2012年11月29日(木) 戸籍の話 その4
これまで、戸籍について、以下の様に触れて来ており、転籍届が終わった所だ。
戸籍の話 その1 (2012/9/27)
戸籍の話 その2 (2012/9/29)
戸籍の話 その3 (2012/11/22)
転籍届を行った後に、本籍情報が必要な処理としては、挿し向きは、運転免許証での、記載事項変更手続きがある。これを行うため、新たな本籍が記載された住民票を持って、先日、最寄りの警察署に出向き、手続きを終了した。
ここまでで体験的に分った、幾つかの事項について、以下に述べる事としたい。
○住んでいる区役所のHPでは、転籍届を行うと、
“届出した日から法律上の効力が発生する”
と、明記してある。
でも、窓口では、新本籍での戸籍謄抄本が取得できる処理が完了するまでには、10日程かかる、とも、言われた。
果たして如何かな、と思いながら、確認のためと、免許証での本籍変更手続きに必要なことから、届出の翌日、最寄りの支所で、住民票を取得したら、新しい本籍地になっているのには、いささか、驚いた。
現住所を管理しているシステム(住民基本台帳システム)と、本籍等の管理システム(戸籍システム?)は、現在は、全く独立したシステムになっている、と理解してきたからである。
本籍は、国籍にも絡む重要な個人情報であり、本籍の変更処理では、ダブルデファインなどの手違いは、避けなければならない。
しかも、今回、自分が、郵便で、変更前の戸籍謄本を請求した事から類推すると、役所間の作業も、未だ、ネット利用ではなく、郵便等のやりとりで行われているのかも知れない。
元の本籍地の役所での除籍処理を、電話・FAX等で確認してから、新本籍地の役所の戸籍システムで新本籍を有効にする、なども必要であろう。
このようなことから、新本籍の戸籍謄抄本が取得できる処理が完了するまで10日程かかる、と言われたのであろう。
本籍に関する情報として、
・戸籍謄本が必要な場合
・住民票(本籍記載)が必要な場合
が考えられるが、転籍届を行った日から法律上の効力が発生する、と明記してあることとの関係はどうなるのだろうか。
後者の場合のため、届出日に、転籍情報を、住民基本台帳システムにも並列に入力することで、本籍が記載された住民票が取得出来るようにしている、と考えられる。これは、システム的な結合ではない、あくまでも、応急的な措置と言えるであろうか。
前者の場合が可能になった時が、転籍の完了と言えるだろうが、それまでに、10日間程のブランクが出来る事となる。 でも、婚姻関係や不動産取引等で、このことが問題となるケースもあるのではないか。
これを避けるために、未確認だが、10日程後になって取得できるようになる戸籍謄抄本では、発行された日付けと共に、届出のあった日付(有効となった日付)も、記載されていると考えられる。
前前稿でも触れたが、欧州などの先進諸国では、住所や戸籍(出生等)などの、住民情報の管理システムが一本化されていて、全国的にネットワークになっているところが多いようだ。
一方、我が国の場合、現住所等を管理する、住民基本台帳システムが、鳴り物入りで整備されたのだが、未だに不完全で、辛うじて、全国ネットの体裁になっているだけだ。
又、戸籍管理システムは、各自治体ごとに独立していて、今回の様に、本籍地が遠隔地の戸籍謄本が必要になった場合は、当該役所に、自分で請求書を郵送しているあり様だ。
そして、役所相互間は、未だに、郵便での情報のやり取りが基本になっていると想定される状況であることを、今回、身を持って体験した所である。
東アジア地域での、身分制度の遺物とも言える厄介な戸籍の管理だが、これを、今後、どのように改善していくか、住民基本台帳システムとどのように連携させていくかは、かなり重要な課題であろう。
○今回の免許証の本籍地変更手続きには、先日取得したばかりの、新本籍記載の住民票を使用した。手続きそのものは、記載事項変更届に、必要事項を記入し、免許証と住民票を添えて提出すれば、簡単に済むのだが、情報収集のいい機会だからと、窓口で、2、3聞いて見た。
手持ちの免許証(H21/3交付)には、本籍の欄はあるのだが、空欄で、何も印刷されていない。 一つ前の古い免許証(H18/3交付)迄は、本籍が印刷されている。
