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つれづれの記

日々の生活での印象

初めての入院ーT字帯と寝巻と

2010年12月23日 22時31分17秒 | 日記
2010年12月23日(木)  初めての入院―T字帯と寝巻と


 長年の前立腺肥大症の治療のため入院し、10日間程の病院生活の後、先日、無事、退院することができた。 これまでの人生で、入院するのは初めてだし、手術を受けるのも初めての経験である。 この経験の一部を、できれば、記事にしたいと思っているが、今回は、入院時の身の回り品に関する、一寸した話題を取り上げた。

 病院は、完全看護が基本だが、自分で用意すべき身の回り品の中に、T字帯と、寝巻があった。
 「T字帯」という言葉は知らなかったが、T字型の包帯という説明もあるが、要は、フンドシ(褌)の事である。 フンドシと言えば、日頃見かけるのは、相撲の世界位で(正しくは、廻しーまわし)、昨今は、日常生活では、殆ど使われず、これまで、自分で使った経験は無い。
 家内の案内で、近くの薬局へ行ったら、薬局方のコーナーに、T字帯がちゃんと置いてあり、3個、手に入れた。入院後、手術に先立って、早速、T字帯を付けたのだが、不思議な感覚を味わった。 持ち上げて折り返した時に、左右二つに分かれた先端を、紐に巻き付けると、外れにくいようになっている。 
 手術後は、安静のため、24時間、チンチンの先から、膀胱までバイプを通して、ビニル袋の中に排尿を行ったため、通常のパンツでは具合が悪い。T字帯だと、体の前面で紐をほどくだけで、急所が直ぐ出せるので、処置する場合などに、都合がよいのだ。 このような排尿の措置は、安静を保つ必要性から、他の手術でも、その直後や、出産の時などでも、行われるようだ。
 かくして、手術4日後になって、患部と体調が安定してきたので、自由を奪われていた排尿管が外されたのだが、これまでの間、T字帯のお世話になった。
広げたT字帯

 自分が小さかった頃は、大人が褌を使うのは当たり前で、夏の日の夕方の縁先などで、親父が、フンドシ一つで、うちわ片手に、涼んでいた姿などが目に浮かぶ。 民総出で、地域の湧水井戸の掃除をする時には、大人たちは、ねじり鉢巻きにフンドシ姿で、作業をした。股間から、ちらちらと、一物が見え隠れするのを、ドキドキしながら、盗み見したものである。
 又、大分前のことだが、仕事で、スイスのジュネーブに出張した時の思い出がある。国際機関の事務局職員として、長年、ジュネーブに住んで、活躍している知人の自宅に、ある夜、仲間で招待され、談笑させてもらった。 話に興が乗ってきた頃、現地育ちの知人の娘さん(大学生位)が、どの位日本の事を知っているか、テストさせてもらう、ことになり、自分が、質問する役になった。 “フンドシって分る?” と聞いたら、彼女は小さな声で、“知ってます”との答え。 彼女のお父上も、多分フンドシは使っておられないだろうに、である。 驚くとともに、安心した次第。 ジュネーブ育ちのこのお嬢さんだが、日本人としても大丈夫だ、と、妙な太鼓判を押させてもらった、ことである。

 病院で、普段に着る衣装としては、紐をほどけば、前開きになるものが重要で、「寝巻」(ねまき)が好都合である。パジャマだと、ズボン式のために両足を通さねばならず、問題がある。この寝巻、通常の浴衣と違い、ガーゼの裏が付いているものだ。 手に入りそうな店を少し探したが、結局、近隣の、和装物を扱う呉服店で、あっさり見つかった。洋風の、バスローブの様なものでもいいようだ。 
 寝巻

 更に、この寝巻の下に着る下着としては、上半身は、普通のシャツでいいのだが、下半身については、通常なら、ズボン下や、ステテコになるのだが、病院では、T字帯と同様、体の前面が簡単に開閉できるもの、でなければならない。
 この条件を満たすものとして、第一番に、「腰巻」が思い当ったのだが、家人には持ち合わせが無い(最近は、和装でも、腰巻は使わない)。 結局、横長の、薄い「膝かけ」を、腰に巻きつけることとした。 巻いた膝かけが、ずり落ちず、長さを調節できるようにするため、縁に沿ってマジックテープを、表裏に縫い付け、インスタント腰巻が出来あがった。
 インスタント腰巻

 このインスタント腰巻を、寝巻の内側に付けると、病室から出て廊下を歩く時などに、下半身が暖かく、又、ベッドの上でテーブルに向って食事をする時も、足元や腰回りがスースーしないなど、大変、重宝した。

