はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part122 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第21譜

2019年06月13日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第21譜 指始図≫ 8四金まで

 指し手  ▲8六歩


    [まったく別物ですね]
中井広恵 (チェスは)将棋とは感覚がまったく違うって聞いたんですけど、そうなんですか?
羽生善治 そうですね。覚えるのは簡単だし入りやすいんですけど、ええ、まったく別物ですね。
中井 でも将棋やってチェスもっていうのは、どうみても疲れそうなんですけど。
羽生 ええ、疲れますね。
中井 なのにどうしてチェスなんですか。
羽生 そうですね。あまり品のいい言い方じゃないんですけど、将棋は直接的に殴り合っている感じで、チェスはボディブローで打ち合ってような感じなんですね。徐々に効いてくる感じ……。だから同じ疲れでも、ちょっと種類が違うんです。
       (女流棋士中井広恵対談集『鏡花水月』より)



 どっちも疲れるが、疲れる場所が違うので、チェスは気分転換になるのだと羽生善治は説明している。



<第21譜 不安がよぎった>


≪指始図≫ 8四金まで
 「最終一番勝負」はここまで進んだ。
 後手9四歩に対し、先手9六歩と応じ、後手が8四金と打ったところ。この金は先手の8五玉からの“入玉”を防いだ手で、この一手である。
 ここで、どう指すか。

 この図における、最新ソフト「dolphin1/Kristallweizen」の候補手(評価値)は、次の通り。
5四歩(-260)、8六歩(-266)、8六玉(-307)、2五香(-340)、3三歩成(-376)、3七桂(-382)、2六飛(-400)、4一角(-546)、6一竜(-620)、2六香(-690)

 また「激指14」は8六歩(-379)を最善手としている。


≪指始図≫(8四金まで、再掲)
 我々終盤探検隊は決めていた。選んだ手は、「激指」の奨め通りの手、「8六歩」である。
 6六角と打って9三角成と進めた時に、ここまではそう指そうと決めていた順であった。

 ただ、実際には、ここではそれ以外の手―――「2五香」や「4一角」も、可能性があると感じて立ちどまって検討してもみた。しかしそれで「先手勝ち」までたどり着けなかったので、結局は「8六歩」を選ぶことになったのだった。

 しかしここでは改めて“その他の手”についての、我々の検討内容を以下にまとめておきたい。
 研究対象は、次の手である(5つ)
  「2五香」「2六香」「8五金」「4一角」「5四歩」


2五香基本図
 「2五香」(図)は、次に「2六飛と打つ」、そして「2三香成、同玉、4五角」と攻める狙いがある。
 もしもここで6六歩や5六となら、2六飛、3一桂、4一角、3二歩、2三香成、同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂となって、先手良しになる。

2五香図01
 だが、後手は8四金と打った手を生かして、7五銀からの攻めがある。
 7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、6七と、2三香成、同玉、5六角(次の図)

2五香図02
 「2三香成、同玉、5六角」が決まって、この図は先手良し。
 2二桂(3四に利かせた)の受けに、2五飛がある。2四歩に、3三歩成、同玉、2三金、4四玉、8四馬(次の図)

2五香図03
 「5六角」と打てたのでこの攻めが成功した。
 ただし、これが「4五角」だったらうまくいかない。
 5六に角を打てたのは後手が6七ととしたからだが、その手に代えて後手8五桂と攻めるのは、2六飛、1一桂、4五角に、後手の受けがなく、先手良し。

2五香図04
 だから、後手の最善手は6七とに代えて、3一桂(図)と自陣に打つ手になる。先手の攻めを先受けするのである。
 これなら、先ほどの「2三香成」の攻めはないし、また2六飛と打つ攻めには、6七と、4五角、1一桂で、先手の攻めはうまくいかない。後手には次に6七との確実な攻めがあるので、桂二枚を受けに使っても先手玉を寄せる手は続くのである。そして先手は駒を渡すととたんに自玉が危なくなる。

 しかしここで、3三歩成、同銀、3二歩、同玉、3四歩という攻めの手段が、まだ先手にはあった(次の図)

2五香図05
 この3四歩(図)には、同銀が正着(理由は後で明らかになる)
 3四同銀、1一角、2二桂、7二飛、6二歩、7三歩成(次の図)

2五香図06
 7三歩成(図)とと金をつくって、先手は次に6三とまたは7四とのような手が狙いである。
 6七と、6三と、7七と、9七玉、2五銀(次の図)

2五香図07
 先ほど、「3四同銀が正着」としたのは、この2五銀(図)と香車を入手する手があるからである。これで後手有望の勝負となる。
 図以下、5三と、8五香、9八銀、7六銀(次の図)

2五香図08
 後手勝ち。(7八金の受けには7五歩)

 「2五香」 は、「7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3一桂」で、後手勝ちとなった。
 

2六香基本図
 しかし今と同じに進むのなら、「2五」に打つのではなく、「2六香」が良いのではないか。(結局2六飛と打つことはなかったわけだし)
 というわけで、次は「2六香」(図)以下の検討である。

2六香図01
 同じ手順をたどって、7三歩成(図)と進んだとき、先ほどは2五銀で「香」を取ることができたが、今度はその手がない。これは大きな違いではないか。
 後手は7六歩と打ち、以下7八歩、7七歩成、同歩、6七と、6三と、7七と、9八玉、7六銀、9七金と進む(次の図)

2六香図02
 9七に金を打って受けたので、先手の持駒は歩一枚になった。手番は後手だが、しかし後手の有効手は9五歩か6七銀直成くらい。9五歩は、5二と、9六歩、8六金で先手良し。
 6七銀成以下を見ていく。それには、7九歩と最後の一歩で受ける手がある。
 さらに後手が攻めるとすれば7八歩くらいだが、それでは5二と、同歩、7一飛成で先手勝ちがはっきりする。
 よって、後手は6三金とと金を払うが、5一竜、3三玉に、3五歩(次の図) 

2六香図03
 3五歩(図)は、同銀に、3一竜、4四玉、2二角成、3三歩のときに、2三馬と馬の活用をみている。
 この展開は、先手優勢である。

 「2六香」 ならば、今度は逆に先手良しとなった。

 今度はしかし、後手が手順を改良する番だ。

2六香図04
 先手が「1一角」(図)と打ったところまで戻る。
 ここで上では“2二桂”と受けたのだが、代えて「4四歩」という手がある(次の図)

2六香図05
 「4四歩」(図)の意味は、4三~5四という玉の脱出路を開いたということ。
 2二飛、4三玉、2一飛成、5四玉、3一竜、4三金、3五桂、7六銀(次の図)

2六香図06
 先手は四枚の大駒が敵陣で生きているが、先手玉はあぶない。
 予想される手順は、8九桂、7五桂、8六金、8五金、7五金、同金、4三桂成、6七と(次の図)

2六香図07
 後手勝勢である。(5三成桂には6五玉と逃げる)

 結局、「2六香」 も後手良しとなった。


8五金基本図
 「8五金」(図)はどうだろうか。
 これを同金と取ってくれれば、同玉、8四金、同馬、同歩、9四玉で、これは先手の思惑通りとなり、先手良し。
 しかしそうはならないだろう。「8五金」には、7四歩とし、8四金、同歩、同馬と進む。
 そして、この場合は“7三桂”という好手があるのだ(次の図)

8五金図01
 “7三桂”(図)、これは前に後手9四歩と打った手と連動した好手で、この9四の歩がなければ、7三桂には8六玉~9五玉と入玉を計って先手が指せるところだった。
 結論を言うと、この図は「後手優勢」である。(ただし、先手は持駒が多いし手は多いので勝負的にはまだまだもつれそうな図にはなっている)
 ここで5七馬は、7五銀、同馬、同歩、同玉、5七角、7四玉、7二金で、後手良し。

 変化の一例として、7四馬以下を示しておく。
 7四馬には、6五銀がある(次の図)

8五金図02
 6五同馬には、8五金があって、7七玉、6五桂と下に落とされて寄せられてしまう。
 それでは勝ち目がなさそうなので、ここでは7五玉としてみるが、以下7四銀、同玉、9二金(次の図)

8五金図03
 9二同竜には4七角、8一竜には6三角がある。
 よって7一竜と逃げることになるが、それには6四銀上として、先手玉はほぼ捕まっている。

 「8五金」 は、後手良し。

4一角基本図
 ここでの「4一角」(図)は、この≪亜空間最終戦争一番勝負≫の戦闘中、我々が期待をかけてこの先を考慮してみた手である。
 4一角、3二歩と進み、そこで〈紅〉3三香〈白〉5二角成 とがある。(我々が考えたのは5二角成のほう。3三香は見えていなかった)

4一角図01
 まず、〈紅〉3三香(図)から。
 7五銀、7七玉に、そこで8五桂(次の図)

4一角図02
 ここで(1)8八玉と(2)7八玉とがある。
 (1)8八玉は、7六桂、9八玉、3三桂、同歩成、同銀と進む(次の図)

4一角図03
 後手は「香」を入手したので、先手玉に、9七香、8九玉、7七桂不成、7八玉、6八と、7七玉、6六銀左までの“詰めろ”がかかっている。
 よって先手はここで、8九桂とその詰みを受ける(これ以外によい受けがなさそう)
 以下、9五歩、5二角成、4二銀左(次の図)

4一角図04
 5二角成のときに、後手玉に2一金、同玉、3一金以下の“詰めろ”が逆にかかっていたので、後手はそれを4二銀左(図)で解除したところ。
 こう進むと、後手の勝ちになっている。(5三馬、同銀、5一竜は、9七香、同桂、同桂成、同玉、7九角で先手玉詰み)

4一角図05
 「8五桂」に、(2)7八玉(図)の場合。
 先と同じように3三桂、同歩成、同銀とすると、5二角成で、今度は先手良しになる。
 なのでここで後手は「3一銀」と受ける(次の図)

4一角図06
 ここから先手に“好手”があって勝ちになるかどうか。
 「7一馬」では攻めが遅く、6六桂、8八玉、7六銀で後手が良い。

 「5二角成、同歩、4一飛」が有力な攻め。
 これは4二銀引なら同飛成、同銀、3二香成以下詰むし、4二角と受けるのも、3一飛成、同角、3二香成、同玉、4一銀、2二玉、3二金、1一玉、2一金、同玉、3三桂、1一玉、2一金までの詰み。
 つまり“受けなし”に思えるが…

4一角図07
 6七角(図)で、後手良し。
 7九玉に、3四角成と歩を払いつつ角を成って、3一飛成には3三玉を用意して、後手勝勢である。

4一角図08
 これは後手「3一銀」とした「4一角図06」から、「5二角成、同歩、8四馬」と進んだ図。
 “8四同歩”なら、3二香成、同玉、3三金、同桂、3一竜、同玉、6一飛(次の図)
 (途中、3二香成を同銀は、2一竜、同玉、4一飛以下詰み)

4一角図09
 6一飛(図)と打って、なんと、後手玉が詰んでしまうのだ!

4一角図10
 だから8四馬は同歩とは取らず、“6七角”(図)と打つことになる。
 対して、7九玉なら3四角成、7五馬、7七桂成で後手良しなので、先手は8八玉とする。
 8八玉に、単純に4二銀引の受けでは、7五馬で先手良しになるので後手は何か工夫が必要だ。(3四角成でも7五馬で先手良し)
 後手7七桂成。 これを7七同玉、6六銀左、8八玉、3四角成だと後手良しになる。
 よって先手は9七玉と逃げる。
 以下、8七成桂、同玉、7六角成、8八玉、4二銀引、2五桂(次の図) 

4一角図11
 後手は7五の銀を助けることには成功したが、2五桂と打ったこの図は、どうやら「先手良し」になっている。
 この桂打ちは3二香成、同銀、3三金以下の“詰めろ”。 それを4四銀引と受けても、7五馬、同馬と銀を一枚補充すれば、やはり3二香成、同銀、3三金以下の“詰み”がある。
 また図で6六馬は7七金で先手良し。
 5一桂は、同竜、同銀、3二香成から“詰み”。

 「5二角成、同歩、8四馬」で、先手勝ちになった。
 しかしまだ、後手には手順改良の余地がある。

4一角図12
 5二角成 を同歩と取らず、6六桂(図)と攻める。
 以下8八玉に、7六銀と迫って、“詰めろ”。

4一角図13
 これには7九飛(図)しか受けがない。これでどうなるか。
 後手は(先手が飛車を受けに使ったのをみて)5二歩と馬を取る。
 先手は7六飛と銀を取って、後手玉には3二香成、同玉、4一銀以下の“詰めろ”がかかった。
 4二銀引と後手はそれを受ける。
 以下、4一竜、6七と、8四馬(次の図)

4一角図14
 4一竜から8四馬が先手苦心の攻めの継続手順で、8四同歩なら、3二香成、同銀、3三金から後手玉が詰む。
 後手は7八と、同飛、同桂成、同玉、7六飛と攻めあう。以下、6八玉、7七角、5七玉、5六飛、4七玉、4六銀、3六玉、3三桂―――(次の図)
 どっちが勝っているのだろう?

4一角図15
 この手順の途中、4六銀に3八玉とすると、8四歩と角(馬)を取る手があって後手勝ち。
 3六玉に8四歩は悪手で、以下3二香成、同銀、3三金、同銀右、同歩成、同玉のときに、3六玉が攻めの拠点となり後手玉が詰んでしまう。
 しかし3六玉には、この図の“3三桂”が、後手に勝利を引き込む手になる。同歩成は同角成で後手勝勢。
 先手は7五馬でどうなるか(次に4二馬が狙い)
 それには5八飛成。これは次に4七竜以下詰めろなので4八歩と受けるが、5六竜と元の位置に戻る(次の図)

4一角図16
 5六竜と戻って、次に4七銀成以下の“詰めろ”になっている。2六歩と受けても、3五銀以下、わかりやすい寄せがある。
 「後手勝ち」が確定した。

 結論。「4一角〈紅〉3三香」の攻めは、後手良し。
 激戦にはなるが、正確に応じられると先手が勝てないとわかった。

4一角図17
 「4一角、3二歩」に、〈白〉5二角成(図)。
 実戦では、我々(終盤探検隊)は、この手が成立しないかと精力をそそいで考えていた。
 5二同歩に、4一飛と打つ(次の図)

4一角図18
 だが、結論を言うと、先手の勝ち筋は見つからなかった。以下は一例として手順を示す。
 7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、5一桂(次の図)

4一角図19
 ここで3三歩成とし、同玉と進む。
 そこで2一飛成はあるが、それは7六銀、7九香、6七と、8九桂、6六角で後手勝ちが決まる。
 だが、“3七桂”という手段がある(次の図)

4一角図20
 ここでの“3七桂”(図)がなかなかの手なのだ。
 対して7六銀だと、3六香で先手の勝ちになる。3六香、2二玉、2一飛成、同玉、5一竜、同銀、3二香成、同玉、3三歩、同玉、2五桂打以下なんと後手玉は詰んでしまう。3六香に3四角、同香、2二玉なら詰まないが、それでは後手に勝ち目はない。
 ここは5六角と打つのが良い手になる(次の図)

4一角図21
 今度3六香は4四玉と逃げて大丈夫だ。(以下4五金、同角、3五金、5四玉、4五金、6五玉は後手勝勢)
 先手は4五歩。この手に7六銀なら、やはり3六香がある。2二玉に、2一飛成、同玉、2二金、同玉、3四桂、3三玉、2五桂、2四玉、1五金まで詰み。
 それを受けて後手4四歩(次の図)

4一角図22
 4四歩(図)で、3六香には4三玉と逃げる道をつくった。
 どうやらここで先手に良い手段がない。後手の勝ちがはっきりしてきたようだ。
 5一竜という手はあるが、7七桂成、同玉、8九角成(次の図)

4一角図23
 後手勝勢。 先手玉に受けがなく、後手玉に詰みはない(3六香には4三玉)

4一角図24
 先手5一竜に代えて、6一竜の場合。これには7六銀(図)で、やはり後手勝勢となる。
 (この場合は7七桂成~8九角成は後手まずい。3六香には4三玉とは逃げられないので、今度は2二玉と逃げるが、その時に3四桂と打つ桂馬が先手にあれば後手玉が詰む)
 図で7九香と受けるのは、6七と、7六香、7七と、9八玉、7八角成で、後手勝ち(金金銀歩の持駒では後手玉に詰みはない)

 「4一角〈白〉5二角成」も、しっかり対応されると、先手に勝ちがないとわかった。


5四歩基本図
 「5四歩」は最新のソフト「dolphin1/Kristallweizen」が、最善手として推している手である。
 「5四歩」同銀 だと、“先手良し”になる。まずその順を見ておこう。
 5四同銀、4一角、3二歩、5二角成、同歩、4一飛(次の図)

5四歩図01
 これが「5四歩」 以下の狙いだ。今度は4二銀が浮いているため3一桂や5一桂の受けが利かない。
 7五銀、7七玉、8五桂と攻めてくるが、8八玉と逃げて、7六桂、8九玉(9八玉は9七桂成、同玉、7九角でとん死)、3一角(次の図)

5四歩図01
 3一角(図)。 角を受けに使うのは後手にとってつらいところ。
 とはいえ、ここで先手も攻めの手がないとまずい。次は7七桂成が来る。7九香の先受けは6八と、7六香、同銀、2五桂、5一香で後手良し。
 先手は早い攻めが必要な場面。
 3六香と3筋に香車を打つ手が有効手。次に3三金、同歩、同歩成、同桂、3一飛成、同銀、1一角以下の“詰めろ”になっている。
 これを後手は4四銀と受けるが、そこで7一馬とする(次の図)

5四歩図02
 7一馬(図)も、4四馬、同歩、3三金以下の“詰めろ”。 それを後手がどう受けるか。
 5三歩は、同馬(同銀引に3三金)で、無効。
 1四歩は1五歩がある。これも“詰めろ”になっており、1五同歩と取っても、やはり4四馬、同歩、3一飛成、同銀、3三金、同歩、同歩成、同桂、1一角以下、“詰み”。
 というわけで、後手は5五銀直と受けるが、その手には、6二馬とする。この手も“詰めろ”なのだが、もう後手には受けの手段がない。
 すなわち、先手勝ちが決まった。

 6二馬に、後手1四歩と受けても、詰みがある。3一飛成、同銀、同竜(次の図)

5四歩図03
 3一同玉に、4二金、同玉、5一銀、3一玉、4二金、2二玉、3一角、1一玉、4四馬、同歩、2二銀まで。

5四歩図04
 後手は「5四歩」を、“同銀” とした手が失着だったのである。
 代えて、7五銀 としたのがこの図。
 以下、7七玉、8五桂。
 そこでやはり〈a〉8八玉と〈b〉7八玉とが考えられる。

 〈a〉8八玉は、7六桂、9八玉、9五歩と進む(次の図)

5四歩図05
 以下、5三歩成、9六歩、8九玉、7七桂成(次の図)

5四歩図06
 後手勝勢。(図で3八飛は考えられる攻防の手だが、後手玉への詰めろにはなっていないので6八とで後手勝ち)

5四歩図07
 8五桂に、〈b〉7八玉なら、6六桂(図)
 以下、8八玉に7六銀で後手の攻めのほうが早い。後手玉に駒を渡さず詰めろを継続してかける手段がないので先手が困っている。受けも難しい。7九香なら、6七と、7六香、7七と、9八玉、7八桂成で、後手勝ち。

 このように、「5四歩」7五銀 以下、後手勝ちとなる。


≪指始図≫(8四金まで、再掲)
 以上の結果、この図で「2五香」「2六香」「8五金」「4一角」「5四歩」について、いずれも「後手良し」とわかった。

 (なお、[追記]として、「8六玉」の戦後研究を末尾に示しておく)




≪最終一番勝負 指了図≫ 8六歩まで

 そして我々は、予定通り、▲8六歩 を指した。

 ここではこの手以外になかったようだが、しかし8六歩としたこの図は、「先手勝ち筋」があるのだろうか? 我々の選んだ道は正しかったのだろうか。
 わずかに、脳裏のどこかを不安がよぎった瞬間でもあった。


第22譜につづく




[追記;「8六玉」の研究]

変化8六玉基本図
 上に書いた通り、この「8六玉」(図)は、最新ソフト「dolphin1/Kristallweizen」が、3番目の候補手として示していた手である。この手の効果を知るために、研究調査してみた。

 図より、7五銀、9七玉、8五桂、9八玉が想定される手順。
 7五銀に“9七玉”と逃げることができるのが、「8六玉」の特徴だが、その効果はどれくらいのものか。

変化8六玉図01
 ここで〔ア〕9五歩(端玉には端歩を突け)が考えられるが、その手はこの場合は、2五香、3一桂、2六飛の攻めが効果的でで先手良し。(4一角、3二歩、3三香でも先手良し)
 またこの図で後手〔イ〕3二歩は、3三歩成として、同銀に、4一飛と打って、これも先手良しになる。(以下、4二銀右なら5三歩、4二銀左には3三歩がある)
 他に〔ウ〕7七桂成と、〔エ〕7六銀が考えられる手。
 (〔オ〕6七とや〔カ〕6六銀左は、やはり2五香~2六飛の攻めが速く先手が良い)

 〔ウ〕7七桂成は、7九香、7六銀、7七香、同銀成と進むと、そこで3三桂がある(次の図)

変化8六玉図02
 3三同桂、同歩成、同銀と応じるのは、3四歩、同銀、2六桂で先手が良い。
 なので後手は3二歩と受けるが、2一桂成、同玉、3三桂、同歩、4一角で攻めが続く(次の図)

変化8六玉図03
 3一香の受けに、3三歩成、同銀、3二歩、同香、5二角成(次の図)

変化8六玉図04
 先手優勢である。
 以下、4二銀右には、5一竜、3一歩、4一金で、先手勝ち。
 4二銀左には、3三歩で先手勝勢(次に5一竜、3一歩、3二歩成、同玉、3四香以下の詰めろ)

変化8六玉図05
 後手は〔エ〕7六銀(図)とするのが良い。
 次に7七桂成と7五桂を指されると先手は支えきれなくなる。よって、ここは「7九香」。
 「7九香」に、7七桂成なら、先ほどの7七香、同銀成、3三桂の変化に合流して先手良し。
 しかし、このタイミングで「9五歩」が後手の好手順になる(次の図)

変化8六玉図06
 先手に「7九香」と香車を使わせたので、先手からの2五香~2六飛や、4一角~3三香の早い攻めがなくなっているので、「9五歩」が間に合ってくるという計算である。
 ここで(1)7六香、(2)8六歩、(3)4一角、(4)7一馬などの手が考えられる。順に見ていく。

 まず(1)7六香は、9六歩、8九玉、6七と、3三歩成、同銀、4五角(攻防の手)、7七と、3八飛、9七歩成(次の図)

変化8六玉図07
 後手勝勢。

変化8六玉図08
 (2)8六歩(図)の場合。桂馬を取りきれば、3三桂など攻めに使える。
 しかし、6七と、8五歩に、8六桂がある(次の図)

変化8六玉図09
 9七玉なら8五金、8八玉には6六銀で、先手敗勢である。

変化8六玉図10
 (3)4一角(図)はどうなるか。
 3二歩、3三歩成、同銀、5二角成(同歩なら3一飛で先手良し)、9六歩、5三馬(次の図)

変化8六玉図11
 9七歩成、同馬、同桂成、同玉、9六歩、9八玉、8五桂、8九桂、6七と(次の図)

変化8六玉図12
 ここまで進んでみると、これは後手優勢の図になっている。
 7六香は、9七歩成、同桂、同桂成、同玉、8五桂以下、先手玉に詰みがある。
 先手はここで5一竜としたいが、それには4二角がピッタリの攻防手になる。

 ここから3四歩以下、手順の一例を示しておく。3四歩、4二銀、4一飛、7五角、8八銀、7七と(次の図)

変化8六玉図13
 後手勝勢である。

変化8六玉図14
 (4)7一馬(図)。
 「9六歩」、同竜、9七歩、8八玉に、7五金として、どうか(次の図)

変化8六玉図15
 7六香には、8四桂を用意して、後手好調に見える。
 ところがここで先手に好手順がある。3三歩成、同銀、4一飛、3一歩、3四歩(次の図)

変化8六玉図16
 こう進んでみると、先手有望の図になっているのである。
 4二銀左に――――(次の図)

変化8六玉図17
 5三馬(図)。 先手優勢。
 5三同銀なら、3三銀と打って、同桂、1一角以下、後手玉詰み。

変化8六玉図18
 (4)7一馬に、後手は「9六歩」として今の変化になったのだが、その手に代えて「3一歩」 としたのが、この図。先手からの3三歩成、同銀、4一飛のような攻めを先に受けた手である。
 結論を言えば、この図は「後手良し」。

 ここで〈a〉2五飛は、6六銀、4一角、3二桂で攻めが続かない。
 〈b〉3七桂と〈c〉7六香の変化の例を以下に示しておこう。

 〈b〉3七桂は遅い手に見えるが、そうではない。後手は6七ととするが、そこで5三馬が狙いの一手(次の図)

変化8六玉図19
 5三同銀なら3三銀から後手玉が詰むというわけである。
 5三同金なら4一飛、5二金という展開になり、それでも後手が良いが、ここは7七とで決着をつけに行く手がある。以下、8六馬に、7五金(次の図)

変化8六玉図20
 後手優勢である。

変化8六玉図21
 〈c〉7六香と銀を取る手には、そこで9六歩(図)。
 以下、同竜に、6七と、8六銀(次の図) 

変化8六玉図22
 9五歩、8五竜、同金、同銀、7七と(詰めろ)、9七玉、7六と、3五桂(次の図)

変化8六玉図23
 3五桂(図)は、後手7七飛なら2三桂成、同玉、2六飛、2五歩、7六飛とと金を消す狙いがある。
 ここは後手1一桂が手堅い。
 それでも2三桂成、同桂、2四金と攻めてくる。
 そこで後手は7七飛(次の図)

変化8六玉図24
 8八金の受けが見えるが、7九飛成、8九飛、9六香の展開は、先手に勝ち目がないと判断するなら、2三金以下突進することになる。
 2三金、同玉、2六飛。
 これに対する正しい受けは、2五歩、同飛、2四金である(次の図)

変化8六玉図25
 2四金(図)と受けるのが正着手。
 これを2四香では、1五桂、3二玉、2三角、2二玉、1二角成以下、後手玉は詰んでいた。
 図の2四金なら、1五桂、3二玉、2三角には同金と取って、以下同飛成に、4一玉と逃げて後手勝ちである。ここにきて先ほどに打っておいた「3一歩」が役立ってきた形だ。

 後手勝勢である。 この図から、2四飛、同玉、6八角はあるが、4六飛の切り返しがある。

変化8六玉基本図
 ということで、「8六玉」の研究結果は、「7五銀、9七玉、8五桂、9八玉、7六銀」以下「後手良し」、が結論である。(ただし実戦的には互角に近い戦いになることもわかった)
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終盤探検隊 part121 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第20譜

2019年06月09日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第20譜 指始図≫ 9四歩まで

 指し手  ▲9六歩  △8四金


    [円鏡=レンズ]
 アフサンもそのかたわらに身を横たえて、ノヴァトと尻尾をからみあわせた。もうへとへとだった。二頭はすぐに眠りにおちた。
 世界は破滅に近づいているかもしれない。
 だが、それを心配するのは明日にしておこう。

 そして、明日はやってきた―――夜明けからずいぶんたって目をさましたのに、それでも早すぎるような気がした。ワヴ=ノヴァトはだいぶ前に起きたらしく、せっせと遠見鏡につけた屈折硝子の調節をしていた。
   (『占星師アフサンの遠見鏡』ロバート・J・ソウヤー著 内田昌之訳 より)



 「遠見鏡(とおめがね)」とは「望遠鏡(ぼうえんきょう)」の別名である。日本では昔は「遠見鏡(とおめがね)」と呼んでいて、今は「望遠鏡(ぼうえんきょう)」と呼ぶ。
 だが、疑問に思うのは、これらになぜ「鏡」の文字が使われているのだろう、ということである。
 シンプルな形状の「望遠鏡」には実際は鏡は使われていないというのに。(かならず使われているのはレンズである)

 そういえば、「顕微鏡」にも「鏡」の字が使われている。これはたしかに鏡も使用されていることが多いが…、この装置の重要な部分はしかし、レンズのほうである。
 (英語では「望遠鏡」は「telescope」だし、「顕微鏡」は「microscope」で、「鏡」は「mirror」である)

 また、メガネも漢字で書くと「眼鏡」。やはり「鏡」の字が使われている。
 なぜだろうか。
 (英語ではメガネは「glasses」、これは「ガラス(glass)×2」の意味である。他に“光景”を意味する「spectacles」を使うこともある)

 おそらく、「レンズ」に「鏡」の文字が使われていたからである。
 昔、「レンズ」にはどうやら「円鏡」の文字が当てられていた。明治・大正時代のいくつかの書にはたしかにそれが使われている。
 ところがなぜか、「円鏡」と書いて「レンズ」と読むというシステムはやがて廃れてしまった。
 「レンズ」=「円鏡」と考えれば、「眼鏡」「望遠鏡(遠見鏡)」「顕微鏡」などに「鏡」の文字が使用されていることへの疑問も氷解する。
 日本ではレンズのようなまるく平べったい形状は、「鏡餅(かがみもち)」の例もあるように「鏡」をイメージするものであった。

 西洋の「レンズ(lens)」という呼び名は、元をたどれば、“レンズ豆”からきている。古くからあったレンズ豆に「レンズ」の形状が似ていたからだ。豆のほうが“先住民”なのである。

 天文学・物理学の分野で有名なガリレオ・ガリレイ(イタリアのピサの生まれ)が自作の望遠鏡を使って、木星の4つの衛星――ガニメデ、イオ、カリスト、エウロパ――を見つけたのは、西暦1600年頃。
 その少し前にだれかが「レンズ」を発明した。それが天文学を大きく前進させたのは間違いないが、その功労者である“「レンズ」の最初の発明者”がだれなのか、はっきりわかっていない。


 ロバート・J・ソウヤー著『占星師アフサンの遠見鏡』の原題は『Far-Seer』である。この「far-seer」という語はおそらく「遠見鏡(望遠鏡)」のことを指すと思われるが、そのような英単語は実用英語にはないようなので、たぶんこの作者の小説のための造語であろう。
 この物語は、ある星で恐竜(知性をもつ恐竜の種族)の少年アフサンが、「遠見鏡」という新しい道具を手にして、宇宙の正しい姿を見つけていくという話である。(恐竜なので牙と大きな尻尾があり肉食である)
 そしてアフサンは、自分たちの住んでいる世界は、「惑星」の周囲を周回する「月」の位置にあり、そして数百年の未来にはこの大地である「月」は、粉々に砕けて「惑星の輪」になってしまうだろうと未来を予見し警告を発するのである。
 「SF」という小説の分野によく現れていた古典的な展開――ロケットをつくって宇宙へ脱出する――というこの恐竜族(キンタグリオ)の未来への序章となる話である。
 この『占星師アフサンの遠見鏡』は、1990年代に「キンタグリオ・シリーズ」として作者のソウヤーが発表した三部作のその第一作目の書になる。
 ところがなぜか、米国ですでに発表されている第二、第三作目の書は日本では翻訳されていない。今後も翻訳される気配はなさそうで、続きを読むには、英語の本を読むしかなさそうだ。
 この恐竜の子孫たちは、おそらくロケットをつくって、<神の顔>と呼んでいた美しい「惑星」へと移住するのであろう。



<第20譜 再び“まぼろしの2五香ロケット”>

≪指始図≫ 9四歩まで

 終盤探検隊vs亜空間の主(ぬし)の最後の戦いはここまできた。先手9三角成に後手の≪ぬし≫が9四歩(図)と応じたところ。
 これは予想通りの手で、我々はその次の手を9六歩と決めていた。だからここはほとんどノータイムで指した。

 だが――――、ちょっと待て。


[研究:2五香ロケット2号]

