桂からの“詰めろ”になっています。
 だから先手は手が抜けません。8六銀と受けます。
 そこで7七角成と行く!
 同銀上(同銀引には、8五桂、8六玉、6六銀打として、後手の勝ち。)、8五桂、同銀、7七竜。
 で、次の図。
7七桂図2
 ここからの応酬が見ものです。
 先手1三桂成。後手これを同玉。(同桂は1四桂から詰む。)
 そこで3一角と王手をしながら自陣に利かす。後手は2二銀。
 先手9九角。今度は8八を受けながら、竜を攻める。
 そこで後手、(用意の?)秘手“9三桂”。

7七桂図3
 これで後手が優勢になるというのが凄い。
 ここ、竜を(5七竜のように)逃げるのは、1四金、同玉、2二角成で、後手、負けそうだ。
 図(9三桂)以下は、7七角、8五桂、8六玉、3一銀、7五玉、7三銀(必至)となって、「後手の勝ち」となる。

 どうです。なかなかの“光速の寄せ”だったでしょう!



〔5〕4二角

4二角図
 では、「問題図」での“7手詰め”を受けるということで、「4二角」ならどうか。この筋に後手から角を打たれると厳しいので、先に打つ。この角は攻めも視野に入れている。
 
 しかしこれは、後手玉の“詰めろ”にまではなっていないので、はっきり届かない。

 図から、やはり、8五桂、8六玉、6六銀で、先手玉は“受けなし”。 あっさり負けになる。



〔6〕3四桂

 そうして、最後に、正解手の登場です。「3四桂」、これが正解。

正解手3四桂図1
 「3四桂」を取らないで2三玉と逃げるのは、1二角から詰みますね。
 だから後手は、3四同歩ですが、そこで4二角と打つのがねらいです。
 「4二角」に“活”を入れたのが、「3四桂」ということです。

正解手3四桂図2
 “3四歩”と、3三の地点をこじ開けたので、4二角で“詰めろ”になっています。これが3四桂打ちのねらいでした。3三銀以下の7手詰めですね。


 けれども、ほんとうに難しいのは、実はこれから先。この3三銀からの後手の“詰み”を防がれたあと、攻めが続くのか。
 後手はこれをどう受けるでしょう?
 4一桂や、4四銀という受けなら、3一銀、2三玉、2二金、1四玉と追って、そこで1六歩とすれば、先手玉が詰まないので勝ちです。
 先手玉には8八竜以下の詰み筋がありますが、後手の持ち駒が「角銀桂桂」では、まだ大丈夫です。(ギリギリですが。)

 ここで、後手の有力手は、次の2つ。
  (ア)1二玉
  (イ)4四角


1二玉図1
 まず「(ア)1二玉」から見ていきます。これは「激指」が第一候補に揚げている手なのですが、「米長玉」ですね。相手の手を見て、次の手を考えようという戦術です。「さあ、正解が指せるかな?」と言われているような感じ。
 先手としては、駒を渡さず“詰めろ”を掛けなければなりません。詰めろでない攻めは、即、負けです。
 ここは正着が2つあります。より良いのは、9一金と香車を取る手。これが“詰めろ”になっていることが重要です。香車を取れば、攻め筋も広がって、また、後手から8八竜~6六角こられたときの「合駒」として使えます。
 ただ、後手のこの「1二玉」に対しては、この場合、香車を取らないでも攻め切れます。それを紹介しておきます。

1二玉図2
 3二銀とすれば、この後手玉は攻略できる。
 この銀は、次に2二金、同玉、3一角成、1二玉、2一馬までの“詰み”を狙っています。
 よって、後手は受けなければいけない。2二銀(図)と受けるのが最善。(2二歩なら、3一角成。)
 これで次の攻めがあるかだが――、あるのです。
 2一銀不成、同玉、2四桂

1二玉図3
 なんと、これで後手玉は“ほとんど必至”。 2三銀打と受けても、3二金から詰みます。
 2三角なら詰みはないです。しかし3三桂不成、同銀、同角成で、その場面はこんどこそ本当に“必至”です。

 
 ということで、後手「(ア)1二玉」の結論は先手勝ちとなります。「3二銀」で勝てますが、実戦では「9一金」で香車を補充しながら攻める指し方が堅実でしょう。

 

4四角図1
 1二玉ではなく、「(イ)4四角」と後手が受けるのはどうでしょうか。
 これには、「金銀」の持ち駒だけでは“詰めろ”を掛けるのはむつかしいので、9一金と香車を取る手が正しい。もちろんこの手も“詰めろ”になっていなければ指せない。大丈夫、その局面は“詰み”があります。(この詰みは後で考えましょう。)
 「4四角」に、9一金。そこで後手の手番です。
 ところで、4四角は、受け一方の手ではなく、攻めも狙っていて油断がならない手なのです。すなわち、8八竜、同玉、6四銀という筋ですが、こうなると先手玉は詰んでしまっています。
 しかし、8八竜には、8六玉と逃走すれば大丈夫です。(さらに7七竜にも、7五玉と逃げる。) 
 8六玉のとき、そこで仮に後手が、7四桂、7五玉、7三銀と指したとしましょう。
4四角図2
 するとこれで先手玉は“必至”になりました。しかし、敵玉を詰めれば先手が勝ちですね。(つまりこれは後手の失敗例。)
 この後手玉は先ほども申した通り“詰んでいる”のですが、これを「本日の詰将棋」として、記事の末尾にピックアップしておきます。


4四角図3
 さて、「4四角、9一金」と進んだところまで局面を戻して、後手はどう受けるでしょうか。
 2三歩、2三銀、1二玉、3一桂、それから3二玉という候補手が考えられます。

 

4四角図4
 2三歩には、3三桂成、同角、3一銀、1二玉、3三角成。
 2三銀も同じ。


4四角図5
 ここでの1二玉には、やはり3二銀として、2二銀に、この場合は2四香と攻める。以下、2三歩に、3三桂成が華麗な決め手。これで先手勝てる。


4四角図6
 3一桂が手ごわいが、これには2四香と打つ。2三歩に、同香成。(図)
 この2四香~2三香成は、もったいない感じなのでなかなか指せないと思う。けれどこれしか勝ち筋はなさそうです。(2四香に3二玉なら、4一銀、同玉、5一角成で詰む。)
 これを同桂なら、3三桂成~3一銀という筋があって寄り。だから後手は、2三同玉。(ここで3一角成は、“詰めろ”になっていないので先手負け。)
 そこで2四金と打って、2二玉に3三銀。
4四角図7
 これで先手が勝ち。以下、3三同桂、同桂成、2一玉、1三金となって、先手玉に詰みがないので勝ち。図の3三銀に、1二玉なら3一角成で良い。
 気をつけるべきは、2四金と打つところ。ここで先に銀を使って金銀が逆になると逆転負けになる。その場合3三金と打ち込んだ金が相手の手に渡るので、一手あいた時8八竜、8六玉、8五金で詰んでしまうのです。


