つれづれの記

日々の生活での印象

くさやー1  臭い珍味

2013年11月30日 16時00分31秒 | 日記

2013年11月30日(土)  くさやー1 臭い珍味

 

 

○ 先日、知人が、伊豆七島の一つ新島の名物である「くさや」を、クール宅配便で届けて呉れた。 アオムロアジの一夜干しで、何と、7枚も入っているではないか! 最近は、御目にかかったことは無く、久しぶりのご馳走である。

 包みを開くと、かなり強い臭いだが、何はともあれ、早速、1枚を、台所のグリルで焼いてみた。部屋の中に臭いが立ち込めたが、夫婦とも好きな口なので、殆ど気にならない。

筆者にとっては、懐かしいにおいで、食べて見ると柔らかく、コクがあり奥行きるのある旨味である。  

       

                 一夜干しの くさや                         焼いたところ 

 今後の保存も考慮し、物は試しと、2枚は、更に天日で干して見る事とした。ハエ除けに、ネットを被せてルーフバルコニーの棚からぶら下げたが、2日間も干したら、すっかり乾燥し、普通の硬さになった。

      更に外で干す 

 そして、残った4枚は、臭いが他に移らないようアルミホイルで包む等して、冷蔵庫で冷凍にした。その中から、酒好きの知人に一部、お裾分けしている。

 

 以前、文京区に住んでいた頃は、近くにある乾物屋で、時たま、くさやを買ったが、品物は、よく乾燥したものだった。  

 足立区の現居に、数人の来客があった時、ルーフバルコニーに、七輪を持ち出して、周囲を気にしながら、くさやを焼き、酒の肴で頂いたこともある。残しておくのは厄介なので、全部焼いて仕舞い、ほぐして軽く酒に浸し、瓶に入れて、後で、じっくり味わった。

 

 

○ くさやについて、改めて、ネット等で調べてみた。

 くさやの材料となる魚は、アオシマアジ、シマアジ、トビウオなどだ。このアジは、通常よりもやや大型で、シマアジは脂がのっており、それに比べて、アオシマアジは脂分が少ないようで、トビウオは更にあっさりしているという。

 「くさや」の語源については、“くさい”から来ていると言うのが、常識的な説だが、呼称の語尾が、××や となっているのが面白い。

 

 魚の体液や内臓やうろこ等が発酵した液体(浸け汁、くさや液 通称「くさや汁」)に、原料の魚を浸ける。

くさや汁には、数日間ほど浸けると思ったのだが、長くて一昼夜ほど馴染ませて取り出し、水洗いしてから干すと言う。

  くさや汁に漬ける(ネット画像より)

 昔、島では、塩水に浸して干物を作る時、幕府に献上する貴重品だった塩を、出来るだけ節約するため、同じ塩水を繰り返し使ったようだ。このことから、いつの間にか くさや汁が出来ていて、くさやの旨みに気付いた、と言われる。

くさや汁には、200年~300年も前から伝わるものもあり、それぞれの家伝の秘宝と言えるようだ。 

 

 汁から上げて天日で乾燥する場合、元々は、上干し(4~5日)ものが多かったようだ。が、最近は、より柔らかい、中干し(2~3日)ものに人気があるようだ。

そして、今回の、文字通りの一夜干しは、食べ付けてしまうと、それ以上に美味しいものはない、と嵌ってしまう、という触れ込みである。( 三井グラフ バックナンバー|三井広報委員会 ) 

 

 

○ くさやは、アジの干物の保存食だが、通常の干物とは異なる発酵食品であることから、独特の風味(臭いにおい 臭味)があり、このことが、好悪が分れる分岐点でもある。 

 世界中で臭いと言われる発酵食品を、臭い順に並べると以下のようになると言う。臭みの度合いを表す、アラバスター単位(Au:Alabaster unit)という尺度があるようだ。(くさや - Wikipedia より)

 

  順位 食品名         国            材料等        Au

  1  シュールストレミング スエーデン       ニシン塩漬缶詰  8070

  2  ホンオフェ        韓国           エイ         6230

  3  エピキュアーチーズ  ニュージーランド 缶詰チーズ      1870

  4  キビヤック        北極圏         海鳥          1370

  5  くさや(焼きたて)    日本(伊豆七島)  ムロアジ      1267 

 

