2011年5月3日(火) 学校での放射線被曝、
◎政府の内閣官房参与として、3月16日に任命されたばかりの、放射線安全学を専門とする、東大教授の小佐古氏が、先日、突然、辞任した。辞任の理由は
① 原発事故に対する政府の対応が、場当たり的である
② 学校での限界放射線量とした20mSvは、甘すぎて許容できない
という。
①については、何を言っているのか、良く分からない。政府筋も、国会等で、教授の発言について、抗議しているが、本人の真意は、違うところにあるようにも見受けられる。
原発事故に対するこれまでの政府の対応は、決して万全とは思わない。 当初の爆発事故の深刻さや、事故レベルの再評価、緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)による影響予測など、危険な状況について、正確に公表してきた、とも思わない。でも、被曝量の安全基準の見直し、避難区域の見直しなど、未経験で、先が見えない事態の中で、時間に追われながら、原子力安全委員会などの助言も得つつ、関係機関と連携し、これまで進めてきた、と自分は、理解している。
②については、氏は、あくまでも、1mSv/年 以下とすべきだ、という意見のようだが、関係する専門家の間でも、意見の隔たりがあるのか、教授の意見は少数派だったようだ。
国際放射線防護委員会(ICRP:International Comission on Radiological Protection)の、勧告(2007年)では、一般人が、年間浴びても良い放射線量を、3つの範囲で指定している。
緊急時 20~100mSv/年
復旧時 1~20mSv/年
平常時 1mSv/年 以下
3月21日付で発表された、ICRPの、日本向けの声明の中でも、現在は、復旧時ととらえ、住民が住み続ける場合は、1~20mSvの範囲で検討する、という考え方が紹介されている。
このようなことから、20mSv/年が、計画的避難の目安となっている。子供たちが学校で、屋外活動をする基準も、この数値から導かれ、1日の内、8時間は屋外、16時間は屋内(木造家屋)というモデルで、3.8μSv/時 とされた。小佐古氏の主張のように、1mSv/年とすると、同じモデルで、0.19μSv/時となる。
ICRPでも、長期に亘る場合は、1mSv/年 になるのが望ましい、とされており、事故が終息に向かえば、数値は次第に小さくなると思われる。
当面は、線量が高めな場合は、屋外活動時間を短くする、などとすれば良く、屋外活動による、心身のリフレッシュも重視するべきだろう。数値を小さくする程、安全性は高くなるのは自明だが、その分、子供たちの屋外活動が制限されてしまう、こととなる。
小佐古氏は、辞任の会見の中で、20mSv/年の環境で、遊ばされる子どもたちは、可哀想だ、自分のヒューマニズムが許さない、などと言われているようだ。この数値が、10m、5m、1mSv/年等になったら、医学的に、どれ位の違いがあるというのだろうか。
ICRP勧告作成にも関与された、日本アイソトープ協会常務理事の佐々木康人氏は、1~20mSv/年という数字なら、健康に全く問題はない、と話している。文科省が決めた数値が、如何にも問題があるように、思われてしまったのが残念だ。
この国難と言える大事の時、多少の意見の違いはあっても、協調し合って、合意点を見つけて進めることこそ、大事と思う。
放射線や原子力関係の専門家の間でも、見解の相違があるのは、当然のことで、小佐古氏の行動は、自分には、余りにも、独断的で、協調性がなく、敢えて言わせてもらえば、いわゆる学者先生の、子供っぽい行動に見える。学閥や、力関係なども絡んでいるのではないか。ご本人は、“ご意見は採用するので、辞めないで欲しい” と慰留される、と思ったのかもしれない。
◎文科省の数値が出るまで、校外活動を自粛していた郡山市の1校が、上述の基準を越えていたようだ。市では、早速、他の学校も含めて、グランドの表面の土を削って、新しい土を入れて、線量を低くしたようだ。
所が、この削り取った土を、市のごみ集積場に集めようとしたら、それを知った近隣の住民が、強烈に反対したために、それもできず、元の学校のグランドの隅に積み上げて、シートをかぶせた状態にしていると言う。結局、グランドは使えないようだ。
とんだ笑い話で、市では、削った土の処分法について、何とかしてくれと、文科省に泣きついているようだ。
市の担当部署としては、良かれと思ってやったのだろうが、捨てれば済むものではない、放射能の持続的な怖さについて、どの位分っていたのだろうか。削り取った土をどうするつもりだったのか、ゴミ集積場に集めるにあたって、周辺住民に話すつもりはなかったのか?
