2022年6月25日(土) 国連安保理の機能不全
最近、国連の安全保障障理事会が、機能不全に陥っている、とよく言われる。
最近では、北朝鮮のミサイル発射の案件、ロシアのウクライナ侵攻の案件などだ。
下図は、国連旗だが、構図は、北極の上空から、地球全体を見下ろしているもので、周りを囲んでいるのは、平和のシンボルである、オリーブの葉だ。
○国連機能
*全加盟国による国連総会は、最高意思決定機関であるが、開催することは、そう簡単ではない。
*このため、国連機能の実務での中心になる一つが、事務方のトップの事務総長であり、事案に対して、国連を代表して意見を述べたり、折衝を行っている。
事務総長は、安全保障理事会が人選して総会に推薦(勧告)し、総会で任命される。
現在の事務総長は、ポルトガル出身の、アントニオ(A)・グテーレス氏である。
直近の事務総長は、韓国の潘基文氏だ。歴代事務総長の中で、筆者の記憶に残っているのは、初代スエーデン出身の、ダグ(D)・ハマーショルド氏、7代ガーナ出身の、コフィー(K)・アナン氏などである。
*安全保障理事会
国連機能の中で、最も重要な、世界の安全保障について受け持つのが安全保障理事会である。
*理事会の構成と議長
安全保障理事会は、常任メンバー5と、非常任メンバー10によって構成される。
理事会議長は、理事15か国の国名のアルファベット順に、1か月づつ、交代で務める決まりという。
*常任メンバーは、交代が無い、文字通りの常任で、国連創設以来、米、英、仏、露、中 5か国である。常任メンバーは、委員会決議に対する、拒否権を持っている。
国連が創設された当時(1945年)は、加盟国数が51だったが、下図のように急激に増加し、現在は、193になっている。
でも、国連の運営体制となる、常任理事国数や、非常任理事国数は、図の様に、殆ど変わっていないことが、大きな問題になっている。
(安保理改革の経緯と現状|外務省.html 参照)
*非常任メンバーは、10か国で構成され、任期は2年で、1年づつ、5か国づつ、ずれながら交代する決まりだ。非常任理事国10か国は、世界全体の加盟国を、下のような、ブロックに分け、各ブロックごとに、人数を決めているようだ。
ブロック 定員 2022末迄 2023年末迄 2024年末迄
アフリカ 3 ケニア ガボン モザンビーク
ガーナ
アジア太平洋 2 インド UAE 日本
東欧 1 アルバニア
ラテンアメリカ 2 メキシコ ブラジル エクアドル
西欧・その他 2、 アイルランド マルタ
ノルウエー スイス
加盟国数が多いため、非常任理事国の割当順番が回ってくるまでに時間が掛かることから、先述のように、不満が出てくることとなる。
来年の国連総会では、2024年末で任期が切れる、今回の5か国の後任が、選ばれることとなる。
今回の日本は、これまで最多の、13回も選任されている。
○安保理改革案
安保理改革を巡って、歴史的には、これ迄、多くの案が示されてきた。でも、どの案も、具体化することなく終わっている。主な3案について、提案グループ、提案内容(理事国数、拒否権など)と、提案に対する、米、中の立場を示したのが下図である。
(安保理改革 - おしらべ.html から引用)
3案を、再整理したものが、以下である。
G4案 提案元 ブラジル、ドイツ、インド、日本
内容 常任理事国数 5→11 増分6の中 アフリカ枠2
非常任理事国数 10→14
拒否権 新任国は、15年後まで使用を凍結
AU案 提案元 アフリカ連合(AU)
内容 常任理事国
非常任理事国
拒否権
UFC案 提案元 コンセンサスグループ
内容 常任理事国数 5→5現状のまま
非常任理事国数 10→20
拒否権 全常任理事国は使用を抑制
○拒否権の行使
安保理での拒否権は、常任理事国だけに認められた特権で、当事国は、この特権を手放すことは無いと言われる。上述の改革案でもこの扱いが焦点になっている。
現在の常任理事国5か国が、これ迄、拒否権を行使した回数を示したのが、下図である。
(国際連合安全保障理事会における拒否権 - Wikipedia.html 参照)
米、露の回数が圧倒的に多く、とりわけ、露が多い。
フランス、イギリスは、以前は、拒否権を行使したことも多いが、最近は無いようだ。
中国は、以前の使用はすくなかったが、最近、急に使うようになったようだ。
○説明責任
民主主義にとって、極めて不合理な拒否権を無くすことが望ましいのは当然だが、当事国は手放す筈はなく、不可能なのだ。
そのため、拒否権の行使を、少しでも抑制するために、行使した場合に、その理由を、総会で説明させる安保理決議案を、ミニ国家の、リヒテンシュタインが取りまとめたが、採決なしで採択されたようだ。
(安保理での拒否権行使に「説明責任」 国連総会が決議案を採択 _ 毎日新聞.html)
そして、その採択後、この5月に、米国から、北朝鮮のミサイル発射を非難する決議案が出されたが、中、露の拒否権で、否決されている。
その後、開催された国連総会で、両国は、理由を説明したようだが、決議案の問題点を指摘し、自国の行為を正当化したようで、抑止効果が疑問視された。
(国連会合、安保理外の国広く参加 拒否権抑制に疑問 - 記事詳細|Infoseekニュース.html)
また、少し前の安保理では、ロシアのウクライナ侵攻を非難する、決議案が、この3月、米国などから提起されたが、なんと、当事国であるロシア自身が、拒否権を行使している。
ロシアが、自己の論理で横車を押す行為の、極みと言えるだろうか。