つれづれの記

日々の生活での印象

珍しい植物  2   バオバブ ー 続続き

2016年07月30日 16時07分39秒 | 日記

2016年7月30日(土) 珍しい植物 2  バオバブー続続き   

 

  先日、下記記事

    ① 珍しい植物 2  バオバブ     (2016/7/7)

    ② 珍しい植物 2  バオバブー続き  (2016/7/19)

 

を投稿し、バオバブの種類や、地球上の分布、植物としての特徴や、現地住民との関わり等について採り上げている。

 前稿の記事②に対して、世界遺産に詳しい知人から、以下のコメントを貰ったことが切っかけで、新たに調査して分った事項があり、これらを纏めて、続続編としたのが、本稿である。

 コメント:世界遺産ソコトラ島 

  ソマリアーイエメンの間ソマリア沖にある世界遺産ソコトラ島はバオバブの生育する島。
  ソマリア海賊が出没する海域にある島です。
  海賊達は上陸して、実を食べたのでしょうか。

 

○ ソコトラ島

◇概況

 ソコトラ島は、世界地図上で、足の形に見えるアラビア半島の、踵の部分になるイエメンの、沖合のインド洋にあり、埼玉県程の大きさで、イエメンに所属しているようだ。 インド洋航路(往時の海のシルクロード)上の要衝でもあり、ソマリア海域には、現在も海賊が出るようだ。

 この島には、独特の自然環境と生態系があり、アフリカのガラパゴスとも言われ、学術的な面から、2008年、ユネスコの世界自然遺産に登録されている。

珍しい動物、植物、自然景観などで、観光地としても人気が高いようだ。

        ソコトラ島の位置(ネット画像)

◇ユニークな植物

・竜血樹

 ユニークな植物として、特に著名なのが、竜血樹である。

異様な形状に加え、樹 皮を抉ると、赤い血の色をした樹液が出るようだ。これから採取する樹脂の「竜血」は、古来、島の主要な特産品で、薬品、塗料、化粧品等の材料として、取引されているようだが、近年は、観光地化もあって、採取量が過剰になり、個体数が減少傾向という。ここでは、これ以上の詳細は省略したい。

        竜血樹(ネット画像)

 

・ボトルツリー

 ソコトラ島の、もう一つのユニークな植物は、ボトルツリー(Bottle tree)だ。

幹の下部の形状が、正にボトル(日本流なら、徳利)のようで、上部に枝がある。太った幹の内部には、多量に水を蓄えているようだ。(下図) これまで見て来た、アフリカのバオバブと可なり似ている。

 土壌の少ない荒れ地だけでなく、切り立った崖の岩場などに貼りついていることもあるという。

季節になると、鮮やかな赤桃色の花を付けるようで、「砂漠のバラ」との別称がある。

                            

      ボトルツリーの異形                     砂漠のバラが開花

 このボトルツリーは、植物分類上は

       キョウチクトウ科 アデニウム属

になるようだ。 

 日本国内では、これを基に育成されたものが、多肉植物(根塊植物)の園芸品種で、赤い花が素敵な、アデニウムとして販売されているようだ。(下図)(アデニウムとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸

    

            園芸種 アデニウム

  

○ 世界のボトルツリーとバオバブと

◇オーストラリアのボトルツリー

   やや、紛らわしい話だが、ボトルツリーという植物は、オーストラリアにもあるようだ。 北東部のクイーンズランド州から、東海岸一帯に分布しているようで、市内の公園等でも良く見かけるようだ。(下図  ネット画像より)

    公園内のボトルツリー(ブリスベーン)

 植物分類上は

    アオギリ科 ブラキキトン属

になるようで、オーストラリアの東海岸一帯に20種、ニューギニアに1種という。この中で、幹の下部が肥大するのは、ルペストリスという種という。

 

◇ オーストラリアの原生種バオバブ

 本稿冒頭の①記事で触れたが、バオバブには、アフリカから遠く離れた、オーストラリアにも、原生種1種があり、西オーストラリア州のキンバリー高原地域に自生しているようだ。 

 オーストラリアのバオバブは、植物分類上は、他の地域と同様、

    アオイ科 アダンソニア属

で、固有種名は、グレゴリー/ギボーサと言うようだ。 

現地では、Baobabuを短縮したように、Boab(ボアブ)と呼んでいるという。 姿形は、太っちょの、ずんぐりむっくりで、下図の様だ。(ネット画像より)

    

 

 下図左は、上述のキンバリー高原地域のダービーという場所に生育している、往時、囚人を収容したとも伝えられるバオバブで、信じられない異形であり、樹齢1000年以上とも言われる。 下図右は、マダガスカルにある、同じ様な形のバオバブで、対比するために示したものだ。

   

         ダービーの監獄のバオバブ                        マダガスカルの妊婦のバオバブ

地質時代には、ゴンドワナ大陸として、アフリカとオーストラリアは陸続きだったと言われるが、その生き証人であろうか?

