2011年4月27日(水)放射能汚染との付き合い
原発事故の終息が、まだまだ見えない状況だが、人様が居住する環境については、前回のブログ
放射線量と居住地域 (2011/4/24)
で触れた通り、事故原発を中心に、規制が行われている。
今回は、人様が食べる食品の安全基準について、最近の状況について触れるとともに、土壌の改良などについて、述べて見たい。
○空中に飛散した放射性物質、特に、ヨウ素131による汚染は、飲料水については大分前に終息し、葉物野菜等の農産物についても、最近は、3週連続して合格、というハードルをクリアして、規制解除のニュースが聞かれることは、嬉しいことだ。
事故発生時は、食品の安全基準と、土壌の安全基準の制定状況は、以下のようになっていた。
飲料水・牛乳 葉物野菜 根菜 穀類 肉・卵 魚 土壌
放射性ヨウ素131 ○ ○ ― ― ― ―* ―
放射性セシウム ○ ○ ○ ○# ○ ○& ―+
即ち、食品安全基準では、半減期が長い放射性セシウム(137・134)や、その他の核種について、すべての食品について規定されているが、土壌については、基準はない。
又、半減期が短い、ヨウ素131については、食品安全基準でも、飲料水・牛乳、葉物野菜類についてだけ規定され、摂食までに時間がかかる食品、
土壌を経由して汚染が広がる可能性⇒根菜、穀類
牧草等の餌を経由して汚染が広がる可能性⇒肉・卵
広い海を経由して汚染が広がる可能性⇒魚
等については、基準値が制定されていなかったし、土壌の安全基準は、決められていない。
所が、茨城県北茨城沖で採れた、こうなご、から、多量のヨウ素131が検出され、食品安全の基準値はなかったので、魚についても、急遽、葉物野菜等と同じ基準値、
放射性ヨウ素131 2000Bq/kg
か、決められている(上表の*印)。
又、前後して、こうなご で、基準値500Bq/kg(上表の&印)を上回る、放射性セシウムも検出されている。
今が旬の、こうなご 漁だが、魚の習性として、海面近くに浮いてくるので、海面上に降下した放射性物質を、吸収・蓄積しやすい、と言う。ヨウ素131については、それ程心配はいらないと思われるが、半減期の長い放射性セシウムは、食物連鎖で、小魚が、大きな魚に食べられて、その魚に蓄積される危険性もある。
海の汚染については、空中からの汚染に加え、高濃度汚染水の流出や、緊急措置的な、低濃度汚染水の意図的な放出もあって、茨城や福島の海産物に対する不安は、収まってはいない。風評被害もあって、商売にならないことから、自主的な出漁自粛が行われている等、苦しい現状だ。
一方、田植えの時期が近いこともあり、コメの作付け、が出来るのか否かを明確にするために、田んぼの土壌の、汚染度の基準値を定める必要性が指摘された。 このことから、先だって、新たに、土壌に関する安全基準値が、制定され、
放射性セシウム 5000Bq/土1kg当たり
と、決められた(上表の+印)。
この根拠はこうだ。放射性セシウムについては、米等の穀類の食品安全基準では、500Bq/kg(上表の#印)となっている。又、これまでの研究成果等から、田んぼに植えられたイネの、放射性物質の吸収率は、10%程度だという。このことから逆算して、田んぼの土壌の基準値が、5000Bq/kgと決められたものだ。
この、土壌に関する基準値は、イネだけでなく、他の穀類や、葉物野菜や、根菜類等の作付け、についても、暫定的に、適用されると思われる。
福島県内各地域の田んぼの汚染度を測定した結果、20km圏外である、飯舘村などでも、上記の規格値を越えていることから、今年のイネの作付けは見合わされた。当初からの避難区域であった20km圏内では、中に入れないので当然だが、残念ながら、当面の農作業は出来ない。
土壌の汚染については、以下のブログで触れているが、農作物の作付けに関する、土壌の安全基準の一部が、漸く具体化した訳である。
原発事故 土壌の汚染 (2011/4/7)
○空気や海が、一旦、放射能に汚染されると、人間の力で除染することは、不可能であろう。だが、陸地に関しては、ただ時間の経過を待つだけでなく、積極的に改善できる可能性が、残されている。
前出の下記ブログにあるように、先だって、学校での、屋外活動での安全基準が決められたばかりだ。
放射線量と居住地域 (2011/4/24)
これまで、屋外活動を自粛していた、福島県郡山市内の幼稚園や学校では、再開するに当たって、一層の安全のために、早速、グランド表面の土壌を入れ替える、こととしたようだ。
福島第一事故が終息し、住民が無事帰還できた時、土壌の改良などを行って、放射性物質を除去する作業は、
①人間が安全に居住するため
②安全な農作物をつくるため
に、必須となる。
まず、①だが、目に見える、あらゆる環境が対象となり、屋外、屋内を含めて、元通りに普通に住めるようになるのには、どんな対策があり、どの位、時間がかかるのだろうか。
そして、②で、元通りの農業や、漁業を取り戻すのには、大変な措置と時間が必要になると思われる。これまで世界各地で蓄積されてきた、ノウハウだけでは、上手く対応できるのだろうか。
