はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part135 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第34譜

2019年11月11日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第34譜 指始図≫ 6七とまで



    [ドラえもんの鏡面世界 ]
ドラえもん「ザンダクロスは鏡面世界にいるんだ。あたらしく出入り口を作らなきゃならない、鏡のようにまったいらな反射する平面をさがして。」
ジャイアン「さっきの川は?」
のび太「流れているからダメだよ。」
のび太「さしあたり思いつくのは……、」
のびた「しずちゃんちのおフロ。」
   ( 藤子・F・不二雄作 漫画『長編ドラえもんVOL.7 のび太と鉄人兵団』より)



 1986年劇場映画版の原作として描かれた「長編ドラえもん・シリーズ」の第7作目『のび太と鉄人兵団』の中に、「鏡面世界」というものが出てくる。
 この「鏡面世界」は、“現実世界”を左右反転にしたのび太とドラえもんの巨大プライベート空間で、“現実世界”とちがって人間や動物が存在しないので、破壊して遊んでもだれにも迷惑がかからない。
 その「巨大プライベート空間」が、宇宙の遠くから地球侵略のためにやってくるつもりの「鉄人兵団(ロボット)」の秘密基地として利用されてしまい、さあたいへん―――というのが、この物語の基本となる筋である。
 『ドラえもん』には、意外と「鏡」を利用した小道具は少ない。鏡自体が少しばかり“不思議な道具”なので、これをさらにつくりかえてもそれほど面白さは生まれないかもしれない。
 実際、この「鏡面世界」自体のおもしろさは、それほどでもない。

 『ドラえもん』の中で主人公ののび太たちは、「タケコプター」で空を飛ぶことができる。
 藤子・F・不二雄は1933年生まれである。手塚治虫(1928年生まれ)以降、この世代までの漫画家は、よく“空を飛ぶ主人公”を描いた。『オバケのQ太郎』も『パーマン』も『忍者ハットリくん』も空を飛んだ。
 1934年生まれの横山光輝の描いた『鉄人28号』は巨大ロボットだがジェットエンジンで空を飛び、『バビル二世』の主人公の少年は大きな怪鳥ロボット(ロプロス)に乗って空を飛んだ。
 最近の少年漫画雑誌の中で「空を飛ぶことのできる主人公」はたいへんに稀(まれ)である。
 アニメ作家の宮崎駿(1941年生まれ)が「主人公に空を飛ばせることのできる作家世代」の列の最後尾の人という感じがある。
 物語の中で「主人公を空に飛ばさせる」というのは、実は強大な才能・エネルギーが必要なのだろう。



<第34譜 さあ、“勝ち筋”をさがせ>

≪指始図≫ 6七とまで
 この図を迎えて、我々(終盤探検隊)は、いよいよ、“最終局面が来た!!” という感覚だった。
 ここで、先手の勝ち筋があるのではないか―――と感じていた。「激指14」の評価値はまだマイナス(-250くらい)だったが、これまでの≪亜空間戦争≫の経験から、これくらいのマイナス評価は気にしてはいけないとわかっていた。

≪指始図≫ 6七とまで
  〔松〕3三歩成
  〔梅〕2五香
  〔桜〕9七玉
  〔栗〕8九香
  〔柿〕7九香
  〔杉〕5四歩
  〔柏〕2六飛
  〔桐〕9八玉

 「激指」の評価値を見て、そしてこれまでの経験値からの、終盤探検隊の“感覚”は、〔桜〕9七玉が第1候補、しかし、〔松〕3三歩成と〔梅〕2五香もたいへんに有力で、これで勝ちがあるのではないか、というものだった。(「激指14」の第1候補手も〔桜〕9七玉で、第2が〔梅〕2五香)
 他に、〔栗〕8九香、〔柿〕7九香、〔杉〕5四歩、〔柏〕2六飛 を考えた。
 (「激指14」は、〔桐〕9八玉も第3位の有力候補に挙げていたが、これについては、我々ははほとんど考慮しなかった。同じ早逃げの9八玉を考えるなら、第1候補の9七玉のほうを選ぶ、という感覚だったので。それに後手5四角のラインに入る9八玉には違和感があった)

 以下は、それらの候補手(9七玉と9八玉を除く)についての、先手番をもつ我々終盤探検隊の“読み”の内容である。


3三歩成図
 〔松〕3三歩成(図)は、我々が、「これで勝てるならこの手を指そう」と思っていた手である。
 調べはじめたときは「きっと先手の勝ち筋が見つかるだろう」という感覚だった。

 〔松〕3三歩成、同銀、5二角成と進む(次の図)

変化3三歩成図01(5二角成図)
 ここで7五桂は、9七玉、7七と、4三馬となって―――(次の図)

変化3三歩成図02
 この図は先手良しが確定している。手順の違いはあるがこの図は前譜[調査研究1]ですでに調べている図である。

 なので前の図(5二角成図)からは、5二同歩と進む。そこで先手は「3一飛」だが―――

変化3三歩成図03
 4一や7一ではなく、「3一」に飛車を打ったのは、後手の3四銀に、4一竜を用意している。
 しかし、読んで行くうちに、ここでの「3一飛」では、先手が苦戦するとわかってきたのだった。
 「3一飛」(図)には、5四角 が後手の最善の応手。 以下、9七玉に、8一桂(次の図)

変化3三歩成図04
 以下、8一同竜、同角、同飛成、7七と と進む(次の図)

変化3三歩成図05
 ここで8九香と受けても、9八金と受けても、9五歩で、先手玉はもうたすからない。
 しかし、7八金という唯一の受けがある(次の図)

変化3三歩成図06
 7八金(図)と犠打を放って、攻めの主導権を取ろうということ。さあ、これでどっちが勝っているか。
 7八同と、3一金(詰めろ)、1四歩、2五桂、4七飛(次の図)

変化3三歩成図07
 後手玉には“詰めろ”がかかっている。それを解除するには2四歩しかないが、単に2四歩では2一金、2三玉、4五角、3四銀、3五桂まで、詰んでいる。
 だから、4七飛(図)なのである。王手をかけながら「4五」に利かせていまの手順の先手4五角の手を消した。
 そこで先手は(1)8七香と(2)5七歩とがある。

 (1)8七香、2四歩に、4八歩がある(次の図)

変化3三歩成図08
 4八歩(図)と歩を打った。これを同飛成だとどうなるのか。
 それには、3二金の好手がある。以下、同玉に、4一角、4二玉、8四馬だ(次の図)

変化3三歩成図09
 金を取って、後手玉は3二金の一手詰。なので5四銀が考えられるが、そこで4八馬と竜が取れるというしくみである。
 4八同飛成の変化は、こうなって、先手良し。

変化3三歩成図10
 そういうわけで、先手の4八歩に、後手は4六飛成(図)とする(4五飛成は3七桂があるので4六に成った)
 また、後手はできれば7七飛成と先手玉に迫りたいところだったが、それは2一金、2三玉、4五角があるので駄目なのだ。
 図以下、2一金、2三玉、3三桂成、同玉(同歩もあるが、2六桂、2五歩、3一竜以下、先手良しになる)、4七歩(次の図)

変化3三歩成図11
 ここで4七歩(図)として、これを同竜なら、3五銀で先手が良い。
 なので後手は3五竜だが、以下、3六歩、同竜、1一角、3四玉、5五角成、4四銀(次の図)

変化3三歩成図12
 これはどっちが良いのか?
 どうやら後手が良いようである。先手は後手に角や銀を渡しにくい。
 ここからは手順の一例を示しておく。4六桂、3五玉、6五馬、5三桂、4三馬、4七竜(次の図)

変化3三歩成図13
 4七竜(図)として、後手の手番なら7七竜で先手玉は“受けなし”になる。
 それを防いで、3四馬、4六玉、7八馬はあるが、7七金で、これも後手の勝ち。
 4一竜の攻めがあるが、その手には3三金と受けて、やはり後手が良い。
 この図では、6六銀が一番怪しそうな手だが、それには4六玉とし、4四馬、5六玉と進めて、これも後手が良い。
 (1)8七香以下は、どうやら後手優勢であると結論が出た。

変化3三歩成図14
 では、後手4七飛に、(2)5七歩(図)ならどうなるか。
 これを同飛成と取ると、8七香で先手が勝ちになる(2四歩に2一金、2三玉、4五角があるので後手の“詰めろ”が解消できない)
 したがってここで後手2四歩しかない。以下2一金、2三玉、3三桂成は、やはり同玉で後手が良い(2二角~5五角成は、5七竜、8七香、5五竜で成角を取られる)
 しかし、この場合、3二金がありそう(次の図)

変化3三歩成図15
 3二同玉に、そこで8四馬が、後手玉への“詰めろ”。
 なので後手は4一金と受け、先手は3六香(次の図)

変化3三歩成図16
 3六香に代えて、3三桂成は同玉でうまくいかない。以下4一竜なら、8四歩と角を取って、その手が先手玉への“詰めろ”になって、こうなると後手が良い。
 3六香(図)以下は、2五歩、2四金(詰めろ)、2二金、1一角と攻める。
 後手は4四飛成と受けるのが最善手(次の図)

変化3三歩成図17
 7三馬なら2四竜で、後手良し。
 ここで3三香成と攻めてどうか。以下同金、同金、同竜と応じる。
 以下、7三馬に、7七と(次の図)

変化3三歩成図18
 ついに先手玉に“詰めろ”がかかった。
 9五歩には8四桂があるし、9八金と受けても8七金、同金、同玉、7五桂、7八玉、3八竜、6八歩、7七歩以下、詰んでいる。
 だからここは9八銀と受けることになる。以下、8八金(詰めろ)、8九銀打、9八金、同香に、2二銀(次の図)

変化3三歩成図19
 どうやらこれで、後手優勢がはっきりした。
 図以下、3四歩、同竜、2二角成、同玉、4一竜はあるが、7九角、8八銀(金)、同ととなって、後手勝勢である。

 以上の調査の結果、「3一飛」は「後手良し」と決まった。

変化3三歩成図20
 だから、「3一飛」に代えて、「4一飛」(図)ならどうかということになる(代えて7一飛もあるが以下3四銀に2一飛成が予想され、その場合4一でも7一でも同じことになる)
 飛車を、「3一」に打つのと「4一」に打つのでは、この場合は大きな違いが出てくるのである。
 ここで先ほどと同じように、5四角と後手が打ってきた場合に、その“違い”があらわれるのだ。
 5四角、9七玉、8一桂、同竜、同角(次の図)

変化3三歩成図21
 ここで8一同飛成なら、7七とで、上の変化に合流し、それは「先手負け」となる。
 ところがこの場合は8一同飛成の一手ではないのだ。ここで“3一金”と打つのが“正解手”だ(次の図)

変化3三歩成図22
 先ほどの「3一飛」の場合と違い、先手が先に“詰めろ”を敵玉にかけることができた。これが“大きな違い”なのである。「8一飛成」の角取りの一手を、“3一金”の一手に使って、“詰めろ”を先にかけることができたわけである。
 この図は、「先手勝ち筋」に入っている。
 後手は“詰めろ”を解除しなければいけないが、2四歩や3四銀なら、そこで8一飛成と角を取って先手良し。1四歩にも、2一金、1三玉、8一飛成だ.
 ここでは後手4二銀左が最善のがんばりとみられる応手だが、その手には2一金、3三玉、3五金(次の図) 

変化3三歩成図23
 依然として先手は“詰めろ”を継続して攻め続けている。なので後手は指したい手「7七と」をまだを指すひまがない。
 後手は“詰めろ”を受けて4四歩だが、そこで先手には8四馬がある。以下、4三玉に、8三馬で、先手勝勢である。

 このように、「4一飛」に、後手 5四角 は「先手良し」となる。

変化3三歩成図24
 ところが、「4一飛」には、今度は、3四銀(図)が難敵となるのだ(もともと「3一飛」を最初に考えたのはこの3四銀を警戒していたからだ。「3一飛」に3四銀は4一竜の用意がある)
 3四銀以下、2一飛成、3三玉(次の図)

変化3三歩成図25
 これが先後どちらが良いのか、それが問題だ。
 3一竜左で勝てればよいが、うまくいかない。3一竜左、7八角(好手)、9七玉、7七と、3二竜右、4四玉(次の図)

変化3三歩成図26
 7八に打った後手の角が「3四」に利いていて、後手は詰みを逃れており、先手玉には“詰めろ”がかかっている。
 以下予想される手順は、8八香、7五桂、7九桂、8九角成、9八金、9五歩、同歩、9六歩、同玉、7八馬(次の図)

変化3三歩成図27
 この変化(3一竜左以下)は、どうやら先手が負けである。

 しかし実は先手にも、“秘手”があって、先手が悪いとも言い切れないのであった。
 2一竜、3三玉のところまで戻って―――

変化3三歩成図28
 そこで3六桂(図)が、“その手”である(ソフト「激指14」はすぐにこの手を示していた。さすがである)
 この桂は後手が6九角と打てば、“タダ取り”できるのだが、それを承知で打つ桂馬なのだ。つまり“犠打”である。この手があるので、形勢不明の勝負となる。
 3六桂は、2四金以下の詰めろになっている。
 ここで6九角以外の手を後手が指すとすると、7五桂、9七玉、7九角(王手をかけつつ2四にも利かせる)だが、以下、8八香、2五銀(後手玉にはまだ先手3二馬、同玉、3一金以下の詰みがあったのでそれを解除した手)、4一竜左、3四玉、3七桂、3五玉、4七金(次の図)

変化3三歩成図29
 こう進んで、これは先手勝ち。

変化3三歩成図30
 なので、先手の3六桂には、素直に6九角(図)が後手の最善の応手である。
 以下、9七玉、3六角成(次の図)

変化3三歩成図31
 戦闘中、ここまでは読めたが、ここから先が、我々(終盤探検隊)にはさっぱりわからなかった。ここから変化がまた多いのである。
 ここで先手の有力手は、(A)3一竜左、(B)4八香、(C)4五歩、(D)3九香とある。
 我々が期待した手は(C)4五歩で、これを本線として考えてみた(次の図)

変化3三歩成図32(3六角成図)
 (C)4五歩(図)、同馬、4八香、4六銀(次の図)

変化3三歩成図33
 4八香に4六銀(図)は、後手最善の応手である。代えて4六桂なら3七桂で先手ペースになるところだった(こういうところを数秒で判断できるのがソフトのすごいところだ)
 ここでは3一竜左と、3七桂の2つの有力手がある。戦闘中は、3七桂しか考えなかった(3一竜左の変化は後で調べたが、結局は後手良しとなった)
 3七桂、5五馬、4六香、同馬、4五歩(次の図)

変化3三歩成図34
 4五歩(図)には、後手同銀だが、そこで〈あ〉4五同桂と、〈い〉4七金とがある。
 〈あ〉4五同桂は、4四玉、5三桂成、7五桂、8八銀、7六桂打と進んでみると―――(次の図)

変化3三歩成図35
 これは、後手良し。後手玉を攻略するのが難しくなっている。

変化3三歩成図36
 しかし、〈い〉4七金という手を我々は発見し、その瞬間、勝利への希望を抱いたのだった。
 この4七金を同馬なら、3五銀と打って、先手が勝てる。
 ところが、ここから7九馬、8八銀に、8五桂という返し技があった(次の図)

変化3三歩成図37
 なんと、先手玉はここから詰まされてしまうのである。
 8五同歩に、8八馬、同玉、8六香、8七桂、7六桂、7七玉、8七香成、同玉、7五桂、7六玉、8七銀(このとき後手の4五銀が居るために6五に逃げられない)、8六玉、7四桂(次の図)

変化3三歩成図38
 人間にはとても読み切れないクラクラするような桂馬地獄的な詰み筋が潜んでいたのである。
 ここからは、9七玉、9六銀成、同玉、9五金以下、難しくない詰みになる。
 この詰み筋さえなければ、先手良しになっていたと思われるのだが。

変化3三歩成図32(再掲3六角成図)
 結局、この図から(C)4五歩では先手の勝ち筋は見つからなかった。
 (A)3一竜左、(B)4八香、(C)4五歩、(D)3九香
 他の有力手も調べてみたが、勝ち筋は発見できず。


 こうして、〔松〕3三歩成 以下は「後手良し」、という結論になった。
 そういうわけで、結局、この 〔松〕3三歩成(同銀、5二角成)の道は、選べなかったのである。


2五香図
 〔梅〕2五香 は“理屈的”にも、有力とみられる手である。その理屈とはこうだ。
 後手は6四桂と打って持駒の桂を一枚手放した。だからもう、歩以外の持駒は後手は「桂一枚」しかない。そういう状況で「2三」を狙えば、後手は受けにくいのではないか、という考えだ。次に2六飛と打てば、それを後手は3一桂(1一桂)となりそうだが、2三同香成、同桂、2四金とすれば、後手はもう受けがない。これは先手勝ちではないか。(2六飛に2四桂は同香、同歩、1五桂、2三香、3五金で受からない)
 6四桂と後手が打った時に、先手を持つ我々(終盤探検隊)が「先手が良くなったのでは?」と感じたのは、こういう手順が有効手になる可能性を知っていたからである。

 「しかし、そう簡単にうまくいくのだろうか」と疑って、しっかり“読み”を入れていくわけである。
 この図で、後手6六銀なら、2六飛以下、いまの手順でたしかに先手が勝ちになる。
 3一桂と先受けしても、2六飛に、後手は指す手がない。
 しかし―――

 この図では、7五桂が後手最善手である。以下、9七玉に、7七とが“詰めろ”。
 先手は9八金と受けるしかない(次の図)

変化2五香図01
 後手は、先手に「金」を受けに使わせた。先ほどとは状況が少し変わった。
 しかし後手はさらに「桂」を使ってしまい、受ける駒がなくなった。次に2六飛と打てば、「2三」を確実に突破できるではないか。
 しかし、手はあった―――(次の図)

変化2五香図02
 「6二金」(図)という手があるのだ。
 ここで2六飛なら、3一玉と玉を引かれ、4一の角を取りにいく。角を取れば、後手7九角と打つ手が激痛の手になる。こうなると、先手が悪い。
 3一玉が入るともう先手は困るので、ここは2三香成、同玉、2五飛と行くしかない。2五飛は、「王手銀取り」だ。
 以下、2四歩、5五飛、6九金(次の図)

変化2五香図03
 形勢はまだわからない。つまり、「互角」である。(少なくとも「2三」を攻めて簡単に勝てるという最初のイメージ通りの展開にはならなかった)
 先手は「銀」を取ったが、後手に「香」を渡してしまった。なのでここで後手の手番なら、9五歩からの攻めがある。しかし一応、4一の角が利いているのでまだ大丈夫だ。
 ここからの先手の指し手が難しい。
 ここで、3三歩成、同玉、5七飛というのが最善と思われるむずかしい手順。
 以下、6七歩、7八歩、7六と、3七飛、4四玉(後手は香車を温存して玉をかわす)、3二飛成、3三桂が予想される手順である(次の図)

変化2五香図04
 竜をつくって、先手がやれそうに見えるが、実はまだ難しい。
 ここで4六銀と打つのは、4五香で先手が困る。
 なので、「7七歩、同と」と7筋で工夫をしてから、4六銀と打つ。
 どう違うかと言えば、4六銀に4五香なら、そこで8四馬と指すつもりだ。以下4六香に、7五馬として、これは先手勝勢である。この最後の手7五馬を可能にするための「7七歩、同と」の細工であった。
 よって後手は4五香ではなく、5四銀と受ける(次の図)

変化2五香図05
 4二竜で銀が取れるが、それは後手の用意した“毒饅頭”。 4二竜なら、6五銀で、その局面はなんと、後手良しになっている。先手玉は8七桂成以下の“詰めろ”である。
 先手は7八歩とする。 同とでも、7六とでも、7六歩でも、その場合は今度は4二竜で先手良しになる。
 しかし、後手5五銀がある(次の図)

変化2五香図06
 この図は、最新ソフトで調べると、ここで5七銀と引けば(評価値+300くらいで)わずかに先手が良いようだ。
 (5五同銀、同玉の展開は後手ペースになる。4二竜も8七と以下後手ペース)
 とはいえ、これは我々(終盤探検隊)が望んだ展開ではない。我々はもっと“さわやかに勝つ”つもりで、この 〔梅〕2五香 の手に期待をかけていたのだ。こんなに難しいことになるのなら、この道は行きたくない。

 以上のような検討の結果を受けて、この 〔梅〕2五香 を我々は選ばなかった。


8九香図
 〔栗〕8九香 は、「激指14」が6番目の候補手として挙げている。
 この図から、7五桂、9七玉、7七とが一つの想定局面だが、これは「7八歩」と打つ手が、あとの変化を考慮した好手になる。「7八歩」に、同歩か7六とと対応するのは、先手からの「3三歩成、同銀、5二角成」が成立して先手の攻めが成功する。
 なので、「7八歩」には7六歩だが、この手の交換があとで先手にプラスに働く。
 そこで8五歩がまた好手(次の図)

変化8九香図01
 7四金なら、3三歩成、同銀、5二角成と攻めて先手優勢になる。後手からの7九角に8六玉と逃げるスペースができている(「7八歩、7六歩」の手交換が入れてあるのでそこで後手7六との手がない)
 よって、後手は8五歩(図)に、同金と応じる。
 8五同金に、3三歩成、同銀、5二角成と、先手はやっぱりこの攻めを敢行する。
 5二同歩に、7五馬と桂馬をはずし(この手を指すための8五歩だった)、これで後手からの7九角が詰めろではなくなった。
 7五同金に、3一飛(詰めろ)と攻めていく。1四歩なら、今取った桂を2五に打って先手勝ちだ。
 3一飛以下、4二銀左、2一飛成、3三玉、4五金と進む(次の図)

変化8九香図02
 こう進めたときに、先の「7八歩、7六歩」の手交換がまた意味をもってくる。もしも「7八歩、7六歩」が入ってなければ、ここで後手からの8六角、9八玉に、“5四角”の角打ちがあって、以下同金、同銀となったとき先手が負けになっているのである。この角打ちの筋を消すための先の「7八歩」でもあった。
 この図は、先手勝勢になっている。この図でも、7九角、8八歩、8七と、同玉、7七歩成、同歩、5四角という手順はあるが、この場合は、以下、同金、同銀、3七桂(詰めろ)で、先手の勝ちは動かない。
 後手7五桂 以下は、いま示した手順で「先手良し」になる。

変化8九香図03
 戻って、〔栗〕8九香 に、7六歩 と指したのがこの図。
 以下、7八歩に、そこで7五桂と打ち、9七玉、7八とと進んで―――(次の図)

変化8九香図04
 こう進むと、これは逆に「後手良し」になっている。「7六歩、7八歩」を利かせてからの7五桂が好手順だった。
 角を渡すと7九角から詰まされるので(7九角、9八玉、8七と、同玉、7七歩成以下)、5二角成を含んだ攻めができない。
 この図で8五歩とするのも、8九と、8四歩に、8五香があって、先手負け。

 この手順があるので、どうやら先手は〔栗〕8九香 では勝てない、と我々は判断したのだった。


7九香図
 〔柿〕7九香 には、7八歩と打たれる手がある(次の図)

変化7九香図01
 7八同香は、7六歩が正しい対応で、どうやら先手が勝てない(7八同香に7七歩なら3三歩成、同銀、5二角成以下先手有望)
 だから、この瞬間に、3三歩成、同銀、5二角成と攻めてどうか、ということになる。この場合、角を渡しても後手から7九角や6九角と王手で打たれる手がないので、それでうまくいかないか―――というところだが、しかし、7五桂、9七玉、7七と と後手に応じられ、どうやら後手勝ちになるとわかった。

 〔柿〕7九香 は、後手良し。


5四歩図
 〔杉〕5四歩 については、「変化が多くて手に負えなかった」ということで、これをあきらめざるを得なかった(「激指」が5番目に推奨していた手)
 この手の意味は、敵陣の金銀の連結を崩すということである。
 5四歩(図)を「同銀」なら、5二角成、同歩、4一飛、3一角と進む。角を受けに使わせて、先手がやれそうに思えるが、その後が案外難しい。5四歩(同歩なら5二金で先手良し)には6三銀と引かれる手がある。しかしそこで6一竜として、先手が良くなるのでは―――というのが検討調査の結論。
 だが、ここで後手が素直に「5四同銀」とは限らない。他に「4四銀上」や「6二銀左」もある。
 そしてもう一つ、先手の5四歩に手を抜いて、「7五桂、9七玉、7七と」がある。これが後手にとって最有力の手順だ(次の図)

変化5四歩図01
 そしてここで、今度は先手側に2つの選択肢がある。
  8九香 と、9八金 だ。どちらも同じくらい有力な手。

変化5四歩図02
 8九香(図)なら、そこで後手は手を戻して、先ほど先手が打った「5四歩」に対処する手を選ぶことになる。後手の選択肢は、5四銀4四銀上6二銀左と、3通りある。

変化5四歩図03
 また、先手が 9八金 を選んだ場合には、そこで後手は7六桂と跳ねてくる手が有力だ。それには、先手は8九香(図)と受ける(5三歩成は8八桂成で先手悪い)
 この図で、また後手の選択肢があり、今度は4通りある。
 “5四銀”、“4四銀上”、“6二銀左”、そして“6四銀左上”。

 数学的に、「場合の数」で考えると、3+(3+4)=10通りの場合の数になる。これらについて全部読み、それを比較検討して結論を出さねばならないのだ。
 調べていて、先手が少し良くなりそうという感じはたしかにあるのだが、読む量が多く読み切れない。読み切れないままに、この道に突入するのは間違いだ、と思った。

 そういうわけで、〔杉〕5四歩 を読むことは、途中で断念した。


2六飛図
 〔柏〕2六飛 はどうか。
 この手は、「激指14」の10個の候補手中にはなかった。しかし我々の“感覚”の中では、あった手で、有力ではないかと思っていた。(「激指14」評価値は-742)
 この手は先に調べた〔梅〕2五香と“対(つい)”になる作戦で、「2五香+2六飛」という「2三」を狙う2段ロケットを設置する意味で、この場合は先に「2六飛」を設置してどうか、ということ。
 ここで後手が7六歩(桂馬を温存して攻める手)なら、2五香と打って、先手の勝ちになる。3一桂(1一桂)なら、2三香成、同桂、2四金で後手は“受けなし”だ。 2五香に、2四桂としても、同香、同歩、3五桂、2三香、同桂成、同玉、3五金で先手勝ちとなる。
 よって、〔柏〕2六飛 には、後手は7五桂しかないということになる。
 以下、9七玉、7七と、「9八金」と進む(次の図)

変化2六飛図01
 先手は2五香と香は攻めに使いたいので、「9八金」(図)と金で受けた。
 後手としては、先手に「金」を受けに“使わせた”。 しかし同時に、後手は「桂」を盤上に使ってしまったので、もう受けに使う駒はない。
 だからもしここで先手の手番なら、2五香で先手の勝ちが確定するが、実際には、手番は後手にあり、2五香の攻めへの“対応策”はある。
 ここで後手は2つの有力手がある。
 8七桂成(8七とでも同じ)と、6二金 だ。

 8七桂成 は、以下、同金、同と、同玉に、“3五金”と打つのが後手のねらいだ。(次の図)

変化2六飛図02
 “3五金”(図)と打たれてみると、先手の飛車は逃げることができない。
 (この筋があるから「激指」は〔柏〕2六飛を候補手に挙げていないのだろう。だがここまできてみると「激指」の後手寄りの評価の数値が小さくなって -190 になっている)
 しかし、先手にも、ここで「5二角成、同歩、3三桂」という“切り返し”がある(次の図)

変化2六飛図03
 これはきわどい勝負になりそうだ。
 図以下、3三同銀、同歩成、同玉に、3九香がある。
 4四玉、3五香、7五桂、9七玉と進む(次の図)

変化2六飛図04
 ここから後手に色々手があるが、先を読んでみると、どの変化もどうやら「先手良し」になる。
 たとえばここで7九角、8八銀、3五角成があるが、3六金と打って、どうやら先手良しだ。
 この図から派生する詳しい変化は省略するが、この図の形勢は「先手良し」。

変化2六飛図05
 後手の“3五金”に、先手5二角成(図)としたところまで戻って、そこで素直に 5二同歩 と応じるのではなく、2六金 と飛車を取る手は、後手の側としては当然考えてみたい手である。その先はどうなるか。
 2六金 に、3三歩成とする。同玉(代えて同歩なら4一馬で先手良し)に、6三馬(次の図)

変化2六飛図06
 これで、どうか。まだ難しいが、正しく指せば、これも先手が勝てるように思われる。
 すなわち、8七桂成 から金を取って“3五金”と打つ変化は、5二角成以下、先手がやれそうだ。

変化2六飛図07
 戻って、もう一つの後手の有力手、6二金(図)を考える。
 これは、先手ねらいの2五香には、3一玉とする意味(角を取りにいく)で、その道は一気に先手が負けとなる。後手に角を持たれると、7九角が厳しいからだ。
 しかし、先手にはここで6三歩がある。7二金なら6一竜で先手良しになる。なので後手は金取りを放置して攻めてくる。
 7六桂で“勝負”だ。
 これに対して6二歩成では8八桂成で先手負けなので、先手は8九香と受ける。
 後手は先手に「香」を受けに使わせた。なので先手の2五香はなくなったのでここで5二金と戻す手は考えられるが、それは3七桂とし、次に5二角成を狙って、先手良し。
 3一玉が後手の最善手である(次の図)

変化2六飛図08
 ここで6二歩成は、4一玉で、やはり後手7九角が厳しく、後手良しになる。
 しかしここで先手には、8五歩の手がある。7四金なら、今度は6二歩成で先手良しとなるのだ。7九角に8六玉と逃げるスペースができたから。
 よって8五歩に、後手は4一玉。以下、8四歩に、7四銀(次の図)

変化2六飛図09
 7四銀(図)が好手で、先手苦戦。
 先手は6二歩成か2三飛成が指したい手だが、7九角、8六玉、6八角成の進行はどうやら後手が良い。

変化2六飛図10
 それでは先手が悪いかというと、それはまだ決められない。
 〔柏〕2六飛 、7五桂、9七玉、7七とに、(「9八金」に代えて)「8九香」(図)とする手もあるからだ。「激指14」の評価値は-745 で後手有利だが、手を追っていくとむしろ先手良しになる場合が多い。
 しかし香車を受けに使ったので2五香と打つねらいが消え、ここからの先手の指し方の方針が、我々にはよくわからない。変化も多く、先を考え進めることができなかった。
 といって、後手がはっきり良いということでもなく、この図は、「形勢互角」ということになる。

 よって、〔柏〕2六飛 の手の評価は「形勢不明」としか言いようがない。
 「互角だが先手の勝ち筋が見えない」という状況なので、この手は選べない(これしか指せそうな手が他にない場合は別だが)




 以上の終盤探検隊の“読み”の結果をまとめると、こうなる。

≪指始図≫(再掲) 6七とまで
  〔松〕3三歩成 → 後手良し
  〔梅〕2五香 → 先手良し(ただし互角に近い)
  〔栗〕8九香 → 後手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 形勢不明
  〔柏〕2六飛 → 形勢不明
  〔桜〕9七玉
  〔桐〕9八玉


 我々が何を指したかは、次の譜で。
 しかし、今回の“読み”につきあってきた読者は、すでにお分かりだろう。



 第35譜につづく
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終盤探検隊 part134 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第33譜

2019年10月12日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第33譜 指始図≫ 8七玉まで

指し手 △6七と


    [ハリー・ポッターの “両面鏡” ]

 これは両面鏡だ。わたしが対の鏡の片方を持っている。わたしと話す必要があれば、鏡に向かってわたしの名前を呼べばいい。わたしの鏡には君が映り、わたしは君の鏡の中から話すことができる。ジェームズとわたしが別々に罰則を受けていたとき、よくこの鏡を使ったものだ。
          (『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』)

 ハリーは、マントルピースの上にある何かに気をとられた。少女の絵の真下に、小さな長方形の鏡が立てかけてある。
    (中略)
 「僕がいままで鏡の中に見ていたのは、あなたの目だった」
          (『ハリー・ポッターと死の秘宝』)

   ( J.K.ローリング著  松岡佑子訳 『ハリー・ポッター・シリーズ』より)




<第33譜 かくれていた手がもう一つ>


≪最終一番勝負 第33譜 指始図≫ 8七玉まで
 「最終一番勝負」は、図の ▲8七玉 まで進行している。

 ここで後手「7五桂」でどうなっていたか。それをまず研究したい(実戦はこう進まなかった)


[調査研究1:変化7五桂]

7五桂図
 ここで「7五桂」(図)は、後手としては打ってみたい手である。
 しかし、「先手良し」になる。それをここで証明しておきたい。
 なお、「7五桂」に代えて、7六歩という手もあるが、それには先手は7八歩と受けておく。そこで7五桂か6七とだが、結局「7五桂」を打つ攻めを採用すれば、同じ形に合流する。
 ここでは、「7五桂」に、9七玉、7六歩、7八歩(やっぱり受けたほうがよい)、6七とと進んだことにしよう(次の図)

変化7五桂図01
 7五桂を早めに打った場合、「7六歩、7八歩」の交換を入れないと、ここで先手からの7六歩(桂取り)があった。
 6七と(図)として、後手に余裕ができれば、次に7八と から7七歩成で勝てるが、その余裕をつくらないように先手は攻めていく方針が良い。
 ここで、7八と を恐れて8八金と受けるのは―――(次の図)

変化7五桂図02
 8八金 には、7七歩成、同歩、6六銀(図)で、後手の攻めがむしろ勢いづいてしまう。
 この図で先手の最も早い攻めは「2五香+2六飛」だが、後手の7七銀不成のほうが一歩早い。
 6六銀に、7九香と受けるのも、7七と、同香、7六歩で、後手の6四桂が活躍しはじめる。
 というわけで、8八金と受けても先手は勝てない。

変化7五桂図03
 「変化7五桂図01」からは、なにも受けないで攻めるのが正しい。この形でも、3三歩成、同銀、5二角成(図)と攻めていくのが有効である。
 5二同歩なら、3一飛で、先手が良い(9七玉と逃げている形なので後手5四角の筋もない)
 なので、5二角成に、後手は7七歩成。以下、同歩、同と。

変化7五桂図04
 先手玉に“詰めろ”がかかった。
 これを8九香 と受けると、5二歩で先手負けだ(8九香は効果的な受けになっていなかった。7九角以下の詰めろになっている)
 そして 9八金 と受けるのは、5二歩、3一飛に、この場合はそこで4二銀左が好手となる。
 以下2一飛成、3三玉、4五金、7九角(次の図)

変化7五桂図05
 こう進んで、後手が良い。
 先手の4五金では代えて3五金と打って後手玉を縛りたいところだったが、それは7九角で金を取られてしまう。そこで4五金(3七香以下の詰めろ)だが、7九角(図)が厳しく、先手玉が先に寄せられてしまう。
 8八桂でも、8八香でも、同とと取って、先手玉は“必至”である。たとえば8八桂合に、同と、同金は、同角成、同玉、7六桂以下の詰みである。また8八桂合、同とに、3七香は、7九角が打ってあるので、後手玉は詰みを逃れている。
 9八金 は、後手優勢になる。