 

◇アフリカのバオバブ

 バオバブの原生種の中で、

    ・アフリカ大陸に生息する1種(ディギタータ)

については、前稿①、②で取り上げたので、詳細は省略したい。

 

又、 

    ・マダガスカル島に生息する6種(グランディディエリ  他)

の中で、グランディディエリは、有名なマダガスカルのバオバブ・アベニューに林立する、姿形がすらっとして、天に手を広げたようなバオバブだが、①で紹介済である。

 この、グランディディエリという種は、樹形が生育環境によって変異することでも有名のようで、乾燥した石灰岩土壌では、ズングリムックリな樹形になることが知られているようだ。

下図左、下図右は、マダガスカルの南西地域の風景であるが、グランディディエリの背が低くなって、ズングリムックリになったと言えるだろうか。

 本稿で取り上げた、ソコトラ島のボトルツリーや、オーストラリアのボトルツリーは、マダガスカルの、これらのバオバブと、可なり形状が似ているだろうか。

  

◇ まとめ

 本記事の冒頭で紹介したコメントでは、ソコトラ島のバオバブとあるのだが、正しくは、ボトルツリーとなるようだ。

でも、このような異形の植物は、植物分類上では、狭義には、それぞれに異なっているのだが、筆者には、大元は同じで、「広義のバオバブ」と言えるように思われる。 

 各地のバオバブやボトルツリーなど、異形の植物類をあれこれ見た後に、マダガスカルのバオバブ並木道の、下図のような、バランスのある整った風景に接すると、筆者には、ほっとするような美しさを覚えるのは、なぜか不思議でもある。

やや飛躍するが、富士山を見て、清々しい美しさを感じる感覚に近いだろうか。

     バオバブの並木道

 

 

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珍しい植物  3  モンキーポッド(日立の樹)

2016年07月24日 18時12分18秒 | 日記

2016年7月24日(日) 珍しい植物 3  モンキーポッド(日立の樹)             

  

 当ブログに、これまで、珍しい植物として、

      珍しい植物 1  アルソミトラ  (2016/7/7)

      珍しい植物 2  バオバブ    (2016/7/13)

      珍しい植物 2  バオバブー続き (2016/7/19) 

アルソミトラとバオバブについて投稿している。  

 土曜の夜に、良く視ている民放の人気TV番組 「日立 世界ふしぎ発見!」 で、スポンサーの総合電機メーカーの日立のCM中で、すっかり有名になっているのが、通称、“日立の樹”である。

 この樹の立ち姿は、 “♪ この木なんの木 気になる木 名前も知らない木ですから ♪” というコマソンと共に、筆者には、長年に亘って印象深いものである。この樹の名前は、モンキーポッドと言うようだ。 

 本稿は、珍しい植物シリーズの第3弾として、この、モンキーポッドに登場願うこととした。

 

 

○ 日立の樹の概要

  ネットで調べた概要は、以下である。(『この木なんの木 気になる木』の歌詞が意外と感動的と話題に! - NAVER まとめ 他)

   樹種  モンキーポッド  

   樹勢  樹齢 130年 

         高さ  30m

         幹廻り  7m

            枝張り 40m(直径) (地上投影面) 

     所在地 米国ハワイ州オアフ島 ホノルル市内

               モアナルア公園(Moanalua Garden)内

              公園内に同種の樹が複数本植栽

     記事  2010年、公園内の他の2本と共に、ハワイ州が特別な樹(Exceptional Tree)に指定 

              日本人観光客の来訪が多い。

       

                                                                       日立の樹    

 

○モンキーポッド一般  

 モンキーポッドの一般的特徴は以下のようだ。(モンキーポッド - Wikipedia 他)