4四角図8
 3二玉とこちらに玉を寄る手もある。(図)
 先手は2四角成とする。(5一角成では“詰めろ”にならないので負けになる)
 この後、後手は2三歩と、2三銀とが想定される。
4四角図9
 2三歩なら、3三香。

4四角図10
 2三銀なら、4一銀で寄りである。
 2二玉に、2三馬、同玉、3二銀以下詰み。


 以上で解説終了。



 正解手の3四桂から4二角なら先手勝ち。あとの手では負けになります。




 【ちょっとおまけで、おもしろい変化を。】
 「問題図」から3四桂、同歩、4二角、1二玉に、そこで3一銀という攻めでは、先手負けてしまうのですが、その3一銀には、1一角という後手のかっこいい手でやられます。
 それを紹介したい。
おまけ図1
 これです。
 これで先手は攻めあぐむ。後手玉に“詰めろ”がかからない。(ここではもう9一金の香取りは“詰めろ”にならない。)
 そこで先手が7九金といったん受けにまわって――
 7九金、8五桂、9八玉、3八竜、4九飛、6七桂、4八金、7九桂成、同銀、6四銀。
おまけ図2
 ほら! 1一角の利きが通って、先手玉は9九金までの“詰めろ”。
 これを3三桂打とその角の利きを遮断しても、4九竜がまた“詰めろ”で、後手の勝ち。


 
 ひとつの局面にこんなにいろいろな凄い手が潜んでいるんですねえ。凄いわ、将棋。




【本日の詰将棋トレーニング】

 「問題図」から、3四桂、同歩、4二角、4四角、9一金と進んだ時の局面です。後手が受けない場合は詰みます。19手詰め。(ただし、駒余り)

 この詰将棋の答えはコメント欄に後で書いておきます。
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次の一手 問6

2013年10月26日 | 次の一手
 【ヒント】
 先手玉には“詰めろ”が掛かっています。(7手詰めです。)
 まず、その詰みを読んでください。

 また、単純な受けだけの手では、8五桂、8六玉、6六銀などとなって、“受けなし”に追い込まれる。ゆるい攻めでも同じ。

 それと、今は大丈夫ですが、駒を渡しすぎたり、条件がそろうと、8八竜からの詰みが生じます。「8八竜、同玉、7七銀、同玉、6六角」という筋を後手はねらっています。


 先手大変そうですが、正しく指せれば、勝てます。

 さあ、正解手は?




 解答編は二日後の予定。
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次の一手 問5  答えあわせ

2013年10月23日 | 次の一手
                         次の一手 問5  問題図


 正解手は、「4二角」でした。

 それ以外の手では、先手不利になります。
 「4七飛」や「7五飛」では、3八銀で後手優勢。(「次の一手 問4」の解答編を参照ください。)
 また、「問4」では正解手だった4二飛成は、この図では逆に後手優勢 となります。
 その手順は、4二飛成、同銀、同金、1二飛(下の図)。

4二飛成からの図
 「問4」の場合はここで3一角(詰めろ)で先手良しだったのですが、この「問5」では、3一角は、4二飛、同角成と「金」を取られ、その瞬間、先手玉、2九竜以下詰んでしまいます。「金」が質駒になっているのが「問4」の問題図と今回の問題図との相違点。
 そうかといって、ここで3一角以外の有効手もなく、ここでは後手の勝ちの目しか出てきません。よって、「4二飛成」は不正解。




4二角図(正解手)

 さて、それでは正解手「4二角」の意味を解説します。

 「4二角」と打つ手に、後手が同銀と取るのは、同飛成なら、2九竜から先手玉が詰んでしまうのですが、4二同金に、3二角という手があって、同玉、4二飛成となって、これは逆に後手玉が詰む。したがって「4二角」は後手取れないのですが、では、他にどういう応手があるでしょうか。(4五桂と飛車を取りたいが、3三金から詰んでしまう。)
 考えられる後手の応手は次の5つ。

  (ア)3八銀(詰めろ)
  (イ)3八金(詰めろ)
  (ウ)2二銀打
  (エ)2二銀
  (オ)5三銀(詰めろ)

 順に考えていきましょう。


 まず、(ア) 3八銀 (詰めろ) から。

3八銀の変化図1
 さて、先手はどう指すか。
 ここで2つの攻め方があることをまず知っておいてください。
 〔A〕3三角成、同玉、4二角
 〔B〕3三角成、同玉、2五桂、同歩、4二角
 この2つです。

 (ア)3八銀に対しては、〔A〕の攻めでは失敗します。なぜなのかを確認しておきます。
 3三角成、同玉、4二角、2三玉、3三金、1二玉、3九桂。

3八銀の変化 失敗の図1
 〔A〕の攻めでは後手玉は詰まないので、いったんは3九桂と受けることになります。
 これはしかし先手は、この場合は負けになります。
3八銀の変化 失敗の図2 
 5三銀と、「金」を取って、この瞬間に、先手玉は“詰めろ”になっています。
 2九銀不成からの“詰み”があり、それを防ぐ適当な手もない。これは勝てません。
 えっ? 4七飛が“詰めろ逃れの詰めろ”で先手勝ちなのでは…?
 そう考えた方、えらい。しかしこの場合――
3八銀の変化 失敗の図3
 こういう手があるんですな。2六桂。これで先手玉が詰んでいます。(2六同歩に、2七角から) 

 〔A〕の攻めでは駄目でしたが、〔B〕の攻めはどうでしょうか。
 結論から言えば、この〔B〕の攻めが正解で、これでなんと、後手玉は詰んでいるのです。

3八銀の変化 成功の図1
 「4二角図」から、〔B〕3三角成、同玉、2五桂と進む。(ここで2五桂は見えなかった! これで詰んでいたとは…!)
 以下、2五同歩、4二角、2二玉、2五飛。
3八銀の変化 成功の図2
 確かに詰んでいる!
 …しかし、まてまて、4二角(二度目)を同銀と取ると…?
 4二角、同銀、同飛成、2三玉…で?
3八銀の変化 成功の図3
 これは、どうやって詰むのか? 
 2四金と捨てて、3三銀と打つ。
 3五玉と逃げると4四竜まで。 よって、1五玉と逃げて…
 以下、1六歩、同玉、1七銀、1五玉、1六銀、同玉、2八玉。
3八銀の変化 成功の図4
 これで詰み。

 そう、つまり正解手「4二角」は、“詰めろ”だったのです!


