2016年11月29(火) アメリカ合衆国 1
アメリカ合衆国(USA:United States of America 以下では、原則 アメリカと略)の大統領選挙の本選挙の投票が、現地時間の11月8日に行われ、日本時間の9日になって、開票速報がTV等で報道された。 開票結果は、事前の予想に反して、トランプ候補が、クリントン候補を破って、選挙人の過半を獲得する結果となり、次期大統領に選出される事となった。
形の上では、12月19日(月)に開催される、選挙人集会で、正式に選ばれることとなり、来年1月の就任式で、現オバマ大統領の後を受け、第45代として、トランプ大統領が誕生することとなる。
今日のニュースでは、一般投票では、クリントン候補の総得票数が、トランプ候補よりも200万票も多かったことから、不満がくすぶっていて、集計法にミスがあったのではと、数え直しの話が出たり、イリノイ州の投票結果が、今日になって確定したなど、いまだに、余韻が残っている。
トランプ氏が、次期大統領になると決まった事で、選挙期間中の数々の過激な言動や、その後の、主要閣僚の人選等の話題が、世界中の注目を集めている。
日本との関係でも、安全保障と防衛問題、TPP等の経済問題など、目が離せない。
先日の11月23日、NHKの番組、解説スタジアムで
「グローバル化の功罪 これからの日本と世界」
と題して、解説委員諸氏による、アメリカを軸にした活発な議論が行われ、その様子を視聴した。
筆者にとっても、今回の大統領選挙がきっかけとなって、超大国アメリカへの関心が膨らんだところだが、政治・経済関連等の話題については、折を見て、今後取り上げることとしたい。
本稿では、やや視点を変えて、アメリカの地理的な側面に着目して、触れることとしたい。
○ アメリカの国土
面積が比較的正確に表示されると言われる、ミラー図法による、国境入りの世界地図が下図である。 (ネット画像より)
アメリカの国土の広さは、以下のように、世界全体で第3位となっているが、面積当たりの人口(人口密度)で見ると、かなり低くなっている。(データは、2012国連統計 等より)
国名 順位 国土面積 人口 人口密度
ロシア ① 1709.8 万km2 1.43億人 8 人/km2
カナダ ② 998.5 0.34 3
アメリカ ③ 962.9 3.13 33
中国 ④ 959.8 13.81 144
ブラジル ⑤ 851.5 1.93 23
オーストラリア⑥ 769.2 0.22 3
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日本 ○ 37.8 1.27 337
ロシア、カナダは、極北地域の不毛地帯も多いのだが、アメリカは、広大な北米大陸の主要部である温帯地域を、いいとこ取りしていて、世界で最も恵まれた、肥沃な国土を有している、と言えよう。
◇ 世界の時間帯
地球は、自転運動により、24時間で1回転(360度)することから、
360度/24時=15度/時
となり、経度差15度毎に1時間の時差がある訳だ。
下図は、世界各地の時間を表している。 図下部の数字が、協定世界時 (UTC:Universal Time Coordinated)で、図上部の数字が、日本標準時(JST:Japan Standard Time)である。JSTは、UTCより、9時間進んでいる。
UTCは、現在は、高精度の原子時計(セシウム原子の振動数)が標準時計として使われている。
世界の時間の基準として、従来は、ロンドンのグリニッジ天文台での天体観測から得た、グリニッジ標準時(GMT:Greenwich Mean Time)が使われてきた。GMTは、UTCと殆ど同じと言ってかまわないが、厳密には、UTCに比べて、100年間で約18秒のずれが生じるという。(UTC協定世界時とGMTグリニッジ標準時の違い | LOCALTIME.JP)
世界の大半の国々では、日本のように、標準時間は一つだが、国土が東西に長い以下の国々では、国内で、複数の標準時間が使われている。
ロシア 11標準時(飛地 カリーニングラード州にも)
カナダ 6
アメリカ 6(本土4 アラスカ、ハワイ)
オーストラリア 3
インドネシア 3
ブラジル 2