   分類  マメ科ネムノキ亜科 落葉高木  

        英名 Monkey Pod:Podは実の莢(さや)のこと 猿が実を好むという。Raintreeという別名も。

        和名 アメリカネム(ノキ)  日本のネムノキと近縁

   分布  原産 熱帯アメリカ(中央アメリカ、西インド諸島、南アメリカ北部 等)

        ハワイや東南アジアにも帰化し、多く植えられている。

   特徴  和名のように、葉は、朝開き夕方閉じる

        綿毛状の桃白色の鮮やかな花を付け、細長い莢入りの実が生る。 

       

                        花                                    熟した実 

     用途  公園樹、街路樹、緑陰樹

          木材、木工品等の利用

    日本  日本で育成して楽しむ栽培キッドも販売されている。 

 

○ 樹形の美しさと親近感

  TVコマーシャルを見て、最も印象深いのは、樹形の美しさである。

 樹形は、一般的に大別すると、

         ①自然界のもの、と

         ②人為的なもの(庭園、盆栽 など)

があるだろうが、当初、筆者は、日立の樹は、まるで、大きな盆栽か? と感じたほどだ。

 でも、この樹は、人間の手が余り加えられておらず、ほぼ自然のままだろうと思われる。

 

  ①の樹形には、各種有るようだが、当該樹の樹形は、傘型に入るようだ。傘型でも、直線的な番傘風ではなく、丸みのある、洋傘風だろうか。

 日射しの具合や周囲の競合樹の状況等によって、樹木の成長は変わるようだ。日立の樹は、樹高が比較的低いと言えるが、ハワイなどでの日当たりが良い場所では、太陽光を十分に浴びられるよう、横に広がったのだろうか。

  

 筆者にとって、日立の樹の印象は、樹形を含めて、以下の様に言えるだろうか。

 A 左右対称の美

   日立の樹は、見る方向によって、幾分、姿形が違うようだが、ほぼ左右対称の、整った美しさである。

   咄嗟に連想するのは、独立峰の富士山のことで、整った左右対称の美と言えよう。

 B 水平の美

   地面と下枝の空間が、ほぼ水平で均一に見えるのも驚きである。 前出の図をみると、人物の2倍程の隙間である。 定期的に下枝    を整理しているのかもしれない。

 C  親近感

   下枝が低く、手が届きそうで、幹も木登りが出来そうに見える。又、朝夕に葉を開閉したり、季節には、可憐な花をつけ、実が生る等、現役の若さもある。身近な存在として親しみやすさが感じられる。

 

 一方、一般的な大樹、巨木の場合は、背が高く、幹が太く、非対称が多く、近寄りがたく、神々しさも感じられる等の印象だ。(死ぬまでに見たい木 - 樹樹日記死ぬまでに見たい 世界の気になる巨木・奇木 16 等)         

 

○ 各地のモンキーポッドの樹形

   世界各地のモンキーポッドも、美形だろうかと、少しく調べてみた。

 ・オアフ島の同じ公園内にある他の樹は、下図のようで、樹形は、円蓋形だろうか。(Moanalua Garden より)

       

 ・タイにある木は下図の様で、公園で通常見かける樹形(円蓋形)だろうか。 生育地の環境に応じて、生きていると言える。(Albizia saman/ アメリカネムノキ :タイの植物チェンマイより

       タイのチェンマイの公園樹

改めて、日立の樹の秀麗さが分るようだ。(かなり、褒めすぎ !?)

 

○ CMに登場する樹木の歴史

 ここで、件のCMに登場する樹木の歴史を調べてみた  。(日立の樹について:日立の樹オンライン

初代はイラストの樹で始まって、2代目から実際の画像になっている。 ハワイの日立の樹を手始めに、世界各地の樹木を巡回することとしたようだ。しかし、以下のように、数年経過後、驚いたことに、視聴者からの要望で、スタート時の、2代目に戻し、それ以降、6代目として、現在まで続いているという。

       1973年(S48) 初代  イラストで描いた樹 

                世界各地の樹木を画像で巡回する(2年交代で)。 

       1976年(S51) 2代   日立の樹  オアフ島

                   3代   マンゴー  ハワイ島

                   4代   バニヤンツリー  シンガポール

                   5代  カリフォルニアオーク カリフォルニア

                視聴者の要望から、2代の日立の樹に戻り、現在に至っている。

       1985年(S60) 6代  日立の樹  オアフ島

   日立から、公園の管理団体に対し、年間40万ドルの独占撮影権料を支払う契約という。

 

