2012年7月24日(火) 集中豪雨と梅雨明け
先日、一部を除いて全国的に、梅雨明けとなり、猛烈な暑さの夏本番になった、と思ったのも束の間、その後数日、可なり気温が低く、地域によっては大雨も降ったりしたが、漸く、昨日になって、九州も梅雨明けとなったようで、夏の暑さが戻って来るようだ。
梅雨と言えば、以前は、じとじとする、長雨を連想する事が多かったのだが、この所は、特に、梅雨明けが近くなると、気象が不安定になり、大雨が降ることが多い。 最近はこの傾向が顕著になり、梅雨は、集中豪雨の代名詞のようになっていて、台風に匹敵する、大きな災害をもたらすことが多いようだ。地球規模での異常気象現象の一環に思えて仕方が無い。
今年の梅雨では、今月の11日~14日に掛けて、九州北部の熊本県、大分県等が、“これまで経験したことのないような大雨”に見舞われ、河川が氾濫したり、山地で土砂崩れが起きるなどで、大変な被害となり、その状況が、連日ニュースで伝えられ、「平成24年7月九州北部豪雨」と命名されている。
本ブログでは、素人ながら、雨や気象に関する、2、3の話題を取り上げて見たい。
○身近かになった気象情報
最近は、TV、ラジオでは、主要な時間毎に、地域単位に、こまめに、天気予報(気象情報)が放送される。 又、ネットでは、全国どこの地域についても、チェックできるようになっていて、大変便利になっている訳だ。
生活上で、今日は雨が降るか(傘はいるか)、が最も関心は高いのだが、これからの季節の熱中症に関する高温注意情報や、春先の花粉飛散予報なども、重要だ。
又、自然災害につながる、台風の進路や暴風圏、今回のような集中豪雨なども、当該地域では、極めて大事な情報となる。
○国内の観測システム
今回の、九州北部豪雨では、局地的に、大変な降雨があったが、ここで、雨量の観測について触れたい。
これだけ文明が進んだ現代でも、幸か不幸か、人間の力では、コントロールできない物の一つが、天気(気象条件)だが、コントロールは出来ないものの、状況を把握するための、観測・監視・計測の技術やシステムは、格段に進歩している。
今更言うまでも無く、地上での観測だけでなく、気象衛星なども活用した、地球規模での観測が行われているとともに、観測情報を、国際的な連携のもとに提供し合って、状況の把握・分析や、今後の予測に役立てている。
我が国が、気象観測用に構築・運用している、アメダス(地域気象情報システム AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System)と、気象レーダーについて、改めて調べて見た。
日本の国土の広さは、約37万km2と言われるが、これを、17km四方(289km2)毎に正方形に区切り、そこに、無人の観測ポイント(アメダス観測所)を設置している。この観測所では、雨量の他、気温、日照時間、風向風速等を計測しているようだ。
全国で約1300か所(370000/289≒1280)となる観測所をネットで結んで、雨量計等のデータを、10分毎に、リアルタイムで収集する、全国規模のシステムが、アメダスである。
TVの気象情報の画面で、日本地図を、四角に区切った地域単位に、降雨量や気温などが画像で表示される、御馴染の、あれだ。
観測点の数が多い程、観測精度は上がる訳だが、それだけコスト高になる訳で、双方のバランスから、観測点を17km四方毎に設置する、ことに決められたのだろうか。
一方、全国20か所の気象台等に設置された気象レーダーで、雨雲の分布を捉えて、その解析によって得られた解析雨量と、雨量計による実測データとを上手く組み合わせて、観測の信頼度を上げているようだ。
近年需要が高い、集中豪雨や雷、突風(竜巻)などの観測には、より狭い範囲の現象(局地現象)の把握が必要なのだが、これに、対応するためには、アメダスの観測点を数十倍に増やす必要があると言われる。 このような、局地現象に対しては、雨量計の無い地域をカバーするのに、気象レーダーの方が効率的であり、近年は、こちらが増強される傾向にあるようだ。(アメダス - Wikipedia)
少し前までは、自分は、集中豪雨に見舞われた地域では、雨量計の値が狂ってしまい当てにならないので、レーダーで捉えた雨雲の分析から、降ったであろう雨量を推計している、と思っていたのだが、これは、誤解だったようで、実測データはちゃんと取得出来ているようだ。
○雨量の表現
アメダスの観測点にある雨量計は、底辺の直径が20cmの、円筒を使っているという。
雨量が、○○mmという意味は、単位面積(1m2)当たりに降った雨の量を、mmの高さで表示したものだ。 この数値は、体感的には、ピンとこないのだが、気象庁のサイトに出ている情報を元に、自分なりに、簡略にした(屋内、車にのっていて、の欄を削除)ものが下表である。(気象庁 | 雨と風の表)
雨の強さと降り方 (平成12年8月作成)、(平成14年1月一部改正)
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1時間雨量 (mm)
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予報用語
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人の受けるイメージ
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人への影響
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屋外の様子
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災害発生状況
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10以上~20未満
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やや強い雨
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ザーザーと降る
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地面からの跳ね返りで足元がぬれる
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地面一面に水たまりができる
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この程度の雨でも長く続く時は注意が必要
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20以上~30未満
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強い雨
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どしゃ降り
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傘をさしていてもぬれる
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側溝や下水、小さな川があふれ、小規模の崖崩れが始まる
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30以上~50未満
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激しい雨