2五香テーマ図
 ここで、「2五香」 があったのではないか。
 これが今回の研究テーマである。

 しかしチャンスは思わぬところに眠っているものだ(ここに“可能性”が潜んでいたとは!!)
 我々(終盤探検隊)は、「激指」(13、14)を使ってこの≪亜空間戦争≫を戦っているが、ここでの「2五香」は「激指14」では見つからない(8~10番目の候補手として瞬間的に時々現れることはあった)

 にもかかわらず、(戦後ではあるが)我々がここでの「2五香」を調べてみようと思ったのは、最新ソフト「dolphin1/orqha1018」が、この「2五香」を評価していたこと(評価値+12)、そして戦後研究で「4手前の2五香」(2五香ロケット砲)が「先手良し」と判明したので、それなら、ここでの「2五香」も調べる価値があると考えたからである。(4手前の2五香ロケットの研究調査はこちら→第15譜第17譜

 さて、ここで後手の指し手が問題である。


変化8四桂図01
 まずこの手――〔1〕8四桂(図)。 後手としてはこれが一番指したい手のはず。
 〔1〕8四桂 に7七玉で後手良し―――これが後手の目論見だが―――
 しかし、この場合は8四同馬があるのだ!
 以下、同歩に、2三香成、同玉、2五飛(次の図)

変化8四桂図02
 これで先手勝ちとなる。後手玉はこの2五飛(図)以下、詰んでいるのだ。(桂馬を入手すればこの詰みがある)
 さて、ほんとうに詰んでいるかどうか確認しておこう。
 3四玉なら、2四金、4四玉、3六桂、5四玉、4五角まで。
 よって2五飛には、2四合いだが、何を合駒しても、1五桂と打つ。2四金合が一番長くなるのでそれを示しておく。
 2四金合、1五桂、3二玉(3四玉は2三角、同金、3五金、3三玉、2三飛成まで)、2三角、2二玉、1二角成(次の図)

変化8四桂図03
 3一玉に、2二馬、同玉、2四飛以下、“詰み”である。


変化7四歩図01
 後手〔2〕7四歩(図)の場合。
 この手は先手が香車を捨てて攻めてきたときに7五香と打つのが一つの狙い。他には後手7三桂のような手も狙いとしてある。

変化7四歩図02
 〔2〕7四歩 には、8五玉(図)で、先手が良い。
 8四金なら、同馬、同歩、9四玉で先手玉が安全になる。7三銀なら9四玉だ。
 もしも後手が7四歩としていなかったら8五玉に9五金と打って追い返すこともできたが、この場合は9五金には7四玉とできる。つまり後手の7四歩が8五玉を好手にしたのである。


変化8四金図01
 〔3〕8四金(図)。 これは、先手の馬を封じ込めつつ先手玉の入玉を阻止した手。
 対して先手8五金は、7四歩なら、8四金、同歩、同馬で、先手有望だが、8五金に6五銀という手がある。以下、同玉に、5六銀、7六玉、6四桂以下、後手優勢となる。
 また、図で8六歩は有力だが、3一桂といったん受けておかれると、そこで先手の有望手が見つからず、先手が苦戦である。

 〔3〕8四金 に対しては、次の手が良いようだ(次の図)

変化8四金図02
 「7七玉」(図)とする。この場合はこれがベストの指手のようだ。
 この手は、後手の金銀の圧力から逃れ、さらに8八玉~9八玉と逃げる道を確保した手である。

 ここで後手はどうするか。勝負どころである。
 〈a〉6六歩、〈b〉7五銀、〈c〉3一桂、〈d〉6五桂が有力手。
 
 まず〈a〉6六歩でどうなるか。
 これには先手2通りの勝ち方がある。「2六飛」と、それから「2三香成、同玉、4五角」である。

 まず「2六飛」から見ていく。この図から、6六歩、2六飛、1一桂、8八玉、6七歩成、2三香成と進む(次の図)

変化8四金図03
 2三同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂(次の図)

変化8四金図04
 これで後手に受けはない。(3二金としても、4一角があるので)
 そして「金香」の持駒では、8八にいる先手玉は寄らない。よって先手勝ち。

変化8四金図05
 「7七玉」とした「変化8四金図02」から、「2三香成、同玉、4五角」としたのがこの図である。
 これでも先手が勝ち。
 3二玉なら3三歩成、同銀、2三金、4二玉、8四馬。4四歩には、3三歩成、同玉、2三飛、3二玉、2二金、4一玉、8四馬。(8四に金の質駒がある)
 また、図で2二桂(3四に利かせた)には3五飛がある。

変化8四金図06
 「7七玉」に、〈b〉7五銀(図)の場合。
 これに対しても、「2三香成、同玉、4五角」が有効である。
 以下3一銀が後手苦心の手だが…

変化8四金図07
 3五飛(図)と打って、先手勝勢である。(以下、3二玉に、3三歩成、同桂、3四歩)

変化8四金図08
 それではと、先手の「7七玉」に、〈c〉3一桂(図)と後手が2三を先受けした場合。これなら「2三香成、同玉、4五角」の攻めはない。
 では、「2六飛」でどうなるか。
 後手は「7五銀」。(1四桂もあるところでその変化は後述する)
 以下、8八玉、6六銀左と進む(次の図)
 
変化8四金図09
 ここで2三香成と攻めていくと先手失敗となる。まずその順を見ておこう。
 2三香成、同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂、2五歩、同飛、2四歩(次の図)

変化8四金図10
 後手の2四歩~2五歩の連打は、2四同飛で意味ないように見えるが、この歩の連打は先手の飛車の横利きをなくすための歩打ちだった。2四飛となると、飛車の5段目、6段目の横利きがなくなる。
 そこで、後手の攻めがある。7七銀成、同玉、7六銀(次の図)

変化8四金図11
 7六同玉は、7五香、6五玉、7四金、6六玉、5六金までの“詰み”。
 8八玉と逃げても、7七金、8九玉、8八香以下、やはり詰んでいる。
 「2三香成」からの攻めは、先手が負けになった。

 今の手順中、4一角と打って、後手に3二歩と受けさせれば、後手の歩は一枚になるので2四歩~2五歩の連打はない。しかし…

変化8四金図12 
 “連打”でなくともこの図のように「2四歩」で先手の攻めを止められてしまう。2四飛と取れないようでは、先手の分が悪い。

変化8四金図13
 しかし、改良案がある。「変化8四金図09」(後手6六銀左)で、9八玉(図)と先逃げするのである。
 ここで後手7七銀成としたいところだが、それには5五角がある。(そのために先手は角は手駒に持っておくべき)
 また、7六銀には、6六飛がある。
 なのでこの図では、後手は6七としかなさそうだ。そこで2三香成と攻めていく。
 6七と、2三香成、同桂、2四金、3一桂、2三金、同桂、1五桂(次の図)

変化8四金図14
 後手“受けなし”である。3二金には4一角があるし、3一玉には、2三桂成、6二金、3二角で先手勝ち。
 今度は2四歩は同飛で、何ら問題がない。

 「2六飛」に、「7五銀」は、先手勝ちになった。

変化8四金図15
 「2六飛」に、「1四桂」(図)ならどうなるか。これは3一桂と先受けした手を生かした手。
 先手はここで2三香成、同桂、2五飛もあるが、3六飛がより堅実な手で、これで先手が良い。
 3六飛以下、7五銀、8八玉、6六銀左、9八玉、6七と、3三角(次の図)

変化8四金図16
 玉を9八まで移動しておいて、3三角(図)と打ちこむ。
 3三同桂、同歩成、同銀に、3四歩と打つ。以下4四銀には、3三金、1一玉、8四馬で、先手勝勢である。

変化8四金図17
 今の一直線の手順だと先手勝ちになったので、後手は6七とに代えて、3二歩と受けた場合。
 それには先手1五歩(図)
 以下、6七と、1四歩、同歩、1三歩、同香(同桂には2六桂と打ち以下2五桂、1四桂、同香、同香は先手勝ち)、1二歩、同玉、4五角(次の図)

変化8四金図18
 4五角(図)と打って、次に2四桂、同歩、3三歩成の“詰めろ”。
 なので図では2二玉だろうが、3五桂と打てば、後手にもう受けがない。先手勝ちになった。

 ということで、〈c〉3一桂は「2六飛」以下先手勝ち、と結論する。

変化8四金図19
 〈d〉6五桂(図)と攻める手はどうか。
 以下、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成。これには8九金と受ける。
 そこで後手2四歩(次の図)

変化8四金図20
 後手の攻撃的な指し回しである。後手は二枚の桂を攻めに使ったので、先手に2六飛と打たれるともう受けがない。なのでその2六飛が来る前に、2四歩(図)から先手の香車を除去しようというのである。
 2四同香には2三歩、これは先手悪い。
 ここでは4五角が正着。2五歩なら8四馬、同歩、2四飛で、先手勝ちになる。
 4五角には、4四歩が後手最強の応手。以下、2四香、2三歩、3三歩成、同玉、2三角成、4三玉、3七飛(次の図)

変化8四金図21
 3七飛(図)は3二馬までの“詰めろ”。
 なので後手は3三桂とし、5七飛、6七歩、6六歩と進む(次の図)

変化8四金図22
 この6六歩(図)は後手玉を捕らえるための拠点になる手で、次に5九飛で金を取った後、5五飛、同銀、3四銀、5四玉、3二馬、4三銀、同馬、同金、6五金、6三玉、6一竜(以下詰み)という寄せを狙っている。
 6九金と金を逃げても、8四馬から5五飛で、やはり同じ攻めがある。
 ということで、図の6六歩を後手は同銀と取ることになる。以下、5九飛、5五銀上、6九歩(次の図)

変化8四金図23
 先手良し。(ただしまだ勝つまでには大変)
 図以下は、6八歩成、同歩、同桂成、3九飛、6七銀不成が予想され、以下3四歩、5四玉、3三歩成、7六銀成、8八金打、同成桂、同金、7七金、8九桂―――これは、“正確に指せば”という条件付きで先手が勝てる。

 以上の調査結果から、〔3〕8四金 の変化は、先手良し。


変化3一桂図01
 「2五香」 に対し、〔4〕3一桂(図)も有力な手である。
 「2三」を先に受けておいたので、たとえばここで先手が2六飛なら、8四桂で後手良しになる。
 先手は5七馬とするのが最善だろう(次の図)

変化3一桂図02
 先手5七馬(図)とと金を払いながら馬を自陣に引きつけた。
 ここで8四桂は8六玉で先手良し。また6五桂は9三馬と戻っておいて、これも先手が良い。
 後手の最善手はおそららく6六歩である(次の図)

変化3一桂図03
 次に後手6五桂がありこれは“詰めろ馬取り”になる。先手、どうするか。
 最新ソフトの評価値もここは「互角」。ここでの先手の最善手がはっきりしない。
 我々の調査研究の結果、「7九馬」は5六銀で後手良し。「3五馬」も、4四銀上が好手で、以下2六馬、5六銀で後手良しという結果になった。

 苦心して見つけた先手の有望手は、「4八馬」または「8六歩」である。
 「8六歩」以下を見ていく。

変化3一桂図04
 「8六歩」(図)。 この手は最新ソフト(dolphin1/Kristallweizen)の評価の低かった手で、その理由はおそらく「8六歩」には8四桂 と打たれる手があるからである。
 しかし 8四桂 に8七玉として、その後を調べてみると、「先手良し」の結論となった。

変化3一桂図05
 8七玉(図)としたところ。ここから後手はどう迫ってくるか。
 7六金、9八玉、6七歩成が考えられるところだ。(他に7五銀および6七歩成があり、後述する)
 以下、先手は2三香成とし、同桂に、2四馬と、敵玉に迫って行く(次の図)

変化3一桂図06
 2三馬、同玉、2五飛以下の“詰めろ”になっている。
 それを受ける手もなく、先手勝ちが確定となる。

変化3一桂図07
 7六金に代えて、7五銀(図)としたところ。
 「2三香成、同桂、2四馬」と、同じように攻めてみよう。
 以下、7六銀、9八玉、8七金、8九玉、8八香、7九玉、6七歩成(次の図)

変化3一桂図08
 実はこの図は“後手良し”である。
 後手玉には、2三馬、同玉、2五飛、2四合、1五桂の“詰めろ”がかかっていたはずだが…
 「2四合」のところで、「2四角」とすれば、これが“逆王手”になる。対して3五桂の返し技はあるが、3四玉、2三角、3三玉で、後手玉は詰まず、先手が負けになるのである。(1五桂なら詰むが、3五桂では詰まないのだ)
 先手玉を「7九」まで誘導することで、この“逆王手”が実現した。

 この図で3八飛(詰めろ逃れの詰めろ)があるが、7八と、同飛、同金、同玉、6六銀で後手優勢。

変化3一桂図09
 しかし修正案がある。「2三香成、同桂」の次に「2四金」(図)と打つのである。

 以下8六銀の勝負手には9八玉と逃げておく(8六同玉もあるが8五香以下きわどい)
 さらに8七金、8九玉、7七銀成なら、2三金、同玉、4一角から後手玉が詰む。
 よって、後手は3二金と受ける。これには4一角と打って、これも“詰めろ”である。
 仮に後手8五香なら、3二角成、同玉、2三金、同玉、2五飛、3二玉、2四桂(次の図)

変化3一桂図10
 2三玉に、1二桂成以下、“詰み”。 先手勝ち。

変化3一桂図11
 6七歩成(図)の場合。
 これには、2三香成、同桂の後、8四馬が面白い(2四馬でも先手良し)

変化3一桂図12
 8四馬で桂馬を入手して、後手玉が3二飛、同玉、2四桂以下の“詰めろ”になっている。
 以下は一例を示す。1四歩(詰めろを受けた)、9四馬、6六と、2四桂、3二歩(先手3二飛の防ぎ)、1二桂成、同玉、1五歩(次の図)

変化3一桂図13
 先手優勢。

 このように、後手8四桂以下は「先手良し」となる。

変化3一桂図14
 「8六歩」に、6五桂(図)。 こちらのほうが、実は手強い。
 先手は4八馬とかわす(6八馬も有力だが5六銀以下難解な変化になる。4八馬なら5六銀には6六馬がある)
 以下、7四歩(代えて6七歩成は9四竜で先手良し)に、8五玉(次の図)

変化3一桂図15
 8五玉(図)が面白い手。“入玉”を見せて、後手に8四金と打たせる意味。
 8四金に、7六玉と戻っておく。
 そこで6九金なら、2六飛と打って、次に2三香成、同桂、2四金を狙って先手良し。また7五銀は6五玉があって無効。
 7五歩、8七玉、6七歩成、5九馬、7六歩、1五馬(次の図)

変化3一桂図16
 金を一枚補充して1五馬と出たこの図は、3三金以下の“詰めろ”になっている。
 7七歩成、9八玉で、次に7八と左が先手玉への詰めろになるが、先手の攻めが一歩早い。
 後手3二歩と受けるくらいだが、2三香成、同桂、2五飛で、次の図となる。 

変化3一桂図17
 この2五飛(図)も、2三飛成、同玉、3五桂以下の“詰めろ”。
 3一玉と逃げても、2三飛成、2二歩、1二竜で、これもまた2三桂、4一玉、2一竜、3一香、3三桂以下の“詰めろ”になっている。 先手勝ち。
 (ここまでの手順で、先手の1五馬を防いで1四歩と先に受けるのは2六飛からの攻めが間に合って先手良し)

 どうやら、〔4〕3一桂 も「先手良し」と結論してよさそうだ。


2五香テーマ図(再掲)
  この図から、〔1〕8四桂〔2〕7四歩〔3〕8四金〔4〕3一桂 の4つの手を調べたが、すべて「先手良し」と出た。

 他に考えられる手としては、〔5〕4四銀上 がある。この手には、3七桂と応じ(2三香成以下詰めろ)、以下3一桂の受けに5七馬として、この変化も先手良しになる(解説は省略)
 また〔6〕6三桂 は、2六飛、3一桂、4五角、1一玉、9四馬で、先手勝勢。

 後は、〔7〕6六歩、それから 〔8〕5六と が考えられる。


変化6六歩図01
 〔7〕6六歩(図)。
 ここで「2六飛」は、3一桂ではっきりしない形勢になる(おそらく先手が悪い)
 「2三香成、同玉、4五角」は、この場合は“暴発”になる。 後手に7五香と打たれ、以下同馬、同銀、同玉、6四銀上、8五玉、5八角、6七歩、9五金以下先手負け。

 〔7〕6六歩 には、次の手が良い(次の図)

変化6六歩図02
 「9六歩」(図)である。これで先手が局面をリードできる。
 「9六歩」には、後手8四金の一手(先手に8五玉からの入玉を許しては後手の勝ち目はない)
 そこで、「2六飛」と打って、後手の3一桂に、4一角、3二歩、2三香成(次の図)

変化6六歩図03
 2三同桂に、2四金と攻めていく(もう何度も見てきた攻め筋だ)
 以下、3一桂に、2三金、同桂、1五桂(次の図)

変化6六歩図04
 「金香」を渡しても、9六歩を突いておいた効果もあって、先手玉は寄らない。
 一方、後手玉は“受けなし”だ。(3一玉には5二角成)
 先手勝ちが確定した。


変化5六と図01
 〔8〕5六と に対しても、「9六歩」(図)。
 以下8四金に、「2六飛」から同じ攻めで先手が勝てる。
 〔7〕6六歩 との違いはここで6六とのような手があることだが、その手には8五玉で先手勝勢になる。


2五香テーマ図(再掲)
 これまでの調査研究によって、ここで 「2五香」 と打った図は、「先手良し」とわかった。

 以上が「2五香ロケット2号」の研究である。




≪最終一番勝負 9六歩まで≫

 さて、「亜空間戦争最終一番勝負」は、「2五香」の手は素通りして、▲9六歩(図) と進んだ。



≪最終一番勝負 第20譜 指了図≫ 8四金まで

 9六歩には、△8四金(図) である。

 ここで8六歩が予定であった。
 だが、2五香もあるかもしれないとここでは立ちどまって考えた。相棒の「激指」が6番目の候補手として挙げている。だが、評価値は[ -933 ]――――あまりよくない。(2五香に6六歩や5六となら、今回の研究に合流し先手良しになるはずだが)
 なお、8六歩のほうの「激指」評価値は[ -379 ]である。


第21譜につづく
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終盤探検隊 part120 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第19譜

2019年05月20日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第19譜 指始図≫ 9三角成まで

 指し手  △9四歩


    [The Mirror of Erised(みぞの鏡)]
 天井まで届くような背の高い見事な鏡だ。
  (中略)
 鏡に近寄って透明になったところをもう一度見たくて、真ん前に立ってみた。
 ハリーは思わず叫び声を上げそうになり、両手で口をふせいだ。急いで振り返って、あたりを見回した。本が叫んだ時よりもずっと激しく動悸がした―――鏡に映ったのは自分だけではない。ハリーのすぐ後ろにたくさんの人が映っていたのだ。
 しかし、部屋には誰もいない。あえぎながら、もう一度ソーッと鏡を振り返って見た。
       (『ハリーポッターと賢者の石』J.K.ローリング著 松岡佑子訳 より)



 『ハリーポッターと賢者の石』に登場する魔法の「鏡」は、「みぞの鏡」である。これは訳者の松岡氏がそのように翻訳したもので、原作では「The Mirror of Erised」である。「erised」という英単語はなく、これは「desire」(=のぞみ)を逆さに並べたもの。
 この「鏡」は、のぞいた人の「desire」が映し出される鏡だったのである。

 『ハリー・ポッターシリーズ』は映画化もされていて説明する必要もないほどの有名な人気小説で、そのシリーズの最初の作品『ハリーポッターと賢者の石』は1997年に発表された。内容は少年ハリー・ポッターがホグワーツ魔法学校に入り、そこを舞台とする“戦い”の物語である。
 その“戦い”の相手は姿の見えない敵(人間としての肉体をすでに失っている)ヴォルデモートであり、彼は手下を使ってこの学校に密かに収められている≪賢者の石≫を奪おうとしてきた。ハリーとその仲間はそのことに気づいて戦ったのである。
 この≪賢者の石≫は、ホグワーツ魔法学校の図書室の奥の部屋の「鏡」の中に保管されていた、という設定である。つまりこの場合、「鏡」は、この貴重品を秘密に保管しておく“金庫”のような役割として使われていたのであった。
 この≪石≫は、伝説の錬金術師ニコラス・フラメルがつくったもので、この小説の設定では、フラメルは、この≪賢者の石≫をつかって(不老不死を得て)、今も妻とともに生きていて年齢は665歳になると、ハリーとその仲間たちが調べた学校の図書館の本には書いてあった。

 ニコラス・フラメル(ニコラ・フラメルと表記されることのほうが多い)は、14世紀にパリに実在した人物で、「錬金術師」として有名になった。錬金術に関するあやしい本を出していたというのが第一の理由である。
 本業は出版業者であったが、いろいろなところへ多額の寄付をしていたので「その財産はきっと錬金術が成功して得たものだ」と当時から街ではうわさされていたのだろう。
 年を取ってパリ・セーヌ川の近くの家に妻とともに暮らしていたが、ある日夫婦ともども忽然と消えてしまった。そういう妙な“最後”だったので、その後に「ニコラ・フラメルは賢者の石の創造に成功して不老不死となり今も生きている」などということになったようである。

 錬金術師(アルケミスト)とは要するに、独学で「科学」を研究する人物のことであろう。彼らの多くは、「アラビアの書物」から「科学」の知識を学ぼうとしていたのであった。
 なぜ、「アラビアの書物」なのか。それは、その書の中には、欧州ではもうすっかり失われてしまった「科学」というものへの探求があったからである。

 まず、今から約2500年ほど前に、「科学」が地中海で発達した。いわゆる「古代ギリシャ科学」である。
 有名な人物を何人か挙げれば、タレス(紀元前624-546)、ピタゴラス(紀元前582-496)、デモクリトス(紀元前460-370)、アルキメデス(紀元前287-212)など。
 アリストテレス(紀元前384-322)を師として尊敬していたマケドニアの王アレキサンドロス3世が紀元前338年に「東方遠征」を開始した。わずか10年でペルシャ地方をわがものとし、これによって、地中海で発展していた「科学」は、この「東方の地」すなわちペルシャ地方(今のイランの場所)にも広がった。このときに地中海の「科学」がアラビア語に翻訳され図書館に保存された。
 やがて時が過ぎ、「欧州」では、ギリシャからローマ帝国に受け継がれた「科学」も、だんだんと失われていった。
 ところが「東方」すなわちアラビア地域では、「科学」は受け継がれて発展していったのである。アラビア語の「科学」の知識が、バクダッドの図書館などに蓄積されていった。欧州では失われていった「科学」が、アラビア地域には残されたのである。

 1000年以上の時が過ぎ、十字軍の遠征の歴史などを経て、いわゆる「イタリア商人」などの活動があって、少しづつまたアラビアの図書館に蓄積された知識が欧州へと逆輸入されていく。
 アラビア語で書かれた「科学」が、ラテン語に翻訳され、それを欧州の知識人が読んで、その意味を解読するということがゆっくりと行われ、欧州は徐々に「科学」に目覚めていくのである。
 そうしたことを、個々にやっていたのが、欧州の錬金術師(アルケミスト)たちというわけだ。

 この錬金術師たちの目的はさまざまであった。ある者は文字通りに「金」を創造して富を得たいと考えていたであろう。またある者は純粋に「科学」への好奇心が止まらなくなって突き動かされたのかもしれない。
 16世紀、これ(錬金術の知識)を医術に使おうと研究していたのが、スイスでアルケミストとして有名なパラケルススである。彼は病に効く薬をつくろうとしていた。常人の理解を超えるほどの彼の熱意をもった知識探求の努力行為が、人々の間で「パラケルススは賢者の石を創造しそれを使えば不老不死になるらしい」というようなうわさを巻き起こした。
 他に有名な錬金術師(アルケミスト)を何人か挙げておくと、ヘルメス・トリスメギストス(錬金術の祖とされる紀元以前の人物)、ゲオルク・ファウスト(死後ゲーテの小説の主人公として有名になった16世紀の人物)、カリオストロ(シチリア島生まれの18世紀の人物)など。

 

<第19譜 後手8四金の変化>

≪最終一番勝負 指始図≫ 9三角成まで
 ≪亜空間最終一番勝負≫。 △5五銀引 に、▲9三角成 と進んだ。

 先手を持つ我々終盤探検隊は、後手はここで△9四歩と指すことと想定して、こう進めていた。


≪最終一番勝負 第19譜 指了図≫ 9四歩まで

 そして実際にそのとおり、後手――≪亜空間の主(ぬし)≫――の指し手は、△9四歩 だった。

第20譜に続く



[変化8四金の研究]

 ただし、今回の指始図(9三角成図)では、△9四歩と並んで、△8四金も有力な手であった。

8四金図
 もし、「8四金」(図)と後手が指していたらどうなったのか。
 実は、ここでの8四金を、われわれは“こっそりと恐れていた”のである。

参考図1a(3四銀型)
 過去の≪亜空間戦争≫の中で、3四歩を“同銀”と応じた「3四銀型」での、“8四金”についてはすでに経験済みで、さらなる研究調査によって蓄積されたものもあった。
 しかし、「4二銀型」については、まったく準備がなかった。
 とはいえ、「3四銀型」での経験値の蓄積は、うまく利用すれば役に立つはずである。

 ここではやはり、「3四銀型」と同じ手―――8五金(次の図)―――が最善手と考え、我々(終盤探検隊)はもし「変化8四金図」になればそう指す予定であった。

8五金基本図
 8五金(図)には7四歩とくるだろう。(8五同金、同玉、8四金、同馬、同歩、9四玉は先手良し)
 以下、8四金、同歩、同馬、8三歩(次の図)

8五金図01
 8三歩(図)に同馬なら7五金で後手が勝ち。かといって、5七馬も、7五銀で後手良し。
 先手に、二つの有力手がある。 〔ア〕7四馬 と、〔イ〕8五玉

 〔ア〕7四馬 に、後手としてはそこで8四金と打ちたいが、それはこの場合5二馬で先手良しになる。
 なので、〔ア〕7四馬 に、後手は7五金とするのが最善手。
 以下、同馬、同銀、8五玉(同玉は6四角の王手竜取りがある)、8四銀、9四玉。
 そして、4七角(次の図)

8五金図02
 後手の持駒は桂だけなので先手が良さそうに見え、我々はこれで先手が良いだろうと最初は考えていた。
 しかし調べてみると、実はまだ難しいと判明。 ここから先手が良くなるための明瞭な順が見つからないのだ。

 おそらく、最善手は「9三金」だろうと考え、以下進めていく。
 「9三金」、7四角成(8五銀以下詰めろ)、8五香、6二金(次の図)

8五金図03
 この6二金(図)が好手で、ここからはっきり先手が良くなる手順が発見できない。
 この6二金の手は、この金を動員して先手玉を捕らえようという力強い手で、これは後手が「4二銀型」の陣形だから可能な手だ(4二銀がいなかったら先手5一竜がある)
 ソフトはここで7五歩を推奨する。(他の手ではどうも先手が勝てそうもない)
 7五歩、同馬、4一角、3二歩、3三歩成、同桂、8三玉、9三銀、9二玉、8五歩、同香、3一玉(次の図)

8五金図04
 このタイミングで、3一玉(図)。
 ここで6三歩、4一玉、6二歩成、同銀は、後手良し。
 3一玉には、1一飛が優るようだが…
 1一飛、2一金、同飛成、同玉、8三香成、9四銀、9三金、8三銀、同金、9五飛、9三金打、7二金(次の図)

8五金図05
 後手の攻めもなかなか止められない。しかししっかり受ければ先手玉は捕まることはなさそうだ。といっても先手の持駒にももう余裕はない。
 すると千日手の可能性の高い状況である。
 「千日手」では、我々(先手)としては不満だが、しかしこれ以上の成果のある手順が(後手6二金以後)見つけられなかった。

8五金図06
 ということで、戻って、(〔ア〕7四馬 に代えて)〔イ〕8五玉(図)ならどうか。
 これは後手の8三歩に対し、〔イ〕8五玉 として、8四歩に、9四玉と、馬を取らせるかわりにまっすぐ“入玉”しようという作戦である。
 8四歩、9四玉、7三銀で、次の図。

8五金図07
 9三玉、7二金、8三香、7一桂、8二金、8三金、同金、同桂、7二金、6二金(次の図) 

8五金図08
 ここでもまた、後手“6二金”という手が出てきた。
 形勢は先手やや苦しめの「互角」というところである。

 なんとか“入玉”自体はできるのだが、はっきり先手有利という展開にならない。むしろ苦しいのではないか。

 ――――ということで、この 「8四金」 以下の変化を、我々(終盤探検隊)は密かに恐れていたのであった。
 実際には、後手の≪ぬし≫は「9四歩」を指してきたので――それは予想通りではあったが――その“恐れ”は杞憂に終わった。
 ただ、“好奇心”としては、「8四金ならどうなったのだろう」という気持ちが残っているので、さらに“戦後調査研究”として調べてみた。

 すると面白い手が出現してきた。次の手である。

8五飛基本図
 8五金 に代えて、8五飛(図)と打つのである!!
 金よりも飛車が良いなんてことがあるのだろうか!? もしそうだったら面白いが。
 (コンピューターソフト「激指14」も元々この手を有力として示していた。瞬間的には4~5位の候補手だったが、30分ほど考慮させると1~3位に上がってきた)

 図以下、(A)7四歩、8四飛、同歩、8六玉、8五飛(次の図)

8五飛図01
 9六玉(後手の攻め駒が金ではなく飛なのでこう逃げる手が可能になる)、6五飛、7五歩、同飛、8四馬、9五歩、8六玉、6五飛、7六歩(次の図)

8五飛図02
 先手良し。先手玉の“入玉”を後手が阻止することが難しい。

8五飛図03
 8五飛 には、(B)9四歩(図)のほうが優るようだ。
 以下、8四飛、同歩、同馬(次の図)

8五飛図04
 ここで [8三歩][6五飛] とが後手の有力手。

 [8三歩] には、8五玉。 以下8四玉、同玉、4七角(次の図)

8五飛図05
 4七角(図)に、9三玉、7七飛が進行の一例だが、そこで“4一角”と打って、以下3二歩 に、3三香(次の図)

8五飛図06
 ここで“例の攻め”(4一角~3三香)が炸裂。 先手の攻めが成功しているようだ。
 以下、3一銀には、5二角成、同歩、1一金(次の図)

8五飛図07
 先手勝勢。

8五飛図08
 上の攻めは成功したが、実は、“4一角”に、3二歩 に代えて、3一歩 と受けられると、形勢はまだ難しい。(そこで2六香と打っても3二桂または1一桂で攻めが止まり先手つまらない)
 だが、“4一角”、3一歩 には、3七桂(図)が好手で、形勢はバランスを保っていてこの図は、「互角」。

8五飛図09
 “4一角”と打った手をやめて、代えて、“8四金” としたのがこの図。
 これなら、わずかに先手リードの形勢のようである。(最新ソフトの評価値は+250くらい)

8五飛図10
 戻って、後手 [6五飛](図)を調査しよう。
 以下、8三金、7四歩に、8六玉(次の図)

8五飛図11
 ここで後手(1)7五銀なら、8五玉、8四銀、同玉で、“入玉”できる。それは先手良し。
 (2)6六銀は7六歩がある。
 また(3)7三桂には、9四馬とし、以下6七とに、7五歩、同飛、7六歩、6五飛、7五香から、“入玉”を計って、先手良し。
 他に有力な後手の手は(4)6二銀と、(5)6三金。 以下この2つの手を見ていく。

8五飛図12
 (4)6二銀には、5三歩(図)
 以下、5三同銀左、3三歩成、同玉、1一角、2二桂、3七桂、4四銀引、7六歩(次の図) 

8五飛図13
 先手良し(最新ソフトの評価値は+476)

