はんどろやノート

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終盤探検隊 part181 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第80譜

2020年12月02日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第80譜 指始図≫ 4四歩まで

指し手 △9五歩  ▲8七玉  △6六歩



   [羊の腿肉(ももにく)]

 ようやく赤の女王さまが口をひらいてね。「スープとお魚はすんじゃいましたよ。こんどはお肉よ」すると給仕たちが羊の腿肉(ももにく)をアリスのまえにおいた。アリスはこんな大きなかたまりを切ったことがないので、いささか心ぼそい思いでその肉を見やってね。
「あなた、おどおどしちゃってるみたいね。その羊の腿さんにご紹介しましょうか」赤の女王さまがいいだした、「アリスさん、こちらは羊さんです――羊さん、こちらはアリスさんです」羊の腿肉ははお皿の中で立ちあがると、アリスにかるく会釈(えしゃく)してね。アリスも会釈をかえしたけれど、おどろいたらいいか、面白がったらいいか、自分でもわからない。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 たしかに、羊の腿肉に会釈されても、これはどうしていいかわからない。




<第80譜 ここまでは順調だった>


≪最終一番勝負 第80譜 指始図≫ 4四歩まで

 先手の終盤探検隊は、▲4四歩 と打って、攻め合う姿勢を見せた。

 ここで、実戦では現れなかった〔a〕4四同歩、〔b〕7八馬、〔c〕7七馬 の変化を見ておく(実戦の進行は〔d〕9五歩)

 〔a〕4四同歩なら、4二歩と攻める。同銀に、4三歩と打ち、4三同銀に、4二歩(次の図)

変化4四同歩図
 先手良し。この後手陣は4筋をこのように攻めるのが基本なのだ。

変化7八馬図01
 〔b〕7八馬には、7九金(図)と受ける。
 以下8九馬、同金、4九飛に、6九歩(次の図)

変化7八馬図02
 6九同飛成なら7八銀、4九竜に、5一金と打てば先手が良い。
 4四歩なら4三銀、同銀、4一竜、4二銀打、6五角で先手勝勢になる。
 9五歩には、7七歩、9六歩、8七玉、6六歩、7八銀、6四香に、やはり5一金で先手良し(7七歩の手は後手の4七飛成に備えている意味もあるのであせって7六歩と桂を取らないほうが良い)

 〔b〕7八馬は7九金で先手良し。

変化7七馬図01
 〔c〕7七馬(図)には、8七金と打つ。以下4四馬と歩を払って、どういう展開になるだろうか。
 先手は7六金と桂馬を取る手がある。次に8五歩の狙いもあるので後手は7五歩とするが、6五金と出て、9五歩に、5五金打、3四馬、4五金打(次の図)

変化7七馬図02
 2四馬なら、3四歩、同歩、2六桂という攻めがある。
 4五同馬、同金、7八金と切り返して、どうか。
 以下は変化の一例だが、5五角、4四歩(4四銀には同金、同歩、4三桂)、3九飛、7六歩、3四歩、同歩、2六桂(次の図)

変化7七馬図03
 先手勝勢。5五の角が受けに利いている。


4四歩図
 〔a〕4四同歩、〔b〕7八馬、〔c〕7七馬 は、以上のようにして先手良しになる。

 後手の ≪ぬし≫ は、〔d〕9五歩 と指した。



≪途中図1 9五歩まで≫

 △9五歩(図)は、予想通りの手で、我々(終盤探検隊)はこの手に対しては ▲8七玉 と決めていたのでそう指した。おそらくそれが最善手。
 代えて、4三歩成とするのは、7八馬で後手勝ちになる。


 ただし、ここでは「7九金」もあるので、その変化がどうなるか、調べてみた。

変化7九金F図01
 「7九金」(図)に、9六歩なら、8七玉で、これは先手良しになる。
 ここは7七馬が後手の正着で、以下9五歩、9六歩、同玉、9四歩、同馬(次の図)

変化7九金F図02
 ソフトの評価値も後手がやや良い形勢と示しているが、図の9四同馬で実際はきわどい形勢だ。
 9四同金、同竜、7八歩、8七金(次の図)

変化7九金F図03
 8七同馬、同飛、8四金、4三歩成、同銀、4四歩(次の図)