  6  鮒寿司         日本(福井)      鮒・米        486

  7  納豆            日本(東日本)    大豆         452

  8  くさや(焼く前)     日本(伊豆七島)   ムロアジ      447 

  9  沢庵(古漬け)     日本           大根        430

  10 臭豆腐         中国           豆腐        420

 

  上記の、No.1~No.4迄は、聞くのも初めてで、食べた経験も無い。特に、No.1、No.2は別格で、日本代表としてベスト5に入っている、焼いたくさやの、数倍も臭いと言うのはどんなだろうか、想像を超えている。この辺迄が、珍味と言えるだろうか。

      世界一臭い珍味 シュールストレミング(ネット画像より) 

  No.6以降は、日本では、結構馴染がある食品で、どれも、自分で食べた経験があり、身近なものだ。臭い食品の例として、納豆が挙げられているのは、納豆ファンを自任する自分としては、やや心外だが、反面、嬉しいような気分もある。 

 

  余談だが、上記の韓国のホンオフェに類似した、アンモニア臭が強い発酵食品として、アイスランドで作られる、ハウカットルと言うのがあるようだ。 ニシオンデンザメ等の肉を、常温で数カ月、熟成させたものとある。 これの臭さは、上述のAuでは、どの位になるのだろうか。(アイスランド発!猛臭シャーク伝説!

   ハウカットル熟成中 

 

 先日、当ブログの下記記事で、広島県北の山間部で、アンモニア臭のするサメ肉が食べられている話題に触れたところだ。

       気仙沼あれこれ  その2 (2013/11/20)

  アイスランドでは、アンモニアを出すサメ肉を、更に積極的に生かした、猛臭の保存食にしていたようで、嬉しくなる。アンモニアの臭いは、臭いものの代表の一つと言う事であろう。

 

 

 次稿では、人間の五感全般と、その中の嗅覚に関し、心地良いにおいと、嫌なにおい等について触れる予定である。

 

 

 

 

 

 

 

 

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地球の未来とCOP19

2013年11月26日 13時47分47秒 | 日記

2013年11月26日(火)  地球の未来とCOP19 

 

 

  国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)(地球温暖化防止条約等 とも)に関する、今年の締約国会議(COP19)が、この11月、ポーランドのワルシャワで開催され、今回も極めて難航したが、22日の終了予定が1日延長されて、幸いにも、なんとか合意に漕ぎ着けられたようだ。

  会議風景(ネット画像)

   地球上では、温室効果化ガス(CO2、メタン等)が原因と言われる、極地等の温暖化傾向や、台風・竜巻等の異常発生や、島嶼での海面上昇等の、例年にない気候変動現象が続き、被害も多発していて、待ったなしの状況だろう。

でも、これらの現象の科学的な因果関係が明確でなく、経済成長も必要とあって、人間社会は、相変わらず、目先の利害に終始し、対策が進んでいない状況だろうか。

 

 

 1993年に京都で開催されたCOP3で採択された京都議定書は、温室効果ガスの排出を規制する拘束力をもつ唯一の国際的取り決め(広義の条約)だが、

     ・先進国にしか削減義務が課せられていない

     ・アメリカ、中国という2大排出国が参加していない

     ・2005年から始まって2012年で期限が切れる

と言った、基本的な問題を内包している。

 

 この事から、2012年の期限が切れる前に、参加国の不平等の問題を解決しながら、次の目標を設定し、新たな議定書を採択する努力がなされて来たのだが、結局、実を結んでいない。

 苦肉の策として、京都議定書の期限を、2013~2019を第2約束期間として、2020年直前までに延長したのだが、参加国、内容とも、バラバラの状況で、現在は、殆ど有名無実と言ってもいい状況だろう。

 

 2010年以降の最近のCOP会議は、以下のように、京都議定書を延長して形だけは保ち時間を稼ぎながら、何とか、次の新たな枠組みでスタートすべく、努力がなされてきている訳だ。(次図は COP19「枠組み」駆け引き : 特集 : 環境 : YOMIURIONLINE)) 

    

 

 此処までの全体の状況については、以前、毎日新聞系のサイトで見つけたもので、1昨年のダーバン会議後に作られた下図が、分りやすく整理されていて、現在も基本的には変わっていないので引用したい。

    

 

 そして、今回のCOP19では、今後のロードマップは纏まらないのでは、と懸念されたのだが、ギリギリで、なんとか合意されたようだ。 

それによれば、

   ・米、中を含む全ての加盟国が参加して(下図:データ集[1] (世界のCO2排出量) - JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

 

   ・2020年から新たな枠組みでスタートする

ために

   ・2015年3月迄に、各国が削減目標(自主目標)を提出(自主目標の評価法は?)