 T字帯といい、寝巻といい、腰巻といい、すっかり忘れ去られていた、日本の衣文化ではあるが、医療分野では、これらを使う合理性があり、結構、役立っていることを、再発見した次第である。






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生き延びたクニマス

2010年12月22日 22時10分43秒 | 日記
2010年12月22日(水) 生き延びたクニマス



 病院に入院中の先週の14日、富士五湖の一つ西湖で、絶滅したとして、環境省のレッドリストに登録されていた、「クニマス」が確認された、との、嬉しいニュースが流れた。
 退院後、ネットが使えるようになったので、少し、調べてみた。このクニマス、終戦前の、1940年ごろに、絶滅したとされただけに、70年振りの、生存確認である。京都大学の中坊教授のグループが、科学的に確認したようだが、その裏には、東京海洋大の、魚の絵の得意な先生、「さかなクン」のお手柄もあったようだ。 
 レッドリストに登録されている、国内の絶滅種には、何種かあるが、その中には、中国からの移入で、復活が試みられている、周知の「トキ」なども含まれている。
西湖のクニマス(asahi.comより)

 この魚、秋田県の田沢湖のみに生息していた、固有種である。 以前は、食用とされ、漁業の対象にもなっていた、高級魚だったという。田沢湖から水を放流し発電するため、それを補うため、玉川の水を田沢湖に入れる導水工事を行った結果、この川の水が、強酸性だった(玉川毒水)ため、クニマスが死滅してしまったようだ。 軍国主義の盛んな時代、環境問題など、全く顧みられなかった、時代背景であった、といえよう。
 絶滅する5年ほど前、人口孵化調査のために、クニマスの受精卵を、全国、数か所の湖などに放流したようで、其の中の一つ、西湖に放たれたクニマスが、親から子へと、延々と命を繋ぎ、現在まで生き延びてきた、ということだ。これまで、アルコール標本しかなかったクニマス、どっこい、生きていたとは、なんとも、感動的である。

 これまで、西湖では、それらしき魚は、時折、釣れることがあり、クロマスなどとよばれ、ヒメマスの変種くらいに思われていたようだ。 西湖の漁協では、早速、禁漁区を設定する等、クニマス保護の対応策を決めたようだ。 現在の釣りビジネスの邪魔になりかねない、ニュースでもあるのだが、ここは、関係者が知恵を絞り、環境保護と、漁業や観光資源との両立を、実現して欲しいところだ。
 西湖の環境が、如何に素晴らしいか、クニマスが、最高の生き証人なのである。

 一方の田沢湖側はと言うと、これまで、懸賞金付きで、クニマスを探したこともあっただけに、大変な喜びようだが、湖水の酸性度は高く、早期の里帰りは、困難なようだ。
 田沢湖に纏わる伝説も伝えられている固有種の、恒久的な復活に向けて、西湖と連携した、着実な取り組みを期待しよう。
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漢字の世界 その4 柊の花

2010年12月20日 17時10分05秒 | 日記
2010年12月20日(月) 漢字の世界 その4 柊の花



○長年の持病の治療入院のため、暫く、ブログ日記を休みましたが、本日、無事、退院出来ましたので、 再開です。 入院中の体験談については、 改めて触れることにしますが、 本記事は、少し前に、ほぼ出来ていたものを、入院中の“つれづれ”に、纏めたものです。

○11月の末頃、近隣での、スポーツ研修会に参加した帰路、知人の自宅で、柊(ヒイラギ)の花が咲いている、というので、立ち寄らせてもらった。柊と言えば、濃緑色の厚手の固い葉で、鋭い刺があるイメージだ。 クリスマス飾りの定番で、鮮赤色のポインセチアとのコントラストが素晴らしい。 知人宅の門の脇に植えてある柊は、珍しく淡緑色の斑入りで、小さな白い花が、沢山付いていて、夜陰の中から、仄かな香りが漂ってくる。 これまで、柊は、花が咲くとは知らず、花を見るのも、香りを嗅ぐのも、初めてである。
 夜の柊の花
 改めて、手許の樹木図鑑で調べてみると、柊は、モクセイ科に属している。この仲間には、キンモクセイや、ギンモクセイなど、名だたる、香りの木が多い。知人宅の柊は、ギンモクセイの変種のようで、道理で、いい香りがする訳だ。知人は、家からハサミを持ってきて、2枝ほど切り取ってくれたので、お土産に貰ってきた。暫く香りを楽しんだ後、外は寒いので、室内で、土に挿してみるつもりである。