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バケツをひっくり返したように降る
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道路が川のようになる
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山崩れ・崖崩れが起きやすくなり危険地帯では避難の準備が必要 都市では下水管から雨水があふれる
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50以上~80未満
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非常に激しい雨
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滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)
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傘は全く役に立たなくなる
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水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる
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都市部では地下室や地下街に雨水が流れ込む場合がある マンホールから水が噴出する 土石流が起こりやすい 多くの災害が発生する
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80以上~
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猛烈な雨
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息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる
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雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要
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上表には、1時間雨量が、10(mm)以上しか出ていないが、10未満については、他の情報によれば、以下のように言うようだ。
0.1以上~ 2未満 弱い雨(小雨)
2以上~10未満 普通の雨
大分前になるが、場所は忘れたが、或る実験施設で、人工による降雨体験をさせて貰ったことがあり、時間雨量30mmでも、かなり大変な思いをした記憶がある。
気象庁の上記の表にあるように、大雨のイメージを、人間の生活実感と結び付けて、
・バケツをひっくり返したように降る(30~50mm)
・滝のように降る (50~80mm)
などと言うのは、上手い表現で、良く使われる。
○大雨による災害―河川の氾濫
上述の、生活体験上での雨量感覚もさることながら、災害との関連、防災、治山治水関連での、降雨量が極めて大事で、前記の表でも、最も右の欄に
災害発生状況
とあり、降雨量が増える程、災害の危険度が増す様子が示されている。
でも、上表では、1時間雨量80mm以上は、「猛烈な雨」で括られているだけだ。先日の北九州豪雨では、時間当たり、108mmの所もあったようで、地域の気象台では、過去の経験と対比して、
“これまでに経験した事のないような大雨”
として、注意を喚起しようとしたが、対象地域の自治体や住民には、真意が伝わらず、避難が遅れて仕舞ったようだ。
今回の集中豪雨の様なレベルの雨量を表す、上手い表現が無い、ということのようで、当該地の、一般市民にも、防災関係者にも、分りやすく、アピールしやすい表現を、何か、考え出す必要がありそうである。
河川の場合は、降雨があれば、それが下流に集まり、河川の氾濫や、堤防の決壊が起き、床上浸水 等の災害となる。各河川では、氾濫危険水位を設けて、常時、水位の監視を行い警戒している。 危険水位との関係を見ながら、適切な対応が取られることとなるが、時間遅れで、下流で氾濫することもあるなど、間に合わなかった地域もあったようだ。
普段の市民生活の中では、河川は安全な場所であり、憩いの場なのだが、時折、本来の恐ろしい姿を見せる。往時は、河川管理は、時の政治の、基本中の基本であった訳だが、近年になって、整備工事が進んで、治水当事者や専門家以外は、水や河川の怖さを意識しなくなっているのも事実だろう。
○土砂災害の恐ろしさ
一方、今回の集中豪雨では、住宅地の近くで、がけ崩れ、地滑りが多発し、家屋倒壊などで、大きな被害が出ている。 人が亡くなるのは、こちらの方がかなり多いように思われる。地形や植生の状況や、土木工学等の知見から、地域に降った降水量からその地域での土砂災害の危険度を推定することは、出来るだろうが、何分、対象となる個所が余りにも多いということだろう。又、地域毎の降雨の予測も難しいと思われ、なってみないと分らない、というのが実態だろうか。
この場合は、その当該地域での、
1時間雨量
の他、
3時間雨量、24時間雨量、○日間の雨量
などの積算値も重要で、その地域での過去の経験値との対比(かって無かった雨量、など)や、平年のデータとの比較(平年の1か月分相当が4日間で、など)、代表的な災害事例との比較(○○集中豪雨と同程度、など)されることも多い。
集中豪雨のニュースでは、これらの雨量について、レーダーでの雨雲の動きを、赤、オレンジ、黄などに、色分けして示したり、棒グラフの高さなどで、強烈に報道されることが多いのだが、そのデータが、どの位危険なのかは、一般市民には、よく分からない。
これは無理もない事で、防災の当事者が、地域毎の危険度をきっちり把握して、対策を立てることが肝心で、避難誘導等を呼び掛けることとなる。
転ばぬ先の杖、として、自然災害を予想した平時の備えとして、河川管理や山地管理の、長期的な対策を計画的に行うことが必要なことは言うまでも無いが、いくらでも金は掛かってしまうのだ。
特に、山地に関しては、膨大な地域の広がりから、管理が難しいと思われるが、航空機による空からの観測の活用、伐採と植林との関連、造成地が落ち着くまでの長期的な時間の管理なども、課題だろうか。
○災害経験を教訓として
昨年夏、福島県の桧枝岐ルートで尾瀬にドライブ旅行した時は、集中豪雨(平成23年7月 新潟・福島集中豪雨)による新潟県との県境付近のがけ崩れで、国道が通行止めになったが、その少し手前で尾瀬に入ったために、辛うじてセーフになったことがある。
一方、昨年秋の奈良・和歌山県での、台風12号による豪雨災害では、堰き止め湖が幾つも出来て、決壊の危険があるということで、TVを通して、はらはらさせられたが、事無きを得たのが幸いであった。
又、昨日は、30年前に起こった、7.23長崎大水害の記念の日だったようだが、以前、夫婦で訪れた事がある、市内の、かの有名な眼鏡橋が流されてしまったことを、鮮明に記憶している。
天災は忘れた頃にやってくる、とは、寺田寅彦の名言と言われるが、この所は、忘れる間もなくやってくる、と言った印象だ。 当然のことながら、今回の豪雨災害を含め、これまでの数多くの災害体験から、教訓を学びとり、今後に生かしていかねばならない。