放射能を含む、集めた土は、土中深く埋めることが考えられる。除染や、移送等に使った機材の処分等も同じだろう。これらは、放射性廃棄物となる。口蹄疫で処分した、家畜のようには、簡単には処理できないのだ。
又、コンクリート製の倉庫の様な、外に放射線が出ない施設をつくって、そこに保管することが考えられる。青森県の六ヶ所村でも同じだが、この施設については、長期にわたった、厳重な安全管理が必要となる。
放射性物質は、広く分散している方が、却って安全性は高い、とも言える。局所的に集中すると、その場所は、極度に危険性が高まる訳だ。
本当に危険なら、学校を移す、しかないが、その前に、人間の生理的に備わった回復力に期待しながら、放射線量の強さに応じて、
屋外活動時間をコントロールする、
防護手段を身につける、
など、工夫しながら、付き合っていくことも必要であろう。
◎政府の内閣官房参与として、3月16日に任命されたばかりの、放射線安全学を専門とする、東大教授の小佐古氏が、先日、突然、辞任した。辞任の理由は
① 原発事故に対する政府の対応が、場当たり的である
② 学校での限界放射線量とした20mSvは、甘すぎて許容できない
という。
①については、何を言っているのか、良く分からない。政府筋も、国会等で、教授の発言について、抗議しているが、本人の真意は、違うところにあるようにも見受けられる。
原発事故に対するこれまでの政府の対応は、決して万全とは思わない。 当初の爆発事故の深刻さや、事故レベルの再評価、緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)による影響予測など、危険な状況について、正確に公表してきた、とも思わない。でも、被曝量の安全基準の見直し、避難区域の見直しなど、未経験で、先が見えない事態の中で、時間に追われながら、原子力安全委員会などの助言も得つつ、関係機関と連携し、これまで進めてきた、と自分は、理解している。
②については、氏は、あくまでも、1mSv/年 以下とすべきだ、という意見のようだが、関係する専門家の間でも、意見の隔たりがあるのか、教授の意見は少数派だったようだ。
国際放射線防護委員会(ICRP:International Comission on Radiological Protection)の、勧告(2007年)では、一般人が、年間浴びても良い放射線量を、3つの範囲で指定している。
緊急時 20~100mSv/年
復旧時 1~20mSv/年
平常時 1mSv/年 以下
3月21日付で発表された、ICRPの、日本向けの声明の中でも、現在は、復旧時ととらえ、住民が住み続ける場合は、1~20mSvの範囲で検討する、という考え方が紹介されている。
このようなことから、20mSv/年が、計画的避難の目安となっている。子供たちが学校で、屋外活動をする基準も、この数値から導かれ、1日の内、8時間は屋外、16時間は屋内(木造家屋)というモデルで、3.8μSv/時 とされた。小佐古氏の主張のように、1mSv/年とすると、同じモデルで、0.19μSv/時となる。
ICRPでも、長期に亘る場合は、1mSv/年 になるのが望ましい、とされており、事故が終息に向かえば、数値は次第に小さくなると思われる。
当面は、線量が高めな場合は、屋外活動時間を短くする、などとすれば良く、屋外活動による、心身のリフレッシュも重視するべきだろう。数値を小さくする程、安全性は高くなるのは自明だが、その分、子供たちの屋外活動が制限されてしまう、こととなる。
小佐古氏は、辞任の会見の中で、20mSv/年の環境で、遊ばされる子どもたちは、可哀想だ、自分のヒューマニズムが許さない、などと言われているようだ。この数値が、10m、5m、1mSv/年等になったら、医学的に、どれ位の違いがあるというのだろうか。
ICRP勧告作成にも関与された、日本アイソトープ協会常務理事の佐々木康人氏は、1~20mSv/年という数字なら、健康に全く問題はない、と話している。文科省が決めた数値が、如何にも問題があるように、思われてしまったのが残念だ。
この国難と言える大事の時、多少の意見の違いはあっても、協調し合って、合意点を見つけて進めることこそ、大事と思う。
放射線や原子力関係の専門家の間でも、見解の相違があるのは、当然のことで、小佐古氏の行動は、自分には、余りにも、独断的で、協調性がなく、敢えて言わせてもらえば、いわゆる学者先生の、子供っぽい行動に見える。学閥や、力関係なども絡んでいるのではないか。ご本人は、“ご意見は採用するので、辞めないで欲しい” と慰留される、と思ったのかもしれない。
◎文科省の数値が出るまで、校外活動を自粛していた郡山市の1校が、上述の基準を越えていたようだ。市では、早速、他の学校も含めて、グランドの表面の土を削って、新しい土を入れて、線量を低くしたようだ。
所が、この削り取った土を、市のごみ集積場に集めようとしたら、それを知った近隣の住民が、強烈に反対したために、それもできず、元の学校のグランドの隅に積み上げて、シートをかぶせた状態にしていると言う。結局、グランドは使えないようだ。
とんだ笑い話で、市では、削った土の処分法について、何とかしてくれと、文科省に泣きついているようだ。
市の担当部署としては、良かれと思ってやったのだろうが、捨てれば済むものではない、放射能の持続的な怖さについて、どの位分っていたのだろうか。削り取った土をどうするつもりだったのか、ゴミ集積場に集めるにあたって、周辺住民に話すつもりはなかったのか?
放射能を含む、集めた土は、土中深く埋めることが考えられる。除染や、移送等に使った機材の処分等も同じだろう。これらは、放射性廃棄物となる。口蹄疫で処分した、家畜のようには、簡単には処理できないのだ。
又、コンクリート製の倉庫の様な、外に放射線が出ない施設をつくって、そこに保管することが考えられる。青森県の六ヶ所村でも同じだが、この施設については、長期にわたった、厳重な安全管理が必要となる。
放射性物質は、広く分散している方が、却って安全性は高い、とも言える。局所的に集中すると、その場所は、極度に危険性が高まる訳だ。
本当に危険なら、学校を移す、しかないが、その前に、人間の生理的に備わった回復力に期待しながら、放射線量の強さに応じて、
屋外活動時間をコントロールする、
防護手段を身につける、
など、工夫しながら、付き合っていくことも必要であろう。