つれづれの記

日々の生活での印象

地球温暖化防止対策ーCOP21

2015年12月29日 15時17分35秒 | 日記

2015年12月29日(火)  地球温暖化防止対策―COP21 

 

 テロ事件があったパリで、11月30日から開催された、国連の「気候変動枠組条約」(FCCC)(温暖化防止条約とも)の、第21回締約国会議(COP21)が、当初、12月11日までだった予定を1日延長して、ギリギリの交渉が続けられ、何とか、地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定:Paris Agreement」が採択された。

国連のFCCC体制が、1992年にスタート(発効は94年)して間もなくの、1997年に京都で開催された第3回会議(COP3)で、「京都議定書:Kyoto Protocol」が採択されたのだが、それに続く、18年振りの、拘束力を持つ協定である。 

 今回、何らかの新たな合意がなければ、地球環境の未来はない、とまで言われた会議だっただけに、今後に希望をつないだイベントとなったことに対し、国の威信を懸けた議長役のフランス政府を始めとして、世界の関係者に敬意を表したい。

 

 当ブログでは、このテーマについて何度か取り上げたが、最近では、下記記事

     将来のエネルギーと地球環境 (2015/5/19)

以来である。本稿では、今回の会議を、ひとしきり振り返ることとしたい。

  

◎地球の温暖化が進んでいる!

①地球の温暖化対策の状況

 京都議定書以降の、世界の温暖化対策と排出量の概要は以下だ。

    

((時論公論 「COP21開幕 どうなる?地球温暖化交渉」 | 時論公論 | NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス 参照 以下も)

 

 2008年からスタートした京都議定書では、全排出量の3割以下の、先進国だけが削減義務を負い、当時の最大排出国のアメリカは批准せず離脱していて、中国は対象外である。

その後の、毎年開催された会議では、先進国と途上国との対立が繰り返され、足並みがそろわず、カナダやロシアとともに、原発事故の影響で日本も、自主規制になる等、実効は余り上がらず地球環境は悪化して来ている。

 2012年現在での地球全体の排出量を割合で示すと、上図にあるように、成長が著しい中国が26%で最大で、米国が16%と、両国で世界の4割以上を占めている。 そして、EUが11%、インド6.2%、ロシア5.2%、日本3.9%、ブラジル1.4%などと続いている。

 

 今回のCOP21に向けて、各国が、この3月末締め切りで、2030年までの削減目標(約束草案)を提出したが(日本は遅れて5月に)、主な国の数値は下図のようだ。   

          

         (第21回締約国会議(COP21) - JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター より) 

 これにあるように、比較の基準とする年がばらばらである一方(1990年比、2005年比など)、排出量が、絶対値の場合と、GDP当たりの場合とがある。 中国、インドは、後者で、新興国として環境に配慮しながらも、経済発展を進める姿勢を明確にしている。

 

②温度上昇の予測

 政府間パネル(IPCC)での最新の報告によれば、下図のように、地球の平均気温は上がり続けており、今後追加的な対策をとらないと(薄桃色)、2100年までに、産業革命から3.2~最大で5.4℃上昇し、世界各地で、異常気象の増加、海面上昇(最大82cm)、北極海の氷の消滅(今世紀半ばの夏)、生物多様性の減少など、取り返しのつかない影響がでるとされている。    

そして、温暖化ガスの削減対策を、以下のように徹底的に行えば、

    2050年までに2010年比で40~70%削減

    2100年時点で±0~マイナス

図で、水色で示すように、2100年時点の温度上昇は、+0.9~+2.3℃に押さえられると予測している。現在の時点で、すでに、温度上昇は、0.9~1℃程になっているという。 

 

③温度上昇による影響の予測

 IPCCでは、上述の温度上昇による地球環境への影響を、以下の、3つの項目について予測している。(A、B、Cは筆者が便宜的につけたもの)

    A 異常気象 :台風、洪水、旱魃などの増加

    B 影響の格差:食糧や水の分布の変動が生み出す各国への影響の格差

    C 世界経済全体へのダメージ:災害などがもたらす世界経済全体へのダメージ・生物多様性の減少

 下図は、これらの項目について、産業革命からの温度上昇が、2℃の場合について、どの程度危険になるかを色別で示している。色別の意味は以下だ。

    白領域:まだ影響が少ない

    黄領域:影響がはっきり表れる

    赤領域:影響が深刻で広い範囲に及ぶ 

 下図では、黄領域と赤領域の境界の温度を、黒い線で示している。 図から分るように、2℃上昇すると、Aの異常気象に関しては既に赤領域で、Bの各国への影響の格差については、赤の僅か手前だ。又、Cについては、黄領域である。 Aの異常気象を黄領域に留めるには、温度上昇を1.5℃位に押さえる必要があるようだ。