8五飛図14
 (5)6三金(図)の場合。これは9四馬なら7三金とする狙いで、それだと後手良しになる。
 (4一角は、3二歩、6三角成、7五銀、8五玉、6三飛で、後手のワナにはまる)
 ここでは、7五歩とするのが良いようだ。(同飛なら今度は4一角で先手優勢)
 7五同銀に、8五玉、8四銀、同玉、6六角、7五歩(次の図)

8五飛図15
 7五同角、9四玉、6二銀、7六銀(次の図)

8五飛図16
 7三金、7五銀、同飛、8六香(次の図)

8五飛図17
 まだたいへんだが、形勢は少し先手良し。


8五飛基本図(再掲)
 以上、調査の結果、8五飛 は、先手が「互角以上に戦える」という評価となった。
 (少なくとも、先手にとって都合の悪い変化はなかった)


8五金基本図(再掲)
 さて、もう一度 8五金 に戻る。
 ここで後手7四歩だが、そこで上では「8四金、同歩、同馬」以下を考えてきた。
 その順で難局になると予想されたわけだが、7四歩に、「8六玉」が有望なのではないか―――というのが、次のテーマだ。

変化8六玉基本図
 この 「8六玉」 である。
 この手は、次に、「8四金、同歩、9五玉」を狙っている。
 だから後手はそれを防ぐ意味で、7五銀 と来る(次の図)

変化8六玉図01
 以下、9六玉 に、9二歩(次の図)

変化8六玉図02
 9二歩(図)がここでの後手の好手である。
 同竜、8五金、同玉、8四金、同馬、同銀、9四玉、7一桂(次の図)

変化8六玉図03
 先手の9一の竜を9二に動かしたことで、この図の7一桂が打てた。
 これは先手が悪い。

変化8六玉図04
 先手は、後手の7五銀 を、同金(図)とするのが正着だった。
 以下、同歩に、8四馬、同歩、9五玉、4七角(次の図)

変化8六玉図05
 さあ、これで先手後手どちらが勝っているか。
 この4七角(図)が後手にとって良さそうな感触の手。
 だが、ここで先手に「8二飛」と打つ手がある(次の図)

変化8六玉図06
 ここで6二歩(先手5二飛成を受けた)なら9四玉で先手良し。
 後手の指したい手は、8三金だ。それでどうなるか。
 しかし8三金には、5二飛成がある。 さあ、どっちが勝っているか。
 5二飛成以下、9四歩、8六玉、8五歩、7七玉、7六歩、8八玉(次の図)

変化8六玉図07
 これは、「先手の勝ち」になった。

変化8六玉図08
 上の変化をふまえて、「8二飛」に、“6二銀”(図)が後手工夫の手。
 もし9四玉なら、7三銀と出て後手良しになる、という意味。7三銀に5二飛成は、9三歩(同玉は8三金以下詰む)、同竜、5二歩で、後手良し。

 この手(6二銀)には、「5三歩」がある(次の図)

変化8六玉図09
 ここで7四角成は、9四玉、7一桂、8三銀で先手優勢。 
 「5三歩」(図)に、同銀左には、3三香(次の図)

変化8六玉図10
 3二歩なら、1一銀、同玉、3二香成で寄る。(3三同桂は3一銀、同玉、3三歩成)
 なので3一歩が考えられるが、それにも、1一銀、同玉、3一同香成といく。
 以下2二金(代えて4二金は、2一成香、同玉、5一竜で寄る)に、3三角(次の図)

変化8六玉図11
 先手勝ち。

変化8六玉図12
 「5三歩」に、9三歩(図)
 これは放っておくと8五金で詰まされてしまうので、9三同竜と取るが、そこで7一桂。この手がまた次に8三桂打とする手があって、実はこれも“詰めろ”。
 なので先手は8四竜とする。そこで後手8三金(次の図)

変化8六玉図13
 ここで5二歩成と金を取り、以下8四金、同竜、5二歩。
 そこで1五角(次の図)

変化8六玉図14
 この1五角(図)が、3三銀以下の“詰めろ”。
 それを防ぐ2四桂には、同角、同歩、3五桂。 また2四歩には、3五金と打って、これも“詰めろ”。
 この角打ちで先手は「勝ち」をたぐり寄せた。

 どうやら、この変化(8六玉に後手7五銀)は先手が良い。「8二飛」が先手を勝ちに導く好着手だった。


変化8六玉図15
 さて、「8六玉基本図」に戻って、そこで後手 7三銀(図)を見ていこう。
 この手は、7五銀 に比較すると、王手にはなっていないので先手に“手番”が来る。だから感覚的には先手がやれそうだが、具体的に何を指すかが問題である。(8四金は同銀、同馬、同歩、9五玉でこれが後手の狙い。形勢は「互角」)
 我々の見つけた“答え”は、次の一手だ(次の図)

変化8六玉図16
 「2五香」(図)と打って攻めの準備。
 ここで後手6六銀なら2六飛と打ってこれが詰めろ銀取りで先手良しになる。
 6四銀左上が有力だが、それは4一角、3二歩、5二角成、同歩、4一飛、3一角、7六歩のような展開で、これも先手が良い。
 「2五香」には、3二歩と先受けするのが最善のがんばりかもしれない。その手には、3七桂が好手(次の図)

変化8六玉図17
 この桂跳ねで敵陣上空を押さえ、次に8四金、同銀、同馬、同歩で、金銀二枚を入手すれば、2三香成、同玉、2四銀以下、後手玉を詰ますことができる。
 なので後手は3一桂とさらに受けることになるが、以下4五桂、6四銀、3三歩成、同桂、同桂成、同銀、4一飛(次の図)

変化8六玉図18
 4一飛(図)と打って、1一角の寄せを狙う。(8四の金を取って、3四桂、同銀、1一角、同玉、3一飛成以下詰み)
 2四歩、3五桂、1一桂、6一角(次の図)

変化8六玉図19
 4二金、5一飛成、6六銀、2四香、2三歩、2三桂成、同桂左、8三角成(次の図)

変化8六玉図20
 先手優勢。(以下、7五銀引、9六玉、4一桂が予想されるが、8四金、同銀上、同馬左、同銀、同馬、と清算して、次に3四歩を狙う)


 以上の研究調査の結果、「8五金、7四歩、8六玉」 の手順で「先手良し」とわかった。これなら先手が勝てそうだ。
 

8五金基本図(再掲)
 さらに、もう一つ、先手にとって有望な手が見つかった。
 8五金(図)までまた戻って、ここから7四歩に「8四金」以下の変化で、8四金、同歩、同馬、7四馬、8五金、同馬、同銀、8五玉、8四銀、9四玉と進んだ時、「8二角」 が有望ではないかということに気がついたのだ。

8五金図09
 この図である。(上では9三金を最善手と考えて進めていたがそれでは先手不満となった)
 「8二角」 以下は、7四角成、8六香、6四銀引が想定される。
 そこで7五歩があった。以下、同銀左に、7一飛と打って、それで「先手良し」なのではないか。(実際最新ソフトの評価も+500くらいになった)


8四金図(再掲)
 見てきたように、いくつかの先手良しになりそうな順が発見され、どうやら後手 「8四金」(図)は先手が勝てそうだとわかった。
 ただし、「最終一番勝負」で後手の≪ぬし≫が 「8四金」 と指してきたとき、はたして我々終盤探検隊がそれらの順を発見できたかどうか、それはわからない。



≪最終一番勝負 第19譜 指了図≫ 9四歩まで

 実戦の後手の指し手は △9四歩 だった。




<参考>

参考図1a(再掲、3四銀型の8四金)
 「3四銀型」の8四金(図)の場合どうなるかを参考のために書いておく。
 先手はやはりここで「8五金」と打って―――
 8五金、8四金、同歩、同馬、7四馬、8五金、同馬、同銀、8五玉、8四銀、9四玉、9三金(次の図)

参考図1b
 9三金と打つ。以下、7四角成、8六香。
 ここまでは「4二銀型」と同じ。「4二銀型」の場合はそこで6二金があって先手不満(形勢は互角)だった変化であるが…
 ところが、この「3四銀型」の場合はその手がない(6二金には5一竜がある)ので、「先手良し」になる。
 指すとすれば、6二銀だ(次の図)

参考図1c
 ここで5三歩が“手筋”だが、この場合は5三歩に7三銀上とされ、以下5二歩成は8二桂があって、後手良しになる。
 しかし、“次の一手”ならば、先手が勝てる(次の図)

参考図1d
 「5四飛」(図)だ。
 7三銀上には7四飛、同銀、8四香で先手勝勢。 6四銀には、5五角がある。
 また、6三馬には、4一角、3二桂、3四飛、3三歩、8四飛で先手が良い。
 「5四飛」に、7三馬以下を、進行の一例として見ておこう。
 以下、3四飛、3三歩、8四飛、9一馬、8三飛成、7一桂、3二歩(次の図)

参考図1e
 以下、3二同玉に、1一銀と打つ。 こんな感じで、5四飛以下ははっきり「先手良し」。
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終盤探検隊 part119 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第18譜

2019年05月11日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第18譜 指始図≫ 5五銀引まで

 指し手  ▲9三角成


    [ 八咫鏡(やたのかがみ)]

故(かれ)ここに天照大御神(あまてらすおおみかみ)見畏みて、天石屋戸(あまのいわやと)を開きて、さし籠りましき。ここに高天原皆暗く、葦原中國(あしはらのなかつくに)悉に闇(くら)し。これに因りて、常夜往きき。ここに萬の神の聲(こえ)は、さ蠅なす満ち、萬の妖(わざわひ)悉におこりき。ここをもちて八百萬神、天の安の河原に神集ひ集ひて、高御產巢日神(たかみむすびのかみ)之子、思金神(おもいかねのかみ)を思はしめて、常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集めて鳴かしめて、天安河の河上の天堅石を取り、天金山の鉄(まがね)を取りて、鍛人天津麻羅(かぬちあまつまら)を求ぎて、 伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)に科せて を作らせしめ、玉祖命(たまのおやのみこと)に科せて、八尺勾璁(やさかのまがたま)の五百津之御須麻流之珠(いほつのみすまるのたま)を作らしめ、天兒屋命(あめのこやねのみこと)、布刀玉命(ふとだまのみこと)を召して、天香山の真男鹿(まおしか)の肩を内抜きに抜きて、天香山の天の波波迦(ははか)を取りて、占合(うらなひ)まかなはしめて、天香山の五百津真賢木(いほつまさかき)を根こじにこじて、上枝に八尺勾璁の五百津之御須麻流之珠を取りつけ、中枝に八咫鏡(やたのかがみ)を取り繋(か)け、下枝に白丹寸手、青丹寸手を取り垂でて、この種種の物は、布刀玉命、布刀御幣(ふとみてぐら)と取り持ちて、天兒屋命、布刀詔戸言祷き白して、天手力男神(あめのたぢからお)、戸の掖に隠れ立ちて、天宇受賣命(あめのうずめのみこと)、天香山の天の日影を手次(たすき)に繋けて、天の真拆(まさき)をかづらとして、天香山の小竹葉を手草に結いて、天石屋戸にうけ伏せて踏みとぐろこし、神懸(かむがかり)して、胸乳をかき出で、裳緖を陰(ほと)に押し垂れき。高天の原動みで、八百萬の神共に咲(わら)いき。         (『古事記』天石屋戸神話より)
                      


 日本神話のなかの「天石屋戸(あまのいわやと)神話」である。
 この中に、「鏡」が出てくる。三種の神器の一つ「 八咫鏡(やたのかがみ)」である。『古事記』のこの記述によれば、この時に、鍛人天津麻羅(かぬちあまつまら)と伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)がつくったことになっている。
 天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天石屋戸に閉じこもってしまったので、その女神を笑わせようと、ありとあらゆる手立てを講じたのだが、その一つの手が、「鏡」による魔術だったというわけだ。
 この女の神様を笑顔にするために、みんなで全力を尽くすという、ユニークな神話であるが、最後に「八百萬の神共に咲(わら)いき」となって、みんなで笑うという素晴らしい結末になっている。
  
 『古事記』の成立は天武天皇の時代であるから7世紀。つまり今から約1300年前。
 しかし様々な“神話”を一つにまとめたのがこの時ということで、この「天石屋戸神話」自体は、もっと前からずっと語り継がれてきたのだろう。



<第18譜 まぼろしの「2五飛戦法」>


≪最終一番勝負 第18譜 指始図≫ 5五銀引まで

 先手「6六角」に、後手は「5五銀引」(図)と応じてきた。
 まあ、予想通りだ。



≪最終一番勝負 指了図≫ 9三角成まで

 先手を持っている我々――終盤探検隊――は、予定通り、「9三角成」(図)。

 ここで後手に、“8四金”と“9四歩”の選択肢がある。


第19譜につづく



 以下は、“戦後研究”である。 
 数手前に戻って――――

≪5九金図≫
   <1>2五香 → 先手良し
   <2>4一角 → 先手良し
   <3>6六角  = ≪一番勝負≫で我々が選択した手
   <4>8六玉 → 先手良し
   <5>8五玉 → 先手良し
   <6>2五飛 → ?

 我々はこの将棋の“戦後研究”の中で、ここで <6>2五飛 がある可能性を発見した。
 コンピューターソフト「激指14」はこの2五飛を7番目の候補に挙げていた。とはいえ、評価値は-707で「後手有利」としている。
 しかし我々は、<4>8六玉や<5>8五玉の調査研究の中で“2五飛”と打つ手ががこの後手の「4二銀型」の陣形に対して有効であることに気づき、それならこの局面で「2五飛」もあるのではないかと思ったのだった。

2五飛基本図
 この「 2五飛 」 の狙いは、受けては後手の指したい7五金をけん制している。
 そして、攻めては、4一角、3二歩に、“3三香”の攻めを狙っている。「2五飛」と「4一角」と「9一竜」の3つの大駒が、「3三香」を加えることで、爆発的な破壊力のある攻めを生む可能性を持っているのである。その攻めに大いに期待したい。
 そしてその攻めを封じる手段が後手にあるかどうかがポイントである。

2五飛基本図(再掲)

 ここで考えられる後手の有力な応手は、次の9つ。
  【1】7四歩
  【2】5五銀引
  【3】6五歩
  【4】4四歩
  【5】6三桂
  【6】6五桂
  【7】8四歩
  【8】3五金
  【9】3二歩

 このように指し手の広い局面だが、一つ一つ調査結果を以下書いていく。
 どれか一つでも、「後手良し」の結論に固まれば、その時点でこの「2五飛戦法」は終了となる。


変化7四歩図01
 【1】7四歩(図)は、後手の狙いとしては次に7五銀である。
 この 7四歩 は、最新ソフトが最善手として示した手で評価値は[ -432 ]で後手有利と示しているが、終盤探検隊がさらに先を調査した結果を先に言えば、この手には「4一角」と打って先手が勝てる。

変化7四歩図02
 「4一角」に、「3二歩」(図)。
 ここで「5二角成」と「3三香」の2通りの攻めがあり、この場合はどちらを選んでも、先手が有利になる。
 この攻めが今回の先手の「2五飛戦法」の基本となる攻めなので、ここでは両方その内容を確認しておく。

 まず「5二角成」から。
 「5二角成」を同歩と応じると、3三金以下後手玉が詰むので、取れない。(この即詰みがあるのも「2五飛」の効果)
 そこで後手は7五銀と攻めてくる。これには8五玉(7七玉は先手悪い)
 以下、8二桂、8六歩(次の図)

変化7四歩図03
 後手玉はまだ詰まないので、先手玉に後手が“詰めろ”で攻めてくれば、それを受けなければいけない。
 ここで後手は9四歩。これも詰めろだ。
 そこで7三角と打つ好手があった。8四歩(この歩を突かせることで後手の8四桂が消えた)、9六玉、7六金(次の図)

変化7四歩図04
 部分的には先手がピンチ。8九香と受ける手が見えるが、9五歩、同玉、8三桂、9六玉、9五歩、同竜、5二歩で、先手負け。
 ところが、ここで7三角を打った手の真価を発揮する手順が現れる。2三飛成と、攻めに転じるのである。以下、同玉、2四金、同玉、4六角成、3五金合、4二馬(次の図)

変化7四歩図05
 後手玉は詰んでいた! 4二同銀、2五銀、同玉、2六銀以下、持駒の香車が威力を発揮して“詰み”となる。(7三角は“詰めろ逃れの詰めろ”だったのだ)

変化7四歩図06
 先手の「5二角成」に、3五金(図)と打ってきた場合。
 これにも切り返しがある。

変化7四歩図07
 4四角(図)である。
 これを同銀は4二馬だし、同歩は、2三飛成、同玉、2四金、同玉、1五金、2三玉、2四香までの“詰み”。
 なので3三桂打のような手になるが、2六香、3一桂、3三歩成以下、先手が勝てる。

変化7四歩図08
 もう一つの攻め筋が「3三香」(図)。
 この攻めは後手に「香」が渡ったとき、そして場合によっては「角」を渡したときに、先手の玉が大丈夫かどうか、そこが重要な要素になる。
 「2五飛」と設置しておいてこの「4一角~3三香」の攻めは、かなりの破壊力がある。
 これを“同桂”と取るとその瞬間に2一金、同玉、2三飛成から後手玉が詰むので、“同桂”がない。これが後手の応手を限定している。
 桂で取れないので、この「3三香」を取るとしたら、3三同銀しかない。以下、同歩成、同玉に、3四歩(次の図)

変化7四歩図09
 これで詰んでいる。3四同銀に、4五銀、3三玉、3四金、4二玉、3二角成、同玉、2三飛成、4二玉、3三角、4一玉、5一角成、同金、4三竜以下。

変化7四歩図10
 「3三香」に、3一銀(図)。
 これには、5二角成。(同歩なら3二香成以下後手玉詰み)

変化7四歩図11
 そこで 3三歩 と後手は「香」を入手。
 ここで5一竜で勝てればわかりやすいが、それは後手の“思うつぼ”。 7五銀で先手玉が先に詰んで負けになる。
 しかし“5一馬”があった(次の図)

変化7四歩図12
 5一馬(図)は、“詰めろ逃れの詰めろ”。 3三馬、同桂、1一角からの後手玉の“詰み”を狙いつつ、この5一馬は8四に利かせている。
 以下は、7五銀、8五玉、8四金、同馬、同銀、7四玉、4七角(王手飛車)、6五歩、2五角成、8三玉(次の図)

変化7四歩図13
 “王手飛車”を食らっても、先手が優勢。(以下3四歩、5四歩、同銀、5一角が予想される手順)

変化7四歩図14
 「5二角成」に対し、すぐ 7五銀(図)としたらどうなるか。
 8五玉、8四金、9六玉―――ここまで先に決めておいて、そこで3三歩と「香」を取る。先手玉に“詰めろ”(9五香まで)がかかり、これは受けにくいが…(次の図)

変化7四歩図15
 この場合は3二金(図)から、後手玉に“詰み”があるのだ。
 後手の6四銀が7五銀と出てきて、5三の銀が“浮き駒”になっているので、この場合は“詰み”が生じている―――というからくりである。
 3二同銀、3一角、同玉、5三馬以下。

変化7四歩図16
 「3三香」に、3一金(図)。
 この金打ちには、2通りの勝ち方があり、先手が勝てる。
 一つは、3二香成、同金、1一角、同玉、3二角成という攻め方。

変化7四歩図17
 以下、5八角に、8六玉(図)と逃げて、8四香には9六玉として、先手勝勢。
 「2五飛」がしっかり受けに働いている。もしこの「2五飛」の存在がなかったら、7五銀、7七玉、6七角成、8八玉、6六馬、9八玉、2二香で、後手玉が受かって、後手勝勢になっているケースである。

変化7四歩図18
 もう一つは、3二香成、同金に、5二角成(図)という攻め方。
 5二同歩は、3三金、同銀、同歩成、同玉、3四歩、同玉、4五銀以下“詰み”がある。
 (3三金に1一玉には、2一竜、同玉、2三飛成)

 なのでこの馬は取れないが、後手6二桂と頑張る手でどうなるか。
 先手は4一馬。この手は次に後手玉が詰むわけではないが、3三歩成、同銀、3一角からの寄せを狙っている。
 以下、予想される手順は、7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、7六銀、7八歩、3一歩、4五角(次の図)

変化7四歩図19
 後手の攻め足が先手7八歩の受けで止まった。(攻めを続けるなら8四香だが8六金で受かる)
 先手からは3三歩成、同銀(同金は2三飛成、同金、3二金以下詰み)、3一角、1一玉、3二角成の攻めがある。
 なので後手は3一歩と受けに回ったのだが―――
 4五角(図)と打って、「2三」を狙えば、後手はもう受けがない。(2四香としても、同飛、同歩、3三歩成以下詰み)
 先手の勝ちが決まった。

変化5五銀引図01
 【2】5五銀引(図)。
 この手に対しても、やはり4一角と打って、3二歩に、「3三香」と「5二角成」と、どちらの攻めでも先手がやれる。
 ここでは、「5二角成」を見ておこう(次の図)

変化5五銀引図02
 「5二角成」の後、7五金、7七玉、6六銀、8八玉、7六桂、9八玉、7七銀成、8九香、9五桂、7九金と進めて、この図になった。
 これで先手玉への“詰めろ”は続かないので、後手が攻めるとすれば6七と~7八とだが、6七とには、ここでも4五角がある。これでもう後手に受けがない。
 4四歩と先に受けてその手を消すなら、4一馬と入り、6七とに、5一竜で、先手勝ち。

 それなら、開き直って5二歩と馬を取って「詰ませてみろ!」と勝負してきたとき、どうやって詰ますか。(金香を受けに使ったため持駒が減っている)
 “答え”は、3三角と打って、同銀、同歩成、同玉、3四歩、同玉、3五金、3三玉、2三飛成(次の図)

変化5五銀引図03
 これで、“詰み”。

変化6五歩図01
 【3】6五歩(図)。
 これも、「4一角、3二歩、5二角成」でも、「4一角、3二歩、3三香」でも、どちらも先手良しになるというのが調査結果。
 (ただしこの場合は、「4一角、3二歩、3三香」に、後手“3一金”以下の変化が難しく、「4一角、3二歩、5二角成」を選んだほうが、わかりやすく勝てる)
 この手に関しての調査の内容は省略する。

変化4四歩図01
 【4】4四歩 は、先手の狙い筋を先受けした手で、この図は、4四歩 に「4一角、3二歩」まで進んだところだが、ここで5二角成は、同歩と取られ、先手失敗する。「4三」のスペースがある関係で、後手玉が詰まないからだ。
 しかしここで「3三香」の攻めならば、調べたところ、どうやら成立している。

 「3三香」に、同銀 なら、(同歩成を保留して)5二角成とするのがよい。(次の図)

変化4四歩図02
 これでわかりやすく「先手勝ち」になっている。
 先手玉は詰まないので、後手は4二銀左引くらいしかなさそうだが、それには3三歩成とし、同銀(同桂は2三飛成以下、同歩は3二金以下詰み)に、5一竜で、先手勝勢である。

変化4四歩図03
 「3三香」に、3一金(図)の場合、注意すべきことがある。
 ここでも「5二角成」や「3二香成、同金、5二角成」は、“同歩”と取られて先手負ける。
 そうなるとここは、「3二香成、同金、1一角」の攻め筋で勝つしかないのだが、単純にそれをやると、以下1一同玉、3二角成に、4三角と王手で打つ手があって、つくった馬を消されてしまう(以下形勢は不明)
 ということで、それを見越して、正解手順は「3二香成、同金、5四歩」になる(次の図)

変化4四歩図04
 5四同銀に、それから狙い筋の「1一角、同玉、3二角成」を決行すれば、後手はほぼ受けがなく、先手の勝ち。
 なので、後手は5四同銀とはせず、3一歩と粘る。以下、5三歩成、同銀上。
 そこでどうするか―――6一角が良いようだ。以下、7四歩に、8三角成(次の図)

変化4四歩図05
 先手優勢。後手は先手玉を捕まえるのが難しいし、先手に桂馬の一枚でも入れば、途端に後手玉が(先手1五桂などがあって)ピンチになる。

変化6三桂図01
 【5】6三桂(図)に対しても、「4一角、3二歩、3三香」と攻める。
 (この場合、「4一角、3二歩、5二角成」は形勢不明の戦い)

変化6三桂図02
 3三同銀 は、同歩成、同玉、5二角成で、先手優勢になる。
 3一銀 も、5二角成が、次に3二香成以下“詰めろ”で、先手優勢。

変化6三桂図03
 3一金(図)。
 この場合、「3二香成、同金、5二角成」は、7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、2四香以下、後手良しになる。
 正着は、「3二香成、同金、1一角」のほう(次の図)

変化6三桂図04
 以下1一同玉、3二角成に、5八角なら、8六玉。
 先手玉は詰まず、後手玉は“受けなし”なので、先手勝勢。

変化6三桂図05
 他に、「3三香」に、後手7五銀(図)という手がある。
 これは、同飛と取る。(7七玉は先手悪い)
 飛車が2筋からそれたこの瞬間に、後手3三桂。ひねった手順だ。
 これには、3三同歩成、同銀、3一金と、ゆるまず攻める(次の図)

変化6三桂図06
 3一同玉には、5二角成。4二金なら、5一竜でよい。
 先手勝勢。

2五飛基本図(再掲)
【1】7四歩 → 先手良し
【2】5五銀引 → 先手良し
【3】6五歩 → 先手良し
【4】4四歩 → 先手良し
【5】6三桂 → 先手良し
【6】6五桂
【7】8四歩
【8】3二歩
【9】3五金

 【1】【5】 については、4一角と打ち、3二歩に、「5二角成」か「3三香」のどちらかの攻めで先手が勝てるとわかった。
 他に、5六と5五桂の手に対しても、この攻めで、先手が勝てる。
 しかし、次の手からは、そういうわけにはいかない。

変化6五桂図01
 【6】6五桂(図)は、先手の打った「2五飛」の横利きを止め、そして先手玉の下への退路(7七)を封じた手。先手玉に7五金の“詰めろ”がかかった。これではさすがに4一角と攻める余裕はないわけである。
 先手は8六玉とする。(他に6六角~9三角成もある)
 後手は8四歩とさらに“詰めろ”で迫る。
 先手は9五金と応じる(次の図)

変化6五桂図02
 後手の攻め、先手の受けという展開になったが、先手が次に8四金とすれば、もう先手玉は捕まらなくなるので、後手も甘い手は指せない。
 なので、後手6三金。後手の勝負手である。6三金には、しめたとばかりに4一角と打ちたくなるが、それは後手の仕掛けた“わな”で、8五金、同金、同歩、同玉、7四金、同角成、9四金、9六玉、7四歩で、後手優勢となる。
 6三金には、7九香と受ける。
 それでも後手は7四金。以下、同香に、8五金、同金、同歩、9六玉、8四桂、8五玉、9四金、8六玉、7四歩(次の図)

変化6五桂図03
 先手玉にまた“詰めろ”がかかっている。しつこい攻めだ。
 先手は9六歩と逃げ道をつくる。(実はここで3三角と打てば後手玉は詰んでいるようだがその詰み筋は難しい。9六歩が実戦的だ)
 9六歩、7五銀、9七玉、8五金、4一角、9六金、9八玉、3二歩打、3三金(次の図)

変化6五桂図04
 3三同銀、同歩成、同玉、3四歩、同玉、4五銀、3三玉、1一角以下、“詰み”

変化8四歩図01
 【7】8四歩(図)は、かなりの“強敵”である。
 というのも、例の「4一角、3二歩、3三香」も、「4一角、3二歩、5二角成」もこの“敵”には通用しないのである。
 それをまず確認しよう。

変化8四歩図02
 4一角、3二歩と進めて、この図である。
 ここで「3三香」は、後手に「3一銀」と応じられ、5二角成に、3三歩(次の図)

変化8四歩図03
 後手が「香」を取った手が、次に7五香から先手玉への“詰めろ”になっており、この瞬間は後手玉は詰まない。これは先手まずい。(以下は、ほぼ互角のきわどい戦いになるが調査では最終的には後手良しになった)

変化8四歩図04
 この図は、【7】8四歩 に、「4一角、3二歩、5二角成」の攻めを行った場合。
 対して後手は6五桂(図)だ。
 どうもこれで、先手が困っている。先手玉には、7五金と8五金の2つの“詰めろ”がかかっているが、それを受けるために6六角、4四歩、7三歩成としても、7五歩、同角、5二歩と応じられて、先手が勝てない図になっているようだ。(4四歩と受けた時に後手5二歩が可能になった)

 ということで、4一角からの攻めはこの場合通用しないのか―――と思えたが、我々は新たな工夫を発見した。

変化8四歩図05
 「4一角、3二歩」として、そこで「6五歩」(図)と打つのだ。
 5五銀上なら、5二角成で、先手勝てる。
 このまま無条件に6四歩~6三歩成となっては後手はいけないから、7五金、7七玉、6五銀 が考えられる応手。
 そこで先手3三香。

変化8四歩図06
 これで先手が勝ちになっている。3三同銀、同歩成、同玉には、5二角成で先手良しだ。
 また、3一銀には、5二角成だ。このとき、6四の銀がいなくなったために、ここで後手が3三歩と香車を取ると、今度は――――(次の図)

変化8四歩図07
 3二金(図)、同銀、3一角、同玉、5三馬から、後手玉は詰んでしまうのである。(これが“6五歩”の効果だ)

変化8四歩図08
 というわけで、6五銀 の手に代えて、8五桂 と打ち、8八玉に、7六金と攻めてきたのがこの図。先手玉はまだ“詰めろ”ではないが、持駒に「香」が加わると詰む。
 なので、ここで3三香は、(6四銀が生きていることも関係して)先手が負けになる。

 しかしこの図では、別の勝ち筋が生じている。

変化8四歩図09
 “4五角”と打つ手だ。 次に3三歩成から2三角成がある。
 1一桂と受けても、2六香(図)と打てば、“数の攻め”で、先手の勝ちが確定する。

 ということで、【7】8四歩 は、「4一角、3二歩、6五歩」で、先手良しとする。

変化3五金図01
【8】3五金(図)も考えられる手だが、これには4一角、3二歩、1一角という返し技がある。1一同銀に、3二角成。
 そこで後手に手があるかどうか(次の図)

変化3五金図02
 8四桂(図)に、8六玉、6八角、8五玉、7七角成、5五歩(次の図)

変化3五金図03
 7七角成で後手は馬を自陣に利かせてかかっていた“詰めろ”を凌いだ。
 しかし5五歩(図)とすれば、「先手良し」がはっきりする。同馬なら、自玉が安全になり、香を渡しても大丈夫なので、3三香として先手勝ち。
 といって、他の手もない。7六馬は、9五玉、9四馬、8六玉で、もう一度7六馬は9五玉――これは“連続王手の千日手”の反則になるので、続けることはできない。

変化3二歩図01
 さあ、この手、【9】3二歩 が最後の強敵―――つまり、“ラスボス”である。
 ここで4一角は、3一桂と受けられると、継続手がない。(3一金も形勢不明)
 
 どうやら 【8】3二歩 に対しては、「8六玉」が最善手ではないかと思われる(次の図)

変化3二歩図02(8六玉図)
 「8六玉」の狙いは、第一は“入玉”である。
 そう簡単に“入玉”できないが、ここで先手の番なら6六角~9三角成~9五玉で、ほぼ“入玉”できる。

 ここから後手が何を指すか。それが問題だ。
 有力手は、〔U〕5五銀引、〔V〕7四歩、〔W〕8四金。 それを順次見ていく。

変化3二歩図03
 〔U〕5五銀引(図)は先手の「2五飛」の横利きを止めつつこの銀を活用しようという手。
 この手には、9三竜が良いのではないかと思う。
 対して、後手8四金なら、同竜、同歩、9五玉とし、以下7一桂には4五角(次の図)

変化3二歩図04
 これで先手良し。3一桂には、2六香、6二金、4一金(後手玉を3一に逃がさない)と攻めていく。 
 またこの図で9二飛には、9四香と返す手がある。
 この先手の4五角以下の攻めが有効になるのは、後手が桂を一枚8一に使ったからで、“入玉”と見せて桂を使わせ、その瞬間に“攻め”に転じるという戦略である。