 3~5代での、世界の樹木巡りでは、CM中の樹木の映像が、視聴者にはピンとこなかったようで、視聴者の要望で、元の日立の樹に戻っているのは、頷けるものがある。

  先項で述 べたように、日立の樹には、日本人の美意識に通じるものがある中で、親しみやすい印象がある事が、高い人気の理由と、筆者には思われる。

 CMは、自然指向を表に出しながら、日立の樹に託して、巨大企業グループとしての、安定したシステム的総合力を、控え目にして雄弁に、アピールしているように思える。

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珍しい植物   2  バオバブー続き

2016年07月19日 14時36分02秒 | 日記

2016年7月19日(火) 珍しい植物 2  バオバブー続き    

 

  先日、下記記事

     珍しい植物 2  バオバブ  (2016/7/7)

 

を投稿し、バオバブの種類や、地球上の分布等について、話題にしたところだ。

 本稿は、この記事の後半編で、バオバブの植物としての特徴や、現地住民との関わり等について採り上げている。

 

○植物としての特徴

 アフリカの熱帯乾燥地域の気候は、5~10月頃の雨季と、11~4月頃の乾季とを繰り返すようで、バオバブは、このような環境で生息している。 我が国など、四季のある温帯地域に暮らす人間には、理解しにくい環境だろうか。

バオバブの種類(植物分類と原種名等)、 地球上の分布状況、樹齢数百年を超える巨木 等については、前稿で述べたので省略する。 

 

◇花と実

 バオバブについては、筆者は、そのユニークな樹形にばかり気をとられて、花や実の事は、余り気にしたことがなかったのだが、植物であるからには、花が咲き、実が生るのは当然のことだ。

バオバブは、雨季になると葉をつけ、6月下旬頃には、下図の様な、めしべが飛び出したような白い花が咲くという。

 受粉すると、子房が紐状に下に伸びて行き、先端部が丸く膨らんで、若い実になるようだ。実の付き方は落花生を連想させるが、実の形は、キウイフルーツや、ラグビーボールに似ているだろうか。(図はネット画像より)

   

                                 花                                                        ぶら下がる若い実

  葉が落ちた乾季に、実を収穫するが、実の形や大きさは、下図左のように、種類によってやや異なるようだ。 硬い殻を割ると、中に、スポンジに包まれたような白い種が、沢山詰まっているという(下図右)。

       

                          収穫した実                                          実の殻を割るとーー

 ◇幹

  バオバブの木は、乾季の乾燥にも耐えられるように、内部に、大量の水を蓄えられるような構造になっているようだ。貯水量は、10トンにもなると言われている。

2004年に開催された、浜名湖花博で、下図の様に、会場内にバオバブが植えられ、太い幹を切った現物が展示されたようだ。(世界の木材、樹木 | バオバブ )

 日本国内でも、バオバブを趣味的に栽培して楽しむことはできるようだが、生育環境に近い状態で育成できるのは、植物園(例 京都府立植物園)等の専門機関に限られるようだ。 浜名湖花博会場内で植栽・展示され、開花したのは、例外的であろう。               

   

                          花博会場のバオバブ                                         木の横断面 内部は柔らかい!

 

  幹の表面の樹皮の中に葉緑素を持っていて、これで光合成を行い、落葉した乾季の、自身の栄養源としている、との情報もある。

 

○ 現地住民との関わり

◇ 生活での用途

  バオバブは、地元住民にとっては、生活の中で、重要な樹木ともなっているようだ。

  アフリカの熱帯地域では、コーヒー豆やカカオなど、大規模なプラテーション形式で、輸出用に栽培されているものもあるが、バオバブの木は、全て個人所有という。 バオバブを育成している、アフリカの数百万戸の零細農家を支援し、ソーシャルビジネスとして展開する活動も行われているようだ。(ADUNAの社会的責任 | ADUNA公式サイト

 現地での、主な用途は以下のようだ。 

  木   幹・枝 :家屋の建築材料

      樹皮  :耐火建材 織物用繊維

       葉    :薬用 化粧品 食用

  実   果肉  :食用 ジュース シャーベット

             栄養価の高い、スーパーフルーツとも言われるがーー。

      果皮  :容器 土産物

      種    : 搾油

  