    

 同様に3℃上昇とすると、下図に示すように、A、B2項目が赤領域であり、Cは、辛うじて黄領域だが、変動幅によっては赤領域となり、全体として、不可逆的変化が起るようだ。

    

 

◎今後へ向けて

◇COP21での最終合意内容

 京都議定書以降、足並みが乱れ、有効な対策も進まずに、状況は悪化して来たわけだが、前述のような、危機的な状況の予測から、今回の会議は極めて重要視された。 参加196国・地域の締約国は、何としても合意に漕ぎつけようと、粘り強い説得と妥協を積み重ね、なんとか、最終的に合意されたが、その内容は以下のようだ。

①今世紀後半に温室効果ガスの人為的排出と吸収の均衡(実質排出ゼロ)を達成し、地球の温度上昇を産業革命前比で2℃以下を目標とし、1.5℃未満に抑えるよう努力する。 

②すべての国が2020年以降の温室効果ガスの削減目標を自己申告し、目標値を5年ごとに(削減量を増やす方向で)見直す。削減目標は義務づけせず自主目標とし、定期的な見直し報告を義務づける。  

③途上国の地球温暖化対策に対して先進国が2020年まで、年間1000億ドルを支援し、それ以降も資金支援を約束する。 資金支援は義務づけるが、具体的な額等は協定と切り離して決める。 

COP21、パリ協定採択 196カ国・地域が参加  :日本経済新聞

「京都議定書の屈辱」の二の舞を避けられるか? COP21パリ協定、日本の課題  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社] 等)

 

◇合意内容について

 ・温度上昇

  ⇒最近観測されている、地球環境の各種の重大な変化と、人為的な温室効果ガス(CO)の排出量との因果関係が、近年、科学的に、次第に明らかになって来ているようだ。

この排出量を、地球規模で抑制し、地球の温度上昇を、一定値内に押さえようという、近代文明が始まって以来の、地球上での人類の未来を賭けた、壮大なチャレンジである。 

 IPCCでは、温度上昇を押さえ、排出と吸収を均衡させることで、地球環境の可逆性を維持できるとしているが、理想論に過ぎないようにも見える。

我が国での、明治以降の文明開化などを取り上げるまでもなく、よりよい社会や生活を求めていく、地球上の各地域での人間の欲求は、変わることはないだろう。 この方向と地球環境への影響を押さえ、何とかバランスさせることは、決して生易しいものではない。

 ⇒京都議定書での削減目標の決め方を反省し、今回は、数値を義務づけず、自主目標(ガラス張り)という緩い縛りとし、全員参加の形で足並みを合わせている。しかも、前述のように、経済発展もしたい新興国に配慮して、GDPあたりの目標値も許容していて、定期的に自主目標を見直すこととしている。

この様な協定によって、どれ程の削減効果が得られるのだろうか。  

 ⇒実体論として、近代化による、或る程度の環境変化は不可避として、受け入れながら進めることも必要だろうか。

海水温度変化による魚類の回遊域の変化、農産物の産地の変化、等への対応や、北極海航路のへの対応といった事も必要だろう。 

 

・資金支援等の具体化 

⇒資金支援は継続するものの、要調整項目は多く残されている。

資金支援を、協定とは切り離したことで、先進国にも受け入れられたと言えるが、支援額や、供与か融資かなど、今後の交渉は難航も予想される。

中国やブラジルなど、先進国的側面もあるBRICS諸国や、経済発展もしたい途上国などの利害もからんでこよう。

 

⇒温室効果ガスを森林が吸収する機能を排出権として評価し、取引対象とすることは、国によっては、有力な手段になるだろうか。

 

◇日本の取り組み

 ・京都議定書の策定等、当初、FCCCを主導して来た日本だが、特に、東日本大震災で全原発が停止して以降は、発電事業を化石燃料に依存せざるを得ず、自主規制に切り替え ており、COP21に向けての目標提出も、締め切りから遅れて、なんとか2015/5に提出している。 