変化3二歩図05
 なので9三竜には7四歩(図)が本筋の手。
 以下、7六歩、9四歩、9六歩とする。9六歩に代えて、9四同竜は、8四金、同竜、同歩、9五玉が想定されるが、これは先手自信なし。7三銀と引かれて活用される手があって、“入玉”は容易でない。
 よって9六歩(次の図)

変化3二歩図06
 ここで7三桂には、9四竜とし、8四金、同竜、同歩、9五玉―――今度は、先手成功の図となる。後手の7三桂が無駄手になったばかりか、7三銀と引く手を消しているために“入玉”がしやすい。
 また、図で6七となら、8三竜以下、先手がやれる―――という研究結果になった。(この内容は省略する)

 ということで、この図で「8四金」を本筋の手として見ていく。
 ここで先手に6五歩という好手があった(次の図)

変化3二歩図07
 6五同銀なら、5五飛ではなく、8五香として8四金を除去するのがねらいである。
 6五歩に代えてすぐ8五香と打ちたいところだがそれは7五銀、同歩、同金から、打った香車が取られてしまうから先手が悪くなる。なので、6五歩、同銀に、8五香というわけである。
 それなら先手成功だが、ここで後手も7五銀としてくる。(代えて6六銀もあるが6四歩、6七と、4五角、1一桂、2六香で、先手が勝てる)

 7五銀以下、同歩、同金、9七玉、8五桂、9八玉、4四銀引(次の図)

変化3二歩図08
 4四銀引(図)では、6六銀と前に出たいところだった。だがそれは4五角、1一桂、2六香で、後手に受けがなくなって、先手勝ちが決まってしまう。 それで4四銀と引いた。
 先手は7九香。
 後手は6七ととしたいが、それだと5六角(詰めろ「と金」取り)と打たれてしまう。
 なので5六と。これは次に6六とと活用する意図。

 そこで7五香(同歩に8六銀)という手が考えられる進行でそれもあるが、ここでは8三竜から先手がリードできるので、その筋を紹介しておく。
 8三竜、6六と、8五竜(次の図)

変化3二歩図09
 竜で桂馬を食いちぎる。
 8五同金に、2三飛成、同玉、1五桂、2四玉、6八角(次の図)

変化3二歩図10
 1五桂と打って、2四玉となったとき、3六銀と打てば、後手玉はだいたい受けがない。ところがこの場合、3八飛(王手銀取り)で、その銀を抜かれてしまう。
 だからその前に、6八角と王手で打っておくのである。これで3五銀(桂)なら3六銀と打って、それで先手勝ちというわけだ。ここまで読み切っての、二枚の飛車切りである。
 図で2五玉には、4五銀と縛って、先手勝ち。

変化3二歩図11
 〔V〕7四歩(図)には、6六角と打つ。以下、5五銀引、9三角成、7五銀、9五玉、8四金、同馬、同銀、9四玉(次の図)

変化3二歩図12
 ここまでは必然の手順。
 ここで5八角の“王手飛車取り”があった。
 5八角、8三玉、2五角成、8四玉、3六馬、8三香(次の図)

変化3二歩図13
 先手良し。先手玉はまだ安全とは言えないので、実戦的には気を抜けない“これからの勝負”となるが、先手がリードしているのは確かだろう。(最新ソフトの評価値は+370)

変化3二歩図14
 〔W〕8四金。 「入玉は許さないよ」という手。
 これには7三歩成が有効手になる(次の図)

変化3二歩図15
 ここで6七とや5六とは、4五角と打つ筋でと金を抜かれてしまう。
 「7三同銀」を本筋として考えていくが、“5五銀引”という銀の活用も後手の有効手に見える。
 それには―――(次の図)

変化3二歩図16
 7六歩(図)と受けておき、以下、7五歩、4五角、3一桂、2六香、1一桂、7二角成が予想される。
 次に8三との狙いがあり、先手良し。

変化3二歩図17
 「7三同銀」に、先手は「4一角」と打つ。
 後手は3二歩を先受けしてあるが、次に5二角成がある。同歩なら3三金以下“詰み”
 ここで7四桂と打つ手はどうか。これには7七玉。
 そこで3一桂と受ける。先手は2六香。次に4五角と打てれば先手勝ちになる。
 なのでこれも4四歩とそれを受けるが、その手には6五角(次の図)

変化3二歩図18
 これで後手に受けがなくなった。4三銀には、5二角成、同銀、5一竜。(4三金には5一竜、同銀、4三角成)

変化3二歩図19
 7四桂と早く打ってしまうと、後手の受け駒がなくなって後手は負けてしまうとわかった。
 それではと、3一桂(図)と単に受ける。(5二角成は同歩と取れる)
 手番は、先手。 何を指すか(次の図)

変化3二歩図20
 4七歩(図)。 4七同銀不成なら、5五角と打てる。
 では、〈い〉4七同と ならどうなるか。 その場合、先手はいったん9六歩としておく。
 以下、6六歩に、3三香(次の図)

変化3二歩図21
 3三同桂、同歩成、同玉(同銀は5二角成がある)、1一角、3四玉、3六金(次の図)

変化3二歩図22
 先手勝ち。

変化3二歩図23
 4七歩に同とではさすがにまずかった。後手は何か攻めなければ勝てない。
 ここで〈ろ〉7四桂(図)と桂を打ってみる。
 先手は9六玉(7七玉もあるかもしれない)
 以下、9四歩、4六歩(9五金、同飛、同玉は先手良し。以下8四銀、9四玉、9五飛、8三玉、9一飛には、5五角がある)、6四銀右、3六香(3三銀以下の詰めろ)、4四銀、1一角(次の図)

変化3二歩図24
 1一同玉に、3二角成。 「2五飛」が受けに利いているので角を渡しても詰まない。
 2二角に、4一銀(次の図) 

変化3二歩図25
 先手勝勢になった。

変化3二歩図26
 〈は〉7四銀(図)ならどうなる。
 4六歩、7六歩、3六香(3三銀からの詰めろ)、4四銀。
 ここで先と同じように1一角とすると、同玉、3二角成に、6八角から(9六玉、9五金、同飛、8四桂となって)先手玉が詰まされてしまう。
 
 ここは5三歩の手裏剣がある。 同金に、1五角と打つ(次の図)

変化3二歩図27
 ここで後手5二金は、同角成、同歩に、2三飛成、同桂、3一銀、同銀、同竜、同玉、4二金以下、後手玉詰み。
 よって、2四桂と受ける。
 2四桂、9六歩、1四歩(5九角と引かせて3六桂と香車を取るつもりだが)、3三歩成、同銀引、同香成(次の図)
 (3三歩成を同桂は、2四飛、同歩、3四桂、1三銀、2二銀、2三玉、4二桂成と寄せる)

変化3二歩図28
 3三同銀なら、5一竜で“受けなし”になる。
 といって、3三同玉は、3五飛、3四香、同飛、同玉、3九香で、先手勝ち。
 ということで同桂としてみるが、それには1一銀がある。1一同玉に、3二角成(次の図)


変化3二歩図29
 先手勝ち

 〔W〕8四金には、先手の「2五飛」の横の利きが絶大で、7三歩成以下、先手優位に展開できる。

変化3二歩図02(再掲8六玉図)
 〔U〕5五銀引、〔V〕7四歩、〔W〕8四金 はいずれも「先手良し」となった。
 他に考えられる後手の手として〔X〕6七と、〔Y〕4四銀、〔Z〕9四歩がある。
 以下、それらの手に対する先手の対応を簡単に書いておく。

変化3二歩図30
 〔X〕6七と には、4五角と打って、3一桂に、7二角成(図)とする。以下7四歩に8三馬とすれば、“入玉”はほぼ確定。先手良し。

変化3二歩図31
 〔Y〕4四銀 は、次に後手3五銀引のような手を狙っている手。
 しかしこれには、5三歩(図)がある。
 5三同金に、8二竜、5二金、7三歩成で、先手優勢。

変化3二歩図32
 〔Z〕9四歩 には、8五金(図)とする。9四金から、やはり“入玉”をめざして上部開拓をする方針。これも先手が良い流れ。

変化3二歩図02(再掲8六玉図)
 【8】3二歩 には、「8六玉」(図)で、先手良しが結論。





2五飛基本図(再掲)
【1】7四歩
【2】5五銀引
【3】6五歩
【4】4四歩
【5】6三桂   → すべて先手良し
【6】6五桂
【7】8四歩
【8】3五金
【9】3二歩


 すなわち、こういうことになる ↓

≪5九金図≫
   <1>2五香 → 先手良し
   <2>4一角 → 先手良し
   <3>6六角  = ≪一番勝負≫で我々が選択した手
   <4>8六玉 → 先手良し
   <5>8五玉 → 先手良し
   <6>2五飛 → 先手良し

 つまりこの≪5九金図≫の局面で、先手は少なくとも5つの「勝ち筋」があったということである。
 我々が実戦で選択した<3>6六角は、さて、「勝ち筋」がある道だったのかどうか。
 それは、これから明らかになるであろう。


 ところで、この図の2手前の局面―――すなわち、次の図(4二銀左図)で―――

≪4二銀左図≫
 ここで「2五飛」としたらどうなるだろうか。
 対して後手の指し手は5九金。
 そこで先手が9一竜と指せば(たぶんそれが最善手)―――

 今回の図、すなわち「2五飛基本図」に合流するのである。
 つまり、この≪4二銀左図≫での「2五飛」も、「先手良し」となるのである。

 また、上の≪4二銀左図≫から“7三歩成”とした変化も前に研究したが、その場合にも「2五飛」が出てきた。

参考図
 この図である。この場合も「2五飛」があったので、“7三歩成”以下の変化もこの後手の「4二銀型」に対しては成功となったのであった。(その内容はこちらで)

 「4二銀型」に対しては、「2五飛」が有効であることがわかっていると、この後手の陣形を攻略しやすくなる。
 とはいえ、それも“闘いを経験した後”に、いろいろ調査研究してやっとわかったことなのだが。
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終盤探検隊 part118 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第17譜

2019年05月06日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第17譜 指始図≫ 6六角まで

 指し手  △5五銀引


    [枕草子 二十六段 心ときめきするもの]

雀の子飼(こがひ)。
ちご遊ばする所の前わたる。
よき薫物(たきもの)たきて、一人臥したる。
唐鏡(からかがみ)の少し暗き見たる。
よき男の車とどめて案内し問はせたる。
頭(かしら)洗ひ化粧じて、香ばしうしみたる衣など着たる。殊(こと)に見る人なき所にても、心のうちはなほいとをかし。
待つ人などある夜、雨の音、風の吹きゆるがすも、ふと驚かる。
                      (清少納言『枕草子』より)



 清少納言は西暦でいうと966年~1025年頃を生きた女性で、この随筆『枕草子』によってたいへんに有名である。

 この「二十六段 心ときめきするもの」には、「唐鏡(からかがみ)の少し暗き見たる」として、「心ときめきするもの」の一つとして挙げている。
 しかしなぜ鏡が暗くなると心がときめくのか。「鏡が暗くなる」とはどういうことなのか。――――謎である。
 「鏡」をのぞいて、なにか通常と異なる変化(暗くなる)があったとき、何かが起こるという言い伝えがあったのかもしれない。

 また、そもそも『枕草子』の「枕」の意味が謎なのである。この書のあとがきに本人による説明があるのだが、その説明の中の「枕」の意味がわかっていないのだ。



<第17譜 再調査による評価の逆転>

≪指始図=6六角図≫

 ≪亜空間最終一番勝負≫、我々終盤探検隊は、6六角(図)を選択した。
 これは我々としては“Bプラン”であった。いわば保険のようなつもりで残していた道であるが、他の手――4一角や2五香――がうまくいかないとわかった以上はしかたがない。

 しかしコンピューターソフト「激指14」的には、これがベストの手である。

 「6六角」は、相手が5五銀引や4四歩と受けて、9三角成とするのが予定である。
 敵――≪亜空間の主(ぬし)≫――はどう受けてくるだろうか。(他に4四銀もある)


≪最終一番勝負 第17譜 指了図≫ 5五銀引まで

 ≪ぬし≫は5五銀引と引いた。
 予想通りだ。これが一番いやな応手だ。


 この続きは第18譜で―――



 さて、今回の譜では、以下、前回に続き、次の図の“事後検証”の内容を記していく。
 すなわち、今回の指始図(6六角図)の一手前の局面についての研究である。

≪5九金図≫
   <1>2五香 → 後手良し
   <2>4一角 → 後手良し
   <3>6六角  = ≪一番勝負≫で我々が選択した手
   <4>8六玉 → 先手良し
   <5>8五玉 → 先手良し
   <6>2五飛

 今回の譜では、<1>2五香と、<2>4一角について、“再検証”をしたいと思う。
 この手はどちらも、戦闘中に「後手良し」と結論を出したのであったが、“ちょっと気になる手”があって、再調査の必要があると考えるからである。


[再調査 <1>2五香]

2五香基本図
 この <1>2五香 に「2五香ロケット砲」として期待をかけたのだったが、後手「3一桂」の手があって、先手の継続手がないということで、「後手良し」と結論を下し、この「ロケット砲」は捨てざるを得なかった。(そのことは前々回第15譜で記した)

2五香図01
 この「3一桂」である。
 
 ところが、「ここで8六玉なら先手もチャンスがあるのではないか」と、今回の調査を経験して、思うわけである。
 ここでの「8六玉」は、その後の展開がはっきり読めず、見通しが立たないので、戦闘中は“考えたくなかった”というのが本音である。
 しかし前譜での研究(2五香を打たずにすぐ<3>8六玉)を経験値として蓄積した今、この図を見ると、「8六玉」で勝てるような気がしてきたのだった。
ほんとうのところはどうなのだろう? ―――ということで、調査したい。

2五香図02
 「8六玉」として、この図である。
 2五香と3一桂との手を交換し、後手の持駒から一枚「桂」が消えた。そのことを先手にとってプラスとして、この図から先手は勝てるのではないか。
 実は、「2五香、3一桂」とした上の図でのソフト「激指」の示す最善手は「8六玉」で、戦闘中もそれはわかっていた。わかってはいたが、“気がすすまない”という理由でその先を考えなかったのである。(「激指14」のこの図の評価値は-177)

2五香図02(再掲)
 ここで後手の有力な候補手は、〔壱〕8四歩〔弐〕7四歩〔参〕8四金〔四〕6七と〔五〕5五銀引〔六〕4四歩

 図で先手の手番なら、6六角と打って、以下5五銀引、9三角成として、次に9五玉から“入玉”をねらう。そこで8四金は、同馬、同歩、9五玉で先手成功の図となる。
 これが「8六玉」作戦の狙いの一つで、それを後手は簡単に許してはいけない。
 上の六つの候補手は、それを阻止するということが含まれている。

 まず、〔壱〕8四歩 から。
 これは以下、6六角、5五銀引、8四角、9四金となるが、そこで8三飛と打つのが良い(次の図)

2五香図03
 8三飛(図)。 妙な手に見えるかもしれないが、これで次の9三角成を見せて、先手の“入玉”は防げないから、先手成功なのだ。
 ただし、もしも後手が桂馬を二枚持っていたら、先手失敗となっていた。つまりこの図で後手8五歩、9六玉とした後、“7二桂”と打たれ、この図では9三角成で問題ないが、後手の手に桂馬がもう一枚あれば、9三角成に“8四桂打”とつなぎ桂があり、それで先手が悪いというわけなのだ。
 この図、先に「2五香、3一桂」の交換で、後手の桂馬が持駒から一枚消えたことで、この8三飛が有効になったのである。

 〔壱〕8四歩 は先手良し。

2五香図04
 次に 〔四〕6七と を片付けていこう(比較的説明がかんたんなので)
 これには、8二飛と打つのが良い(次の図) 

2五香図05  
 この飛車打ちには2つの狙いがあり、5二飛成と、8三飛成である。
 5二飛成を防げば、8三飛成から竜をつくって、“入玉”作戦。6二銀、8三飛成、9四金などと抵抗しても、同竜、同歩、8五玉で、“入玉”を計って、先手良し。
 だからといって、この図で8四金と打って“入玉”を防ぐと、5二飛成である。以下、3二歩に、4一角(次の図)

2五香図06
 後手は“受けなし”で、先手勝ちが確定。

2五香図07
 次は 〔五〕5五銀引(図)。
 これは前回の報告でほぼ同じような図のときに説明したが、この場合は8二飛ではなく、6一角と打つのが優る。
 重複になるがその理由をあらためて示しておくと、8二飛だと、6六銀(詰めろなので5二飛成とはいけない)、8三飛成、8四歩、同竜、7五銀上、9五玉に、7二桂と打たれ―――(次の図)

2五香図08
 以下、9三竜右に、8四金、同竜、同銀、9四玉、9五飛と打たれて、先手まずい。この図は、先手失敗の図である。
 もしも取られる駒が「竜」ではなく、「馬」なら、9五飛がないので、先手成功だったわけである。これが「8二飛より6一角が優る理由」である。

2五香図09
 というわけで、〔五〕5五銀引 には、6一角(図)と打つ。
 図で6二金や3二歩などの受けなら、8三角成と馬をつくってやはり“入玉”狙いだ。
 ここでは、後手8四歩の場合を見ておこう。
 8四歩には、5二角成。 攻め合いだ。
 この角は同歩とは取れないし、このままでも3二金、同玉、4一角から後手玉は詰む。
 よって、3二歩と打って受ける。今度は後手から5二歩と角を取られる手があるので、先手は4一馬と入る。だがこの4一馬の瞬間は少し甘く、後手玉への“詰めろ”にはなっていない。
 なので後手は6六銀と出て、これで先手玉のほうに“詰めろ”がかかった。
 先手は7三歩成(次の図)

2五香図10
 7三歩成(図)で、4一馬の利きを8五に通し、先手玉の詰みを消している。
 手番の後手は何を指すか。 8五金 は、同馬、同歩、9五玉―――これは先手良し。
 7四桂、同馬、7三銀という手順もあるが、4一馬で、やはり先手が良い。
 ここはどうやら「先手良し」のようだ。

 5二桂、それから7三同銀 でどうなるかを書いておこう。

2五香図11
 5二桂 で、また先手玉に“詰めろ”(8五金)が復活したが、対して、先手は3三金(図)と攻めていく。
 以下、同桂、同歩成、同玉(代えて同銀は3一馬、同玉、5一竜以下詰み)、3六飛、4四玉、4五歩(次の図)

2五香図12
 2手前の手で、先手の3六飛こ対して3四金合なら、後手玉に詰みはなかったが、1一角、2二金、4五金で、先手の勝ちがあっさり決まってしまう。
 よって、ここは4四玉と逃げたのだが、それは4五歩(図)からの“詰み”がある。
 4五同玉に、6三角と打って、5四銀、3五金、5五玉、4七桂、同と、5六歩、6五玉、7四角成まで、持駒をすべて使ってピッタリと詰んだ。7三のと金も働いた。

2五香図13
 もう一つの手、7三同銀 は、もしも後手の手番なら、7四桂で後手勝ちだ。
 しかし手番は先手。 3三歩成(図)から寄せがある。
 3三同玉の形は、先ほどと同じように3六飛と打って寄ってしまう。
 3三同銀は、3一馬、同玉、5一竜、4一桂、同竜、同玉、6三角、5二歩、6一飛、5一角、5二角成以下“詰み”。
 3三同桂も、3一馬から“詰み”がある。
 3三同桂、3一馬(これを同玉は2二金、同玉、3四桂)、同銀、3四桂、1一玉、2一金(次の図)

2五香図14
 2一同玉、2二金、同銀、4一飛、3一桂合(代えて3一銀は同飛成、同玉、5一竜)、2二桂成、同玉、1一角以下の“詰み”。

2五香図15
 〔六〕4四歩 は、先手の第1の狙い6六角と第2の狙い8二飛の両方に対応している。
 ここで8二飛なら、8四金で後手良しになりそう。5二飛成には、同歩と取れる。4三が開いたことで、後手玉がこのときに詰まないからだ。
  〔六〕4四歩 は、見た目は地味だが、なかなかの手なのだ。
 先手はどう指すか。

2五香図16
 5四歩(図)と叩きの歩を入れ、5三の銀を動かす。
 同銀には、7一角と打って、5三銀左に、9三角成とする狙いで、こう進むと先手が良い。
 なので6二銀とするが、先手は6六角と打つ。これを5五銀引などでは9三角成で結局馬をつくられて、それでは後手おもしろくないので、8四歩と勝負する。
 そこで4一角(次の図)

2五香図17
 ふつうは3二歩と受けるが、この場合はそれは4四角で後手困る。3三桂打のような受けは、同歩成、同銀、3四桂で無効だから。
 ということで、3二桂と受ける。こうして4四角には3三歩と受けるつもり。
 ここで8四角として、9四金に8三飛―――これでも先手が良いが、4四角からきれいな寄せがあるので、そちらを紹介する。
 4四角、3三歩、そこで4三歩(次の図)

2五香図18
 これがかっこいい手。同桂は2六飛で先手勝ち。同金は6二角成。
 なので4三歩を取るなら、同銀だが、それには、3三歩成、同桂、1一飛という寄せがある。以下、1一同玉、3三角成、2二金、3四桂で、寄っている。

 というわけで、この図で、後手は5五銀引で頑張る手が考えられる。
 5五銀引、4二歩成、同金、3三歩成、同桂(同金は6二角成)、2三香成、同桂(同玉は2四金以下詰む)、4三金(次の図)

2五香図19
 これで先手勝ち。
 4三同金、3二角成、同玉、2四桂、4一玉、3二銀、5二玉、6二角成、同玉、6一飛以下“詰み”。
 このままなら3三角成、同金、3四桂から詰む。4四銀と角を取る手も、3二角成、同金、3四桂から詰みがある。3一金と受けても、3三金、同金、3四桂、2一玉、3三角成で、先手勝ち。

 先手としては、2五香をしっかり捌いての寄せがとても心地よい寄せであった。

2五香図02(再掲)
 ここまでの検討で、〔壱〕8四歩〔四〕6七と〔五〕5五銀引〔六〕4四歩 は、「先手良し」と決まった。

 残るは 〔弐〕7四歩 と、〔参〕8四金 だが、この二つの手が手強い手なのである。

2五香図20
 〔弐〕7四歩(図)には、7六歩もあり有望な手だが、この後の変化が多く、我々はまだ調べ切れておらず形勢不明としか言えない。(つまり、「互角」だが勝ち筋がまだみつからない)
 最有力手は、「6六角」である。これを見ていこう。
 6六角、5五銀引、9三角成、7五銀、9五玉、8四金(次の図)

2五香図21
 以下、8四同馬、同銀、9四玉。ここまではほぼ一本道。
 しかしそこで7二角と打って、後手は先手をやすやすとは“入玉”させてくれない。
 以下、7三歩、9三歩、同竜、7三銀、7一飛、6二金(この手で8二桂なら同竜、同銀、7二飛成となる)、8二金(次の図)

2五香図22
 まだ先手玉は安全とは言えず、まだまだ実戦的にはたいへんであるが、ここは、少しながら、確かに「先手良し」と言える図になっていると考える。最新ソフトの評価値も[ +500 ]くらいで先手に傾いている。
 (「激指14」の評価は[ +184 ]。 入玉に辛い評価を出す傾向が「激指」にはあるので、プラスなら先手良しと見てよいと判断する)

 これにて、〔弐〕7四歩 も先手良し、とする。

2五香図23
 後手最後の候補手は、〔参〕8四金
 先手の2五香と後手3一桂との手の交換で、お互いに持駒を一枚少なくしているわけだが、2五香を手放したことで、この8四金を8五香のような手で取り除く手がなくなっている。
 そういう意味でも、“強敵”なのがこの 〔参〕8四金 である。
 ここで9六歩として、後手が6七ととした場面をずっと調べてみたが、どうも先手が悪いようだ。
 ということで、この図は「先手が勝てない」と、いったんはそう結論付けたのであったが、しばしの時を経て、ここで「7三歩成」が有望であると気がついた(次の図)

2五香図24
 7三歩成(図)としたところ。
 これを後手同銀なら、先手が指しやすくなる。具体的には、いったんは9六歩と懐を広くしておき、それから1五歩~1四歩のような攻めが間に合う。(9六歩に8五桂なら9五金と対応して先手良し)
 他に5五銀引や6七となら、8三と、同金、6一角、8四金、5二角成で、先手が勝てる。

 だから後手は、図で、7五銀と前進させてくるのが本筋の手。 これには、9六玉。
 以下、9四歩に、7七角、6六歩、8二飛(次の図)

2五香図25
 8二飛(図)は、次に8三とが狙いである。
 6七と、8三と、8一歩、同飛成(同竜だと後で損をする)、7七と、8四と、6三角(次の図)

2五香図26
 “王手龍取り”。 8一の竜を取られて9五飛と打つと先手玉が詰む。
 それを避けて、先手は8五金と受ける。
 以下、7六銀、9四と、8五銀、同竜、7五金、7四歩、同金(次の図)

2五香図27
 もしも先ほどの後手の8一歩を9一の竜で取っていたら、いまだに8一で竜が“角の当たり”になって残っていたところだった。それにしても、後手はしぶとくつないでくる。
 この図で、先手は8三竜が正着。後手のねらう8四金に6三竜と切り返す意図である。
 それでは後手おもしろくないので、8四桂とひねってくる。以下、同と、同金、6三竜、9五歩(次の図)

2五香図28 
 素直に6三同金では、3三歩成、同銀、8二竜で先手勝ち。ということで後手は9五歩(図)。
 8六玉、8五歩、7七玉と、先手玉を下に落としてから、6三金と手を戻す。
 以下、4一角、3二歩、8二竜、5七飛、8八玉、6七歩成(次の図)

2五香図29
 図の6七歩成に代えて5八飛成なら7八歩で問題ない。続いて6七歩成に8九銀とし、後手は持駒がなく、速い攻めがないので先手がやれる。
 よって6七歩成(図)だが、これで先手玉に5八飛成以下の“詰めろ”をかけた。 

 しかしここは、先手がどう勝つかという場面になっている。
 3三歩成とする。同玉しかないが、1一角、3四玉、4八金(次の図)

2五香図30
 4八金(図)。 5八飛成さえ防げば、怖いところはない。(7七とは同角成)
 以下は、5四飛成に、3六銀と縛って、先手の勝ち。


2五香図02(再掲)
 以上の調査研究の結果、この図は「先手良し」と結論する。


2五香基本図
 すなわち、<1>2五香 戦法成功である。(結論がひっくりかえった!!)


[再調査 <2>4一角]

4一角基本図
 <2>4一角
 この手についても、再調査したい理由がある。

4一角図01
 後手は「3二歩」(図)だが、ここで3三歩成として、同銀に、3六香というのが、「3六香ロケット砲」として我々が期待していた攻め筋だったが、それは3一桂という受けで勝てないと判って、それで<2>4一角からの攻めはあきらめた―――というのが、戦闘中の“読み”。 その内容は前々回第15譜で報告した。

 ここであらためて考えたいのは、この図で、「 3三香 」と打ちこむ手は成立するかということである。
 (「激指14」は10コの候補手の中に「3三香」を入れていない。最新ソフトでは3番目の候補手になっていて、評価値-206)

参考図A1
 我々(終盤探検隊)がこの「4一角~3三香」に攻めが後手「4二銀型」に対して有効と知ったのは、“戦後”の研究調査の中でのことだった。最初に気づいたのが、この参考図である。
 この図は、先手の「3四歩」に対し、後手が「4二銀引」と応じた手に対して、すぐに「4一角」と角を打ちこみ、「3二歩、5八金、同と、9一竜」と進めたところである。
 5八金で「金」を補充し、9一竜で「香」を補充する。そして「飛角金金香歩」という持駒が先手にはある。この豊富な持駒があってこその「3三香」の攻めだと、この攻め筋を知った時には思っていた。
 実際、上の図(4一角図01)とこの参考図とを比べてみると、上の図での持駒は「飛角金香歩」で、たしかにこの「参考図A1」のほうが「金」が一枚多い。
 しかし手番がちがう。上の図では手番は先手にある、この参考図では手番は後手である。
 だからこの図で後手が“詰めろ”以上に速い攻めをしてくれば、先手は「3三香」と攻めていく余裕はない。実際、7五金、7七玉、6五桂、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成とくれば、“詰めろ”なので、8九金と受ける(次の図)

参考図A2
 「3三香」と打ちこみたいので、「金」で受ける。これを逆にして「香」で受けて「3三金」と攻めると相手に金が渡ってしまうために負けになる。けれども「3三香」なら勝てるのだ。
 8九金と受けて、後手からの“詰めろ”はもう続かない。先手玉に迫るとすれば、6八とになる。
 でもこれは“詰めろ”ではないので、ここで「3三香」と攻めて勝てることを、最新ソフトを使って、我々は発見したのだった。(発見したのが対戦中でなかったことが残念だ。「激指」はこの攻めを教えてくれなかった)

 この攻め筋―――「4一角~3三香」は、後手の「4二銀型」のこの玉型に対して、いろいろな場面で有効になることが、調べれば調べるほど明らかになってきた。
 そしてよく考えてみれば、この図で「3三香」と打ちこむ直前、先手の持駒は(金を一枚受けに使っているので)「飛角金香歩」―――つまり―――

4一角図02
 この図とまったく同じ持駒なのである! 
 それなら、ここでも「3三香」で勝ちになる可能性は大いに考えられるのではないだろうか―――と、遅ればせながら、気づいたのであった。

 「 3三香 」(図)と打ちこんで、さあ、どうなるか。検討していこう。
 後手の応手は、この香を取る手、それから、3一銀と引いて受ける手、そして3一金と打つ手の3通り。
 3三香を取るなら、同桂 だろう。そして先手「同歩成」。
 そこで「同玉」か、「同銀」か。
 (しかしいずれにせよ後手は「金桂桂香」と持ってもまだ先手玉を詰ませることはできない)

 「同玉」の場合は、「1一角」と打って―――(次の図)

4一角図03
 「1一角、3四玉」に、「3六金」(図)と縛ったところ。
 「これで先手勝ち」と言いたいところだが、本当にそうなのかしっかりと確認しておこう。
 (ここで後手3五金なら、2六桂、2四玉、5二角成で先手勝ち)

 後手は8四桂と打って、7七玉に、6五桂、7八玉。 そこまで決めて、3五銀(次の図)

4一角図04
 3五銀(図)で勝負する手がある。これが実戦で時間のないところだったら先手も焦るかもしれない。
 金銀交換になれば、後手の持駒が「金金香」となり、先手玉も詰まされる状況になる。

 この手には、4六桂で良い。
 同銀、同金に、後手は8六桂。なかなかこういう手までは予測できないものだが、「勝ちを読み切る」とは、それをやることだ。8六桂は、同歩で大丈夫。
 以下、7七金(次の図)

4一角図05
 7七金(図)。
 対して8九玉なら、8七香がある。さっき8六桂と捨てたのはこの香打ちの空間をつくるためだった。
 よって、ここは7七同馬しかない。以下、同桂成、同玉。
 さらに後手5五角。 同金、同銀―――そして、3六銀(次の図)

4一角図06
 3六銀(図)ともう一度“縛(しば)り”を入れて、これで先手の勝ちが確定した。

4一角図07
 「3三同銀」(図)。(先手「3三香」に、「3三桂、同歩成、同銀」と応じたところ)
 これには、先手は「5二角成」とする。
 さて、後手は―――「8四桂」(次の図)

4一角図08
 「金桂桂香」の持駒で、この先手玉を詰ますことはできないが、「8四桂」(図)と打てば、先手玉を下に落とすことができる。
 8四桂、7七玉、6五桂、7八玉、4二銀右。
 4二銀右は、後手玉の“詰めろ”を受けた手。

 この局面は、先手の勝ちになっている。決め手がある(次の図)