   ・2015年のCOP21で新たな枠組みを合意

 

などを含む、以下の様なスケジュールが固まったようだ。(下図:COP19:合意 自主目標を15年3月末までに提出- 毎日jp(毎日新聞) )     

     

 やや大げさに言えば、今回の合意には、“地球の未来が懸かっている”、と言えるだろう。形の上では立派な合意ができたので、この通りに実行していくことが極めて重要なのだが、国によっては、提出された目標値が甘く、評価に耐えられない等、この行動計画が、絵に画いた餅にならないと言う保証はない。 

又、今後の状況如何では、米国や中国等の姿勢が変わる可能性もあろう。 アメリカには、途中で京都議定書から離脱した前科もある。 

一方、世界の排出量ワーストワンの中国だが、国内の深刻な大気汚染の現状から、この国の政府が、本気で、環境保護に取り組むことになるだろうか。

今後、先進国と途上国間の、利害が大きく衝突する可能性もあろう。

 

 

 此処で、日本のポジションを見てみよう。日本は、以前は、極めて熱心に取り組んで来たのだが、2011年の東日本大震災による、原発の全面停止と、火力依存の増大という事態に遭遇し、極めて厳しい状況になった。 このことから、当初の目標達成は不可能となり、残念ながら、議定書からの離脱を表明し、自主規制に切り替えている。

その後、国内の論議で、新たな削減目標を固め、今回の会議で、以下のように、正式に、方針転換を表明している。

     90年比  △25%   2009年の国連気候変動サミットで表明(鳩山総理)              

              ↓        

     05年比   △3.8%  今回2013年のCOP19で表明(石原環境相)

           (90年比 だと、+約3%と大きく後退) 

 

 今回の数値は、京都議定書の第2約束期間である、2020年までに達成する自主目標になるが、原発の稼働はゼロとしているようだ。

2020年からスタートする新たな自主目標については、今後の原発の方向も見据えながら、来年の国連気候変動サミットの動き等も踏まえて、2015年3月に提出する迄に、見直す事となるだろう。              

 日本の目標が後退した事に対し、国際的な批判も強いようだが、これを緩和するため、3年間で、資金面で1.6兆円の途上国支援を行う事を、今回、表明している。

 

 先進的な省エネ技術・温室効果ガス削減技術などを持つ日本としては、苦しい中でも、リーダーシップを発揮しながら、地球環境の維持・改善に貢献する道を探ることになるだろう。

 2020年、東京オリンピックの開催と、地球環境保護活動の新たなスタートとが、奇しくも、同じ年になる訳で、どちらも、希望の中で迎えられることを祈りたい。

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越後の笹だんご

2013年11月23日 23時36分54秒 | 日記

2013年11月23日(土)  越後の笹だんご  

 

 

  先日、ワイフKが、友人達と新潟県の湯沢温泉に旅行し、土産に、名物の「笹だんご」を買って来てくれた。以前と殆ど変らない、懐かし味わいである。

すげの紐で結んだ形状からは、子供の頃に、5月節句に食べた自家製の笹巻き(ちまき 粽)が思い出される。  

     

 入れてある袋をよく見たら、表に、“生笹使用”とあり、どう言う事だろうかと、少し、ネットで調べてみた。 ネット情報では、笹だんごは、まず、米粉(上新粉、もち粉)に、もち草を入れて練り、これで餡(あん)を包んで団子にするが、その後の製造工程に、最近は、以下の3通りがあるという。(越後名物笹だんごの田中屋本店◆新潟土産笹団子の店

   1:笹で包んで笹ごと蒸す 

     団子を、笹で包んで蒸すもので、古来の伝統的な製法と言う。

   2:蒸すのでなく煮る

    1で、蒸すのではなく、煮る製法もあるようだ。

   3:蒸した後に、生笹で包む

    これは、最近多くなった製法の様で、まず団子を蒸し、その後、それを、生の笹の葉で包む。生の葉なので、緑の色合いが良いようだ。

 