厳しい世論の下で原発の再稼働を進めながら、当面の化石燃料への依存を減らす一方、再生可能エネルギーへの切り替えを行うなど、苦しく重い、世界有数の排出国としての責務を果たしていかねばならない。

 ・ビジネスチャンス

    一方、我が国は、かって、深刻な公害や大気汚染も経験し、それを克服して来た実績がある。一方で、省エネ技術によって高度なエネルギー効率を実現している日本企業だが、その持てるノウハウを生かした、今後のビジネスチャンスは大きいものがあろう。

良く言われるもので、省エネ家電、地熱発電、石炭ガス化複合発電、バイオ燃料、蓄電池、LED、電気自動車、ゼロエネルギー住宅・ビルなど、の産業・技術分野で、産官学一体となって、大いに世界をリードしていきたいものだ。

 

 ◇当面の行動計画

  果たして、各国の足並みが、今後とも、揃うのだろうか。

中国とアメリカは、今回は手のひらを返したように、合意形成へむけ、イニシアチブを発揮したと自賛しているようだが、今だけの話で、これまでの両国の姿勢から見て、途中で離脱するなど、竜頭蛇尾に終わる可能性も有り得ることだ。

  諸準備をして、2020年、東京オリンピックの年に、新体制がスタートとなるが、2020年までの期間は結構長く、国際的な突発的な状況変化も予想される。もう少し、スタートが繰り上がらないものだろうか。 京都議定書事務局は、ボンにあるようだが、パリ協定の事務局はどこになるのだろうか? 

 

  パリ協定は、参加各国内での批准を経て、来年4月に発効予定という。来年11月には、COP22が、アフリカのモロッコで開催予定だ。

すんなり、事が運ぶことを、先ずは、すなおに期待しよう。

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夫婦別姓の最高裁判決

2015年12月22日 17時43分34秒 | 日記

2015年12月22日(火)  夫婦別姓の最高裁判決 

 

  先日の12月16日、夫婦別姓と、再婚禁止期間についての上告審で、最高裁判決が示された。筆者が特に関心のある、前者の夫婦別姓について、ブログでも詳しく取り上げてきたのだが、最高裁大法廷の判断は、万が一と思っていた、想定外の「合憲」であった。

これまで、当ブログに     

     名前の話題 ―「姓」と「名」 (2015/11/30)

     名前の話題 - 夫婦別姓   (2015/12/11)

を投稿してきたところだ。

  最高裁判決の後も、マスコミでは、関連する話題が報道されているが、前稿と重複する事項は省略して、本稿では、判決のポイントについて、私見を述べることとしたい。

なお、判決文そのものは見ていないが、以下の、2件のNHK報道を参照・引用している。

    ①夫婦別姓認めない規定 合憲の初判断 最高裁 NHKニュース  (2015/12/16)

    ②夫婦別姓認めない規定 合憲判断も5人が反対意見 NHKニュース (2015/12/16) 

 

◎憲法判断:現民法の夫婦同姓制は、女性の人権を尊重していない?

  憲法では、基本的人権の保障と両性の平等を謳っているが、民法の夫婦同姓の規定は、女性の人権を尊重しておらず、憲法違反ではないか、との訴えについて、判断が下された。 

最高裁大法廷は15人の裁判官で構成されているが、多数意見と少数意見に分れたようだ。

 

◇多数意見:裁判官10人の多数意見は、以下と言う。

  “「民法の規定は、夫婦がどちらの名字にするか当事者の話し合いに委ねていて、性別に基づく差別的な取り扱いを定めているわけではなく、規定自体に不平等があるわけではない」として、違憲ではない、という判断が示されました。”(②より 下線は筆者) 

 民法の規定では、夫婦同姓を強制しているものの、夫の姓にするようにとは決めておらず、どちらの姓にするかは、話し合いで選択できるので、憲法には違反していない、ということのようだ。姓を話し合いで自由に選択出来るので、性差別ではない、との最高裁の判断は、国側の主張を採用したものだろうか。 確かに、形式上ではその通りなのだが、規定だけを見た判断であろう。

 