変化7五桂図06(4三馬図)
 後手の「7七と」に、8九香9八金 では先手勝てない。
 しかし、後手の「7七と」に、4三馬(図)があった。これが、唯一の先手勝ち筋になっている。
 この図で、「先手良し」なのである。

 ここで〔な〕8七桂成、〔に〕4二銀右、〔ぬ〕4二歩、〔ね〕7六桂などがある。
 〔な〕8七桂成はすぐに「8七」で清算する手。
 〔な〕8七桂成、同馬、同と、同玉、6二銀右、5四歩(次の図)

変化7五桂図07
 5四同銀に、3四歩、同銀、6一竜のように攻めていって、先手優勢。
 〔な〕8七桂成はこのようになる。

変化7五桂図08
 手順に5一を守ることのできる〔に〕4二銀右(図)のほうが、後手は一手早く攻めることができる。
 〔に〕4二銀右には、5四馬。
 以下、やはり8七桂成、同馬、同と、同玉。
 そこで6九角、7八歩、7七歩が後手の攻めの一例だが、先手は4三歩(次の図)

変化7五桂図09
 やはりこれでも先手の攻めのほうが早い。
 図の4三歩では代えて7七同玉、7六歩、8八玉、6六銀、7九金のような展開も先手は選べたが、それはまだ手数のかかる戦いになる。
 4三歩は決着をつけに行った手で、次の4二歩成の後の後手玉の攻め方(詰ませ方)がわかっていれば、この手が指せる(もちろん4三同銀なら5一竜で先手が勝ちに近づく)
 後手7八角成がちょっと怖い。以下9八玉(9七玉は7九馬で先手負け)、7六桂、8九香、8五金(同歩なら8九馬、同玉、8六香の狙い)、4二歩成、8六金。
 後手玉を詰ませることができれば先手勝ち。3一銀、1一玉、2二金、同銀、同玉、3一銀、3三玉、5三飛、2四玉、3六桂(次の図)

変化7五桂図10
 先手勝ち。

変化7五桂図11
 〔ぬ〕4二歩。 この手には9八馬だが、そこで8七桂成から清算して馬を取りにくるのは〔な〕8七桂成の場合とほぼ同じになる。
 だからここで、それ以外の手段があるかどうかを考える。
 そこで、6一歩だ(次の図)

変化7五桂図12
 6一歩(図)が“ひねりだした”というような手。
 同竜は、8七桂成、同馬、同と、同玉、4三角が、“王手竜取り”で、こうなると後手良し。
 だからここでは、8九香と受ける手が考えられる手だが、他に、攻める手で4一飛がある。
 以下はこの4一飛の後の展開を見ていく。4一飛は、次に3一金のねらい。
 4一飛に、8七桂成、同馬、同と、同玉、7四角(次の図)

変化7五桂図13
 後手は、先手に3一金と打たれてからでは忙しくなるので、8七桂成以下、清算して角を取って、7四角(図)と、またまた工夫の手を指してきた。
 以下、5一飛成、6二銀右、6一竜右、5一歩、5四歩(次の図)

変化7五桂図14
 ここで5四歩を受けるなら、6五角 がある。しかし9七玉、5四角に、5七香があり、以下4三角、5二歩で先手良し。5二歩を同角は、同竜、同歩、3一角、1一玉、3四歩で、先手勝ち。
 ここからは 2九角成(桂馬を取って攻め合い)以下を示しておく。
 以下、5三歩成、7五桂、9七玉、6五馬、8八香、9五歩、6二竜(次の図)

変化7五桂図15
 後手の攻め駒が足らない。先手は次に5一竜右と入ればよい。
 先手勝ち。

変化7五桂図16
 最後は、〔ね〕7六桂。 6四桂に打った桂馬を活用する手。
 これには、先手8九香と受ける(9八金もある)
 以下4二銀左(4二銀右だと5四馬がまた銀取りになる)、2五馬、6六銀、7八歩、同と、3四金(次の図)

変化7五桂図17
 2三金以下の“詰めろ”。 先手勝ち。


変化7五桂図06(4三馬図、再掲)
 結論。 後手の「7五桂」からの攻めには、9七玉、7六歩、7八歩、6七と、3三歩成、同銀、5二角成、7七歩成、同歩、同とに、この “4三馬”(図)の好手があって、先手優勢となる。




≪最終一番勝負 第33譜 指了図≫ 6七とまで

 後手≪亜空間の主(ぬし)≫の指し手は、△6七と だった。

 実戦中の“感覚”では、後手の△6四桂がさえない手で、「先手がよくなったのでは?」と思っていた。
 実際には、後で調べた結果からすれば、△6四桂以外でも後手が良くなる手はなかったので、仮に△6四桂以下の実戦の進行が先手良しなのだとすれば、その一手前、先手が▲6七歩と歩を打って受けたところでは、すでに「先手良し」になっていたことになる。 
 (ただし、コンピューターソフト「激指14」の評価値は▲6七歩のところでは[ -350 互角 ]であった)


 そうであるなら――つまり、▲6七歩のところで後手がすでに悪いとすれば――その前に、先手が4一角と打った時に、そこで「6六と、8七玉」としてから、3二歩と受ける手ならどうだったか。
 ――――というのが、次の研究である。


[調査研究2:3二歩に代えて6六との変化]

4一角図
 先手が4一角と打ったところまで戻る。
 ここで実戦の進行は3二歩だったが、その前に 6六と を入れてどうか(次の図)

6六と図
 6六とに、8七玉。そして3二歩と手を戻す。
 これなら、実戦の3二歩に「6七歩」という手はないということだ。後手はこの手順を選ぶこともできたわけである。
 この変化を研究調査していこう。

研究6六と図01
 その場合は、先手は[A]8九香(図)と打つのが良さそうだ。
 するとこの図は、前譜で研究調査した、3二歩図での「8九香」の変化に合流する。この図は、すでに結論が出ている局面ということになる。「先手良し」である。
 そのときの研究では、この図から 後手7五桂 を本筋として調査したが、ここで他の手はないのだろうか。

 ここで 後手7七桂 という手がある。

研究6六と図02
 しかしそれは、3三歩成、同銀、5二角成と攻めていって、先手が良い。以下、5二同歩に、3一金(図)である(3一飛でも先手良しだがこの場合3一金がよりきびしく迫れる)
 ここで8一桂はあるが、同竜と取り、5四角、9七玉、8一角に、6一飛、1四歩、2一金、1三玉、3五金、2四歩、3四歩で、先手勝勢になる。

研究6六と図03
 ところが、7七桂 と打つ前に、9五歩、同歩と突き捨てを入れる(9五歩は手抜きできない)と状況が変わることがわかった。このまだ未調査の変化が、先手にとって容易ではない。
 「9五歩、同歩、7七桂」に、同じように3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一金と進めば、そこで7五桂(図)で、これは後手が良いのだ。つまり結論が逆になる。
 7五桂に、9筋に玉を逃げるが、たとえば9八玉と逃げても、9七歩、同玉、9六歩、同玉と結局9六まで玉を吊り上げられ、そこで6九角と打つ手がある(次の図)

研究6六と図04
 これで、先手が悪い。これが9筋突き捨ての意味。だから「9五歩、同歩、7七桂」なら、先手は簡単に攻めていけない。
 ならばどうすればよいのか。

研究6六と図05
 研究の結果、「9五歩、同歩、7七桂」には、5四歩(図)で、先手良しになるようだ。ただし、かなり難解な変化になる。
 先手の5四歩に、同銀や6二銀と後手が応じると、5二角成、同歩、4一飛、3一角という展開になり、これは先手良し。
 だから5四歩には、後手は手抜きして攻めの手を選ぶことになる。7五桂だ。
 先手は9六玉と応じる(9筋の突き捨てを逆用して入玉含みに指す)
 以下、9四歩に、8五金(次の図)

研究6六と図06
 6二銀左、5三歩成、同金(同銀右には7四歩。同銀左には5二角成から攻めがある)、8四金、同銀、同馬、同歩、9四歩(次の図)

研究6六と図07
 こう進んで、少しだが、先手が指せる形勢のようだ。最新ソフトの評価値は[+500]くらい。
 先手が持駒が多く、たしかに先手が良さそうではあるが、実戦的にはまだまだわからない展開だ。後手としては、他の変化で悪いとはっきりしているなら、この順を“勝負”として選ぶのもあったかもしれない。

研究6六と図01(再掲)
 結論としては、この「研究6六と図01」についての、「先手良し」の評価は変わらない。
 ただし、「9五歩、同歩、7七桂」という手があって、実戦的には「互角」に近い変化になり得るということも、新たに判明した。

 しかし、この変化を先手がつまらないと思うなら、この[A]8九香(図)に代えて、[B]9七玉がある(次の図)

研究6六と図08
 [B]9七玉(図)と先逃げした。
 ここで後手は先手玉にどう迫るか。
 〔a〕7七とと〔b〕7五桂が有力手(〔c〕7六とは3三歩成、同玉、5二角成で先手良し)
 〔a〕7七とには、3七飛が絶好手となる(次の図)

研究6六と図09
 3七飛(図)と打って、次に3三香という攻めがある(と金を守る6六銀なら3三香で先手が勝ち)
 それを受けるために3一銀という手があるが(3三香なら4二金で後手良し)、7七飛、6二銀右、3三歩成、同歩、2六香、3二銀、5二角成、同歩、6一竜以下、先手優勢である。

研究6六と図10
 後手〔b〕7五桂(図)ならどうだろう。
 これには、8九香と受ける。
 そこで7七となら、7六歩(同となら3三歩成、同玉、5二角成)で先手良し。この変化は前譜ですでに示してある。
 気になるのは、ここで「9五歩、同歩、7七桂」の変化である(次の図)
 
研究6六と図11
 これは先手がまずい変化に入ってしまったように見える。ここで3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一金は、手順の違いはあるが、9六歩、同玉、6九角で先手が悪いと、すでに上で述べている(研究6六と図03)
 しかし、上の変化と微妙な違いがあるのだ。この場合、後手はすでに二枚の桂馬を盤上に放っている。(「研究6六と図02」ではまだ7五桂は打っていない)
 その違いがあって、先手はここで鮮やかな「勝ち筋」があるのである。
 3三歩成、同銀、5二角成、同歩、2一竜(!)と行く手である(次の図)

研究6六と図12
 なんと、2一竜(図)という手が成立した!
 2一同玉に、6一飛と打つ。この時に、後手の持駒に「桂」があれば、3一桂合でこの攻めは無効だった。しかしこの場合、桂はすでに使ってしまっているので、合駒は「角」か「飛」しかない。
 3一角合なら、後手のねらいの9六歩、同玉、6九角の手がなくなり、4一金(詰めろ)と打たれて後手が悪い。角は攻めに使いたい。
 ということなら、3一飛合でどうかということとなるが、以下同飛成、同飛、6一飛、4一飛(4一角には5一金)、同飛成、同玉、5一金、同玉、6三桂(次の図)

研究6六と図13
 なんと、後手玉が詰んでしまった。少し働きの弱かった9一の竜と9三の馬を使った詰筋であり、これは先手にとって相当に気分のよい勝ち方である。

 「後手3二歩(本譜)に代えて6六と」の変化は、以上の研究調査の結果、先手良しである。


[調査研究3:新発見の2六飛]

7三同銀図
 3つめの研究調査は、4一角と打つ前のこの図、「7三同銀図」まで戻る。
 この図では、4つの手―――「8七玉」、「6七歩」、「4一角」、「8九香」―――が有力であったことが、これまでの研究からわかってきている。この4つなら、「先手の勝ち筋」があった。
 「8九香」が「かくれていた手」で、これで先手良しになることが前回の報告で確認された(それは「4一角、3二歩」の後の「8九香」の研究だったが、この4一角打ちは後でも入る)

 そしてさらに、ここで“5つ目の手”があったのではないか―――というのがここからの研究報告である。

2六飛図
 「2六飛」(図)とここで打つ手があったのではないか。これが “かくれていたもう一つの手” である。
 この手を調べてみたいと思ったのは、「一番勝負」が終わったあとのことだが、しかし戦闘中に我々が使っていた「激指14」も、この手を2番目の候補手として候補に挙げていたのであった(評価値は-671)
 (我々が選んだ手は4一角。「激指14」の第1候補手でもあったし、前々から我々は4一角を打ちたくてうずうずしていた)

 もしも「2六飛」を選んでいたら、どうなっただろうか。

 さて、「2六飛」には、後手〔昼〕7五桂〔夜〕6六と が有力手である。 
 先手のこの「2六飛」のねらいは、次に2五香と打って、さらに4五角と打って、「2三」に火力を集中させる狙いである。後手としては、その先手の攻めを空振りにさせたい。

2六飛7五桂図
 〔昼〕7五桂 (図)は、放っておくと次に後手6六とが来る。
 先手が、「2六飛」ではなく2五香と打った場合は、7五桂で後手良しとすでに調査結果が出ている(第27譜
 「2六飛」と打った場合に、後手〔昼〕7五桂 だと、どうなるか。まず、それをこれから調べる。
 この手にはやはり8五歩と突く。以下、6六と、7四桂、9七玉(次の図)

研究2六飛図01
 後手は7七と。
 ここで、この場合「香車」を手持ちにしているので、“8九香”と受けに使うことができるわけである。また、2六に打った飛車も受けに利いている。

 なお、もしここで “9八金” なら、8五金、2五香、8六金、同飛、同桂、同玉、8四銀となり―――(次の図)

研究2六飛図02
 こうなって後手良しになる。

 だから “8九香” と受けるのだが、問題はそれでどっちの形勢がよいかである。
 以下、8五金に、4五角(次の図)

研究2六飛図03
 4五角(図)で“詰めろ”が後手玉にかかった。

 ここで〈1〉1一玉、〈2〉3二歩、〈3〉8六金が後手の応手として考えられる。
 〈1〉1一玉に、3三歩成、同銀、2三飛成と飛び込んでいくと、8六金から先手玉が詰まされてしまう。3三歩成、同銀、2三角成も、2二歩で止められて先手が勝てない。
 〈1〉1一玉には、8七歩が正着になる。これで次に2三飛成をねらえばよい。7六金なら、7五馬、同金、2三飛成だ。
 8七歩に、後手からの8七同桂成、同香、同と、同玉、2四香という手が気になるところだが、それには、2四同飛、同歩、3二金(次の図)

研究2六飛図04
 先手勝ちになっている。

研究2六飛図05
 また、〈2〉3二歩と受けるのは、3三歩成、同銀、2三角成、3一玉に、ここでもやはり7五馬(桂馬を取る)がある。同金に、3四桂(図)として、先手勝勢である(7九角、8八歩、8六金、同飛、2二歩には、3三馬、同歩、2三金)

研究2六飛図06
 ということで、後手の最有力手は〈3〉8六金(図)である。以下同飛、同桂、同玉(次の図)

研究2六飛図07
 そこで 8四銀 があるが、この場合は先手が持駒に「金金桂」と持っているので、8四銀には、同馬、同歩の瞬間に、後手玉が、3二金、同玉、2四桂、同歩、3三歩成、同銀、2三銀以下“詰み”となる。
 この図では、後手は 4四歩 と歩を突くのが好手である。7二角成なら、8四銀と指せる(それは形勢互角)
 なので、先手は、角を見捨てて8五玉とする。
 以下、4五歩、9四玉(次の図)

研究2六飛図08
 わずかながら先手良し。8九香が役立って、“入玉”はできそうだ。
 しかし、“相入玉”(持将棋)になってしまう不安はある。
 最新ソフトの評価値は[+600]くらい。

 〔昼〕7五桂 は、先手良し(ただし実戦的には互角に近い)

2六飛6六と図
 「2六飛」に対する、後手のもう一つの有力手〔夜〕6六と(図)を調査しよう。
 以下、8七玉に、7五桂と打って、以下、9七玉、7七とを決めるのが最善の対応と思われる(受けさせて先手の攻め駒を減らす意味がある)

 先手は、〈ア〉8九香 と〈イ〉9八金 があり、はたしてどちらが良いか(次の図)

研究2六飛図09
 〈ア〉8九香(図)の場合。
 ここで後手は7六歩と打つ(先手から7六歩と打たれると後手は困ってしまう)
 以下7八歩(これを同とは4五角、3一桂、8五歩以下形勢不明の戦いになる)
 7八歩に、後手6九金。先手は4五角と打つが、3一桂と受けられて―――(次の図) 

研究2六飛図10
 先手の攻めの継続がなく、後手良し(7二角成は7九金で後手優勢)
 4五角に代えて、7七歩は、同歩成、7八歩、7六歩以下、“千日手”になる。千日手は先手不満である(この一番勝負の特別ルールで千日手は“亜空間初形図”から先後を入れ替えての指し直しになるが、後手番で勝つ自信がない)
 〈ア〉8九香は、先手よくて千日手という結果になった(先手7八歩を同ととすれば形勢不明のコースに入るが手の選択権は後手にある)

研究2六飛図11
 そこで、先手は〈イ〉9八金(図)に期待することになる。
 後手の手番。ここで(s)7六歩は、2五香、3一桂、4五角で先手良しになる。
 また(t)4四銀上(先手の4五角を消し次に3五銀の狙いがある)は有力だが、調査の結果は先手7六歩以下、先手が良くなった(詳細は省略する)
 そこで(u)8七桂成(8七と)が後手期待の手になる。以下、同金、同と、同玉、7五桂、7八玉。そこで―――(次の図)

研究2六飛図12
 8七で駒を清算したのは、この3五金(図)と打つのが後手の狙いだった。先手の飛車を2筋から追う。
 7六飛に、6六歩、6八歩、6四銀右、4七桂(次の図)

研究2六飛図13
 4七桂(図)と打って、どうやら先手が良いようだ。
 ここで後手の応手はいろいろあるが、3四金 は、5五桂、同銀、3八香(3五歩に8五歩、同金、7五馬から攻め駒を増やして4一銀や2六桂をねらいにする)が効果的になる。
 また4七桂に 6五銀 は、7五飛、同金、同馬で、次に3五桂が残り、先手優勢。飛車を取りにいって逆に悪くなるのでは後手としてもこの作戦は失敗だ。

 4七桂に、後手4五金 以下を解説しておこう。
 その手には2六香と打って、次に7五飛で桂馬を取って1五桂と打つ手(詰めろになっている)をねらいとする。後手は3二歩と打って1五桂が詰めろにならないようにする(今度7五飛は同金、1五桂、8六金で後手良し)
 そこで先手3七桂(金取り)がある。
 以下、4四金、4五歩、3四金、8五歩(次の図)

研究2六飛図14
 8五同金に、7五馬からの“二枚替え”で攻め駒を増やし、先手優勢である。

研究2六飛図15
 どうやら先手良しか―――と結論付けそうになったところで、まだ(v)9五歩(図)が残っているので、これを最後に調査した。すると先手良しの判断は早すぎたと反省することとなったのである。
 9五歩を手抜きして2五香は、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、3一桂、4五角、4四銀上で、後手玉が詰めろになっておらず、後手良し。
 よって、9五歩は、同歩と取る。以下、9六歩、同玉、9四歩。
 これには 同歩9七玉 が考えられる。
 まず 同歩 は、9五歩、9七玉。そこで8五桂がある(次の図)

研究2六飛図16
 8五同歩、同金、1五桂、9六歩、同飛、8四銀(次の図)

研究2六飛図17
 ここで2六飛は、9六歩、同飛、8七とが妙手順で、以下8七同金、9六金、同玉、9五飛以下、先手玉が詰んでいる。
 この図では、2三桂成が最善手で、以下2三同玉、2六飛、2四歩、8六歩(単に8二馬だと9五銀で先手はっきり悪い)、9五金、8二馬、6四銀上、7八歩(単に4五角は8五桂で後手良し)、同と、4五角、6七桂成(次の図)

研究2六飛図18
 6七桂成(図)がまさに“妙手”。
 先手玉は“打ち歩禁”の状態で後手は9六歩が打てなかったが、それを解消する意味の6七桂成である。これで先手玉はこの瞬間、9六歩、8七玉、7七成桂の詰めろになっている。
 後手は、後の変化を考慮して、3三歩成、同玉と、“歩成”を入れてから、6七角と成桂を取る。
 9六歩、8七玉に、7五桂が“両取り”になる。以下、7八玉、6七桂成、同玉に、4七角(次の図)

研究2六飛図19
 後手ペースの終盤である。次に後手は5八角成や7五銀右が狙いになる。
 (最新ソフトの評価値は-500くらい)

研究2六飛図20
 後手の9四歩に、( 同歩 と取らず)9七玉(図) の場合。これならどうか。
 後手は9五歩だが、そこで7八歩は、8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂、7七玉、6六歩、6八歩、3五金で、後手良し。この変化は後手が「桂」を手に持っているから生じた。
 だからここでは2五香と打って、3一桂と後手に桂馬を使わせる。
 そこで 4五角7八歩 がある。

研究2六飛図21
 4五角(図)で、後手“受けなし”に見えるが、まだこの手は詰めろにはなっていない。
 後手は4四銀上と対応する(先手の攻めの催促をした)
 香を渡すと9六香で先手玉がすぐ詰まされるので、3三歩成、同銀、2三角成と、角を犠牲に攻める。以下2三同桂、同香成、1一玉、8四馬(次の図)

研究2六飛図22
 このタイミングで、8四馬(図)で、質駒になっていた金を取った(同銀なら2二金で後手玉詰み)
 後手は2五歩、同飛、2四歩と受ける(同飛なら7九角がある)
 以下、9五馬に、7八角(次の図)

研究2六飛図23
 この図は、後手優勢である。(最新ソフトの評価値は-1200くらい)
 ここで先手7三馬なら、2五歩と飛車を取った手が、次に9六歩、同竜、8七飛以下の“詰めろ”になっている。
 また、2六飛には、8七桂成、9六玉、8四歩で、後手勝勢となる。
 だからこの図で7九歩が考えられるが、以下9六歩、同馬、2三角成で、後手良し。

研究2六飛図24
 4五角 に代えて、7八歩(図)。 これでどうか
 この手はしかし先手にとって“希望のもてない”手である。というのは、ここで後手が7六歩とすれば、ここでもまた千日手がちらつくからだ。
 しかも、実はここから別の“後手有望”の順がある。以下その順を確認する。

 ここで2四歩と、後手から突く手が有効になるのである。
 以下、2四同香、2三歩、同香成、同桂と、後手は無理矢理「香」を入手した。もちろん目的は9六香だ。
 先手は7七歩とするが、それでも後手は9六香(次の図)

研究2六飛図25
 8八玉、9八香成、同香、8七金、9九玉、7八金(詰めろ)、8九香、4四銀上(次の図)

研究2六飛図26
 形勢はともかく、珍しい、面白い図が出現した。とうとう先手玉が“穴熊”になり、先手は大駒四枚を有しているのに対し、後手はなんと 金銀八枚(!)を盤上に散らばせている。

 さて、4四銀上(図)は、先手のねらいの4五角を打たせない意味。
 後手には次に、6九金寄(次に7九金寄が詰めろ)と3五銀(飛車取り)の狙いがある。
 しかし先手にそれを上回る有効手がないようだ(5三歩は6九金寄で後手良し)
 ということでこの図は、後手良しである。(最新ソフト評価値は-600くらい)

 以上の調査の結果、結論は出た。


2六飛図(再掲)
 「2六飛」は、〔夜〕6六と、8七玉、7五桂、9七玉、7七と、〈イ〉9八金、9五歩以下、後手良しである。7七とに、先手が 〈ア〉8九香 を選ぶと、後手がそのつもりなら“千日手”になる。

 結論は、「後手良し、または千日手」。
 つまり、「2六飛」では、「先手の勝ち筋」はなかった

 実はこの今回の報告を書き始めた段階では「2六飛で先手勝ちがある」と考えており、それを報告するつもりでいた。
 ところが本報告のためにしっかり調べなおしていく段階で、結論がくつがえったのであった(それまでは後手9五歩を軽視していた)
 こういうことは、非常によくある。「報告する」という目的があると、調査の精度が急に高まって、研究のレベルが上がるのである。



7三同銀図(再掲)
 なお、今回の「2六飛」の研究手順は、以前に第29譜において研究したことのある、この「7三同銀図」から “8七玉” からの一変化に合流する。8七玉、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七とと進んだとき、そこで「2六飛」と打つ変化だ。以下、7七歩成、同歩、同と(次の参考図)

参考図
 その時の研究報告は、以下8九香、7六歩、7八歩、同と、4五角、3一桂、8五歩以下、“形勢不明”としている。
 これは、今回の調査の〔夜〕6六と 以下、〈ア〉8九香 の変化に合流しており、まったく同じ図になっている。
 今回の研究調査は、その時の研究をより深めたものとなっており、この手順の7八同とに代えて「6九金」が新研究の手になる。すると以下、7七歩からの「千日手」が先手の最善手段となるというのが、今回の新研究の結果である。
 我々(終盤探検隊)としては、「千日手」は選びたくない。それは「形勢不利」と同じだから。

 「2六飛」は、先手が選ぶべき手ではなかったと、この調査研究ではっきりした。




≪最終一番勝負 第33譜 指了図(再掲)≫ 6七とまで


第34譜に続く
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終盤探検隊 part133 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第32譜

2019年09月22日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第32譜 指始図≫ 8七玉まで


   [スーザンは“負け組”なのか]

 「イブのむすめ、スーザンよ。これがあなたのだ。」サンタクロースはひとはりの弓と、矢をいっぱいいれた矢筒と、小さな象牙の角笛とをスーザンに渡しました。「どうしてもやむをえない時だけこの弓を使わなければいけないよ。戦いに出て戦えというわけではないからね。この弓矢は、的をはずすことがない。またこの角笛は、くちびるにあてて吹く時、あなたがどこにいようとも、何かの助けがくるはずです。」
    (『ライオンと魔女』)

 みんなの目にふれたものは―――小さなチェスのこまで、形と大きさはふつうの騎士ですが、重さがふつうではありませんでした。純金でできていたのです。
   (中略)
 スーザンは「とてもたまらないわ。」といいました。何もかも思い出しちゃって――ああ、あの楽しかった時のこと、あのフォーンやよい巨人たちとチェスをやったことや、海で歌をうたった人魚たちやわたしの馬……まざまざ思いだすわ」
    (『カスピアン王子のつのぶえ』)

 「わが妹スーザンは、」とピーターはかんたんに重々しく答えました。「もはやナルニアの友ではありません。」
 「そうですよ。」とユースチス。「ナルニアの話をしたり、なにかナルニアに関係のあることをしようと思ってスーザンを呼んでも、あの人はただこういうだけです。『あら、なんてすばらしい記憶をおもちなんでしょう。ほんとうに、わたしたちが子どものころによく遊んだおかしな遊びごとを、まだおぼえていらっしゃるなんて、おどろきましたわ。』って」
    (『さいごの戦い』)

 「じっさいに鉄道事故があったのだ。」とアスランがやさしくいいました。「あなたがたのおとうさんおかあさんも、あなたがたみんなも――影の国で使うことばでいえば――死んだのだよ。学校は終わった。休みがはじまったのだ。夢はさめた。こちらは、もう、朝だ。」
    (『さいごの戦い』)   

  (C・S・ルイス著 『ナルニア国シリーズ』 瀬田貞二訳より)



 7つの物語からなる「ナルニア国シリーズ」には、“ものいうライオン”であるアスランがつくったナルニア国を舞台にした“戦いのものがたり”で、この戦いに「人間の現実世界」から人間の子供たちが参加するという展開になる。
 参加した“子供たち”は、ポリー、ディゴリー、ピーター、スーザン、ルーシィ、エドマンド、ユースチス、ジルの8人。彼らのナルニアでの冒険は、「よいナルニア国」の創造の力となり、彼らはナルニア国の歴史上の伝説の人物となった(ナルニアと現実世界とでは時間の進み方がまったく違う)
 しかしその「ナルニア国」は、『さいごの戦い』で、くずれさり、しかしまた“新しいナルニア”が現れはじめる。その“新しいナルニア”の物語の参加者に選ばれた子供たちは、「鉄道事故」によって死亡するかたちで「現実世界」を去ることになり、新しい冒険に旅立って行った。

 ただ一人、それに加わらなかった“元ナルニアメンバー”が、スーザン・ペベンシーである。彼女は、ナルニアで活躍した王女でありながら、意識的にか無意識的にかわからないが、そこから脱退し、「現実世界で大人になる」ことを選んだのである。
 スーザンは、ナルニアの冒険に参加した4人のペベンシーきょうだいの一人であり、したがって「鉄道事故」によって、スーザンは3人のきょうだいとそれから父と母とをいっぺんに失い、「現実世界」にひとり残された。
 “ナルニア視点”でみれば、彼女は、最後にアスランに選ばれなかった“負け組”ということになる(“スーザン視点”では、選考会への参加権があるのに興味を失い自ら権利を放棄したとみるべきところか。彼女は、現実世界の人々とともに生きることを選んだともいえる)
 スーザンは、その後、どう生きたのであろうか。いま現実世界でいちおう大人になって生きている私たちからすれば、スーザンのその後の“冒険”こそ、共感のしやすい、身近な気になる物語かもしれない。


<第32譜 かくれていた好手 8九香>


≪最終一番勝負 第32譜 指始図≫ 8七玉まで
 「最終一番勝負」は ▲8七玉 まで進行している。

 今回は指し手の進行を止めて、この図の3手前に戻る。
 研究調査で、新たに「かくれていた手」を発見したのでそれを紹介したい。

≪最終一番勝負≫(=3二歩図)
 この図(3二歩図)である。今、先手の4一角に、後手が3二歩と受けたところ。
 これまでの終盤探検隊の報告では、ここで先手は「8七玉」と「6七歩」の2択で、他の手はないとしてきた。
 そしてここでの「8七玉」では厳密には先手に勝ちはなく(4一角を打つ前の8七玉なら細いが勝ち筋があった)、実戦で我々(終盤探検隊)が選択した「6七歩」が、当時読み切って指したわけではないが、正解だったと思われるのである。(8七玉で勝ちがないことは第29譜で示している)
 ただし、ここにきて、我々の“戦後研究”もさらに進化し、この図での新たな手を発見した。
 つまり、「第3の手」が存在したのだ。

8九香図
 この手である。 「8九香」
 どうやらこの手で「先手良し」という結論も、先に書いておく。

 この「8九香」は、先に先手玉の守備を強化し、次に3三歩成、同銀、5二角成の筋の攻めをねらっている。
 (ただし、8七玉としてから決行しないとだいたい失敗に終わる)

参考図1
 「8九香」と打つ前に、「3三歩成、同銀、5二角成」(図)と攻めていくと、どうなるか。
 以下、5二同歩、3一飛、8一桂(参考図2)

参考図2
 この図となって、先手が不利。8一同飛成、5四角、6五歩、8一角、同竜となった時に、後手の持駒は「飛桂」だが、先手玉は着実にその攻め駒で寄せられてしまう。
 ただし、この後手の5四角の筋をくらっても、先手の玉の状況がもう少し安全ならこの先手の攻め筋は成立する。これを成立させるための、「8九香」という工夫なのである。

8九香図(再掲)
 「8九香」に対して、これから見ていく後手の指し手の候補手は、次の6つである。
   〔一〕6六と
   〔二〕6六銀
   〔三〕6九金
   〔四〕7五桂
   〔五〕7七歩
   〔六〕1四歩

6六と基本図
 まず〔一〕6六と(図)から調べよう。
 以下、8七玉、7五桂に、9七玉(次の図)

6六と図01
 7七とに、7六歩(次の図)

6六と図02
 後手のと金は「7七」の位置がこの場合はベストポジション。「7七」の位置にと金が居ると、3三歩成、同銀、5二角成と攻めていくと、同歩の瞬間に、7九角と打たれる筋で先手玉が詰めろになる。
 そこで、攻める前に7六歩(図)と工夫するのである。 7六同とと取らせて、そこで3三歩成、同銀、5二角成を決行。5二同歩に、3一飛(次の図)

6六と図03
 もう何度も見てきた手順である。
 ここで8一桂があるが、同竜と取る。以下、8七桂成、同香、同と、同玉、5四角で、“王手竜取り”がかかる。7六金と受け、8一角、同飛成(次の図)

6六と図04
 この図は、先手良しである。
 後手5四角からの「王手竜取り」がかかったが、この場合は飛車を後手にもたれても、先手玉がすぐには寄らない。
 一例だが、ここから5七飛、7七歩、7五歩と攻めてきても、3一角、1一玉、2五桂が後手玉への“詰めろ”で、先手勝ちになる。

6六と図05
 戻って、先手9七玉のところで、後手3一銀(図)が有力手のようだ。これをどう攻略するか。寄せの勉強のために見ておこう。
 3三歩成、同歩、3四歩と攻略する(次の図)

6六と図06
 3四同歩には、3三歩と打って、先手良し(3三同桂には5二角成)
 なので後手は4四銀引とがんばる(3三歩成、同銀は後手有望)
 そこで6一飛と打って、次に5二角成をねらう。4二銀引なら6六飛成がある。
 後手は4二金で勝負するが、5一飛成、4一金、同竜、4二銀引に、8四馬(次の図)

6六と図07
 これで次に3二金から後手玉は詰む。だからここで3二角が予想されるが、3二同竜、同銀、7五馬、7七飛、8七桂で先手優勢である。

 〔一〕6六とは、先手良し。

[追記]6六と、8七玉に、9五歩、同歩、7七桂 が実は手強い手順で、それについての研究を次の第33譜(研究調査2)にて行っている。結果は「先手良し」ではあるが、評価値は[+500]くらいで、実戦的には互角に近い。
 したがって、先手は「8九香」を選ぶならば、この変化を覚悟しなければいけないということになる。


6六銀基本図
 〔二〕6六銀(図)には、〔一〕6六とと同じように8七玉で先手が良い。
 8七玉、7五桂、9七玉、7七銀成と進んで、そこで7八歩と打つ(次の図)

6六銀図01
 なお、この手で7六歩もあるが、8七桂成、同香、6六とで、次に7六とをねらう手がこの場合はある。ここが6六銀から攻めてきた場合の特徴だ(厳密にはそれでも8九桂、7六成銀、7七歩で先手がやれそうではあるが)
 7八歩(図)は、やはり「7七」のベストポジションをくずす意味。7八同成銀でも、7六成銀でも、3三歩成、同銀、5二角成と攻めていけば先手良しになる。
 だから後手は銀損覚悟で7六歩と応じる。以下、7七歩成、同歩成、7八歩、7六歩(次の図)

6六銀図02
 先手は銀を得した。
 「7八歩、7六歩」を再度入れたのは、そうすることで後手に「7六」のスペースを埋めさせて、あとで6六と寄~7六と寄のようなと金の活用を消した意味がある。用心深い配慮である。
 さて、ここで先手はどう攻めるか。銀を得して、先手有利になっているが、7七歩では“千日手コース”でおもしろくない。
 「7七と」が居ると、3三歩成、同銀、5二角成とは攻めていけないが……

 ここは、3三歩成、同銀に、3一銀がある(次の図)

6六銀図03
 いま得た銀をここに使う。3一同玉に、5二角成。この攻めなら、角を渡さず攻めていける。
 以下、4二銀左に、3三歩(次の図)