◇ 重要な観光資源 

  前稿にあるように、バオバブの巨木が、単独で、観光名所になっている所も多い(南ア北部の、Sunlandバオバブ 等)。

又、公園として纏められ、公的に整備されている、

    ・バオバブの並木道(マダガスカル南西部 モロンダバ地区)

    ・ダランギーレ国立公園(タンザニア バオバブ公園の別称も)

などもある。

  これらでは、観光関連産業に従事したり、維持管理作業に従事したりすることで、地域の活性化や雇用拡大になっていると思われる。

 

○ 地球環境上の懸念

  今回、ネットで調べていく過程で知ったことだが、バオバブの個体数が減少傾向にあり、マダガスカルの2原種は、危機的な状況にあるようだ。

この要因としては、

  ・地球温暖化による、砂漠化の進行 

    水分不足で木の個体が維持できなくなる

    乾季に食糧や水を求めて象が樹皮を剥ぐ例もあるとか

  ・人為的な伐採や焼畑農業

    宅地開発や耕作等の生活上の必要性から

    木を利用する循環型生活スタイルの喪失

等が考えられるようだ。

 

 前稿で、国連の気候変動枠組み条約の主管庁会議(COP17:2011年 南ア ダーバン)のロゴマークが、バオバブの木のデザインだったことに触れたが、今回、その意味しているところが、改めて分ったように思われる。

 

 

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Brexit  3

2016年07月17日 22時05分01秒 | 日記

 

2016年7月17日(日)  Brexit  3

 

 先月23日に、イギリスで、EUとの関係を問う国民投票が行われ、離脱派が過半数を占める結果となったことについては、下記記事

    Brexit  1  (2016/7/2)

でとりあげた。

 その後の、世界の大幅な株価下落等の経済状況と、イギリス国内での、後継の保守党党首(首相)選びについては、   

    Brexit  2  (2016/7/9)

で、話題にしてきたところだ。

 

 最近、この党首選で変化があり、9/9と言われていた予定が繰り上がって、新党首・新首相が、先日の7/13に決まったようだ。 

いずれにしても、当面のイギリス国内の動勢と、イギリスとEUとの関係の動きに、目が離せない状況であり、これらについて、大略取り上げることとしたい。

 

 ○ 新党首・新首相の誕生  

 保守党党首選の候補者が、2人に絞られ、本命はメイ氏と言われる状況で、党員選挙に向けて全国遊説に入り、9/9迄に新党首が決定され、それを受けて新首相が任命される、というのが段取りであった。(前稿まで)

それが、対立候補のレッドソム氏が、突然、党首選から辞退することとなったようだ。

 情報では、レッドソム氏は、英有力紙の取材で、国の将来について、「母親だからこそ、この国の未来について真剣に考えられる」と述べたという。一方、党首選の決選投票で対決するメイ氏には子供がおらず、長年連れ添う夫と不妊治療のために専門家を訪れたことがある、と英大衆紙に明かしたばかりだったという。保守党議員らからは「子供のいない男女に対する侮辱だ」などと、レッドソム氏への批判が噴出したという。

    (「母親だからこそ真剣に…」イギリスの次期首相候補の発言が物議 - ライブドアニュース))

 元々、先行した国会議員による投票では、劣勢だったのだが、自らの心無い発言で、レッドソム氏は、立候補を辞退する羽目になったようだ。

 

 メイ氏が、13日に女王から首相に任命されたニュースが、日本では、翌朝、流れた所だ。

メイ首相は、就任後初の首相官邸前でのスピーチで、以下の様に述べたようだ。(イギリス2人目女性首相誕生。メイ首相新内閣にはボリス=ジョンソン氏を外相に任命 等より引用)

      初スピーチ

 “先の国民投票での欧州連合(EU)離脱決定を受け、国としての新たな役割を構築していくと言明。「国民投票を経て、われわれは未曾有(みぞう)の変化の時を迎えている」と語った。

 その上で「グレート・ブリテンだからこそ、われわれは困難に立ち向かっていける。EUを離脱し、国際社会において大胆かつ新しい、前向きな役割を築いていこう」と訴えた。

 メイ首相は演説で、国民の多くが「激しい不公平」に苦しんでいると指摘。貧困層の平均余命がより短いことや、アフリカ系国民に対してより厳格な刑事司法制度、男女の賃金格差、若年層の住宅購入が困難になっている状況などを挙げ、「わたしが率いる政権は一握りの特権階級ではなく、国民の利益によって動かされるものになる」と述べた。”