4一角図09
 ここは5一竜で、先手の勝ち。
 3一金と受けたとしても―――

4一角図10
 3四桂と打てば決まっている。 同銀に、4二馬で、後手“受けなし”。 

 「3三香」を取る手は先手勝ちという結論だ。

4一角図11
 3一銀(図)と引いて受けるのは?
 これにも、「5二角成」(次の図)

4一角図12
 これを同歩は、3二香成からわりと容易に詰む。よって取れない。
 後手はここで3三歩と香を取って勝ちたいところだが、香車を手にしてもまだ先手玉は詰まないので、3三歩には5一竜で、後手の負けがはっきりする。

 後手「7五金」から攻めてみる。以下7七玉(後手8四桂でも7七玉と逃げる)
 6五桂、8八玉、7六桂、9八玉に、7七桂成で、“詰めろ”がかかったが―――(次の図)

4一角図13
 後手玉は、3二香成以下の“詰み”になっている。
 その詰手順を確認しておこう。3二同銀、3一角、同玉、5一竜、2二玉、2一竜(次の図)

4一角図14
 2一同玉なら、3三桂と打って、同銀に、3一金、同玉、5一飛以下。
 2一同銀には、3三金、1一玉、2二金、同銀、2一飛、同玉、4三馬以下の“詰み”である。

4一角図15
 「3三香」に、3一金(図)。
 この「4一角~3三香」の攻め筋は「激指」の眼中にはまったくないようで、まるでこの攻め筋を評価しない。 それはおそらく、この 3一金 の応手があるからではないかと思われる。
 (この図の「激指14」の評価値は-451)

 この図で「3二香成、同金、1一角」は、この場合は先手が悪くなる。1一同玉、3二角成のときに、5八角と打たれ、以下8六玉、8四香、7七玉、6七角成、8八玉、6六馬、9八玉、3一歩で後手良し。
 また「3二香成、同金、5二角成、同歩、7一飛」で勝てればよいが、5八角、7七玉、6七角成、8八玉、3一歩で、後手勝勢になる。

 しかし、まだ、“最後の手段”があった。 

4一角図16
 「3二香成、同金」に、「8五玉」(図)である。
 後手が「金」を受けに使ったこの瞬間、“入玉”のチャンスが生まれている。
 ここで8四香には、9五玉として、次に9三竜とすればいい。

 この局面で、「激指14」と最新ソフトとの評価が大きく分かれることとなった。「激指14」は後手良し(評価値-543)、「dolphin1/orqha1018」は先手良し(同+542)  評価値に1000点の開きがある。

 もう少し進めてみよう。
 3一金、6六角、5五銀引、9三角成、4一金、9四玉、3八角、8三玉、2九角成、8一竜、3五桂、8二玉、6二銀、8六歩、7四歩、7二歩(次の図)

4一角図17
 先手は「角香」を犠牲に“入玉”したので、この時点では後手が駒得になっている。
 しかし「dolphin1/orqha1018」(以下「orqha」)の評価値は先手優勢で[+1255]。 一方、「激指14」は[-665]。 
 4四銀、7一歩成、1九馬、9一玉、7三銀引、7二と、8四銀(次の図)

4一角図18
 8二馬、7三銀引、8三馬(千日手を回避)、2七桂成、9六歩、3六歩、9六歩(次の図)

4一角図19
 これはもう「相入玉」が避けられない展開。
 「orqha」は評価値[+1501]、「激指14」評価値[-371]と、なんとここにきてもまだ「激指」は後手良しを主張している! (おそらく「激指」はどちらの玉が攻略できるかという比較のみで評価値を出しているのだろう。後手玉を先手が攻略する見込みはほとんどゼロ、先手玉を後手が攻略する見込みはわずかながらあるという判断かと思われる)

 こうなると後手玉を寄せることは困難で、ここからは入玉の点取りゲームになってくる。
 この闘いのルールは「24点法」である。
 現状は、先手の確保できている点数は20点くらい。しかし後手玉が“入玉”する間に駒が取れるはずなので、24点以上をクリアーするのは確実。よって、先手の負けはない。
 しかし「入玉24点法」ならば、「勝ち」を得るためには、“31点”が必要になる。(そうすれば相手の点数が23点以下になる)
 先手がここから“31点”を得ることができるかどうかは微妙である。
 
 そうすると、これは「持将棋」すなわち、「引き分け」の可能性も濃厚な将棋になっている。

4一角図20
 途中まで戻って、この図は先手8五玉に、後手3一金の場面。
 ここで6六角以下を調べたが、その前に、「5二角成、同歩」と角金交換をし、それから6六角はどうだろうか。以下、5五銀引、9三角成、5八角、9五玉(次の図)

4一角図21
 ここからの指し手はお互いに難しい。
 9二歩、同竜、7四歩、7二飛(次の図)

4一角図22
 「9二歩、同竜」は竜を移動させることで、先手が8三馬とすれば7一桂と打とうという意味がある。
 そして先手の7二飛は、その手を消しながら、後手の7三銀を許さないという受けの手。(同じ意味で7一飛もあるが、それだと後手9一歩が気になる。同飛成は7三銀があるし、同竜は6二銀がある)
 しかし7二に飛車を打つと、それを狙う手が生じてくる。後手3六角成が、飛車に当たる。
 3六角成、8二飛成に、7三銀、同竜、8一桂(大駒の両取り)、8三竜右、9三桂、9四玉(次の図)

4一角図23
 この図をどう見るか。
 この図も先手有利は間違いないところだが、実戦的にはたいへんである。ここから後手に8一歩とか、6六角、あるいは6四銀など、手段が多くあるから。
 ただし、この図なら、後手の“入玉”も阻止できそうである。「正しく指せば先手が勝ち」という図になっていると判断する。

 この結果から、3一金 も、「3二香成、同金、8五玉、3一金、5二角成 」以下、「先手良し」を結論としたい。

4一角基本図(再掲)
 さて、最後に、もう一度先手が「4一角」と打ったところ(4一角基本図)まで戻って、ここで 「3一金」 という手について触れておこう。つまり先手が「3三香」と打ちこむ前に、3一金と打つのだ(次の図)

4一角図24
 これには、5二角成、同歩、7一飛と打って、先手が優勢になる。
 7一飛と打ったときに、後手玉に、3三金、同桂、1一角からの“詰めろ”がかかっている。それを5一桂と受ければ7三歩成で先手良し。8一桂(同竜なら5四角)という受けもあるが、8六玉としておいてからその桂を取って、これも先手が良い。
 桂を受けに使うのでは勝てない―――ということであれば、“詰めろ”を消すには後手は1四歩が考えられる。
 それには、先手は7三歩成で―――(次の図)

4一角図25
 これでまた後手玉に“詰めろ”が新たに生じている。3一飛成、同銀、3三金、同桂(代えて1三玉は2四角、同玉、2五金、同玉、2六金、2四玉、2五香)、同歩成、同玉、3一竜以下。
 それを防ぎつつ攻防に4七角と打つ手が後手にあって、まだ先手の勝ちは決まらない。
 先手は8六玉とする。以下、6五角成、7六歩、7五歩、9五玉(次の図)

4一角図26
 こんな感じで、先手が優勢に進められる。と金の存在が大きい。

4一角図02(再掲)
 「 3三香 」 の攻めは成功しているようだ!!


 つまりは、こういうことになった(↓)

≪5九金図≫(再掲)
   <1>2五香 → 先手良し
   <2>4一角 → 先手良し
   <3>6六角  = ≪一番勝負≫で我々が選択した手
   <4>8六玉 → 先手良し
   <5>8五玉 → 先手良し
   <6>2五飛

 なんということだ。闘い中、有望と思って期待をかけた(でも勝てないとあきらめた) <1>2五香<2>4一角―――そのどちらも「勝ち」へと続く道だったのである。

 <3>6六角 もそうであると良いのだが。


第18譜につづく
コメント

終盤探検隊 part117 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第16譜

2019年04月27日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第16譜 指始図≫ 5九金まで

 指し手  ▲6六角


    [鏡鏡鏡鏡] 

   岩手軽便鉄道の一月

ぴかぴかぴかぴか田圃の雪がひかってくる
河岸の樹がみなまっ白に凍ってゐる
うしろは河がうららかな火や氷を載せて
ぼんやり南へすべってゐる
よう くるみの木 ジュグランダー 鏡を吊し
よう かはやなぎ サリックスランダー 鏡を吊し
はんのき アルヌスランダー ≪鏡鏡鏡鏡≫をつるし
からまつ ラリクスランダー 鏡をつるし
グランド電柱 フサランダー 鏡をつるし
さはぐるみ ジュグランダー 鏡を吊し
桑の木 モルスランダー   鏡を……
ははは 汽車こっちがたうとうなゝめに列をよこぎったので
桑の氷華はふさふさ風にひかって落ちる
                      (宮沢賢治『春と修羅 第二集』より)


 この宮沢賢治の詩は、1926年(大正15年)1月に記されたもの。
 この「岩手軽便鉄道の一月」の詩が、『春と修羅 第二集』として世に出す予定だった詩集の最後尾の詩になっている。
 岩手軽便鉄道の列車の車窓から見た木々の氷華(ひょうか)がキラキラしてとても面白かったのだろう、それを「鏡」として表現している。
 宮沢賢治は、有名な『やまなし』や『銀河鉄道の夜』でもわかるように、“光”の見え方が常人よりとても繊細な人だったようだ。
 ≪鏡鏡鏡鏡≫の部分は、原稿では、実際には存在しない、「鏡」の字を4つ2×2の配置に重ねて置いた漢字として表記されているらしい。
 しかしなぜ、「はんのき」だけが ≪鏡鏡鏡鏡≫ なのだろう。特別に「はんのき」の氷華がゴージャスに輝いていたのかもしれない。



<第16譜 やはり、勝ちがあったんだ!!>


≪5九金図≫
   <1>2五香 → 後手良し
   <2>4一角 → 後手良し
   <3>6六角
   <4>8六玉
   <5>8五玉

 我々終盤探検隊は、「ここで何か勝ちがある」と感じて、<1>2五香と<2>4一角とを読んだが、結局、「勝ちはない」と判断した。その読み筋の内容を前譜では紹介した。

 そして、我々は、<3>6六角 を選択したのであった。
 これは「激指14」が、この場面での第1候補手として示していた手であった。(評価値 -370)


≪最終一番勝負 第16譜 指了図≫ 6六角まで

 この続きは、次譜で。



 さて、今回の第16譜では、以下、上の≪5九金図≫から、<4>8六玉 および、<5>8五玉 の2つの手について、先手に勝ち筋があるかどうかの確認をした結果を書いていこうと思う。
 ただし、今回記す調査は、≪亜空間一番勝負≫の勝負中ではなく、対戦後に最新ソフトを使用して調べたものである。


 <4>8六玉

変化8六玉基本図
 この <4>8六玉 (図)の手は、ソフト群がよく推してくる手で、「激指14」ではこの手も(<3>6六角と同じ評価値-370で)第1候補手としている。
 しかし、我々としては気乗りのしない変化で、実戦――≪亜空間最終一番勝負≫――では、ほとんどこれを考えなかった。(気乗りがしないというのは、我々の相棒である「激指」をもってしても、手が広くてよいのかわるいのか、その手の先の見通しが立たないからである)

 <4>8六玉 の意味は、7六玉のままだと後手に7五金を打たれて7七玉と下がらされるのが嫌なので、それをあらかじめかわしたという意味で、ここで7五金なら9五玉で、先手がいきなり大優勢になる。
 先手の手番なら、6六角、5五銀引、9三角成として、次に9五玉からの“入玉”を狙う。

 ここで後手がどう指してくるか。それが問題だ。

 後手 「7四歩」 なら、6六角、5五銀引、9三角成、7五銀、9五玉として、“入玉”作戦はおおむね成功。
 だからそれを指させない意味で、「8六玉基本図」で 「8四金」 が有力手だが、その手には7三歩成が効果的。以下、7五銀、9六玉、9四歩、7七角、4四歩、8五香と進むと先手良し。

 だからその途中、9四歩に代えて、6七とが考えられる手だが、それには8三と(次の図)

変化8六玉図01
 これで先手が良い。 8三同金には、6一角と打って攻防に利かす。

 「8六玉基本図」では、他の手でもだいたい先手良しになるが、立ちはだかるのが、「8四歩」である。

変化8六玉図02 
 <4>8六玉 には、後手「8四歩」(図)。 この手がここでの後手の最善手と思われる。
 このままでは次に後手9四桂がある。(8五金もある)

 だから先手9五金が考えられるが(9四桂には9六玉とするつもり)、それには8三桂が後手の好手で、先手が悪い。

 ここで「4一角~3三香」ではどうなのだろう。
 4一角、3二歩、3三香に、そこで9四桂がある。
 以下7七玉、3三銀、同歩成、同桂、5二角成、7五香(次の図)

変化8六玉図03
 これで先手が負け。後手7五香(図)に、7六に打つ適した合駒がないので8八玉と逃げるが、7六桂で詰まされる。
 この場合は「4一角~3三香」は勝てなかった。後手には9四桂と打つ手があって、「金」を手持ちに温存できたまま先手玉を7七に追い込めたのが勝因になっている。
 
変化8六玉図04
 なので、後手の「8四歩」に対して、ここは先手は「6六角」(図)と打つのが最善か。

 ここで後手の手として、3つの手が選択肢としてある。
 △5五銀引△4四歩△4四銀の3つであるが、最も良さそうにみえる△5五銀引が、この場合は悪い手になって、先手良しになる。

 △5五銀引、「8四角、9四金、8二飛」と進んで、次の図。

変化8六玉図05
 この「8二飛」(図)は、次に5二飛成を狙っている。5二同歩は後手玉詰み。(8四金、同飛成は先手良し)
 ここで後手に、(8五歩、9六玉として)“7二桂”という手がある。しかしその手には、この場合は、同飛成と取って、8四金に、5二飛成で―――(次の図)

変化8六玉図06
 先手が勝ちとなる。

 ところが、先の△5五銀引に代えて、△4四歩ならば、結果が逆になる。その場合は、5二飛成を同歩と取られ、後手玉が4四歩と突いてある効果で、後手玉がひろくなっていて詰まないから、後手勝ちになるのである。

変化8六玉図07
 そういうわけで、先手の「6六角」には、この場合は△4四歩(図)が正解だったのである。
 図以下、「8四角、9四金、9五金」(次の図)

変化8六玉図08
 「9四金」に、8二飛では上に述べた理由で“7二桂”で後手良しなので、「9五金」(図)とするのが最善手。
 以下は、「9五同金、同角、8三桂」と進む(次の図)

変化8六玉図09
 以下、「9三竜、9五桂、同玉、6六角」(次の図)

変化8六玉図10
 「互角」に近いが、先手がやや苦しいとみられる展開。(「激指14」評価値は-253)

 このような調査結果から、<4>8六玉 は、8四歩で後手良し が結論となった。

(ところがその結論がくつがえる。それについてはまた後で)



 <5>8五玉

 この手は、「激指14」が第4位の候補手として挙げている手(評価値-611)

変化8五玉基本図
 <5>8五玉 (図)。
 ここで先手の手番なら、6六角として、以下5五銀引、9三角成で、先手玉の“入玉”が確定して、先手良しとなる。
 後手はそれを防ぐために、ここでは 9四金 または 8四金 と、金を打つことになる。

変化8五玉図01
 9四金 は「激指14」がここでの後手最善手として推す手(なんと評価値-832もある)だったが、その先を調査してみると、これには8六玉、6七と、4一角、3二歩、3三香として―――(次の図)

変化8五玉図02
 これで先手優勢になるとわかった。(どうも「激指」にはこの3三香の手がほとんど見えていないように思える)

 <5>8五玉には、8四金 がおそらくはベストの手。
 対して、先手「9六玉」(次の図)

変化8五玉図03(9六玉図)
 「激指14」の評価値はこの図では[-195]で、推奨手は(A)6七と
 他にここでは、(B)9四歩 が有力手と思われる。

 先に(B)9四歩(図)から見ていこう。
 (B)9四歩 には、先手は「7七角」と打つ。
 後手は4四歩5五銀引が有力手。

変化8五玉図04
 4四歩(図)に、「3三歩成」とする。これを同銀は、9二飛と打って、この変化は先手良し。
 よって、「3三同玉」だが、先手は3六飛(次の図)

変化8五玉図05
 3四歩(代えて3四桂は3五歩がある)、4六飛、5八金(次に6七とをねらう)、1一角、2二桂、4一銀、6七と、8五香、7五金、8六角(次の図)

変化8五玉図07
 これは先手が良い。

変化8五玉図08
 「7七角」に、後手5五銀引(図)の場合。
 やはりここでも、「3三歩成」とする(次の図)

変化8五玉図09
 これを“同玉”は、1一角、2二桂、3七桂(詰めろ)、4四歩、8五香(次の図)

変化8五玉図10
 先手が良い。

 ゆえに、“3三同銀”が本筋となる。 その手には「9二飛」とする(図)

変化8五玉図11
 以下、〔あ〕6二歩に、8五香、6六銀、8四香、7七銀不成、8三香成、6七角、8五角(次の図)

変化8五玉図12
 こうなると、これも先手優勢。


変化8五玉図13
 戻って、先手「9二飛」に、〔い〕7四金(図)という手がある。(8四桂以下の先手玉への詰めろ) 対して5二飛成で勝てればよいがそれは3二歩で、これは後手優勢。

 図では、「9四飛成」が正着で、以下、7五銀、8六香が想定手順(次の図)

変化8五玉図14
 これも先手が良い。 図で6六銀左には8八角と引いておく(5九角でも先手良し)

変化8五玉図15
 もう一度「9二飛」と打ったところに戻って、そこで後手〔う〕9三桂(図)としてきた場合。これも先手玉への“詰めろ”なので、「同飛成」と取る。つまり後手はこの桂を犠打として一手を稼いできたわけだ。
 以下、6六銀、5九角、6八歩(次の図)

変化8五玉図16
 6八歩(図)で、角の利きを止めて、先手玉にまた“詰めろ”(9五金)がかかっている。
 先手は8四竜と、竜と金とを差し違えてその“詰めろ”を解除。
 8四同歩、9四竜、8二桂、3四歩(次の図)

変化8五玉図17
 先手玉はこの瞬間、ゼット(絶対に詰まない状態)になっていて、攻めるチャンスだ。
 3四歩(図)に、同銀なら、3三歩、3一歩、2六桂と攻めていって調子が良い。

 3四歩に、後手が4二銀と引く場合を以下に見ていくが、予想手順は、1五桂、5五飛、9五金、9四桂、2四香(次の図)

変化8五玉図18
 先手優勢である。


変化8五玉図03(9六玉図)(再掲)
 以上の通り、(B)9四歩 は7七角と打って、3三歩成の筋で先手が良いという結果が出た。
 (A)6七と がもう一つの後手有力手である。

 それ以外の手――たとえば(C)5五銀引(D)7四歩 は、「4一角、3二歩、3三香」と攻めていって先手が良い。
 また(E)7五銀 なら、後手に香車が入ったときに詰まされる形なので、いったん8六歩と受けておき、以下9四歩に、そこでやっぱり「4一角、3二歩、3三香」(次の図)

変化8五玉図19
 という、後手4二銀型に対するおなじみのアタックで、先手が勝てる。
 (といっても我々が「4一角~3三香」が有効と知ったのは後日のことだったのだが)


変化8五玉図20
 ということで、(A)6七と(図)を調べていく。これを破れば、この作戦は「先手良し」が確定と言っていい。  
 この場合、例の「4一角、3二歩、3三香」だと、後手は「香」を手にするので、9四香と打たれて先手玉が詰まされて負けになる。
 そして、先手7七角の手も消しているので、次に9四歩とされると受けに窮する。だからここで先手8五香(8六香)が考えられるが、それには9四金が好手で、以下8三香成も、8四桂、同成香、同金で、後手が良い。(以下9三竜には9四香がある)

 ということで、先手が苦しく見えるこの図だが、好転させる“一手”があった(次の図)

変化8五玉図21
 「4一角、3二歩」を入れた後、「 2五飛 」(図)と打つ手である。(単に2五飛でもよい)

 対する後手の指し手が問題だ。
 ここで〔は〕9四歩、〔ひ〕7五銀、〔ふ〕6五桂、〔へ〕3一桂が考えられる後手の候補手。
 (さらに〔ほ〕6五歩がありその調査結果は末尾の[追記]にて)

 〔は〕9四歩と〔ひ〕7五銀には、「3三香」と打ちこんでいって、先手が勝ちになる。

変化8五玉図22
 まず〔は〕9四歩の場合から。
 「 2五飛 」が先手玉を守っている、後手9五金には同飛で先手良し。そして香車を渡しても、9五香には8六玉と逃げてまだ詰まない。

 さて、後手はこの「3三香」をどうするか。取るか、あるいは3一銀として受けるか。
 3三同桂は、2一金、同玉、2三飛成で詰むので選べない。
 3三同銀は、同歩成、同玉、3四歩、同玉(4二玉は5二角成以下詰む)、4五銀、3三玉、3四金、4二玉、3二角成(次の図)

変化8五玉図23
 3二同玉に、2三飛成、4二玉、3三角、4一玉、5一角成、同金、4三竜以下の詰み。

変化8五玉図24
 なので後手3一銀(図)と引いて受けた場合。
 これには、3二香成、同銀、5二角成とする。これを5二同歩とはできないので、後手は7五桂と打つ。先手の「 2五飛 」の横利きを止めて、先手玉に詰めろ(9五金の一手詰)がかかった。
 しかし後手玉を詰めれば先手の勝ちがはっきりする。
 3一角、同玉、5一竜、2二玉、3三金、同桂(同銀なら3二金以下)、2一金(次の図)

変化8五玉図25
 2一同銀、同竜、同玉、2三飛成、2二合、4三馬、1一玉、2二竜、同玉、3三歩成以下、“詰み”。
 「 2五飛 」と「9一竜」2枚の飛車が働いて、即詰みに打ち取った。

変化8五玉図26
 〔は〕9四歩に代えて〔ひ〕7五銀の場合。図は、先手「3三香」に、3一銀と引いたところ。
 先ほどと同じように、3二香成、同銀、5二角成だと、この場合は9五香で先手玉が“一手詰め”で負けになる。
 なのでこの場合は、単に5二角成が正解である。後手玉は、次に3二香成以下、“詰めろ”。
 対して後手は4二銀引としたが―――(次の図)

変化8五玉図27
 この手に代えて、後手は3三歩と指したい(香を入手したい)ところだったが、それは3二金、同銀、3一角、同玉、5三馬以下、後手玉に詰みがあった。
 ということで4二銀引と指したのだが、これは受けになっていなかった。同馬と取って、同銀に、3二香成、同玉、3三金(次の図)

変化8五玉図28
 変化はいろいろあるが、これで後手玉は詰んでいる。この詰み筋も、「2五飛」と「9一竜」と2つの飛車を目いっぱい働かせての詰み筋である。

変化8五玉図29
 〔ふ〕6五桂(図)は、先手の「3三香」に対応して工夫した手。
 ここで3三香なら、ワナにはまって先手不利になる。
 3三香、同銀、同歩成、同玉と取り、3四歩に、4二玉と逃げて、このとき、後手玉は(5二角成に同玉で)ギリギリ詰まない。そして先手玉は、9四香、8六玉、7五金で詰まされる。

 そうすると、この図で先手はどう指せばよいか。
 明快な“答え”がある(次の図)

変化8五玉図30 
 5六角(図)と打つ手である。
 この手は次に3三歩成~2三角成の“詰めろ”だし、先手玉は香を渡さなければまだ詰まない。なので後手は3一桂(1一桂)と受けるしかないが、2六香と打って「2三」への利きを増やせば、持駒のない後手はもう受けがなく、先手の勝ちが確定する。
 ただし、5六角ではなく、2六香を先に打つと、2四桂でまぎれてしまう。(5六角に2四桂には、同飛、同歩、3三歩成で後手玉詰み)

変化8五玉図31
 先手の「 2五飛 」には、〔へ〕3一桂(図)が実際的には後手の最善手かもしれない。
 これも3三香などと攻めると暴発になって悪くなる。

 ここは8六香が正解手。以下、9四金、8三香成、8四桂、同成香、同金、9三竜(次の図)

変化8五玉図32
 ここで9四香には、8六玉として、先手が良い。以下8三歩には、7六桂だ。
 しかしもし「 2五飛 」がいなかったら、9四香、8六玉に7五銀で先手玉は詰むので、9四香で負けになっているケース。「 2五飛 」が打ってあったから「8六香」が良い手になった。

 図で、7五銀には、同飛、同金、7三歩成として、先手玉は“入玉”確定で、先手良し。

変化8五玉基本図(再掲)
 以上の調査から、<5>8五玉 は、先手良し と結論する。
 先手に勝ち筋は、ここにも存在していた!!



 さて、今の調査研究から学んだことがある。後手のこの陣形に対して「2五飛は有力」ということである。
 そこで、この「2五飛」を、先ほど調べた <4>8六玉 に応用してみたらどうだろう、と我々は考えた。



 <4>8六玉 (追加調査)

変化8六玉図11
 すなわち、ここで「 2五飛 」(図)はどうだろう、ということである。(上の調査では6六角としていた)
 この図は、先手の <4>8六玉 に、後手8四歩 の場面である。この手が打ち破れず、「後手良し」と上で結論したわけであったが。この図で先手良しになれば、その結論を覆せる。
 「 2五飛 」は、次に「4一角、3二歩、3三香」という攻めを狙っている。この攻めを、「2五飛」と打っておいて決行すると、きわめて破壊力があることは上のケースでわかった。
 たとえば図で〔S〕5五銀引に「4一角、3二歩、3三香」で勝てるのではないか、というのが今回の“勝利の構図”(ただし勝てるかどうかはこの後の調査次第)である。

 しかしその調査の前に、気になる手がある。まず後手〔P〕8五金とすぐに打つ手である。
 この手には、同飛、同歩、同玉となるが、それで先手が良いのかどうか。
 そこで7二桂が後手最強の手。これには、6六角と打つ。5五銀引なら、9三角成で先手優勢がはっきりするが、5五飛という返し技がある。

変化8六玉図12
 以下、同角、同銀引、9三竜、8一桂、9二竜、9三歩、2六香、8四歩、9六玉、8五角、8六玉、6七角成、9六歩(次の図)

変化8六玉図13
 こう進んで、これは先手優勢になった。
 先手玉の“入玉”は後手の二枚の桂によって阻止されたが、手番がまわれば8一竜とその桂馬を拾って1五桂と打つ攻めが厳しい。

変化8六玉図14
 〔Q〕3五金(図)という手も気になる手だ。これで先手の飛車は捕まっている―――ように見えるが、実はそうではない。
 ここで4一角、3二歩を決め、1一角と打ちこむと―――(次の図)

変化8六玉図15
 以下、1一同玉に、3二角成で、先手勝勢。後手が「金」を不用意に手放すと、この攻めが有効になるのである。

変化8六玉図(再掲) 
 というわけでこの図に戻る。
 この「 2五飛 」に代えて先手9五金(次に8四金として入玉を狙う)という手があるのだが、それは後手8三桂という対応で、先手が悪い。まずそれを知ってもらった上で、次の解説を読んでもらいたい。

変化8六玉図16
 「 2五飛 」に対し、後手が〔R〕6五桂(図)としてきた場合。
 この手は先手玉の7七の退路を塞いで“詰めろ”(8五金まで)になっており、先手「 2五飛 」に対するうまい切り返しに見える。

 その場合、先手は、次の手で切り返す―――

変化8六玉図17
 9五金(図)である。
 “詰めろ”を受けた。これでこの場合は「先手良し」になるのである。
 理由は、後手の“持駒の桂馬が一枚だから”という理由である。もし後手に桂馬が“二枚”だったら逆に「後手良し」になるところだったのだ。
 9五金に、8三桂と打たれ、それに対して先手は9三竜と応じる。何度も言うがすんなり“入玉”できればだいたい先手が良くなる。
 8三桂、9三竜――以下7五銀、9六玉、9四歩、8三竜、9五歩、同玉と進むのが想定手順だが、そのときに、後手“7一桂”と打つ「桂馬」があれば後手がやれる。
 ところがこの場合はそれがない(後手はその「桂馬」を6五に打ってしまっている)ため、先手玉の“入玉”が確実。それでこの図での8三桂では「先手良し」というわけ。

 9五金には8五金が気になるが、同金、同歩、9六玉とし、以下9四金には8三金と打って、先手良し(さらに8四桂は、同金、同金、6六角が王手金取り)
 
 9五金と打ったこの図は「先手良し」。

変化8六玉図18
 では、〔S〕5五銀引。
 これに対して、「4一角、3二歩、3三香」が我々の期待を乗せた攻め。
 「2五飛」と「4一角、3二歩、3三香」の組み合わせの攻めは、先ほどの場合はうまくいったが、この場合は後手の持駒に「金」がある。それでもこの攻めがうまくいくかどうか、そこが最大の注目点である。

変化8六玉図19
 前の図(5五銀引)から、4一角、9四桂、7七玉、3二歩、3三香と進んで、この図になる。この攻めが成功しているかどうか。
 3三同銀は、上でも出てきた通りの攻め(同歩成、同玉、3四歩、同玉、4五銀、3三玉、3四金)で後手玉が詰む。

変化8六玉図20
 「3三香」に、3一銀(図)と引いた場合。
 この場合、後手が「香」を入手した場合、後手7五香、8八玉、7六桂という攻めで、先手玉は仕留められてしまう。なのでここで5二角成は、(同歩なら後手玉が詰むが)その瞬間に3三歩と香を取られて後手勝ちになる。
 
 だから先手は他の攻め筋があるかだが、「3二香成、同銀、3三歩成」という攻め筋があった。
 これを同桂は、3二角成、同玉、2一角から詰むので、後手は「3三同玉」。
 先手は「1一角」と王手する。

変化8六玉図21
 この攻め筋は、後手が4六銀を5五銀引とした形で有効になる。1一角に3四玉の場合に、3五金が打てるからだ。また、1一角に4二玉は、3二角成、同玉、3三歩以下詰み。
 なので先手1一角には“2二合”だが何を合するか。「桂」だと、同角成と取って、同玉に、3四桂、3三玉、3二角成、同玉、3三歩以下、後手玉が詰んでしまう。

 よって、後手は“2二香合”になるが、そうなると「香」を使ってしまったので、後手からの7五香以下の先手玉への詰みはなくなった。これが大事なところで、すると先手は後手玉に“詰めろ”で迫って行けばよいという条件になる。

変化8六玉図22 
 先手は「3四歩」(図)と王手。
 ここで“同玉”と、“4二玉”とがある。

 “同玉”には、3五金、3三玉、5二角成、同歩、2三飛成(次の図) 

変化8六玉図23
 2三飛成(図)から後手玉を詰め上げた。

変化8六玉図24
 「3四歩」に“4二玉”には、すぐには詰みはないので、「2二角成」とする。
 以下、「4四銀、3二角成、5三玉、6一竜、6二歩、2一馬右」と進めば、この図になる。
 先手優勢である。後手玉は、5二竜以下の“詰めろ”がかかっている。

 これで後手の3一銀を攻略できた。

変化8六玉図25
 「3三香」に対する後手最後の手段は、3一金(図)である。
 この手には、「3二香成、同金」。 これで後手には「香」が入ったが、「金」を受けに使ったので先手玉はまだ大丈夫だ。
 そこで「1一角」があった!!
 「同玉」に、「3二角成」(次の図)

変化8六玉図26
 「角桂香」の持駒では先手玉は詰まない。
 2二角が攻防の手だが、それには、3三歩成(同角なら2一馬以下即詰み)で、以下6六銀、同玉、3三角の反撃はあるものの、5七玉で届かない。
 先手勝ち。

 以上の結果、どうやら後手5五銀引には、「4一角~3三香」で、先手が勝てるとわかった。

変化8六玉図27
 しかしまだ「 2五飛 」で先手が勝てるとまで結論するのは早い。
 〔T〕6五歩(図)ならどうなるだろう。(この手は先手の飛車の横利きを止めただけの手だが)

