2011年11月22日(火) 事故原発はもう安心!
3月の原発事故から、8か月以上が経過した。この4月に初めて示された、「事故の収束に向けた道筋」の進捗状況だが、それ以降、これまで、毎月半ばの、17日頃に公表されており、10月に続き、この11月は、どうなるのか気にしていたら、先日の、11月17日に最新版が公にされたようで、東電のHPを見たら、ちゃんと載っていた。
今回は、ニュース等では、取り分けて話題にはならなかったようだ。 と言うことは、それだけ、事故原発は、もう安心できる状況にある、という証左でもあろう。
前回の発表で、冷温停止状態等を実現するステップ2の、達成時期目標が、公式に、来年1月から、年内に繰り上げられたのだが、その後の経過も大変よく、大いに安心である。
最近の発表に際しては、当ブログでも、下記記事、
事故原発は収束軌道に? (2011/8/25)
冷温停止状態実現? (2011/9/30)
冷温停止状態 実現! (2011/10/20)
の中で、収束に向けての、3つのポイント
①冷温停止状態は?
②放射性物質の放出量
③滞留水の処理と循環注水冷却システム
からチェックして来たのだが、今回の発表にあたっても、これらの3点について、念のために、再確認を行うこととした。
①冷温停止状態は?―原子炉圧力容器の底部温度
冷温停止状態実現の主要要件の一つが、原子炉圧力容器の底部温度が、安定的に、冷却水の沸点の100℃以下になっていることであるが、公表資料によれば、1~3号機各々の、原子炉圧力容器の底部温度の経過は、下図のようになっている。
特に、前回の10/18以降を見ると、1号機は100℃を大きく下回って、資料では、34℃となっている。一方、2、3号機は、69℃まで下がっている。
損傷した燃料が、圧力容器から格納容器内に漏れている場合でも、それが冷却されている必要性から、今回から、格納容器各部の温度も公表された。こちらも、この2カ月程の間に、圧力容器底部温度同様、安定的に、100℃以下に保たれているようだ。
②放射性物質の放出量
放射性物質の放出量については、前回と同じ形式で、下図が公表された。
この所は、放出量は、中々、減らないレベルになっていると思われるが、約0.6億ベクレル/時と、前回より、更に、減少している。 事故時と現時点との放出量の比が、前前回は400万分の1、前回は800万分の1、今回は、1300万分の1、となった。
敷地境界での、年間被曝線量は、最大約0.1mSvと、目標の1mSvを、十分に下回っている。
このことは、3つの事故原子炉で、冷温停止状態が維持され、構内の瓦礫や高濃度汚染水の処理も進み、原子炉建屋にカバーを掛ける工事等が進捗(1号機は、カバーが完成 3号機は、屋上の瓦礫撤去)、した事等が大きいだろうか。
③ 滞留水の処理
滞留水の処理に関する今回のデータでは、循環注水冷却システムが、安定的に稼働出来ていて、セシウム除去施設等も順調に機能しているようだ。 滞留水の処理量の勾配も、前回以降の傾向を、ほぼ維持している。
一方、滞留水の残留量については、タービン建屋B1の水位は、以下のようになっている。
図にあるように、9月末の台風の風雨の影響以降、汚染水が増え、処理が追い付かず、水位が上がって、2、3号建屋とも、目標値の3000mmを割ってしまっているのは、気になる所だが、資料では、“残留滞留水の全体量は、豪雨や処理施設の長期停止にも耐えられるレベル”、としているので、まあ、いいとしよう。
前々回、前回記事でも触れているが、冷温停止状態の実現には、
A 冷却水の漏れはあるが、現在運用中の、循環注水冷却システムにより実現
B 配管の修理等により、冷却水が漏れない様にし、原子炉に取り付けた熱交換器で、
直接冷却することで実現
があり、現在は、このAで、変則的ながら冷温停止状態を、年内に実現する事としている訳だ。
次の、理想とする目標は、Bだが、前回同様、今回の資料でも、Bに付いては、中長期的な対応として、建屋内での熱交換器による直接冷却方式(対策13)を目指し検討中、とある。
Bと不可分の対策 だが、冷却水が漏れない様にする、格納容器や配管等の漏洩個所の密封についても、対策16として、中長期的なテーマになっている。
これらの中長期的な対策の実現については、関係者の、地道で忍耐強い取り組みが、求められている。
事故原発自身は、概ね収束に向かって来ていることから、この所は、規制区域の解除や、周囲環境の除染と廃棄物の貯蔵施設、コメ等の食品の安全性、事故原発の廃炉処理の工程、人体への許容被曝量、等が話題の中心となって来ている。
一方、冬に向けての節電対策と、その関連での停止中原発の再稼働問題や、更には、長期的なエネルギー政策の方向づけ、等も重要になってきている。
今後は、これらを中心に、取り上げていくこととしたい。