 ということで、(ア)3八銀は、3三角成、同玉、2五桂以下、後手玉が詰んでいるので先手が勝ち。


 ところがこれですべて解決と、そうは簡単に話は終わりません。

 次に(イ) 3八金 を考えます。この手は(ア)3八銀と変わらないように思えますが、そうではありません。

3八金の変化図
 (イ)3八金、この場合だと、じつは〔B〕3三角成、同玉、2五桂以下の攻めでは詰まないのです!
 なぜ詰まないか。さきほどの(ア)3八銀場合の詰め上がりの図を見てください。最後に後手玉を詰めたその最終手は「2八玉」でしたね。その「2八玉」は、後手の「3八金」がそこにいると、指せない手なのです。これが銀なら玉が寄れるので後手玉は詰みになるけれど、「3八金」なので詰みがない。

 すなわち、(イ) 3八金は、“詰めろ逃れの詰めろ”になっている のでした!

3八金の変化 失敗の図
 具体的な手順を追ってみますと、「問題図」から、4二角、3八金、3三角成、同玉、2五桂、同歩、4二角、同銀、同飛成、2三玉で、この図。
 以下、2四金、同玉、3三銀、1五玉、1六歩、同玉、1七銀、1五玉、1六銀、同玉…、まで不詰。


 それではこれで先手負けなのか。いやいや、そうではありません。

 (イ)3八金に〔B〕の攻めでは詰まないので先手の負けになる。ところが、面白いことに、この(イ)3八金に対しては、逆に、先ほどは冴えなかった感じのある〔A〕の攻めが有効となるのです。

3八金の変化 成功の図1
 「4二角図」から、〔A〕3三角成、同玉、4二角となってこの図。
 ここから、2三玉、3三金、1二玉、と追って、3九桂といったん受ける。
3八金の変化 成功の図2
 この図が、意外にも、“先手勝ち”になっている。面白いですね。
 この図で、後手玉はまだ“詰めろ”がかかっていない。ですので、後手の手番だからここで後手が先手玉に“詰めろ”で迫る手があれば後手の勝ちとなる、そういう局面。
 ところが、ないのです。後手の有効手が。
 5三の金を取ってもこの場合は詰めろにならない。

 〔ところで、仮にもしも「5八香」が「5六」の位置などに置いてあったならば、ここで7八竜という手があって、“後手の勝ち”となる。前問「問4」の場合はその手が有効になるため、この変化は先手選べない、という新たな事実がここで判明。よって、前問の「4二角」はこの変化によって勝ちが出てこないため、正解手にはならないことになる。〕

 ここで7四角はどうか。これは惜しくも“詰めろ”ではない。 
 7四角、3一角成、2八金、同玉、3九竜、同玉、3八銀、4八玉、4七銀成。
3八金の変化 成功の図3
 ここで5九玉と逃げてしまうと“トン死”です。(5九玉、6八銀、同玉、7六桂、6九玉、7七桂、5九玉、6七桂、4九玉、3八成銀まで。ここまできて、こんなところで負けるとショックでしょうね。)
 というわけで、4七銀成には、同飛と取って、以下、同角成、同玉で、まだ迫る手はありますが、届きません。


 以上より、(イ)3八金には、〔A〕3三角成、同玉、4二角、2三玉、3三金、1二玉、3九桂で先手が勝ち となる。



2二銀打の変化図1
 「4二角」に、(ウ) 2二銀打 だとどうすればよいでしょう?
 これには、4七飛(金を取る)とします。これで“先手優勢”。
 後手は銀を使ってしまったので、先手玉に早く迫る手がない。仮に6九竜なら、2一金とすれば、後手の受けはむつかしい。2一金は、次に2二金、同銀、3二銀、同玉、4三飛成からの“詰めろ”。

 図で5三銀、同歩成、3八金(詰めろ)が考えられるが、4一角、3二桂と、桂馬を使わせて、そこで4九金と一旦受けて、先手の勝ち。
 実戦ならこう指すだろうが、5三銀にはさらに鋭く、4一角、3二桂、4三飛成と踏み込んで攻め勝つ手段もあるようだ。(次の図) それを紹介しておきましょう。
2二銀打の変化図2
 これがなんと、後手玉の“詰めろ”なのである。 しかし、4二銀右に、どうするのか。
 4二銀右、3二竜、同銀、同角成、同玉、4四桂――、それでも詰みなのだ。

 しかし後手の立場でみれば、不利ながらも逆転勝ちを狙うとすれば、この(ウ)2二銀打が最有力かと、「激指」を相手に調べてみて僕は思いました。先手優勢ながらも、まだ迷う場面が多いのです。
 たとえば、「2二銀打の変化図1」の後、「4六歩、同飛、4五歩」にどうするか。
 ベストな対応は、5六飛と逃げる手です。
2二銀打の変化図3
 以下、5三銀、4一角、3二桂、5三歩成、3八金、3九銀打、同金、同銀、同竜、4三と(詰めろ)、4八竜、2八金が想定されますが、先手の勝ちです。

2二銀打の変化図4
 また、「2二銀打の変化図1」で、「4一歩」がある。これがもっとも変化が広く、先手は間違えやすそう。
 検討の結果、3一角成、同銀、4三金、同銀、同飛成、3二金、4六竜、9九竜、5三歩成、4五香、2六竜が良さそうです。
2二銀打の変化図5
 この2六竜がパッと見えるかどうか。(僕は自信ないですね。ここ、7六竜では形勢はもつれそうです。)
 これは次に5七角からの寄せを狙っています。これが有力な攻めなのです。
 以下、7四角、3九銀打、4九香成、5七角、2五桂打、4三銀。(2五桂打で、2五桂と節約すると、同竜、同歩、2四銀から後手は詰む。またその前の4九香成で4七香成には4四金から攻める。この4四金も次に3四金からの“詰めろ”で、後手に3八成香とする余裕はできない。)
2二銀打の変化図6
 これで先手が勝てそうです。最後の4三銀は、もし後手が3九成香、同銀、6七桂成としてくれば、香車が手に入るので、3四銀成からの“詰み”になっています。
 したがってこの後6七桂成か、または1二玉でしょうが、いずれも先手勝ちとなります。(6七桂成には3四銀成、1二玉、2四角と攻めるのがよい。) ここまでくれば、先手が駒を余分に相手に渡したりしない限り、先手が勝てそうです。
 以上の変化は絶対ではないですが、持駒の多い先手が優勢なのは確かなようです。
 

 よって、(ウ)2二銀打には、4七飛で先手勝ち。


 次は(エ) 2二銀
2二銀の変化図
 (エ)2二銀にも、やはり4七飛(図)と引く。今度は後手は「銀」を持っているので、ここで3八銀(詰めろ)と打てる。しかし、それだと後手玉が先に詰んでしまう。3二角、同玉、4三金打以下の手順。