6六銀図04
 後手は4二銀左と受けたが、代えて4二銀右は4一飛、2二玉、3四歩で寄り。また4二銀打と堅く受けるのも、8五歩、7四金、5四歩で先手の攻めは止まらない(以下6二銀左、4一飛、2二玉、7五馬、同金、3四桂)
 4二銀左と受けたのは、攻めのために銀を温存することと、3三からの玉の脱出を視野に入れた意味がある。しかしその手には、先手3三歩(図)がこの際の好手になる。これを同歩は、5一竜、同銀、4一飛から後手玉詰み。
 3三歩に4一銀と受けても、3二歩成、同玉、3三歩、同桂、1一飛で寄り。
 よって後手は4一桂と受け、以下、3二歩成、同玉、3三歩(同玉には4一馬)、同桂左、1一飛(次の図)

6六銀図05
 1一飛(図)と打つ。後手は2一銀と受けるしかない。
 そこで先手は9八金と受けを強化しておく。これは次に、2一飛成、同玉、4一馬と攻めていくための準備である。
 後手は3一歩で、その順を先受けするが、それでも予定通りに2一飛成、同玉、4一馬(次の図)

6六銀図06
 2二銀、同玉、3四桂からの“詰めろ”になっている。それを3八飛のように受けても、2四桂、同歩、2三銀が決め手になる。
 だからこの図では、後手は2四飛しかなさそうだが、それに対しては、3五銀と打って、2七飛成に3四桂で、先手勝ちとなる。

 〔二〕6六銀も先手良し。


6九金基本図
 次は後手〔三〕6九金。
 以下、8七玉に、7九金。8九に打った香車を取りに来た(次の図)

6九金図01
 ここで3三歩成、同銀、5二角成と、先手の狙い筋の攻めを決行すると、5二同歩、4一飛に―――(次の図)

6九金図02
 8一桂(図)で先手が悪い。

6九金図03
 だからここで「5四歩」(図)と打つ。“敵の打ちたいところへ打て”の手で、後手がこれにどう応じても、もう後手からの“5四角”は打てない。
 ここで後手の応手は〈a〉5四同銀、〈b〉6四銀左上、〈c〉6二銀左、〈d〉4四銀上とがある(5四歩を放置して8九金は後手悪い)
 〈a〉5四同銀、または〈b〉6四銀左上なら、そこで待望の攻め「3三歩成、同銀、5二角成」が有効になる。
 〈b〉6四銀左上で見ていこう。3三歩成、同銀、5二角成、同歩に、3一飛(次の図)

6九金図04
 先手勝ちになった。
 このような展開が、先手の狙い筋である。8九香は、こういう戦いのための準備で、先手玉に簡単に“詰めろ”がかからないように前もって受けた手なのである。〈a〉5四同銀、〈b〉6四銀左上なら、この筋で先手が勝つ。

6九金図05
 「5四歩」に、〈c〉6二銀左(図)。 この手は「7一」や「5一」に受けが利く分、攻略が難しくなる。
 それでも、3三歩成、同銀、5二角成から攻めていく。同歩に、4一飛。
 以下、7五桂、9七玉、5一桂、3一金、1四歩(次の図)

6九金図06
 後手が7一歩でなく、5一桂と受けたのは、先手に4三飛成のような活用をさせないため。
 1四歩(図)で、後手は脱出口を開いた。どう攻略していくか。
 2一金、1三玉に、3五金と打ち、2四歩に、2五桂、同歩、3七桂という活用があった。以下、2三玉、2五桂、4四銀に、2二金(次の図)

6九金図07
 2二同玉に、5一竜(桂馬を入手)、同銀、3四桂、2三玉、2一飛成まで、ピッタリとフィニッシュできた。

6九金図08
 〈d〉4四銀上(図)
 この場合は、3三歩成としても、同銀引で、無効。
 なので単に5二角成から攻めていく。同歩に、4一飛、3一角(これしか受けがない)、4五歩(次の図)

6九金図09
 4五同銀は5三歩成、同歩、5二金と攻めていける。
 よって、後手はここで攻めてくる。7五桂、9七玉、8九金、4四歩、同銀。
 そこでどう攻めるかが問題になるが、5一銀と打つ手がある(次の図)

6九金図10
 後手に銀を渡すと先手玉が8八銀から詰んでしまうから、この5一銀(図)の攻めはしっかりした読みがないと指せない手だ。
 5一同銀なら、3一飛成、同玉、5一竜以下詰む。
 よって、後手はここで1四歩。後手玉の逃げ道ができた。ここで4二銀成(不成)は、同銀、2一飛成、1三玉となって、先手がまずい。
 先手は2五金。“待ち駒”だ。(これで次は4二銀成と攻めていけるし、相変わらず5一銀は3一飛成以下詰みだ)
 後手はもう受けが難しいので、先手4二銀成よりも早い攻めを繰り出すしかない。
 そこで、9五桂(先手玉への詰めろ)。 これを先手は同歩と取り、同歩に、8八桂と受ける(次の図)

6九金図11
 先手が勝ちになったようだ。
 後手はまだここから、8八同金、同玉、7六桂、9八玉、8七香で“詰めろ”が続くが、9七玉、8八香成、7七金と先手は受けて、それ以上は続かない。

 〔三〕6九金も、先手良し。

8九香図(再掲)
   〔一〕6六と → 先手良し
   〔二〕6六銀 → 先手良し
   〔三〕6九金 → 先手良し
   〔四〕7五桂
   〔五〕7七歩
   〔六〕1四歩

参考図3
 さて、「3二歩図」(「8九香」と打つ前の図)から、8九香と打たずに、5四歩と行くと、7五桂(図)と打たれる。
 以下8五歩、6六と、8六玉、7四桂、9七玉、7七と、8九香、8五金、8七歩、8四銀となって―――(次の図)

参考図4
 後手優勢。先手の5三歩成が間に合わない。図以下は8二馬、7六金、5五馬、4四銀で、後手優勢。
 この後手7五桂以下の順を避けるために、「6七歩」と受けて、7五桂、8五歩の次の“6六と”と消したのが本譜の進行だった。

7五桂基本図
 〔四〕7五桂(図)。
 「8九香」と打った場合、この〔四〕7五桂への対策はできているのだろうか。これは、今回のテーマの最重要ポイントとなるところで、この結果が、「8九香」の手が成立するかどうかの命運を握っているといえる。

 図以下、8五歩、6六と、8六玉、7四桂、9七玉と進む(次の図)

7五桂図01
 ここが後手の分岐点で、[ア]8五金、[イ]7六と、[ウ]7七とがある。
 まず[ア]8五金は、そこで3三歩成、同銀、5二角成の攻めを決行する(次の図)

7五桂図02
 5二同歩は3一飛で、先手勝ち。
 だからここで後手は7七と。放置して5一竜だと、8六金以下、詰まされてしまう。
 先手困ったように見えるが、このピンチを切り抜ける好手がある(次の図)

7五桂図03
 7五馬(図)である。急所の桂馬をはずした。
 7五同金に、5三馬、8六金、同馬、7九角、8八歩、8六桂、5一竜(次の図)

7五桂図04
 5一竜で先手が勝ちになったように思えるが、ここで9八桂成という妙手がある。同玉は7六角以下詰まされてしまうところだ。
 したがって、9八桂成、同香と進み、6四角、7五歩、7六と、6五金(次の図)

7五桂図05
 どうやら「先手良し」が確定したようだ。

7五桂図06
 [ア]8五金は先手2枚の盤上の角が活躍して先手良しになった。
 代えて後手[イ]7六と(図)ではどうだろう。
 ここで角を渡すと7九角、9八玉、8六桂で詰まされるので、5二角成の攻めはできない。
 よってここは8四歩とするが、後手は6六銀で戦力を足してくる。7七銀不成(成)を防いで先手は7八歩。
 そこで6七銀不成には、3六飛の好手がある(7八銀不成には7六飛)
 だから後手は7七歩。
 先手苦戦に見えるが―――(次の図)

7五桂図07
 9五歩(図)で、玉の上部脱出を図る。同歩なら、9四馬、7八歩成、9五馬で、9一の竜も働いてくる。
 7八歩成、9六玉に、後手8四銀。
 先手は9四馬(次の図)

7五桂図08
 9四馬は、7六のと金の“取り”になっている。
 後手は7七銀成とするが、そこで先手は5二角成がある! これを同歩は、8四馬、同歩として、3三金以下、後手玉に“詰み”があるのだ(3三同銀は2一飛成から、3三同歩は、3二金以下)
 なので後手は5二角成を放置して8九と。以下、7四馬、8七桂成、7八桂(次の図)

7五桂図09
 7八桂(図)で、“詰めろ”は受かっている(7八同成銀には7六馬がある)
 ここで9九とには、8四馬左、同歩に、3三金から後手玉が詰む(3三金、同桂、同歩成、同玉、3四金、同玉、2六桂以下)
 よって7二香と攻めるが、それでも8四馬左(次の図)

7五桂図10
 以下、7四香に、8五玉(次の図)

7五桂図11
 図以下、8四歩に、9四玉として、先手玉は安全になる。角二枚を渡したが、攻め駒は十分にあり、先手勝勢である。
 [イ]7六との変化は、結果は、先手の“華麗な脱出劇”となった。

7五桂図12
 3番目の手、[ウ]7七と(図)
 8四歩から同じように8四歩、同銀と進むと、今度は9四馬ではと金取りにならないので先手が悪い。なのでこの場合は8二馬とすることになるが、それははっきりした先手の勝ち筋が見つからない。
 7七とに対しては、「7八歩」と打つのが良い。これを後手はどう応じるか。
 7六と では、上の変化にさらに7八歩をゼロ手で打った形になって先手良しは明らかだ。
 7六歩なら、先手はそこで8四歩だ。以下、8四同銀、8二角成、6六銀に、9八金と受ける。

7五桂図13
 「7八歩、7六歩」の手の交換が、先手にとって得になっていて、この図になれば先手良し。なぜかといえば、ここで後手は 7六とと引いて活用する手が指せない からだ。7六と~7七銀成が指せる形なら、先手が悪いところだった。
 ここでは後手は7八としかなさそうだが、そこで先手は攻めていける。
 3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛で、先手良し。

7五桂図14
 したがって、先手の「7八歩」に、後手は 同と(図)とすることになる。
 ここで8四歩は、8九と以下、はっきりしない。
 なのでここは、すぐに「7六歩」と打って桂馬を取りにいく手を選択するのが優る。
 以下、8九と、7五歩、8五金、7四歩、8四香(次の図)

7五桂図15
 簡単に受かるように見えるが、意外と受けが難しい。
 8七金 には、8八との妙手があるのだ。同玉は7六金で先手悪い。
 なので8八同金だが、8六金、9八玉、7六歩(次の図)

7五桂図16
 先手、受けが難しい。8七歩は7七金で寄せられる。
 7八桂が最善かと思われるが、7七歩成、8六桂、8八と、同玉、8六香、8七歩に、8四銀、9四馬、8五桂で、これも後手が良さそうだ。

7五桂図17
 戻って、後手8四香に対しては、2六飛(図)と打つのが正解手となる。後手の8六金を受けながら、3五桂の攻めを見せた攻防手。
 これに対し“7六歩”(詰めろ)がある。それには、先手8七金と受ける。そこで8八と、同玉、8六金で先手困っていそうに見えるが―――(次の図)

7五桂図18
 ここで8四馬がある。以下、8七金、同玉、8四銀、3五桂(詰めろ)は、攻めの手番がまわって先手良し。

7五桂図19
 2六飛 に、“8六金”(図)以下を見ていこう。
 8六同飛、同香、同玉、8四銀、9四馬、8八と、7六馬、6四銀引、3五桂(次の図)

7五桂図20
 3五桂(図)は、3二角成、同玉、2四桂以下の“詰めろ”。
 すでに先手勝勢といえるが、もう少し進めてみよう。
 7五銀左には、9七玉とかわす。以下、4七飛、8八玉、2七飛成。これで2四桂以下の詰めろは消えた。
 先手はどう勝ちを決めるかという場面。いろいろあるが、3三歩成、同銀(同玉には4五金)、3一金がまぎれの少ない決め方(次の図)

7五桂図21
 3一同玉に、5二角成、4二金、5三馬、同金、5一竜、2二玉、1一銀、同玉、3一金(次の図)

7五桂図22
 1一銀、同玉と捨てて、後手玉の1四歩~1三玉のような脱出の可能性を消して、図の3一金で“必至”となった。「角銀」と駒を渡したが、先手玉には詰みはないので、先手勝ちが確定。
 これで[ウ]7七とも先手良しが判明した。

 以上、〔四〕7五桂は、きわどい変化ばかりだったが、どうやら「先手良し」である。

7七歩図基本図
 〔五〕7七歩(図)は、後手が“苦心して編み出した”という感じの手。
 これを同玉と取るのは、7五桂で先手のその後の勝ち筋がはっきりしない。
 「5四歩」が良いようだ(次の図)

7七歩図01
 ここから、〔G〕6四銀左上と〔H〕4四銀上、〔I〕7五桂とを後手の有力手としてみていく。

 まず〔G〕6四銀左上。この場合は単に5二角成とする。
 以下7五桂(詰めろ)、7七玉、7六歩、8八玉、5二歩、4一飛、3一角、3七桂(次の図)

7七歩図02
 3七桂(図)で、実は後手玉は“詰めろ”になっている。3三金、同桂、同歩成、同玉、3四歩以下。
 後手はその詰めろを受けて、5一桂。
 そこで6一竜が先手の好手。以下、6七と、9七玉、7七歩成、3三歩成(次の図)
7七歩図03
 3三歩成に、後手がこれを何で取るかで攻め方を決める。3三同桂なら、5一竜、同銀、3四桂で後手玉詰み。
 3三同歩は5二竜で、次に4二竜からの“詰めろ”。
 そして3三同玉には、5二竜。以下、9五歩に、4二竜、同角、3四歩(次の図)
7七歩図04
 以下、後手玉は“詰み”。

7七歩図05
 「5四歩」に、〔H〕4四銀上(図)。
 先手「5四歩」に、同銀や、6二銀引の場合も、上と同じように5二角成から攻めて先手が良くなるのだが、この〔H〕4四銀上の場合だけは、それでははっきりしないので、攻め方を変える。
 この場合は、5二角成とすぐにいかず、6一飛(図)と打つのが良い。
 対して、後手は3一桂(何も受けないと5二角成があった)
 以下、7九歩、6六と、8七玉、7五桂、9七玉、7六とが予想される手順。
 そこで「4五歩」と打つ(次の図)

7七歩図06
 4五歩(図)を 同銀 には、3三歩成、同玉、6五飛成と指す。
 以下8七と、同香、6四銀右上、6八竜となって(次の図)

7七歩図07
 先手が良い。

 よって、「4五歩」に、後手はこれを手抜きして攻める順を考える。6二金 という手がある。これは飛車をどかして、6九金とこの金を使う意味だ。
 6二金、7一飛成、6九金、4四歩、7九金。
 どちらの攻めが早いかという競争になった。先手玉は次に8九金で“詰めろ”がかかる。
 先手はスピ-ドアップで、1一銀と攻めを加速させる(次の図)

7七歩図08
 1一同銀に、3二角成、2二銀、4三歩成、同桂、3三歩成、同銀左、5一竜(次の図)

7七歩図09
 飛車を渡しても先手玉はまだ詰まない。
 なので5一竜(図)の攻めが利く。同銀に、3三馬、同桂、5一竜、2一飛、3二金で、先手の勝ちになる。

7七歩図10
 先手「5四歩」のところまで戻って、後手〔I〕7五桂。
 これは先手「5四歩」を相手をしないで攻めようという方針だ。
 この手には、8五歩。 以下、6六と、8六玉、7四桂、9七玉、8五金、5三歩成、7六と、8七歩(次の図)

7七歩図11
 これはどちらが勝っているか。後手玉はまだ“詰めろ”ではない(5二とが詰めろになる)
 だから後手は“詰めろ”で先手玉に迫る必要があるが、6六銀7八歩成 が詰めろでこれで後手が勝てそうに見える。
 しかし 6六銀(や7八歩成)には、先手7五馬という切り返しがある。以下、同銀引に、5二と(次の図)

7七歩図12
 こう進めてみると、はっきり先手勝ちになった。

 なので後手は「7七歩図11」から、8七桂成 と攻めるしかなさそうだ。以下、同香、同と、同玉、8六金、8八玉と進む(次の図)

7七歩図13
 ここで先手のおもな持駒は「飛金銀桂」となった。後手玉に“詰み”はまだないのだが、ここで後手が 6六銀 と指してくれば、6六同銀、同桂として、銀が一枚増えたことで、後手玉に“詰み”が生じる。
 詰み筋は、3三歩成として、同桂は3四桂から詰み。同玉には、3六飛、3四香、4五桂、2二玉、3二角成、同玉、3四飛以下。そして同銀は、3二角成、同玉、4一銀、同玉、5二とから。
 また、後手が「香車」を使って先手玉に“詰めろ”をかけてくれば、その瞬間、3三歩成から(同玉の時に3五飛に香車の合駒がないので)“詰み”が生じるのだ。やはり3三歩成、同銀、3二角成以下の筋で。

 だからこの図で、後手が先手玉に“詰めろ”をかける手段は限られてくる。「香車を手放さず、6六銀以外の手で“詰めろ”をかける」という条件を満たさなければならない。
 そうすると、どうやら、6六桂 しかないようだ。
 しかし、6六桂 に、7九歩と受ければ、やはり後手は「香車」を使わないと攻めることができない。

 つまり、この図はすでに「先手勝ち」になっているのである。
 この図から、6六桂、7九歩、8七香、9八玉、7八歩成と進んで、以下後手玉の詰み筋を確認しておくと、3三歩成、同銀、3二角成、同玉、4一銀(次の図)

7七歩図14
 2二玉なら、3四桂があるので、ピッタリ“詰み”。
 4一同玉以下は、長手数になる。4一同玉、5二と、同玉、5四飛、5三角(銀)、5一竜、同玉、5三飛成、5二銀(角)、6三桂、4一玉、3二金、同玉、5二竜、4二銀、3三歩、同玉、2二角以下。

 〔五〕7七歩も、先手良しが結論である。

1四歩基本図
 6番目の候補手〔六〕1四歩(図)は、後手の“ふところ”を広げた手。
 調査した結果、この手には、6七歩 が良いようだ。(8七玉 もあるので後述する)
 (8九香を打つ前に)単に6七歩と打った場合と比較して、先手8九香と後手1四歩の手の交換になっているが、これはどちらが得しただろうか。
 ここで後手の手番だが、7四銀が考えられる(6六歩は、8五歩で先手良し)

 そこで先手に“好手”がある(次の図)

1四歩図01
 1五歩(図)。 後手の1四歩を逆用する攻め筋である。1五同歩なら、1三歩とし、同香に、1二歩(同玉なら3二角成がある)の攻めがある。
 だから後手は端を手抜きして攻めてくるしかない。
 7五桂、8五歩、6四桂、8六玉、8五銀、9七玉、9五歩、1四歩(次の図)

1四歩図02
 ここで後手に気の利いた攻めがない。
 6七と、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、1三金(次の図)

1四歩図03
 端攻めが決まり、後手玉が詰んだ。

1四歩図04
 これで〔六〕1四歩は先手良しの結論が出たが、6七歩 に代えて、8七玉(図)もあるので、参考のために見ておこう。ただしこちらはたいへんにきわどい変化になる(以下の展開がスリリングで面白いのでぜひ紹介したい)
 後手は7六歩。
 これに対して、7八歩では、6七とで、先手が勝てないようだ(この判断が難しいところ)
 7六歩を受けないで、1五歩とここでも端攻めに行くのがこの場合唯一と思われる先手の勝負手段だ(次の図)

1四歩図05
 1五同歩なら、(この場合は三歩持っているので)1三歩、同香、1四歩、同香、1三歩の攻めが速く、先手良し。
 後手は 7五桂 と打ち、9七玉に、7七歩成。
 8九香で先受けしてあるので、この手が詰めろにならない。先手1四歩。
 ここで後手6六と寄。次に7六と寄で先手玉に詰めろがかかる。
 先手は1三歩成。以下、同香、同香成(次の図)

1四歩図06
 1三同桂に、5二角成。(1三同玉には、1四歩、2二玉、1三香で先手良し)
 以下、7六と寄に、8八香打(次の図)

1四歩図07
 先手良しである。
 後手はここで9五歩や8七香と攻める手があるが、1二歩または4一飛で“詰めろ”をかけて先手勝ちになる(1二歩に同玉なら、3三歩成、同歩、3二金。後手9五歩~9六歩は同馬と取れる)

1四歩図08
 今の手順を途中まで戻って、7五桂 に代えて、7七桂(図)としたのがこの図。
 この手が好手で、これで先手負けになると、最初調べた時には思っていたが……
 図以下、1四歩、8九桂成、7八歩、7五桂、9七玉、6六と、1三歩成(次の図)

1四歩図09
 1三同香、同香成、同桂、5二角成(同歩は後手玉が詰む)、7七歩成、同歩、同と。 
 一見、これで先手玉に受けがなく先手負け、に見える。ところがそうではなかった―――(次の図)

1四歩図10
 4三馬(図)があって、先手の指せる局面になっているのである!
 4三馬は、先手玉の詰めろを受けつつ、後手玉の詰めろになっている。そして4三同銀と取れば、2一金、同玉、5一竜、3一合、1一飛以下後手玉は詰むので、この馬は取れない。
 だからここで後手は8七桂成、同馬、同玉と清算することになりそうだが、持駒の多い先手が優位の形勢である。

1四歩図11
 戻って、先手9七玉の時に、後手 6六と の手に代えて、6二金(図)が手強い手である。しかし正確に指せば、先手が勝てる。
 6二金の意味は、後手は次に3一玉として角を取ろうということである(だからここで1三歩成では、先手が負ける)
 まずここで3三歩成とする。後手は同玉。
 そこで正着は、8五歩。

1四歩図12
 8五歩(図)。 これが重要な手である。この歩を突くことで、先手玉が広くなった。
 後手の7四金に、そこで、4五金と打つ。3四飛以下“詰めろ”
 後手は3四香と受ける。以下、3五歩に、2二玉、1三歩成(次の図)

1四歩図13
 先手はもう3四歩と香を取っている余裕はない(それでも後手に香車を使わせた分先手玉が安全になったという意味はあり「4五金、3四香、3五歩」の手は必要だった)
 1三歩成(図)に、後手は3一玉。次に4一玉で角をタダ取りされてしまう。
 先手は5二歩。後手4一玉なら、5一歩成、同銀、3一飛、5二玉、5一飛成以下、後手玉が詰む。
 よって、後手は6一歩と底歩で二重に受ける。
 先手は6三歩。4一玉(角を取る)に、6二歩成(金を取る)。
 ついに後手は角を取った。その角を7九に打つ(次の図)

1四歩図14
 この時のために、先に8五歩を突いておいた。8六玉(図)と逃げるスペースがある。
 6八角成、9七玉、8五金に、5一歩成以下、後手玉詰み。先手勝ち(6二銀左としても、6一竜で後手玉の詰めろはほどけない)
 以上、8七玉 の結果は、これも先手良しと出た。

 〔六〕1四歩は、6七歩または8七玉の後、1筋を攻めて先手良し。


8九香図(再掲)
 結論は出た。 「8九香」で、先手良しである。
   〔一〕6六と → 先手良し
   〔二〕6六銀 → 先手良し
   〔三〕6九金 → 先手良し
   〔四〕7五桂 → 先手良し
   〔五〕7七歩 → 先手良し
   〔六〕1四歩 → 先手良し

≪最終一番勝負≫(=3二歩図)
 つまりその一手前のこの図では、先手には勝ちにつながる手が2つあったということになる。
  「6七歩」 → 先手良し(実戦の進行。まだ調べ切っていないが先手良しと思われる)
  「8七玉」 → 後手良し(第29譜 で後手良しと結論が出た)
  「8九香」 → 先手良し

≪最終一番勝負≫6七歩まで
 実戦は、「6七歩」を選び、6四桂、8七玉と進んだのであった。



≪最終一番勝負≫ 8七玉まで

 先手が少し有利になったのでは、と感じていた。


第33譜に続く




<参考:3二歩図のコンピューターソフト評価値>

3二歩図

「激指14」評価値
 8七玉(-653) 8九香(-675) 6七歩(-749) 5四歩(-955) 8八香(-1079)

「dolphin1/orqha1018」(最新最強ソフトの一つ)評価値
 8九香(-87) 8七玉(-94) 6七歩(-174) 3三歩成(-435) 3六飛(-581)

 「激指」も、最新ソフトも、「6七歩」、「8七玉」、「8九香」を候補手の1~3番手に示している。

 しかし、「激指14」の評価値は-700くらいで、ここでは「後手有利」であるとしている。
 我々はこの「亜空間最終一番勝負」では、「激指14」を使って戦っていた。
 しかし我々はこれを見て、「ここは6七歩と8七玉の2択」と考えていたのである。なぜか「8九香」は、「激指14」がこのように示していたにもかかわらず排除していた。
 どれを選ぶにせよ、「激指」はすでにここは先手苦しいと見ているので、評価値の小さな差を我々は重視する意味がないと思っていた。だから、“勘”によって、我々は「6七歩」と「8七玉」のどちらかを選んだのである(この段階では「8九香」の効果がわからなかったので心に響かなかったということだ)

 しかし最新ソフトでも、「6七歩」と「8九香」と「8七玉」、この3つの手については、先手にとって、どの手が良い手でどの手が悪い手かまだまだ全然判断がついていないことが、この評価値からわかる。つまりこの局面、最新ソフト的には「互角」なのである。
 とはいえ、やはり最新ソフトの力なくしては、今回のような調査はできなかっただろう(「激指14」を使った場合、一局面の調査の結論を出すために、最新ソフトの場合の5~10倍以上の時間がかかる感触である)
 
 我々(終盤探検隊)は、「激指」はこの場合後手を(たぶん後手の玉形のほうが堅いので)過大に評価する傾向があるということを、これまでこの≪亜空間戦争≫を「激指」とともに闘ってきた経験から感じていた。評価値が-700くらいでも、先手が良くなる道は存在する可能性が十分にあると思っていた(これまでもそういうことはたくさんあったので)
 実際、この局面はすでに「先手良し」というのが、調査の最終的な結論である。
コメント

終盤探検隊 part132 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第31譜

2019年09月16日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第31譜 指始図≫ 6四桂まで

 指し手  ▲8七玉


    [うちがわはそとがわより大きいものだ]

 「そうだとも。」ディゴリー卿がいいました。「うちがわはそとがわより大きいものだ。」
    (『さいごの戦い』)

 その時ジルとユースチスは、ずいぶんむかしのこと、それらの荒れ地の国の地下の奥深い洞穴のなかでとほうもない巨人が眠っているのを見たことがあり、この時そのひとの名を、時の翁(おきな)と教えられたことがあるのを思い出しました。そのおりの話では、この世の終わる日に、時の翁は目をさますということだったのです。
 「そうだ。」とアスランがふたりが話をしなくても、うなずいていいました。「これまで夢を見ながら眠っていたあいだは、あのひとの名は、時というものだった。だが、目をさましたいまは、新しい名前になるだろう。」
    (『さいごの戦い』)

 みなさんが、窓の一つある部屋にいて、そのから美しい入り江か、山々のあいだにつづく緑の谷間が見えるとしましょう。そして、その窓と反対側の壁に、鏡がかかっているとします。もしみなさんが窓からふりむいて、ふと、その鏡のなかに、まったくおなじ入り江なり谷間なりを目にしたら、どうでしょう。鏡のなかの海、鏡のなかの谷は、あるいみでは、ほんとうの海や谷とおなじものです。けれどそれとともに、どこかちがうものなのです。まだ一度もきいたことがなくて、知りたくてしかたのない物語ののなかの景色のように、はるかに奥深く、はるかにふしぎなものです。もとのナルニアと、新しいナルニアのちがいも、そのようなものでした。新しいナルニアは、ずっと奥深い国でした。どの岩も花も、木の葉も、はるかに意味のふかいおもむきがありました。
    (『さいごの戦い』)

 「じっさいに鉄道事故があったのだ。」とアスランがやさしくいいました。「あなたがたのおとうさんおかあさんも、あなたがたみんなも――影の国で使うことばでいえば――死んだのだよ。学校は終わった。休みがはじまったのだ。夢はさめた。こちらは、もう、朝だ。」
    (『さいごの戦い』)

  (C・S・ルイス著 ナルニア国シリーズ『さいごの戦い』より 瀬田貞二訳)


 1950年『ライオンと魔女』からはじまったC・S・ルイス著 ナルニア国ものがたりシリーズは、1年に1冊のペースで新作が発表され、1956年7つ目の『さいごの戦い』をもって、ルイスはこのシリーズを完結させた。
 最後は、「キリスト教の終末思想」が反映されたものになっている。「ナルニア」は崩れ去り、しかしそのナルニアのうちがわには、もっと広々とした“新しいナルニア”があり、アスラン(ナルニアの創造主であるライオン)に選ばれたものは、その“新しいナルニア”に行くことができる。
 いままでの「ナルニア」は、“影の国”であることが明らかにされ、また、私たちが生きている現実世界もまた、同様に“影の国”であった。
 現実世界から「ナルニア」の王や王女として重要な時に参加していた子供たちは、「鉄道事故」によって父母ともども死亡し、“新しいナルニア”の冒険に参加する―――という結末である。
 「終末思想」に縁のないものにとっては、“死んだけどあの世でしあわせになりました”というような結末にも思え、すんなりとは受け入れがたいラストかもしれない。(子供たちが全員しっかり老人になるまで現実で生きてそのあとで新世界に行くのなら受け入れやすいのだが)
 なにしろこの子供たちは、アスランが計って殺して魂だけ連れて行ったようにもみえるから。

 C・S・ルイスはアイルランド生まれのイギリスの学者で、1898年生まれ。「ナルニア国シリーズ」を書いていたのは、ルイスが50代のとき。
 つまりC・S・ルイスは2つの世界大戦を身近に体験しているわけである。(第1作目の『ライオンと魔女』は第二次世界大戦中の子供たちの疎開から始まる話だった)
 そして、1950年頃は、アメリカとソビエト連邦の軍拡競争で、世界が不安に満ちていた時代である。この時代の人は、第三次世界大戦がやがて起こるだろうと思っていたようである。
 たとえば日本では黒澤明監督映画『生きものの記録』(1955年)がつくられた。これはある工場の経営者である男が、家族に、全財産をなげうって家族でブラジルへ移住することを宣言するという話であるが、これは、やがて核戦争が起こって地球の北半球は住めなくなる、だから核のもたらす放射能の影響が少ないとされる南半球のブラジルに避難しておこう、という発想である。
 1950年に発表されたアイザック・アシモフ『宇宙の小石』では、地球は核戦争後放射能に汚染され人の住みにくい環境になっている。この設定がアシモフの宇宙ものの作品ではずっと継承されている。やがて人類は宇宙に進出して「銀河帝国」を築いて大繁栄するが、その発祥の地である地球はいつしか忘れ去られるという設定である。(ずっと後の作品で発見された地球が描かれるが、やはり放射能に汚染されたままでもう誰もすんでいなかった)
 つまり「地球は住みにくいから宇宙へ脱出してしまえ」という発想の物語が、この時代、SFではたくさん作られたのである。それほど、「現実世界」はやがてもっと住みにくくになり、人類は滅びてしまうのではないか、という感覚がこの時代の人々の中にはあったのであろう。
 有名なのは1959年映画『渚にて』である。原作はネビル・シュートの小説(1957年)で、この物語では「第三次世界大戦が起こって人類が滅亡する」という様子をストレートに描いている。
 1938年にウラン核分裂が発見されたが、その時点では物理学者でさえ、核爆弾の製造は無理だろうと考えていた。ところが、わずか7年で、その爆弾はつくられ、その威力を世界に見せつけた。
 核分裂による広島型ウラン爆弾には「臨界量」というものがあって、その爆弾の規模には限界があった。ところが、1950年頃に米ソで行われていた水爆実験の「水爆(水素爆弾)」は、広島型の1000倍ほどの威力があった。核融合によって力が生み出される「水素爆弾」は、限界なく大きくできるのである。
 「軍拡競争」の規模と速度が、すさまじかった。
 1950年代という時代は、そういう時代であったから、どうせこの世界はいつまでももつわけがない、というような気分であったかもしれない。
 (世紀末ではなかったが)「終末論」の出やすい、心の中に巨大な暗雲を感じて生きていた時代であったといえる。

 ともあれ、“彼ら”―――ナルニアの冒険体験をした子供たち―――は、“影の国”であるこの現実世界を去り、“新しいナルニア”へと旅立っていったのである。



<第31譜 好転の予感がする>


≪最終一番勝負 第31譜 指始図≫ 6四桂まで
 「亜空間最終一番勝負」はいま、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫が、△6四桂(=王手)と指したところ。
 先譜で述べたが、このを我々(先手をもっている終盤探検隊)は感覚的にこれを「ありがたい、先手が優勢になったのでは」と感じていた。

≪指始図≫ 6四桂まで
 後で研究調査してわかったことは、△6四桂に代えて7四銀や6六歩でも、後手が良くなるわけではないので、その前の先手「6七歩」と受けたところでは、どうやらすでに先手が優勢になっているようである。
 だから後手にとっての“最善手”はもう厳密には存在しない。後手の≪ぬし≫は、それを自覚して、勝負手としてこの △6四桂 を選んだと見るべきなのかもしれない。
 その前に後手は7三同銀とと金を払う手を指している。この手が“悪手”だったのだが、「6四」の位置の銀を「7三」に引いたので、「6四」に空間ができた。そこに「桂」を打つ手は、だから、7三銀引の手を生かした手ともいえるわけである。



≪最終一番勝負 第31譜 指了図≫ 8七玉まで

 △6四桂 には、“王手”であるから、先手は玉を逃げるしかない。
 我々終盤探検隊は、▲8七玉 と指した。この一手と思って指した。


 この「最終一番勝負」の戦闘中は ▲8七玉 以外、考えなかった。
 しかし、後で考えてみると、あるいは「7七玉」もあったか。
 以下、それをいま研究調査してみたい。


[調査研究:7七玉の変化]

7七玉基本図
 △6四桂に、「7七玉」(図)。
 後手の△6四桂は、先手に8七玉と下がらせて6七とを指したい、という意味があるが、この「7七玉」(図)は、それ(6七と)を簡単には指させないという手だ。こういう“意地を張るような手”はだいたい失敗に終わる場合が多いので、感覚的には、戦場からより遠くへ逃げる8七玉のほうが正解に思える。実際にはどうだろうか。
 「7七玉」には、後手6六歩(これが後手の最善手とみる。他に7六歩もあるので後述する)

 そこで2五香と打つ(次の図)

7七玉図01
 この2五香(図)が先手期待の一手。この手は、後手が6四桂と桂馬を使ったので、「2三」の地点を守る駒が一枚少なくなった、それで「2三」をねらうということである。次に2六飛が継続手になる。
 図より、6七歩成、8八玉と進む(次の図)

7七玉図02
 ここで先手の手番なら、2六飛、3一桂、2三香成、同桂、2四金で、後手は"受けなし"になる。後手6六と寄や6六銀ではそれより早い攻めにならないので、後手は受けなけらばならない。
 ここでは〔a〕2四歩、〔b〕6二金、〔c〕3一桂が考えられる。