◇少数意見:一方、残る5人の裁判官は、少数意見だが、憲法違反であるとしたようだ。中でも、3人の女性裁判官は以下のように、述べている。

  “「女性の社会進出は著しく進み、結婚前の名字を使う合理性や必要性が増している。96%もの夫婦が夫の名字を名乗る現状は、女性の社会的、経済的な立場の弱さなどからもたらされている。妻の意思で夫の名字を選んだとしても、その決定過程には、現実の不平等と力関係が作用している」と指摘しました。
 そのうえで、「多くの場合、女性のみが自己喪失感などの負担を負うことになり、両性の平等に立脚しているとはいえない。今の制度は結婚の成立に不合理な要件を課し、婚姻の自由を制約する」として、憲法違反だと結論づけました。” (②より 下線は筆者) 

 少数意見では、民法規定での形式的な選択の自由について、

    妻の意思で夫の名字を選んだとしても

とした上で、そうせざるを得ない理由や背景等について、

    女性の社会的、経済的な立場の弱さ

    その決定過程には、現実の不平等と力関係が作用している

として、「選択の自由」は、実質的には、制約されている、としている。

   

 結婚時に、夫婦の姓を、制約なしに自由に選択した場合には、仮に、男女の数を同数とすれば、夫50%-妻50%あたりとなるのだろうか。 でも、少数意見にもあるように、実際には、結婚の96%もが、夫の姓を選んでいる実体がある。 この数字は、両性の自由意思で選んだ結果だ、とは言えないだろう。

 日本の上流階級には、父系社会を基本にした、伝統的な家制度、家父長制があった。この、伝統的な家制度を護るために、婚姻は、本人の意思より、家と家との関係で決められてきた。

跡取りの男子が居る家の場合は、嫁取りを行っていて、この場合は、嫁は夫の家の姓となる。封建制下では、妻には、姓は無かったか、姓で呼ばれることは、無かったかも知れない。

男子が居ないなど特殊な家の場合だけ、婿取りが行われ、婿入りした夫は、妻の家の姓を名乗ることとなる。 このようなケースは、確率的に、可なり小さい数となろう。

 

 このような伝統的な慣習の中で、男尊女卑が通念となり、女は家事や育児といった役割分担となり、女性の権利が抑圧され、社会進出が妨げられて来たと言えようか。

今年のNHKの、大河ドラマ「花燃ゆ」や、朝ドラ「あさが来た」の女主人公達が、時代の慣習に縛られながらも、生き生きとしているのは、極めて印象的である。 

 明治になって、民法が制定される時、初期には、夫婦別姓―多分、中国、韓国式のー、もあったようだが、夫婦同姓が戦前まで続き、戦後に改定された民法でも同姓制だが、はじめて、どちらの姓にするかを選べる表現になったという。(このあたり、調査不十分で情報不足)

 

 ②によれば、判決の最後に、寺田逸郎裁判長は、みずからの考えを補足意見として、以下のように述べたようだ。

 “夫婦別姓の裁判について、「司法の場での審査の限界を超えており、民主主義的なプロセスにゆだねることがふさわしい解決だ」として、国会で議論されるべきだという考えを重ねて示しました。”

これは、司法判断を迫られた最高裁の、偽らざる本音と思われる。上述したように、表面的な規定でみる限りでは、現民法が、憲法に違反しているとすると、矛盾に陥ってしまうという、最高裁としては、苦しい状況なのだ。

  

 日本における最高裁の違憲立法審査権については、下記記事                         

    日本の安全保障  2  (2015/9/16)  

で取り上げたように、日本の仕組みは、「付随的違憲審査制」と言われるようで、立法後の訴訟で、実際の損害等が立証されないと、違憲判断ができないという、やや、まどろっこしいものだ。

  裁判長の意見のように、今回の事案は、まさに、立法の段階で、大いに議論して決めるべき事項で、ドイツ式の、「抽象的違憲審査制」であれば、法律の成立前に、司法の意見も聞ける仕組みとなるのだろうか。

  

◎夫婦同姓の合理性について

 判決の後半では、現在の夫婦同姓制度に合理性があるか否かについて、見解を述べたようだ。(②より) 

○現制度の合理性  1

 “夫婦が同じ名字にする明治以来の制度は社会に定着しているとしたうえで、「家族を構成する個人が同一の名字を名乗ることで家族という1つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できる」として、制度には合理性があると認めました。” 

 この見解は、夫婦同姓制のメリットとしてよく言われていることで、国側の主張を取り入れたものと思われる。 合憲か否かの憲法判断ではないが、違憲とは言えない論拠の一つとして、制度に合理性があるとしているようだ。