チェルノブイリ事故では、丸25年経った現在も、30km圏内は、居住禁止になっている、という。広いウクライナならいざ知らず、狭い日本では、こんなことになったら、重大な損失になる。
勿論、チェルノブイリと福島第一は、事故レベルは、同じレベル7でも、内容的に、質的に、少なくとも、1ランクは異なるので、同列に扱う必要はない。下記ブログで触れているが、放射性物質の放出量が、100京ベクレルを越えている、チェルノブイリ事故は、新たにレベルを新設して、レベル8に格上げすべきだろう。
原発事故 レベル7に(2011/4/14)
○チェルノブイリ事故後、放射能で汚染された土壌を、植物の力を活用して、改良する試みが、行われているようだ。
放射性物質を選択的に良く吸収する植物を見つけ、それを栽培して、土壌の除染に役立て、その植物はしっかり管理する、と言うことである。
何もしない所に植えた小麦と、菜の花(正式にはアブラナ、ナタネとも)を植えて、放射性セシウム等を吸収させた後に植えた小麦と、を比較したら、後者では、セシウムの量が半分程に減ったと言う。
又、放射性物質を、吸収する、しないに関わらず、菜の花や、ヒマワリを植えて、採れた油を、車、等の燃料に使う、と言う試みもある。最近は、トウモロコシを、車用の燃料エタノールを採る方に回すので、人様が食糧難になる、という話もある位だ。
汚染された農作物は、人間が食べると問題になるが、採れた油を、車などのエネルギー源として利用すればいい、ということだ。勿論、この場合、放出される排気ガスには、放射能は含まれない、ことが条件になる。
郡山市内の学校でのように、汚染された田畑の土壌を入れ替えるのは、大変な作業になることを考えると、少し、時間はかかるが、植物による除染とエネルギーの獲得は、一石二鳥の手として、検討の価値がある、と思われる。
土壌の改良としては、今回の大津波で海水を被った、宮城県等の田んぼの除塩も、重要な課題だが、こちらには、これまでに蓄積された、沢山のノウハウがあるようだ。
○わが国には、戦後の経済産業の発展の陰で、苦しみながら取り組んできた、公害問題があり、それを克服し、先進的な環境技術として、蓄えて来た実績がある。今や、今回の原発事故による放射能汚染を、新たな公害問題として捉え、広い分野で取り組むべき時である、と思われる。
今後の苦しい中での経験を通して、原子力の平和利用のみならず、農水産業や、医療等の多くの分野で、新たな知見や技術やシステムが、生まれてくることを、期待したい。
原発事故の終息が、まだまだ見えない状況だが、人様が居住する環境については、前回のブログ
放射線量と居住地域 (2011/4/24)
で触れた通り、事故原発を中心に、規制が行われている。
今回は、人様が食べる食品の安全基準について、最近の状況について触れるとともに、土壌の改良などについて、述べて見たい。
○空中に飛散した放射性物質、特に、ヨウ素131による汚染は、飲料水については大分前に終息し、葉物野菜等の農産物についても、最近は、3週連続して合格、というハードルをクリアして、規制解除のニュースが聞かれることは、嬉しいことだ。
事故発生時は、食品の安全基準と、土壌の安全基準の制定状況は、以下のようになっていた。
飲料水・牛乳 葉物野菜 根菜 穀類 肉・卵 魚 土壌
放射性ヨウ素131 ○ ○ ― ― ― ―* ―
放射性セシウム ○ ○ ○ ○# ○ ○& ―+
即ち、食品安全基準では、半減期が長い放射性セシウム(137・134)や、その他の核種について、すべての食品について規定されているが、土壌については、基準はない。
又、半減期が短い、ヨウ素131については、食品安全基準でも、飲料水・牛乳、葉物野菜類についてだけ規定され、摂食までに時間がかかる食品、
土壌を経由して汚染が広がる可能性⇒根菜、穀類
牧草等の餌を経由して汚染が広がる可能性⇒肉・卵
広い海を経由して汚染が広がる可能性⇒魚
等については、基準値が制定されていなかったし、土壌の安全基準は、決められていない。
所が、茨城県北茨城沖で採れた、こうなご、から、多量のヨウ素131が検出され、食品安全の基準値はなかったので、魚についても、急遽、葉物野菜等と同じ基準値、
放射性ヨウ素131 2000Bq/kg
か、決められている(上表の*印)。
又、前後して、こうなご で、基準値500Bq/kg(上表の&印)を上回る、放射性セシウムも検出されている。
今が旬の、こうなご 漁だが、魚の習性として、海面近くに浮いてくるので、海面上に降下した放射性物質を、吸収・蓄積しやすい、と言う。ヨウ素131については、それ程心配はいらないと思われるが、半減期の長い放射性セシウムは、食物連鎖で、小魚が、大きな魚に食べられて、その魚に蓄積される危険性もある。
海の汚染については、空中からの汚染に加え、高濃度汚染水の流出や、緊急措置的な、低濃度汚染水の意図的な放出もあって、茨城や福島の海産物に対する不安は、収まってはいない。風評被害もあって、商売にならないことから、自主的な出漁自粛が行われている等、苦しい現状だ。