 まず〔a〕2四歩。これは、同香に2三歩で、先手2六飛がくる前に香車を取ってしまおうという手。
 しかし〔a〕2四歩に、3五金と打つ好手があった(次の図)

7七玉図03
 3五金が気づきにくい手で、後手玉の上空を押さえる好手である。
 後手は2五歩と香車を取るが、先手は5二角成(次の図)
 
7七玉図04
 5二角成(図)で、先手の勝ちが決まった。

7七玉図05
 〔b〕6二金は考えられる受けで、ここで2六飛には、3一玉(角取り)で、これは後手優勢になる。
 〔b〕6二金には、「3三歩成」が良い。同歩なら3二飛から詰みだし、3三同玉は3五飛、3四桂、4五金で先手勝ち。
 だから「3三歩成」は、同銀 か、同桂 だが、同銀 には、3一金と打つ手がある(次の図)

7七玉図06
 なんと3一金の一発で後手玉は"受けなし"になっている。3一同玉に、5一竜で“必至”である。金を渡しても先手玉に詰みはない(8八玉と逃げた形が生きた)

7七玉図07
 先手の「3三歩成」を、同桂 の場合。 これには3四金(図)。
 2五桂に、3三歩と打つ(同銀なら、4三金、3一香、5一竜)
 3一香と受けても、3二歩成、同香、3三歩、同銀、4三金(次の図)

7七玉図08
 3一歩に5一竜、1四歩、2一飛、1三玉、3三金以下、先手の勝ち将棋である。

7七玉図09
 〔c〕3一桂(図)と受ける手が、後手の最善と思われる手だ。
 先手は2六飛。
 そのままなら2三香成、同桂、2四金で寄ってしまうが、ここで6二金として、2三香成、同桂、2四金なら、やはりここでも3一玉で後手良しになる。
 というわけで、先手は他の手を見つける必要がある。
 「6三歩」と打つのが良いようだ(次の図)

7七玉図10
 6三歩(図)に、後手7二金なら、3三歩成とする。同桂は2一金以下、同玉は3六飛以下寄りなので、3三同銀しかないが、そこで5一竜、4二銀右、5二竜(次の図)

7七玉図11
 次に3四歩が“詰めろ”になる。 先手勝ち。

7七玉図12
 よって、「6三歩」には、後手は金取りを放置して攻めあうほうが良さそうだ。
 6六と(図)
 先手は9七玉と逃げ、7七と寄に、7八歩(次の図)

7七玉図13 
 ここで7八歩としたのは、このままだと7六と寄がきびしいから(7八歩と打たず単に6二歩成は、7六と寄、9八金で、これは形勢不明の戦い)
 7八歩が先手の最善手で、後手がどう応じても、後手の寄せが弱くなる。
 7六と引に、そこで6二歩成と金を取る(次の図)

7七玉図14
 これも先手の勝てる将棋になっている。
 7五金には、同馬と取って、同とに、3三金から後手玉詰み。
 6二同銀右(左)には、2三香成で良い。同桂、2四金、3一玉に、5二角成である。

7七玉図15
 先手「7七玉」に対して、7六歩(図)の場合。
 この手に対し8八玉だと、6七と、7八歩、6六銀で、先手悪い。
 ここはしかし、6八玉と逃げる手があり、これが正着(次の図)

7七玉図16
 ここで4九金では、先手に余裕ができるので、2五香と打って先手優勢がはっきりする。
 なので、後手は6九金で勝負だ。6九同玉に、7七歩成。
 以下、5八玉、4六銀、4九玉(次の図)

7七玉図17
 ここで 4七と と、3六桂 とが考えられる。
 4七と 以下は、4八歩、3七と(代えて5六桂もあるが4七歩、3六桂、3九金、4七銀成、5八金で受かっており先手良し)、3三香、3一銀、3七桂、同銀成、3五飛(詰めろ)、4二金、5一竜(次の図)

7七玉図18
 以下、4一金、同竜で、先手勝ち。角を渡しても、先手玉に詰みはない。

7七玉図19
 3六桂(図)には、3八香と打って、2八桂成に、3三歩成とする。
 これを同桂なら、3四金と打ってこの手が2三金、同玉、2一飛以下“詰めろ”になり先手勝勢。
 よって後手は3三同銀と取るが、同香成(次の図)

7七玉図20
 3三同桂なら、1一銀、同玉、3一飛、2一銀(2一香合は2二金以下詰み)、3二角成で、先手勝ちが決まる。
 なので3三同玉だが、これには4五金と打つ(3四飛以下詰めろ)
 3四香に、3五歩、同銀、2五銀(次の図)

7七玉図21
 2五銀(図)は、3四銀、4二玉、3二角成、同玉、3三歩、同桂、同銀成、同玉、3四香以下の“詰めろ”。
 この変化も先手勝ちになった。


7七玉基本図(再掲)
 意外であったが、「7七玉」は先手有望だったようだ。以上のように、研究では、はっきり「先手良し」となり、先手にとって都合の悪い変化は見つかっていない。

7七玉図02(再掲)
 後手6六歩に2五香と打って、6七歩成にこの8八玉と逃げたこの形が、見た目以上に良い形なのである。この玉は、金を渡しても、角を渡しても詰まないので、その分思い切って攻めて行けるのだ。
 これが8七玉(実戦の進行)なら、7五桂と打たれ、9七玉と逃げ、7七とと追われたときに、角も金も渡せない。

 ――――ということは、我々は「7七玉」を選ぶべきところだったかもしれないということになる。(戦闘中はまったく考慮しなかった手なのであるが)

 なお、コンピューターソフト「激指14」の評価値は、「7七玉」は[ -927 後手優勢 ]である。(実戦の「8七玉」は[ -568 ])


≪指了図≫ 8七玉まで



[調査研究:先手が4一角と打たずに6七歩、そして後手6四桂の場合]

≪最終一番勝負≫7三同銀図
 この将棋の手を少しさかのぼって、この図は、先手の7三歩成(悪手だった)に、後手が同銀(これも悪手だった)とした場面。
 そのときの譜で述べた通り、ここでは4通りの手順の選択肢がある。
  (1)8七玉
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉
  (4)4一角、3二歩、6七歩

 実戦は、「(4)4一角、3二歩、6七歩」を選んだのだったが、(2)6七歩を選んだ場合の一変化を、次の研究対象としたい。

6四桂A'図
 「4一角、3二歩」を入れずに、6七歩、6四桂(図)と進んだ場合 である。
 図より、8七玉、7六歩、7八歩、6七とと進む。(「7六歩、7八歩」の手の交換はあってもなくてもだいたい同じに進みそうだが、とりあえず先手に一歩を使わせて持ち歩を少なくさせておくという意味はあるかもしれない)
 ここで、2五香と打つ手がある。

6四桂図01
 この場合もやはり「2五香」(図)。 この「2五香」は、先手にとって「後手が6四に桂馬をつかったから」考えてみたい手となる。
 「2五香」は、「2三」をにらんでいる。次に2六飛と打って、さらに4五角と「2三」に利きを集中させる攻めがある。後手は6四に桂馬を使ったために、受けに使う桂馬が一枚少なくなっており、2五香はそこを突いたのだ。
 2六飛に3一桂と受けても、2三香成、同桂、2四金で受け切れない。
 また、3一銀と銀を受けに使うのは、2六飛、3二銀、2三香成、同銀、3一角がある(次の図)

6四桂図02
 先手の攻めが成功している。

6四桂図03
 だから後手は、7五桂が最善の手になる。以下、9七玉に、7七歩成、同歩、同と、9八金(次の図)

6四桂図04
 この形を決めることで、とりあえず先手に金を一枚使わせた。しかし後手はもう受ける駒がないので、2四歩から勝負することになる(代えて3一銀は2六飛、3二銀、4五角で先手良し)
 先手は2四同香と素直に応じ、以下2三歩、同香成、同飛、2五飛(次の図)

6四桂図05
 2五飛(図)で、王手銀取りだ。3四玉には3七桂(2四歩、4五角)で後手玉は捕まる。
 よって、後手は2四歩。以下、5五飛に、そこで 2二玉3二玉 もあるので後述する)
 2二玉 では、代えて6九金として金取りを避けておきたいが、しかしそれでは7五飛、同金、1五桂で、後手玉は寄せられていた。
 だから 2二玉 と逃げたのだが、そこで先手4五角(次の図)

6四桂図06
 角を手持ちにしていたので、この角打ちが出現した(これが4一角と決めなかった効果だ)
 このタイミングで角を打ったのは、先手の5五の飛車は、5九飛と7五飛の2つ指したい手があり、どちらを指すかを相手の手を見てから決めようという意味がある。
 放置すると、5九飛や8四馬で金を補充してから3三歩成で後手玉は詰む。
 なので後手は2三香と受ける(気の利かない受けだがこれくらいしか受けの手がない)
 先手は5九飛で、金を取る。
 そこで後手の手番だが、早い攻めはない。7六歩か6六歩くらいだが、7六歩 に、3三歩成、同銀、3一銀と攻める(次の図)

6四桂図07
 3一同玉(3二玉なら3四歩)、2三角成、3二銀、5三飛成(次の図)

6四桂図08
 5三飛成(図)で、先手の勝ちになった。5三同金は2二銀、同銀、5一竜以下詰みなので、2三銀とするしかなさそうだが、5二竜で、"受けなし"になる。

6四桂図09
 7六歩 では後手が寄せられてしまうのなら、3二歩(図)と受けるしかない。
 先手は7八歩と打つ。後手の7六歩に、3三歩成。これを同銀は、4一金で寄る。なので、3三同桂。
 以下、7二角成、7四銀、6一馬(次の図)

6四桂図10
 角を成って、今度は横から攻める。次に5二馬がある。それを受ける6二金には、5一馬として、先手が優勢である。

6四桂図11
 戻って、先手5五飛に、後手3二玉(図)の場合。
 この手に対しても、やはり4五角が良い手になる。以下、2三香、5九飛、7六歩に、6三銀(次の図)

6四桂図12
 これで後手陣を攻略できる。6三同金に5一竜で寄り。3一歩と受けるのも、5二銀成、同歩、4一金で、寄りである。
 先手優勢。

6四桂図13
 2三香 と受けても駄目なら、代えて 3一歩(図)でどうか。これは香車を攻めに使うために温存した意味があって、後手は9五歩の攻めをねらっている。
 3三歩成、同銀、1二角成に、9五歩。香車を持っているので“詰めろ”になっている。
 先手はそこで―――(次の図) 

6四桂図14
 7五飛(図)が用意の一手。5九飛(金を取る)を決めないで4五角と打ったのは、この手を含みに残しておく意味があったのだ。この場合の7五飛は受けの手で、同時に攻め駒も増える。
 以下、9六歩、同玉、7五金、同馬、8四銀、2三銀、4二玉、2一馬、9五歩、同竜(次の図)

6四桂図15
 後手玉には“詰めろ”がかかっており、受けも難しい。先手勝勢。


7三同銀図(再掲)
 「7三同銀図」に戻り、この調査の結果、ここから「6七歩、6四桂」と進むと、はっきり「先手良し」になる順があるとわかった。
 先手の「6七歩」に対して、7四銀や6四銀や6六歩でも「先手良し」になることは、すでに前譜で証明を済ませている。
 これで次の「(2)6七歩」が、「先手良し」と明らかになった。
  (1)8七玉 → 先手良し
  (2)6七歩 → 先手良し
  (3)4一角、3二歩、8七玉 → 後手良し
  (4)4一角、3二歩、6七歩 → 実戦の進行

 この2五香の変化は、「4一角、3二歩」の角打ちを入れなかった場合に、有効となる(4五角打ちがあるから)
 「4一角、3二歩」を先に打ってしまうとこの変化がないのだが、それでも―――つまり、実戦の進行の(4)4一角、3二歩、6七歩でも、「先手が良い」のではないか。


参考図
 実戦は、(4)4一角、3二歩、6七歩の後、6四桂、8七玉と進んだ。おそらく次の手は6七とだが、そこで「2五香」はあるのだろうか。
 つまりこの図であるが、「4一角、3二歩」の交換が入っている。角をすでに4一に打ったので、いまの研究手“4五角”がない。
 しかしそれでも、ここから2三香成~2五飛の王手銀取りはあるわけで、これでも先手良しなのでは―――という感じもある。実戦中もこの筋は気づいていた。
 (この参考図についての調査は、また後の譜で)



≪最終一番勝負 第31譜 指了図≫ 8七玉まで(再掲)

 つまり、先手はついに「勝ちになった」のではないか。
 戦闘中も、そのように感じていた。我らがソフト「激指14」の評価値はいまだ後手寄り(-568)であったけれども。



第32譜につづく
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終盤探検隊 part131 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第30譜

2019年09月04日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第30譜 指始図≫ 6七歩まで

 指し手  △6四桂


    [世界のはてにはなにがある?]

 ゆれる甲板をふむ足どりは、堂々としてあぶなげなく、そのしぐさは気品にみちて礼儀正しいものでした。ルーシィとエドマンドには、すぐわかりました。リーピチープです。あの、ナルニアものいうけものたちきっての勇士、ネズミの族長です。二度めのベルナの戦いで消えることのないほまれを勝ちえた者なのです。ルーシィは、以前にもそう思ったように、リーピチープを両手にすくいいれて、ぎゅとだきしめてやりたくてしかたありませんでした。けれども、とてもできない望みだということを、ルーシィは心得ていました。そんなことは、リーピチープの気を悪くするにきまっていましたから。
    (『朝びらけ丸 東の海へ』)

 ルーシィは、ともにある小さな腰かけにすわって、リーピチープとチェスをたたかわせては、ずいぶんと時間をすごしました。リーピチープがチェスのこまをあげるのは、なにしろこまが大きいものですから、盤のまんなかちかくまで動かす場合などは、両手にかかえて爪さき立っていくので、見ていておもしろい見ものでした。リーピチープは、りっぱなさし手で、じぶんのさした手をよくおぼえている時は、たいてい勝ちました。けれども、時々はルーシィが勝ちました。それはネズミのほうが、女王と城がぶつかるおそれのあるところへ、騎士のこまをすすめるようなおかしな手をうつことがあるからでした。それはネズミが時々チェスの遊びだということをふっと忘れてしまって、ほんとうの戦争のことばかり考えて、戦場でならじぶんはこうするという作戦を、騎士のこまにやらせるから、そんなことになるのでした。リーピチープの心は、望みなき望み、死か栄光かを賭けた突撃、さいごの死守のことばかりだったのです。
    (『朝びらけ丸 東の海へ』)

 五日ほどのあいだ、船は南南東の風にまかせて、陸地を見ず、魚もカモメも見かけすに走りました。それから、午後まではげしく雨のふった日がありました。ユースチスはリーピチープとチェスをたたかわして二度負けてしまい、前のようないやらしいじぶんにもどりかけました。
    (『朝びらけ丸 東の海へ』)

 六つめのドアをすぎたころ、ルーシィははじめてほんとうにおどろかされてしまいました。ちょっとの間、ルーシィはたしかに、あの意地のわるそうな、ひげを生やした小さな顔が、壁からとびだして、じぶんにしかめっ面をしてみせたような気がしたのです。そこでむりに足をとめて、そこを見ました。ところがなんの顔もありません。ただ、ルーシィ自身の顔の大きさと形をした小さい鏡があって、鏡のふちの上のほうに髪の毛、下のほうにひげがたれさがっていますから、その鏡を見ると、じぶんの顔が、鏡のふちの髪の毛とひげの間にぴったりはいって、それを生やした顔のように見えるのです。「通りすがりに、横目でちらりとじぶんのかげを見ちゃったのだわ。」とルーシィはひとりごとをいいました。
    (『朝びらけ丸 東の海へ』)

 この冒険のあと、十二日のあいだ、朝びらけ丸はおだやかな風をうけて、すこし東よりの南へむかいましたが、空はたいていよくはれ、大気はあたたかで、鳥かげも見えず、魚も見かけず、ただ一度だけ、右舷はるかかなたにクジラの潮ふくところをながめました。ルーシィとリーピチープとは、そのあいだずいぶんいくどもチェスを戦わせました。十三日目に、エドマンドがマストの見張り台から、右舷前方にあたって、海面から大きな黒っぽい山のようなものがそびえ立っているのを見つけました。
    (『朝びらけ丸 東の海へ』)

 それからリーピチープは、三人にさよならといい、別れをおしもうとしました。けれどもネズミは、よろこびにうちふるえていたのです。ルーシィはここではじめて、そしてこれをさいごに、いつもそうしたいと思っていたことをしてのけました。ルーシィは、両手でネズミをだきあげ、ほおずりをしたのです。
  (C・S・ルイス著 ナルニア国シリーズ『朝びらけ丸 東の海へ』より 瀬田貞二訳)



 『朝びらけ丸 東の海へ』の原題は『The Voyage of the Dawn Treader』である。「dawn」とは「夜明け」のことで、「treader」は、「貿易」とか「商業」というような意味。なので直訳すれば「貿易船夜明け号の航海」となる。
 訳者の瀬田貞二氏はこれを、『朝びらけ丸 東の海へ』と思い切って訳したわけだ。たしかに、「夜明け号」より、「朝びらけ丸」のほうが、あかるい印象になる。
 今回紹介した文の中でも、「じぶん」「おどろかされる」「かげ」「さいごに」など、小学生でも読めるようなやさしい漢字で表せるものを、あえてひらがな表記にしてある。この工夫のおかげで、全体的にのびやかな印象の描写になっている。日本語の「ひらがな」そのものが、あかるさ、のびやかさを持っていることが感じられる。

 『朝びらけ丸 東の海へ』は、海のむこう、すなわち“せかいのはて”まで旅していく話である。帰ってこないかくごで、“はてのはて”まで進んで行ったのが、リーピチープという名の“ものいうネズミ”であった。



<第30譜 揺れる心>


≪一番勝負 指始図≫ 6七歩まで
 先手番をもつ我々――終盤探検隊――は、結局、▲6七歩(図)を選択した。
「8七玉」を選ばなかった。後の研究でここでの「8七玉」は先手が悪いということは、前譜で示している。
 ―――ということは、ここで ▲6七歩 を選んだということは、正しかったかもしれない。(ただしこの6七歩で先手が良くなっているかどうかは、まだ明らかでない)

 なお、コンピューターソフト「激指14」は、この図の評価を、[-669 後手有利]としている。(「8七玉」のほうは[-798])
 後手良しの評価だが、この将棋は後手を過大に評価する傾向がずっと見られるので、これくらいは「互角」と見たほうがよい。この「最終一番勝負」の戦闘中も我々はそのように思っていた。
 いや、先手のほうが良いのでは、とさえ感じていた。


6七歩図(指始図)
 さて、ここでの後手の候補手は次のような手である。
  〔い〕6六歩
  〔ろ〕6四銀右
  〔は〕7四銀
  〔に〕6四銀引
  〔ほ〕6四桂
  〔へ〕3一銀
  〔と〕7五歩

 ▲6七歩 を指すにあたって、我々がもっとも気にしたのは、〔い〕6六歩 の手である。しかしこれには、8五歩で先手がやれると目途が立った。だから ▲6七歩 を選んだのである。

 ところが、指した後、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫の指し手を待つ間に、後手〔は〕7四銀 の変化が気になり始めた。この手は、実は「激指14」の10コの候補手に入っていなかったということもあって、やや軽く見ていたのである。しかし考えてみれば、7四銀や6四銀右と、この銀を活用する手は、むしろ後手の本筋とも思える手で、これらの手を無視するわけにはいかない。
 そして7四銀の手の先を読んで行けば、これは容易ならざる形勢ではないかと、だんだんと息苦しくなってきたのだった。
 我々は、「8七玉」よりも「6七歩」のほうがより良いと判断して、▲6七歩 を選んだのだったが、〔は〕7四銀 に気づいた後は、「8七玉を選ぶべきだったか」という思いが、手を読む合間に、ぐるぐると頭の片隅をめぐっている状態になっていた。

 この図の、我々の読みは次のようなものであった。


6六歩図
 まず、〔い〕6六歩 について。
 ▲6七歩に、後手 〔い〕6六歩(図)は考えられる手だ。これを同歩なら、同とで、6七歩の一手がまったくの無駄手になる。だから先手は他の手を指すしかないが、遅い手だと、6七歩成が来る。

 我々終盤探検隊は、もちろんこの〔い〕6六歩 への対策はできていた。

 〔a〕8七玉、〔b〕3三香、それから〔c〕8五歩 を以下この順で見ていく。

6六歩変化図01
 まず、ここでの〔a〕8七玉 は、理論的にはつまらない手といえる。これを選ぶと、その前の「6七歩、6六歩」の手の交換が、先手にとって得な要素がなくなるからだ。その意味を具体的に示すために、以下の手順を記していく。
 〔a〕8七玉 に、7五桂(図)。 以下、9七玉、7六歩、7八歩、6七歩成(次の図)

6六歩変化図02
 「と金」が二枚できた。これが働くと後手有利になる。
 ここは3三香が先手期待の攻めとなる。以下、3一銀、5二角成、7七歩成、同歩、同と、4三馬、8七と(次の図)

6六歩変化図03
 まず一枚目の「と金」をここで使う。8七同馬、同桂成、同玉、7五桂、9七玉、6九角、8八金、9五歩、9八玉、6七と(次の図)

6六歩変化図04
 「と金」を一枚捨てても、さらに2枚目の「と金」がここで働いてくる。
 図で、7九金と受けるのが抵抗力のある指し方になるが、しかし、3六角成、5一竜に、5四馬がぴったりの手になり、後手優勢である。
 このように、〔a〕8七玉 だと後手の2枚の「と金」がきっちり有効に働いて、先手が悪くなる。

6六歩変化図05
 それでは、〔b〕3三香(図)はどうか。
 後手は3一銀と受ける。
 そこで3七桂は有力だが、4二金、5一竜、4一金、同竜、5四角の展開は、後手良し。

6六歩変化図06
 8五歩(図)のほうが良さそうだ。8五歩、7五歩、8六玉、7四桂、9七玉、8五金、5二角成、8六金、8八玉(次の図)

6六歩変化図07
 8八玉のところ、代えて9八玉は後手が角を取った手が、7六角以下の詰めろになるので、先手は8八玉(図)と逃げた。
 後手は7六桂と打ち、9八玉に、そこで5二歩と角を取る。
 そこで3一飛だと、先手は負かされてしまう。9七金、同玉、7九角から“とん死”だ。
 ここは、だが、7五馬があった(次の図)

6六歩変化図08
 この7五馬(図)が、“詰めろ逃れの詰めろ”。
 後手玉は、3一竜、同玉、5三馬、同歩、5一飛から、詰みがある。
 この図は、先手勝ち。

6六歩変化図09
 しかし、後手の“修正案”があった。8五金 の手に代えて、4二金(図)とする手である。
 5一竜に、6二銀引とする(次の図)

6六歩変化図10
 “6一竜”、6七歩成、5四歩(次の図)

6六歩変化図11
 5四歩(図)を同銀は、5二飛、同金、3二香成、同銀、同角成、同玉、5二竜で、先手が勝ちになる。
 だから、ここで後手は4一金と角を取る。 同竜に、7九角(次の図)

6六歩変化図12
 8七玉に、6六と寄で、後手の勝ちになっている。
 後手玉に詰みがあれば――というところだが、詰みはない。
 しかし、この図でもし3七桂と跳ねてあったら、3二香成、同銀、同竜、同玉、3三銀以下、詰む。―――ということなら、5四歩 に代えて、3七桂 ならどうだ、という発想になる(次の図)

6六歩変化図13
 後手6七歩成に、3七桂(図)
 ここで4一金、同竜と進めば、今度は後手玉が“詰めろ”になっているので、その展開なら、先手が良い。
 しかし、5一歩があった。このままなら4一金と角をタダ取りされてしまう。
 なので、先手は、8四馬、同歩、7四角成と、上部開拓をめざす(次の図)

6六歩変化図14
 先手玉が上部に逃げることができれば、先手が勝つ。
 しかしここで、7七ととされ、8八桂に、6六と(次の図)

6六歩変化図15
 どうも“上部脱出”はまぼろしに終わるようだ。後手勝勢。

6六歩変化図16
 戻って、後手6二銀引の場面で、竜を逃げずに、“3二香成”(図)と勝負してどうか。
 これを同銀なら、3三金と打って、先手優勢になる(以下、3三同金、同歩成、同玉、3二角成、4四馬、3七桂)
 なので、3二同金が正着。
 以下、3三歩成、同金、5二竜、3二歩、5四歩、8五金、5三歩成(次の図)

6六歩変化図17
 8六金、9八玉、9七香、8九玉、1一玉(次の図)

6六歩変化図18
 先手玉は次に後手8七金が“詰めろ”になり、6七歩成や8六桂の継続手もあるのでこの攻めはほどけない。そして、図の1一玉が手堅い好手で、後手への攻めは難しい。
 後手勝ち。

6六歩図(再掲)
 以上示してきた通り、この「6六歩図」で、〔a〕8七玉、〔b〕3三香では先手勝てない。
 しかしこの後手6六歩に対して、我々(終盤探検隊)は、先手が勝てるという見通しがあった。だからこの「6七歩」の手を選んだのである。

 ここで〔c〕8五歩と歩を突くのが正着である。

6六歩変化図19
 8五歩と金取りに突く手は、上でも出てきたが、それは「3三香、3一銀」の手の交換の後であった。それをやらずに、すぐに8五歩(図)が正着手である。(「3三香、3一銀」の場合は後で後手4二金という手が好手になったが、この場合はその手がない)
 この8五歩の手は、いつでもあったが、「6七歩、6六歩」の手の交換をしたこの瞬間こそがねらい目であった。8五歩に、6六とという手が、この場合はできないからである。
 8五歩に、7四金、7五歩、6四金、8六玉となれば、はっきり先手良しになる。そうなれば、3三歩成、同銀、5二角成と攻めても、9四馬~9五玉の“入玉”ねらいでも、先手が勝てる将棋になる。
 よって、8五歩には、7五歩、8六玉、7四桂と切り返してくる。以下、9七玉、8五金に、8八香(次の図)

6六歩変化図20
 8八香(図)。  3三香と打ちこんだ場合には、この香打ちはなかった。
 これが良い手で、どうやら先手優勢である。
 以下、7六金に、3三歩成、同銀、5二角成(次の図)

6六歩変化図21
 5二角成(図)に、同歩なら、3一飛(ここに飛車を打つことで後手3四銀に4一竜を用意した)で先手良し。
 また、4二銀右なら、4一飛と打ち、1四歩、3四歩が予想されるが、これも先手優勢。
 4二銀左には、4一馬と入り、6七歩成に、3三歩で、後手玉は寄りである。

 すなわち、〔い〕6六歩 には8五歩 で先手良し、を結論とする。


6四銀右図
 次は、〔ろ〕6四銀右 (図)
 この手に対し、戦闘中の我々の予定は、「3三歩成、同銀、5二角成」の攻めであった。それでどうなるか。

6四銀右変化図01
 5二同歩、7一飛(受けにも利かせた)、5四角(次の図)

6四銀右変化図02
 先手玉が「7六」の位置にいるので、この角打ちがある。
 以下、7七玉に、8一桂で、先手の“二枚飛車”の攻めが止められてしまう。
 そこで4一飛成(次に3一金を狙う)には、7五桂がより早い攻めになる。また、3一金の詰めろは、3四銀で後手良し。
 6八玉には―――(次の図)

6四銀右変化図03
 6八玉は5九の金を取りながら右方面に玉を逃がす意味だが、6六歩(図)で、先手玉は逃げきれず、この図は後手優勢。

 「3三歩成、同銀、5二角成」では、5四角の筋があるので、先手勝てないことがわかった。


6四銀右変化図04
 それなら、「3三歩成、同銀」の後、「6一飛」(図)でどうか。 次に5二角成をねらう。
 4二金、6三角成の展開は、先手が良い。
 この図では、3四銀が最も粘り強い手で、以下、3七香、4二金、6三角成、6二歩(次の図)

6四銀右変化図05
 7二馬、7五銀、8七玉、4一金、3四香、7四桂(次の図)

6四銀右変化図06
 次に後手からの8六銀~8五桂の攻めが速く、形勢は不明である。

 実は、いまの手順で、7二馬 と逃げた手が甘かったようだ。

6四銀右変化図07
 5三馬(図)と馬を切る手がより良い手である。
 以下、5三同銀に、8四馬と、もう一つの馬も切る。8四同歩に、7五玉(次の図)

6四銀右変化図08
 これなら、先手玉は"入玉"できるので、先手が良い。玉を安全に入玉させてから攻める。
 (ただし、ここで7三角と打つ手があり、以下、7四玉、9一角、同飛成のようになり、飛車を後手に渡すことになりそう)

 〔ろ〕6四銀右 には「3三歩成、同銀、6一飛」で先手が良さそう。


7四銀図
 そして〔は〕7四銀(図)でもいまと同じように指して、先手有望なのではないか―――というのが、戦闘中の(6七歩を着手する前の)“読み”だった。

7四銀変化図01
 「6四銀右」の時と同じように、「3三歩成、同銀、6一飛」(図)と進めて、この図になる。
 これでやっぱり先手良しではないか。―――それが戦闘時の終盤探検隊の最初の見通しだった。

 ところが、ここで “6三銀” という手があると、6七歩を着手した後に気づいたのだった。

7四銀変化図02
 “6三銀”(図)。 この銀を受けに使うというのは、“読みの盲点”になっていて気づくのが遅れ、6七歩の着手の後に気づいたのだった。気づいて、「しまった。やらかしたか」と思ったのだった。
 “6三銀” 以下、5二角成、同銀、5一飛成、5四角(次の図)

7四銀変化図03
 5四角(図)に、7七玉は、6一歩、5二竜、7五桂でどうも先手に勝ち目がなさそう。
 なので、6五香と頑張ってみる。これには後手8一桂(6一歩、5二竜は互角の勝負)
 以下、5二竜、6四銀引(次の図)

7四銀変化図04
 どっちが勝っているか。
 6六歩、5一歩、同竜、4二銀左(次の図)

7四銀変化図05
 どうやらこの手順で後手良しがはっきりしてきたようだ。
 図以下、6一竜に、9三桂と角を取る(8一桂と打った手がここで生きた)
 2一竜に、3三玉(次の図)

7四銀変化図06
 ここで3五金と打って先手が勝てそうな気がするが、先手玉は6五銀、同歩、6七角(7七玉には7五香、8七玉には6五角)以下、詰んでいるのである。
 この図は、後手の勝ち。

7四銀変化図02(再掲 6三銀図)
 〔は〕7四銀 に、3三歩成 以下は、この “6三銀で先手苦戦” ということとなると、その前の「6七歩」の選択がどうだったかという話になる。「6七歩」より「8七玉」を選ぶべきではなかったか。我々はチャンスをのがして悪い道に入ってしまったのではないか。―――そんな後悔交じりの焦る気持ちで、後手の次の手を待っていたのであった。



≪最終一番勝負 第30譜 指了図≫ 6四桂まで

 ところが、後手の次の手は「6四桂」であった。この手を見て、我々はほっと安堵したのである(後手が悪手を指したとその瞬間感じたのだ)



[6七歩図の戦後調査研究]

7四銀変化図02(再掲 6三銀図)
 “戦後”、あらためてこの「6三銀図」を研究してみた。
 最新ソフトはここでわずかながら後手寄りの評価値(-200くらい)を出しているし、しかもマイナスの評価値になる手が5つ以上並んでいる。となれば、ここはやっぱり後手が良いのだと判断したくなる。
 しかししっかり研究してみると、ここから「3七香」(ここは3九香でも3六香でも同じ)で、先手がやれるのではないか、という研究結果となったのである(次の図)

7四銀変化図07
 「3七香」(図)。 ここで後手は何を指すか。
 最新ソフトは、ここで 後手6六歩 を最善手として示すので、その手の先をまず追ってみよう。
 6六歩 には、5一飛成とする。同金、同竜(次の図)

7四銀変化図08
 こう進んでみると、先手優勢の図になっている(最新ソフトもいつも正しいとは限らないことがこの例でわかる) 

7四銀変化図09
 「3七香」に、6四桂 から後手が攻めてきた場合。以下、8七玉、7五桂、9七玉、6七歩成で、この図。
 こうなると、今度は後手に飛車を渡すと7七飛から詰まされてしまうので、5一飛成の攻めはできない。
 だが、5二角成からの攻めがある。5二角成、同銀、5一飛成、7九角、9八玉、6一歩、5二竜、4二銀右、4一銀(次の図)

7四銀変化図10
 これでもう、後手には有効手がない。3七香が後手陣にしっかり利いている。
 後手玉は、3二銀成、同玉、3一金、同玉、6一竜以下の、“詰み”がある。
 この順は、先手良し。

7四銀変化図11
 「3七香」に、4二銀右 と応じた場合。先手の5一飛成や5二角成の攻めを受けた手だ。
 これには、5三歩(図)がある。
 5三同銀なら、これは“一手パス”のような手で、5二角成、同銀、5一竜で、先手が勝てる。
 なので、後手は5三同金だが、それには、3四歩、4四銀と、銀を守備から外しておいて、そこで5一飛成が堅実な手順(次の図)

7四銀変化図12
 以下、同銀、同竜に、6四桂、8七玉、7五桂に、9八玉と逃げておけば、先手玉は詰まないので、先手勝ち。

7四銀変化図13
 「3七香」に、1四歩(図)。 玉のふところを広げた手。 
 ここで5二角成や5一飛成は先手が悪い。
 最新ソフトはここで3三香成を推奨してくる。3三香成を同桂は1一銀、同玉、3二角成で先手勝勢になるが、3三同玉で、難しい。後手に香車を渡すと7四香のような攻めが生じて、先手も厳しい。
 それよりも、1五歩が良さそうである(次の図)

7四銀変化図14
 1四歩で広げた後手のふところを、1五歩(図)で狭める手が最善手と思われる。
 1五同歩なら、1三歩、同香に、5二角成と攻めて行ける。
 この状態でも、5二角成や5一飛成が有効に働く。 この図は、先手良し。

 つまり結論としては、〔は〕7四銀「3三歩成、同銀、6一飛」は、先手良しである。

7四銀図(再掲)

 実は、〔は〕7四銀 に対しては、もう一つの攻め筋があって、そちらのほうがより勝ちやすい攻めになる。
 それは、ここで「3三香」である。

7四銀変化図15
 この「4一角、3二歩」を利かせて「3三香」と打ちこむ攻めは、すっかりおなじみになってきた攻め筋だが、実戦中は、我々(終盤探検隊)は、気づいておらず、発想になかった。
 「3三香」を、同桂は5二角成で先手良し。同銀は、同歩成、同玉、4五銀、4二玉、2二金以下、やはりこれも先手が良い。
 「3三香」には3一銀が最強手となるが、先手はそこで6一飛と打つ(次の図)

7四銀変化図16
 上の攻めと似た図になったが、3三香が刺さっているところが大きく違う。
 6一飛と打って、後手がゆるい手を指していると、5二角成がある。たとえば後手6六歩なら5二角成で先手良し。
 ここで後手が何を指すか、有効な指し手があるのかないのか、それが問題だ。

 まず 7五桂 はどうだろう。(次の図)