 この就任演説で、首相は、イギリスを、グレート・ブリテン(Great Britain)と言い、連合王国(United Kingdom)とは言わなかったようで、やや、気になったが、原文で確認出来てはいない。

 メイ首相は就任後、新内閣の閣僚を発表した。詳細は略すが、主なポイントは以下の様だ。
     財務相にフィリップ=ハモンド氏: 外相から横滑り

     内務相にアンバー=ラッド氏:   気候変動相から横滑り  首相の前ポスト

     外相にはボリス=ジョンソン氏:  前ロンドン市長  

                           離脱派の先頭で次期首相候補⇒党首選不出馬

                           残留派との融和とEU離脱の手続き等を担当

     国防相にマイケル=フォルン氏: 留任 

 「鉄の女」と畏敬された、故サッチャー首相だが、2人目の女性首相となるメイ新首相のニックネームは、「氷の女王」という。キャメロン前首相の下で、内相を6年間も務めた実績で見せた、厳しい手腕を言うのだろうか。イギリス2人目女性首相誕生。メイ首相新内閣にはボリス=ジョンソン氏を外相に任命

 余談:メイ首相が、エリザベス女王から任命書を貰い、首相官邸前で就任演説を行った当日のファッションについて、英タイムズ紙は、以下の様に絶賛したようだ。(メイ英新首相の装い、10点満点 英紙タイムズが絶賛 配色「女王に配慮」 - 産経ニュース

   

 “ほとんどの部分は「重要な問題を抱えた思慮深い指導者にふさわしい」紺色だが、コートの裾の部分は明るい黄色で「楽観主義や生きる喜びさえ感じさせる」と指摘。同じく明るい黄色が好きな女王の影を薄くしないよう配慮していたと分析した。”

 TVで見た筆者にも、上に着けているコートの裾の部分の明るい黄色が、新鮮に感じられたことだが、女王の好みの色にも配慮している、とはさすがである。(上図はネット画像より)

 

 国民投票後、約50日弱の間、イギリス国内の政治は不安定だったが、新たな内閣もスタートして、イギリスの政治は、徐徐に、軌道に乗っていくことだろうか。

9月9日頃と言われていた新党首・新首相の決定が、約2か月弱、繰り上がって早くなった訳で、いいニュースとして市場でも好感され、ポンドも少し回復したようだ。 

 

 メイ首相は、9/16 チェコの首都 ブラチスラバで開催予定の、次回EU首脳会議に出席し、キャメロン前首相から交代した挨拶を行うようだ。

 メイ首相は、就任間もなく、EUを仕切る両首脳である、ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領と電話会談を行い、EU離脱交渉の準備に時間がかかると伝えて理解を求めたようだ。勿論、公式に、EU離脱を通告するには、国内手続きが必要なため、そちらは、やはり、年明けになるとも言われている。

○ EUとの新たな関係を模索しつつ

 新首相誕生後のイギリス国内では、懸案が山積している。 国民投票で露呈した国内の分断を修復し、今後の方向を見つけ出していくことが当面の課題だろう。

 ◇Brigret 

 国民投票の結果はEU残留になるだろう、と、漠と想定したのか、余り考えずに投票したのか、答えを予測して投票に行かなかったのか、は不明だが、兎も角、もう一度、国民投票をやって欲しい、と言う、請願書の署名が、400万人を超えていると言うのは驚き。

10万人以上の請願がある場合には、扱いを国会で審議するルールという。

 良く考えずに投票してしまったことが、悔やまれる(regret)、という意味だろうか、この動きをもじった、

      Bregret (Br(itain)+(r)egret ブリグレット)

という造語もあるようだ。

 民主主義を標榜するイギリスのこと、将棋の対局での“マッタ”のように、結果を見てから、投票のやり直しをやるとは思えない。

この言葉は、イギリスが、対外的に自らに対する自責の念を表した、自嘲気味のブラックユーモアに見える。 

 

◇国会承認に向けて

 国民投票の結果には、法的拘束力が無いので、国会の承認が不可欠で、それに基づいて、EUに対して、条約からの離脱通告を行うこととなる。

 イギリス議会下院の勢力分布は、2015年の総選挙直後の結果では以下のようで、総数650議席があり、任期は5年となっている。 (2015年イギリス総選挙 - Wikipedia