変化8六玉図28
 結論を言うと、同じように「4一角~3三香」と攻めるが、今度は先手の攻めが「失敗」に終わる。
 後手に「3一金」と対応され、以下先ほどと同じく、3二香成、同金、1一角、同玉、3二角成と進め、そこで後手は6六角と打つ。
 以下、7八玉に、3一香と進んで、この図。
 後手の角筋が利いて「2二」を守っているために、この3一香で受かる。この図は、後手良し。つまり後手は5五銀引としないほうが、6六角の角筋が受けに利くのでこの先手の攻めが受かるわけなのだ。

 「3一金」に対する他の攻め方(5二角成など)も調べてみたが、先手が勝てそうな道は発見できなかった。

 そういうことで「6五歩で先手勝てない」と結論を、我々は一旦は下したのだったが――― 

変化8六玉図29
 その後再度考えて、先手打開策が見つかったのだ!
 〔T〕6五歩には、「9五金」(図)と打つのがよい。

 「桂馬が二枚あるときは9五金は8三桂で先手悪い」と上で述べたが、この場合、「2五飛」と飛車をあらかじめ打ってあるために、その状況が変えられるのだ。
 「8三桂」に、「4五角」(次の図)と打つのである。

変化8六玉図30
 この手は“詰めろ”(3三歩成、同銀、2三角成以下)になっている。だから後手は3一桂(1一桂)と受けるが、これで後手は桂馬を一枚使ったので、持駒の桂は一枚に減った。
 よって、そこで9三竜とすれば、今度は先手にとって“入玉”しやすい条件になっているという仕組みだ。
 この図から、3一桂、9三竜、7五銀、9六玉、9五桂、同玉と進み―――(次の図)

変化8六玉図31
 先手優勢。

変化8六玉図32
 では最後の手。「 2五飛 」に〔U〕7四歩。
 この手には、例の「4一角~3三香」で楽勝に思えるが、それは実は3一金でたいへんとわかった(我々の調べでは優劣不明である)
 ここは飛車の横利きが通っていることを利用して、「9三竜」からの“入玉”作戦が良い判断。
 以下、「9四歩」にも、「同竜」と取って、後手「8二桂」に―――(次の図)

変化8六玉図33
 そしてここでも「4五角」がある。「3一桂」と受けに桂馬を使わせる。
 続いて、2六香、2四金、8一角成(次の図)

変化8六玉図34
 9四桂、7五飛、同歩、9四玉、6九飛、7三歩、6一飛成、7一銀(次の図)

変化8六玉図35
 二枚の飛車を後手に渡したが、“入玉”はほぼ確定で先手優勢である。


 後手 8四歩 には、「 2五飛 」で先手が勝てる、と以上の調査でわかった。

変化8六玉基本図(再掲)
 ということで、<4>8六玉 は先手良し、である。

 この調査報告では、この図で後手「8四歩」をどう攻略するかということを記してきた。
 他の手については、はじめから「先手良し」と考えてきたから。 その評価については今も変わっていない。
 「7四歩」「8四金」については、上ですでに簡単に触れているが、その他の手――「6七と」および「5五銀引」――にどう対応するかについて書いておこう。

 「6七と」にはどうするか。

変化8六玉図36
 「6七と」には、8二飛(図)と打つ手がある。
 ここでたとえば7四歩なら、先手は5二飛成で勝てる。(取ると3二金以下詰み)
 なので後手は3二歩とか、6二歩のように受けることになるが、先手は8三飛成とする。こうして二枚の竜をつくって、“入玉”をねらっていく。これで先手良し。

変化8六玉図37
 「5五銀引」(図)もある。
 これに対しても同じように8二飛で良さそうに見えるが、この場合は6一角と角を打つのが良い。(その理由は後で示す)
 6一角に、これも後手が8四歩のような手なら、5二角成で金を取れる。
 しかし6一角には、6六銀があって、この場合は5二角成では、7五銀上から先手玉が詰んでしまうから負けになる。この銀の攻めは意外に攻め足が早いのだ。
 よって、後手6六銀には、先手は8三角成だ。ここに馬をつくって上部を開拓していく。
 以下、8四歩、同馬、7五銀上(引もある)に、9五玉とする(次の図)

変化8六玉図38
 これで先手優勢。大駒一枚は後手に献上して、“入玉”をめざす。

 ところで、もし先手が6一角ではなく8二飛と打って「竜」を作っていたら、この8四の「馬」が、「竜」になっている。
 その場合は、ここで後手に7二桂と打たれ、逆に先手劣勢の図になっていたのである(失敗図)

失敗図
 7二桂と打たれた図だが、9三竜右に、8四金、同竜、同銀、9四玉としたときに、「9五飛」と打たれて、先手が悪くなる。もしも取られる駒が「角(馬)」ならば、逆にはっきり先手良しの図になるというわけ。



≪5九金図≫(再掲)
   <1>2五香 → 後手良し
   <2>4一角 → 後手良し
   <3>6六角  = 我々が選択した手
   <4>8六玉 → 先手良し
   <5>8五玉 → 先手良し

 以上が <4>8六玉 および <5>8五玉 についての調査結果で、どちらの手も、「先手勝ち筋」があると判明した。
 しかし実戦でこれらを発見できたかというと、それは難しかったと思う。我々の闘いは「激指」に頼るものであったので、それにはちょっと荷の重い局面であった。
 「最新ソフト」と「激指14」の一手の評価の能力の“差”はわずかであっても、手が広く選択肢の多い終盤の局面を、10手20手となると、その“差”が累積されて、調査に使う時間に“圧倒的な差”ができてしまうのだ。


 さて、今回のこの調査研究で、我々はさらに、次の局面を「再調査すべき」と感じることとなった。

先手2五香図A
 これは≪5九金図≫で、<1>2五香 を選んだ場合の変化で、先手の2五香に、後手が3一桂と受けた場面である。
 この後手の3一桂で、先手負けると判断し、我々はこの道をあきらめたのであった。(前譜参照)
 
 ところが、「ここで8六玉なら先手もチャンスがあるのではないか」と、今回の調査を経験して、思うわけである。

変化2五香図B
 「8六玉」として、この図である。
 2五香と3一桂との手を交換し、後手の持駒から一枚「桂」が消えた。そのことを先手にとってプラスとして、この図から先手は勝てるのではないか。
 実は、「2五香、3一桂」とした上の図でのソフト「激指」の示す最善手は「8六玉」で、戦闘中もそれはわかっていた。わかってはいたが、“気がすすまない”という理由でその先を考えなかったのである。(「激指14」のこの図の評価値は-177)


2五飛図
 また、≪5九金図≫で、「2五飛」(図)があるのではないか。
 あらためて確認してみると、「激指14」はこの「2五飛」を、7番目の候補手として示していた。(評価値-707)


第17譜につづく




[追記] <5>8五玉についての補足

8五玉図33
 うっかり <5>8五玉 の変化で、先手「 2五飛 」に対しての後手〔ほ〕6五歩(図)の手について調べることを怠っていた。(後手にとってはこの手は〔ふ〕6五桂よりも有力な手で当然調べておくべき手であった)
 もしもこれで先手が勝てないとしたら結論が覆る。
 が、結果から言うと、先手が勝てるとわかった。よって、結論は変わらない。

 以下、その〔ほ〕6五歩に対し、先手がどう攻略するのかは重要なので、それを追記として書いておく。

 まず5六角と打って、3一桂、2六香、1一桂、6七角(次の図)

8五玉図34
 後手に持駒の桂をすべて使わせて「6七のと金」を払った。
 以下、5七銀成、8九角、9四歩、8六歩、7五銀、8七玉、6九金、3七桂、7九金(次の図)

8五玉図35
 先手の3七桂は、次に3三歩成、同銀、5二角成のような攻めを狙っている。しかしこの場面でそれを決行するのは、8九金と角を取られて負ける。
 よって、この図では4五角と角を逃がし、後手は4四歩とする。
 ここで5二角成と勝負。以下、4五歩に、3三歩成でどうなっているか(次の図)

8五玉図36
 3三歩成(図)を同桂は、2三飛成以下後手玉が詰む。
 同銀は5一竜で、先手勝てる。(角一枚ではまだ先手玉は詰まない)
 同玉には3五飛、2二玉、4一馬とし、以下は7六角、8八玉、6六歩、4三歩、同角、3四金が予想手順だが、先手良し。
 よって、後手は3三同歩が最善手。 これには、5三馬。
 以下、同銀、8二竜、3二角、4一銀、7六角、8八玉、6六歩、3二銀成、同角、6五角(次の図)

8五玉図37
 5四銀打なら、同角、同銀、4二金で、先手勝勢。
 4一銀も、3四歩、5二歩、4五桂、6五角、3三歩成、同桂、同桂成、同玉、3四歩、同玉、4六桂で、先手成功。

 図以下、他の想定手順は、7八金、同玉、6七歩成、8九玉、6二歩、3二角成、同玉、6五角、4三角、同角成、同玉、4五飛、4四歩、6五角(次の図)

8五玉図38
 5四銀打に、同角、同銀、5三金、同玉、4二銀、同玉、6二竜以下、後手玉は詰んでいる。
 攻略できた!
 
 ということで、「 2五飛 」に対しての後手〔ほ〕6五歩の変化も先手良し。
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終盤探検隊 part116 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第15譜

2019年04月20日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第15譜 指始図≫ 5九金まで



    [ナルニア国物語]
 「もっといそげ! はやくいたせ!」と魔女はいいました。
 もはや霧のなごりもありません。空はいよいよ青くすみ、ときどき白い雲があわただしく走りすぎるばかりです。森の打ち開けた草地には、サクラソウが咲いていました。そよ風がおこって、ゆれる枝から雪どけのしずくをちらし、歩く三人の顔に、すがすがしいかおりを吹きつけました。
   (中略)
 「これは、雪どけではありません。」
 小人が立ちどまってふと、いいました。「これは、春でございます。どういたしましょう。あなたさまの冬は、たしかにほろぼされましたぞ! アスランのしわざでございます。」
 「きさまたちのどちらでも、その名をもういちど申してみい。そくざに殺してくれるぞ。」
と魔女はいいました。
   (C.S.ルイス著 『ライオンと魔女』 瀬田貞二訳 岩波少年文庫より)



 1898年にアイルランドに生まれ、オックスフォード大学で学んだ文学者のC.S.ルイスが、全7冊からなる「ナルニア国物語」のシリーズの、その最初の本を書いて発表したのは、1950年。
 それが『ライオンと魔女』で、これは「ナルニア国」の王である<アスラン>という名のライオンと、その国に力づくで「冬」をもたらして支配している<白い魔女>との、戦争の物語である。

 この<白い魔女>のせいで、「ナルニア国」は長い間ずっと「冬」のままであった。
 「冬」は、わるいばかりのものではなく、美しい側面、楽しい側面も持っているが、しかしいつまでもずっと「冬」の中で暮らさなければいけないとしたら、「春」や「夏」や求め、それに恋焦がれるのは、住民の当然の思いだろう。
 「ナルニア国」に、この長い長い「冬」をもたらしているのは<白い魔女>の力が強かったからだが、それを追い払ったのが、ライオンの姿の王<アスラン>であった。
 しかしその戦いのきっかけとなったのは、「人間」の世界から、4人のこどもが「ナルニア国」にやってきたからである。そして勝利できたのは、彼らが、<アスラン>とともに戦ってくれたからである。
 ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィ、の4人のことで、彼らは、この「ナルニア国」の、王と王女になって、闘いの後も過ごしたことになっている。

 そう、スーザンとその妹ルーシィ―――この二人の女の子は、“王女”になったのである。
 別世界に行って、闘いに参戦し、そして“王女”になる――――これは、『鏡の国のアリス』と同じではないか。

 ただし、この4人きょうだいが「ナルニア国」にやってきたのは、この場合は「鏡」は一切関係がなく、彼らは古い屋敷の古い「衣装だんす」を通って、この国にやってきたのである。(別の話で明らかになるが、この「衣装だんす」はもともとナルニア産のリンゴの木からつくられたたんすだった)
 この『ライオンと魔女』の原題は『The Lion, the Witch and the Wardrobe』―――つまり、「ライオンと魔女と衣装だんす」であった。

 『鏡の国のアリス』と『ライオンと魔女』との“共通項”をほかにも探してみよう。

 『鏡の国のアリス』の場合は、こちらの世界は「冬」で、向こう側の世界は「夏」だったが、『ライオンと魔女』は逆で、こちらが「夏」で、向こうが「冬」。 しかし、“季節が逆”というくくりで、同じといえる。
 また、<アスラン>はネコ科の動物であることを考えれば、“猫が重要キャラ”という共通項もある。



<第15譜 新型香車ロケット砲2種>

5九金図
 さて、この図である。 我々終盤探検隊が、「ここが勝負所」と設定していた場面が、ここだ。
「ここで何か先手が勝てる道があるのではないか」と、我々は考えていた。半分以上は、“勘”であるが。
 先手は、9一竜として、「香車」を手にした。持駒はこれで「飛角角金香歩」。
 特に「香」は攻めに有効な駒となり得る。ここで有効な「香車ロケット」が使えないだろうか。

 そうして編み出したのが2つの新しい「香車ロケット砲作戦」である。

 一つは、ここですぐ 2五香 と打っていく『2五香ロケット』。
 もう一つは 4一角 の手から始まる『3六香ロケット』である。

 その2つの「ロケット砲」についての、我々の“読み筋”とその“結果”について、今回はそれをレポートしていく。


 <1>2五香

先手2五香(2五香ロケット)基本図
 2五香(図)と打って、後手の弱点「2三」に狙いをつける。
 もしここでさらに先手の手番なら、2六飛、3一桂、4一角、3二歩、4五角、1一桂、2三香成、同金、2四金と、「ロケット砲」が炸裂する。

 しかし現実の手番は、後手。 ここか後手がどう指してくるか。それが問題だ。

 (この図の「激指14」の評価値は[-929]で推奨手は7五金。なあに、評価値など覆せばいいのだ)

 まず、7五金、7七玉、8五桂(6五桂)と攻めてきたらどうなるか。
 以下、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成、8九金。
 これで後手の攻めは止まったので、次は2六飛や4五角と打てば先手が勝てる。
 先手にその2六飛を打たせないよう、3五銀としても―――(次の図)

先手2五香図01
 4五角(図)と打てば、先手の勝ちが確定、次の、3三歩成、同銀、2三角成の攻めが受からない。2四歩と受けても、4一角、3二歩、3三歩成、同銀(桂)、2三飛、3一玉、5二角成で、“必至”
 
 こうなったのも、後手が持駒をすべて攻めに使って、「2三」を守ることができなかったからである。

先手2五香図02
 というわけで、今の後手の7六桂の手を代えて、7六金(図)とした場合。これなら一枚桂馬を持っていて受けに使えるし、仮に後手に何か――たとえば香車が入れば、7七桂成、8九玉、8八香から、先手玉を詰め上げることができる。

 しかし図から、4一角、3二歩、4五角、1一桂、2六飛とすれば(次の図)

先手2五香図03
 これも後手受けがない。 先手勝ち。

先手2五香図04
 それなら、8五桂(6五桂)を打つ前に、3五銀(図)ならどうだ。桂馬が二枚受けに使えるし、2六飛打ちも消している。

 これには、2三香成、同玉、4五角とする。これが3三歩成以下の“詰めろ”なので、後手は3四の地点を受けて、2二桂とするが―――(次の図)

先手2五香図05
 先手1一飛(図)。 これで先手の勝ちが決まった。

先手2五香図06  後手7四歩の変化
 今のところ、順調に「2五香作戦」が、その効果を存分に示している。
 この図は、後手が7五金という手をやめて、代えて7四歩としたところ。
 たとえばここから先手が、4一角、3二歩、4五角、3一桂、2六飛、1一桂、2三香成、同桂左(右)、2四金のように攻めたらどうなるか。
 それは、7五銀、7七玉、7六香、8八玉に、1一玉が好手で、後手勝勢になる。

 なので、先手は、攻めの手順を慎重に組み立てる必要がありそうだが―――“解”はあった。
 2六飛と打つのが良い。3一桂に、4六飛と銀を取っておく(次の図) 

先手2五香図07
 ここから8四歩(8五に逃がさないという意味=ソフトの示す最善手)、4一角、3二歩、5二角成(同歩なら3三銀から後手玉詰み)、7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、7七金、9八玉、7六銀で、先手玉に“詰めろ”がかかったが―――(次の図)

先手2五香図08
 2三香成(図)から、後手玉は詰んでいる。
 2三同玉は、2四銀、同玉、1五角以下。
 なので図からは、2三同桂だが、そこで、3三銀と打ちこんで、以下、同歩、同歩成、同玉(同桂なら3二金、同玉、4三飛成、同銀、4一角以下)、3四歩、2二玉、3三角(次の図)

先手2五香図09
 3三同桂、同歩成、同玉、2四金(次の図)

先手2五香図10
 以下、2四同玉、3四金、2五玉、3七桂、1四玉、1五歩までの“詰み”
 図で3二玉には、4三飛成、同銀、3三歩、2二玉、2一金、同玉、4三馬以下。

先手2五香図11 
 それでは、7五金、7七玉に、3一桂(図)
 このように先に桂馬で「2三」を強化しておくのはどうか。これなら、2六飛には3五銀、4五角には4四歩とすぐに対応していける。4五角、4四歩、8九角なら、8五桂、8八玉、7六金が、先手玉への“詰めろ”になっているので、こうなれば後手優勢。
 「これで後手良しか…」といったんはあきらめたが、さらに粘り強く調べていくと、先手良しになる手順が見つかったのである。

 まず、「4五角」と打つ。
 「4四歩」に、「4一角、3二歩」。
 ここで「3三歩成」とするのが苦労して発見した順。これを「同桂」は、2三香成、同桂、2一金、同玉、2三角成。(この金香捨てての寄せはなかなか思いつかない) 以下、2二金には、同馬、同玉、2四飛、2三歩、3四桂、3一玉、5二角成となって、後手玉は“必至”である。先手玉は詰まない。

 よって、「3三歩成」には「同銀」を本筋として見ていくこととするが、そこで先手は「5二角成」とする。(5二同歩なら2三香成、同桂、4一飛で先手勝ち)
 後手は「4五歩」で角を取るが、角を取られてもまだ先手玉は詰めろにはなっていない。
 そこで――――(次の図)

先手2五香図12 
 「5一竜」(図)とすれば、次に3一竜以下の“詰めろ”になっている。4二銀右と受けても、3一竜、同銀、2三香成、同玉、1五桂から詰むので受けは利かない。先手勝ちである。
 (見たか! 「激指」推奨の「7五金」をついに完全攻略!)

 以上のように、『2五香ロケット作戦』はたいへんに有力で、ほとんどの形を攻略できる。
 「激指14」の示す第2候補手は「2五香」に「6六歩」(評価値[-766])だが、それも8六玉で先手が勝てる。

 ところが、後手の最善の受けが見つかったのだ!!(次の図)

先手2五香図13 
 先手「2五香」に、すぐに「3一桂」と打つ。これが“正解手”だったのである。(7五金を打たずに3一桂と受ける)
 これで先ほどと同じように進めたとき―――すなわち、4五角、4四歩、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、4五歩、5一竜―――
 このときに、後手は「角金桂」と持駒があるので、この「7六玉型」ならば、5八角から(または8四桂から)先手玉は詰んでしまうのである。

 「3一桂」と受けられたここでどうも、先手に有効手がない!! (2六飛は3五銀と応じられる)
 この図の後手玉の他の攻略手順は見つからず、この図は「後手良し」と言わざるを得ないわけである。

 
 かくして、残念ながら、『2五香ロケット作戦』は不発に終わった―――。

 <1>2五香 では先手勝てない とわかった。


 <2>4一角

先手4一角基本図

 もう一つの新型ロケット砲の作戦は、まず「4一角」(図)から始まる。
 これには後手「3二歩」(次の図)

先手4一角図01
 ここで2五香は、先ほどの『2五香ロケット砲』と同じ変化に合流する。
 すなわち、すぐに3一桂と受けられ、その展開は先手に勝つ道が見つからない。

 それなら、ここで「3三歩成」で勝てないか。
 これが、我々が新たに編み出した手だ(次の図)

先手4一角図02
 3三同歩はもちろんない(3二飛以下詰み)
 3三同桂は、5二角成で先手が勝つ。
 あとは「同玉」と「同銀」だが、「3三同玉」は、3六飛と先手は飛車を打つのが良い。
 以下、3五金に、3九飛と引いておく(次の図)

先手4一角図03
 これで、先手が優勢。
 ここで後手が4八となら、1五角と王手で打って、このと金を除去しておく。
 先手は次に指したい手が色々あり、6六角から9三角成、8五玉と逃げておく手、4五金と攻めていく手など。

先手4一角図04(3六香ロケット図)
 そういうわけで、先手の「3三歩成」に、後手は「同銀」が最善手になる。
 そこで図のように、「3六香」 と打つのが、狙いの“新型ロケット砲”。

先手4一角図05(3六香ロケット図)
 だが、ここから先を読むのが困難を極める道。 後手の応手がたくさんあり、何を指してくるかわからない。
 我々が予測し考慮した後手の候補手は次の8つ。
  【A】3四桂
  【B】3五桂
  【C】7五金
  【D】4二金
  【E】4二金打
  【F】6五桂
  【G】4二銀右
  【H】3一桂  

 とはいえ、後手に選択肢が多いということは、逆に考えれば、“後手の間違えやすい局面”でもある。後手の選べる手は一つだけ、そしてこれは「一番勝負」だから、やり直しはきかない。
 
 我々の考えはだいたいこうだ。
 まず【A】3四桂は3五歩で調子良さそう。【B】3五桂が気になるが、これは3四歩と打って、なんとか先手良しになりそうだ。
 気になるのは、【C】7五金と【E】4二金打である。これで負けではどうにもならない。
 他に【G】4二銀右が有力で、これも調査が必要だ。【H】3一桂なんて手もある。

 (ソフト「激指14」の推す手は【G】4二銀右。そしてこの図の評価値は[-872]で、ずいぶん先手にとって厳しい評価ではある) 

 以下、この「一番勝負」の戦闘中、我々終盤探検隊が考えた“ここからの読み”を記していく。

先手4一角図06 後手7五金の変化
 我々は、まず一番気になる【C】7五金から読んで行くことにした。
 これは先手の「3六香」に手抜きして攻めてくる手だが、これでどっちが勝っているのか。(これで負けならこの作戦はもともと駄目だったということだ)
 「7五金、7七玉、8五桂、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成」―――そこで、「3三香成」(次の図)

先手4一角図07
 このタイミングでの「3三香成」が好タイミングで、これを見送って7九金では、後手6九金で先手負けになる。
 ここでの「3三香成」に、同玉と取ると、1一角と打って、3四玉には7七角成で、先手良しになる。
 だから後手は、ここは「3三同桂」と取るしかないのである。

 そこで、「7九金」と受ける。(代えて8九銀では8四香で先手困る。7九金に8四香には7八銀と受けて先手良し)

 以下、「4二金、6三角成、6七と、5一竜、4一香、3四歩」(次の図)

先手4一角図08
 これで先手優勢。7八とには、3三歩成以下、後手玉は詰んでいる。


先手4一角図09 後手4二金の変化
 「3六香」に、【D】4二金(図)も気になる手。
 6三角成でも先手が勝てるかもしれないが、我々が調査した手は、「3三香成」。
 これを後手同玉は1一角で、同桂は5一竜で、先手が良くなる。
 なので後手は「3三同歩」。

 ここでも6三角成で先手が良くなる道があるようだが、それよりも明快な決め手があると我々は発見した。
 次の手がそれだ(次の図)

先手4一角図10
 「5二飛」(図)。 鮮烈なる決め手である。
 5二同歩なら、3一銀、同玉、2三角成で詰む。
 3一金と受けても、3二金、同金上、同角成、同玉、4一角、同玉、5一飛成以下の、“詰み”。


先手4一角図11 後手4二金打の変化
 では、【E】4二金打(図)。 金を打つ手。
 これにも「3三香成」と行く(次の図)

先手4一角図12
 これを後手同桂は、5二角成、同金に、4一飛と打って、先手優勢。
 後手の選択肢は、「3三同玉」か、「3三同歩」になる。
 「3三同玉」には、「1一角」。以下、「2二桂、3四歩、同玉、2二角成(後手玉は2五銀以下詰めろ)、4四歩、3八桂(4六桂以下詰めろ)、3五銀、3七飛」(次の図)

先手4一角図13
 これで後手玉は仕留められている。
 「3七飛」(図)に、3六香は、2五金、同玉、2六銀以下寄り。4一金(角を取る)は、4六桂、4三玉、3五飛。
 図では他に後手3三香もあるが、それには2五銀(同玉は2三馬)、4三玉、3四金で、やはり寄っている。

先手4一角図14
 「3三同歩」の場合は、「3一銀」(図)と打つ手がある。 「同玉」に、「2三角成」とする。
 後手は受けなければならないが、ここは「2二銀」しか受けがない。(2二歩では1一角で寄せられる)
 「2二銀」には、「1二馬」。 これで先手優勢である。

 【E】4二金打も先手良しになった。


変化4一角図15  後手6五桂の変化
 【F】6五桂(図)には、「8六玉」とする。
 そこで後手がどう指すか。甘い手を指していると、先手5二角成がある。
 8四歩には、9六歩とし、以下4二金打なら、9五玉で“入玉”を狙う。

 「6五桂、8六玉」に、そこで「4二金打」が後手工夫の手順になる。
 単に4二金打の場合は、先手はすぐ3三香成とした。その場合、同歩には3一銀、同玉、2三角成の用意があったが、「6五桂、8六玉」としたこの場合は、「4二金打」にその順だと、後手に「銀香」と渡してしまうと先手玉が詰まされて負けになる。よってこの場合は、先手は他の手段をひねり出さなければならない。(これが後手の狙いだ)
 「4二金打」に、先手は、「5二角成、同金」に、「4一飛」(次の図)

先手4一角図16
 次に3一角から後手玉は“詰めろ”だ。
 これを4二銀右と受ける手があるが、それには、3四歩、4四銀、6一角と指して先手良し。
 後手6六角(攻防の角打ち)には、先手3一金と打って、それも先手が良い。

 なので、後手は粘り強く「3一桂」と桂馬を投入して受ける。
 そこで先手は「7二角」。 後手は「5八角」。 お互いに“好角”を打つ。
 先手玉が安全に“入玉”できれば先手が勝ちになるが後手の「5八角」がそれを食い止めている。

 「9三竜、9四歩、8三竜、6七角成、7三歩成、7一歩、8一角成、7七桂成、6三と、7六馬、9六玉」(次の図)

先手4一角図17
 こう進んで、どうやら先手が勝てる形勢になっている。

 後手【F】6五桂は、うまく指せば先手が勝てるようだ。


変化4一角図18  後手4二銀右の変化
 【G】4二銀右。 この手は。3三香成を、同銀と受けようという意味。
 これには、「3四歩」と指す。(3三香成、同銀の展開は、この場合は先手まずい)
 後手「4四銀」と逃げて、どうなるか。

 先手は「5二角成」で勝負する。 後手「同歩」に――――(次の図)

変化4一角図19
 「3三金」(図)で、先手勝ち。 後手玉は詰んでいる。
 3三同歩に、3二金、同玉、4一角、2二玉、2三角成、同玉、2一竜、2二歩、1五桂(次の図)

変化4一角図20
 1四玉に、2四飛以下、“詰み”。

 この詰みがあるので、先手「3四歩」に、実は後手「2四銀」(次の図)と逃げる手が、後手の正解手となる。

変化4一角図21
 これなら、上の“詰み”の、「先手1五桂」を、同銀と取れるので後手玉は詰まない。
 だからこの「2四銀」(図)に対しては、5二角成~3三金とは行けない。
 
 なので、ここからは、「8六玉」として、以下7四歩、6六角、5五銀引、9三角成、7五銀の展開が想定されるが、この先は形勢不明である。

 というわけで、先手は【G】4二銀右を粉砕することはできなかった。
 しかし先手がはっきり悪くなる変化もなく「互角」に戦えるとわかった。


先手4一角図22 後手3一桂の変化
 7番目の手【H】3一桂は、なぜこれを調べる気になったのか覚えていないが(「激指14」が4~6番目くらいの候補に挙げていた手)、なんとなく調べ始めてみると、この手が実に“難敵”だったのである。 スルーするわけにはいかない手だとわかってきた。
 以下は、この手についての、我々の苦闘と驚きの記録である。(驚きというのは、次々と驚きの手順が現れてきたからだ)

 この【H】3一桂は妙な手だ。先手は「3六香」と3筋を狙って香車ロケットを設置したのに、3一桂は3筋を守っていない。
 この桂打ちは、まず、「3一」を埋めて、先手の狙いの5二角成にあらかじめ備えたという意味がある。
 それだけでなく、次に“4二金”とするひそかな狙いもあるのだ。この図で後手の手番なら、4二金とし、5一竜には、4一金、同竜に、5八角から先手玉は詰まされてしまう。
 
 先手の最善手は「3三香成」。 後手はこれを「同桂」と取る(次の図)

先手4一角図23
 香を一枚渡して、後手の持駒は「金桂香」になった。まだ先手玉に詰みはないが、攻め続けないといけない。
 攻めるなら、“3四歩”か、“5二角成”。

 “5二角成”とすると、後手は「8四桂」。以下、「7七玉」に、「7五銀」と、銀が玉頭に出てくる。
 これは何気なく見えて、実は“詰めろ”なのである。次に、7六銀、8八玉、7七金から、先手玉は詰む。
 だから5三馬(銀を取りながら後手玉に詰めろをかける手)では、先手は負けてしまう。
 それならと「4三馬」としたが―――(次の図)

先手4一角図24
 馬を自陣に利かせて詰みを防いだが、後手は「7六香」(図)と打って、この図は先手の負けになっている。

先手4一角図25
 “5二角成”では勝てないとわかった。なので、“3四歩”(図)。 この手に期待しよう。
 「8四桂、7七玉、4二金、3三歩成、同歩」と進む。
 4二金と寄って、3三歩成を同歩と取るのが、3一桂を打ったことと関連した後手の予定の受けである。

 「これはうまくやられたか」と思ったが、しかし、先手にここで好手が存在した(次の図)

先手4一角図26
 「1五角」(図)と打つ手である。
 この手は後手玉への“詰めろ”になっている。3四桂と打って、同歩とさせて3三に空間をつくり、3二飛から駒を清算して詰ます狙いである。
 そしてこれを3二香と受けると、6三角成として、その図は先手良しになるのだ。手駒を使うと先手玉への攻めが甘くなる。後手は駒を使わずに受けたい。
 というわけで、「2四歩」。 この手があった。後手の最善手。
 2四同角としても、今度は「2三」に脱出路があるので、後手玉は詰めろにならないのだ。
 
 なので、先手は「6三角成」。
 そこで後手は「7五銀」。 先手は「5九角」(金を取りながら7七を受けた)。

先手4一角図27
 さて、手番は後手に渡った。後手はどう攻めるか、という場面。

 以下、「7六銀、8八玉、6七と」―――これが普通の攻めだろう(次の図)

先手4一角図28
 ところが、ここで先手は「1一銀」!! まるで“やけくそ王手”のような手に思えるが…
 「同玉」に、「2三桂」(次の図)

先手4一角図29
 なんと、後手玉はこれで詰んでいるのだ!!
 「同桂」は、2一金、同玉、3一金、同玉、4一竜、4一合、同馬、同金、2一飛以下。

 では「2二玉」は? それには、2一金、同玉、1一飛、2二玉、3一飛成、2三玉、4五馬、3四合、2二金、1四玉、1五歩、2五玉、1七桂、1六玉、2八桂(次の図)