○現制度の合理性  2

 “一方、「名字を変える人にとってアイデンティティーの喪失感を抱いたり、社会的な信用や評価を維持することが難しくなったりするなどの不利益は否定できず、妻となる女性が不利益を受けることが多いだろう」として、制度にはデメリットがあることも認めました。 しかし、旧姓を通称として使うことが広まることによって不利益は一定程度緩和される。”

としている。これは、提訴側の主張である、制度のデメリットに理解を示した上で、国側の、旧姓の通称使用を持ち出して、不利益が緩和されるとしたものだ。

 でも、これらの見解は、最高裁の職務とどう関係するものだろうか、やや不明だ。今回の裁判は、夫婦別姓が、合理的か合理的でないかを争っているのではなく、民法の規定が憲法に違反しているか否か、というものだからだ。

 提訴した側からみれば、言う迄もなく、夫婦別姓制度は不合理なものなのは当然だ。

  

◎ 考察と今後の方向

 ○今回の判決で、最高裁の憲法判断とは、何を、どの様に判断するのか、考えさせられた。

  *憲法に書いてある規定と、民法に書いてある規定との間に食い違いがないか

   ⇒話し合いで選択できるので、性差別や不平等ではない(多数意見)

  *憲法の規定の背景にある思想、理念と、民法に書いてある規定や社会の実体との間に食い違いがないか

   ⇒女性の社会的地位の低さ等から、実質的に不平等がある(少数意見)

  *民法の規定の合理性を述べているのは何のためか、何と比較した合理性か

   ⇒制度に、社会的な合理性があるということで、憲法で保障されている権利や平等が実現されている、ということだろうか。このこと  で、違憲ではないと言えるのか、筆者には理解し難い。

 

○今後について 

 前稿では、以下のように述べた。

 “若し万一、“現民法の規定は憲法に違反していない”、といった判決が出た場合は、“日本の人権意識や民主主義は、世界最低”と言うしかなく、憲法判断を行う最高裁の、存在意義が疑われるだろう。”

前述のように、筆者としては、我が国の最高裁の存在意義に、目下、疑念を抱いているところだ。

 

 夫婦の「姓」の問題については、今後の国会での論議を俟ちたいところだが、どうやら、与党の「先生方」は、現状維持が多数派という!

ここは、いつもながらで残念なのだが、外圧に弱い特技を生かして、国連勧告への対応や、来年の伊勢志摩サミットを切っ掛けにして、女性尊重や、女性パワーの活用の観点から、日本としての、明治以降で残されたソフト面の近代化の一つを進める、重要なチャンスでもあろうか。

○前稿で触れた、結婚時の夫婦の姓について、以下の様な、ドイツのケースが思い浮かぶ。

  「結婚時の姓は話し合いで決める→決まらない時は夫の姓にする:憲法違反→夫婦別姓も選択可に」

日本の事案と類似しているので、機会を見て、じっくり調べてみたい。

 

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名前の話題ー夫婦別姓

2015年12月10日 23時21分07秒 | 日記

2015年12月10日(木)  名前の話題 ―夫婦別姓

 

 

 先日は、当ブログに

         名前の話題 ―「姓」と「名」 (2015/11/30)

 

を投稿したところだが、本稿は、それに続くもので、メインテーマである、夫婦別姓の話題を取り上げている。

  

◎夫婦の姓に関する日本の実状

◇周知のように、我が国の法律では、結婚する場合、婚姻届で、夫婦の姓は同じとし、夫婦どちらかの姓を名乗ること(夫婦同姓)が、義務付けられている。

  即ち、夫婦それぞれの姓が別々であること(夫婦別姓)は認められておらず、そのような届けは、受理されず、戸籍上の正式な夫婦とは見做されない。このことから、別々の姓のまま、同棲するカップル(事実婚)も、あるようだ。

 婚姻届で、夫婦どちらの姓にするかは、建前では、自由に選べるとなっているが、実体は、次項に述べるように、習慣的に、夫側に大きく偏っている。

結婚後に、子供が生まれた場合には、出生届が必要だが、この子の姓は、自動的に、親である夫婦の姓となる。

 

