2016年6月30日(木) 都知事の辞任騒動 2
マスコミや世間に対して、恰好の話題とネタを提供した、前 舛添東京都知事の辞任劇は終わったが、先日、当ブログに
都知事の辞任騒動 (2016/6/21)
の記事を、投稿したところだ。
国内では、都知事の辞任との関連で問題となった参院選が、23日にスタートし、7月10日投票となっているが、その後、イギリスのEU離脱問題で世界が揺れており、連日、ニュースが流れている。
本稿は、先の記事の続編として、知事の辞め方や辞任の理由等について、2、3補足して、早々に、切り上げることとしたい。
○ 知事の辞め方
今回の騒動では、都議会による、都知事の不信任決議案が話題となった。
国政では、内閣不信任決議案が提出されることは珍しくはなく、否決されることが多いが、これが可決された場合に、総理大臣は衆院の解散権を行使して衆議院を解散し、議員内閣制を取っている内閣が総辞職し、総選挙となることとなる。
これに対し、地方の知事の場合は、知事と議会議員は、それぞれ別々に選挙で選ばれているため、知事の不祥事等が理由で、知事が辞めるケースは、やや、複雑である。
①、議会は残ったままで、知事が自ら辞職すれば、知事選挙となる。
②、議会で、知事の不信任案が可決された場合には、知事には2つの選択肢があるようだ。
②-1、知事が辞職する。
②-2、知事は残って、知事が議会を解散し、議会議員選挙となる。
形としては、②-2も有り得るのだが、議会との関係が異常なため、結局、知事も辞めざるを得ず、議会選挙と、知事選挙が行われることになると思われる。
後述するように、今回の事例は、① だったので、無用な混乱も無かったし、選挙費用も、半額の知事選の50億だけで、済んだようだ。
○ 今回の辞職まで
先の都知事選挙時の、舛添氏の立候補の経緯は把握してはいないが、都議会で多数派を占める自民・公明が、中央政府を含めて、全面的に支援したようだ。 今回の疑惑が表面化した当初、特に自民党は、様子見で、態度をはっきりさせなかったのだが、都民の厳しい批判を反映した野党側の攻勢もあって、次第に知事を支えることが難しくなった。
議会与党は、知事を説得し辞任を迫ったのだが、知事は、9月一杯まではやらせてくれ、と粘ったようだ。この知事の意図は、8月のリオ・オリンピックに出席し、閉会式で、次の開催都市であるTOKYOの首長として、世界中が注目する中で、オリンピック旗を受け取りたかったのだと思われる。これを、辞任の花道としたかったのだろうか。
東京五輪の開催時期と、知事選挙が重ならないようにしたい、との意図もあったろうか。 このようにして、9月までやらせてくれと、なりふりかまわず哀訴したのである。
これに対して、与党の自公は、辞任時期を、ずるずると9月まで遅らせるのは、目前に迫って来ている参院選への影響が極めて大きく、 己に火の粉が降りかかり兼ねないことを懸念したようだ。
都議会内は勿論の事、国会の自民党や公明党との関係等、水面下では、どんなやり取りがあったのかは不明であるが、6月15日夜、与野党全会派が合意した不信任決議案がまとまり、議長に提出されて、可決される見通しになったのである。
ここにきて、知事の腹は決まらざるをえなかったようだ。
○ 退職金
不信任決議案が可決されて辞職することは、不名誉なことで、ある評論家は、江戸時代なら、打ち首に当たるとも言っている。現在の組織で言えば、懲戒解雇で、この場合は、退職金は無い。
一方、決議案が可決される前に、自ら辞意を表明して辞職すれば、名誉は守られ、江戸時代なら、名誉ある切腹となるようだ。現在の組織で言えば、依願退職で、この場合は、退職金は貰える。
結局、舛添氏は、前者を選んだと言う事だ。
今回、支給される退職金の額は2200万程で、夏季賞与が380万程といわれ、多すぎると批判された。でも、退職金は在職期間に応じて算出するルールになっていて、額そのものは何らおかしくはない。(舛添要一都知事の退職金、約2200万円 別に850万円支給される)