先手4一角図30
 長いが、一本道の順でピッタリの“詰み”。 示されてみれば、難しい手順ではない。

先手4一角図31
 「7六銀、8八玉」(図)の場面まで手を戻してみたが、ここで後手玉に詰みがあるということなら、もっと前に後手は対処すべきではなかったか。
 4手前に戻って、そこで6二歩(図)なら後手が勝ちなのではないか。

先手4一角図32
 これで先手の6三の馬を移動させる。 そこで7五銀~7六銀と迫って行けば、先ほどの“詰み”の筋は消える。だから6二歩(図)である。
 以下、4五馬、7五銀。

 そこで先手5九角に6七とで後手勝ち―――というのが、後手の目算だが、それを上回る手が先手にあった。
 5九角と金を取る手ではなく―――(次の図)

先手4一角図33
 1四桂(図)と打つ。 これまた“思い出王手”のたぐいの手と思いきや、そうではなかった。
 1四同歩に―――(次の図)

先手4一角図34
 1三銀(図)と打つ!! おそろしい筋があったものだ。
 この手には、1三同玉と、3二玉の2つの応手がある。

 まず1三同玉には、2四角がある。これを同玉は2三飛があるので、この角は取れない。2二玉。
 以下、1二馬、3二玉、そこで3三角成!! これも取ると詰んでしまうので、4一玉。
 先手は、3二金(次の図)

先手4一角図35
 なんと後手玉は詰んでしまっている。
 5二玉、4二金、同銀、5四飛以下。

先手4一角図36
 戻って、後手3二玉(図)の場合。
 これには2二金、4一玉と決め、5九角と金を補充する。
 以下、6六銀、7八玉、7六桂で、先手玉に“詰めろ”がかかった。
 しかし、3一金、5二玉(図)と追って―――

先手4一角図37
 後手玉に“詰み”がある。

 6一竜、同玉と、まず竜を捨て、7一飛と打つ。(詰将棋に現れる駒の“打ち換えの手筋”がここで出た)
 5二玉に、そこで6三金(次の図)

先手4一角図38
 6三同歩に、7二飛成から“詰み”。

 このような華麗な切り返しがあって、後手の6二歩は、4五馬で先手勝ちとなることがわかった。
 では、この将棋は、「先手勝ち」になるのか。
 いやいや、こんなにうまくいくはずがない。浮かれず、慎重になってよく調べなければ。

先手4一角図39
 先手が「1五角」と打って、後手「2四歩」に、先手「5九角」のところまで戻って、そこで6二銀(図)と銀を引くシャレた技があった。これも“先手の6三の馬を移動させる”という意味であるが、それ以上の意味も持っている。
 同馬なら、上で見てきた“1一銀以下の詰み”がなくなるので、6七とで後手勝ちになる。
 そして、このままでもその詰みは防いでいる。6二銀が5一に利いていて5一竜を許さないからだ。
 4五馬とするのも、6七とで、後手の勝ちになる。

 これはいい手だ、これで後手有利が確定かと思いきや、先手にはまだ“返し技”があった。

先手4一角図40
 2三金(図)と放り込む!!
 これを同玉なら2一飛、2二香、1五桂、1四玉、3六馬、2五金、4五馬で、先手勝ちになる。
 よって、2三金には、同桂。
 そこで先手6一飛と打つ(次の図)

先手4一角図41
 3一に空間ができたので、この6一飛(図)が、3一銀以下の“詰めろ”になっている。
 これを3二金打のように受けても、また6二飛成とした手が、3一銀、同金、4二竜以下の“詰めろ”になっている。
 図で6三銀も詰みがある。1一銀から打つ詰み筋だ。 1一銀、同玉、2一金、同玉、5一飛成以下、これまた示されてみればそう難しくない詰み筋だ。(3一銀から入ると詰まないところがおもしろい)
 そして、この図は、後手の受けが難しいのだ。

 だが、正確にはどうやら「後手勝ち」の図になっているようだ。
 正解手は、7七金。 以下、同角、同銀成、同玉、6八角、6六玉、5六と、同玉、5七角成以下、先手玉に詰みはないのだが、玉を追いながら、後手が勝ちになる順がある。(その解説は省略)

 しかしもっとわかりやすい後手の勝ち方があるのでそちらを紹介しておく。次の図がそれである。

先手4一角図42
 やっぱり、6二銀(図)である。
 ただしこの図は、先に示した6二銀とタイミングが2手早い。つまり後手は(7六銀としないで)「7五銀」の状態のまま、6二銀としたのである。
 これなら、もしも先手が2三金から襲ってきたとしても、そのとき、後手持駒が「金金香」となるので、7六香からあっさり詰めることができるというわけ。
 
 実戦では、先手の2三金以下の強襲をわかっているのでなければ、「7六銀、8八玉」を決めてしまいがちだ。でもそれをすると、かえって勝つのが難しくなる。
 将棋に強いということは、細心の読みと用心深さがあるということでもある。


 以上の考察によって、【H】3一桂の手によって、我々(先手)の『3六香ロケット』からの勝利への道ははっきりと途絶えた。
 これはあきらめるしかないだろう。残念だが。


先手4一角図43  後手3四桂の変化1
 さて、【A】3四桂(図)には、3五歩できっと勝てるだろう―――と、戦時中は、そう考えていた。だからこの手の調査は後回しにして深くは読まなかったのだが、戦後の今、これを調べてわかったことは、3五歩以下、先手が苦戦する、という事実である。

 図より、3五歩、同銀(このあっさり同銀が我々の意表を突いた一手)、同香、7五金、7七玉、8五桂、8八玉、7六金(次の図)

先手4一角図44
 銀をもらって、後手の持駒は歩だけ。ところがこの図になってみると、先手は香車を3筋に使ってしまっているので、7九香の手がなく、受けが難しいではないか。
 9六銀、6七と、3四香、同銀、9八玉、7七桂成、4六桂、4五銀、5二角成(次の図)

先手4一角図45
 こう進むと、「先手優勢」になる。5二同歩なら、2一竜、同玉、3三桂で、後手玉詰み。
 なので後手7八と(または8四香)と攻める手が考えられる。しかしそれは、3一角(同玉は4一飛以下寄り)、3三玉、3五飛、4四玉、5三角成、同銀、同馬以下、後手玉は“詰み”となる。(この変化のために桂馬を2六ではなく4六に打った)

 しかし先手が良くなったのは、後手が対応を間違えたから。正確に指せば、逆に「後手優勢」になる。
 先手の4六桂に、4五銀と逃げたのが、後手の失着であった。

先手4一角図46
 先手の4六桂に、銀取りを放置して、後手7八とと修正した場合。
 以下、3四桂、3三玉と進んで、この図。
 今度は「後手優勢」になっている。(先手1一角、3四玉に、3八飛などの手はあるが届かない)

 【A】3四桂には、戦闘中は「先手勝てる」と思っていたが、実際は正しく指されると負けだったのである。

 また、【B】3五桂についても、「勝てる」と思ってはいたが、実際はそう簡単ではない。それでも一応は「先手良し」の結果が得られた。(内容は省略)



先手4一角図04(3六香ロケット図)(再掲)
  【A】3四桂  → 後手良し
  【B】3五桂  → 先手良し
  【C】7五金  → 先手良し
  【D】4二金  → 先手良し
  【E】4二金打  → 先手良し
  【F】6五桂  → 先手良し
  【G】4二銀右  → 互角
  【H】3一桂  → 後手良し

 我々(終盤探検隊)は、【H】3一桂で勝てない、と結論を出した。(【A】3四桂でも負けていた可能性が高い)
 かくして、この『3六香ロケット作戦』の採用を断念したのである。

 つまり、<2>4一角 では勝てない


≪5九金図≫(再掲)
   <1>2五香 → 後手良し
   <2>4一角 → 後手良し

 先手(終盤探検隊)が実戦で選んだ手は、別の手である。


第16譜につづく
コメント

終盤探検隊 part115 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第14譜

2019年04月11日 | しょうぎ
 指し手  △5九金


    [鏡と、鏡のかけらのこと]

 あるところに、ひとりのわるい小人の魔ものがいました。それは魔ものの中でも、いちばんわるいほうのひとりでした。つまり、「悪魔」です。ある日のこと、悪魔は、たいそういいごきげんになっていました。というのは、この悪魔は、まことにふしぎな力をもつ、一枚の鏡をつくったからでした。つまり、その鏡に、よいものや、美しいものがうつると、たちまち、それが小さくなり、ほとんどなんにも見えなくなってしまうからです。ところが、その反対に、役に立たないものとか、みにくいものなどは、はっきりと大きくうつって、しかもそれが、いっそうひどくなるというわけです。たとえようもないほど美しい景色でも、この鏡にうつったがさいご、まるで、煮つめたホウレンソウみたいになってしまうのです。どんなによい人間でも、みにくく見えてしまいます。さもなへれば、胴がなくなって、さかさまにうつってしまうのです。(中略) 「こいつは、とてつもなくおもしろいや」と、悪魔はいいました。たとえばですよ、なにか信心深い、よい考えが、人の心の中に起こってきたとしますね、すると、鏡の中には、しかめっつらがあらわれてくるのです。小人の悪魔は、自分のすばらしい発明に、思わず、吹き出してしまいました。
   (中略)
 そして、それが、人間の目の中にはいると、そこにいすわってしまうのです。そうすると、その人の目は、なにもかもあべこべに見たり、でなければ、物のわるいところばかりを、見てしまうようになるのです。なにしろ、一つ一つの、ほんの小さな鏡のかけらでも、鏡ぜんたいと、同じ力を持っているのですからね。

     (『雪の女王』ハンス・クリスチャン・アンデルセン著 矢崎源九郎訳 新潮文庫)


 ハンス・クリスチャン・アンデルセンは19世紀、デンマーク生まれの作家。
 そして『雪の女王』は、アンデルセンのよく知られている作品である。しかしその物語の中の「鏡」のことまで覚えている人はどれくらいいるだろう。

 アンデルセンの作った『雪の女王』という物語は、女の子ゲルダが、<雪の女王>の虜(とりこ)になってしまった男の子カイを救出に行く物語である。
 しかし<雪の女王>はカイを強引にさらっていったというわけでもない。いつのまにか、ふらふらと<雪の女王>のそりの中に座って、おとなしく<女王>の城まで連れ去られてしまった。
 「諸悪の根源」という言葉があるが、この場合、<雪の女王>がそれだったというわけではない。

 根本の原因は「鏡」だった。
 悪魔が面白がってつくった「鏡」が、あるとき粉々に割れてしまった。それが小さな小さな破片となって世界中にばらまかれることとなった。
 その「鏡」のとても小さな破片の一つが、男の子カイの目にたまたま入ったので、その瞬間からカイは何かが変わってしまった。それがこの事件の始めにあった原因だ。

 しかし、この物語は、女の子ゲルダが、見事に「カイ救出の旅」をやりとげ、「鏡」のかけらの災いを消し去ることに成功する。女の子の一途な気持ちと行動がもたらしたハッピーエンドの物語である。



<第14譜 まぼろしの勝ち筋があとになって次々と…>

4二銀左図
 先手の「3四歩」に、図の「4二銀左」が、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫の用意していたであろう“勝負手”であった。
 この手に意表をつかれた我々(終盤探検隊)は、動揺し、しかし同時に、冷静になれと自分たちに言い聞かせ、「▲9一竜」を選択したのであった。

 だが、後でこの図を調査研究してみると、ここで「4一角、3二歩、5八金、同と、9一竜」、あるいは、「5八金、同と、9一竜」と指せば、はっきり先手が良くなる順が存在することがわかった。(前回の譜で紹介した)

 そしてさらにこの図を精査していくと、他にも先手勝てるかもしれないというほどの有力手が浮上してきたのだ。

 ▲6五歩、それからもう一つ、▲7三歩成である。

 その調査結果を、今回の譜で以下報告していきたい。 


6五歩 の調査研究]

 なぜ、我々は後手「4二銀型」に対しての▲6五歩について、本番の戦いにおいて考えることをしなかったのか、まったく不思議である。
 我々はこの「最終一番勝負」の直前に、「3二銀型」と「3四銀型」に対しての6五歩の攻め(これをそれぞれ『桃太郎作戦』、『桃太郎作戦Ⅱ』と名付けて)研究調査していたのである。タイミングは違うが『赤鬼作戦』でもこの6五歩の攻めは出てきていて、有効だと知っていた。
 それなのになぜかこの時には「6五歩」の攻めがあることをすっかり忘れてしまっていたのである。
 ≪ぬし≫のもたらすなんらかの魔法にかかっていたのであろうか。それを考えても、≪ぬし≫の勝負手「4二銀左」の一手は、たしかに成功していたと、後からみても思えるのである。

後手6五歩図1
 この「6五歩」(図)に、5五銀上と逃げると、7三歩成で、これははっきり先手が良い。
 だからここは後手「5九金」と、金を取る。
 以下、「6四歩、同銀」(次の図)

後手6五歩図2
 結論を先に述べておくと、この「6五歩」の作戦は成功で、先手が勝てる。
 ここで2つの手があり、一つは「▲2五飛」であり、もう一つは「▲9一竜」である。どちらも先手良しというのが我々の戦闘後の調査研究の結論である。
 「▲2五飛」は、後手陣の弱い「2三」に利かせつつ、後手の7五金をけん制する(打ってくれば同飛と取って優勢)というもの。

 その手もあることをここで指摘しておき、以下は、「▲9一竜」(次の図)からの指し方を明らかにしておきたい。 

後手6五歩図3
 「9一竜」(図)と進め、後手7五金を打たせて勝つという方針を取る。

 手番の来た後手の有力手は、(1)7五金 と、他に (2)6六歩 と、それから、(3)6三桂

変化7五金図01
 まず7五金(図) から。
 7七玉、8五桂、8八玉と進む(次の図)

変化7五金図02
 ここで7六桂、9八玉、7七桂成で、先手玉に“詰めろ”がかかる。
 しかしそこで8九金と香車を温存して受け、6八とに、4一角、3二歩、3三香(次の図)

変化7五金図03
 と攻めるのが、前譜でも学習した後手「4二銀型」の陣形の攻略法で、この図は「先手勝ち」。

変化7五金図04
 7六桂ではダメなので、代えて7六金(図)とする。
 これには7九香。この展開も前譜で出てきたが、その時は、「5八と型」だった。今回は「5七と型」なので、ここで“6七と”がある。
 6七と、7六香、7七桂成、9八玉、7八とに、8九銀と受ける(次の図)

変化7五金図05
 さあ、先手は勝てるだろうか。
 ここから<a>8九同とと、<b>6六歩が考えられる。
 <a>8九同とは、6六角、5五銀引、7七角で、成桂を抜く。
 しかしまだ8五桂からからみついてくる。
 そこで―――

変化7五金図06
 3三桂(図)という痛快な手があった。
 同桂は、1一角、同玉、3二金で、先手の勝ちが決まる。放っておけば、3二金、同玉、4一角以下後手玉詰み。
 なので後手3二歩だが、4一飛、3一銀打、2一桂成、同玉、5九角と進めれば、後手に持駒の銀を自陣に使わせたので後手の攻めが細くなり、はっきり先手良し。
 なおも9九と、同玉、9七桂成という攻めはあるが、それには1五角(次の図)

変化7五金図07
 この手は2二金、同玉、3三金以下の“詰めろ”になっており、その詰みを4四銀と防いでも、4二角成で“受けなし”。
 だから後手は2四桂でがんばるしかなさそうだが、3五桂、2二香に、9八金といったん受けて、先手勝勢である。

変化7五金図08
 8九とだと、6六角で成桂を抜かれてしまう――ということであれば、6六歩(図)が当然有力手として考えられる。次に8九とや6七歩成が入ると先手玉は受けが厳しくなる。
 しかし、ここは先手が勝てる図になっている。一例として、3八飛からの攻防を紹介しておこう。
 3八飛(3三角以下の詰めろ)、3二歩、7八銀、同成桂、同飛、6七歩成、3八飛(次の図)

変化7五金図09
 ここで後手6五銀は、3三歩成、同銀、4一金があって、先手勝勢になる。
 なので、4七銀不成と、先手は飛車を攻めて移動させる。先手は3五飛。
 以下、7八と(詰めろ)、9六歩、7七銀(次の図)

変化7五金図10
 後手の7七銀(図)は攻めとともに、先手6六角を防ぐ意味もある。
 しかしここはもう手番の先手が「どう決めるか」という場面で、手はいろいろある。1五桂からの攻めを示しておく。
 1五桂(1一角、同玉、2三桂不成以下の詰めろ)、3一桂、4一角、5六銀成、2三桂成、同桂、2四金(次の図)

変化7五金図11
 これで先手の勝ちが決まった。2三金、同玉、1五桂から詰ます狙いだが、それを3一桂と受けても、3三角以下の詰みがある。


変化6六歩図01
 後手(1)7五金の手に代えて、(2)6六歩(図)だとどうなるだろう。 
 7五金をすぐ打たないところが後手の工夫したところで、もし先手が4一角、3二歩、3三香とやってくれば、後手は香車を入手することになるので、“8四桂”と打って先手玉を詰ます狙いである。7五金を保留することで8四桂からの攻めも選択できるわけだ。
 といってこの6六歩をうっかり同玉と取ると、8五桂としばられて、先手は負けになってしまう。

 ではどうするか。4一角は、とりあえず打つ(次の図)

変化6六歩図02
 後手は3二歩。 (代えて3一金は、5二角成、同歩、6一飛で、先手良し)
 3二歩に、先手5二角成とする。 これを同歩は、3三角以下詰みがある。
 5二角成以下、7五金、7七玉、6七歩成、8八玉、7六桂、9八玉、7八と、8九香(次の図)

変化6六歩図03
 後手陣に受けはもうないので、後手は先手玉に“詰めろ”でせまるしかない。だから、8九と。
 それには、7七角と王手で打って、後手6六歩。これでこの瞬間、先手玉の“詰めろ”は解除された。
 よって、4二馬で、先手勝ちになる。

 ではこの図から、8八桂成、同香、7六桂の“詰めろ”にはどうするか。
 8九銀と受けても勝ちはあるが、まだたいへん。それより、後手玉に“詰み”が生まれている。

変化6六歩図04
 4四角から“詰み”。(他の詰まし方もある)
 この詰み筋が生まれたのは先手に「桂」が入ったから。
 4四同歩、3三歩成、同銀(同桂の変化のときに桂が必要になる)、3四桂、同銀、3一銀、同玉、5一竜、2二玉、3三金(次の図) 

変化6六歩図05 
 以下、詰み。

 このようにして、(2)6六歩 の変化は、4一角~5二角成の攻めで先手勝てる。


変化6三桂図01
 さらに「後手6五歩図3」(先手9一竜)まで戻り、そこで後手 (3)6三桂(図)以下の攻防を見ておこう。
 6三桂は、次に7五銀とする狙い。

 調査の結果、ここで、先手の勝ちへとつながる道筋が2つあるとわかった。
 7三歩成と、4一角である。
 どちらも、簡単に勝ちになる道ではないが、我々の研究では確かに先手勝ちになったのだ。

 ここでは7三歩成から続く道のほうを示しておく。
 以下、7五銀、8五玉に、9四金(次の図)

変化6三桂図02
 後手の9四金(図)もこれが最善で、代えて8四金、9六玉は、先手良し。
 9四金には、7四玉しかない。(9六玉だと8四桂の一手詰め)
 7四玉に、8四金、6五玉で、次の図。

変化6三桂図03
 ここで〔ア〕5三金で、先手玉は絶体絶命に見える。
 他に〔イ〕4四歩、〔ウ〕5三桂もあり、先手の受けがあるのかどうか。
 (〔エ〕6四歩、5四玉、5三金、4五玉は、後手の4六銀が浮いているので後手負けになる)

変化6三桂図04
 まず〔ア〕5三金(図)から。
 先手玉はたしかに“絶体絶命”を思わせるのだが、ここで3三角と打ってどうなるか(次の図)

変化6三桂図05
 すなわち、3三角(図)以下、後手玉が詰んでいれば先手が勝つのである。
 3三同桂、同歩成(次の図)

変化6三桂図06
 ここで3三同銀は、3四桂と打つ手があって、同銀、1一角、同玉、2一金、同玉、5一竜以下、後手玉は詰んでいる。
 したがって、図から後手は3三同玉。
 そこで3六飛、3五角(最善と思われる応手)、4五桂(次の図)

変化6三桂図07
 厳密には後手玉は詰んではいなかった。しかし、4四玉、5三桂成となって、あの金を取って先手玉も“詰めろ”を解除できた。5三桂成は後手も同銀しかなさそうだ。
 そこで3四金と打ち、同玉、2五角、同玉、2六金(次の図)

変化6三桂図08
 2六同角、同飛、3四玉、2五銀、3三玉、3四香、2二玉、3三角(次の図)

変化6三桂図09
 詰んだ!!

 つまり、後手〔ア〕5三金は3三角以下「先手勝ち」となる。

変化6三桂図10
 〔イ〕4四歩(図)にはどうすればよいか。この手は、次に後手6四歩、5四玉、5三金の詰みがあり、6三ととしても、5三桂、同と、6四歩、5四玉、5三金で意味がない。
 これまた先手“絶体絶命”を思わせるが、ここで3三歩成という技がある。

変化6三桂図11
 3三同銀だと、先ほどの6四歩以下の先手玉の詰めろが解除されるというのがポイントで、それは4一飛で先手が勝ちになる(以下△4二銀には6二角、△3一歩には6三と同金3四桂)
 また3三同玉も3四香から後手玉が詰む。
 したがって、3三同桂と後手は取ることになる。

 そこで先手はどうするか。次の手がある(次の図)

変化6三桂図12
 5四銀(図)と打つ手である。
 これで、後手は6四歩が(打ち歩詰めの反則になるので)打てない。うかうかしていると先手6三と(桂馬を取って3四に打つ)があるし、先手4一角(詰めろ)もある。
 なので後手は5三桂と打ち、同銀不成と応じ(これで桂馬を入手したので後手玉に3四桂からの詰みが生じている)、6四歩、同銀成、同銀、7六玉、6五銀、7七玉、2五桂(後手玉の懐を広げ詰めろを解除)、4一角(次の図)

変化6三桂図13 
 4一角と打って先手勝ち(3二歩には、5二角成)

変化6三桂図14
 この図は、第3の手〔ウ〕5三桂に、5四玉としたところ。
 ここで5六とという手がある。またここで4四歩にはどうすればよいのだろう。

変化6三桂図15
 5六とには、5七香で受かっている。

変化6三桂図16
 では4四歩にはどうするか。この手は次に後手4三銀が狙いなので、その手を受ければよい。3三歩成、同桂、4一飛を紹介しておく(次の図)

変化6三桂図17
 4一飛(図)が“詰めろ逃れの詰めろ”である。3一歩と詰みを防げば、6一角で、次に5二角成を狙う。
 4一飛に、後手は有効手がなくなった。
 4三銀、同飛成、同金、同玉くらいしかないが、飛車一枚ではどうにもならず、先手勝ち。


 以上の調査により、「後手6五歩図3」から後手 (1)7五金 と、 (2)6六歩 、および、(3)6三桂 以下は「先手良し」となった。

後手6五歩図1
 よって、▲6五歩 で先手勝てる、と結論したい。



4二銀左図
 そしてここで、さらに7三歩成でも勝てそうだとわかってきたのであった。


▲7三歩成 の調査研究]

 以前、≪亜空間戦争≫において、我々は「7三歩成」に、『白波作戦』と名前を付けて、これで勝てるのではないかと試してみた。

5八金図(夏への扉図)
 「3二銀型」。 ここで7三歩成は先手勝てなかった。  

3四同銀図
 「3四銀型」(上の図から3三歩、同銀、3四歩、同銀と進めたところ)
 ここで7三歩成もチャレンジしたが、先手敗れた。

 こういう体験が蓄積されて、ここでも、「7三歩成では勝てない」と、先入観が出来上がってしまっていたようである。

7三歩成図1
 さて、今回直面した新型――「4二銀型」――ここでの7三歩成は、どうだろう。

 ▲7三歩成 (図)に、同銀は、8三竜で先手良しになる。
 よって後手は5九金と金をとるが、先手はそこで7四ととする(次の図)

7三歩成図2
 「3四銀型」の場合、ここで「8四桂」があるので、先手負けになっていた。(「3二銀型」も同じ)
 ところがこの「4二銀型」の場合は結論が逆になるのである!(ここが最重要ポイント)

 8四桂、同と、7五金、7七玉、6五桂、8八玉、6七と、4一角、3二歩、3三桂(次の図)

7三歩成図3
 この攻めがあるので、先手が勝ち。
 以下は、3三同桂、同歩成、同銀に、3四桂と打つ手がある。続いて同銀、1一角、同玉、3一飛(次の図)

7三歩成図4
 2一角に、3二角成で、後手玉は“必至”である。

7三歩成図5
 今の一直線の攻め合いでは後手が負けになる。なのでこの図は、途中で後手が3二歩(図)と受けた場合。
 これには4一角がわかりやすい。このままならやはり3三桂と打ちこめば先手の勝ちだ。

7三歩成図6
 なので、後手はさらに4四銀と「3三」を強化する。
 これには、5二角成、同歩、4一飛、3一角、5四桂と攻めていく。
 以下、5三銀右引、4二銀成、同銀、6四角、5三銀引(代えて5三歩には5二金)、4六角(次の図)

7三歩成図7
 次に3三銀以下の“詰めろ”になっている。後手受けもない(5一桂は、同竜、同銀、3三銀から詰む)ので、先手勝ちが確定した。

7三歩成図8
 「7三歩成図2」まで戻って、先手7四とに対して、7三桂(図)とする有力手がある。
 これには先手8三竜。以下、5五銀引に先手の指し手が難しい。
 どうやら8六歩が好手のようだ。先手はどこかで7三の桂を取って、4一角、3二歩、3三桂が実現すれば勝ちになる。
 後手は9五桂(7三となら7五金で後手勝ち)
 先手は8五歩と8六に空間を作る。8六~9五という逃走ルートができた。
 形勢は難しく、ソフト「激指」はむしろ後手持ちだが、最新のソフトを使った研究では先手が良くなる。
 以下、5六と、6七歩(次の図)

7三歩成図9
 とはいえ、この局面は最新ソフトでも評価値的には先手が苦しい。ところがこの後を研究していくと、どうやら先手が良くなる。それほど“難しい局面”なのだ。
 この図で「6七同と」も後手の有力手で、以下6四と、同銀上、6七玉、6五桂、7六玉は先手厳しい戦い。しかし6四と、同銀上、1五角(詰めろ)、3二歩、6七玉で、続いて6五桂には5九角と金を取る手があるので、先手良しになる。

 この図から「7五歩、同と、6六歩」の展開を見ていく。
 後手7五歩――これを8六玉とかわしたくなるが、それだと9四歩とされ、次に後手7六金、9六玉、8七桂成を狙われて、先手が悪い。
 だから7五歩は同とと取り、後手6六歩には、2五飛と打つ(次の図)

7三歩成図10
 これが攻防の飛車打ちで、ここで先手に“希望の道”が開けてきた。後手の「4二銀型」のこの陣形は「2三」が弱点で、いつもこの2五飛があるのだ。
 次に先手4五角が狙いでそれを打たれると後手まずい。かといって金を受けに使うようでは後手勝てない(2四金は、同飛、同歩、3三歩成、同銀、4五角、3四歩、4一角)
 なので後手4四歩と受けるが、8六玉、9四歩、6四と、同銀引(同銀上だと5四角があった)、5四歩(同銀に5三歩が狙い)、7五金、9六玉、6二銀、8二角(次の図)

7三歩成図11
 9一の香を取って、2六香と打てれば先手勝ち。
 6五銀、9一角成、7四銀、2六香、8五銀、同竜、同金、同飛、同桂、同玉(次の図)

7三歩成図12
 先手勝勢。
 きわどかったが、後手の「4二銀型」の弱点の「2三」を狙った2五飛の好手が、先手を勝ちに導いた。


7三歩成図1
 以上の調査結果から、▲7三歩成 も先手勝ち筋と認定する。




4二銀左図(再掲)
 さらにもう一つ、この図から先手を勝ちに導く「新たな手」が発見された。


8二飛 の発見]
 
8二飛図
 ▲8二飛(図) である。
 以下、6二歩に、8三飛成で先手良し、というもの。(詳しい解説は省略する)
 
 なぜ我々がこの手を調べる気になったかというと、それは次の参考図の手を知っていたからなのだ。

参考図(3四銀型での8二飛)
 「3四銀図」において、コンピューターソフト「elmo」が一推ししていた手が「8二飛」(図)である。
 それ以前に我々はこの「3四銀図」での勝ち筋を探しているときに、7二飛(6二歩に7三歩成)や、8三竜の手を調べ、それらはどうやら先手勝てないという結果になっていた。
 だからそれに類似している「8二飛」という手は盲点になっていて、「激指」も一応この手をいくつかの候補手の中に挙げていたのに、我々は気に止めなかった。
 それを「elmo」が第1番手の候補手として「8二飛」を挙げていたので、我々は急いでこれを調べ、これも「先手勝ち筋の一つ」と認識できたのだった(これは『終盤探検隊part112』で紹介している)
 
 ところがその「elmo」も、「4二銀左図」においては、▲8二飛 は有力手としては示していなかったし、ほかの最新ソフト群でも目立たない手だった。
 けれど念のためにと我々が調べてみれば、確かにこれは「先手良し」になる手なのだとわかったのだった。そのような「人間」+「ソフト」の知恵の積み重ねがあって、上の ▲8二飛 は発見できたのである。




 以上は、本番の戦いの後に、最新ソフトなどを使って調査した結果であり、つまり、出現することのなかった “まぼろしの勝ち筋” 群である。


第14譜指始図(▲9一竜)
 「亜空間戦争最終一番勝負」の実戦は、それらの“まぼろしの勝ち筋”の群れを捕らえることなく、「▲9一竜、△5九金」 (指了図へ)と進行した。

 我々は、いくつもの“まぼろしの勝ち筋”を逃したようだ。

 だからといって、「終盤探検隊は失敗した」とは思ってほしくない。


第14譜指了図(△5九金まで)

 我々は、▲9一竜 で勝つ道 を選んだのだ。


第15譜につづく
コメント

終盤探検隊 part114 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第13譜

2019年04月08日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第13譜 指始図≫ 4二銀左まで

 指し手  ▲9一竜


    [雪白姫 Schneewittchen]

 おきさきは、御殿へかえると、鏡の前に立って、

  「ががみや、かべのすがたみや、
   お国じゅうで、いちばんきりょうのよい女はだあれ」

と言いました。そうすると鏡は、せんとおんなじように、

  「おきさきさま、ここでは、おきさきさまがいちばんきりょうよし、
   けれども、お山のお山のそのむこうの
   七人の一寸ぼうしのうちにいるゆきじろひめは
   おきさきさまより千ぞう倍もうつくしい」

と、返事をしました。鏡がこんなふうにべらべらしゃべるのをきいて、腹が立って腹が立って、おきさきは、ぶるぶる、がたがた、ふるえました。

   (『完訳グリム童話集2』 金田鬼一訳 岩波書店より)



 訳者の金田鬼一氏は、原作にこだわって(白雪姫ではなく)「雪白姫(ゆきじろひめ)」としている。「スノーホワイト」は“雪のように白い”であって、“白い雪ではない”というのである。
 調べてみると、明治時代にこの話を翻訳されたときには、「雪姫」だったり「小雪姫」だったり「雪子姫」だったりしている。
 グリム童話は、ドイツのグリム兄弟によって集められた童話集で、その初版は1812年に発行された。
   “鏡がこんなふうにべらべらしゃべるのをきいて”
 グリム童話はほんとうは怖い話なのだというのはもうよく知られているが、この『白雪姫(雪白姫)』も確かに怖い。
 鏡がしゃべるのがまずこわいし、初版本ではこの鏡にむかって自分の美しさをしつこく問いかけている女は、白雪姫の「継母」ではなく、「実母」なのだという。(この岩波の本では継母) そうすると白雪姫が年をとって、美しさがおとろえてきたら、この母と同じになるのではないかと思うと、それが一番怖い。王子様は結婚後、幸せに過ごしたのかどうか、架空の話しながらも心配にもなってくる。

 それにしても、この童話の中の、「鏡」とは、いったい何だろうか。



<第13譜 4一角から勝ちがあった!>

 「亜空間戦争最終一番勝負」が進んでいる。
 闘っているのは、我々終盤探検隊(=先手)と≪亜空間の主(ぬし)≫(=後手)である。
 ≪亜空間の主(ぬし)≫は我々がこの姿の見えない敵に対して、とりあえず付けた名前である。
 また、「終盤探検隊」は、人間とコンピューターソフト「激指」の混成チームである。
 この泥沼のような≪亜空間≫から脱出するために、我々はこの「最終一番勝負」に勝たねばならない。
 (負けたらどうなるのかって? 知ったことか!)