 笹の葉には、殺菌効果があると言われ、笹だんごは、この笹の葉で包んである訳だ。刺し身などの盛り付けでよく見かける笹風の飾りも、同様の趣旨だが、今は、本物の笹ではないがーー。

 笹だんごには、一般的には、保存料等は使われていないようだが、団子が硬くならなくしたり、笹から離れやすくするための添加物が使われることもあるという。

 それぞれの製法には、一長一短があり、伝統的な製法を踏まえながらも、どのように工夫するかの、競い合いにも見えるが、ここでは、これ以上の詮索は止めにしたい。

 

 

 笹だんごで連想するのが、夏目漱石の小説「坊っちゃん」である。

高校時代に読んだこの名作だが、女中の「おきよ」が、越後の「笹飴」が食べたいと言うくだりがあり、自分は、かなり長い間、これは「笹だんご」だと記憶していたものだ。ネットを見たら、筆者と同じように勘違いしているご仁も、いるようだがーー。

 笹だんごは、社会人になって以降、出張帰りの土産に買ってきたり、知人から貰ったりして、何度も食べた事があるが、ある時期までは、これが坊っちゃんの、おきよが好きだったものか、と思ったものだ。

 一方、笹飴は、残念ながら、舐めたことはないが、現在も、越後の名物の一つになっているようだ。(下図:くさのやの笹飴。夏目漱石の「坊ちゃん」で有名な越後新潟の素朴な銘菓 より)

   

       笹飴 包み                   笹飴 中身   

 小説坊っちゃんには、道後温泉の入り口に、作者の漱石もよく食べに行ったという、団子屋がでてくるようだ。 この話と、越後の笹だんごとが、混線したのかもしれない。

この団子、どのようなものだったかは明確ではないが、現在、道後温泉では、「坊っちゃん団子」と称して、彩りが楽しい団子が売られているという。

    坊っちゃん団子(ネット画像より) 

 越後の笹だんご・笹飴と、道後温泉の坊っちゃんだんごと、それぞれに、伝統も生かされているようで嬉しくなる。

 

 

 笹だんごは、往時の上杉謙信率いる越後の武士たちが、出陣時に、非常食として携帯したものが始まりと言う説もあるようだ。その当時は、米は大変貴重だったので、くず米等も活用しながら、団子を作ったようだ。現在のような餡は、入っていなかったと思われる。

 

 笹だんごは、往時から戦後に至るまで、蒸して団子に作った後は、笹の殺菌効果だけで品質を保たせた訳だが、その後、技術革新が進み、現在は、製造後直ぐに冷凍保存するようだ。冷凍状態だと、かなりの期間、風味は余り変わらず、配送も冷凍状態のまま行い、それを解凍して売り出されているようだ。消費期限の表示は、発売日を入れて4日~5日以内とある。

この笹だんごを、自家用の非常食、防災用食品として、1年もの間、冷凍保存している、心掛けのいい人もいるようで、やや驚きだが、感心させられる話である。

 

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気仙沼あれこれ   その2

2013年11月20日 15時23分10秒 | 日記

2013年11月20日(水)  気仙沼あれこれ  2 

 

 

 先日、当ブログに

     気仙沼あれこれ  1  (2013/11/15)

を載せ、宮城県県北にある気仙沼市の、大震災後の復興の様子や、土地の海産物である、ホヤ、サンマ、ホタテ等について触れたが、本稿はその続編である。

  

 気仙沼と言えばフカヒレ、と言われる程で、気仙沼はフカヒレの全国一の生産地であり、その原料であるサメの水揚げ量も、気仙沼港が全国一という。

 前稿で触れた、市のマスコットキャラクターである、ホヤぼーやの装束には、サメは出てこないが、ぼーやの好きな食べ物はフカヒレで、特技は、サメに乗ること、という。 

 今回は、フカヒレとサメの話題について取り上げてみた。

 

 

○サメとフカ

 フカヒレとは、フカという魚のヒレ(鰭)という意。 フカ(鱶)とは、通常のサメ(鮫)の大きなものを呼ぶようだ。

 筆者はこれまで、漠然とだが、サメよりも怖い、凶暴なフカと言う魚がいる、と思って来た位だ。が、今回集めた色々な情報から、フカという種の魚がいる訳ではなく、フカとサメは、同じ魚であることがはっきりした。魚の呼称としては、以下はサメとしたい。

