2019年7月29日(月) フランスのこと その2
先だって、本ブログに、以下の記事
フランスのこと その1 (2019/7/8)
を投稿し、フランスの国土の形や、地理について触れたが、本稿は、その続編であり、フランスでの地域行政組織や、海外領土等について取り上げることとしたい。
◎フランスの地域圏
フランスでは、日本よりもかなり広い国土・領土をカバーする行政組織として、基本となる デパルトマン departmente(日本の府県にあたる)の上に、複数の県をまとめる レジオン région(地域圏 州とも)を置いているようだ。当然のことだが、それぞれに役所(県庁、圏都庁)がある。
それぞれの首長だが、県庁の県知事は選挙で選ばれる。そして、やや驚いたのだが、圏都庁の圏長は、中央政府が任命するという。これをチェックする自治組織として圏議会があり、議会議員と議会議長が選ばれるという。地域の自治体にどのような権限を与えるかは、多くの経緯があるようだ。後述するが、フランスの行政組織には、中央集権的なニュアンスが強いと言えるだろうか。
フランスの行政組織だが、2016年に、地域圏の地図が、旧から新に変わったようで、それまでの22の地域圏から、12の新地域圏と、地中海のコルス地方自治体に再編されている。新地域圏の地図と概要を以下に示す。
新たな地域圏を設定するに当たっては、以下のように、幾つかのケース
A 統合されて新たな名称に変わった地域圏、
B 統合されたが、以前の名称を並べただけの地域圏、
C 広さも名称もそのままの地域圏
があり、これらの区分を、概要の記事蘭に示す。
地域圏の呼称には、地理に関連する山や川に因むもの、
ロワール川
アルプス山脈
ピレネー山脈
ブルターニュ半島
もあり、良く耳にする呼称
ノルマンディ-
ブルゴーニュ
シャンパーニュ
などもある。
新地域圏名 フランス語名 圏都 記事(旧地域圏名)
グラン・テスト地域圏 GranEst ストラスブール Aアルザス=ロレーヌ地域圏
シャンパーニュ=アルデンヌ地域圏
ヌーベル=アキテーヌ地域圏 ボルドー A アキテーヌ地域圏
Nouvelle リムザン地域圏
Aquitane ポワトー=シャランテ地域圏
オーベルニュ=ローヌ=アルプ地域圏 リヨン B オーベルニュ地域圏
Auvergne- ローヌ=アルプ地域圏
Rhône-Alps
ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏 ディジョン B ブルゴーニュ地域圏
Burgogne フランシュ=コンテ地域圏
Franche-Comté
ブルターニュ地域圏 Bretagne レンヌ C ブルターニュ地域圏
サントルヴァルドロワール地域圏 オルレアン C サントルヴァルドロワール地域圏
Centre Val
de Loire
イルドフランス地域圏 パリ C イルドフランス地域圏
Ire de France
オクシタニー地域圏 トゥールーズ A ラングドック=ルジョン地域圏
Occitanie ミディピレネー地域圏
オードフランス地域圏 リール A ノルドペイドカレー地域圏
Hauts de ピカンドゥル地域圏
France
ノルマンディー地域圏 ルーアン A バッセノルマンディー地域圏
Normandie ハンデノルマンディー地域圏
ペイドラロワール地域圏 ナント C ペイドラロワール地域圏
Pays de la
Loir
プロヴァンス=アルプ= マルセイユ C プロヴァンス=アルプ=
コートダジュール地域圏 コートダュール地域圏
Provence Alps
côte dÁzur
コルス地方公共団体 アジャクシオ 地中海のコルシカ島
Corse
従来の22の地域圏を下図に示す。
◎フランスの国土の変遷と海外領土
長い歴史の中で、フランスの国土・領土には、幾多の変遷がある。
欧州の列強が争った植民地時代には、アフリカを主舞台にして、イギリスなどと争いながら、広大な地域を支配し、アジア地域にも進出し仏領インドシナを獲得している。
第二次世界大戦後は、世界の植民地の独立が進み、フランスも、大半の植民地を手放している。
◇ フランスの海外領土
今般、調べてみて改めて知ったことだが、イギリスとともに、フランスにも、現時点で、以下のように、未だに数多くの海外領土(植民地)があるようで、驚かされるばかりで、 植民地時代の関係が、色濃く残っていると言えそうだが、前出の地図には、これらの一部が表されている(以下の◆印)
◆ 仏領ギアナ
南米大陸の北部にあって、各国の植民地だった「ギアナ地方」は、大戦後
ガイアナ共和国 Republic イギリスから独立
of GUYANA イギリス連邦に加入
スリナム共和国 Republic オランダから独立
of SURINAME
仏領ギアナ Guyane fraçaise フランスの海外県
ギアナ宇宙センターを建設
のようになっている。
イギリスは、植民地が独立すると、緩やかな国家連合であるイギリス連邦に加入させて、宗主国としての関係を維持する政策をとっている。 これに対し、フランスは、自治権は認めながらも、海外県、海外準県などとして、直接、統治するスタンスのようで、集権的色彩が濃いだろうか。
◇ ニューカレドニア*
オーストラリア大陸の東側にあるニューカレドニアは、四国ほどの広さの島で、現在はフランスの植民地だが、前出の地図には載っていない。
調べてみると、フランスから独立するか否かで揉めているようで、昨年の9月に、住民投票を行った結果、独立しないでフランス領のままで残ることに決まったようだ。が、2020、2022に再び住民投票が行われることになっているようだ。最終的に残留となれば、フランスの、海外県になるだろうか。
この島は、ニッケル、コバルトなどの地下資源が豊富なことで注目されているようだが、大戦時、日本と戦う米軍の、前線への補給基地になった島と記憶している。
*国連の、非自治地域リストに掲載されている。
◆ 島嶼群1
・カリブ海
グアドループ島 Guadeloupe 海外県 サンマルタンが分離独立
マルチニーク島 Martinique 海外県
・マダガスカル島周辺
マヨット島 Mayotte 海外県 コモロ連合との帰属問題
レユニオン島 la Reunion 海外県
トロメリン島 Ile Tromelin 地図にはない
モーリシャスとの帰属問題
◇島嶼群2
・オセアニア
ワリス・フツナ諸島 la Wallis 海外準県
仏領ポリネシア*
ソシエテ諸島 (タヒチ島)
オーストラル諸島
トゥアモトゥ諸島(ムルロア環礁 核実験)
マルキーズ諸島
ガンビア諸島
*国連の、非自治地域リストに掲載されている。
・ニューファンドランド
サンピエール島・ミクロン島 海外準県
St.Pierre et Miquelon
カナダに対し、世界有数の漁場での権利を、したたかに維持している。
「余談」 7月初め、ジブラルタルで、イランのタンカーが、イギリス海軍に拿捕された
というニュースは、やや驚きであった。ジブラルタルは、イギリスが抑えている
ことを、再確認したところだ。
核開発に対する制裁で、石油の輸出ができなかったイランが、なんと、アフリ
カの喜望峰廻りで、ジブラルタル海峡をへて、地中海に入り、ヨルダンに石油を
輸出しようとしていたという、大航海時代のようなスケールの話である!
英国の拿捕に抗議し、先日、イラン政府が、ホルムズ海峡で、イギリスのタン
カーを拘束するという報復合戦が続いている。