7四銀変化図17
 7五桂(図)が攻めとしては最も早そうな手で、先手の5二角成には、6四桂として、以下7七玉、6七と、8八玉、7六歩、7八歩、6六銀と進むと、後手良し。
 しかも「7四銀型」なので、7五桂に8五歩も無効だ(6四銀右型なら8五歩があったところ)
 他に有効な手がなければ後手良しで確定するところだったが、しかし、8四馬という手がある!
 8四同歩に、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀(次の図)

7四銀変化図18
 8四馬で金を一枚補充することで、後手玉に“詰み”が生じていたのである!
 3三同桂に、3一金と打って、同玉に、5一飛成、同玉、4一香合、2一金(次の図)

7四銀変化図19
 先手の勝ち。 この詰み筋が、「3三香」の攻めの狙い目になる。

6一飛図(再掲7四銀変化図01)
 6一飛と打ったこの図に戻る。ここで6三銀のような手も、やはりこの場合は8四馬で先手が勝ちになるわけだ。
 では、4二金 はどうか(次の図)

7四銀変化図20
 4二金(図)には、5一飛成とする。すると、4一金、同竜。
 これで後手は角を手にしたが、とりあえずは後手玉の“詰めろ”を受けないといけない。
 8一桂と受ける手があった。同竜には、5四角がある。
 しかし8二竜とすれば―――(次の図)

7四銀変化図21
 後手は困っている。6二歩のような受けなら、7一竜と入って、8一に打った桂馬が空振りになる。
 図で4二角と受けても、3二香成、同銀、同竜、同玉、4一銀、同玉、5二金、3二玉、4二金、同銀、2二金以下詰み。
 つまりこの図は、先手勝勢だ。

7四銀変化図22
 というわけで、4二銀引(図)が後手の最善かと思われる手。
 しかしこれも、攻略する手があるのだ。
 まず5三歩と打つ。同銀なら5二角成または8四馬で先手勝ち。
 後手は7五銀、8七玉としてから、5三金とこの歩を取る。「7五銀、8七玉」入れたのは、これを入れないと5三金の後、8四馬、同歩、7四角成の“二枚替え”があるからだが―――(次の図)

7四銀変化図23
 それでもここで8四馬があるのだ!
 同歩に、3二香成、同銀、同角成、同玉(次の図)

7四銀変化図24
 こう進むと、後手には豊富な持駒がある。先手はもう後手玉を詰ますしかないが―――
 もちろん、“詰み”があるからこの順に進めたのである。
 どうやって詰ますか(次の図)

7四銀変化図25
 前の図から、4一銀と打ち捨てて、同玉に、3一金(図)と打つのが、やさしいが気づきにくい詰み筋である。
 3一同玉に、5一飛成、同銀、同竜、4一銀合、4二銀、2二玉、3三歩成(次の図)

7四銀変化図26
 5一竜に後手が4一香合だと、2二玉に、3二金があったから、それで後手は4一銀合としたのだが、それでも3三歩成(図)から、詰んでいる。3三同桂に、2一金、同玉、4一竜まで。
 この詰み筋がわかっていれば、6一飛に4二銀引と受けたこの後手陣は、たやすく攻略ができるわけである。

 〔は〕7四銀 には、「3三香」で、先手良しとわかった。

6四銀右図(再掲)
 〔ろ〕6四銀右 に、「3三香」の攻めはどうだろう。何か違いがあるだろうか。

6四銀右変化図09
 同じように、3三香、3一銀、6一飛、4二銀右と進んで、やっぱり5三歩(図)と打つ。
 これを同金なら、先ほどと同じく、8四馬、同歩に、3二香成から後手玉が“詰み”なので先手勝ち。
 だが、「6四銀型」なので、これを“同銀引”と取る手がある。これが「7四銀型」との違い(次の図)

6四銀右変化図10
 しかし、“5三同銀引”には、5二角成(図)の攻めがある。
 5二同歩 に、3一飛成(次の図)

6四銀右変化図11
 これで後手玉は詰んでいるのである!
 3一同銀に、3二香成、同玉、4一銀、2二玉、3二金(次の図)

6四銀右変化図12
 この詰み筋は、後手の5三銀があるから、生じている。この銀が「6四銀」の位置にあったときには4一銀に、4二玉とかわし、3二金、5三玉と逃げることができるので、この詰みはなかった。つまり、先手の5三歩に同銀引と取らせた手が“逃げ道封鎖”となり、この攻め筋が有効になったのだ。
 1一玉には、2一金、同玉、3三桂、1一玉、2一金まで。

6四銀右変化図13
 だから途中先手5二角成まで戻って、後手は 同歩 とは取れないとわかったが、代わる手として、後手6四桂(図)が考えられる。
 以下、8七玉に、1四歩 が工夫の一手(次の図)

6四銀右変化図14
 1四歩(図)と玉のふところを広げ、これなら次に5二歩と角を取れる。
 なので先手は4一馬。
 以下、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七とが想定されるが、そこで先手は5一飛成と攻める(次の図)

6四銀右変化図15
 飛車一枚だけなら渡しても先手玉は詰まされないので、5一同銀には、同竜で、後手の受けが難しく、先手勝勢になっている。

6四銀右変化図16
 「6四桂、8七玉」のところまで戻って、そこで、香車を取る 3三歩(図)ならどうなるか。
 これには、5一馬とし、すると、同銀、同飛成、4二角と進む(次の図)

6四銀右変化図17
 3一竜、同角、3三歩成、同玉(同桂は1一銀以下詰み)、3一竜、3二歩、7八金(次の図)

6四銀右変化図18
 先手玉の“詰めろ”を消して、7八金と受けたこの図は、先手優勢。
 以下、9五歩、同歩、8九飛のような攻めがあるが、しっかり8八銀と受けて、もう先手玉に詰めろはかからない。次に先手は3五金と打てば、先手勝ちが確定する。

 以上の結果、〔ろ〕6四銀右 に、「3三香」以下は、先手良し。

6四銀引変化図01
 〔に〕6四銀引(図)という手も最新ソフトは有力手の一つとして挙げている(対戦中はこの手は我々の想定にはまったくなかった)
 〔ろ〕6四銀右 の場合と同じに指すとどうなるのか。
 3三香、3一銀引、6一飛、4二銀引、5三歩(次の図)

6四銀引変化図02
 この5三歩(図)で先手良し、と〔ろ〕6四銀右 の場合はそうなった。この場合も、5三同金なら、8四馬から金を入手すれば3二香成から後手玉が詰むのは同じだ。
 しかし―――(次の図)

6四銀引変化図03
 6二金(図)と寄る手がこの場合はある。対して5一飛成は、1四歩で、後手良し。
 これは、先手“失敗の図”となっているのである。

6四銀引変化図04
 戻って、〔と〕6四銀引 には、3七桂(図)が良いようだ。
 ここで、〈m〉7五金と〈n〉7五桂を後手の有力手として、以下の手順を示しておく。

 〈m〉7五金には、8七玉と逃げる(7五同馬もあるがそれは形勢不明)
 後手は7四桂と攻めを継続(次の図) 

6四銀引変化図05
 ここで5二角成がある。これを同歩は、3三金から後手玉が詰む(3七桂の効果)
 よって、後手は5二角成を放置して、8六金、9八玉、7五桂と攻める。以下、4一馬、8七桂成、8九玉、6七とに、3三金(次の図)

6四銀引変化図06
 後手玉は3三金(図)から詰んでいる。3三同桂、同歩成、同玉(同銀は2一金以下詰み)、3五香以下の詰み。“3七桂”が有効に働いている。

6四銀引変化図07
 後手〈n〉7五桂(図)の場合。
 これには、2五桂と桂を跳ぶ。これは3三金以下の“詰めろ”
 なので後手は4四銀と受けるが、それには5三歩(次の図) 

6四銀引変化図08
 5三同金なら、3三香で、先手の勝ちが決まる。
 よって後手は5三同銀右と取ることになるが、先手は8五歩、7四金を利かせておいて、4五歩(次の図)

6四銀引変化図09
 この4五歩(図)を同銀なら、3三香が早い寄せになる。
 その前に「8五歩、7四金」を入れたのは、先手玉を広くするため。次に9四馬とすれば、先手玉は9五まで逃げるスペースもできる。
 後手は8四歩(同歩なら8五歩で後手良し)
 以下、4四歩、同銀。そこで3三香は、8五金以下先手負ける。
 なので、先手は9四馬とする(次の図)
 
6四銀引変化図10
 8五歩、同馬、6七桂成に、3三香(次の図)

6四銀引変化図11
 “ねらいの3三香”(図)をこのタイミングで決行する。
 6六と、8七玉、3三桂、同歩成、同銀引、同桂成、同銀、5二角成(次の図)

6四銀引変化図12
 先手勝勢。

 〔に〕6四銀引 は先手良し。


6七歩図(再掲)
 ここまでの結果をまとめておくと
  〔い〕6六歩 → 8五歩で先手良し
  〔ろ〕6四銀右 → 3三香または3三歩成以下先手良し
  〔は〕7四銀 → 3三香または3三歩成以下先手良し
  〔に〕6四銀引 → 3七桂で先手良し
  〔ほ〕6四桂
  〔へ〕3一銀
  〔と〕7五歩

 実際に後手番の≪ぬし≫が指したのは、〔に〕6四桂 だった。

 他に、最新ソフトは、〔へ〕3一銀〔と〕7五歩 を有力手として示していたので、これも調査してみた。結果はどちらも、「先手良し」だが、どうやって先手が有利になるのかを確認しておきたい。

3一銀図
 〔へ〕3一銀

3一銀変化図01
 3一銀には、2六香(図)と打つ手が良い。
 後手3一銀の意味は、次に4二金の手を用意したことにあるが、ここでまず後手が攻めの手を指してきた場合を示しておく。
 たとえば後手が 6六歩 とした場合。
 それには3三歩成とする。これを同桂は、5二角成、同歩に、2一金、同玉、1一飛以下“詰み”
 よって3三同玉だが、それには、5二角成、同歩、3五飛が好手順の攻めだ(次の図)

3一銀変化図02
 後手3四桂合に、単に3一竜だと、5四角で先手不利(5四角が4五に利いている)
 だが、「2三香成、同玉、3一竜」がその手を見越した冴えた手順である(次の図)

3一銀変化図03
 これで先手優勢だ。「2三」に玉を呼んでおいた効果で、ここで5四角と打っても、後手は詰めろを逃れていない。
 ただし、ここで後手6九角が“詰めろ逃れの詰めろ”になっている。しかし7八歩と受けておいて、後手の攻めは続かない。(6九角が7八角成と動くと、後手玉には詰みが発生する) 

3一銀変化図04
 先手の2六香に、4二金(図)とした場合。もともと3一銀としたのは、この手を受けの切り札にするためだった。
 これに対し、先手5一竜なら、4一金、同竜、5四角、7七玉、7五桂で、後手良しになる。これが後手の狙い。
 したがって 4二金 には、先手6三角成が正しい。この手は銀取りなので後手は6二銀右とするが、ここで2三香成と捨てて、同玉に、4五馬が好位置である。後手玉への“詰めろ”になっている。(先に2三香成、同玉を入れることで、より受けにくくしている。単に4五馬だと1一桂で粘られていた)

 以下進行の例は、7三香、8七玉、5二金(4二のスペースをあけて詰めろを受けた)、1一飛―――(次の図)

3一銀変化図05
 先手勝勢になった。

 〔へ〕3一銀 には、2六香で、先手良し。


7五歩図
 〔と〕7五歩(図)には、8七玉。そこで後手は6七と。
 この6七とが指したいということで、後手は7五歩と打ったのだ。
 しかし「7五」に歩を打ったために、後手からの「7五桂」が打てないところが、後手にとって口惜しいところ。
 
 6七とに、先手は3三歩成(次の図)

7五歩変化図01
 3三歩成(図)、同銀に、5二角成とする攻めがこの場合は成立する。
 以下、5二同歩に、3一金とするのが良い。
 後手は5四角で反撃だ(次の図)

7五歩変化図02
 「8七」まで玉がすでに逃げていることが、先手の5二角成の角切りの攻めを成立させた。
 5四角(図)に、9七玉と逃げ、8一桂には、同竜と素直に取る。
 以下、8一同角、6一飛(後手玉への詰めろ)、3四銀、8一飛成、3三玉、3六桂(次の図)

7五歩変化図03
 先手勝勢である。4四歩の受けが考えられるが、4一竜、4二飛、5一角で、受けがなくなる。
 「7五歩、8七玉」の手の交換は、先手が得をしていることがこれではっきりした。

 〔と〕7五歩 は、先手良しになる。



6七歩図(再掲)
 以上の結果をまとめておくと
  〔い〕6六歩 → 8五歩で先手良し
  〔ろ〕6四銀右 → 3三香または3三歩成以下先手良し
  〔は〕7四銀 → 3三香または3三歩成以下先手良し
  〔に〕6四銀引 → 3七桂で先手良し
  〔ほ〕6四桂
  〔へ〕3一銀 → 2六香で先手良し
  〔と〕7五歩 → 8七玉で先手良し



 しかしこの「亜空間戦争一番勝負」の戦闘中は、〔は〕7四銀 を恐れていたことはすでに述べた通りである。

 そして、後手の指した手は、ノーマークだった〔ほ〕6四桂 だった。
 この手は深くは考えていなかった。というのは、この手ならなんとかなりそうだ、と思っていたからである。



≪最終一番勝負 第30譜 指了図≫ 6四桂まで

 △6四桂

 後手の≪亜空間の主(ぬし)≫の指し手を待っているあいだ、ずっと7四銀の手が手強いと心配していたので、我々は6四桂を見た瞬間、ほっとした。
 そして、「しめた。こっちが優勢になったのではないか」と思ったのであった。 しかしそれは半分は感覚的なもので、十分な読みが入っていての感想ではない。
 油断大敵―――こういう気のゆるみそうなときほど、気を引き締めて臨む必要がある。

 △6四桂 と打たれて、さあ、実際の形勢は、どうだろうか。

 「〔と〕7五歩、8七玉、6七と」の場合と似ているが、「△6四桂、8七玉、6七と」と進んだとき、後手には“7五桂打ち”のスペースがあるのが、違いになる。


第31譜につづく
コメント

終盤探検隊 part130 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第29譜

2019年08月26日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第29譜 指始図≫ 3二歩まで

 指し手  ▲6七歩


    [少年と少女とものいう馬]

 この池こそ、仙人がじぶんの隠れ家の緑のつい地のそとの世界でなにがおこっているかを知ろうとするときに見る、鏡の池なのです。
    (『馬と少年』)
    
 アラビスもしょちゅうコルと口げんかをしましたが(つかいみあいまでしたらしいのです)、しかし、いつもふたりは仲なおりしました。このように、けんかをしては仲なおりということになれっこになったふたりは、何年もたっておとなになってから、いっそ結婚したほうがそれがやりやすいというわけで、結婚することにしました。
    (『馬と少年』C・S・ルイス著  瀬田貞二訳より)


 C・S・ルイス著『馬と少年』は、ナルニア国シリーズの物語の一つ。

 主人公は奴隷の少年シャスタ。ある日シャスタは、雄馬に話しかけながらこう言った。「おまえに口がきけたらなあ。」すると馬は「口はきけますよ。」と答えたのだった! この馬は、ナルニアから来た「ものいう馬」だったのだ! 馬のほんとうの名前は長くて覚えきれない名前だったので、ブレーと呼ぶことにした。
 シャスタは、奴隷として売られてゆく予定だったが、ブレーとともにその南の国カロールメン国を脱出して、北のナルニア国をめざすことにした。ここから“馬と少年”の冒険が始まった。
 少年シャスタとものいう馬ブレーは、途中で道連れの仲間を得る。一人の少女と、そしてその雌馬フインだったが、なんとこのフインも「ものいう馬」だったのだ!
 少女の名はアラビス。彼女はカロールメン国の中の有力な王の娘で、ある人物(60歳)との結婚を父が進めていて、それが嫌で馬フインとともに脱出し、この“少女と馬”もまた、ナルニアをめざしてゆくところだった。
 ナルニアに行くという目的がいっしょなら、行動を共にするほうがよいのではということになった。
 しかし内心、少年シャスタは、少女アラビスのことが好きになれなかった。もともとが王の娘だったこともあり、気が強くて苦手だったし、少年の馬ブレーがアラビスと共通の話題で盛りあがって、世間知らずのシャスタはそれに加われなかったことも面白くなかった。
 それに少女は、自分は奴隷のようなみすぼらしい姿のものとは違う身分にいたのだという誇りがあったので、シャスタのことを見下しているようにも思えた。もともと行動をともにすることにアラビスは抵抗を示していた。それを受け入れたのは、二頭の馬が、そうしたほうがよいと少女を説得したからである。
 シャスタとブレーが、初めてアラビスとフインに会ったとき、その馬上の人物が少女だったとわかったシャスタは、おどろいて、「なんだ、女の子じゃないか!」と叫んだのだが、少女はこう返したのだった。

 「わたしが女の子だからといって、あなたの知ったことじゃないでしょ?」

 ところがこの少女、このとおり気性がきついが、仲間との約束を守るということに関しては、信用のおける人間だったのである。アラビスにとって、シャスタはすでにチームで行動を共にすると約束した“仲間”だった。
 少年と少女と二頭の馬は、カロールメン国の都タシバーンの街を農民に変装して突っ切ろうと計画した。ところが、計画通りにうまくいかず、少年シャスタのみ、離ればなれに孤立して行動せざるを得なくなった。シャスタは一人行動になり、それでもやっと、何かあったときにはここで待とうと約束した合流場所(古代の王たちの墓)に到着した。そこには誰もいなかった。
 不安になりながら、シャスタは待った。シャスタ少年は「アラビスは自分を置いてナルニアめざしてもう行ってしまったかもしれない」などと思いながら、そこにいた猫に寄りそって夜をすごした。(その猫の正体はものいうライオンの王アスランだった)

 シャスタは、アラビスがどんなひとかについて、またしてもまるで考えちがいをしていました。アラビスは、誇りが高く、かなり気むずかしいところがありますが、はがねのように誠実で、すききらいにかかわりなく、ぜったいに仲間をおき去りにできない性質(たち)なのです。

 戦争の風雲までも経験するというこのたいへんな冒険が終わり、少年シャスタは、実は北の国アーケン国(ナルニア国と親交が深い)の、行方不明になっていた王子コルだったとわかり、最終的にはアーケン国を継ぐ王となる。
 そしてそのコル王子(シャスタ)とアラビスは、その後も、しょっちゅうけんかをしては仲直りをし、そして結婚したのである。 



<第29譜 どちらの道を行くか>



≪最終一番勝負 第29譜 指始図≫ 3二歩まで

 先手は4一角と打ち、後手は3二歩と受けた。
 ここで、「8七玉」と指すか、それとも「6七歩」が良いか。
 重要な「分かれ道」であった。


 ≪最終一番勝負 第29譜 指了図≫ 6七歩まで

 我々―――終盤探検隊―――が選んだ手は、▲6七歩 である。



[調査研究: 8七玉(その3)]

 本日の≪指始図≫の2手前の図に戻る。

7三同銀図
 ここで次の4通りの指し方があるのだが、
  (1)8七玉
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉
  (4)4一角、3二歩、6七歩(実戦はこう進んだ)
 ここで(1)8七玉を選んだ場合どうなるかを、前々回(第27譜)と前回(第28譜)に報告してきた。第27譜は「形勢不明」とし、第28譜ではさらにその調査を深めて「後手良し」と結論を出している。
 ところが、さらに“新手の発見”によって、またしてもその調査結果に変更がでることとなったので、ここからはその内容を以下に報告する。(1)8七玉の研究の結果によって、(3)4一角、3二歩、8七玉の結論も明らかになるので、ここは大事なところなのである。

8七玉図(研究テーマ図)
 ここから、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、7六とと進む(次の図)

6七と図
 ここで次の4通りの候補手があり、いずれも「後手良し」となった。
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕8八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 後手良し

 これが今までの調査結果である。この結論については、変わらない。

 しかしここで、“新手”を発見したのだ。 次の手である。

  〔E〕3七桂

3七桂図 
 この 3七桂(図)が新発見の手。
 この手があることはわかってはいたが、7八とで先手負けと思っていた。ところが確認のためにと調べてみると、その思いは“先入観”に毒されていたとわかったのだ。
 あらためて調べていこう。

 さて、ここで、攻めるなら、(山)7八と か、(川)7七歩成
 そして受けるなら、(森)3二歩 が有力である。
 この3つの手について、以下、調査していく。


変化7八と基本図
 上でも述べた通り「3七桂は7八とで悪い」と思っていたので、その先を深くは考えなかったのだが…
 この (山)7八と(図)以下の結論がどうなるかがたいへん重要である。
 ここで「4一角、3二歩、3三香」と攻めるのが有効とわかってきた(次の図)

変化7八と図01
 この3三香という攻め筋は、戦闘時、「激指14(13)」を使っていた我々終盤探検隊の“死角”になっている。「激指」には、この手が良い手に見えていないのだ。
 3三香(図)には、3一銀(3三同桂は5二角成、3三同銀は同歩成、同玉、1一角以下先手良し)
 そして3一銀に、先手8四馬がある(次の図)

変化7八と図02
 この瞬間、8四の「金」を一枚加えて、後手玉に“詰めろ”がかかっている。3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下。3七桂が後手玉の上部を押さえている。
 だから4二金でその“詰めろ”を受ける(5一竜には4一金、同竜となって「角」を手に入れれば逆に先手玉が先に詰む)
 ところが、3二香成と捨てて(この手が大事)、同銀に、それから5一竜とすれば状況が変わる(次の図)

変化7八と図03
 この5一竜は3三金以下“詰めろ”だし、後手としては4一銀や4一金と角を取りたいが、それも3三金以下詰む。1四歩としても3三金以下詰み(3三同銀は2三香成~2一竜。3三金に1三玉も2四金、同玉、2五飛以下詰み)なので、後手は指す手がない。
 5一竜のこの図は、「先手勝ち」になっているのだ! 

変化7八と図04
 戻って、先手の3二香成を、同金(図)と取るとどうなるか。
 7五馬、6四銀右、7六馬、7五香。そこで2四桂(次の図)

変化7八と図05
 2四桂(図)が好手。
 同歩に、4三馬がある(同金は2三金以下詰み)
 また7六香なら、3二桂成、同銀、3三金以下“詰み”
 4二金には4三馬。 4二銀引も、3二桂成、同銀、同角成、同玉、3三金以下詰み。
 つまりこの図で、先手勝ちになっている。

 「(山)7八と に対して先手良しになる順」の発見は大きかった。(とくに「3二香成、同銀、5一竜」の手順)
 これで一気に、この「3七桂」が有望な手として輝きを放ちはじめたのである(我々の戦後研究の中での話だが)


変化7七歩成基本図
 3七桂 に、(川)7七歩成 を次に調査しよう。
 以下、同歩、同とと進む。 先手は8九香と受ける(次の図)

変化7七歩成図01(8九香図)
 ここで後手が何を指すか。
 【P】7六歩と、【Q】8七桂成が考えられる。

 【P】7六歩には、7八歩と打つ。同とに、「4五桂」(次の図)

変化7七歩成図02
 ここで3二歩と受けても、3三歩成、同歩、5三桂成で後手陣はスキだらけ。5三同銀に、4一飛、3一桂、6三銀で寄り。
 それなら攻めたほうがよい―――ということなら、8九と
 先手は3三角(次の図)

変化7七歩成図03
 3三角(図)で、後手玉は詰んでいる。
 3三同桂は、同歩成、同銀、3四桂以下。 
 3三同銀は、同歩成、同桂に、1一銀がある(次の図)

変化7七歩成図04
 1一同玉に、3一飛、2一銀合、2二金、同玉、3三桂成、3一玉、3二歩以下詰み(この詰み筋は最後に金を持っておくことが重要である)
 先手の勝ち。

変化7七歩成図05
 「4五桂」に、4四銀引(図)。 受けるならこの手だ。
 しかし、5三桂成、同銀上、3三銀、同桂、同歩成、同銀、3四歩、同銀、2六桂(次の図)

変化7七歩成図06
 先手の攻めは切れず、しっかり迫れば、先手が勝つ。3三歩には、4一飛と打って、後手の受けが難しい。

 結局、【P】7六歩は、4五桂で、先手良し。

変化7七歩成図07
 【Q】8七桂成(図)は、同香に、7五桂と迫る意味。
 先手は7九桂と受け、その桂馬をねらって、後手7八歩。
 先手、どうするか。 今度は4五桂は7九歩成で後手が勝つ。
 しかし、「7六歩」と打つ手があって、これがこの場合の最善の一手(次の図)

変化7七歩成図08
 ここで後手の2択である。7六同と、または、7九歩成
 
 7六同と には、2六飛がぴったりした好手となる。

変化7七歩成図09
 7六の「と金」をとられないよう6六銀や6六歩では、4五角の一手でもう後手の受けがなくなり「先手勝ち」が確定してしまう。この攻め筋が2六飛の意味。
 よって、後手は7九歩成。
 これは先手玉が“詰めろ”になっているので、7六飛。「と金」を消す。大きな一手。
 ここで後手7四銀なら、4五桂が速い攻めになる。後手はもっと速い攻めで迫らないといけない。
 そこで後手は、8七桂成、同玉、7五桂、9七玉と、香車を手にして、9五歩(次の図)

変化7七歩成図10
 9五歩(図)で、後手は攻め筋を広げてきた。
 ここで7九飛は形勢がもつれる。飛車はできれば2六飛のように攻めに使いたい。
 図以下、9五同歩、9六歩、同玉、9四歩。
 そこで3五桂と打つ(次の図)

変化7七歩成図11
 3五桂(図)と打って、攻撃の準備。次に2六飛や4五角が狙いとなる。
 4四銀上なら、2三桂成、同玉、4一角、3二歩、5二角成で、先手勝勢になる。
 図より、9五歩、9七玉、8九と(次の図)

変化7七歩成図12
 8九と(図)で、先手玉に“詰めろ”がかかった。
 これを9八玉では、8七香があってたいへん。
 ここは8五歩という絶妙な返しがある(次の図)

変化7七歩成図13
 8五歩(図)で、後手9六香には8六玉で逃げられるようにした。
 「8五同金で意味ないじゃないか」と反論されそうだが、8五同金には、次に示す“用意の手”がある(次の図)

変化7七歩成図14
 7五馬(図)である。桂馬を取って、この瞬間に、後手玉が、2三桂成、同玉、3五桂、2二玉、2六飛以下の、“逆詰めろ”になっているのである。
 後手は7六金と飛車を取ってその“詰めろ”を解除するが、やはり2三桂成、同玉、3五桂として、2二玉に、2三金、3一玉。そこで7六馬と手を戻す(次の図)

変化7七歩成図15
 先手勝勢になっている。
 いまのこの3五桂以下の攻めも、3七桂が有効に働いていた。

 このように、「変化7七歩成図08」から 7六同と には、2六飛があって、先手良し。

変化7七歩成図16
 「変化7七歩成図08」まで戻って、7九歩成(図)の場合はどうなるか。
 7五歩、7八と引に、3三桂(次の図)

変化7七歩成図17
 この3三桂(図)は、3二飛以下の“詰めろ”である。
 なので後手も対応する必要がある。しかし3三同桂、同歩成、同銀では、3四歩、同銀、2六桂、3三歩、4一飛で、“詰めろ”の攻めがほどけない。
 よって、3二歩と受けるが、2一桂成、同玉に、4一角と打っておく。
 8八とに、3三桂(次の図)

変化7七歩成図18
 3三桂と打って、後手玉は“詰み”なのである。3三同銀に、3二角成、同玉、3三歩成、同玉、3四歩以下。
 なお、先手4一角に、4四銀引と受けても、2四桂(同歩に2三金)のように手が続くので後手玉は延命できない。
 7九歩成 も先手勝ちになった。

 以上により、3七桂 に、(川)7七歩成 以下は先手良し、が結論となる。


変化3二歩基本図
 3七桂 に、後手(森)3二歩(図)と先に受けた場合。先手はどう攻略するか。
 3三歩成といく(次の図)

変化3二歩図01
 これを同歩は、3二に隙ができて後手が悪い。4五桂と跳べば、銀を逃げても5三歩があるので銀もはがされる。
 なので後手は、図の3三歩成に、同銀と応じる。
 先手4五桂に、4四銀引が頑強な対応である(次の図)

変化3二歩図02
 以下、3三桂成、同銀、4一飛、3一桂、3四歩、4二銀左(代えて4四銀なら1一角、同玉、3一飛成がある)
 そこで5五角が見えるが、それは4四銀、7三角成、7八とで、先手苦戦する。
 先手は5四歩と打って、後手の金銀の連結を弱くするのがよい。

変化3二歩図03
 5四歩(図)には、後手4四銀が、後手最善。
 手抜きして7七歩成と攻めるのは、同歩、同と、5五角、4四銀、7七角で、と金を消されてしまう。

 5四歩に同銀だとどうなるのか。それは、6一銀で先手優位に傾く。以下7八と、5二銀成、7七歩成で先手苦しいように見えるが、8九香と受けて―――(次の図)

変化3二歩図04
 後手の攻めはこれで止められる。8九同となら、6六角(図)で、“王手”でと金を抜く手があるからで、その変化ははっきり「先手良し」になるのである。

変化3二歩図05
 だから、5四歩には4四銀(図)が正着となる(ここで6一銀は、今度こそ7八とで後手良し)
 「5四歩、4四銀」を利かすことで、先手からは5三銀(香)の攻めがあるし、場合によっては5三歩成、同銀ともとの形に戻すこともできる。
 ここで先手は、「8八金」といったん受けに回る(次の図)

変化3二歩図06
 ここで後手に攻めのターンが来た。しかし7四銀のような手だと5三香が早く、後手陣が先に崩壊する。
 ということなら〔a〕6四銀ならどうだろうか(5三にも利かせている)
 他に、〔b〕9五歩、〔c〕6六歩、〔d〕6五桂、〔e〕6六桂が後手の有力手。一つずつ順に調査しよう。

変化3二歩図07
 まず〔a〕6四銀は、6一竜(図)がぴったりとした攻防の手になる。
 以下、6三歩には、8九香と打っておく(次の図)

変化3二歩図08
 いったん8九香(図)と受けて8筋を強化しておく。これで次に5二竜、同歩、4二飛成をねらう。後手は1四歩くらいしかないが、それでも5二竜以下を決行して、先手良し。

変化3二歩図09
 〔b〕9五歩(図)は、同歩、9六歩、同玉、9四歩、同歩と進む。以下7八と(次の図)

変化3二歩図10
 ここで、先手は7八同金、または9七金として、それで先手優勢である。
 7八同金以下を見ていくと、9五歩、9七玉、6五桂、6六銀、6四銀(代えて7四銀には6四角と打つ手がある)、1五角(次の図)

変化3二歩図11
 ここはもうはっきり先手が良い形勢になっている。
 1五角では、代えて6一竜もあった。後手の攻めが息切れ気味なので6一竜から“受けつぶし”で勝つ指し方である。
 ここでは1五角(図)からの攻めで勝つ順を解説する。
 1五角は次に4二角成が狙いで、だから後手はここは3三歩と受けるしかない。
 そこで5三香。以下、同銀上、同歩成、7七桂成、同銀、同歩成、同金、5三銀、3三歩成、同銀、4五桂(次の図)

変化3二歩図12
 4二銀右、3三桂成、同銀、3四歩、7九銀、9八玉(次の図)

変化3二歩図13
 後手はもう受けがない。2四銀では、4二銀で先手勝ち。
 よって、後手は3二玉で勝負する。ここは勝ち方が何通りもあり、以下は一例を示す。
 3三歩成、同桂、5三歩(次の図)

変化3二歩図14
 4一玉に、5二歩成、同玉、5三銀以下、後手玉を詰ませて、先手の勝ち。


変化3二歩図15
 〔c〕6六歩は、次に7八と、同金、6七歩成が狙いで、ここで先手5三香は、間に合わない。
 5三銀が正解である(これなら放置すれば4二銀成が詰めろになる)
 5三同銀上、同歩成、同銀、5五角(次の図)

変化3二歩図16
 これで後手陣の銀を一枚消して、5五角(図)と打てた(ただし、後手の持駒に銀が増えたリスクもある)
 5五角に、後手4四銀は、4二銀で先手勝ちになる。よって、4四歩だが、7三角成で先手が良い。
 後手は(7八と、同金、6七歩成では遅いので)7九銀と攻めてくるが、9八金とかわし、7七歩成に、5一馬が決め手である(次の図)

変化3二歩図17
 先手勝勢。

変化3二歩図18
 戻って、先手の7三角成に、後手が4二銀打(図)と頑強に受けた場合。
 最新ソフトは、ここで8五歩を推奨する。同金に、8六銀として、上部開拓をして“入玉”をめざす。これで先手勝勢だという。
 ここでは、3八香以下、攻めて勝つ順を示しておく(次の図)

変化3二歩図19
 図以下、7八と、同金、6七歩成と進むが、そこで先手は攻めに出る。
 8四馬左、同歩、5一馬(次の図)

変化3二歩図20
 角を二枚渡しても、まだ先手は詰まない。5一同銀(金でも同じ)に、同竜。
 同金に、3三銀、同歩、同歩成、同桂、1一銀、3二玉、4三銀(次の図)

変化3二歩図21
 後手玉が詰んだ。

変化3二歩図22
 〔d〕6五桂(図)。 これは今の〔c〕6六歩より、7筋に利かせている分、攻めが早い。
 だから今度は7九香と受ける(これ以外の手は先手不利になる)
 7七歩成、同歩、7八歩、同香、6六歩、5三銀(次の図)

変化3二歩図23
 先手はここで5三銀(図)と打ちこんで行く。
 同銀上、同歩成、同銀に、5五角と打ち、後手4四歩(4四銀なら4二銀がある)
 そこで7三角成は、この場合は8七銀、同銀、7八とで先手が悪い。
 ここは、5五角をこの位置に置いたまま、7一馬とこの援軍を攻めに参加させるのが良い攻めの構想(次の図)

変化3二歩図24
 7一馬(図)が早い手。次の4四角の攻めを狙いとする。
 後手は6二銀右と受けたいところだが、それは同馬、同銀、4四角で無効。
 6二銀打はあるが、銀を手放したため先手玉への攻撃が遅くなり、4四飛成、同銀、同角と攻めて、以下後手の受けが難しく、先手勝ちになる。
 後手は7九銀と攻める。これは詰めろ。
 しかし、3一飛成、同玉、5三馬があった。以下、同金に、5一竜、4一飛、4二銀、2二玉、3三歩成、同歩、同銀成(次の図)

変化3二歩図25
 3三同桂は3四桂があるので、3三同玉だが、5三竜、以下、詰んでいる。
 先手勝ちになった。

変化3二歩図26
 〔e〕6六桂(図) これが後手最強の手と思われる。
 これにも、7九香と受けるのが手堅い。6九金なら(攻めがきびしくないので)、5三銀と打ちこみ、同銀上、同歩成、同銀、5五角、4四歩、7三角成、7九金、5一馬と攻めて勝てる。
 先手に香を打たせ、その香を取ることを前提に、後手は9五歩と攻めてくるほうがよりきびしい手になる。
 今度は5三銀で銀を後手に渡す攻めでは先手悪くなるので、5三歩成とする(次の図)

変化3二歩図27
 5三同銀上 なら、1一角がある。以下、同玉に、3一飛成。
 2二角、3二竜、4二金、2三竜(次の図)

変化3二歩図28
 次に2四桂がある。それを3五銀で受けても、1五桂と打てば、後手玉にもう受けはない。
 先手勝ち。

変化3二歩図29
 なので、後手は5三歩成を、同銀引(図)と取ることになる。
 ここで5五角。以下、4四歩に、7三角成、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、7八と(次の図)

変化3二歩図30
 7八同香、同桂成、同金、6六歩、6八歩、6九金(次の図)

変化3二歩図31
 ここでの6九金(図)は見かけ以上に早い攻めで、次に7九金をねらっている。同金は7七歩成で先手玉は"受けなし"になる。
 ここで先手がどう攻めるのがよいか、難しい。(歩が2つあれば、4三歩、同金、5五桂、3四金、4三歩で明快なのだが)
 ここは3三歩成が良い。相手の応手を聞いてから、攻め方を決める意味(次の図)

変化3二歩図32
 3三歩成(図)には、3つの応手がある。歩、銀、玉のどれで取るかの3択 である。
 
 まず 3三同歩 から。その手には、6四桂(次の図)

変化3二歩図33
 5二桂成とした手は、次に3二金、同玉、4二成桂以下の“詰めろ”になる。よって、ここで7九金は後手攻め合い負け。
 だから後手は4三金と逃げるが、そこで先手3二歩(次の図)

変化3二歩図34
 空いた空間に打つ3二歩(図)があった。7九金なら、3一歩成、同銀、5一馬で、先手の攻めが早い。
 なので、3二同玉だが、そこで8四馬左と金を取る。以下、9六香、8八玉、8四歩に、5一飛成(次の図)

変化3二歩図35
 5一同銀なら、4一銀以下、“詰み”である。先手勝勢。

変化3二歩図36
 戻って、3三同銀(図)
 5一馬で勝てればよいが、この場合は、同金、同竜、4二銀右で、先手悪い。

 ここは、7一馬が継続手になる。
 以下、7九金に、3四桂と打つのが好手。 3四同銀に、5三馬(次の図)

変化3二歩図37
 5三同金なら、3一飛成以下詰む。先手勝ち。

変化3二歩図38
 今の手順を途中まで戻り、先手7一馬に、後手が6七歩成、同歩、6二歩と受けてきた場合は、この図のように、6一馬と指せばよい。

変化3二歩図39
 3三同玉(図)
 この場合は、8四馬左とする。単に同歩は9五竜で先手玉が安全になってしまうので、後手は9六香と打って、8八玉に、8四歩と角を取る。
 そこで先手9五竜だ(次の図)

変化3二歩図40
 後手玉の露出した「3三玉」は、香車に弱い。それに先手は次に7五竜とすれば、この竜は攻めに働く。
 先手勝勢である。 


変化3二歩図05(8八金図、再掲)
 後手の有力手〔a〕6四銀、〔b〕9五歩、〔c〕6六歩、〔d〕6五桂、〔e〕6六桂すべて先手優勢になった。
 よってこの図は「先手良し」とする。

 すなわち、(森)3二歩 は先手良し、である。


3七桂図(再掲)
 以上から、3七桂 と指したこの図は、「先手良し」を結論とする。


8七玉図(再掲)
 つまり、この図の「8七玉」は、結論がくつがえって、「先手良し」に変わったのである!!!