 

 多くの種類があるサメの中で、フカヒレを作るのは、

   ・高級品  ジンベエザメ ウバザメ

   ・一般品  ヨシキリザメ(別名アオザメ)、ネズミザメ

等と言われる。(サメ - Wikipediaふかひれ - Wikipedia

 

 映画ジョーズに出て来た、人間を襲う怖いサメは、ホオジロザメという種のようだ。

 又、因幡の白兎神話で、兎が最後に皮を剥かれる“わに”は、サメのようで、その中のシュモクザメという説もあるようだ。(因幡の白兎 - Wikipedia

 余談になるが、大阪の天保山にある水族館「海遊館」の巨大な立体水槽で、かなり以前だが、主役の初代ジンベエザメを観たことがある。海にいる大きなクジラは哺乳動物なので、魚類では、ジンベエザメが最大だという。このサメ、大きな身体には似合わず、名前に似て(?)穏やかな性格で、食べるものは、プランクトンや小魚という。

 「海遊館」では、初代ジンベエザメは、数年前に死んでしまったが、その後は、後継のジンベエザメ君達が、展示されているようだ。

 

 

○フカヒレ

 サメの魚体には、下図の4種程のヒレがあり、これらから、フカヒレが作られるようだ。(図はフカヒレ物語より引用)      

        

 下図の、ずらりと並んだ尾ビレの天日干しの光景は、壮観だ。 でも、後述するように、ヒレを取って残る大部分のサメの魚体は、一部は蒲鉾等の加工品にも使われるものの、大半は、廃棄されている、という。

この事を思うと、この写真をみて、自然や生き物の命に対して申し訳ないと感じるのは、筆者だけだろうか。(図はフカヒレ物語より) 

        切り取られた尾ビレの天日干し 

 ごく最近になって知った情報だが、フカヒレは、古来からの日本の食材で、中国へも輸出されたようだ。中華料理でのフカヒレ料理の起源に関し、中国の広東で、日本から輸入した食材から考案された、とあるが、信じられない話ではある。

 フカヒレは、現在は、世界的には、シンガポールやインドネシアなどで多く生産されているようだが、今も、日本から香港等に輸出されているという。(ふかひれ - Wikipedia、 フカヒレ物語) 

 

○フカヒレ料理

 フカヒレには、コラーゲンやコンドロイチンが凝縮されていて、健康的にも良い食材と言われる。

 フカヒレ料理には、形のいい背ビレ・尾ビレを姿のまま(排翅)使った高価な姿煮と、その他のヒレ等を細かくほぐして(散翅)使った比較的安価なスープがある。 (下図は ふかひれ - Wikipediaより)   

         

 高級食材であるフカヒレを使った中華料理は、なかなか、庶民の口には入らないもの。 自分は、スープは何度も経験しているものの、姿煮を食べたのはほんの1~2回だろうか。 

  地下鉄千代田線の新お茶ノ水駅のエスカレータの壁面広告に、近くにある銀座アスターお茶の水賓館のメニューの写真が出ている。エスカレータの昇降時には、そこの写真にある美味しそうなフカヒレの姿煮が目に入ったものだ。 このお茶の水賓館で、実際のフカヒレの姿煮を食べられるのは、何時のことになるかな?

 同じお茶の水にある、山の上ホテルで、某社長に案内されて、フカヒレラーメンを御馳走になったことがある。姿煮が載ったラーメンで、中々の味だったと記憶している。 

 

○サメの魚体の行く方と食利用

 サメの魚体はかなり大きく、ヒレ類を切り取っても、大半は残るわけだが、これらは、その後、どうなるのだろうか。

 サメは、世界各地で行われている、マグロ延縄漁等の副産物として捕獲されるという。全国のサメ漁の70~80%(1.3万トン)もが気仙沼に水揚げされ、ヒレの部位だけが、フカヒレの製造に使われるが、魚体の大部分は残る。 そして、その一部は蒲鉾の、又一部は はんぺんの、原料として使われるようだ。(水産加工品のいろいろ勝川俊雄 公式サイト » ガーディアンが気仙沼のサメ漁業を非難している件について ) サメのはんぺんは、なぜか、最高級品と言う。