ここで、中国には、標準時が一つしかないことに、改めて驚かされた事だ。中国は、国土の東西への広がりからみて、標準時は、4位が妥当と思われるのだが、何ゆえ、1なのだろうか。
少し調べたところでは、中国の巨大な人口(13億)の大半が、国土の東半分(経度差 30度程度内)に集中していて、西方面(西域)は、砂漠地帯で、人口が極めて希薄ということで、大方の国民は、2時間程度の時差内で生活しているということが、理由のようだ。独裁的な社会主義国家と言うことで、一元化しやすいという事もあるだろうか。(中国はなぜ1つの標準時時間しかないのか? - 地理学 解決済 | 教えて!goo)
又、北米地域(カナダ、アメリカ、メキシコ)や北欧など、高緯度地域を抱える国々では、日照時間を有効利用するために、夏時間(サマータイム)を導入している国も多いが、複数の標準時間がある国々での夏時間の導入は、社会生活が煩雑にならないだろうかと、気になるところだ。
又、ロシアでは、2014年に、一部地域の標準時の変更を行った際に、1981年から全国的に導入していたサマータイムを廃止し、冬時間に戻して、現行の標準時制にしたようだ。 サマータイムを廃止した理由については、未調査であるが、標準時が11もあることから、煩雑さを避けたのかもしれない。
◇ アメリカの時間帯
アメリカの標準時間を、州単位に表示したのが下図だ。 図のように、アメリカでは、本土で4種の、それに、アラスカとハワイを加えて、全体で6種の標準時間が使われている。
(ST:Standard Time)
東部時間:Eastern ST (EST) UTC-5
中部時間:Central ST (CST) UTV-6
山岳部時間:Moutain ST(MST) UTC-7
太平洋時間:Pacific ST(PST) UTC-8
アラスカ時間:Alaska ST(AKST) UTC-9
ハワイン時間:Hawaii ST (HST) UTC-10
ESTは、UTCより5時間遅れで、西に行くに従って、それぞれ、1時間ずつ遅くなるので、アメリカ全体では、5時間の時差がある。
上図をみると、本土の時間帯の境界は、ほとんどが、州境と一致しているが、一部、SD(サウスダコタ)、NE(ネブラスカ)、TN(ネネシー)、ID(インディアナ)、KY(ケンタッキー)、FL(フロリダ)州などでは、州内に、時間帯の境界があるケースもあるようで、今回、新たに知ったことである。
このように、時間帯の境が、行政単位と異なることに加えて、アメリカでは、殆どの州で、前項で述べた、サマータイム(Daylight Time)も行われており、時間制がより複雑になっているようだ。
アメリカの大統領選挙は、投票は、6種の標準時間に従って、東部地域から順に、現地の時間に合わせて、実施された。
開票は、当然のことだが、最後の時間帯(ハワイ)での投票が締め切られて後、一斉に行われた。 開票作業は、現地時間の昼夜にかかわらず、夜を徹して行われた。
◇時間の中での生活
アメリカでは、本土だけで、4つの時間帯が有るわけで、アメリカの人たちは、日常生活からビジネス、旅行、スポーツ、放送などなど、常に時間差を意識しながら、複数の時間の中で生きている事を、改めて知ったことだ。
台風シーズンでの気象情報では、現地の上陸時間等が、重要な情報となるだろうか。
アメリカでの、4年に一度の大統領選挙と国会議員選挙は、投票時間、開票時間で、国内の時間差を意識する、最大のイベントかも知れない。
いまや、地球上には、海底ケーブルや通信・放送衛星等が整備され、インターネット網などが張り巡らされて、世界の出来事の情報が、現地からの生放送(Live)や録画放送などで、身近に、居ながらにして手に入る時代だ。
その最たるものが、先だってのリオ・オリンピックや、アメリカ大統領選挙のニュースだろうか。
旅行等を行う場合、実際の移動時間に加えて、時差の有無が問題となる。この場合、複数の時間の中で生活する状況下で4時間程度以内の時差を伴う移動であれば、移動する交通機関の時刻表、訪問先との約束時刻等に、注意を払えばよく、人体上は、それほどの負担ではない。
でも、時差もあって昼夜が逆転するような長時間の移動になると、筆者の経験からは、時差ボケが身体的に大変な負担となる。これについては、次稿で触れることとしたい。