不祥事で辞めるのに、上述のように、現行では、解雇か依願退職かの、0か1かの選択しか無いことが問題なのだ。 前回や今回の事例を踏まえ、都のルールを改めて、不祥事で辞める場合は、議会で討論して退職金を決める(0%~100%まで)、というやり方にする、というのも一案だろうか。
○ 連続した辞任劇の理由
先の、猪瀬知事の辞任に引き続いて、又もや、今回、政治と金の問題で辞任することとなった。
猪瀬知事の場合は、5000万円の闇献金疑惑という、よくあるケースで、或る意味、分り易かったと言える。
一方、舛添知事の場合は、2年4か月前、前向きな選挙公約の下、クリーンなイメージの政治家として、期待を一身に背負って就任した。選挙時は、中央、地方の自公が、全面的に支援している。
その知事が、今回辞任せざるを得なくなったのは何故だろうか。前稿でも、色々触れたので簡潔に述べたい。
先ず、都知事就任以前の国会議員時代の、政治資金の使途の問題である。学者から政治家に転身した当初は、資金の使い方は妥当だったようだが、新党改革の党首に就任して以降頃から、杜撰になったとも言われているが、結局、これが命取りとなった。
政治資金規正法はザル法と言われるが、会計責任者がしっかり見ていれば、疑惑にはならないのだろうがーー。
都知事への就任後については、公用車の利用形態や、外国出張時の高額の経費等についても問題にされた。 取り巻きの都の職員が、前例に倣って手配していることであり、数人いる副知事は、何も進言しなかったのか、とも言いたいのだが、前稿に述べたように、決定的な問題では無いと考える。
国会議員時代から都知事時代を通して、公私混同が続いたようだ。家族旅行が疑われるのに政治活動の一環と言い張ったり、趣味の美術品等を、公費で購入するなどなど、余りにも、せこい話である。
筆者にとって我慢がならないのは、所謂、セコイと言われた公私混同について、弁護士を介するなど、説明の姿勢に誠実さが全く感じられないことで、本人の人格さえ疑いたくなるのだ。
氏は、学者や政治家としての、華々しい経歴の持ち主で、多数の著作もあるようだ。著作は読んではいないが、著書での記述や主張と、自身の行動とのズレが、都議会やマスコミで数多く指摘された。他に厳しく己に甘いのが、人の常ということだろう。
氏には、超エリートとしての表の顔と、金に細かく、小市民的で、スケールが小さいもう一つの顔という、二面性の印象がある。その落差の、余りの大きさには、驚くばかりである。
通常の、政治資金絡みの疑惑では、腹黒さ等が見え隠れするのだが、今回はそれらが余り見当たらず、理解に苦しむのである。
100条委員会の設置もなく、当人は、無言で退庁したことで、今後の疑惑の解明は不可能になったようだ。 やはり、辞めることで終わりとする、日本的な幕引きとなった、と言えよう。もう、これ以上、せこい話題をつっついても始まらないことで、人の噂も75日で、過去の人となるのだろうか。
繰り返すが、筆者には、結局、辞任したのは、何が根本的な原因・理由だったのか、良く分らないのである。
○ 次の都知事選
次の都知事を選ぶ選挙は、7/14告示、7/31投票ということで、参院選に引き続いて、慌ただしい日程が待っている。
次の都知事の候補者選びが取り沙汰されているが、都知事の要件としては、どの様な人物が望ましいのだろうか。 昨日のニュースで、“次の都知事候補としては、政治資金疑惑の心配が無い、政治家の経歴が無い人が良い”、 と、或る与党幹部が述べたという報道があったが、何と言う事だろうか、と唖然とした! 今の政治家は、あまねく、疑惑だらけであることを認めている訳だ。
7月30日予定の、恒例の隅田川花火大会だが、当日、雨天の場合は、通常は、翌日へ順延されるのだが、今年は、投票日と重なる事から、順延は無いと言う。万が一、30日が雨天になれば、舛添さんの所為で、2016年の花火は見られなかった! と言われるのだろうか。