2016年7月9日(土) Brexit 2
先月23日に、イギリスで、EUとの関係を問う国民投票が行われ、離脱派が過半数を占める結果となったことについては、下記記事
Brexit 1 (2016/7/2)
で取り上げたところだ。
その後、世界の株式市場や、EUとイギリスとの関係、イギリス国内での後継首相選びなどで、状況は、めまぐるしく変化している。
本稿は、これらについて、大略、触れることとしたい。
○ 世界経済の衝撃
イギリスのEU離脱が明らかになった直後は、世界の株式市場では株価が大きく下落した。
主要市場での、平均株価や指数の変化を、離脱直前(6/22)、離脱直後(6/23)、最近(7/4)に分けて、%で表示した、恰好の図がネットで見つかったので、下図に引用した。図中の、各市場の主要指数名は以下である。
日本 日経平均株価
中国 上海/シンセン CSI300指数
米国 NYダウ
英国 FTSE100指数
ドイツ DAX指数
フランス CAC40指数
スペイン IBEX35指数
株価が、%オーダーで下がるのは、大変なことと言われている。
激震が走った市場は、全体としては回復傾向にあるようで、米国市場は、直前のレベルまでに戻っているようだが、ヨーロッパや日本の市場では、まだ復帰はしていないようだ。
一方、直後、大幅に下落した、イギリスの株が、離脱直前以上に高値になっているようだ。これは、図には無いが、イギリスの通貨ポンドが暴落し、その後も、ポンド安・株高の状況が続いている、ということのようだ。
日本国内の、為替レート(ドル・円)と、日経平均株価の、7/4までの状況を、より詳しく表しているのが下図である。 両者が、ほぼ連動している状況が、よく見える。(ネット画像より)
イギリスで、国民投票を行うと公表したのはこの2月で、実施されたのは6月下旬だが、これらのイベントが、国内株価へ大きく影響した様子も見えるが、他の要因もあって、円高・株安の傾向は続いているようだ。
昨7月8日夕の時点では、
ドル・円レート 100円程/ドル
日経平均株価 15100円程
と、低下傾向は続いているようだ。
○ 後継者選び
イギリスでは、国民投票終了後、保守党党首のキャメロン首相が、辞意を表明した事から、党首の後継者選びが進められている。
6月30日に立候補が締め切られ、下院保守党国会議員の投票により、候補者数を2人迄に絞る手続きが進められる。 最終的には、全国の保守党党員による決選投票によって、9月9日までに、新党首(新首相)が決まるという。
当初は、下図の、5氏が立候補したようだ。国民投票までは、離脱派の中心となって主導して来た、前ロンドン市長のジョンソン氏だが、同じ離脱派のゴーブ氏が、自ら立候補することとなり、勝ち目は無いと、突然、立候補を辞退したため、様相が大きく変わったようだ。
(ネット画像より)
保守党国会議員による第1回投票の結果(7/5)は以下のようだ。(以下敬称略)
メイ 165 残留派
レッドソム 85 離脱派
ゴーブ 48 離脱派
クラブ 33 残留派 ⇒自主的に辞退 第2回でメイ支持に
フォックス 16 離脱派 ⇒規定により脱落 第2回でメイ支持に
総数 347
引き続き、残った3候補による、第2回の議員投票(7/7)が行われ、以下のようになったようだ。
メイ 199 残留派
レッドソム 84 離脱派
ゴーブ 46 離脱派 ⇒規定により脱落
総数 329
このように、国会議員による投票で、候補者が、下図の2名に絞り込まれたこととなる。
(ネット画像より)
今後の、保守党党首選びの最終局面では、全国に16万人いると言われる保守党員が投票して決めるようだ。 両候補は、これから全国を遊説し、9月9日までに新党首が決まると言う。
“忙中閑あり”にも見える、のんびりムードの動きではあるが、諸般の状況は、これを、極力早める必要性が高まっているようだ。
新党首を、新首相に指名するのは、日本のように、国会と思いきや、そうでは無く、国王のようだ。
遡って、総選挙後の首班指名が、議会との関連で、どの様に進められるのかが気になるところだが、国のしきたりの中に、国王の権威が、形式的にせよ、かなり残っているようで、聊か、驚かされる。
両候補とも女性で、このまま進めば、いずれにしても、イギリスでは、サッチャー首相以来の女性リーダ-が誕生するのは、確実な情勢である。
そうなれば、EUの中心となっている、ドイツ メルケル首相と、EU離脱条件を巡って、女性首脳同士の、熾烈な交渉が繰り広げられることとなるだろう。
この11月のアメリカ大統領選では、ヒラリー候補が選ばれる公算が大で、独、英、米の3カ国の首脳が、全て女性という、興味深い新たな時代になるかもしれない。
○ 新たな関係は?
新首相誕生後のイギリス国内では、国民投票結果の国会承認と、それに基づくEUへの離脱通告という、難所が控えている。
「残留」を主張して来たメイ氏だが、「離脱」という民意を尊重せざるを得ず、関連する国内の動きも含めて、難しい舵取りが求められるだろう。
これらの困難を予想してか、メイ氏は、EUへの離脱通告は、何と、年明けになるだろう、と言っているようだ。
一方で、これまでも、じりじりと待たされているEU側としては、それまでの時間を、どうするのだろうか。この時間を有効利用し、EUとイギリスとの新たな関係を構築することを期待したいものだ。世界全体の、EUを取り巻く漠とした将来不安を押さえる必要があろう。
次稿では、これらを中心に、取り上げることとしたい。
https://www.flickr.com/photos/nato/sets/72157670100641031/
ポーランドにて NATOは大演習をやったそうです。