 この(エ)2二銀の変化も先手が勝てる


 もうひとつ考えなければいけない変化があります。
 (オ) 5三銀 です。

5三銀の変化図1
 「4二角」に、5三銀という手があった。これ同歩成として、これが次に3三角成からの詰めろなので先手勝ち…などという読みでは甘すぎる。5三同歩成などとそんなぬるいことをしていると、2九竜から詰まされてしまう。5三銀は、先手玉に対しての“詰めろ”なのです。
 では、どうするのか。
 5三銀には、3三角成、同玉、4七飛、と指す。

5三銀の変化図2
 これで先手が良いようです。ここから検討してみると、後手良しの変化はまったく出てこない。(ヘボアマの実戦ではともかく)理論上はここはかなり先手が良い局面と思われます。

 この図は、後手玉は“詰めろ”になっている。(4五桂以下)
 そしてこの次に後手の思わしい手がないのです。4二銀は、5五角から詰み。4四銀は、同飛と取って、これがやはり“詰めろ”で、この飛車を同玉と取っても詰む。(5三角、4三玉、5五桂以下)

 ここで有力と思われる後手の手、「3二銀打」と、それから「4四歩」の後の攻防を見ておきましょう。

5三銀の変化図3
 まず「3二銀打」。 3二銀打、5三歩成(5五角からの詰めろ)、2三玉(2二玉なら4二銀と攻める)、3五桂。 
 このあたり、先手の攻めはいろいろ選択肢があって、実践的には3九金と一回受けておくのが一番いいかもしれない。
 図の3五桂の攻めは最も鋭い攻め方で、これでなんと、後手玉は“詰み”なのだ。
 3五桂、同歩、4五角、3四桂、同角、同玉、4三銀、2三玉、3四金、1三玉、2三金打、同銀、同金、同玉、3四銀、1二玉、2三銀打、1三玉、で次の図。
5三銀の変化図4
 1四銀成、同玉、2六桂、1五玉、1六歩、同玉、1七銀、1六玉、1六銀、同玉、2八玉まで詰み。
 こういう感じの詰めというのは、だらだらと長めなので詰将棋にはあまりみられないが、実戦的にはよく現れるはず。これも「激指」に教えてもらった。勉強になるなあ。

5三銀の変化図5
 「5三銀の変化図2」から、次は「4四歩」の場合。4四歩、5三歩成、3二銀打と進むと、そこで4三金(図)。 これは、後手が同銀なら詰んでいる。
 4三同銀、同と、同玉、4四飛、同玉、5三角、4三玉、4四銀、5二玉、6四角成。
5三銀の変化図6
 6二玉と逃げても、7四桂がある。

 したがって、「5三銀の変化図5」では、後手は2三玉と逃げるだろうが、そこで4四飛とする。以下、6五角には、4九歩と受けて、先手の攻めのほうが後手よりも厚く、「先手優勢」は間違いない。

 この5三銀以下の変化は、「5八香」の存在が大きいようです。もしもこの香が置いてなければ、5三銀以下の変化で形勢不明、となった可能性もありそうです。


 以上により、(オ)5三銀は、3三角成、同玉、4七飛で先手優勢




 【まとめ】 正解手は4二角
 それに対して
  (ア)3八銀(詰めろ) → 3三角成、同玉、2五桂以下後手玉は詰んでいる
  (イ)3八金(詰めろ) → 3三角成、同玉、4二角、2三玉、3三金、以下先手が勝ち
  (ウ)2二銀打  → 4七飛で先手優勢
  (エ)2二銀   → 4七飛で先手勝ち
  (オ)5三銀(詰めろ) → 3三角成、同玉、4七飛で先手勝ち


 本問は、作者としては、調べていて興奮することの多い「次の一手問題」でしたが、問題としては難解になりすぎた感じはありますね。
 しかし、将棋の終盤の面白さを堪能できました。自分の実戦だと、ここまでは本気で調べませんからね。



【詰将棋トレーニング】


 今日の内容のおさらいです。後手玉を詰めてください。19手詰め。


 それにしても、ここで詰みがあるというのはびっくりしました。
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次の一手 問5

2013年10月21日 | 次の一手
 前問「次の一手 問4」をほんの少し改作して、「問5」をつくりました。

 前問では、またまた作者の意図を超えて、答えが2つになってしまったのですが、それを修正してこの問題では「答えは1つ」になっています。 
 (前問の解答記事を見ていない人もいるかと思うので、ここでは、その答えをいちおう伏せておきます。)

 今回の「問題図」で、改変のポイントは、5三の「金」。 前問「問4」ではこれが「成香」でした。


 「問4」の解答解説を読んだ方は、ですからもうこの「問5」の答えは知っているはずですね。
 その「正解手」の意味と、そのあとの正しい手順を考えてみてください。
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次の一手 問4 答えあわせ

2013年10月20日 | 次の一手
                       次の一手 問4  問題図

 おはようございます。日曜日の朝です。


 「次の一手 問4」の解答解説です。
 以下の順に解説していきます。

 〔1〕4二飛成
 〔2〕4三飛成
 〔3〕4七飛
 〔4〕7五飛
 〔5〕4二角

 

〔1〕4二飛成


4二飛成図1(正解手)

 4二飛成が正解手です。
 この手で勝てると判断するためには、次の3つの関門を越えなければなりません。(私達の実戦ではそんなにたっぷりと考える時間的余裕はたいがいないので、“勘”で行くことになりそうですけどね。)
 (1)4二飛成が後手玉の1二角以下の“詰めろ”になっていると気づくこと。(“詰めろ”でないと負けてしまう)
 (2)4二飛成、同銀、同成香のあと、受けられても“詰めろ”が続くと確信すること。
 (3)4二飛成、同銀、同成香、2九竜、同玉、4九飛から、4二成香を飛車成りで抜かれても先手良しと確信すること。

 次の一手問題としては、「4二飛成」が最も答えらしい手なので、センスの良い人はここから考えることと思います。そこにどこまで“読み”の裏付けを取れるか、という問題。

 結論としては、(1)(2)(3)をクリアーして、「4二飛成で先手勝ち」となるわけです。
 

 まず(1)ですが、「4二飛成」の局面は“詰めろ”です。
 塚田正夫作の詰将棋にある1二角以下の詰め手順が気に入って、それを「次の一手」問題にできないかと考えたのが、この問題作りの出発点でした。

 「4二飛成」に、たとえば後手が3八銀などとすれば、後手玉は、

 1二角、同香、1三金(下の図)、同玉、3三竜、2三金合い、2五桂、同歩、2四角

4二飛成図2
 となって、詰みです。9手詰めですね。
 (実戦でこんな詰め方ができると気持ち良いですね。)
 


 さて、「4二飛成」に、では次に(2)「同銀、同香成」を考えましょう。これで先手本当に勝てるのか。

 これは次に3二角からの詰めろなので、後手は受ける必要がある。
 この局面は、先手の“詰めろ”が続けば先手の勝利、続かなくなれば、後手は二枚飛車の攻めが強力なので後手の勝ちになるという、そういう局面です。