     政党名          議席数A 得票率    得票率からの議席数B  A/B

     保守党          331  36.9%      239.8              1.38

     労働党          232  30.4%     197.6               1.17

     スコットランド国民党  56     4.7%      30.6                1.83

     その他           31    28.0%

  やや余談になるが、イギリス下院の選挙制度は、完全小選挙区制で、比例代表は無いようだ。上表で、各党の得票率から想定される議席数と、実際に獲得した議席数との間に、可なりの違いがあるようだ。 

    イギリス国会議事堂

  各政党が、EUとの関係について、どの様なスタンスなのかが問題だが、保守党、労働党共に、国会内では、残留派が多かったとも言われるが定かではない。

  一方、スコットラド国民党は、2年前の住民投票で盛り上がって、党勢を拡大している。

スコットランド地域は、イギリスからは独立したいが、EUには残りたいということで、今回の国民投票では、前稿にあるように、EU残留の希望が多かった。

  国民投票の結果、EU離脱となった直後に、スコットランド国民党のスタージョン党首は、早々と、EU本部を訪れて挨拶するという、勇み足をやってのけたという。

 

  保守党内では、前首相ともども、「残留」を主張して来たメイ首相だが、僅差の多数決で決まった、「離脱」という民意は尊重せざるを得ない訳だ。  今 後の数か月間は、イギリス国内の残留流・離脱派間の融和をはかり、意見を調整しながらの、難しい舵取りが求められる。

  EU離脱後についてのイギリスの思惑は、貿易や物の移動等の、EUとの経済的関係は現状をほぼ維持しつつ、移民等の人の交流は出来るだけ制限したい、ということのようだ。勿論、EUへの多額の拠出金は不要となる訳だ。

EU側としては、イギリスの、このような、いいとこ取りの条件は呑める筈もないだろう。EU内には、EUを離脱したい勢力を抱えている国も多い。EUの結束を乱す、EU離脱の第1号となるイギリスに対しては、甘い顔はできないのだ。

 

  次稿では、最も難解なテーマだが、離脱交渉が難航し纏まらない場合も想定しながら、イギリスの今後の方向と、EUの今後の方向について、取り上げる予定である。

 

 

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珍しい植物  2   バオバブ

2016年07月13日 23時29分25秒 | 日記

2016年7月13日(水)  珍しい植物 2  バオバブ       

 

  先日、下記記事

     珍しい植物 1  アルソミトラ  (2016/7/7)

を投稿した。本稿は、それに続く第2弾であるが、少し長い前置きを許容されたい。

 

 数年前の2011年11月に、南アフリカ国東海岸の港町ダーバン(マダガスカル島南部の対岸)で、地球環境保護についての、国連気候変動枠組み条約に関する主管庁会議(COP17)が開催されていて、会議の状況は、当ブログの、下記記事で取り上げている。

      気候変動会議  (2011/12/5) 

 その会議で、下図にある、地球を抱くようにして力強く生きている、バオバブの樹がロゴマークとして使われたのが、今も印象に残っている。 

           

  このバオバブの樹のことは、会議以前からも、その後も、地球の自然を紹介するTV番組等で、時々出て来ているので、概略は知っている。

 今般、珍しい植物の第2弾として、マダガスカル島等に自生する、ユニークな樹形の、このバオバブの樹を、改めて、取り上げることとした。  

◇ マダガスカル島

 マダガスカル島は、アフリカ大陸南東部のインド洋上に位置し、サツマイモの様な形をしているが、地球上で、4番目に大きい島と言い、広さは、何と、日本の1.6倍もあるようだ。

南緯20度辺りを中心に、南北に1500kmもの長い島で、亜熱帯地域になるだろうか。11月~4月頃が暑い雨季で、5月~10月頃は、涼しい乾季という。

 この島は、長らくフランスの植民地だったが、戦後の1960年に独立して共和国となり、首都はアンタナナリボで、人口は、1900万人程という。 島内には、鉄道は無く、移動は、主に空路と陸路が使われるようだ。主産業は農業のようだ。 

  この島には、太古の大陸形成と関連して、特異な地形があり、ユニークな動植物が生息しているようだ。 このため、石灰岩が剣山のように無数に突き出ている地形(ツインギー)があったり、表情が面白い固有種の猿等も棲んでいるようだ。

下図にあるように、これらが、マダガスカルの主な観光スポットとなっているようだが、詳細は省略する。(http://www.club-t.com/special/abroad/africa/madagascar/spot.htm) 