以前は、紙ベース、プラスチックベースだった免許証が、H19(2007)年から、徐々に、ICカード化されており、本免許証も、其れだ。(運転免許証 - Wikipedia)
ICカード化された基本的な理由は、偽造防止と言われるが、これについては、次稿で、少し具体的に取り上げたい。
一方、IC化の機会に、券面に印刷されていた本籍情報が、カードの中に記憶されて、券面が空欄になったようだ。印刷を止めた理由は、出生地等が推定できる本籍を、知られたくないと言うプライバシーの保護のために、時代の流れで、表に出さないようにしたようだ。住民票の請求でも、昨今は、本籍地や、続柄の印刷を、省略できるようになっているが、立派な公文書である免許証でも、同様の配慮がなされている、と言えるだろうか。
更に、最近交付される免許証では、本籍の欄そのものが無く、やや不自然な、空きスペースとなっていて、最近更新した家族の免許証を見せて貰ったら、その通りであった。
初期のIC免許証 最近のIC免許証
本籍が空欄になっている理由について、窓口で聞くと、上の様な答えが返ってくるのだが、そもそも、現住所の他に、なんで、本籍の情報まで必要なのだろうか、と言う問いには、そのような決まりになっている、と言うだけで、明確な答えはなかった。
警察署の免許窓口では、免許証内部に記録されている事項の確認が出来るようになっている。ただし、そのためには、4桁の暗証番号が、2組必要になるが、忘れてしまった(亡失)ので、調べて教えて貰った。この2組の暗証を入れたら、ICチップ内に記録されている、交付年月日、免許証番号末尾4桁と共に、新しい本籍が印刷された。
米軍キャンプ等で働く人が、本籍地を調べるために、わざわざ、警察署まで来ることがあるようで、仕事先に、免許証と共に、この本籍を印刷した書面を提出する、と言う。
そして、今回判明したのだが、IC免許証では、住所は、券面に印刷されているだけで、ICチップ内には記録されていない、と言うことを、窓口で聞いて、改めて驚いた。
片や本籍は、券面から消えてチップ内だけになり、片や現住所は、券面だけになり、チップには記録されていないようだ。
ネットで見つかった、某ソフトメーカーが売り出しているIC免許証の記載内容確認ソフトの説明によれば、チップ内に、住所情報を入れているのは、一部の自治体だけと言う。 (ICカード免許証ICチップ記載内容確認パッケージ | NECネッツエスアイ)
ICカード化は、平成19(2007)年1月から始まり、平成22年(2010年)1月になって、全都道府県への導入がなされたが、免許の更新ごとに切り代えられていくことで、平成27(2015)年にはIC化が完了する予定という。でも、チップのメモリ量は8KBのようで、それによる制限とも考えられるのだが、今後、住所情報もカード内に入れて行くという計画は見当たらない。
記載事項の変更手続きは、建前では、速やかに行う事になっており、かなり以前だが、転居した時には、最寄りの警察署に出向いて、住所変更の手続きを行った事もある。
上述のように、本籍は、券面にも印刷されておらず、取締まり現場の警官にも、調べる手立てが無いのだから、今回の本籍地の変更手続きは、不要なのではないかとも思える。
念の為にと、変更しないで放置したらどうなるかと聞いて見た。そしたら、担当官からは、スピード違反や駐車違反の取り締まりは道交法の規定だが、記載事項の変更手続きについては、道交法とは別の法律で、行うことが明記されていて、科料はない、との、自信ありげな回答。
でも、気になった様子で、改めて調べた所では、道交法94条1項に規定があり、2万円以下の罰金/科料と決まっている事が判明したが、ただ、運用上、罪に問われたことはないという回答であった。対応した担当官も、最後には、素直に、いい勉強になった、と言っていた。
今回触れなかった、本人確認情報としての免許証の役割と、それから来る偽造問題等に付いて、次稿で、取り上げることとしたい。
又、少し先になるが、本籍移転後の作業として、新戸籍謄本が必要となる、パスポートの取得を、考えている。