 でも、残る大半は、利用されずに廃棄されていて、酷い話だが、漁獲後、港に持ち帰らずに、海中投棄も行われている、という情報もある。

 

 魚肉としては、サメの肉は殆ど流通せず、魚屋でも滅多に見掛けることはない。

 サメの体内には、浸透圧調整用の尿素があると言われ、捕獲後暫くすると、この尿素から、アンモニアが発生して臭くなるようだ。この臭くなることが、食用として利用されずに敬遠される理由と言う。

 これまで何度か、サメ肉を食べた自分の経験では、薄桃色で、油っこさは無く、割とあっさりしていたような記憶だが、特段の風味はなく、美味しいとは余り感じなかった。 何処かに、ひりひり辛いような味覚もあっただろうか。

 

 資源の有効利用の観点から、廃棄するのはゆゆしき事態であるとして、サメの食品としての有効性が各方面で話題になる中で、宮城県産業技術総合センターでは、研究が重ねられており、このサメを宮城県の新名物にしよう!と意気込んでいるようだ。

これまで、ヒレと軟骨は有効に活用されているが、それ以外の肉と皮は全く使われていないため、センターには、「なんとかできないだろうか?」という技術相談が数多く寄せられているという。(知恵の輪ニッポン - シーズ・フラッシュ : サメ肉の加工方法とサメ皮のなめし方法

 又、東京都でも食利用の類似の研究が行なわれているようだ。(サメの食利用をめざして - 東京都島しょ農林水産総合センター) 

 これらの今後の研究に期待したいものである。

 

 

○食利用の前途に光?-ワニ料理

 一昨日18日の昼だが、NHKテレビを見ていたら、興味深い番組に出会った。 ひるブラ 「ワニを食べる山里の秋~広島県庄原市~」と言うものだ。(NHK 番組表 | ひるブラ「“ワニ”を食べる山里の秋~広島県庄原(しょうばら)市~」

ワニと言うのは、爬虫類のワニ(鰐)ではなく、この辺りの方言で、サメのことを、ワニと呼ぶようだ。

 驚いたことに、この地では、専ら敬遠されているサメの肉を、昔だけでなく、何と現在も、普段の生活で食べる一方、お祭りや御祝い事の御馳走としても食べている、と言うのだ。

サメ肉は、暫くするとアンモニアが出て、独特の臭みになるので、現在の庄原市では、冷蔵・冷凍輸送したり、臭いが気にならない、色々な調理法が工夫されているようで、刺し身でも美味しいという。ワニ料理は、この辺り備北地方の、名物郷土料理にもなっているという。

 一方番組では、時間がたったものを、そのまま刺し身で食べた年配者は、この臭みが、昔のワニの味だ、と懐かしそうであった。 

  

 庄原市は、海が遠い中国山地の山間にあるため、以前は、生の海の魚は殆ど手に入らず、生で食べられたのが、唯一、サメだったという。

サメは、前述のように、捕獲して暫くすると体内からアンモニアが発生するが、逆に、これの防腐効果が効を奏して、2週間もの間、常温でも保存でき、生で食べられたのだと言う。 通常の魚は、常温で保つのは、精々2~3日だろうか。(サメ - Wikipedia 他)

 往時、日本海側の石見国の大田の漁港と、山間の備後国の三次・庄原との間には、「ワニの道」があり、生のサメが運ばれたとか。(生活科学研究室 |広島県(庄原市) ワニ料理/発見!) 往時、この道の途中となった頓原の、現在の道の駅「頓原」にも、サメ料理があるようだ。(島根県: 体イキイキ 美味しい一品

        
                     ワニの刺身                            ワニのフライ 

 筆者が生まれ育った山形県内陸の村山地方は山に囲まれた盆地になっていて、太平洋からも、日本海からも遠く、小さい頃は、生の海の魚は滅多に見られなかったもので、海産物と言えば、塩振り・酢漬けにしたり、干物にしたものが殆どだったのだが、庄原市も似たような状況だったのだろう。

 この所の、冷蔵保存技術や、運搬配送技術、食品加工技術等の進展には目を見張るものがあり、勿論、庄原市も、現在はこれらの恩恵を受けている訳だが、この今も、郷土料理のワニ料理として、サメの食文化が根付いている地域がある、というのは、どこか嬉しいことである。

そう言えば、やはり海の無い山梨県の特産物が、煮あわび(鮑の煮貝)であった!

