2014年7月30日(水) 原発の安全審査 2
本稿は、当ブログの下記記事
原発の安全審査 1 (2014/7/29)
の続編である。
ここでは、川内原発の概要を把握した後、川内原発の具体的な審査状況について、安全審査の最も基本的な前提となる、自然災害のリスクについて、触れることとする。
◎川内原発の概要
川内原発 : 九州電力 川内原子力発電所
立地状況 : 鹿児島県 薩摩川内市
1号機 : 出力89万kw 加圧水型軽水炉(PWR)1984.7 稼働開始
2号機 : 出力89万kw 加圧水型軽水炉(PWR)1985.11稼働開始
所在位置 海側から見た2基の原子炉
当原発では、これまで、幾つかのトラブルも発生しているようだが、原発の実用耐用年数を40年とすると、2基とも、あと10年程は使えるようだ。
◎川内原発の審査状況
◇審査関連資料
新しい規制基準に基づいて、今回の川内原発の審査が行われた訳だが、その審査状況については、公開されている、以下の、記者会見当日示されたプレゼン資料(資料1)、事業者からの申請書(資料2)、補正申請書(資料3)を参考にしながら、見て見たい。
資料1:実用発電用原子炉に係る新規制基準の要点と九州電力(株)川内原子力発電所の1号及び2号原子炉施設の変更に関する適
合性審査結果案の要点
平成26年7月16日 原子力規制委員会
資料2:川内原子力発電所1、2号機の新規制基準への適合性について
平成25年7月8日 九州電力株式会社
資料3:川内原子力発電所1、2号機
原子炉設置変更許可申請に係る補正申請書の概要について
(平成25年7月8日申請からの変更点)
平成26年6月30日 九州電力株式会社
◎自然災害のリスクの想定
原発の安全性は、自然災害のリスクを、どう想定するかが、基本となる。以下に述べる、自然災害の各要因については、
①原発開設時の想定(値)(設計値)(資料は未入手)
②申請書提出時の想定(値)(3.11の原発事故を受けて)(資料2)
③申請書提出後に見直した想定(値)(委員会の指摘を受けて)(資料3)
がある。ここでは、筆者としては、①がどうだったのか、も注目したいが、それよりも、②、更に見直した、③を重視したい。
◇活断層
周知のように、原発の重要施設は、活断層の上には建設しないこととなっている。
新規制基準では、敷地内や周辺の地層調査で、
後期更新世(約12~13万年前)以降の活動が否定できない場合
⇒
中期更新世(約40万年前)以降まで遡って活動を評価する
こととなっている。
⇒今回の審査では、敷地内には、活断層は無いとされている。
⇒今回の審査では、周辺地域での活断層の評価に変更は無いとされている。
一方、新潟県中越沖地震(2007年)時、柏崎・刈羽原発で基準地震動を越えた→地下構造を把握していなかった→この反省から地下三次元構造を把握して評価する
こととなっている。
⇒今回の審査では、この点では問題は無いとされている。
活断層に関しては、申請書が出された多くの原発の中で、先頭集団で審査中と言われる、以下の原発
九電 :川内、玄海
関電 :大飯、高浜
四国電 :伊方
だが、今回の九電 川内原発は、上述のように活断層の問題は無かったが、関電 大飯原発では、活断層では? との疑いが持たれた。その後の調査の結果、活断層ではなくシロとの判定になっている。
一方、申請書は未提出だが、原電 敦賀原発では、活断層の疑いは濃厚なようだ。
◇基準地震動
建物や設備の耐震性を評価する上で、基準地震動をどう設定するかは極めて重要である。
・敷地内や周辺の活断層の調査→震源を特定する基準地震動を設定 Ss-1 ②
周辺での過去の地震(鹿児島県北西部地震 1997年)や、周辺海底の活断層から評価して、以下を設定
最大加速度 540cm/s2 (ガル) (震度6弱)
・震源を特定せず策定する基準地震動 Ss-2 として、北海道留萌支庁南部地震(後述)を想定し、以下を追加設定 ③
最大加速度 620cm/s2 (ガル) (震度6弱)
・免震重要棟設計用基準地震動 Ss-Lを追加 ③
最大加速度 400cm/s2 (ガル) (震度5強)
資料1によれば、従来の基準地震動(①)は
最大加速度 400cm/s2 (ガル) (震度5強)
だったようだ。 これと、今回の数値Ss-2とを比べると、約1.5倍の強さの地震動まで想定して対応している、と言える。