 まず、「2一銀」と受ける手から。 

4二飛成図3
 これには「3一角」で先手の勝ち。
 後手が2五歩(詰めろ逃れ)と指せば、3二銀と追撃して、同銀、同成香、同玉、2一角、2三玉、1二銀。 

4二飛成図4
 きれいに後手玉は捕まっています。

4二飛成図5
 3二桂と受けても、やはり3一角で先手勝ちになる。

4二飛成図6
 1二飛という受けにも、3一角。さらに2一銀と受けても、3二銀(図)で良い。
 同銀なら2二金から詰み。同飛なら、同成香がこれも“詰めろ”。

 したがって、正解手「4二飛成」に、「同銀、同香成」のあと普通に受けるのでは、先手勝ちです。


 正解手「4二飛成」に、「2二銀打」はどうか。

4二飛成図7 
 これには「4七竜」です。
 実戦での読みはこの程度で打ち切りと思いますが、この先を具体的に進めてみるとどうでしょうか。
 この図から、6七桂成、5二成香、5七歩成、4一角、3二桂、4三竜。

4二飛成図8
 こうなって、先手が勝てる将棋です。これは“詰めろ”になっていて、ほうっておけば3二角成、同銀、同竜、同玉、4二金、2三玉、1五桂から詰みます。
 ここで5二金なら、同角成が、3四竜からの“詰めろ”になっている。以下、1二玉、3九金、4七歩、4二銀のような展開が予想されます。


4二飛成図9
 さて、もうひとつ考慮しなければならないのは、正解手「4二飛成」に、(3)「同銀、同成香、2九竜、同玉、4九飛」(図)の変化です。ふつうに受けていたのではダメなので、最後の手段という感じですが…。でもナメていると痛い目に会いそうです。
 以下、3九金、3八金、同玉、4二飛成。こうやって、自玉を安全にして頑張ろうというのです。これで「互角」ならば、「問題図」での「4二飛成」が正解とも言い切れなくなる。
 この展開になったとき、先手は、そこで5六金とするのがよいようです。(後手に金を入手されるとやっかいなのです。)
 以下、予想される手順は、4六歩、2一飛、2二銀、5三歩成、同銀、6一飛成、4七歩成、2九玉、2五桂、4一角、3二桂、5二角成。

4二飛成図10
 これで先手優勢。
 以下、同竜、同竜となれば、次に4三銀打がねらい筋です。
 ただ、この変化はうまくいっているのですが、もしも後手に「金」が一枚でもあると、先手も簡単には勝てなくなります。後手玉が堅くなるので。だから先ほどの「5六金」と金取りをいったん逃げておく手が大切。時間に迫られた実戦でこれを確実に指せるかどうかとなると、けっこうむつかしいかもしれないですね。だから後手が逆転勝ちを狙うとすればこの順でしょう。
 でもこの順で先手優勢、それは間違いない。


 以上の通り、〔1〕4二飛成はこの手が“詰めろ”になっていて、後手が受けても先手の勝ちになる。よって4二飛成が正解手


〔2〕4三飛成

4三飛成図
 「問題図」で「4三飛成」。
 これはダメそうですが、いちおう調べてみましょうか。
 4三飛成、3八銀(詰めろ)、3九角、4三銀、同成香、3九銀不成…
 やっぱり、ダメですね。


〔3〕4七飛

4七飛図1
 「4七飛」は、実は見た目よりずっと有力な一手。(「次の一手」の答えとしては冴えませんが、実戦ならば条件によってはこれが最善手の可能性も出てくるほど。)
 「4七飛」には3八銀と打たれてしまうので、それで“後手良し”と即断してしまいがちですが、たとえば3九金、4七銀成となればけっこう先手玉も堅い。ところがこの場合、3九金には、同竜で、これを同銀だと2六桂、同歩、2七金で詰み。よってこの場合、3九金はない。
 また、「4七飛」と指したこの図で、先手に「歩」があれば、3八銀に4九歩として、これは後手優勢とも簡単に言いきれない将棋です。
 しかし実際には先手には「歩がない」ですし、後手には「桂馬の持ち駒がある」ということで、先手にかなり条件がわるく、よってここでの「4七飛」は、たしかに“後手有利”となるわけです。

 やはりこれは「3八銀」で後手優勢となります。
 「4七飛、3八銀」に、「4九金」という手と、その後で「3九角」という手の2つを調べてみます。

4七飛図2
 先手は歩がないので、「4九金」と受けた。これは4七銀成、5二成香、4九竜、3九金、9九竜、4一角、3二桂、4二銀。

4七飛図3
 これは先手が足らない。(もしも先手に一歩があれば、この展開で先手の持ち駒に金が一枚あって、後手もこれはたいへんだ。)

 次は「4七飛、3八銀」に、「3九角」。

4七飛図4
 3九角には、2つの寄せ方がある。(僕はこれを「激指」に教えてもらい、大いに参考になった。)
 一つは「3五桂」。飛車を取らずにここで3五桂が最もスマートな寄せ方。

4七飛図5
 あと一つの寄せ方は、4七銀不成。
 そこで先手に4二角という有力な攻めがあるが、後手は3八飛と打つ。
 3一角成となって、この図。
 後手の負けに見えませんか? ところがこれは後手勝ちの将棋になっているのです。つまり、先手玉は“詰んでいる”のでした。
 さきに「4七銀不成」としたのがここでの詰みを想定したにくい指し手。
 この局面は、本記事の末尾でもう一度掲げますので、よかったら詰めのトレーニングに考えてみてください。そうむつかしい詰めではないのですが、うっかり見逃しやすいと思いました。


 〔3〕4七飛は後手勝ちになる。



〔4〕7五飛

7五飛図1
 次に〔4〕7五飛。
 この手は、4二飛成と突っ込む手に自信が持てない場合は、実戦ならこう指すかもしれませんね。7三への飛車成と、7九金で後手の竜の封じ込めが次のねらいとなります。

 ここで我が「激指」殿の薦める第1候補手は、「3九銀」。
7五飛図2
 なるほどと僕はこれに大いに関心しました。3九銀、同銀、同竜、2八銀でどうするんだと思われるかもしれませんが…

7五飛図3
 3八竜とします。これで先手受けなし。桂馬があるので、次に2六桂、同歩、2七銀で。4四角とそれを防いでも、後手玉は詰めろになっていないので、3九銀で後手勝ちです。
 こういう“簡単な寄せ”を見逃さないことが、アマの場合は最も重要なことかと最近はよく思います。
 