○木偏に冬の、柊は、音はシュウ、訓はひいらぎ、である。字は、知っていたのだが、今回、正に、晩秋に花をつける、季節に相応しい漢字名と分った。
 いつもの悪い癖で、然らば、木偏に、春、夏、秋は、どうなっているだろう、という興味が湧いてきた。早速、調べてみて、悪戦苦闘する、こととなった。
 木偏に春は、椿、訓はつばきで、ツバキのことであり、字の通り、早春を代表する、花木である。日本のツバキは、中国では、山茶と書くようで、少し、違っているようだ。音は、チンで、椿事(チンジ)などの言葉もある。
 木偏に夏は、榎、音はカ、ケで、訓は えのきで、エノキのことである。 日本では、公園などで見慣れた木であり、榎本、榎木等の姓も多い。 夏との関連はどこからきたのだろうか。日本のエノキのことは、中国では、朴樹といい、中国での榎は、少し違う木のようだ。

 木偏に秋は、楸で、漢和辞典では、音はシュウ、訓はひさぎ、とあり、碁盤の材料になる、などとある。そして、国語辞典の、広辞苑で、ひさぎ、と引いたら、楸と、載っていて、そこには、この字は、きささげ や、あかめがしわ の事、と言う説もある、と記してある。
 WORDで、ひさぎ を変換しても、該当する漢字は出てこないが、パソコンのIMEパッドで、漸く、活字は見つかった。でも、樹木図鑑など、色々調べても、ひさぎに該当するものが見当たらず、どんな植物か、はっきりしない。
 その後、最近、入院中に、たまたま読んだ本(「季寄せ―草木花 冬」 朝日新聞社)の付録として載っていた、北村四朗氏の小文「植物語源考―植物の漢名」の中に、楸という漢字は、トウキササゲのことである、との記述を見つけた。どうやら、楸という漢字名は、樹木図鑑にも載っている、ササゲに似た長い実がなる、中国原産の、キササゲのようである。
 そして、またまた、このシリーズ本の「秋」の編・監集者名が、俳人の加藤楸邨(しゅうそん)氏と、楸という字を使っておられるのには、不思議な因縁を感じた。

 以上、木偏については、不完全ながらも、椿、榎、楸、柊と、一通り、春夏秋冬が揃ったこととなる。
 北村氏の上記の小文によれば、日本の植物名の漢字表記と、その漢字が意味する中国での植物名との、異同を明らかにする作業を、「同定」と言うようだが、日中間では、色々な食い違いも多いようだ。これについては、改めて触れることとしたい。

○ここで悪乗りして、他の偏の、春夏秋冬についても、調べてみた。 最も可能性が高いと思われた、魚偏については、以下である。
 魚偏に春は、鰆、訓さわらで、比較的身近で、春の食卓などによく上る。
 魚偏に夏は、該当する字は見当たらない。飛魚等が相応しいのかな?
 魚偏に秋は、鰍、訓かじか である。昔、近くの川などでよく見かけた小魚である。秋の魚と言えば、サンマが定番だが、秋刀魚という、季節感があり姿形に相応しい、素晴らしい名前を貰っている。
 カジカは、鳴き声を出すことから、河鹿とも書かれるが、厳密には、これは、カジカガエル、の事で、魚ではなく、蛙の仲間のようだ。
 魚偏に冬は、鮗、訓このしろ である。国字のようだが、それにしては、余り聞いたことが無い魚である。 又、冬の魚と言えば、タラだが、此方は、魚偏に雪、鱈と、本格的な冬の名前になっている。これは、冬の季節が筍というだけでなく、雪に似た身の白さが、字の旁に、関係しているだろうか。

 魚偏の漢字といえば、寿司屋のあがり用の湯呑み が思い出される。茶碗の周りに、寿司のネタになる、魚偏の魚の漢字がびっしり並んでいる。 この中で、読めて意味が分る漢字は限られているのだが、ひと頃、この漢字の、検定試験があって、それに挑戦する、TV番組があった。
 寿司湯呑み

○その他、鳥偏、犭偏、などについても、春夏秋冬との組み合わせを調べたが、該当するものが見当たらなかった。
 唯一、艹冠で、秋と組み合わせた、萩、はぎ、が見つかっただけである。萩は、秋の七草にも揚げられている、季節を代表する花木の一つ、であろう。上述の、「季寄せ―草木花 秋 上」の、萩の項には、日本のハギは、中国でいう萩とは別である、という記述があった。

 動物に比して、植物の方が、場所を選べないだけに、季節の変化に対して、センシティブと思われるが、春夏秋冬と組み合わさった植物の漢字としては、既述のように、木偏で一通りあるだけで、艹冠では、萩以外には、該当するものが見当たらない、というのは、少し不思議な気もする。