変化7九金F図04
 この4四歩に、3二銀と引くと4三銀で先手良しになる(4二歩には1一角がある)
 よって、9四金(同歩は9五歩から先手玉が詰む)、8五歩、8四銀、8六金、4六飛と進む(次の図)

変化7九金F図05
 複雑な場面になってきたが、この4六飛(図)が好手で、どうやら後手良しになっているようだ。
 4三歩成なら、8五銀以下先手玉は詰む。
 6六歩なら、4四飛で、それは後手優勢の局面となる。

 後手の9五歩に「7九金」の変化は、きわどい変化になり、調査結果は後手良し。




≪途中図2 8七玉まで≫

 さて、実戦は ▲8七玉(図)と進んだ。

 対して、後手は △6六歩 と指してきたが、我々は「7四香」を警戒していた。


 その「7四香」の変化を見てみよう。

変化7四香図01
 「7四香」に、先手の受けがたいへんに難しい。
 7七歩は8八桂成、同玉、7七香成で意味がない。
 7九金は、同馬、同飛、8八桂成、同玉、7九香成で、後手良し。
 4三歩成と攻め合ってどうか。これはきわどい変化になる。しかし、4三歩成、8八桂成、同玉、7八香成、9八玉、8九成香、同玉の変化は、どうやらこれも後手良しだ。
 「7四香」に先手に勝つ手があるのかと不安になっていたところだ。

 だが、先手が勝つ手は2つ存在した。
 「6一竜」と「7八金」である。「6一竜」は互角に近い難解な変化になる。
 「7八金」を見ていこう。

変化7四香図02
 「7八金」(図)と受けたところ。
 以下7八同馬、同玉、8八桂成、6七玉(6八玉でも同じ)、8九成香、5八玉(次の図)

変化7四香図03(5八玉図)
 先手玉は“裸”で、後手は飛車を持っている。こうした展開はできれば避けたいところだが、しかしこの図はどうやら「先手良し」のようである。とはいえ最新ソフト(「水匠2/やねうら王」)の評価値も +104 だから、実戦の中でこれで先手良しと判断するのは難しい。
 だが、具体的に手を進めて調べてみると、この図は先手良しということがわかってくる。つまり、ここで後手からの有効な攻めがないのだ。
 ここで後手4四歩は、4二歩、同銀、4三歩の攻めがあって、先手が勝てる。
 だから後手は攻めるしかないのだが、攻めるとすれば3九飛だ(2八飛は後述)
 3九飛には、3七金が受けの好手(次の図)

変化7四香図04
 後手の3九飛は3八飛成を狙っており、3七金はそれを受けた手。
 3八飛成を受けるなら4八金が良さそうに見えるが、それは3一金で形勢不明の変化になる。先手は4三歩成から攻める予定なのだが、4筋の歩が切れたときに、後手4七歩の叩きが入るから。それを想定して、3七金と受けるわけだ。
 3七金に3一金なら、4三歩成、同銀、4四歩、3二銀、4三銀で先手良し。
 2九飛成なら4三歩成で先手優勢がはっきりする。
 ということでここで4四歩はしかたないが、4三歩と垂らしておく(4二歩、同銀、4三歩もあるが、同銀左、4一竜に、5一金の変化がややこしい)
 2九飛成に、5一竜(次の図)

変化7四香図05
 5一竜(図)は3一銀以下の “詰めろ”。先手優勢。

変化7四香図06
 「変化7四香図03(5八玉図)」まで戻って、そこで後手2八飛(図)にはどう対処するか。
 これには4八銀がよい。3八飛成には5六角(後手の4七金と6七金の狙いを両方防ぐ)で先手良し。
 3八金の追撃があるが、4三歩成、4八金、5七玉で―――(次の図)

変化7四香図07
 先手良し。後手玉には “詰めろ” が掛かっている。

 以上の調査により、後手「7四香」の変化は、7八金以下、先手良しとわかった。




≪最終一番勝負 第80譜 指了図≫ 6六歩まで

 実戦は、△6六歩 と進んだ。

 ここで7九金または6九金なら、先手が勝ちに一歩近づいていた。
 だが、この「一番勝負」の実戦はそう進まなかった。



第81譜につづく
コメント
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