 そして、「激指」推奨のこの3九銀の優れたところは、先手のねらいの7九金も封じているという点。7九金なら、2八銀成、同玉、3九銀、1八玉、7九竜で、後手の勝ち。

 ところが、「だから7五飛は、3九銀で後手の勝ち」とはならない。(「激指」だってたびたび判断を間違うのだ。)
 現実の将棋の奥の深さは、さらにそれを上回っていて、3九銀に、5二成香とすれば、その局面は“先手良し”になるのです。(ちょっとこれは奇跡的な感じ。)
 7五飛に、3九銀、5二成香、2八銀成、同玉、4九竜と後手が指したとしましょう。先手負けに見えますが、そうではない。
 そこから、3五桂、同歩、3四銀、同玉、4三銀…

7五飛図4
 なんと後手玉は詰んでいる! (4三同玉に7三飛成)
 つまり3九銀の攻めは銀を余分に渡すことになるので、5二成香としたときに後手玉が危険になっているのでした。
 将棋の終盤というのは、なんと奥が深いのでしょう。

 まあ、つまり、「激指」のおすすめの3九銀では“先手良し”の結果となる。
 そこで、先手の7五飛には、後手は「3八銀」が良いようです。これなら、“後手良し”となります。

7五飛図5
 「7五飛」に、3八銀、7九金、9九竜、5二成香、7四香、4一角、3二桂、となってこの図。
 この図は後手の勝ち。次に先手が4三銀と迫っても、7五香と飛車を取った手が、2九銀不成以下の“詰めろ”になっている。

 この変化も、(たらればですが)“もしも9九竜で香車をストレートに取れない形になっていたら”、7四香という手がないので、その場合は「7五飛」が先手有望の変化となった可能性もあるわけですね。


 〔4〕7五飛も後手勝ちになる。



〔5〕4二角


4二角図1

 「問題図」の場面で、この4二角を考える人はどれくらいの割合いるのでしょう。
 「4二角」に、4五桂(飛車をとる)は、3三金から詰み。
 また、先手玉は後手の持ち駒に「角銀」とそろうと途端に2九竜から“詰み”が生じる。だから後手が先手の「4二角」を見て、「しめた!」とばかりに同銀ととると、そこで先手に3二角と打たれて、同玉、4二飛成から、逆に後手が先に詰まされてしまう。

 だから4二角は取れないし、飛車もここでは取れない。
 けれども「3八銀」(詰めろ)がここでも良い手で、後手がイケそうだ。

4二角図2
 4二角、3八銀(詰めろ)、3九角、4五桂(図)。
 こうなれば、先手玉は2九銀不成、同玉、3九竜以下の“詰み”があるので、“後手勝ち”。 
 よって「問題図」での「4二角」は不正解。


 ―――と、これが作者の考えでしたが、真実はそれを凌駕していました。

 なんと、4二角でも“先手勝ち”になるのです。



 以上の解説の結果を最後にまとめますと、こうなります。

 〔1〕4二飛成 正解手 先手勝ち
 〔2〕4三飛成 3八銀で後手勝ち
 〔3〕4七飛  3八銀で後手勝ち 
 〔4〕7五飛  3八銀で後手勝ち
 〔5〕4二角  第二の正解手 先手勝ち


 つまり、「問題図」での正解手は2つ、、4二飛成 それから、4二角 が正解です。


 〔5〕4二角の解説が不十分と感じられたと思います。4二角以下の、先手良しになる順を明らかにしていませんからね。

 この「4二角でも正解」というのが発覚したのは昨日(19日)の朝で、僕はその手順にびっくりして、この手順を生かしてもう一度この問題をつくり直したいと思ったのでした。
 つまり、「4二飛をおとりにして4二角をただ一つの正解手とする」と改作できないかと、いま、僕は考えています。
 というか、それはすでに一応できたのですが、もう少しチェックして、明日(できれば本日深夜に)アップしたいと思います。



[追記 10月22日]
 さらに新たな事実が判明したので報告します。
 検討が進み、「4二角」に対して、3八金とすれば、“形勢不明”としか言いようのない互角の分かれとなると判明しました。(自分のシュミレーションでは後手優勢となることが多いです。) 少なくとも、はっきりした先手良しの順はでてこない。
 4二角、3八金、3九金、2八金、同金、2二銀打、7五飛、3九銀、3八金打…と進むと、「互角」という「激指」の評価。(4二角に3八銀は先手勝ち)
 ということは、「4二飛成」ははっきり先手勝ち、しかし「4二角」のほうは、後手が3八金とすれば「互角」ということで、こっちは先手勝てるとは言えない。
 すると、正解手は4二飛成のみ、ということになります。
 (なお、「4二角」以下のいろいろな変化については、「次の一手 問5」の解答編を参照してください。)
 




 最後に、トレーニング用詰将棋。


【詰将棋】 後手の手番で先手玉を詰めてください。(ただし駒余りになります)

 これは「問題図」より、4七飛以下に生じた変化。先手玉が詰むので、後手勝ちになっている。
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次の一手 問4

2013年10月18日 | 次の一手
 コンピューターソフト「激指(定跡道場2)」の評価によれば、この局面はほぼ“互角”のようです。
 「激指」の掲げる第1候補手は5二成香。 5二成香として、次に4三歩成~4一角をねらう攻めで、あるいはこれで先手有利に運べた可能性はあります。 


 ところが、先手氏(だ、だれ?)は、ここで「4三歩成」。

 すると後手氏(だれだ?)は、「4七金」。

 ここは立会人「激指」氏の形勢判断は、やはり、“互角”。 


 先手氏、「3三と」。 後手氏「同桂」。




 先手氏の予定の局面なのか、それとも3三桂が飛車当たりになるのをうっかりしたのか。ともかく、こうなりました。


 さあ、ここで先手の「次の一手」は?



 答えは、二日後に。

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「次の一手 問3 問題図」 の改良案ができました

2013年10月16日 | 次の一手
 「次の一手 問3」の問題図では答えが2つになることが判りました。

 ということで、「改良案」です。
 
 違いは、1筋の歩。「1六歩」をひとつ下げて「1七歩」に配置。
 これで解決。これなら、正解手は1つしかありません!
 やったー!!