又、ネットに依れば、やはり海の無い栃木県内にも、サメを食べる習慣が残っている地域があるという。

 

 これらの地域と、気仙沼市や宮城県などが連携し合って、新たなサメの食文化や資源の有効活用法を生み出して欲しいものである。

今は、敬遠されて踏んだり蹴ったりの、可哀想なサメ君だが、浮かばれる日は来ると信じたい。

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指文字の文化   その2

2013年11月18日 11時48分42秒 | 日記

2013年11月18日(月)  指文字の文化  その2  

 

 市場の競りでの手やりや、日常生活で使われる指文字について、先日、当ブログに 

     指文字の文化  その1 (2013/11/14) 

を投稿したところだが、本稿はその続編である。 

 今回は、前稿にあった「袋競り」での袋内部の手の形等について述べている。

  

○ 袋競りの袋の内部では?

 前稿で触れた、下関南風泊(はえどまり)市場で行われているフグの袋競りだが、ネットで色々探した結果、袋の中での数字の表し方・伝え方などの具体的な方法が、漸く見つかった。下図のようである。(袋の中を覗いてみよう! から引用) 

   

  図のように、右側の競り人の手を、左側の買い手が握って金額の数字を伝える。数字としては、1~5までが示されている。

上図にあるように、競り人の右手の指を、買い手が、小田原型の手やりと同じに、順次、1、2、3、4、5本の指を、纏めて握るようになっている。 

 袋競りは、視覚を使わず、触覚だけの世界なので、曖昧さをなくした、単純明快な方法でなければならないだろうから、3の時は、築地型の指文字は使わないようだ。

競り人、買い手の双方とも、右手表示になっているが、左手の場合もあるかは不明。

   

 上図には、6以降は示されておらず、他にも見つからなかったので、筆者が、勝手に作ってみたのが以下である。

下図では、図には出ていない左側になる買い手が、競り人の右手の白く○印を付けた指を、右手で押さえるパターンを示したものだ。(ネット画像にある、手の写真を加工)

 1~5迄は、上述の図と同じ形である。 

        1              2               3               4               5  

 以下の6~10の形は、手やりからや類推したもので、親指で5を表し、以降、握る指を順次増やしていくものだ。9も、その延長として、手やりよりも単純化してある。 

 

        6               7               8              9              10

 

○ 秘密裏に行う袋競りの理由は?

 市場などで、一般的に行われている競り(競売、オークション)は、公開が基本である。秘密形式で行われる「袋競り」は、他には例がなく、極めて特異な慣習と言えるようだが、何故こうなったのだろうか。理由は明確ではないようだが、

    ・寒い冬場で手が冷たいので着衣の袖口に手を入れてやった、

    ・フグは高価なため公開したら大喧嘩になったので秘密にした、

といった説があるようだ。

 非公開となると、当然のことながら、競り人には、公正性が求められ、その責任は極めて重い訳で、恣意的に操作することは許されない。後になって、嘘がばれて仕舞っては、競りが成り立たなくなる。

 

 通常の競りでは、最後の一人になるまで、だんだん、値が上がって行く訳だが、袋競りでは、競り上げが無く、入札希望者の一回勝負なのだろうか。公共工事等の競争入札でも、1回勝負で、最高額等の入札者が、落札するのだが、袋競りは、この競争入札と同じものと言えるだろうか。

フグのトロ箱1箱が、数十秒でセリ落とされるというスピードぶりという。

 

 

○ この冬のフグは?

 冬の味覚の代表であるフグの袋競りが、今年の冬も、この9月下旬から始まったようで、今年の落札値は、キロ当たり1万5千円と、久しぶりに前年を上回ったという。 

 下の写真だが、袋の中での微妙なやりとりをする、競り人と、買い手の立場が、両者の表情によく表れている、プロらしい上手い写真と言えようか。勿論、右が競り人、左が買い手と思われる。(冬の味覚、フグ初競り 下関・南風泊市場 - MSN産経ニュース  から引用)

  今季のフグ初競り風景

  庶民には、やや縁遠いフグでも、関西に住んでいた頃は、結構、食べたのだが、関東暮らしの今は、その機会はごく少なくなっている。

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