 しかし、実戦は4一角と打った。以下、3二歩に、そこで“8七玉”ならどうなのだろうか。同じように「先手良し」としてよいのだろうか?

 結論を言えば、「4一角、3二歩」を入れたあとの「8七玉」だと、逆に「後手良し」になってしまう

 その理由を述べる。
 4一角、3二歩、8七玉、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七と、3七桂と進んだとする。
 そこで後手は、7七歩成、同歩、同とを選び、8九香に、8七桂成、同香、7五桂、7九桂、7八歩、7六歩となる。
 後手は「7六同と」と応じる。そして次の図である。

変化4一角図
 「4一角、3二歩」の手の交換がなかったら、ここで2六飛で「先手良し」だった。
 ところがこの場合、4一に角を使っているために、2六飛と打っても、次に4五角と打つ手がないので、この2六飛の攻めの効果がないのだ。
 したがって、3七桂の攻めは、この図に誘導されてしまうと「後手良し」となるのである。


 ということで、「4一角、3二歩」の後に「8七玉」を選んだ場合は、先手としては、3三香からの攻めを敢行することになる。
 それは「互角」に近い闘いにはなるが、我々の研究調査上は、「後手良し」となっている。(その内容は前回報告第27譜で示している)


 〔E〕3七桂 のところで、代えて、〔F〕2六飛 という手もある(次の図)

先手2六飛基本図
 これも調べてみると相当に有力である。
 7七歩成、同歩、同と、8九香(次の図)

先手2六飛図01
 ここで後手7八歩があるが、それは7六歩、6七桂成、3七桂で、先手がやれそう。
 なので、後手は7六歩とする。
 先手は7八歩と打ち、同とに、4五角と打つ(次の図)

先手2六飛図02
 4五角(図)は、後手玉への“詰めろ”なので、後手は3一桂と受けるが、そこで8五歩が先手の勝負手である。
 (4五角と3一桂の交換をすることで後手に桂馬を受けに使わせた)
 以下、8九とに、8六玉(次の図)

先手2六飛図03
 ここで後手に有力な手(4四銀や8七桂成や7四銀など)がいくつかあるが、しかし先手もやれそう。う
 ここから先は変化が膨大になり、とてもすぐには結論は出せない。
 よって、形勢不明(=「互角」)としておく。

[後日注]
 この 〔F〕2六飛 については、違う手順で同じ局面に合流するかたちで、再び後の譜で研究調査することになった。(第33譜)
 その結果は、「形勢不明」または「千日手」で、その選択権は後手が持つ。
 先手の終盤探検隊にとってはおもしろくない結果である


 
6七と図(再掲)
 すなわち、こうなる。
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕8八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 後手良し
  〔E〕3七桂 → 先手良し
  〔F〕2六飛 → 形勢不明(互角)


7三同銀図(再掲)
 再び「7三同銀図」に戻り、状況を整理しよう。
  (1)8七玉 → 先手良し
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉  → 後手良し
  (4)4一角、3二歩、6七歩

 そして実戦は「(4)4一角、3二歩、6七歩」と進行した。 つまり、先手の分の悪い変化に入る可能性のある(3)のコースは避けたわけである。と同時に、(1)を逃したといえる。
 しかしそれは後に現れる「3七桂」の最善手を発見できなければ先手良しにはならない。その手は戦闘当時は発見できなかったのではないか。それなら、(1)8七玉を選んだ場合、先手はやはり苦戦することになっただろう。
 つまり、(1)および(3)の「8七玉コース」を選ばなかったのは正解だったかもしれない。


 ≪最終一番勝負 第29譜 指了図≫ 6七歩まで

 ただし、「6七歩」のコースを選ぶとしても、(後で冷静にふりかえってみれば)4一角打ちを保留して単に(2)6七歩のほうが、(4)4一角、3二歩、6七歩よりも優っていたという可能性は高い。 そのことは、後の譜の研究報告で具体的に明らかにしていくつもりである。

 ともかく、我々終盤探検隊は、▲4一角、△3二歩、▲6七歩 と指したのだった。



第30譜につづく
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終盤探検隊 part129 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第28譜

2019年08月05日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第28譜 指始図≫ 4一角まで

 指し手  △3二歩


    [ひみつのかがみ]
 ママ「しっかりおるすばんたのむわよ」
 アッコ「まかしといて」
 ママ「たまごやきなんかつくったりしちゃだめよ! おへやちらかさないことよ」
 アッコ「はあい」
 ママ「じゃいってくるわね」
  ジューーッ(注:卵焼きを焼く音)
 アッコ「イヒヒッ」
   (中略)
 男「わたしはかがみの国からきましてね。こうしてかがみがこわれたら新しいかがみとかえてあるいているんですよ。ただしあなたのようにかがみを大切にするひとだけにですがね」 
        (赤塚不二夫作『ひみつのアッコちゃん』より)


 赤塚不二夫作『ひみつのアッコちゃん』は、1962年から少女漫画雑誌『りぼん』で連載が始まっている。
 一方、TVアニメのほうは、1969~1970年である。
 TVアニメ『ひみつのアッコちゃん』で、アッコちゃんが使っている魔法のかがみは“コンパクトミラー”であった。すなわち、携帯用の小さな鏡である。

 しかし、オリジナルの赤塚不二夫の漫画の『ひみつのアッコちゃん』は、25~30センチメートルくらいの大きさの楕円形の鏡で、アッコは(ひみつのかがみなので)普段はこれを押し入れにしまっておき、必要な時に持ち出して遊ぶ。
 アッコちゃんにこの「秘密の鏡」をくれたのは、(漫画版では)「かがみの国からきた」という黒服・黒帽子・黒眼鏡のおじさんだ。おじさんと呼ぶには若い感じの男だが、鏡の国から来たのだと言う。アッコが大切にしていた鏡が割れてしまって悲しんで泣いていたところに、それを察知して「新しい鏡」を交換にやってきてくれたのだ(怪しすぎる…)
 この「新しい鏡」にむかって「なりたいものを逆さに唱える」と、それに変身することができる。たとえば、「ラレデンシ」と唱えれば、シンデレラになれるという仕組みだ。

 ところで、清少納言の『枕草子』の中に「鏡は」というタイトルの段がある。その本文は「鏡は八寸五分」と、これだけ。鏡は八寸五分のサイズがいいよね、ということか。

 アッコちゃんの鏡もだいたいそれくらいの大きさだ。たしかに、顔を見るにはちょうど良い。
 しかしこの大きさの鏡だと、友達と遊ぶときに、いちいち草むらの陰などにこの大切な鏡を隠しておかなければならず、不便である。大切な物だからこそ、気軽には持ち出せない。盗まれては困るし、鏡は割れてしまうリスクがある。だからアニメ版がコンパクトミラーに変更したというのもうなずける。コンパクトミラーなら、ポケットに入れておくことができる。
 しかし、漫画版の大きめの鏡のその“不便さ”が、まんが作品としては、アニメ版にない面白さを生み出していることも事実である。アッコちゃんは、変身したいとき、元にもどるとき、いちいち家まで戻らなければならない。“秘密をまもる”というのは苦労が多いのである。

 それにしても、この時代(1960年代)の漫画の子供は、よく走る。
 アッコちゃんは変身したいとおもったとき、家の押し入れの箱の中にしまってある「鏡」にむかって元気に走っていくのである。



<第28譜 ずっとこの手が指したかった>


≪指始図≫ 4一角まで

 我々は―――先手番をもつ終盤探検隊は―――▲4一角 と指した。
 この角打ちはずっと狙っていた手で、打ちたくてうずうずしていた。

 しかしこのタイミングでの4一角打ちは、あるいは早すぎたかもしれない。
 4一角に、後手3二歩が予想されるが、その後に先手は、「8七玉」と「6七歩」の2択になる。どちらを選ぶにしても、「4一角、3二歩」は、後でも入りそうなので、それなら4一角は後回しにしたほうが、手が広い可能性があるからだ。
 戦闘中は、とてもそこまで読み切れなかったので、「チャンスが来た!」という感覚で、とりあえず4一角を打って行ったのであった。「ここは4一角の打ち時だろう」と。


[調査研究: 後手3一歩]

変化3一歩基本図
 先手の▲4一角に対しては、「3二歩」が正着で、実戦で後手が指したのもその手である。

 しかし、代えて「3一歩」(図)も考えられる手である。もし後手がこの手を指していたら、先手は具体的にどう指せばよいかを、ここで確認しておきたい。

変化3一歩図01
 3一歩には、「2三」の弱点を衝く2六香(図)がよい。
 2三角成からの“詰めろ”なので、後手はこれを防がなければいけないが、3二歩 と受ける手と、桂馬を使って1一桂と受ける手がある(3二桂もある)

 3二歩 には、先手5二角成。

 これを 5二同歩 と取るか、または放置して 7五桂(先手玉に詰めろ)とがある。

5二同歩 なら、2三香成、同玉、2一竜で、2二歩合に、2五飛が抜け目ない決め方(次の図)

変化3一歩図02
 以下、2四香に、1五桂、1四玉、5五飛(次の図)

変化3一歩図03
 これで先手勝ちが決まった。後手玉は、2三銀以下の“詰めろ”。それを3一桂で受けても、2五銀、同香、2四金、同玉、3五金から詰んでいる。

変化3一歩図04
 5二角成に、7五桂(図)。 これは次に先手玉に6六との一手詰だ。
 8五歩では、6六と、8六玉、7四桂以下、後手ペースになる。
 ここは、しかし、8四馬と対応する手がある(次の図)

変化3一歩図05
 この8四馬(図)は、“詰めろ逃れの詰めろ”である。
 だからといって取る以外に手がなく、8四同歩(銀)に、2三香成、同玉、2四金、同玉、2六飛と進む(次の図)

変化3一歩図06
 2四金と捨てて2六飛(図)が鋭い詰み筋だった。後手玉のこの“詰み”を最後まで確認しておこう。
 2五歩合に、1五金、3四玉、2五金、3三玉、2四金、4四玉、4五歩、5四玉、6五金、4五玉、3七桂、3五玉、5三馬、同銀、4四銀(次の図)

変化3一歩図07
 5三馬切りから4四銀(図)が素早く華麗な詰ませ方である(ただし5三馬に代えて2五金、4四玉、4五歩、3三玉、2四金からの平凡な手でも詰む)
 4四同玉に、4五歩、3五玉、2五金まできれいな詰み。

変化3一歩図08
 「2六香」に、1一桂(図)と受けた場合(3二桂と受けた場合も同じように対応する)
 この場合は、8五歩がわかりやすい優勢拡大の手。

変化3一歩図09
 8五歩(図)に、7四金では先手玉が安全になって、後手に勝ち目がなくなる。
 なので、後手は6六と、8六玉、7四桂、9七玉、8五金と応じることになる。
 これは部分的には、後手がうまくやった形。
 しかし、先手としては、「後手に桂馬を使わせた」ということに意味がある。ここで後手玉の攻撃に入る。
 2三香成(次の図)

変化3一歩図10
 2三同桂に、2四金、3二歩、2六飛で、後手に受けがなく、先手勝ちがはっきりした(8六金には9八玉として、後手に香車が入っても、先手玉は詰まない)
 なお、2四金のところで、2六飛だと、2四歩(同飛には3二歩)で受かってしまい、勝ちを逃す。
 将棋の終盤は、勝ちになっても細心の注意が必要である。「勝った」と思ったときこそ、一番あぶない。 

 「3一歩」には、2六香以下、先手良し。



[調査研究: 先手8七玉(前回のつづき)]

7三同銀図
 これは今回の≪指始図≫の一手前の図。 ここで次の4つの手順が考えられると、すでに第27譜(前譜)で述べた。
  (1)8七玉
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉
  (4)4一角、3二歩、6七歩

 その報告(第27譜)では、(1)8七玉の調査を行った。
 それは結局、「互角」(形勢不明)ということでいったん調査を打ち切った。

 その調査をさらに進展させ、「新たな結論」へと変わったので、その内容および結果を以下に報告したい。


変化8七玉基本図
 「8七玉」と先手が指したところ。
 ここから、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七とが想定される手順であるが、そこで最有力手は、どうやら、4一角である(次の図)

変化4一角基本図
 4一角(図)、3二歩に、3三香と打ちこみ、3一銀、5二角成以下、進んで、次の図に至る。

変化8七玉図01
 この図がはたして、先手が良いのか、悪いのか、それがわからない。
 “最善”と思われる手をお互いが指しつないでいくと、次の「5五竜図」になる。(その内容は前譜での研究を参照のこと)

5五竜図(変化8七玉図02)
 前譜では、ここまで調べて、形勢不明とした。(この図は8七玉としたところから30手先の局面になる)
 今回はさらに先まで調べ、この図に“結論”を出す。
 ここで後手は、(A)「3三歩」または、(B)「3三桂」と「香車」を取ることになる。

 まず(A)「3三歩」から調査する。
 (A)「3三歩」、同歩成、同銀、7八歩(次の図)

変化8七玉図03
 先手玉は9六香の一手詰だったので、7八歩(図)とそれを受けた。
 以下、9六歩、9八玉、9七香、8九玉、9九香成、同玉、9七歩成、同金、9五香(次の図)

変化8七玉図04
 後手の攻めはなかなか途切れない。
 9六歩、同香、同金、7八角成(次の図)

変化8七玉図05(7八角成図)
 さて、この図はいったいどちらが良いのか。
 ここで先手9八銀がおそらく最善の応手。
 対して、8七桂不成 があるが――――
 同銀、同馬、8八金に、9八歩(次の図)

変化8七玉図06
 これを8九玉では、9六馬が詰めろになって後手の攻めが続くので後手良し。
 9八同金と取るのが正解で、以下、7七馬が“王手竜取り”で、8八金、5五馬となるが―――(次の図)

変化8七玉図07
 5二飛(図)と打てば、大駒(馬)を取りかえすことができる。 この図は、先手優勢の図。

変化8七玉図08
 したがって、後手7八角成に、先手が9八銀受けたとき、後手は 9六馬(図)と金を取る手が本筋の手となる。

 ここで先手は3四歩を利かす。同銀に、4六桂、4三銀とし、これで先手に桂馬が入れば、“3四桂打”と攻めることのできる形になった(その桂は7五にある)
 そこで9七歩と受けに回る(次の図)

変化8七玉図09
 手番の後手は、ここで指したい手が多い。〔あ〕8七桂成、〔い〕7八馬、〔う〕7六歩 などである。
 しかし、調査結果は、〔あ〕8七桂成 には8九香で、〔い〕7八馬 には8八金で、先手が指せるようだ。

 ここからは、最有力手と思われる〔う〕7六歩 以下を見ていく(次の図)

変化8七玉図10
 9六歩では、9七歩で、先手が不利になる。
 ここは7五竜が先手の戦える唯一の一手。同銀に、3四桂打が狙いだ(次の図)

変化8七玉図11
 3四同銀は、同桂、1一玉、9六歩(代えて7五馬は7九飛以下先手玉が詰まされる)、7七歩成、4四角以下、先手良し(3三歩に2二銀以下詰みがあるし、3三歩に7七角でも先手が良い)

 よって、後手は単に1一玉。
 1一玉に、7五馬(今度は7五馬が正解で、代えて9六歩は7七歩成で先手が悪い)
 以下、7九飛、8九香(次の図)

変化8七玉図12
 7九飛に8九香(図)と受けたが、代えて8九金だと8八金、同玉、7七歩成、9九玉、8九飛成以下、先手玉は寄っていた。8九香合が最善の受け。
 ここで後手7八馬が普通の手だが、それは2二金、同銀、同桂成、同玉、3一銀、3三玉、4二馬、4四玉、4三馬以下、後手玉が寄って、先手勝ちになる。
 したがって、後手はここで8八金と打ち捨て、同玉に、7八馬とスピードアップして攻めてくるしかない。
 以下、9九玉に、3四銀(次の図)

変化8七玉図13
 3四銀(図)で、今度は後手が桂を入手して、攻めに使おうとする。8七桂と打たれては先手が詰まされて負けだ。
 しかし先手には、6六馬があった。王手で、馬を攻防に働く位置に。
 後手3三歩に、8八金と受ける。以下、7七歩成、同金、同馬(次の図)

変化8七玉図14
 7七同馬、同飛成、3四桂、7六桂(次の図)

変化8七玉図15
 後手の攻めも“四枚の攻め”になっている(四枚の攻めは切れないというが…)
 8七金、7九竜(代えて6六角もあるが7七金、同角成、8八香打で先手良し)、4四角(次の図)

変化8七玉図16
 どうやら、「先手良し」が見えてきたようだ。それにしても「相穴熊」になっているのが面白い。
 7七歩、同角、6八角、6六角、7七歩、8八香打(次の図)

変化8七玉図17
 後手は7八歩成とするが、この手は詰めろではない。
 これでついに、攻守が入れかわる。
 2二銀、同銀、同桂成、同玉、5二飛、3二金(金合以外は3一銀以下詰み)、4二金(次の図)

変化8七玉図18
 先手勝ち。
 この図は、「8七玉」より94手後の局面になる(最新ソフトを使えば、ここまで調べられるというのがすごい)

 つまり、(A)「3三歩」以下は、先手良し。

 こう進むのであれば、先手は(1)8七玉を選ぶ価値があった。
 しかし、“もう一つの手”がある。

5五竜図(変化8七玉図02 再掲)
 「5五竜図」に戻って、もう一つの手(B)「3三桂」を見ていく。

変化8七玉図19
 以下、3三同歩成、同歩、となるが、このほうが後手陣は「スキがない」。 桂損をするよりそれが重要なことなのである。
 そこで7八歩 と受け、以下、同じように進んで、次の図になる。

変化8七玉図20
 9八銀に、そこで8七桂不成。
 以下、同銀、同馬、8八金、9八歩(次の図)

変化8七玉図21
 攻防の手順はまったく同じだが、後手の陣形が違う。
 さっきは「先手良し」になったが、この場合は逆にはっきり「後手良し」となる。
 9八同金に、7七馬~5五馬と、竜を取られ、今度は後手玉の“横っ腹が開いていない”ために、5二飛からその大駒(5五馬)を取り戻す手がないからまったく状況が異なるわけである。
 したがって、ここから先手が頑張るとすれば8九玉だが、9六馬、8七香、6九金、7八玉、6八金打、7七玉、6五歩となって―――(次の図)

変化8七玉図22
 後手優勢である。このままなら6六銀があるし、6五同竜には7四馬で、先手が悪い。

変化8七玉図23
 だから、「3三歩成、同歩」の後、先手は、7八銀(図)と銀で受ける。
 以下、9六歩、9八玉、9七香、8九玉、9九香成と、ここまでは同じ手順で進むが―――(次の図)

変化8七玉図24
 9九香成に、7九玉(図)とかわす。
 ここで「9七歩成」なら、先手6九銀と角を取り、6七桂成に、6八金と頑張る(次の図)

変化8七玉図25
 この図は、後手からの攻めの手段が多くて大変だが、正確に応じれば先手も戦えそうだ。

変化8七玉図26
 しかし、戻って、「9七歩成」ではなく、「5八角成」(図)が後手の最善の応手かと思われる。
 この手には、先手6八金があって、先手がやれそうに見えるのだが―――
 そこで6四銀が後手の絶好手である(次の図)

変化8七玉図27
 遊んでいた銀を6四銀(図)と、このタイミングで使うのが素晴らしい手。この手がなければ、6八金と打った場面は先手有望の図になるところであった。
 6四同竜は、6七歩で、後手良しがはっきりする。また、5八金、5五銀、5九金も、9七歩成(同金に7七歩)で、後手良しである。
 よって、ここでの先手の指し手は、【g】5二竜 か、【h】5八竜 の、2択。

 【g】5二竜 は、後手5七歩なら、8四馬、同歩、5八金、同歩成、4二竜から、後手玉を一気に詰め上げようというような狙いを持っている。
 しかし【g】5二竜 には、2五馬がピッタリの手になる(次の図)

変化8七玉図28
 2五馬(図)には、先手は5九竜(金のタダ取り)がある。
 しかし、6七歩が厳しい攻めだ(次の図)

変化8七玉図29
 5八金、8七香、同銀、5七歩、4八金、8七桂成、同金、6八銀(次の図)

変化8七玉図30
 後手優勢。 先手は持駒が多いが、攻めに使うひまがなく、やられてしまう。

変化8七玉図31
 【g】5二竜 では勝てないということであれば、先手は【h】5八竜(図)に期待したい。これで先手はますます“駒得”をしたが―――
 以下、同金、同金に、5七歩、同金、6七歩が厳しい攻め(次の図)

変化8七玉図32(6七歩図)
 これを先手はどう凌ぐか。放っておけば、後手5九飛や8七香が厳しい。
 “6九歩” が堅実な受けだが、8七香が刺さる(次の図)

変化8七玉図33
 8七同銀に、8九飛が鋭い攻めだ。8九同金、同成香(次の図)

変化8七玉図34
 きれいに寄せられてしまった。

変化8七玉図35
 「6七歩図(変化8七玉図32)」から、“5四角”(図)が工夫の一手。
 これには後手4三歩だが、そこで6九歩と受けてどうか。5四角を打ったので、これが受けに利いており、ここで8七香は同銀で今度は先手良しになる。
 5一香でどうなるかだが、それには3二歩、同銀、8二飛でどうかというところ。
 しかし、(5一香ではなく)5五飛があった。これが後手の最善手か(次の図)

変化8七玉図36
 5五飛(図)には、5六飛と受ける。以下、同飛、同金に、5九飛。
 つまり後手は先手の金を「5六」にうわずらせてから5九飛と打ったわけだが、これが読みの入った好手順で、これを「単に5九飛」としてしまうと、5八金打と受けられ、以下2九飛成、1五桂と進むと、先手ペースの戦いになっていた。
 
 先手は、2六飛。 この2六飛は、金取りを受けつつ、攻めを含みにした手。
 先手は、受け一方ではなく、どこかで後手陣に迫りたい。次に1五桂とすれば詰めろがかかる。後手の攻め駒はギリギリなので、受ける駒がない。だから後手玉に“詰めろ”をかける展開になれば、流れは先手になる。

 後手は6六香(次の図)

変化8七玉図37
 6六香(図)は“詰めろ”だが、これを6六同金は5四飛成と角を取られてしまう。
 先手は2三飛成と勝負する! 同玉に、4五角。
 以下、3四歩に、3五桂、3二玉(3三玉は2三金、4四玉、7一馬)、2三金、2一玉と後手玉を追い、そこで6六金と手を戻す。
 後手から詰めろが途切れれば、先手の勝ちになるが―――(次の図)

変化8七玉図38
 しかし5八飛成(図)が“詰めろ”なのだ。
 たとえばここで3四角なら、8九飛、同銀、同成香、同玉、8八竜以下“詰み”である。
 先手に適当な手(受け)がない。後手優勢である。

変化8七玉図39
 「6七歩図(変化8七玉図32)」に戻って、“7七角”(図)。
 これは、攻め味を持たせた手。3四桂と打てれば、先手ペースになる。
 後手は当然、3九飛と打って、その筋を防ぎつつ飛車を攻めに利かす。
 そこで先手の6九飛が工夫の一手である。
 そこで後手は応手に迷うところ。6九同飛成は、同玉で、むしろ少し先手玉は安全になり、先手有望の分かれになる(これが先手6九飛の狙いだ) また、3八飛成は3九金または3九歩で、はっきりしない。
 もっと良い手がある(次の図)

変化8七玉図40
 この瞬間に7六歩(図)と打つ手が好手となる。
 3九飛と飛車を取れば、7七歩成、同銀の後、後手4八角がぴったりの手になる。
 7六歩に、4四角と逃げる手には、3八飛成で、次に8七香をねらってはっきり後手優勢である(3九歩には6八歩成、同飛、4九竜が王手角取り)

 どうやら、先手の勝ちはないようだ。


5五竜図(変化8七玉図02 再掲)
 以上の調査により、この「5五竜図」は (B)「3三桂」以下後手良し、とはっきりした。

 すなわち――――

8七玉図
 この「8七玉図」から、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七とと進み―――

6七と図(再掲)
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕8八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 後手良し

 「形勢不明」としていた 〔D〕4一角 は、「 後手良し」、が今の調査で明らかになった。

 そして、この図で先手に勝てる手がないので、「後手良し」が結論となるのである。


 以上は、“戦後の調査研究”の内容である。


 “戦後研究”は、最新ソフトが使用できるため、今回の「8七玉」の研究のように、複雑な終盤にまでなんとか結論が出せる。

 しかし我々がこの「亜空間戦争」で、使用していたのは、「激指」(13および14)である。これだと、同じレベルまで調べ尽くすのに、最新ソフトの10倍以上の時間をかけないとたどり着けない、という感覚だ。
 だから「激指14」という強いソフトを使用しても、時間が十分にあっても、それを使う人間の気力体力の限界もあって、どこかで調査を打ち切らなければいけなくなる。

 実戦では、だから我々は読み切れないまま、自信の持てないまま、であった。
 変化の広い場面では、結局は最後は“勘”による手の選択になってしまうのだ。



 ≪最終一番勝負 第28譜 指了図≫ 3二歩まで

 「亜空間最終戦争一番勝負」の実戦は、▲4一角 に、△3二歩 まで進んだ。
 
 ここで、「8七玉」と、「6七歩」の2択だ。(他の手は後手7五桂で先手はっきり不利になる)
 そして、「8七玉」を選べば、いま研究調査した変化と合流する。


 我々(終盤探検隊)は、ここはその2択であることは、わかっていた。
 しかし、どちらの手も、読み切れてはいない。

 我々が選んだ手は――――



第29譜につづく
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終盤探検隊 part128 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第27譜

2019年07月27日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第27譜 指始図≫ 7三同銀まで

 指し手  ▲4一角


   [ミラーマン]
 朝焼けの光の中に立つ影は
 ミラーマン
 鏡の世界を通り抜け
 「今だ!キックを使え、目だ!」
 ミラーナイフが宙を切る
 戦え 僕らのミラーマン
  (『ミラーマンの唄』作詞:東京一 作曲・編曲:冬木透 唄・植木浩史、ハニー・ナイツ)




<第27譜 チャンスが来たか!?>



 これは、≪指始図≫の一手前の局面。ここで7五銀なら先手が苦しい。
 後手はこの一瞬、有利に運ぶチャンスを得たのだった。

 後手の手を待つ時間に、我々(終盤探検隊)は、自分の指した7三歩成が“悪手”だった、と自覚した。
 歯を食いしばって、次の状況に備えていた。どうやって、この危機を凌ごうか―――と。

 そして、後手(=≪亜空間の主(ぬし)≫)は、△7三同銀 を指した。

≪指始図≫ 7三同銀まで
 「これはチャンスが来たのではないか!?」―――と、この手を見て、我々(終盤探検隊)は思った。
 △7三同銀も“悪手”ではないか。直感的にそう感じたのだった。

 一手前の我々の指し手▲7三歩成が、たしかに失着であったことは前回に確認した。
 ▲7三歩成は、後手7五銀と出られると、「7三のと金」が有効に働かないと「一手パス」になってしまうし、7筋に歩が攻めに使えるようになったことも、後手にプラスになっている。
 我々はなぜかふらふらと▲7三歩成を指してしまったのである。(そのときの思考内容はすでに覚えていないが、瞬間的にこの手が良い手だと錯覚してしまったのだろう)
 予定の8七玉なら、先手が有利だったのに……。

 △7三同銀
 おそらく、これも“悪手”だろう。後手はチャンス(7五銀)を逃した。
 “悪手が悪手を呼んだ”のかもしれない。
 この局面の形勢はまだはっきりしない。ただ(感覚的に)△7三同銀が甘い手だったことはわかる。

 さあ、ここで踏ん張って(落ち着いて)正しく指すことが大事である。ここからが、勝負だ。「勝ち」があることを信じて、頑張ろう。浮足立ってもいけない。

 ここでは、「8七玉」と、「6七歩」と、それから「4一角」が有力手である。

 それ以外の手は、うまくいかない。まずそのことを確認しておこう。

2五香図1
 たとえばここで「2五香」(図)とする。
 それには、“7五桂”が後手の返し技である(次の図)

2五香図2
 次に6六とまでの“詰めろ”だ。7七玉と逃げても、6七と、8八玉、7六桂と追い詰められて先手勝てない。
 なのでここは8五歩とするが、それには6六と、8六玉、7四桂がピッタリの手で、以下9七玉、7七と、9八金、8五金となる(次の図)

2五香図3
 先に「2五香」を打っておいた効果で、ここで2六飛という攻防の手がある。
 しかし、2六飛、8六金、同飛、同桂、同玉、8四銀、同馬、同歩、7五玉、6四飛(次の図)

2五香図4
 2三香成から詰んでいればこの順で先手有望だったが、詰みはない。
 この図は、6六銀、8六玉、7五角までの三手詰になっており、後手勝勢である。
 この通り、「2五香」には、“7五桂”があって、先手が悪い。

≪指始図≫(再掲) 7三同銀まで
 同じく、ここで「5四歩」にもやはり、“7五桂”があって、あっさり先手不利になる。
 つまりここでは7六玉型のまま後手に“7五桂”と打たれる形を回避しなければいけない。それには、「8七玉」か、「6七歩」(7五桂と打たれても8五歩で後手の6六とがないので先手が良い)ということになる。
 さらに、ここで「4一角」もある。ただし、「4一角」は3二歩と受けられるが、そこでやはり先手は「8七玉」と「6七歩」の2手の選択に迫られる。
 つまり、ここでの先手の手順の選択肢は次の4通りということになる。
  (1)8七玉
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉
  (4)4一角、3二歩、6七歩


[調査研究:8七玉]

8七玉図(今回のテーマ図)
 今回の譜では、「(1)8七玉(図)でどうなるか」をテーマにしたいと思う。(この結論は簡単ではない)

 2手前の―――7三歩成、同銀を交換する前の―――8七玉は「先手良し」になった。(→第25譜
 それとはまた状況が変わってきている。後手の銀を7三に引かせたのは先手にとってプラス。しかし7筋に歩の攻めが利くようになったのは、マイナスになる。
 さて、ここでの「8七玉」で、先手良しになっているのかどうか。

 この図での後手の最善手は 7五桂 であるとして、以下の研究調査を進めていく。
 先手は「9七玉」(次の図)

9七玉図
 ここで後手の選択肢は2つ。
 「6六と」と、「7六歩、7八歩、6七と」(単に6七とだと先手7六歩があるので先に7六歩と打っておく)である。
 結論から言うと、「6六と」はわりと簡単に先手良しになる。よって後者の「7六歩、7八歩、6七と」が最善手順となる。

 まず「6六と」以下を見ておこう。

後手6六と基本図
 「6六と」(図)に対しては、先受けして、「8九香」とするのが良い(次の図)

後手6六と図01
 「8九香」(図)と受けた。
 ここで後手が先手に迫る手は、7六と7七と が有力だ。
 
 7六と には、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成という、もう何度も見てきた攻めを敢行する(次の図)

後手6六と図02
 先手良し。5二同歩は3一飛だし、他に後手有効な手もない。8九香と先受けした効果で、先手玉に有効な詰めろがかからない(8七桂成、同香、7五桂は、7九桂で受かる)

 それでは、7六と に代えて、7七と ならどうか。

後手6六と図03
 7七と には、7六歩(図)がある。
 7六同とでは、先ほどと同じなので、後手6七桂成しかなさそうだが、それにもやはり4一角以下、同じ攻めで先手が優勢になる。

 このように、「6六と」には、「8九香」で、先手良しになるということがわかる。

6七と図
 そういうことで、後手の本筋の手は、「9七玉図」から、「7六歩、7八歩、6七と」(図)ということになる。
 ここで同じように、8九香と打つのは、今度は7八とが香取りになるので、これは後手良しとなる。「6七と」は、つまり先手の8九香を封じているのだ。
 そして後手は、先手の手を見て、次に“7八と”と指すか、“7七歩成、同歩、同と”で先手玉に詰めろをかけるかを選択できるという状況だ。