 すでに解答を発表した後なので、改良する意味もないんですが、製作者的には「やったー!」です。ジクソーパズルを完成させたみたいな感じ。



 「問題図」から、7八角が“予定外の正解手”でした。
 以下、8九銀、同角、同桂成となって―― (これで“後手勝ち”と想定していたのに…)
 これが“先手勝ち”だったので困ったのです。後手玉は2二銀打(1二玉、2一銀不成)から詰んでいるし、2二銀打、1二玉、4五角でも“先手勝ち”。――というのが改良前。


 ところが「1七歩型」に改良すると、解決。
 後手玉は、2四~1五という脱出ルートができて詰みを逃れています。

 この図は、2二銀打、1二玉、4五角に、3四角と合わせたところ。改良前の図では、3四同角、同歩、2一銀不成から詰みでしたが、この場合もやはり1五に脱出できるので、“後手勝ち”に結論が変わります。

 
 よって、この改良後「問題図」では、「7八角では後手の勝ち、不正解」となります。

 (正解手については、前の解答編を見てください。)
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次の一手 問3 答えあわせ

2013年10月15日 | 次の一手
 「次の一手 問3」の解答編です。

 申し訳ない、正解手は2つあります。こんなはずではなかったのですが、昨日再検討していて発覚しました。
 次の順に解説していきます。

 〔1〕1三香(これが正解手)
 〔2〕7八角(これも正解手、でもこれは予定外)
 〔3〕2二角
 〔4〕3四角(初めはこれを正解手にしたかった)

 つまり〔1〕1三香と、〔2〕7八角、この2つの手なら先手の勝ちになる、でも他の手では負けになります。

 この4つ以外の手では、〔5〕7九香は△9六歩で先手負け、〔6〕6七角は△6八飛でこれも先手の負けになります。


 さて、“通りすがり”さんよりコメントに解答をいただきました。僕の創作「次の一手」の初めての解答者です。
 見事1三香~2二角を当てられました。正解です。
 1三香、同桂、2二角、1二玉、4五角、2三歩、3三角成。
 ただし、その後の4五角は疑問手で、それだと負けになります。(これは下で解説します。)
 何より、僕があそびで作った局面を考えてくれる人がいたというのはたいへん嬉しいことです。



〔1〕1三香

解答図A1
 さて、正解手1三香。
 僕自身は、この局面でいきなりの1三香はあまり考えません。香車を渡すのが怖いというのがあって、この手はとっておきたい感覚です。
 そういう意味ではここでの1三香は意外性があるし、そしてこの場合、これが最も勝ちやすい明解な手段なのでした。

 1三香、同桂、2二角、1二玉、7八角

解答図A2

 ここで7八角というのが、この場合正しい指し手。
 ここに角を打つと5六歩と角筋を止められるのでなんだかさえない気がしますが、「王手でがら空きの自玉の横に一瞬壁をつくった」ことが大きいのです。この角の役割はそれだけ。攻めには使えなくてよい。

 5六歩、3三角成

解答図A3

 これで先手の勝ち。
 この図は後手玉が“詰めろ”になっていますし、次に2四歩や3二となどがあって、後手に受けはありません。2一歩の受けには2三歩とします。(2一歩に2四歩は2八飛で逆転されてしまうようだ。おそろしや。)

 〔追記: 書き忘れていました。この図で2八飛には、2二銀成、同飛成、同馬、同玉、3二銀成、2三玉、3三飛、1二玉、5三飛成となって、先手玉は詰まないので先手の勝ちが確定です。〕


 ということで、〔1〕1三香が正解です。


 ところが、7八角と打つところで、4五角だと、後手の勝ちとなります。

変化図1
 「問題図」から、1三香、同桂、2二角、1二玉、4五角、2三歩、3三角成、2八飛となったのが変化図1。
 2八飛で先手玉は詰んでいます。
 
 7八歩という受けしかありませんが、7八歩、8九銀、8八玉、7八銀成、同角、8九桂成、同玉、7八飛成、同玉、7七歩成、同玉、8六金となって…

変化図2
 後手の飛車先が通って、先手玉は詰み。



〔2〕7八角

解答図B1
 次は〔2〕7八角。
 これは僕の予定では、「8九銀があって後手の勝ち」というものでした。
 その8九銀の解説の前に、7八角に5六歩ならどうなるかを見ておきましょう。

解答図B2
 7八角、5六歩、3二と、2八飛、1三香となって、先手勝ち。
 これで後手玉は詰んでいます。1三同桂に、2二とから清算して飛車を取って、4二飛と打つ筋です。

解答図B3
 「問題図」から、7八角、8九銀、同角、同桂成、と進んだ局面。
 僕は最初、この局面は「後手の優勢で間違いなし」と思い込んでいました。先手玉は“詰めろ”ですし。
 ところがそうではなかった。後手玉にこの瞬間に、なんと“詰み”が発生していました! (おそろしいことです。)
 詰み手順は、2二銀打、1二玉、2一銀不成以下。ちょっと長いけれども確実に詰み。よってこの変化は先手の勝ち。(この詰み手順は省略します。)

 2二銀打、1二玉、4五角からの攻めでも、ここでは「先手勝ち」になっています。ここではこの手順を解説することにします。(こっちのほうがおもしろい味があるので。) 

解答図B4
 4五角に対する後手の応手は2つ考えられる。3四角と、2三歩。
 まずは、4五角に、3四角と合わせる手。これは同角、同歩となって、それから2一銀不成とする。

解答図B5
 これは詰み。「3四歩」とさせて、詰めやすくなっている。
 1三玉、2二銀不成、同玉、3二と、2三玉、2四歩、同玉、2七香、2五歩、3三角以下。

解答図B6
 次に、4五角に、2三歩。
 これは“詰み”はないので、いったん8九玉とする。桂馬を取ったので、次に2四桂がある。それを防ぎつつ、後手は2八飛とするだろう。
 8九玉、2八飛、1三香、同桂、2四桂、同飛成、3二銀不成。
 これで先手の勝ち。先手玉に“詰み”はなく、そして後手の受けはない。次に2一銀左不成の“詰み”がある。


 以上のように、7八角、8九銀、同角、同桂成の局面は先手の勝ちになっています。

 このことは、僕は気づくのが遅れましたが、なんとか気づきました。それでさらに検討し、7八角、8九銀、同角に、そこで2八飛とする手段を調べました。
 そこで7八歩と受けるのは、後手の勝ちが出る。それでは7八角打はどうか。
 すなわち、7八角、8九銀、同角、2八飛、7八角打、です。これは後手玉は次に1二香があるので5六歩と角道を遮断する。そうして次の図となります。

解答図B7
 僕はこの「次の一手」の検討に「激指(定跡道場2)」を使っていますが、この局面を検討させますと、この5六歩の局面では初め「激指」氏は“後手優勢”の判断を下すんですよね。それで僕は「ああ、後手優勢か、それなら大丈夫だ(つまり問題図での7八角は正解手にはならない)」と判断した。ところがもっと時間をかけて検討させてみると「激指」の判断がひっくり返ることがわかったのです。
 具体的に手を進めて調べてみると、この局面は疑いもなく“先手勝ち”のようです。

 その手順は、1三香、同桂、2三歩。

解答図B8
 「ここで1三香、同桂、2三歩までは読めないなあ…。」と僕は思ったのでした。
 これで先手勝ちだというのです。
 2三飛成なら、3二銀不成。 2一歩なら、2二銀打、1二玉、3二銀不成。
 (2三飛成、3二銀不成、1二玉の順がいちばん粘りがあるが、以下2三銀成、同玉、5六角、同桂、同角、3四歩、3五銀で先手の勝ちとなる。)