ここで出て来る、ガル(gal)は、地震での揺れの大きさを表す専門的な尺度で、時間当たりの速度変化(加速度)(cm/s2)で表わされるようだ。通常使われる地震の揺れ「震度」とは、以下の関係となるという。(地震観測データの公開 how-to-use.htm)
震度階級 |
最大加速度(gal) |
|
震度4 |
40~ 110程度 |
|
震度5弱 |
110~ 240程度 |
|
震度5強 |
240~ 520程度 |
|
震度6弱 |
520~ 830程度 |
|
震度6強 |
830~1,500程度 |
|
震度7 |
1,500程度~ |
北海道留萌支庁南部地震(2004/12/14 M5.7 最大震度5強 直下型)が、何故、九州の川内原発の評価に? と思ったのだが、大きな活断層が見当たらない原発の評価に当たっては、シュミレーションモデルとして、直下型の上記地震を想定して評価するようにとの指導があったと推測される。
資料3には、以下の、難解な図がでているが、各種基準地震動の上記の数値(最大値)と下図の各波形とはどんな関係になるのだろうか。
原発の各施設や建物に要求される耐震性には、ランクがあると考えられるが、免震重要棟設計用の基準地震動(従来の①)を、新たに追加したのは、どんな理由だろうか。
◇基準津波
福島第一原発では、開設時の津波に関する設計上の想定は以下のようで、
設計想定値 ~6.1m ⇒ 実際の浸水高 ~15.5m
津波に対する対策が不十分だったことが、重大事故(シビアアクシデント)に繋がったと言われる。(福島第一原子力発電所を襲った地震及び津波の規模と浸水状況)
新規制基準では、津波に関しては、「既往最大を上回るレベルの津波を基準津波として策定すること」となっている。
・基準津波
川内原発開設時の津波の想定値①は把握していないが、申請書提出時に無かった、「琉球海溝におけるプレート間地震(M9.1)によ
る津波」を追加し、シュミレーションで評価 ③
基準津波(沖合8m地点) 約1.7m上昇→約2.0m上昇
発電所取水口付近 4m程度→5m程度
川内原発では、南シナ海に面する設置位置の関係から、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、南海トラフ地震などの様な巨大津
波は想定していない。
・津波防護施設の設置 ③
原子炉の冷却などに欠かせない海水ポンプエリアを、津波から防護するために、防護壁を作り、更に、その前面に、防護堰をつくって
いる。更に、波を弱めるため、前面の海底に、貯留堰をつくっている。
下図は、資料3から引用したものだが、基準津波と防護施設との関係を、高さで見てみる。
敷地の高さは、海面から13mとなっているが、その前面に、敷地より2m高い海面から15mの防護壁を設けている。
津波による海面上昇は、取水口付近では+5m程となるが、十分に吸収されると言えるようだ。
・建物の出入り口を水密扉にするなどの溢水対策の強化。
福島第一原発の事故では、「想定外の」大津波によって、海に近い位置にあった予備発電用の燃料タンク等も破壊され、全電源が止まってしまうという、最悪の事態を招いている。この反省を踏まえて、予備電源・予備燃料等は、極力、高台や建物の高い位置に配置することととしている。これらの建物や設備については、上図にもあるが、次稿でとりあげることとしたい。
◇その他の自然災害
・火山噴火
160km圏内の火山を調査→火砕流の到達や火山灰の降下の影響が十分小さいことを確認
・竜巻→屋外タンクの飛散防止対策(固縛)を行う。 ②
・森林火災→施設周辺に防火帯を設置 ③
◇人為災害
先日7月25日夜のTV朝日の報道(ニュースステーション)によれば、フィンランドのオルキルオト原発で建設中の原子炉は、コンクリートで覆われた2重構造になっていて、航 航空機が落ちても大丈夫なようになっていると言われる。欧州では、このような構造もあるようだ。
この対策には、大変なコストと時間がかかることから、我が国では確率が小さいと割り切るのだろうか。
最近、インド洋東海域、ウクライナ東部、台湾の澎湖島、西アフリカのマリで、航空機が相次いで墜落している現実をみると、万が一、運転中の原発に墜落したら、という想定には現実味があるのだがーーー。
事実、新規制基準では、テロや航空機衝突への対応を行う事との記述がある。具体的には、シビアアクシデント対策である、
・炉心損傷の防止
・格納容器の閉じ込め機能
などの一環として考慮することとなっている。
でも、今回の審査関連の資料1~3のいずれを見ても、具体的な対策は明記されておらず、到底、十分に考慮されているとは言えない。