≪最終一番勝負 3四歩図≫
 この図の先手3四歩を、後手が「3四同銀」と取って、そこで3三歩、3一歩、4一飛が我々の慎重に用意した“秘策”であった。我々はこの作戦に自信を持っており、それを『赤鬼作戦』と名付けていたのだった。
 いよいよその作戦を使う時が近づいてきたと、胸をときめかせて構えていたのである。

 ところが――――

4二銀左図
 ところが、敵である後手番の≪ぬし≫は、「4二銀左」 と、銀を引いたのだ。
 まるで、我々の作戦を見透かしているように。(我々のチーム中にスパイがいたのだろうか。いや、そんなことを考えるようではいけない)

 もちろん、我々もこの「4二銀左」の手は知っていた。だが、いつのまにかこの手を軽視して、相手がこの手を指してくることを想定から外してしまっていたのだ。
 そもそもずっと≪ぬし≫を相手に≪亜空間戦争≫を戦ってきて、≪ぬし≫は毎度かならず「3四同銀」と応じてきたのである。(いま思えば、それがこの本番に向けての長い前振りだったか)
 ソフト「激指」が「3四同銀」を第1候補手に推していたことで、「4二銀左ならなんとこなる」と我々は思い込んでいた。
 そういうこともあって、具体的にこの「4二銀左」に対してどう攻略していくか、それを調査していなかったのだった。その我々の調査準備の「空白」を≪ぬし≫が的確に突いてきたのである。

 だが、「4二銀左への攻略」を発見すれば問題ない。
 「激指」も、これは攻略できるということで、この手の評価を高くしていないはずなのだから、“何か”あるはずだ。

 (ところが戦後時間を経過してもう一度「激指」で調べなおしてみると、「4二銀左」の評価のほうが高く評価値-198、「3四同銀」の評価値は-41で2番目。いったいどういうことだ!! 我々は「激指」という味方にあざむかれていたのか!?)


変化4一角図1
 我々は、まず「4一角」に期待した。ここで4一角(図)と打って勝てないか。

 これは“詰めろ”なので、3二歩と後手は受けるのが正しい応手である。
 3一歩という受けもあるが、「2三」への角の利きが通っている分、明らかに後手にとっては3一歩では損である。

変化4一角図2
 後手3二歩(図)に、ここで先手の継続手があるか。それが問題だ。
 我々(終盤探検隊)は、ここで3三歩成、同銀、5二角成の筋に期待していて、それで勝てないかと長く時間を使って考えてみたのだ。
 だが結論は、5二同歩、4一飛に、5四角(次の図)となって……

参考図a
 “王手竜取り”だ。 これで先手負けになる。
 (以下8六玉、8一角に、3一金はあるが、後手からの6六飛の返し技があって、7六角、同飛、同玉、5四角、8六玉、4二銀左以下、後手勝ちになる)

 というわけで、我々(=終盤探検隊)は4一角以下の攻め見送り、9一竜を選択した のであった。
 9一竜と香車を補充し、チャンスをとらえて4一角を狙っていこうと決めたのである。(9一竜なら王手飛車もくらわないし)

 だが、4一角、3二歩の後、実は明快な「先手勝ち筋」があったのだ!!(わかったのは戦いの後だったけれども)

 今回の譜では、我々の捕まえられなかったその「幻の先手勝ち筋」を、以下、詳しく紹介しておこうと思う。

変化4一角図3
 「4一角、3二歩」の後、そこで「5八金」(図)と、ここで「金」を一枚補充するのである。
 (「4一角」と「5八金」のこの組み合わせを我々は思いつかなかった!!)

 後手「5八同と」(次の図)

変化4一角図4
 「5八金、同と」のあと、ここで“5二角成”とする手がある。それを“同歩”なら、先手勝ちになるのだ。3三金と打ちこんで、後手玉が詰むのである。
 だから先手がそれで勝てそうなのだが、残念ながらそうではない。5二角成を放置すれば、後手玉にはまだ“詰みがない”状態なので、逆に先手玉に“詰めろ”をかけつづけていけば、後手の勝ちになってしまうのである。
 具体的には5二角成に、後手“8四桂”と打つ(次の参考図) 

参考図b
 以下、6七玉に、5七銀成、7八玉、6八と、8九玉、3一金と進めば、(まだ難解ながらも)後手にとって有望な闘いとなる。
 つまり先手をもつ我々にとっては面白くない結果である。

 それで他に手がなければ先手の進路は閉ざされるのだが、ここで「9一竜」(次の図)があって、これが“本手”になる。

「課題図」
 すなわち、「4二銀左図」から、「4一角、3二歩、5八金、同と、9一竜」と進んだ。
 これを「課題図」としよう。この図が先手後手どちらが勝っているかが、以下の“課題”となる。

 先に「金」を補充し、今度は9一竜で「香車」を補充した。 これで先手の持駒は「飛角金金香歩」となった。
 「5八金、同と」の手順を逃して、単に9一竜だと後手5九金と進んで、その場合は「金」が一枚少ない状態となる。これが大きな違いだったのだ。

 ただし、手番は後手にまわった。
 後手は何を指すか。手の広い場面である。

 第一の候補手は〔A〕7五金(次の図)。まずその手から解説する。

変化7五金図01
 先手が9一竜として後手の香車を取ったので、先手には“入玉”の目ができてきている。具体的には、そこで先手番ならば6六角と王手で打って9三角成とし、それから8五玉と入玉していくのである。
 だからそれを阻止する意味でも、ここですぐに〔A〕7五金 と打つのは、後手にとって最も有力に見える指し手である。先手にとっても嫌な手だ。

 以下、7七玉、6五桂、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成と進むと、先手玉に“詰めろ”がかかっている。
 それを先手は、“8九金”と受ける(次の図)

変化7五金図02
 8九香ではなく、「金」で受けるのがとても大事なところ(理由は後でわかる)
 さて、これでもう先手玉には“詰めろ”はかからない。しかし後手6八ととすれば、次の7八とが“詰めろ”になる。
 その手がまわる前に、今度は先手が後手玉を攻める手があるかどうかの勝負となるが――あるのだ。

 「3三香」(次の図)と打ちこむ手がその答えである。

変化7五金図03
 この鮮やかな「3三香」という攻め方が、(戦闘中には)我々の意識にはなかった。この手は、この「戦争」の後で調べて発見できた手である。

 重要なことは、ここで先手が後手玉を攻めるとき、「香」を後手に渡しても、“先手玉は詰まない”ということである。だが、渡す駒が「金」ならば、先手玉は8八金と打たれて詰んでしまう。
 だから「3三」に打ちこむ駒は金ではいけないのだ。もし先ほどに香車を8九に打って受けに使ってしまっていたら、「3三香」とできなかったから、その場合は先手は負けになっていたのである。

 「3三香」と打ちこんだこの図は、鮮やかに、“先手勝ち”になっている。 以下、それを確認していこう。
 
 ここでの後手の応手は(ア)3三同桂と(イ)3一銀が考えられる。(3三同銀は同歩成、同玉、1一角で先手勝ち)

変化7五金図04
 (ア)3三同桂、同歩成、同銀、5二角成、4二銀右、5一竜、3一香、3四桂と進むとこの図になる。
 これを3四同銀は、3三金以下詰んでしまうので、後手は1一玉と逃げるが、それでもやっぱり詰んでしまう。2二金、同銀、同桂成、同玉に、3三銀(次の図)

変化7五金図05
 3三同歩は、3二金以下、3三同玉なら4二馬以下の“詰み”。

変化7五金図06
 というわけで、それならと後手(イ)3一銀(図)ならどうか。
 これには先手5二角成とする。後手は同歩。
 そこで4一飛打のような手なら、逆に先手が負ける。先手玉が8八桂成、同金、同成桂、同玉、7八金、9八玉、8九角で詰まされてしまうから。
 でも大丈夫。5二角成、同歩の時に、3二香成で、先手が勝てるのだ(次の図)

変化7五金図07 
 これで後手玉が“詰み”。
 図以下、3二同玉、4一角、2二玉、3二金、1一玉、2一金、同玉、3三桂、1一玉、2一飛まで。

変化7五金図08
 さて、戻って、後手6八とのところで、代えて3一銀(図)とここで先に受けておくのはどうか。
 これには5二角成とする。以下、同歩に、6一飛。(この場合は角を後手に渡しても先手玉はまだ詰まない)
 後手は4二銀引と“詰めろ”を受けるが、そこで3三歩成(次の図)

変化7五金図09
 3三同桂は、1一角以下詰み。 3三同玉は、1一角、2二銀、3八香、3四角、6四飛成で先手勝ちが確定。
 よってここでは3三同歩だが、それには3二歩が決め手となる。これを同玉は4一飛成以下詰みである。

 ということで、この後手の桂馬二枚での一直線の攻めは先手勝てるとわかった。

変化7五金図10
 もう少し戻って、後手7六桂の手に代えて、7六金としたのがこの図。
 これはまだ詰めろではないのだが攻めに厚みがある。そして後手に香車が入るとその瞬間に先手玉は詰んでしまうから、今度は先手は3三香とは攻められないのだ。
 7八金と受けるのも、6六桂があってこれが“詰めろ”なので、先手悪い。 

変化7五金図11
 だからここでは、7九香(図)と受ける。
 後手はどうするか。(カ)6八とは、5二角成(同歩なら3三金以下後手玉詰み)、7九と、5一竜として先手勝ちになる(5一同銀もやはり3三金以下後手玉詰み。先手玉は後手7七桂成に8九玉で詰まない)
 (キ)6六歩に対しても同じく5二角成~5一竜で先手が勝てる。

 なので(ク)8五桂が後手の残された手段となる。以下、7六香、7七桂左成、9八玉となって次の図。

変化7五金図12
 ここで後手は6五銀と、銀を援軍として送る。次に7六銀が“詰めろ”になる。
 そこで“2五飛”(次の図)が先手の攻防の絶好手。

変化7五金図13
 “2五飛”(図)が素晴らしい手で、後手7六銀には、3三金以下、後手玉が詰んでいるのだ。
 同桂なら2一金、同玉、2三飛成で簡単な詰み。よって、3三金には同銀だが、以下、同歩成、同玉、3四銀、同玉、4五金、2五玉、4七角、同銀成、3五金打以下(途中、4五金に後手3三玉には、2三飛成、同玉、3四角)
 というわけで、後手はこの“詰めろ”を受けなければならないが、歩以外の持駒のない後手は受ける手段が限られる。4四銀が有力だが、それには、1一角、同玉、3二角成(次の図)

変化7五金図14
 これで先手が勝ち。先手玉は「角」を後手に渡しても詰まないからだ。

 しかしもしも、後手が6五銀に代えて、6八とだったら、その場合は同じように進めた場合、角を渡せない。8九角以下先手玉が詰んでしまうから。だから1一角の攻めは利かない。

変化7五金図15
 けれども、6八とに対しても、先手は“2五飛”と進めてよい。以下4四銀に、その場合はこの図のように“5六角”と打って“詰めろ”をかける。持駒のない後手は、もう受けがない。これで先手勝ち。

変化7五金図16
 6五銀でも6八とでもなく、第3の手7六成桂(香車を取る)なら先手はどうするか。
 その場合もやはり“2五飛”(図)だ。この飛車は、8五の桂馬の取りにもなっている。後手は「2三」の地点を強化しにくい形なのだ。
 今までと違うのは、この場合は後手が「香」を持っているということだ。しかしここで2四香と受けるのは、8五飛で桂馬を取られて攻めがなくなって後手困る。
 では、5四銀ならどうか。これは4五に利かせて後手玉にかかっている“詰めろ”を解除しつつ、同時に6五銀のような攻めに使う可能性を持たせた手だ。
 しかしそれでも先手が良い。8五飛もあるが、ここは1一角から決めに出る手を紹介しておく。
 5四銀、1一角、同玉、3二角成、2二角、3三歩成(次の図)

変化7五金図17
 3三歩成(図)が落ち着いた手で、この手でうっかり2三飛成は、8八角成以下、後手の逆転勝ちとなる(つまり後手の2二角は“詰めろ逃れの詰めろ”だったのだ!!)
 この3三歩成はそれを見切った手で、同角なら、2一馬、同玉、2三飛成からの詰みがある。だから3三同銀しかないが、2三飛成で、これで先手勝ちが確定する。

 以上の結果、後手〔A〕7五金以下は「先手勝ち」とみてよいようだ。


課題図(再掲)
  〔A〕7五金 → 先手良しが確定
  〔B〕7四歩
  〔C〕3一金
  〔D〕6二金
  〔E〕6三桂

 この「課題図」では、その他にもここに示す〔A〕~〔E〕の後手の有力手が考えられる。
 最新コンピューターソフトはこれらの中で6三桂を最有力と見ていることを参考として伝えておく。


変化7四歩図01
 〔B〕7四歩(図)は、次に7五銀と、銀を攻めに使う意味。
 これには、5二角成とする。これを同歩なら、3三金以下後手玉は詰む。しかし放っておくと、まだ詰みはない、という状態。
 後手は予定の7五銀(次の図)

変化7四歩図02
 7七玉と下がると先手が負けになるが、8五玉または6五玉とかわせば、先手が優勢に進められる。
 6五玉がわかりやすい。以下6四金、5六玉、5五金、6七玉、6六金(次の図)

変化7四歩図03
 5八玉とと金を取るのが普通だが、それだと5七銀成、4九玉、3六桂の“詰めろ”がかかる。
 ここは7八玉のほうが勝ちがはっきりする。先手玉に“詰めろ”がかからないからだ。
 以下7六銀と迫るが、先手玉は詰めろになっていない。

変化7四歩図04
 そこで5一竜(図)として、先手が勝ちになった。同銀は3三金から後手玉“詰み”。


変化3一金図01
 〔C〕3一金(図)と、ここに金を投下するのはどうか。
 この手に対しては、▲8五玉や▲6六角という、“入玉”ねらいの作戦もあり、最強ソフトはそれを推奨しているが、▲5二角成で先手勝てそうなので、ここではその順を示しておく。
 5二角成、同歩、6一飛(次の図)

変化3一金図02
 ここで後手の指したい手は<u>4八角とこのラインに角を打つ手なのだが(次の図)

変化3一金図03
 それだと3三歩成(図)が良い手になる。3三同歩なら3二金から詰みがあるので同玉とするが、以下、1一角、3四玉(代えて2二桂合は4五金で先手勝ち)、3八香、3七桂、5六金(次の図)

変化3一金図04
 先手勝勢。

変化3一金図05
 それでは、受けに回る<v>5一桂(図)ならどうなるだろう。

変化3一金図06
 それには6五歩(図)がある。5五銀上なら7三歩成で先手優勢となる。
 6五歩に、5五銀引が粘り強い手だ。
 以下、6四歩、同銀上、8五玉、5七角、9六玉、7五角成、8六銀、7六馬、8五金(次の図)

変化3一金図07
 先手優勢である。
 ここから後手が6八と~6七とのようなゆるい攻めをしてくれば、先手は2六香~4五角と設置して「2三」を狙っていけば後手玉を攻略できる。1一桂の受けには、同香成、同桂、2四金である。


変化3一金図08
 再び戻って、<v>5一桂に代わる手として、<w>8一桂(図)という受けがあった。
 同竜なら、5四角と打って、竜を取ろうという意図だ。
 この<w>8一桂にも、先手は6五歩でよい。以下、5五銀引、6四歩、同銀上、2六香(次の図)

変化3一金図09
 先手の次の狙いの手は4五角だ。
 なので後手は先に5四角と打つ。8六玉に、7四歩(これくらいしか手がない)
 そこで先手には、2三香成、同玉、3五金というもう一つの手の用意があった。
 以下、2四歩(詰みの防ぎ)、8一竜、1四歩(先手1五桂の防ぎ)、2五金打となって―――(次の図)

変化3一金図10
 先手勝ちがはっきりした。

変化3一金図11
 少し戻って、先手の6五歩に、後手5四角(図)という手もある。これだとどうなるだろうか。
 これには、8六玉とかわすのが良い。5四角は好位置だが、後手が角を使ったので、先手はやりやすくなった意味がある。
 8六玉、6五銀に、3三歩成とする。

 そこで後手には、3三同玉3三同歩が考えられる。

 3三同玉には、8一竜、同角、1一角(次の図)

変化3一金図12
 以下、2二金、3九香、3五桂、6五飛成となって、先手勝勢。
 なお、ここまでの手順中、8一竜を取らないという選択もあるが、それでも後手に勝ち目はなさそう。先手には金が3枚あるので、3三にむき出しになった後手玉は、あっさりと包囲されてしまうのだ。

変化3一金図13
 というわけで、後手は3三同歩のほうがよさそうだが、これには先手7三歩成(図)で先手十分の形勢。
 以下、5五銀、3二歩、同玉、6三と、6六銀左、8一竜(詰めろ)、5一桂、5三とのような展開が予想される(次の図)

変化3一金図14
 後手はここで8一角で竜が取れるが、それは4二と、同金、1一銀で、先手勝ちとなる。
 したがって、図では5三同歩が後手の最善手だろうが、8三竜として、先手勝勢は間違いない。


変化6二金図01
 〔D〕6二金(図)は相手の読みを外すような怪しい手だ。持ち時間のないときにこんな手を指されたら困る。
 2六香は、3一玉で後手が有望になる。
 簡単には勝ち筋が見つからなかったが、先手はここで3三歩成(次の図)が良いようだ。

変化6二金図02
 これには、後手[同銀]と[同桂]がある。(同玉は3九香、3五桂、1一角以下後手すぐ負ける)

 まず[同銀]は、5一竜、3一金、3九香、3四桂、2五金で、次の図となる。
 
変化6二金図03
 次の狙いはもちろん3四香だが、後手それを受けて4二桂では受け一方で後手に希望がない。具体的には、4四歩、同歩、4三金で、受けなしになる。
 良い受けがないので後手は6八と。この手には狙いがある。角を手にして6七角と打つ筋だ。
 しかしそれでも、3四香と先手は走る。同銀、同金で、そこで後手は4一金と角を取る。

変化6二金図04
 4一同竜に6七角と打つ“王手金取り”の狙いだが、先手は4一竜のつもりはない。
 ここでは2三金と突進して、後手玉に“詰み”があるのだ。2三金、同玉、2五飛、2四金、1五桂(次の図)

変化6二金図05
 以下、どこへ逃げても、“詰み”。


変化6二金図06
 戻って、3四桂に代えて、3五桂(図)とした場合。
 先手は4五金と打つ。▲3五香、▲4六金、▲3四歩という3つの狙いがある。
 駒が足らず良い攻めのない後手は6一歩。先手4六金なら、4二銀右、5八竜、4一金の角取りが狙いだ。
 しかし先手は4六金とせず、3四歩と攻める。4二銀左に、3三金(次の図)

変化6二金図07
 後手玉は詰んでいる。
 3三金を同歩は3二飛から簡単。同銀も、同歩成、同桂に、3二角成、同玉、2一銀、同金、4一角、2二玉、2三角成以下。
 同桂には、同歩成、同銀、3四桂、同銀、3二角成、同玉、3三飛(次の図)

変化6二金図08
 途中、後手が変化する手はいろいろあるが、どれも詰んでいる。

変化6二金図09
 さらに「変化6二金図02」の3三歩成まで戻って、そこで後手[同桂]の場合。
 それには3四金(図)と打つ。
 以下、7四歩に、2四香と打つ。7五銀に、7七玉。
 後手3一桂と受ければ、2三香成、同桂、2四飛(次の図)

変化6二金図10
 1一桂、2三飛成、同桂、3二角成、同玉、2四桂、4一玉、3二金、5二玉、4一角(次の図)

変化6二金図11
 ぴったり詰んだ。

 〔D〕6二金も先手勝ちになるとわかった。


変化6三桂図01
 〔E〕6三桂。これが後手最後の手段。
 この6三桂のような少しひねった手は人間だと一通り考えた後に浮かんでくる手だが、こういう手をコンピューターはすぐに思いつくようだ。
 先手の手番だが、ここでは5二角成がある。これを同歩だと3三金で詰む、という〔B〕7四歩の時にも出てきた状況。そして次に5一竜で後手はほぼ“受けなし”になるので、攻めるなら“詰めろ”で先手玉に迫らなければいけない。 

変化6三桂図02
 5二角成に、7五銀(図)。 これが後手の指したかった手で、7四歩~7五銀の場合は、6五玉や8五玉と逃げられる手にも対応しなければいけない。実際、〔B〕7四歩の時には、6五玉で先手の勝ちになった。
 ところが、6三桂~7五銀だと、今度は6五玉や8五玉ではすぐ詰んでしまうから、下に引くしかない。6三桂の意味はここにあった。
 というわけで、先手は7七玉。
 以下、8五桂、8八玉、7七金、9八玉、7六銀、8九香、8七金、同香、7七桂成、8八歩、7五桂(次の図)

変化6三桂図03
 後手は6三に打った桂馬を活用して攻めてきた。
 しかしこの図は、先手の勝てる局面になっているようだ。ここは8六金と受けても先手が良い。
 だが、ここで6六角がよりわかりやすい決め手。これで後手は受けがないのだ。
 6六角に、4四歩、3三金で、次の図。

変化6三桂図04
 5二の馬の利きが3四まで通ったので、3三金(図)で後手玉は“詰み”となった。
 3三同桂、同歩成、同歩、3二金、同玉、4三金、同銀、3一飛、同玉、5一竜以下。

変化6三桂図05
 一直線の攻めだと後手勝てなかったので、途中で後手がいったん受ける展開を考える。7七金、9八玉としたところで、そので1四歩(図)でどうなるか。
 これで後手玉は広くなったので、詰みにくくなっている。なのでここで5一竜は、同銀で後手優勢になる。ここで後手の手番なら5二歩がある。
 先手はどうするか。
 しかしこの図もやはりすでに「先手良し」の図のようだ。6三馬とすれば、問題ない。
 だがここでは3三歩成がよりスマートな勝ち方になる。この瞬間に、3三歩成を決めて後手の応手を限定するのである。
 3三歩成を「同銀」は5三馬だし、「3三同玉」は3六飛がある。よって後手の応手は桂か歩だが、「同桂」なら、そこで6三馬と桂馬を取る手がピッタリはまる。次に3四桂(1三玉、2二角、2四玉、2六飛、2五桂、同飛以下)から“詰み”をみている。
 残った手は、3三歩成を、「同歩」。 これには2六飛(次の図)が決め手。

変化6三桂図06
 2六飛(図)と打って、後手玉の上部脱出を許さない。3二金以下の“詰めろ”。受けもない。

 〔E〕6三桂でも「先手良し」と決まった。

 ――――ということで、

課題図(再掲)
  〔A〕7五金 
  〔B〕7四歩
  〔C〕3一金   すべて「先手良し」
  〔D〕6二金
  〔E〕6三桂

 この「課題図」は、後手の5つの有力手についてすべて「先手良し」と確定した。

指始図 4二銀左図

 すなわち、この本譜「4二銀左」の図から、4一角、3二歩、5八金、同と、9一竜として、「先手良し」となるのである。

 また、この手順を変えて、5八金、同と、9一竜としても、後で「4一角」と打てば後手はほぼ「3二歩」なので、同じ図に合流して、やはりそれでも先手が良い。

 ポイントは「5八金、同と」だった のである。我々はその手を見逃してしまった。 なぜか? 先入観があったからだと思う。

5八金図(夏への扉図)
 もともと、後手の陣形はこのような「3二銀型」であった。
 これを攻略しやすいように、3三歩、同銀、3四歩、同銀と歩で銀の頭をたたいて吊り上げる。すると次の図になる。  

3四同銀図
 これが≪亜空間戦争≫で繰り広げられてきた手順で、いわば「亜空間定跡」であった。
 だから我々終盤探検隊は、この「3四銀型」を想定局面としていた。
 この「最終一番勝負」の中でも、しっかりとこの図での「5八金、同と」も事前研究していたのである。
 その研究では、この道は「後手良し」と結論を出した。(→『終盤探検隊 part112』)
 そのために我々の意識には、「5八金では勝てない」という先入観が入ってしまっていたのである。

 だから今回の「4二銀型」でも、「5八金」の手は考えようとしなかった…

参考図c
 具体的には、上の「3四銀図」から、5八金、同と、9一竜、7五金、7七玉、8五桂、8八玉、6八とで、この参考図になるのだが、この図から先手の勝ちが発見できず「先手負け」という結論になり、「5八金では勝てない」となったのだった。
 (これが「4二銀左型」の場合は今見てきたように「4一角~3三香」という好手が変化の先にあって先手が勝てるというわけである)




≪最終一番勝負 第13譜 指了図≫ ▲9一竜まで

 ともかく、我々の選んだ手は、単に、▲9一竜 である。


第14譜につづく
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終盤探検隊 part113′ ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第12譜

2018年04月04日 | しょうぎ






 


 鏡を通りぬけて『鏡の国』に入った時、アリスはテーブルの上の本を手にとり、パラパラと本のページ
をめくってみたが、さっぱり読めない。
 だが、アリスはこれは『鏡の国』だからだと気づき、<鏡>にその本のページを映してみて、それで文
字はわかるようになった。
 ところが、それでも、意味不明な文章で、何のことやらわからない。
 そのときにアリスが読んだのが、「ジャバウォッキ」というタイトルの詩だった。

 新潮文庫版の訳者矢川澄子はこれを、次のように訳している。

ジャバウォッキ(邪婆有尾鬼)

ゆうまだきらら しなねばトオヴ
まわるかのうち じゃいってきりる
いとかよわれの おんボロゴオヴ
ちでたるラアス ほさめずりつつ


 ここは翻訳者の色が出るところで、『鏡の国のアリス』のそれぞれの翻訳者が、この部分をどう翻訳し
ているかを調べて比べてみるのも面白いだろう。
 「鏡の世界」の本なのですべての文字が「反転文字」になっていたが、<鏡>で映してみれば、“元の
文字”に戻ってふつうに読めた。読めたけれども、それでも意味が分からない。「けっこうわかりにくい」
と、アリス。
 それもそのはず、これは作者ルイス・キャロルの言葉遊びでつくった単語だらけで、普通の辞書にはな
い言葉ばかりでできているからだった。
 この<ジャバウォッキ>というタイトルの詩は、まだ続きがあるのだが、これは「ある青年がジャバ
ウォッキという怪物を退治した物語」をうたったもので、この4行はその冒頭と最後の部分になる(最後
にもう一度この4行詩をくりかえしうたう)

 この『鏡の国』での少女アリスの冒険を追っていくと、「6コマ目」で、アリスは大きなタマゴのよう
な姿の怪人物ハンプティ・ダンプティと出会うが、そのハンプティ・ダンプティは「ことば」についてと
ても詳しいようなので、アリスはこの<ジャバウォッキ>の詩の意味についておしえてほしいとたのんで
みたのである。すると、さすがのハンプティ・ダンプティは、すらすらと解説してくれたのであった。

 最初の「ゆうまだきらら しなねばトオヴ」の一行について解説するとこうなる。

  「twas」 → it was
  「ゆうまだきらら brillig」 → 「夕方の四時――あかるいけれど、そろそろ夕めしをたきはじ
                   める時間」とハンプティ・ダンプティは説明。
                   肉をあぶる=broiling、輝く=brilliant、明るい=bright
  「しなねば slithy」 → <しなやか lithe>と、<ねばっこい slimy>の二つの言葉を重ねてつ
               くった言葉。 
  「トオヴ」 → アナグマ、トカゲ、ワインの栓抜きに似た姿の生物 

 一行を解読するだけで、こんなにたいへん。


 さて、「鏡面変換」について、考えてみよう。
 人が、<鏡>に自分の顔、姿を映しても、それほど違和感はない。人間の顔も身体も“だいたい左右
対称”だからである(そして私たちはふだん、“自分”に関しては、“反転した鏡の中の自分の顔”し
か見ていない)
 ところが、これが「文字」になると、上の例のように、とたんに“違和感”のある世界になる。文字
のほとんどが“左右非対称”だからである。こういうところが、「鏡の世界」の面白さで、魔法を連想
させるところであろう。この「鏡の世界の文字」は、「文字」を、紙にすかして裏側から見たのと同じ
「反転文字」になっている。
 「鏡の世界のモノ」も、実は、「鏡面反転させたモノ」になっており、これはどんなに向きを変えて
みても、元の「モノ」と重なりあわない(ただし、厳密に左右対称な物なら特別に重なりあう)
 人間も、厳密には“左右非対称”なので、この世界の「自分」と、「鏡の中の自分」とは、厳密には
違うカタチなのである。
 なのだけれど、「鏡の中の世界」では人間もモノも、こちらとまったく同じ動きをする。「鏡の中の
世界」も、左右反対ではあるが、まったく同じ物理法則・化学法則で動いているのである。

 この、「まったく同じに見えて、実は一部の法則だけが逆」というのが、「鏡の世界」のおもしろい
ところ。
 いったい何が逆なのであろうか。


 これを数学的に考えてみる。
 数学では、空間を三次元でとらえ、三つの軸―――X軸、Y軸、Z軸で表す。X軸が左右、Y軸が奥
行(前後)、Z軸が天地(上下)である。
 「鏡の中の世界」は、「XYZの軸のうちどれか一つの軸が逆向きになった空間」になる。
 すなわち、(X、Y、Z)→(X、-Y、Z)、これが“鏡面変換”である。


 また、これを別のやりかたで考え直してみよう。
 いまここに大きな鏡台があったとする。その鏡の前の台の上に「将棋盤」を置いて初形配置に駒を並
べる。
 そして「わたし」が、<鏡>をのぞき込む。 すると、どうなっているか。


(鏡)--------------------------------------------------------------------------------(鏡)

 こんなふうに見えるはず。
 「鏡の中」の将棋盤の上の駒は、「鏡の中のわたし」から見れば、「飛車」と「角」の位置が逆であ
り、それだけでなく、駒の文字も“反転文字”である。
 しかしこちらの世界の「わたし」から見れば、“左右”(すなわちX軸)は逆にはなっていない。逆に
なっているのは前後(Y軸)である。もちろん、上下(Z軸)は変更なし。
 つまり、(X、Y、Z)→(X、-Y、Z)という変換である。

 それでも、将棋のルールはそのまま使えるし、“定跡”や“手筋”や“戦法”の価値も、こっちの世界と
あっちの世界でも、同様の価値である。
 上の“反転初形図”を見ると、活字の「金」の文字は左右対称なので、まったく違和感がないのがまた
おもしろい。ところがその隣の「銀」の反転文字は、初めて見たような文字に見える。
 さらに「歩」の反転文字は、読めることは読めるが、触られたことのないこころのどこかを触られた
ような妙な気分させるし、ところが敵陣の「歩」を見ると、反転されているのに、それほど違和感がな
いからふしぎだ。(「反転文字」は逆さにすると少し読みやすくなる、ということを新発見)



<第12譜 ぬしの勝負手、4二銀>


≪亜空間最終一番勝負 第12譜 指始図≫

 ≪主(ぬし)≫は、我々の研究の“穴”を突いてきた。 3四歩に、4二銀!  

 いったい何が起こったのだ? その瞬間、空間が歪んで見えた。


第13譜につづく
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