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山形の味覚ーおみ漬け

2010年12月06日 23時30分21秒 | 日記
2010年12月6日(月) 山形の味覚―おみ漬け


○人それぞれ、生まれ育った土地には、懐かしく忘れられない、幾つかの味があるものだ。山形生まれの自分にとって、其の味の一つが、おみ漬け、である。山形青菜(せいさい)という菜で作った、浅漬けの一種であるが、独特の香りと、辛味のある味わいは、捨て難い。
 通称、芥子菜(からしな)と呼ばれる、山形青菜を、軽く天日に干した後、細かく刻む。中に含まれる辛味成分が強いので、刻んでいると、目がチカチカし、涙が出てくる。刻んだ物を、塩と一緒に良く揉み、漬けもの用樽に入れて、重しをする。やがて水分が出てくるので、水気を切って、いよいよ、本漬けにする。
 この時、干した大根を角切りにしたものや、紫蘇の実などを入れ、塩、砂糖、みりん、酒、醤油等で味付けをする。昆布や、昆布の粉末を入れると、味が良くなり、更に、柿の皮等を入れてもよい。ザ―サイに似た、唐芋(からいも)という芋を、入れることもある。
 重し石を載せて、屋外の寒い所に置いて、暫くすると、おみ漬けの、出来あがりである。食べ頃は、精々、1か月程度であろうか。
 出来あがり  
 小さいビニール袋に小分けして、冷蔵庫に保存してもよい。更に、冷凍にすれば、かなりの長期間、食べられるが、作り立ての時の風味は、あら方、無くなってしまう。物産店などでは、真空パック入りの、おみ漬けの土産品もあるのだが、やはり、辛味や風味は、いまいち である。

○田舎では、どの家でも、おらえ(我が家)の、おみ漬けがあり、半ば、自慢しあっていたものだ。 おみ漬け、というネーミングの由来には、諸説がある。昔、近江(おうみ)商人が伝えたことから、おうみづけ→おみづけ、になったと言う説や、手で揉む、ことから、もみづけ、が変化して名づけられた、という説等が、有力である。
 以前、田舎の母が元気な頃は、晩秋、屋敷裏の畑で採れた青菜を、洗って軽く日に当て、干し大根と一緒に、送って寄こしてくれた。それを刻んで、おみ漬けにする作業は、当初は自分がやったが、いつからともなく、技術移転が行われ、家内が、受け持つこととなった。
 母が、畑仕事が出来なくなってからは、地元の、知り合いの八百屋に頼んで材料を送って貰ったりしたが、ここ、10年位は、11月の半ば頃になると、山形市内のスーパーに頼んで、材料を送って貰っている。 
 今秋も同様にしたが、届いた青菜を水洗いし、干している様子が、以下の写真である。前述のように、切り刻むのは家人の仕事になっているが、自分は、3丁の包丁を、予め砥石で研ぐ作業で、参加している。
  

○山形青菜は、一本のまま、漬けるのが、本来の、青菜漬けである。こちらも、やはり、各家々での流儀があり、冬の炉端での、茶飲み話でのお茶受けとして、楽しまれた物だ。
 この青菜漬け、少し古くなると、アメ色に変わり、独特の風味となる。柔らかい葉の部分は、ご飯の上に載せて蒸かすと、いい香りの、菜っ葉飯になる。
 以前、山形の同郷出身の、千葉に住む知人が、山形青菜の種を地元から採り寄せ、自分の畑に蒔いて、作ってみたことがあり、その青菜を、当方にも送って貰った。本来のバリバリとした感触や辛味などが、やや少なく、おみ漬けを作ってみたところ、いつもの風味には、ならなかった。
 その時は、やはり、山形の風土と寒さが、素材を育ててくれるのかな、と感じた次第である。

○漬けものと言えば、似たようなものに、高菜漬けと、野沢菜漬けとがある。
高菜は、西日本でよく栽培されるようで、それが、山形に伝えられて、山形青菜になった、と言われている。高菜は、山形青菜よりやや小ぶりで、葉の茎のバリバリ感や、辛味は、山形青菜の方が強いようだ。
 野沢菜は、少し細めで、葉の茎が丸く、山形青菜とは、かなり形状は異なるのだが、漬けものとしては、歯触りや辛みもよく、人気の漬けものとしての条件を、備えていると言えよう。