一方、田植えの時期が近いこともあり、コメの作付け、が出来るのか否かを明確にするために、田んぼの土壌の、汚染度の基準値を定める必要性が指摘された。 このことから、先だって、新たに、土壌に関する安全基準値が、制定され、
放射性セシウム 5000Bq/土1kg当たり
と、決められた(上表の+印)。
この根拠はこうだ。放射性セシウムについては、米等の穀類の食品安全基準では、500Bq/kg(上表の#印)となっている。又、これまでの研究成果等から、田んぼに植えられたイネの、放射性物質の吸収率は、10%程度だという。このことから逆算して、田んぼの土壌の基準値が、5000Bq/kgと決められたものだ。
この、土壌に関する基準値は、イネだけでなく、他の穀類や、葉物野菜や、根菜類等の作付け、についても、暫定的に、適用されると思われる。
福島県内各地域の田んぼの汚染度を測定した結果、20km圏外である、飯舘村などでも、上記の規格値を越えていることから、今年のイネの作付けは見合わされた。当初からの避難区域であった20km圏内では、中に入れないので当然だが、残念ながら、当面の農作業は出来ない。
土壌の汚染については、以下のブログで触れているが、農作物の作付けに関する、土壌の安全基準の一部が、漸く具体化した訳である。
原発事故 土壌の汚染 (2011/4/7)
○空気や海が、一旦、放射能に汚染されると、人間の力で除染することは、不可能であろう。だが、陸地に関しては、ただ時間の経過を待つだけでなく、積極的に改善できる可能性が、残されている。
前出の下記ブログにあるように、先だって、学校での、屋外活動での安全基準が決められたばかりだ。
放射線量と居住地域 (2011/4/24)
これまで、屋外活動を自粛していた、福島県郡山市内の幼稚園や学校では、再開するに当たって、一層の安全のために、早速、グランド表面の土壌を入れ替える、こととしたようだ。
福島第一事故が終息し、住民が無事帰還できた時、土壌の改良などを行って、放射性物質を除去する作業は、
①人間が安全に居住するため
②安全な農作物をつくるため
に、必須となる。
まず、①だが、目に見える、あらゆる環境が対象となり、屋外、屋内を含めて、元通りに普通に住めるようになるのには、どんな対策があり、どの位、時間がかかるのだろうか。
そして、②で、元通りの農業や、漁業を取り戻すのには、大変な措置と時間が必要になると思われる。これまで世界各地で蓄積されてきた、ノウハウだけでは、上手く対応できるのだろうか。
チェルノブイリ事故では、丸25年経った現在も、30km圏内は、居住禁止になっている、という。広いウクライナならいざ知らず、狭い日本では、こんなことになったら、重大な損失になる。
勿論、チェルノブイリと福島第一は、事故レベルは、同じレベル7でも、内容的に、質的に、少なくとも、1ランクは異なるので、同列に扱う必要はない。下記ブログで触れているが、放射性物質の放出量が、100京ベクレルを越えている、チェルノブイリ事故は、新たにレベルを新設して、レベル8に格上げすべきだろう。
原発事故 レベル7に(2011/4/14)
○チェルノブイリ事故後、放射能で汚染された土壌を、植物の力を活用して、改良する試みが、行われているようだ。
放射性物質を選択的に良く吸収する植物を見つけ、それを栽培して、土壌の除染に役立て、その植物はしっかり管理する、と言うことである。
何もしない所に植えた小麦と、菜の花(正式にはアブラナ、ナタネとも)を植えて、放射性セシウム等を吸収させた後に植えた小麦と、を比較したら、後者では、セシウムの量が半分程に減ったと言う。
又、放射性物質を、吸収する、しないに関わらず、菜の花や、ヒマワリを植えて、採れた油を、車、等の燃料に使う、と言う試みもある。最近は、トウモロコシを、車用の燃料エタノールを採る方に回すので、人様が食糧難になる、という話もある位だ。
汚染された農作物は、人間が食べると問題になるが、採れた油を、車などのエネルギー源として利用すればいい、ということだ。勿論、この場合、放出される排気ガスには、放射能は含まれない、ことが条件になる。
郡山市内の学校でのように、汚染された田畑の土壌を入れ替えるのは、大変な作業になることを考えると、少し、時間はかかるが、植物による除染とエネルギーの獲得は、一石二鳥の手として、検討の価値がある、と思われる。
土壌の改良としては、今回の大津波で海水を被った、宮城県等の田んぼの除塩も、重要な課題だが、こちらには、これまでに蓄積された、沢山のノウハウがあるようだ。
○わが国には、戦後の経済産業の発展の陰で、苦しみながら取り組んできた、公害問題があり、それを克服し、先進的な環境技術として、蓄えて来た実績がある。今や、今回の原発事故による放射能汚染を、新たな公害問題として捉え、広い分野で取り組むべき時である、と思われる。
今後の苦しい中での経験を通して、原子力の平和利用のみならず、農水産業や、医療等の多くの分野で、新たな知見や技術やシステムが、生まれてくることを、期待したい。