 先手の“次の手”が形勢を大きく左右する。さあ、何を指すか。
 最新ソフトはここで3筋に香車を打つ手を推奨してくる。まずそれから考えよう。

変化3九香基本図
 〔A〕3九香(図)。
 ここで後手7八となら、先手が勝ちになる。8四馬、同銀、3三金、同桂、同歩成、同銀、1一角、同玉、3一飛、2一合、2二金、同玉、3三香成以下、“詰み”
 なので、後手は7七歩成、同歩、同とと迫ってくる。
 先手は9八角とこれを受ける。後手は7六歩(次の図)

変化3九香図01
 ここで3四歩なら、8七と、同角、同桂成、同玉、7五桂、7六玉、5八角、7七玉、7六歩、8八玉、6六銀(次の図)

変化3九香図02
 こうなって、後手優勢。
 7八歩の受けには、7七歩成、同歩、7六歩と攻められて先手が勝てない。
 今の手順で、ポイントは5八角と打つところで、これによって、6六銀と出たときの先手の3三歩成、同銀、同香成、同玉、3六飛という両取りを消している。

変化3九香図03
 よって後手7六歩に、7八歩(図)と打つのが正着となる。
 これを同となら、3四歩が先手で入る。以下、3二歩には、3三歩成、同歩、3四歩、同歩、2六桂で、これは「3九香」作戦の理想的な展開になる。
 といって、先手7八歩に、後手8七とと行くのは、同角、同桂成、同玉となるが、先手に桂馬が入ると3四桂の攻めも生じ、これも先手ペースになる。
 したがって、先手7八歩には3四歩と受けるのが後手の最善手。これを同香とする攻めは後手としては恐くない。今度は8七と、同角、同桂成、同玉の攻めが有効になり、以下7五桂、9七玉に、9五歩で、これは後手優勢。

 先手はだから、この図から、7七歩、同歩成、7六歩とする。
 以下6七桂成で、後手の攻めを遅らせることができた。
 そこで4一飛と打って、どうか(次の図)

変化3九香図04
 4一飛(図)と先手は飛車を打った。
 後手はこれを2一桂と受けるのが良い。この桂は3三に利かせる意味もある(受けないと8四馬、同銀、2一金の寄せがある)
 先手はここで5四歩。これを同銀は5三歩で、4四銀または6四銀は6三金で、先手が勝勢になる。(3二玉は有力。しかし5三歩成以下先手良しの調査結果となった)
 よって後手は6二銀左。これが最善手。
 そこで先手6一竜という手が攻めの継続手。 後手は3二玉(次の図)

変化3九香図05
 3二玉(図)は、先手の狙いの5二竜、同歩、4二飛成を受けつつ、飛車取り。
 ここで先手は2二金。これに同玉なら、いまの5二竜以下の攻めが炸裂するが、先手は4一玉と応じる。飛車を取った。
 そこで先手8四馬(金を入手)だが、後手は詰めろを受けて、3一銀(次の図)

変化3九香図06
 3一銀(図)がうまい切り返しだった。後手に金が入ると、先手玉は8七金以下詰まされる。
 この図から、7五馬、6四歩、1二金が想定される。しかし、5八飛、8九香に、7八成桂と進んで、そこで先手からのよい攻めがないので、後手勝ちの判定になる。

変化3九香図07
 今の手順を途中まで戻り、4一飛と打つ手に代えて、3五歩としたのがこの図。
 3五同歩なら、そこで4一飛と打って、今度は3四歩があるので攻めの迫力が大分違う。
 しかし――――(次の図)

変化3九香図08
 先手3五歩を手抜きして、8七桂(図)が後手の速い攻めである。
 以下、同角、同と、同玉、6九角、9七玉、7七成桂、9八金、9五歩、同歩、7六成桂(次の図)

変化3九香図09
 後手勝勢である。(次の後手の狙いは9六歩、8八玉、6六銀。8七桂と受けても、9六歩、同玉、8七成桂、同金、7五桂)

 以上の検討により、〔A〕3九香(図)は、7七歩成以下後手良し、とわかった。




変化2五香基本図
 〔B〕2五香
 この手は、最新ソフトはあまり重視していなかったが、調べてみるとかなり有力で、先手が勝てそうな変化が多い。
 以下、7七歩成、同歩、同とに、9八金と受けることになる。
 そこで例えば後手が7六歩と攻めの手を指してくれば、その手は詰めろではないので、2六飛、3一桂、4五角で、先手有利になる。そうなると後手に受けが困難である。
 したがって、後手は3一桂と受けることになる。「2三」を先受けしたことで、先手2六飛には4四銀上を用意した。先手の4五角を消しながら次に後手3五銀から飛車を捕獲する手があって、先手2六飛の攻めはうまくいかない。
 先手は 7八歩 と打つ(次の図)

変化2五香図01
 この 7八歩(図)を同となら、7六歩、6七桂成、4五角(次の図)

変化2五香図02
 4五角(図)と打たれ、7七成桂なら、2三香成、同桂(同玉は3三歩成、同玉、1二角成)、2六飛で先手有利。
 後手9五歩で勝負。以下、2六飛、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、8四馬(次の図)

変化2五香図03
 先手勝ちになった。 7八同となら、先手が良くなる。

変化2五香図04
 ということで、先手の7八歩に、後手は7六歩(図)と対応することになる。 

 すると、〔B〕2五香 は、千日手、が結論となるのか。
 仮に、この「最終一番勝負」が「千日手」となれば、次の参考図(=亜空間初形図)から、“先後を入れ代えて”のやり直し勝負となる。

参考図(亜空間入口図)
 しかしこの図は、もうずいぶんと調査が進んで、どうやらこの図は先手に勝ち筋があることがわかっている(はじめはそれが見つからず困っていたのだったが)
 そして、それはもう後手番の≪亜空間のぬし≫もわかっているはずである。
 それなら、“先後を入れ代えて”、後手番を持つことになるのは、限りなく負けに等しい。

 つまり、「千日手は先手不利に等しい」ということになるのである。「千日手」では、我々(終盤探検隊)は困る。

 千日手を打開する手は何かないか。

変化2五香図05
 ということで、7八歩 を打つところで、代えて、3七角(図)でどうか。
 これには6四銀上が常識的な対応だが、6五歩や5九角で、結局金か銀を取られてしまうので、それなら無理に受けず“6六銀”と攻めに銀を使う手が良い手になる。
 7三角成に、7六と。
 ここで2六飛と打って、7七銀成に7八銀と受ける手はある。しかし、同成銀に、7六飛、8九銀と進むと、どうやら後手が良い。
 先手8五歩という手が面白い手だ。これでどうなるか。8五歩(図)を同金は、8九飛と打つ意味で、こうなると先手ペースになりそう。
 だが、8五歩に、6三金が絶妙な切り返しである(次の図)

変化2五香図06
 6三同馬と取らせて、7七銀成で後手良しという狙い。(6二金もあるが、4六馬と引かれたとき、以下7七銀成、5五馬、4四歩という展開になったとき、6三のほうがより働きが良い)
 6三金に、先手は3三歩成を利かす。同銀に、5一馬と入る。後手玉は、3二飛以下の“詰めろ”だ。
 なので後手は4二銀右と受ける。4一馬に、7七銀成(次の図)

変化2五香図07
 後手優勢である。

変化2五香図08
 もう一つの手は、先手7八歩 に、後手が7六歩とした場面で、そこで「3七角」(図)とする手。
 今度は6六銀、7三角成の展開は先手が得だ(後手の攻めが渋滞している)
 なので後手6四銀右と受け、先手は6五歩。以下、6六歩、6四歩、6七歩成。
 そこで8五歩、同金を入れてから、5五角が先手の工夫。
 4四銀に、8六銀(次の図)

変化2五香図09
 5五角、4四銀に、角を逃げていては勝負にならないので、8六銀(図)と打った。 同金、同玉なら、先手が良い。
 なので、5五銀、8五銀と進み、そこで7六銀打で頑張る。
 以下、7四歩(次の図)

変化2五香図10
 9四馬、9三歩、同竜、8七桂成、同金、同と、同銀、7七と、9八銀、7五角(次の図)

変化2五香図11
 8六金、9三角、同馬、8八金(好手)、9五歩、9九金、8七銀、8四香、同銀、同歩、同馬、7八銀(次の図)

変化2五香図12
 この図は後手良し。
 ただし、この変化は、勝負的には「互角」に近く、一手でも後手が間違えると先手が勝てそうなところはある。しかし調査研究の結果は、とりあえず「後手良し」とする。

 以上の調査により、〔B〕2五香 は後手良し、が結論となる。
 (「千日手」に持ち込むことはできるが、それは先手不利の「亜空間初形図」の後手番になるのでつまらない)


6七と図(再掲)
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し(または千日手)
  〔C〕8八金
  〔D〕4一角

 〔C〕8八金 は、先手勝てない。
 〔C〕8八金に、6六銀とされ、この2手の交換は、先手に攻める駒が少なくなった分、先手が損をしている。
 よって、
  〔C〕8八金 → 後手良し
 となり、先手番の勝利への希望は、〔D〕4一角 に託されることなるわけである。


変化4一角基本図
 〔D〕4一角 には、後手3二歩。
 そこで先手の攻めは2種類ある。
 「3三歩成、同銀、5二角成」 と、「3三香」 である。

変化4一角図01
 「3三歩成(図)、同銀、5二角成」 は、5二同歩なら、3一飛で先手が良し。
 しかしそうは進まない。7七歩成、同歩、同ととなり、先手玉が“詰めろ”である。
 そこで先手は4三馬がある。
 しかしこの場合、以前に見てきた場合と異なるのは、そこで後手に“7六歩”という手があることだ(次の図)

変化4一角図02
 これには、8九香と受けるしかないが、そこで後手は4二銀左(4二銀右は5四馬で先手がやや指しやすい形勢)、2五馬、8七と、同香、7七歩成(7六歩の効果でこの攻めがある)、9八金(次の図)

変化4一角図03
 金で受けるしかないが、8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂と、休まず攻め続けられ、7七玉に、6六歩、6八歩、6四香、3四桂、3三玉(次の図)

変化4一角図04
 後手勝勢の図である。
 「3三歩成、同銀、5二角成」 の攻めは先手に勝ち筋がなかった。

変化4一角図05
 「3三香」(図)が、“最後の手段”である。
 「3三香」 には、3一銀が後手の最善の受け。
 以下、5二角成、7七歩成、同歩、同と、4三馬と同じように進む(次の図)

変化4一角図06
 「3三香」が刺さっているところが先ほどと大きな違いで、3二香成、同銀、3三金からの“詰めろ”なので、今度は後手7六歩は利かない。またここで4二銀右も、3二香成、同銀、3三金から詰む。
 よって、この図では、後手は8七桂成から馬を消す手段に出るしかない。8七桂成、同馬、同と、同玉。
 さらに、7五桂、9七玉、6九角、8八金、9五歩と進行しそうだ(次の図)

変化4一角図07
 後手に持駒が歩しかないので、先手が良さそうに見えるが、実はそうでもない。7筋に歩も使えるし、形勢は予断を許さない(つまり「互角」だ)
 もう少し先まで、調べよう。
 ここは先手9八玉が最善手とみる。
 攻める手は5一竜だが、ここで5一竜は、6二銀右と応じられると、6一竜、5一歩のような展開になり、これは後手ペース。5一竜に、“4一竜”としたいのだが、9六角成が王手竜取りになっている。
 だから9八玉なのだが、9八玉に、後手6二銀右のような手なら、5七飛の“両取り”があって先手が良い。また7七歩は6八金でこれも先手良し。
 なので後手は9六歩だが、そこで先手は5一竜とする。
 (代えて5七飛はここでは遅い。3三桂から9七香の後手の攻めが早い。また、4一飛も、9七歩成、同玉、4二銀右、4三歩、3三桂以下、後手良し) 

変化4一角図08
 5一竜(図)と待望の手を指せた。
 ここで後手が何を指すか。6二銀右は、今度は4一竜があって無効。4二銀引も、3二香成、同玉、5二飛という手で、後手玉が寄る。
 なので、後手は9七歩成、同玉と、細工をしておいてから、4二銀引。これなら、先手は香車を渡せないので、5五竜と銀を取っておくことになる(次の図)

変化4一角図09
 5五竜(図)として、駒得をしたし、竜も使えそうだしで、先手が優勢になったと思いたいが、実はまだ形勢がはっきりせず、「互角」というしかない。
 ここで後手は3三歩または、3三桂が有力手となる(香車を取って9六香と打つ狙い)
 3三歩、同歩成、同銀、7八歩、9六歩、9八玉、9七香という展開が予想される。
 この後手の攻めは簡単には切れず、まだまだ厳しい戦いが続く。

 ここまでで調査を打ち切り、「形勢不明(互角)」としたい。
 すなわち、〔D〕4一角 は、3二歩、3三香以下、「形勢不明(互角)」


6七と図(再掲)
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕5八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 形勢不明(互角)

 つまり、まとめるとこのような調査結果である。
 ≪指始図≫で、先手が「8七玉」の手を選ぶと、どうやらこの 〔D〕4一角 の「形勢不明」の変化に飛び込むことになりそうだ。


変化後手7六歩基本図
 さて、「8七玉図」から、7五桂 以下を調査研究してきたのだが、「7五桂」を打たない手段が後手にあるかどうかを確認しておきたい。

 他の手を指すとすれば、7六歩 だ。
 以下、7八歩、6七とで、次の図となる。

変化後手7六歩図1
 後手としては「7五桂」と打てば、いつでも先ほどの順に戻すこともできるので、打たないで置いたほうが手が広いということは言える。
 もしもここで、先手9七玉ならどうなるだろう?

変化後手7六歩図2
 後手7八と(図)。 後手が「7五桂」を打たない変化を追求するならこの手になる。
 この図はどちらがよいのか。
 先手は、後手の7七歩成が来る前に攻めたいところ。とはいえ、角を渡せない状況なので、どう攻めるか難しい。
 4一角、3二歩、3六飛でどうか(次の図)

変化後手7六歩図3
 3六飛(図)は後手玉への詰めろではないが、7七歩成なら、3三香と打って、先手が攻め勝つ。4四銀引と受ければ、7六飛だ(先手良し)
 3一銀と受けるのが後手のベストな手で、それでも3三香なら、4二金と受けて、受かっている。それははっきり後手良し。
 だから先手は2六香と打って、2三香成、同玉、3三金の寄せを狙う。後手はそれを1一桂と受ける(2六香と1一桂の交換は少し先手が得)
 そこで7六飛とする。これで先手良さそうに見えるが、まだはっきりしない。
 6二銀引、7八飛、4二金(次の図)

変化後手7六歩図4
 3一銀と引いた効果で、ここで4二金(図)が指せる。
 これで先手の角は行き場がなく、7四角成、同金、同飛となりそうだが、そこで6六歩として、どうやらわずかながら「後手良し」なのである。(最新ソフト「dolphin1/Kristallweizen」評価値は-312)

変化後手7六歩図5
 9七玉で先手不満となれば、先手は他の手をさがす必要がある。
 ということであれば、4一角からここで攻めていくか。試しに、やってみよう。
 4一角、3二歩、3三香、3一銀、5二角成(次の図)

変化後手7六歩図6
 ここで「7五桂」は、上の変化に合流する(「形勢不明」の結果になった)
 それを後手が“もっとよくしたい”ということであれば、ここで7七歩成、同歩、5二歩と取ってどうか。
 以下、4一飛(4二銀と応じる手は同飛成で無効)に、5四角(次の図)

変化後手7六歩図7
 9七玉に、8一桂だ。
 これには同竜。以下、同角、同飛成、4二銀引に、3二香成。
 3二香成を同玉は、2四桂以下“詰み”
 なので3二同銀だが、先手は5四桂(次の図)

変化後手7六歩図8
 5四桂(図)は3一角以下“詰めろ”なので7七とは間に合わない。
 ここで3一飛と受けるのが最強のがんばりだが、4二桂成、8一飛に、3六角と打つ手が、次に3二成桂、同玉、3三銀以下の“詰めろ”になっている。
 先手勝勢である。

 ということで、後手は結局、「7五桂」と打つ形にするのが“最善”で、それ以外の手は負けになるとわかった。すぐに「7五桂」を打つ必要もなさそうだが、結局その形に戻ることになるようである。


6七歩図
 さて、もう一つ、(2)6七歩(図)がある。 今調べた (1)8七玉 と並んで有力な候補手である。
 ただし、これは今回は調査しない。

 そして我々終盤探検隊が選択して指した手は、このどちらでもない、“第3の手”だった。



≪最終一番勝負 第27譜 指了図≫

 ▲4一角 である。

 我々は―――終盤探検隊は―――この手をずっと指したいと思っていた。



第28譜につづく
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終盤探検隊 part127 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第26譜

2019年07月19日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第26譜 指始図≫ 7三歩成まで

 指し手  △7三同銀


    [『Fire-ball』の扉絵 ]
男A「とにかく今度の蜂起では必ずATOMの存在を確認しないと」
ひげの男「そうだな。ATOMの存在の確証さえつかめば市民も我々に着くことは必至だ」
大沢ひかる「アトム…?」
   (中略)
ひげの男「急ぐんだ。捕まった幹部が口を割らされたらしい」
大沢ひかる「クスリですね」
ひげの男「ATOM計画は我々が考えているよりすすんでいるようだ。あれができちまったらアウトだからな」
ひげの男「それに我々のスパイがやられた……。もう情報が入らん。」
ひげの男「ヤツの情報によると今ATOMを使って人体実験をしているらしいんだ……。これを公表出来たらスゴイぞ」
大沢ひかる「人体実験…?」
ひげの男「ああ、機動隊の隊員で超能力を持っている男だそうだ…」
ひげの男「決行は一週間後に……? どうかしたのか……」
   (大友克洋作 漫画『Fire-ball』)



 大友克洋作『AKIRA』は有名だが、漫画『Fire-ball』はその原型となる作品で、1978年暮れに双葉社「アクションデラックス」誌に発表されたもの。
 巨大コンピューターATOMと、超能力兄弟(大沢晃と大沢ひかる)とが闘う話である。内容的には、その闘いが始まったところで、話が終わっている。

 いま読むと、『Fire-ball』は、『AKIRA』と較べると、メインキャラの風貌が“地味な”ところが決定的な違いで、そこがとても面白い。兄弟と対決するコンピューターATOM計画を強力に押し進めるリーダー役は、小太りで眼鏡のこれまた“平凡顔”のおばちゃんである。(『AKIRA』では強そうなモヒカンの大佐に代わっていた)
 もともとこれ―――主人公の風貌の平凡さ、地味さ―――が大友克洋漫画作品の個性だった。
 そして、近未来なのに、携帯電話をだれも使っていないところがまた異世界のようでおもしろい(映画『ブレードランナー』もそうだった)

 大友克洋の初期作品には、『鏡』というタイトルの短編もあり、また江戸川乱歩の小説『鏡地獄』を漫画化したものもある。どちらも“狂気的な”風味の作品である。
 この『Fire-ball』のタイトルページ(扉絵)は、「ボール型の鏡」に映ってゆがんでみえる部屋を描いている。その部屋の中には分解された(あるいは作りかけの)頭のない人間型ロボットが映っている。
 ――――よく見ると、「ボール型の鏡」と思っていたものは、このロボットの頭だった。
 (この絵の元ネタは、画家エッシャーの「球面鏡に写る自画像」の絵)



<第26譜 悪手は悪手を呼ぶ>

≪指始図≫ 7三歩成まで

 「亜空間戦争一番勝負」、先手の終盤探検隊が ▲7三歩成 と指したところ。

 悪手であった。 ▲8七玉が予定だったのに―――そしてそう指せば実際先手有望だったのに―――なぜか、▲7三歩成を選んだのである。“魔物のしわざ”だとしか言いようがない。
 (指した瞬間はしかしこれがベストだと思って指していたはずだが)

 指した後、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫の手を待っている間に、7三歩成が悪手だと気づいた。
 ここで後手7五銀と指されて―――――負けそうだ。

 嗚呼―――――。


5六と図
 その一手前の局面。後手が「△5六と」としたところ。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 先手良し
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → 先手良し
  【未】7三歩成

 先手良しとなっている 【午】8七玉【卯】4一角 とは、実質同じもので、8七玉から9七玉と玉を先逃げしておいて、4一角から攻めていくという意味。つまりこの場合“手順前後”が成立して、どちらが先でもよいのである。

 そして、「【未】7三歩成 → 後手良し 」である。

≪指始図≫(再掲)7三歩成まで
 ほんとうに、この図はすでに「先手が悪い」のだろうか。 
 今回の報告では、それを検証していく。
 ここから、「7五銀、8七玉、6六と」が我々(終盤探検隊=先手)の恐れている手順である。
 (他に「6六と、8七玉、7五桂」もある。選択権は後手にある)

7五銀基本図
 ここで攻める手は先手勝てない。
 “4一角”が先手期待の攻め筋だが、“4一角”、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩の後、次の攻めがない。6一飛のように飛車を打ちたいが、8一桂(同竜は5四角の王手竜取り)があって、後手良し。先手の「8七玉」の位置が悪いのだ。
 それなら、ここで5四歩はどうだろう。これならいまの“後手5四角”の手がない。
 しかし5四歩は、手抜きして攻められる。5四歩、7六銀、9七玉、7七と、8九香、7五桂(次の図)、

変化4一角図
 図以下、9八角(金で受けるのは8七桂成以下全部清算して再度7五桂と打たれて寄り)、8七桂成、同香、7五桂、7九桂に、7八歩となって、後手の勝ち将棋。
 5三歩成の余裕がない。

7五銀基本図(再掲)
 ここで“6三と”も、同じことだ。7六銀以下攻められて先手負け。
 つまり、この図で攻めの手はうまくいかない。

 この図での先手の候補手は、〔a〕9七玉〔b〕8九香〔c〕9八玉 の3つ。
 順に見ていく。


変化9七玉図01
 〔a〕9七玉(図)と玉を早逃げして、4一角や6三との攻めのチャンスを窺う。
 しかし、7六と、8八香に、8六銀(次の図)

変化9七玉図02
 8六銀(図)と、休まず攻めたててくる。
 8六同香、8五桂、同香、同金、8七歩、7五桂、9八銀、8四香、8八玉、8六金(次の図)

変化9七玉図03
 速い攻めで寄せられてしまった。


変化8九香図01
 〔b〕8九香(図)
 ここは、後手も 「7六銀」「7六と」 とで、手の選択に迷うところ。
 「7六銀」には、9八玉(次の図)

変化8九香図02
 ここで 7七と7五桂 がある。
 7五桂 はしかし、そこで7四とがあって、同金に、7八歩、7七歩、7五馬(次の図)

変化8九香図03
 7五で取った桂馬を3三桂と打ちこんで、こうなると先手優勢になっている。

変化8九香図04
 だから後手は 7七と(図)を選ぶことになる。
 これに対しても、ここで7四とがある(次の図)

変化8九香図05
 先手としては、7三歩成でつくった「と金」を、このように有効に働かせる展開になることが望ましい。
 この7四と(図)を同金は、先手が良くなる(4一角、3二歩、5二角成)
 他に手がなければ先手良しで確定するが、ここで“8七桂”があった。以下、7八歩、9九桂成、9七玉(次の図)

変化8九香図06
 ここで7八となら、5四歩と打って先手が勝てる展開になる(5四同銀には3三歩成、同銀、7二飛、3二歩、8四と)
 8九成桂が後手としては最善で、以下7七歩、同銀不成、7八歩、8八銀不成、8七玉、7四金、7二飛と進んで―――(次の図)

変化8九香図07
 形勢不明である。以下は、6二桂、6三歩、7三香、6二歩成、同銀、4一角の進行が予想される。
 このように、「7六銀」 では「互角」になって、後手としてははっきり良くなる順を求めたいところなので、おもしろくない分かれである。

変化8九香図08
 後手の“本筋”は、「7六と」(図)である。
 以下、9八玉に、8六銀(次の図)

変化8九香図09
 「8六同香」と「8七歩」が考えられる手。
 「8六同香」には、7五桂と打つ。以下9七金(代えて8八歩では8六とで後手良し)、6六銀、6三と、8五桂、同香、同金、8八歩、8六と(次の図)

変化8九香図10
 後手の攻めがほどけない。後手優勢。

変化8九香図11
 「8七歩」(図)と受けた場合。
 ここで後手に攻めの継続手がなければ、先手が良くなる。図で7七銀成なら、7八歩、同成銀、6三とで先手良しである。
 ところが、“9七桂”という妙手がある。8八香なら、今度は7七銀成とし、7八歩にも同成銀で次に7七とが狙いとなって後手が良い。
 “9七桂”に、8六歩、8九桂成、同玉、8七と、7八銀、7五桂と進んで―――(次の図)

変化8九香図12
 後手の攻めが切れない。次に後手7七歩があって、先手玉は助からない。
 
 〔b〕8九香 は、後手良しがはっきりした。


変化9八玉図01
 ということで、〔c〕9八玉(図)が、先手“最後の手”になる。
 この手が一番手が広くて闘える可能性がある。相手の手を見て、持駒の「香」を攻めと受けとの使い分けができるからだ。
 ここで後手 (1)7六銀 には、先手8九香と打って、それは先ほど調べた「形勢不明」の変化に合流する。
 後手としては、他の手でもっとよくできるか、という問題になる。

 しかしここは、(2)7六と でも、先手にうまい攻めがあって、先手良しになるのである。
 (2)7六と に、4一角、3二歩、3三香と攻める。これには3一銀が最善の対応だが、そこで3七飛と打つ。(次の図)

変化9八玉図02
 後手玉は、“詰めろ”がかかっている。それを受ける必要があるが、4二金は、5一竜、4一金、同竜で、以下8六銀には3一竜、同玉、3二香成、同玉、3三銀、4一玉、4二歩以下、後手玉詰み。
 4二銀引には5三歩がある。5三同金に、8四馬と金を取り、その手がやはり“詰めろ”になる。これも先手良し。
 4四銀引には5二角成である(5二同歩は3一竜以下詰み)

 これはどうやら、先手が勝てる図になっている。
 「7六と」の形が、角を手にしてもすぐに先手玉を詰ませられない形になっているので、先手のこの攻めが後手に届いたのである。

変化9八玉図03
 ということで、第3の手、(3)7七と(図)。
 今度は、後手は角を持てば、8七角から先手玉を詰ませることができる。
 すなわち、“4一角”、3二歩、3三香、3一銀、3七飛には、4二金と対応する(次の図)

変化9八玉図04
 先手は7七の「と金」を払いたいが、ここで7七飛は4一金と角を取られて先手が悪い。
 だからといって、6三角成では、7六銀で後手が勝ち。

 図以下、8四馬(同歩なら後手玉に詰みがある)、4一金、7五馬、8七角(次の図)

変化9八玉図05
 先手は8四馬~7五馬で、上部の金銀をさらったので、8七角(図)は詰みにはならないが、9七玉、7八角成、8九香に、6四銀上、7四馬、7五桂で、やはり後手が勝ちになる。

 “4一角” では先手勝てない。 (3)7七と には、次に示す手が先手の最善手であろう。

変化9八玉図06
 “7八歩”(図)と打つ。
 同となら6三とが利く。同金に、今度こそ4一角~3三香が有効になって、先手が勝てる。
 7八歩に、7六とでも、先手玉がすこし安全になるので、やはり6三とが利いて先手良しになる。
 7八歩に、後手の最善手は8六銀である。以下、7七歩に、8五桂と進む。
 そこで4一角、3二歩、3三香でどうなるか(次の図)

変化9八玉図07
 後手3一銀に、そこで「8七金」と受ける。
 「8七金」には、同銀成もあるが、できるだけ中段玉にはしたくないので、「7七銀不成」とする(次の図)

変化9八玉図08(7七銀不成図)
 「7七銀不成」(図)として、次の後手の狙いの手は8六桂である。
 なので、ここで先手は 8六歩 と打つのが自然であろう。(他に候補手として 3七飛 があり後述する)
 対して、後手は「7五桂」と桂を打つ(次の図)

変化9八玉図09
 ここで、7六金 と、8五歩 がある。
 まず、7六金 には、後手4二金とし、6三角成に、6六銀成。
 以下8五金、7七成銀(次の図)

変化9八玉図10
 8五金の質駒もあり、後手の攻めは切れない。後手勝勢。

変化9八玉図11
 8五歩 の場合。
 8七桂成、同玉、8六金、9八玉、6六銀上、8九桂、7六歩(次の図)

変化9八玉図12
 5一竜、7八銀不成、8八飛、8七銀成、同飛、同金、同玉、5七飛、9八玉、7七歩成(次の図)

変化9八玉図13
 先手玉に受けがなく、後手玉に詰みはない。 後手勝勢。

変化9八玉図14
 後手「7七銀不成」の局面まで戻って、3七飛(図)
 これは、先手に金か銀が一枚入れば、後手玉への“詰めろ”になる。
 後手は予定の“8六桂”。 以下、同金、同銀成、8四馬(この瞬間後手玉に“詰めろ”がかかった)、9七桂成(次の図)

変化9八玉図15
 9七同飛、8四歩、3七飛、4二金(詰めろを受けた)、3二香成、同銀、2五桂(3三歩成以下の詰めろ)、7六角、8九玉、1一玉(次の図)

変化9八玉図16
 1一玉(図)で、後手は“詰めろ”を解除した。先手はこれで、困った。後手玉に迫るにはどうしても何か駒を渡すことになる。そうすると先手玉が即詰みに打ち取られてしまう。
 どうやら「後手勝ち」で決したようである。
 たとえばここから、3三歩成、同銀、同桂成は、同金と取られ、5一竜に、8七香、8八歩、6七角成(次の図)

変化9八玉図17
 6七同飛に、8八香成、同玉、7六桂から、きれいな詰みである。

 〔c〕9八玉 には、(3)7七と で後手良し、とわかった。


7五銀基本図(再掲)
 よって、この図は「後手良し」が結論となる。


≪指始図≫(再掲) 7三歩成まで
 つまり、▲7三歩成とした図は、すでに先手が悪いことが確定した。
 ▲7三歩成は「悪手」だったと、はっきりと証明されたわけである。(その一手前の図では先手に勝ち筋があったのだから)

 ところで、この図からまず「6六と」として、「8七玉」に、そこで「7五桂」とする後手の攻め方もある。
 これについても調査したので、簡単に結果を示しておく。

7五桂基本図
 以下、「9七玉」とするが、そこで 「7六と」 と、「7七と」 とがある。(この場合、どちらが良いか選択が難しい判断になる)

7五桂図01
 「7七と」(図)には、8九香と受け、以下6五銀、9八金、7六銀と進め、そこで先手7四と(=好手、7三歩成でつくったと金が働くのは先手としてはうれしい)がある。
 以下、7四同金に、7二飛(次の図)

7五桂図02
 この図は、「形勢不明」の図になっている。
 以下、6二桂、6三歩、7三香、6二歩成、同銀、4一角の展開が予想される。

7五桂図03
 いまの進行を後手が不満と見れば、「7六と」(図)を選ぶことになる。
 8八香、6六銀、7八歩(次の図)

7五桂図04
 ここで後手に3つの攻め手が考えられる。我々の戦後研究では、次のような結果になっている。
  〔イ〕7七歩 → 先手良し
  〔ロ〕8七桂成 → 後手良し
  〔ハ〕6七銀不成 → 互角(形勢不明)

 以下、〔ロ〕8七桂成 を見ていく。
 〔ロ〕8七桂成、同香、7五桂、7九桂、6九金(次の図)

7五桂図05
 我々は、ここで“7四と”があって、この変化は「先手良し」と考えていた。すなわち、7四と、同金、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、7九金、7五馬(先手玉の詰みを解除した)、同金、5一竜――――この変化はギリギリだが先手が勝ちとなる。
 ところが、この手順中、4一角に対して、「3一歩」が有効とわかり、結論が逆になった(次の図)

7五桂図06
 「3一歩」(図)は、先手の3三歩成、同銀、5二角成に対応しており、この場合5二同歩で後手良しになる(さらに3二歩には4二銀右)
 その代わり、「3一歩」だと、「2三」に角の利きが直射しているので、2五飛などが気になるところ。すなわち、2五飛、3二歩、7五馬、同銀上、1五桂の攻め筋だが、8七と、同桂、2四香、同飛、7九角、8八金、2四角成で、後手が良いようだ。
 また、この図で、3三歩成、同銀、3二歩の攻めもあるが、7九金で、これも後手良し。

 ということで、「7三歩成図」(指始図)から、「6六と、8七玉、7五桂」も、後手良しという結論となっている。


≪指始図≫(再掲) 7三歩成まで
 ▲8七玉~9七玉で戦おうという考えは間違っていなかった。それを貫くべきだった。
 それなのに、▲7三歩成(図)と指して、「負け」の局面にしてしまった。なんということだ。

 ここで、思った。 「後手(=≪ぬし≫)が、7三同銀と応じてくれればいいのに。それならチャンスがあるのだが」と。
 しかし、そんな手を―――こちらにとって都合の良いそんな手を期待するのは無駄だろう。
 我々は、不利を自覚して、どう頑張るか、どう逆転するかを考え始めていた。



 ≪最終一番勝負 第26譜 指了図≫ 7三同銀まで

 ところが、≪ぬし≫は、△7三同銀 と指したのである。 



第27譜につづく
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終盤探検隊 part126 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第25譜

2019年07月09日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第25譜 指始図≫ 5六とまで

 指し手  ▲7三歩成


    [剃刀研ぎと鏡研ぎが酒を飲んだ十九日の夜に]
「まあ何にしろ変な訳さ。今に見ねえ、今日もきっと誰方どなたか取りにござる。いや作平(さくべい)さん、狐千年を経(ふ)れば怪をなす、私(わっし)が剃刀研(かみそりとぎ)なんざ、商売往来にも目立たねえ古物(こぶつ)だからね、こんな場所がらじゃアあるし、魔がさすと見えます。
 そういやあ作平さん、お前さんの鏡研(かがみとぎ)も時代なものさ、お互(たげえ)に久しいものだが、どうだ、御無事かね。二階から白井権八の顔でもうつりませんかい。」(注:白井権八は江戸時代の歌舞伎作品中の有名なキャラクター)
 その箱と盥(たらい)とを荷(にな)った、痩(やせ)さらぼいたる作平は、蓋(けだ)し江戸市中世渡(よわたり)ぐさに俤(おもかげ)を残した、鏡を研いで活業(なりわい)とする爺(じじい)であった。
   (『註文帳』泉鏡花著 より)


 時は明治時代。場所は吉原。東京(江戸)の遊里である。
 この話の中心にいる人物は、研屋(とぎや)の五助である。吉原の揚屋町(あげやまち)で剃刀研ぎ(かみそりとぎ)の仕事を引き受けている。吉原の遊女の「剃刀」を預かって研いで返す仕事であるが、その「剃刀」がこの怪異な話の主役である。

 その日はたいへんに寒い日で、如月(きさらぎ)の「十九日」だった。
 五助のところに捨吉という男が剃刀を急ぎで欲しいとやってきた。五助は断った。理由はその日が「十九日だから」という理由である。五助は毎月十九日は仕事をしないと決めていたのだ。
 そのわけを五助は捨吉に話す。五助の仕事は遊女から預かった「剃刀」を研ぐことだが、四、五年前から、仕事中にその「剃刀」が紛失するということが月に一度起こった。それが決まって「十九日」なのである。その消えた「剃刀」は、依頼した遊女の鏡台の上に置いてあったりした。それだけならまだしも、変なところに置いてあってだれかがそれで怪我をしてしまうというようなこともあった。
 そういうことがあって、五助は「十九日は仕事をしない」と決めたのである。