 

 今回採り上げるバオバブの木も、島を代表する植物の一つで、日本からのツアー人気は高いようで、上の地図の南西部にある、モロンダバ地区では、バオバブの並木道等が整備されていて、下図の様な風景が楽しめるようだ。

   

    壮大なバオバブの並木  写っている人間が小さいこと! 樹高20m程

 

◇ バオバブの地球上の分布

 筆者はこれまで、バオバブの樹は、地球上で、マタガスカル島だけにしか自生していないと思っていたが、今般、アフリカ大陸内各地や、オーストラリア大陸にもあると知り、認識を新たにしたことだ。 

 バオバブは、植物分類上では、アオイ科バオバブ属(属名:アダンソニア A)に区分されるようで、地球上には、原生種としては8種あると言われている。(バオバブ 【グレゴリウス講座】

               原生種    種名

  アフリカ大陸     1種      A.ディジタータ      

  マダガスカル島    6種      A.グランディディエリ  

                       A.フニー 等 

   オーストラリア大陸 1種       A.グレゴリ     

◇アフリカ大陸内に生育しているのは、幹が太く、ずんぐりむっくり型の、ディジタータという種のようで、通常、アフリカバオバブと呼ばれているようだ。下図のように、西部セネガル地方から南アフリカ北部にかけての 雨が少ない熱帯乾燥地帯(サバンナ)に広く生育しているようだ。 (バオバブ(Adansonia)の播種(種まき)から栽培(育て方)

     アフリカバオバブの分布状況

 アフリカ最大の個体は、南アフリカ北部のリンポポ州・マジャジスクルーフと言う所にあり、「Sunland Baobabu」という愛称で呼ばれているようだ。(下図)(世界最大のバオバブに大興奮 樹齢はなんと6000年! 南アフリカ/ヨハネスブルグ特派員ブログ | 地球の歩き方)  

 

 

                                葉が茂る(雨季)                        

 

                                   葉が落ちる(乾季)

     

       巨大な幹廻り(右下に人物2人)

   樹高は47m、直径15m程という。年輪が無いので、樹齢の推定は難しいようだが、炭素年代測定法では、1700年以上のようだ。(The Big Baobab Limpopo South Africa | The Largest Baobab in the World) 他では、樹齢2000年や、5000年との情報もある。(バオバブ 【グレゴリウス講座】 等)

 *南アフリカ北部のクルーガ―ゲーム禁漁区にあるバオバブ巨木の写真が、数年前、米WSJ紙(ウオール・ストリート・ジャーナル)の一面に載った事があるようだ(世界最長寿の生物たち―10万歳の海草も - WSJ ) 

*西部のセネガルには、小説「星の王子様」のモデルになったと言われる巨樹があるようだ(下図)。 作者のサン・テクジュベリにとって、余ほど気味悪い樹だったのだろうか。(まるで「星の王子さま」の世界!セネガルのシンボル、バオバブの木 | TRIP'S(トリップス)

   

  一方、4年前のロンドン五輪に出場した、サッカーのセネガルナショナルチームのユニホームには、下図のような、バオバブをデザインしたマークを付けたようだ。 

    

◇マダガスカルは、バオバブの宝庫のようで、本稿の、冒頭の図に出ている、背が高く、すらっとしている樹形の、グランディディエリという種が有名で、島を代表する固有種である。

 島内各地に、分布しているバオバブの原生種は6種あると言われるが、ツアーで様々な種類が楽しめるようだ。島内には、樹齢800年と言われる、前項の大陸種のディジタータの巨木もあるようだ。 

 マダガスカル中央銀行発行の2000アリアリ紙幣には、堂々たるバオバブの樹のデザインが印刷されているという。このバオバブの種類は、ビヤ樽型の、フニーバオバブと推定される。日本で言えば、紙幣に桜が描かれている様なものだろうか。

  

 因みに、この紙幣の価値を、最近のレート;100アリアリ=3.47円で換算すると、3.47×20=約70円 程のようだ。

 ◇オーストラリア大陸にも、グレゴリという種の下図の様なバオバブが生育しているようで、北西オーストラリアのキンバリー高原地域と言う。 

    

 本稿の最後に、夕焼けの空を背景にした、バオバブのシェルエットの絶景を借用したい。(ネット画像より)

  次稿で、植物としてのバオバブの一生や、現地の人達の利用法などについて、触れることとしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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