○塩分の取り過ぎは、健康に良くないと、この所、本格的な漬けものは、敬遠され勝ちで、野菜も、軽く塩を振りかけて、サラダ風で食べたり、浅漬けなどが主流になりつつある。そんな流れの中、浅漬けのように手軽にでき、香りと辛味が命の、おみ漬けの楽しみは、季節感のある漬けものとして、いつまでも、残しておきたいと思う。
 毎年、出来あがると、友人・知人などに配って、食べて貰っているが、珍しい漬けものとして、心待ちにされていることもあり、程なく売り切れとなってしまうのは、嬉しいことである。

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消費者金融 その3

2010年12月05日 23時53分27秒 | 日記
2010年12月5日(日) 消費者金融 その3 



 少し前になるが、11月20日のNHK番組、追跡!AtoZで、「漂流する主婦~“借金難民”500万人の衝撃~」という、派手なタイトルで、改正貸金業法の施行後の、波紋について放映された。この6月18日から、改正貸金業法が、完全施行となった訳だが、その際に、当ブログでも、
  消費者金融 その1(2010/6/3)
  消費者金融 その2(2010/6/17)
として、身近な立場から、私見を述べてきたところである。

 今回の放送は、完全施行から、約5カ月経過した時点での、まさに、追跡番組である。多重債務問題の解決、という当初の狙いから見れば、大きな効果があったようである。上限金利を20%と低くしたことで、少し借りやすくはなるが、反面、総量規制枠として、融資額を収入の1/3以下に抑えることで、大幅に借りずらくなってしまうことから、表向きの正規の借り手は、かなり減ったと思われる。このことは、当然ながら、多重債務者が減ることにもなるのだ。

 先のブログ、消費者金融 その2 でも述べたが、結果的に、不法な裏金融(ヤミ金)に頼る人たちが、増えることとなったようだ。 特に、収入の無い専業主婦には、大きな問題になっているという。専業主婦にとっては、施行前には、大手の貸金業者は、一時的な生活資金などを、比較的自由に融資してくれたのが、施行後は、融資を行わなくなった、という。理由は、業者側としては、総量規制枠をクリアするためには、家族の同意書が必要で、貸付けの事務手続きが、面倒で、複雑になるため、と言う。それよりも、借り手側として、家族にオープンになることを、躊躇うことが、大きな理由でもあるようだ。
クレジット枠の現金化、等の、資金調達の新たな手法も、使い尽くしてしまった上では、主婦としては、ヤミ金融に頼ることとなる。

 番組では、数万円の借り入れをしたのが、金利を返すために、別のヤミ金から借り入れるなどしたため、短期間に、借金が数十万円に膨らんでしまった、主婦の話などが紹介された。
大半の主婦達は、特に贅沢をしている訳ではなく、親元の面倒をみる費用や、子供の教育費、家族の病気の費用など、やむを得ない費用という。夫の収入が減っているご時世だけに、夫には相談しにくいようだ。

 ヤミ金業者を弁護する積りはないが、或る意味、人助けである。悪質なケースもあるようだが、誰にも知られずに、簡単に金が借りられる、というのが何と言っても魅力なのである。 借金するとなると、親しい友人や知人程、なかなか相談はしにくいものだ。プライドもあるし、友人関係が壊れてしまうのでは、と言う不安もある。世上、真逆の友が真の友、などとは言うが、これはある意味、真実ではなく、お互いに好調な時だけ、交友関係は維持できる、と言うのが、人生の真実のように思える。でも、パートナーである、最も身近な夫にも相談せずに(できずに)、深みに嵌っていく、と言うのは、どうであろうか。

 ルールを変えると、いい面だけでなく、反作用的な側面は、必ず出るものだが、今回の改正でも、このような事態は、十分に予想できたことであろう。
 今回の報道を見て、連想されるのは、待機児童のニュースである。 託児所や幼稚園の、開設条件や、受け入れ条件を厳しくすることで、受け入れて貰った児童にとっては、事業のサービスレベルや安全性は保障される。だが、反面、サービスを受けられない、待機児童が増える事態になってしまう、こととなる。 待機児童が増える理由は、働きたい女性が増えたため、希望する児童が増えた、など、他の要因も、勿論、ある。
 多少、サービスのレベルは下がっても、安全性に、多少の不安はあっても、待機児童を減らす、出来ればゼロにすることが、社会や行政上の、本来の目標であるべきなのだ。
 云ってみれば、消費者金融での専業主婦は、この待機児童に似ているかもしれない。

 報道によれば、現在でも、社会福祉協議会や、自治体の窓口などに相談すれば、専業主婦でも、融資を受けられる道は、あるようだが、余り知られていないし、審査や手続きが、どのようになるかも、良く見えていない。
 多面的で、きめ細かで、血の通った、セーフティネットの整備の問題のように思われる。
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