 捨吉は帰り、入れかわりに鏡研ぎ職人の作平(さくべい、六十歳くらい)が入ってきた。通りかかったとき、五助と捨吉の会話の「十九日」と「剃刀」の言葉を耳にして気になって入ってきたのであった。
 作平は、自分が最近受けた仕事の話を始めた。それは麹町(こうじまち)辺りのある家の家宝として大切にしている「八寸の鏡」を研ぐ仕事だった。
 その「鏡」というのは、何年か前のある日吉原で起こった「心中事件」に関係している。客である男に対してある遊女がその男を殺して自分も死のうと「無理心中」を計った。結果、男は命を取りとめ、遊女は死んだ。遊女は、その男のノドを「剃刀」で突き、返す刀で自分を突いたのだった。もともとその女は武術の心得があったのだという。
 ところが男はたまたま女が使っていた「鏡」を持っていて、それが偶然に命を救ったというのだ。女は「心中」が失敗に終わったことがわかって「口惜しい口惜しい」といいながら死んでいった。
 その「心中未遂事件」が起こったのが、明治八年霜月のやはり「十九日」だったというのである。作平が五助の「十九日」の話に気をひかれて足を止めたのは、そういう心中未遂話を聞いていたからなのだった。
 その男は、これに懲りて、以来、吉原通いをやめたという。
 男の命を救ったその「鏡」は、その後その家の家宝となった。そして時を経て、それを「特別に念入りに研いでほしい」という依頼で、先日作平のところに持ち込まれたというわけである。

 その作平の話を聞きながら、五助はふと分厚い註文帳を開き、なぜか剃刀研ぎの仕事を一件はじめる気になった。急ぎではないが特別に念入りに研ぎたい「剃刀」があった。本来は十九日は仕事をしないはずだったが、「不浄除よけの別火(けがれを浄化すること)にして、お若さんのを研ごうと思って」といい、また「この剃刀の持ちぬしは遊女ではないし廓内(くるわうち)に住んでいないから大丈夫だろう」というような理由をつけて。
 それは、吉原の紅梅屋敷という屋敷に住んでいる十八歳の器量よしの娘お若の「剃刀」だった。

 ところが、その「お若の剃刀」がやはりなくなってしまう。
 「剃刀」をさがす五助の前に、女の幽霊が現れる―――。
 幻のその女は、「これでしょう」と言う。 その手に、「お若の剃刀」があった。
 外は雪が降りはじめていた。
 
 そして――――
 その日(十九日)の深夜、「心中事件」が起こったのである。紅梅屋敷で。
 女はお若である。
 相手の男は欽之助という名の若者だったが、吉原に客として遊びに来たわけではなかった。
 欽之助はその日、四谷で、彼をドイツ留学に送るための宴会が開かれたが、帰りの人力車が横転したりといろいろあって、気づくとなぜか吉原に一人で来てしまっていたのであった。欽之助も酔っていてしっかりとはおぼえていないが、次につかまえて乗った人力車の車夫が、欽之助の言葉を聞き間違えたか何かで吉原へ運ばれたようだ。気がつくと雪景色の夜の吉原。車夫に四谷に戻してくれといっても、雪は降っているし、もうへとへとに疲れて動けないという。
 他の車はないかと欽之助は吉原を歩くが、どうにもならず。寒いし、道はわからない。
 そこに女(遊女の幽霊)が現れて、その女もなにやら困っている様子にみえたので欽之助が声をかけると、女は「これを紅梅屋敷に届けてくれないか」という。(紙に包んだ“これ”の中身はあの「お若の剃刀」であった)
 紅梅屋敷の門を叩いた若者は招き入れられ、こたつに入って、若者のこの日に起こった事情を聞いて、同情したお若と家の者は、欽之助に泊っていくよう勧める。
 やがて、この初対面の男女―――欽之助とお若(美男と美女であった)―――が突然に「心中事件」を起こす結末にとなったのである。
 自分の「剃刀」を手にした途端、娘が、突然にこの顔の美しい若者に恋心を燃やし、永遠に自分のものにしたいと、その「剃刀」を手にもって眠っている若者に襲いかかったのであった。
 もし欽之助があの「鏡」を持っていたなら、彼は死なずにすんだかもしれない。「送迎会で友人たちに吉原に行こうというようなノリになったらまずい」と心配した欽之助の叔母が、家宝の「鏡」をなんとか欽之助に持たせようとしたのだが、(彼はその「鏡」にまつわる因縁話を叔母から聞いて知ってはいたが)それを持って行かなかったのだった。欽之助は吉原に行くつもりなどまったくなかったので、「鏡」は必要ないと思ったのだろう。
 この若者は、作平の話の中の、あの「吉原心中未遂事件」で遊女に刺された男の甥だったのである。

 五助と作平は酒を飲んで眠っていたが、五助が「お若が男を剃刀で刺す夢」を見て飛び起きた。夜中の二時であった。五助と作平、あわてて紅梅屋敷へと駆けつけたが、時すでに遅し。
 「心中」は遂げられていたのであった。
 お若は即死。しかし深手を負った若者欽之助は、まだしばしの時間息があった。その命が尽きる前に、お若を娶ることを決め、二人は夫婦として死んでいくのである。
 五助と作平、二人の職人は泣きながら、「おめでてえな」「お若さん喜びねえ」と祝福するのであった。


 以上が泉鏡花『註文帳』のあらすじである。この作品の初出は明治34年(1901年)
 構成の面白い話だと思うが、それにしても、“註文帳” のタイトルは渋すぎるのではないか。 “十九日” とか “失せる剃刀” のほうがわかりやすくてよい気がするが、どうだろうか。現代なら“吉原剃刀心中事件”か。
 ところで、欽之助は23、4の年齢とあるが、この小説の中ではたびたび「少年」と書かれている。「少年」の定義が今と感覚的に違うようだ。(このあらすじでは「若者」と書き直した)

 なお、泉鏡花の「鏡」の字は、「鏡」に何かこだわりがあってのペンネームかと思いきや、単に本名が泉鏡太郎だからなのであった。




<第25譜 逢魔が時間>

指始図 5六とまで
 さて、「亜空間戦争一番勝負」、後手≪亜空間の主(ぬし)≫の△5六とに、先手の我々の予定は▲8七玉であった。
 その前に▲8六歩とした手を生かすためにも、それが自然と思えたし、とりあえず「9七」まで玉を移動させてから攻める―――というのが、先手番をもつ我々終盤探検隊のビジョンであった。

 それなのに、我々はなぜか、ここで“▲8七玉”を指さなかったのである!!!!
 
 それはなぜか――――ということを答えたいと思うのだが、我々は(戦いを終えたいまも)その理由を説明できないのである。
 なぜなら、“覚えていない”からだ。
 この局面で、我々自身が何を考え、何を思って「別の手」を選択してそれを指したのか、思い出せないのである。
 
 覚えていることは、この局面になる前から、そしてこの局面になった瞬間まで、「8七玉と指そう」と考えていたこと。たしかにそう考えていたのだ。


 とりあえず、この図についての“調査報告”を最後まで終えるとしよう。

≪指始図≫5六とまで
 今回の調査の進捗状況は、この通り。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 結論保留(調査中)
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → これから調査
  【未】7三歩成


8七玉図
 【午】8七玉(図)が今回の調査テーマである。

 ここで、≪A≫6六と が想定される手。 ほかに ≪B≫6六銀 がある。

A6六と図
 ≪A≫6六と(図)。
 ここで本命は“早逃げ”の「9七玉」である。
 (他には、「7八香」も有力な手だが、検討の結果、難しいところは多いが、7五桂以下「後手良し」が結論となった。その解説は省略する)

A9七玉図
 「9七玉」まで逃げておいて、ここからさあ戦おうということである。
 ここで後手が何を指すか。 考えられるのは、次の3候補手である。
  [E]7五桂
  [F]7六と
  [G]7七と

A7五桂図
 [E]7五桂(図)
 4一角と打っていく。 以下3二歩に、3三歩成から攻める(代えて3三香はこの場合は3一銀、5二角成、7六とで後手良しになる)
 3三同銀に、5二角成(次の図)

変化7五桂図01(5二角成図)
 ここで後手の対応手が問われるところ。次の6つの手が考えられる。
 (1)5二同歩、(2)4二銀左、(3)4二銀右、(4)8一桂、(5)7六と、(6)7七と

 まず(1)5二同歩から。 その手には、3一飛と打つ(次の図)

変化7五桂図02
 「3一」に打って、3四銀には4一竜を用意した。
 後手は8一桂(これしか受けがない)。
 同竜、8七桂成、同玉、5四角(次の図)

変化7五桂図03
 これで王手竜取りだが、実質後手の「角桂桂」と、先手の「飛」との交換になり、後手は二枚の桂を使い果たしてしまった。
 8八玉、3八飛、7八香(次の図)

変化7五桂図04
 6七ととしても、詰めろではないので、3一金として先手勝ち。
 受けるなら4二銀右だが、先手3四歩と打って、同飛成なら2六桂、4四銀なら1五桂が着実な寄せとなる。
 (1)5二同歩は先手良しとわかった。

変化7五桂図05
 (2)4二銀左には、4一馬(図)と潜りこんでおく。
 以下、7六と、8八香、8七桂成、同香、7五桂、7九桂、6六銀、3三歩(次の図)

変化7五桂図06
 3三歩(図)で、後手“受けなし”。
 3三同玉なら、3五飛。 3三同桂には、5一竜。

変化7五桂図07
 (3)4二銀右には、3四歩(図)で、先手良しだ。

変化7五桂図08
 このタイミングで(4)8一桂(図)とする手もある。これを同竜は、あやしくなる。
 この手には4一馬で先手が良い。
 以下7七とには9八金としっかり受ける(8九香と受けるのは9三桂で角を取った手が先手玉の詰めろなので逆転する)
 9三桂に、3一飛(次の図)

変化7五桂図09
 先手勝ち。


 (5)7六とには、8八香と受ける(8九香には7七桂があるので8八に打った)
 以下8七桂成、同香、7五桂、7九桂、8七桂成、同桂。
 そこで5二歩。先手はやはり3一飛。
 後手8一香(次の図)

変化7五桂図10
 8一同竜がわかりやすい。以下、8七と、同玉、5四角、6五歩、8一角、同飛成。
 このケースは、後手の盤上にいた「と金」が桂馬と交換になり、後手の攻め駒が「飛桂」になる。
 5七飛、9八玉、5八飛成、8八香、7六桂、8七金(次の図)

変化7五桂図11
 後手の攻めは止まり、先手優勢がはっきりした。
 このままなら先手3一金があるので、ここは後手8八桂成、同金、4二銀右が予想されるが、1五桂と打てば後手は適当な受けがない。
 (5)7六とは8八香で先手良しになった。

変化7五桂図12
 (6)7七と(図)
 この手に8九香と受けるのは、先手負けになる。5二歩と角を取って、先手玉に8七桂成、同香、7九角から詰みがあるからだ。つまり8九香は受けになっていないのだ。
 といって、9八金と受けても、8七桂成、同金、同と、同玉、7五桂以下、良いタイミングで5二歩と角を取られて先手が勝てない。
 そうするとここは受けがないようにも思えるが、4三馬があった(次の図)

変化7五桂図13
 (6)7七とには、奇跡的にこの4三馬(図)があった!
 6五歩なら、8九香と受けておく。以下、4二銀右、5四馬となるが、そこから後手の有効な攻め手がないので、先手が優勢。先手のほうは9二竜や3七桂など有効手が多い。
 よって後手は、この図から、4二銀右、9八馬の後、8七桂成から清算して馬を消しに来る。
 8七桂成、同馬、同と、同玉、7五桂、9七玉(次の図)

変化7五桂図14
 さて、ここでどっちの形勢が良いのか。
 ここは後手の候補手が多い。(9五歩、6五角、6九角、6六銀など)
 6五角、8八金(6六銀に対しても8八金と受ける)、9五歩、4三歩(次の図)

変化7五桂図15
 4三同銀、5一竜、9六歩、同玉、2九角成(次の図)

変化7五桂図16
 8四馬、同歩、7一飛、4一歩(次の図)

変化7五桂図17
 4一同竜は7四馬がある。
 7三歩成、9四歩、7四と(次の図)

変化7五桂図18
 形勢は先手良し。

変化7五桂図14(再掲)
 少し戻って、後手7五桂に9七玉の場面。最新ソフトの評価値は[-112 互角]を示している。
 ここは“6五角”以外にも後手の有力手がある。
 “6六銀”には、8八金と受ける。以下9五歩に、4三歩で先手が良さそうだ。
 “9五歩”、4三歩、6九角、8八金、9六歩、9八玉という展開もある。以下9七歩成、同玉、9五金には、7五馬があって先手が良い。
 この図は(先手が悪くなる順が見つからないので)「先手良し」としておく。

 よって、(6)7七とも4三馬があって、先手良し、という結論になる。

変化7五桂図01(再掲5二角成図)
 これでこの「5二角成図」は「先手良し」が確定した。

 つまり、[E]7五桂 には、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成と攻めて先手良しである。


変化7六と図01
 [F]7六と(図)
 この手にも、同じように攻めていく。
 4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成までは進む。
 そこで7五桂では、上と同じになる。(それは先手良し) なので、他の手があるかどうか。

変化7六と図02
 7五金(図)でどうか。
 この手は8六金以下詰めろなので、先手は受けることになる。

変化7六と図03
 8九香(図)と受けて、どうやら先手良し。
 5二歩には、3一飛。そこで7九角には、9八玉と逃げておけばよい。


変化7六と図04
 [G]7七と(図)
 今度は、いままでの場合と事情が異なる。同じように攻めていくと先手失敗に終わる。すなわち、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛だと、7九角から詰まされてしまう。
 だからといってここで8九香と受けても、7五桂と打たれると、同じように進んだ時、8七桂成、同香、7九角があるので、やはり攻めていけない。

 そうすると、「別の攻め」があるかどうかだが―――。
 見つかった!! 「4一角、3二歩」まで決めて、「3七飛」と打つ(次の図)

変化7六と図05
 「3七飛」(図)は攻防の飛車打ちである。後手6六銀なら―――(次の図)

変化7六と図06
 3三香(図)で先手優勢になる。
 3三同桂に、そこで8四馬と金を取る。
 8四同歩に3三歩成、同銀、3二角成、同玉、3一金(次の図)


 後手玉が詰んだ。

 このように、後手[G]7七と の手には、「4一角、3二歩、3七飛」が有効なのだが、この手順の発見はそう簡単ではなかった(最新ソフトも示していない手順である)
 なお、最初の「4一角、3二歩」を入れずに“単に3七飛”では、6六銀で先手苦戦となる。そこで4一角は3一歩と変化して受けられる。
 「4一角、3二歩、3七飛」の手順が大事なのである。

変化7六と図07
 「3七飛」に、4四銀上のような受けだけの手では、7七飛と「と金」を払われて後手は希望がない。
 そこで7五桂(図)が後手の工夫の手。
 7七飛と「と金」を取る手に、6七歩(代えて6六銀では3七飛と戻って後手がまずい)
 そこで7九飛(5九の金取り)なら、6六銀で後手が良い―――これが後手の狙いだが―――
 しかし7六飛がある(次の図)

変化7六と図08
 7六飛と飛車を一つ浮けば、いつでも3筋に飛車を戻せるし、2筋の攻めも狙える。
 6八歩成に、2六飛、7八と、2五香と進めば、1一桂に、2三香成、同桂、2四金で、先手勝勢となる。
 図で6六桂には、2六香と打っておき、次に7五飛と桂馬を取って1五桂と打つ手を狙いにする。

 [G]7七と には、「4一角、3二歩、3七飛」で先手良し。
 そうなれば先手が良いとわかったのだが、しかし、後手に途中で「変化」する手がある。

変化7七と図01
 最初の4一角に、「3一歩」(図)とする手があるのだ。
 これにも3七飛でよさそうに思えるが、以下6七歩、3六香、4四銀引となると、形勢不明である。
 この図での正着は、「7三歩成」である。

変化7七と図02
 「7三歩成」(図)の具体的なねらいは、7八歩、同と、6三とのような筋である。
 「7三歩成」を、同銀 なら、2五飛、3二歩、5五飛で先手が良い。
 ここで後手の有力手は、7五桂7五銀

 7五桂、8九香に、「7六歩」。
 ここで6三とは、8七と、同香、7七歩成で、後手の攻めが早く、先手が負ける。
 「7八歩」が正着(次の図)

変化7七と図03
 7八同とに、6三とではやはり7七歩成で後手の攻めが厚く、先手勝てない。
 ここは8三とが正解手。
 以下、7四金に、9五歩(次の図)

変化7七と図04
 8九となら、9六玉。 9五同歩には、8五歩と突いて、次に8六玉~9五玉の“入玉”狙い。
 この図は、先手優勢。
 (入玉を阻止するため9五同歩、8五歩に、7三桂と打つのは、同と、同銀、2六飛、3二歩、1五桂で、先手勝ち)
 「7八歩、同と、8三と」が好手順であった。

変化7七と図05
 後手の工夫。「7五桂、8九香」に、「6五銀」(図)
 ここで2五飛と打ちたくなる。しかしそれは3二歩、5五飛、7六銀で、後手が良い。これは先手が後手の“わな”に嵌まったパターン。
 ここは「2六飛、3二歩、7八歩」が正解手順になる(次の図)

変化7七と図06
 2六飛と打ったのは、7八とを同とと取らせた後、後手の7六銀を指させないという意味である。(“7六に銀を出させない”というのがここは急所なのだ)
 「7八同と」なら、先ほどと同じように、8三と、7四金、9五歩の“入玉”狙いで先手良し。
 ここは7八歩に、「7六と」を見ていこう。
 「7六と」と引かせ、後手の銀は7六に出てこれないようになった。それが7八歩を打った効果である。
 ここで6三とを決行する。
 8七桂成、同香、7五桂、9八金(次の図)

変化7七と図07
 こうなると先手には5二との攻めに加えて、3五桂もある。
 なので、8七と、同金、同桂成、同玉、3五金のような展開になりそうだが、5二と、2六金、5三とは、先手優勢である。

変化7七と図08
 「7三歩成」に、7五銀(図)
 銀が出てきた場合は、ここでも2六飛と打っておくのがよい。以下、3二歩に、「8九香」(次の図)

変化7七と図09
 ここで7六銀は7八歩で先手良し。
 後手 8七桂 という手がある。同香なら、7六銀と出ようという意味で、そうなると後手の調子が良い。
 8七桂は放置して、6三とと攻めあう。以下、9九桂成、5二と、9五歩(同歩なら9四歩から香車を打つ攻めを狙う)
 そこで8四馬がある(次の図)

変化7七と図10
 8四同銀に、3三金、同銀(同桂は2一金から詰み)、同歩成、同玉、3二角成(次の図)

変化7七と図11
 後手玉は詰んでいる。3二同玉には、3六飛から。4四玉には、3四金(同玉には2三馬、5四玉には4三馬以下)で。

変化7七と図12
 「8九香」のところまで戻って、6六銀左 もある。
 この手は、次に7六ととして、7七銀成から銀を使うねらいである。
 先手は6三と。
 後手の7六とに、7八歩。銀の進出を防ぐ。
 そこで7七歩なら、5二と、7八歩成、5三と(3三銀からの詰めろ)で、先手良しになるが―――(次の図)

変化7七と図13
 7七桂(図)という手がある。
 これを同歩と取って、同銀成に、9八桂と受ける手はあるが、6六桂が好手(次に8七と、同香、7六銀をねらう)で、後手が勝つ。
 ここは8八香が最善の対応で、以下8九桂成に、5二と。
 6三と~5二との攻めで認識しておきたいのは、このときに「金金」ではまだ駒が足らないが、これに「銀」が加わると、5二とのときに、後手玉は3二角成、同銀、4一銀以下の“詰めろ”になるということである。つまり今は「銀」が足らないが、その銀は6六にある。
 8八香、8九桂成、5二との後、8八成桂、同玉、7七歩と進み、先手玉はほぼ“受けなし”の状況に追い込まれるが―――(次の図)

変化7七と図14
 6六飛(図)と銀を取って、“詰めろ逃れの詰めろ”である。先手勝ち。

 [G]7七と は4一角以下先手良し、が結論となる。


A9七玉図
  [E]7五桂 → 先手良し
  [F]7六と → 先手良し
  [G]7七と → 先手良し

 先手は、後手のこの3つの手にたいして、勝ち筋があることがわかった。

 よって、【午】8七玉 に、6六と9七玉 と進んだこの図は、先手良し。


B6六銀基本図
 次に、先手の 【午】8七玉 に、 ≪B≫6六銀(図)を考えたい。
 感覚的には、6六銀よりも6六とのほうが勝る手に思えるが、実際に調べると、6六銀のほうがよいケースもあるということがわかってくる。「たぶん勝てるだろう」という楽観の読みの隙間に、敵の妙手が潜んでいることだって、将棋にはよくあることなのだ。

 6六銀にも、「9七玉」 と早逃げする(次の図)

B9七玉図
 ここから考えられる候補手は、次の3つ。
  〔U〕7五銀上
  〔V〕7五桂
  〔W〕7七銀成

 まず、〔U〕7五銀上 を見ていく。
 やはり4一角からの攻めで勝てるだろうか。
 4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛、8六銀(次の図)

変化6六銀図01
 8六同玉に、6八角。以下、9七玉に、7九角成、8七玉(次の図)

変化6六銀図02
 対応を誤ると一気に負けになってしまいそうな形だが、正しく応じれば先手に詰みはなく、先手が勝てるようだ。

変化6六銀図03
 先手の4一角に、3一歩と後手が受けた場合。それには、3七飛(図)と打つ。
 この飛車打ちは、後手の7七銀成を簡単には指させないという意味がある(3六飛や3八飛では7七銀成~7六銀で後手良しになる)
 7六銀(次に7七銀左成または7五桂の狙い)に、3六香と打つ。この手は、2三角成、同玉、3三歩成、同桂、3四金以下の“詰めろ”なので、後手は対応しなければいけない。
 しかし、3二歩では、3三歩成、同桂、3四歩で、先手はっきり優勢。
 なので4四銀と受ける。
 そこで先手5二角成(次の図)

変化6六銀図04
 5二同歩には、3三金から後手玉“詰み”。
 しかしこの瞬間が甘く、後手は7七銀左成。“詰めろ”だ。
 これを9八金と受けるようでは、5二歩で後手勝ちになる(金一枚では後手玉は詰まない)
 だが、4三馬が―――(次の図)

変化6六銀図05
 “詰めろ逃れの詰めろ”。 以下、8七成銀、同飛、4三銀、3七飛が予想される。 
 先手が良い形勢のようだ。

 〔U〕7五銀上 は、4一角で先手良し。


B7五桂図
 〔V〕7五桂(図)
 「6六と」の場合と同じように攻めてみる(これで問題なく勝てそうな気がするが……) 
 4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、7七銀成、4三馬(次の図) 

変化6六銀図06
 4二銀右、9八馬、8七桂成、同馬、同成銀、同玉、7五桂、9七玉(次の図)

変化6六銀図07
 この図は、下の参考図の先手良しだった変化と比べると、先手の持駒に「銀」がプラスされている。だからこの図も先手が良いだろう―――と簡単に判断を下してしまいそうになるところである。
 ところが、実は逆で、この図はどうやら「後手良し」なのである。それは手を進めてみれば明らかになる。
 6七と、3四歩、9五歩、8八金、9六歩、同玉、6九角(手順中、後手9六歩に9八玉は7六角、8九玉、8七桂成で後手良し)

参考図(再掲 変化7五桂図14) 
 (6六と型から後手7五桂に4一角以下攻めた時の変化。と金は消えて5五銀が残っている→先手良し)

変化6六銀図08 
 6七の「と金」の存在が大きい。
 9七玉は、9六歩、9八玉、7八と―――先手負け。
 7八銀合(攻めに使うために桂を残した)も、9五歩、9七玉、7八と、3三歩成、同歩。以下後手玉は詰まないので、先手の負け。
 
 つまり、〔V〕7五桂 に、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成の攻めは、「後手良し」になった。

 すると、先手は勝つためには「別の攻め」を探さなければならない。(それがなければ「後手良し」が今回の『8七玉の研究』の最終結論になる)
 勝ちにつながる「別の攻め」は、あるのだろうか。

変化6六銀図09
 あった!! 「4一角、3二歩」まで同じで、そこで「3三香」(図)と打つ。
 この場合は3三歩成、同銀、5二角成ではなく、「3三香」で先手が勝てるのである。
 この攻め筋は、「6六と型」の時には、うまくいかない。それは3一銀、5二角成と進んだ時に、7六とがあるからである。
 ところが、今回の「6六銀型」の場合、銀なので「7六」には行けない。だから「3三香」の攻めで先手が良くなる、というリクツだ。
 先を進めてみよう。
 3一銀(受けはこれが最善)、5二角成(同歩なら3一飛で先手良し)、7七銀成、4三馬(次の図)

変化6六銀図10
 「7六」ではなく、「7七」に後手の成銀が居るので、この4三馬の受けが利く。
 そしてこの場合、「3三香」がすでに刺さっている状態なので、ここで後手に4二銀右という手がないのも大きい(4二銀右は3二香成、同銀、3三金から詰み)
 図以下は、8七桂成、同馬、同成銀、同玉、7五桂、9七玉、6九角、9八金と進みそう(次の図)

変化6六銀図11
 この図は、まだ予断を許さない場面だが、正しく指せば先手が勝てる。
 6七と、5一竜(詰めろ、4二銀引でも3二香成で詰む)、1四歩、4三銀、7七と、3一竜、1三玉、8九飛(次の図)

変化6六銀図12
 7九桂のような平凡な受けでは、9五歩で後手勝ちになっていたところだが、8九飛(図)があった。
 9五歩には、6九飛から角を取って、3五へ打てば後手玉は詰み。7八角成は3六桂で後手“受けなし”
 先手の勝ちがはっきりした。

 〔V〕7五桂 は、4一角、3二歩、3三香以下、先手良し。


B7七銀成図
 〔W〕7七銀成 には、角を渡す攻めはできない。
 「6六と型」での7七とに学んだように、「4一角、3二歩、3七飛」がここでも正解手になる。
 後の変化を確認しておこう。

変化6六銀図13
 6七とでは3三香で先手良し。
 ここは7五桂以下を見ておこう。7五桂、7七飛、6七と、7九飛、6五桂。
 そこで3三香と放り込む(次の図)

変化6六銀図14
 3三同桂、同歩成、同玉(同銀は5二角成)、5九飛、7七桂成、3四歩、2四玉、9八銀
(次の図)
変化6六銀図15
 先手勝ち。

変化6六銀図16
 さあ、これが本日の“最後の問題”である。
 先手4一角に、3一歩(図)の場合。
 ここは、2六飛、3二歩、7三歩成が有効な指し手。

変化6六銀図17(7三歩成図) 
 ここから後手には手がいろいろあるが、「7五銀~6六と」という攻めが最有力と見てそれを解説していく。
 7五銀、8九香、6六と、7八歩(次の図)

変化6六銀図18
 「7八歩」(図)が重要な手。これを同成銀とするか7六成銀とするかで、先手の指し方が変わる。
 7六成銀 または7六歩なら、6三とからの攻めが間に合うと先手は見ている(7六成銀 は後で解説)

 では、7八同成銀 にはどうするか。
 それには3三歩成、同銀に、5二角成と攻める手が成立する。 5二同歩に、3一金(次の図)

変化6六銀図19
 この5二角成の攻めは、角を渡す攻めなので、それでも自玉が大丈夫かの見極めが重要である。この場合は、7九角には9八玉で良いし、8六銀、同玉、7五角にも、8七玉で逃れている。
 3四銀、4一飛成、3三玉、4五歩(次の図)

変化6六銀図20
 4五歩を同銀は、2三飛成、4四玉、4三竜右以下“詰み”
 先手勝勢になった。

変化6六銀図21 
 今の手順の途中5二角成に、4二銀右(図)とした場合。 先手は4一馬とする。
 8九成銀では3四歩(詰めろ)で後手いけない。
 なのでここは「3四桂」と3四に“先着”で飛車取りに打つ(飛車が逃げれば8九成銀→後手良し)
 先手は飛車を逃げずに、5一竜(次の図)

変化6六銀図22
 5一竜(図)で、先手優勢になっている。
 5一同銀は3一金。2六桂も3一金だ。
 だから図では3一桂とすることになるが、4二竜、同銀、同馬(次の図)

変化6六銀図23
 次に2三飛成から簡単な詰みがあるが、それを2六桂で防いでもそれでも詰みがあるのだ。
 これは気づきにくい詰みだが、これがわかっていないとこの順には踏み込めないところだった。3三銀と打ち、同桂に、3一馬と桂馬を取り、同玉に、2二銀。これを同玉は3四桂から簡単なので、4二玉と逃げるが、そこで5二金と打ち捨て、同玉、6三金、4一玉、4二歩以下の詰みである。
 したがって、この図で6七飛などでは9八玉で先手が勝つ。
 よってここは「5七飛」と打つ。これならいま示した詰み筋を防いでいる。
 5七飛には、「8七金」と受けるのが正しい応手。
 後手はそこで「2六桂」と飛車を取るが、先手「3三歩」が決め手となる(次の図)

変化6六銀図24
 先手玉は詰まないので、後手は「3三歩」(図)に応接しなければいけないが、3三同桂に、4一銀で先手の勝ち。

変化6六銀図25
 戻って、「7八歩」に 7六成銀(図)の場合。
 これには6三と。そこで7七桂がある(次の図)

変化6六銀図26
 よく似た形が上で出てきたが、その時とは後手の攻め駒の並びがわずかに違う。
 この場合は8八香では、8九桂成、5二と、8八成桂、同玉、7七歩で、先手負け(銀の質駒がないから5二とが間に合わない)
 ここでは、7七同歩が正解となる。同とに、9八桂と受ける(次の図)

変化6六銀図27(9八桂図)
 ここで後手に色々な手があって、実戦的には「互角」にちかい勝負となる。しかし正確に対応すれば、後手のどの攻めも「先手勝ち」になるようだ。先手に「銀」が入ると5二とが後手玉の“詰めろ”になるので、後手が工夫して攻めても、なにかしら先手に勝ち筋が出てくるのだ。
 この図で、先手は「5二と+4二と」の2手で後手玉に届く攻めになるが、後手はそれまでに先手玉を攻略したい(6三金、同角成は後手面白くない)

 “6六銀”以下の攻防を、以下見ていく。
 “6六銀”の狙いは、次に7五桂と打つこと(5二となら7五桂で後手良し)
 だから先手は「敵の打ちたいところに打て」で、7五歩(=最善手)と打つ
 それではと後手は6五桂とこちらに打つ(次の図)

変化6六銀図28
 やはり5二とは8七と、同香、7七桂成で後手良しになる。
 (単に6五桂だと先手に7八歩という手があったが、「6六銀、7五歩」の後では歩が使えない)
 先手どうするか。
 6六飛と飛車切りが最善手。同成銀で、後手の攻めを遅らせて、5二と。
 銀が手に入ったので、5二とは3二角成、同玉、4一銀からの“詰めろ”になっている。
 後手は1四歩で、詰めろを消す。4二と、同銀。
 そこで8二馬(次の図)

変化6六銀図29
 5五馬が狙い。
 それを許せない後手は、5七飛と打つ。 先手玉への“詰めろ”になっている(8八と以下)
 先手は4八金と打って、飛車を追う。5六飛成に、1一銀(次の図)

変化6六銀図30
 1一同玉に、3二角成。
 以下、2二銀に、3三銀打(代えて4二馬では先手負け)
 後手は8七とで、最後の勝負(次の図)

変化6六銀図31
 8七同香、3三銀右、同歩成、8八銀、同玉、7七桂成、8九玉(次の図)

変化6六銀図32
 8九玉(図)で逃れている。3三銀には3一金と打って、後手玉は“必至”
 先手勝ち。

変化6六銀図27(再掲9八桂図)
 もう一度この図まで戻り、後手の攻めをもう一つ紹介しておこう。
 ここから“8六銀”と捨て、同桂に、8五金と出る(次の図)

変化6六銀図33
 ここで8七歩が常識的な手だが、それには8四桂と打たれて後手が優勢だ。
 しかし6六馬という絶妙手があった(次の図)

変化6六銀図34
 陰から突然現れたような6六馬(図)の“王手”で、先手良しになっている。
 同成銀なら、先手玉の詰めろが消えて、逆に5二とで後手玉に“詰めろ”がかかって先手良い、という仕組みだ。
 4四桂(4四歩でもだいたい同じ)以下が面白いのでそれを見ておくと、4四桂には、3三銀と打ちこむ。これを同銀は、同歩成、同玉、3四銀、同玉、3五歩、同玉、5七馬以下、“詰み”がある。
 なので3三同桂だが、そこで7六馬(次の図)

変化6六銀図35
 銀を補充した。これで後手玉に、2一金、同玉、2三飛成、1一玉、2二銀までの“詰み”があるというわけだ。
 それを防いでも、8五馬や5三とで、これはもう先手勝ちで決まりである。

 〔W〕7七銀成 は、4一角以下先手が勝てる。
 (4一角に3二歩には3七飛、3一歩には2六飛、3二歩、7三歩成)


B9七玉図
 〔U〕7五銀上 → 先手良し
 〔V〕7五桂  → 先手良し
 〔W〕7七銀成 → 先手良し

 よって、≪B≫6六銀 には、「9七玉」で、先手良し。

 
 以上の結果をまとめると

8七玉図
 【午】8七玉 としたこの図は、≪A≫6六と≪B≫6六銀、どちらの手に対しても、「9七玉」として、先手良し、が結論となる。


≪指始図≫5六とまで
 その結果、こうなった。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 先手良し
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → 先手良し
  【未】7三歩成

 【卯】4一角【午】8七玉 とは、先手が手順を尽くせば、結局同じ図に合流することになるので、結果も連動して「先手良し」である。
 「8七玉~9七玉」の手と、「4一角」を組み合わせる手で、先手に勝ち筋が存在していたということである。


 つまり、最初の予定通り、▲8七玉 と指していれば、(正確に指して勝ち切れたかどうかはともかく)先手の勝ち筋のある道へと進めたはずなのである。
 直感の通りに、そう進めていれば……。 9七玉と4一角の組み合わせは、見えていたのだ!!

 ところが―――――



≪最終一番勝負 第25譜 指了図≫ 7三歩成まで

 我々(終盤探検隊)は、指す予定ではなかった手、△7三歩成 を選んで指したのである。
 理由は、説明できない。

 “魔が差した”としか表現のしようがない。(▲8七玉なら先手良しだったのに……)


 泉鏡花『註文帳』で剃刀研ぎ師の五助が、「19日は仕事をしない」と決めていたのに、なぜか註文帳を開いて一件の仕事を始めてしまった。それが“怪異な事件”をもたらした。
 なぜ五助はその仕事(お若の剃刀を研ぐ)を始めてしまったのか。
 それは、本人にも説明のしようのないことなのだ。


第26譜につづく
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