 それにしても、角二枚を打たされても「香歩」の持ち駒で攻めて勝てる、という判断は相当の実力者でないとできないなあ。確かに明解な勝ち手順ですが。

 まあ、そういうわけで、作者の思惑を超えて、〔2〕7八角も正解手、となります。


〔3〕2二角

2二角図1
 〔3〕2二角とここにすぐ角を打つのも有力ですが、実際はどうでしょう。
 「問題図」から、2二角、1二玉、7八角となったのがこの図。
 7八角の代わりに4五角は、3四銀で駄目。

 図から、5六歩、2七香、2五歩。
 (2七香の手で代わりに3二銀不成は、2八飛と打たれ、次に9六歩で後手良し。) 
2二角図2
 ここで2五歩と後手は受ける。先手は1一角成、同玉、2三歩をねらっているので、後手はそれをかわすつもり。
 2五歩、同香、2四歩、1一角成、2三玉。

2二角図3
 1一角成を同玉と取っても後手勝ちになるようだが、逃げる方がより確実。
 検討手順は、図以下、3七桂(詰めろ)、4八飛、3二銀不成、3四玉、1二馬、4四玉、4五馬、同飛成、4三と、5五玉、4五桂、9六歩。

2二角図4
 9六歩は“詰めろ”で、だから同歩と取るが、7九角と打たれて後手の勝ちが確定。


 以上の結果、〔3〕2二角は後手の勝ち、となります。



〔4〕3四角

3四角図1
 最後に〔4〕3四角ですが、この「次の一手」問題は、この3四角を正解手として作りはじめました。
 3四角に、同歩なら、1三香~3三角で後手玉は詰み。なので取れない。
 そこで後手は、2八飛と打って、7八歩に、3四歩とここで角を取れる。
 ところがそこで、5五角という“王手飛車”がある。5五角、2二歩、2八角と飛車を取る。

3四角図2
 「この局面が先手勝ち」というように最初の作者の意図としてはそうしたい。だが実際はどうか。
 後手からは7九角という攻め筋があって、これで先手ピンチにみえるが、ここで1三香が用意の切り返し。これを同桂は2二銀成以下後手玉は詰むのです。(飛車を持っているので。)だから後手は1二銀と受けて、同香成、同玉と「銀香交換」になる。

3四角図3
 そこで3二と。
 この局面はどうやら“先手勝ち”のようです。

3四角図4
 ところが7九角でなく、9六歩と端攻めに来られると、これは“後手の勝ち”。
 
 なのですが、このあたりは端の配置等を工夫をすればなんとかなりそう…、とあれこれ考えていたのです。ところが…

3四角図5
 もっと根本的なところからこの初めの「3四角正解構想」には無理があることが判明しました。(それで予定を変更して、1三香正解構想にしました。)
 3四角、2八飛、7八歩に、後手は角を取らずに、8九銀。
 これで先手玉はあっさり“詰んでいる”のでした。
 詰み筋は、8九銀、8八玉、7八銀成、同角、8九桂成、同玉、7八飛成、同玉、7七歩成、同玉、8六金以下。(これは上で解説した「変化図1、2」とまったく同じ詰み筋です。)

 3四角だけを正解手として生かすには、相当の工夫をしなければ難しいようです。

 
 以上のように、この「問題図」の場合、〔4〕3四角は2八飛~8九銀で後手の勝ち、です。




 以上でこの「次の一手 問3」の解答解説は終わりですが、問題図をブログに最初にアップした時の図は少し違っていました。欠陥にすぐに気づいて変更したのですが、その最初の図について書いておきます。(自分の備忘録のような意味で)
初めの問題図
 これが「初めの問題図」。ポイントは9九の銀。ここが香車でなく銀になっていることで微妙に詰む詰まない、受けのあるなしが変わってくる。
 ところがこれも「激指」の検討を数分で打ち切ってしまったりというようなことでやはり検討に“穴”がありました。
 この図では、「2二角」でも正解になってしまうのです。


 「初めの問題図」から、2二角、1二玉、4五角と進んだ図。「9九香型」だとこれは3四銀として“後手優勢”となる局面。
 ところがこの場合「9九銀型」だと結論は逆になる。
 3四銀、3二銀不成、2八飛、8八銀。


 8八銀と受けられる。これで先手が勝ちになる。
 これが7八歩だと、後手は4五銀と角を取ったときに先手玉は“詰めろ”になる。しかし「8八銀型」なら角だけでは詰まない。そういう違いがある。
 8八銀以下は、4五銀、2三歩で後手玉は“受けなし”。先手玉に詰みはなく、先手の勝ち。
 というわけで「初めの問題図」では、作意の「1三香」だけでなく、「2二角」も正解、そして後で判明した「7八角」が先手勝ちというのもこの図でも成立しているようで、したがってここでは3つの正解手が存在していたことになるわけです。



 「次の一手」は問題として提出する場合はやはり“答えは1つ”が望ましいと思いますが、現実の実戦は答えが1つではないこともあるわけで…。でも「問題」としては答えが明確でなければいけない。
 今回は「答えが2つ」でしたが、その2つともに明解なものに結論付けられたことはよかったです。それに3つよりは2つのほうがましで、問題図を差し替えてよかったです。

 お付き合いくださった方、どうもありがとうございました。
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次の一手 問3

2013年10月12日 | 次の一手
 【ヒント】
 先手玉には3手詰の「詰めろ」がかかっています。それを防ぎつつ、後手玉攻略を考えて「次の一手」を決めてください。

 ここで▲4五角と打って逆に後手玉に「詰めろ」をかける(“詰めろ逃れの詰めろ”)のは、△4八飛~4五飛成でいけませんね。でもこのラインに角を打つのは有力で、7八や6七に打つのはどうか。
 最初に▲2二角と打って、△1二玉に、そこで4五角のラインに角を打つのもあります。これなら「王手」なので4八飛から取られてしまうことはありません。しかしそれで勝てるかどうか。その後を読まないといけません。

 それ以外の手も可能性があります。たとえば▲7九香。これはシブい手で、後手の△2八飛などの飛車打ちに▲7八歩を用意しています。香車と歩とで城を作って、後は▲3二銀成というような手で、この盤上の銀とと金それから手持ちの2枚の角で攻めようという考え。優れた構想と思いますが、ところがこの場合は、△9六歩から「端攻め」に来られて、この構想は崩壊してしまいます。後手の9筋の歩が伸びてなかったら、これでもよかったんですが。
 そういうわけで、先手は、後手の9筋の「端攻め」にも注意して、ここで最善の手を選ばなくては勝てません。

 さて、正解手は?



 答えは3日後に。




 なお、この問題図は最初にアップした時のもの(1時間位アップしていた)と少し変えています。最初の図だと答えが2つになることが判明したので、急遽修正しました。
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