◇結婚時に、夫婦それぞれの、どちらの姓が、実際に選ばれているのだろうか。

 やや古いデータだが、2007年時点の厚生省統計では、妻の姓を選ぶケースは、下図のように、結婚全体の3.7%に過ぎない。妻の姓を名乗るこの場合、通例では、夫側の婿入り、妻側の婿取り、となる。

      

 上図で、データの径年的な傾向を見ると、近年になる程、妻の姓の比率が、徐々に増えて来ているようだ。 又、初婚、再婚別では、女性が再婚する場合、女性の姓となる割合が多い(9%)ようだ。(以上 厚労省の婚姻統計より: 夫婦別姓を待つ身の溜息 より)

これを裏返せば、圧倒的に96.4%もが、夫の姓を選んでいる訳で、通例では、妻側の嫁入り、夫側の嫁取り、という形となる。

 我が国で、夫婦どちらの姓にするかは、法的には、何の制約も無く、自由に選択できる。でも、夫側の姓が、圧倒的に多いという事実は、正に、国の風習、慣習であり、価値観であり、伝統文化でもあろうか。

家を重んじ、女性の人権を軽視する、古い封建的な因習が色濃く残っている、と言えるだろうか。

 

 

◎夫婦同姓と夫婦別姓

◇世界の状況

 夫婦の姓に関する、歴史的な経過については、洋の東西を問わず、一般的には、男系中心の社会で、夫の姓を名乗ってきたものと思われる。古い時代には、女系中心で、妻の姓を名乗った地域等もあっただろうか。

 時代が進んで、男女平等、個性の尊重、呼称の自由、等の考えが広まり、1900年代末期から、欧米の先進国で、夫婦別姓が選択できるようになり、2000年代には、アジアなどでも、この気運が高まったようだ。 

差異はあるが何らかの形で、妻の姓を残す選択もできるなど、世界では、広義の夫婦別姓が行われているようだ。

今や、夫婦同姓(夫婦同氏の原則)を強制しているのは、なんと、ほぼ、日本だけのようだ。(世界の夫婦別姓 より)

 

◇結婚時の姓のパターン 

  2人の男女が結婚する場合の、夫婦の姓に関する状況を、整理してみる。 

仮に、結婚前の男女の、姓+名を、男性:A+B、女性:C+Dとすると、結婚後(⇒)の、姓+名の状況としては、一部、曖昧さがあるが、世界全体では、大凡、以下のものがあるようだ。(夫婦別姓 - Wikipedia 世界の夫婦別姓 等より) 

 以下のグループ分けと呼称は、筆者が便宜的に行ったものである。

⇒ ①強制的夫婦同姓グループ (夫婦同姓が強制される)

   日本:夫婦同姓が強制されていて、イ、又は,ロを選択

          イ 夫の姓を選択  夫A+B 妻A+D

     ロ 妻の姓を選択  夫C+B 妻C+D   

   スイス:妻は、通常、イの夫の姓になるが、自分の姓を付加出来る(ハ)

     ハ 妻の姓  A+B+D

   タイ:以前は、妻は、イの夫の姓になる夫婦同姓だったが、今は(ニ)

     ニ ④の選択的夫婦別姓に移行 

⇒ ②夫婦同姓を定めるグループ(①と同等) 同性を定める(ホ)→定まらない場合は夫の姓:憲法違反の判決

                                                      →自分の姓を選択可に(ヘ)

   ドイツ オーストリア:

     ホ 夫A+B 妻A+D、夫C+B 妻C+D (夫又は妻の姓を選択)

     ヘ 夫A+B 妻C+D (実質⑤に同じ)

⇒ ③強制的夫婦別姓グループ  結婚しても、姓は変わらない(氏不変の原則)。

                                         妻は、同性には出来ず、結婚前の別姓が強制される。

     東洋諸国(中国 韓国)、カナダ(ケベック州) イタリア スペイン 中南米スペイン語圏:

         ト 夫A+B 妻C+D

     *このグループは、妻側に結婚前の姓(別姓)を強要することで、相続や財産上の権利を認めないという、明確な狙いがあったようだ。

従って、形式上は夫婦別姓だが、男女平等、個性の尊重といった、⑤の流れとは正反対の、強制的考え方であることは、注意が必要だ。 

⇒ ④混在グループ   ①/③の変形

       フランス ベルギー:

     チ 夫は不変  A+B

       妻は、夫の姓に変えたり  A+D

                    夫の姓を付加できる    C+A+D、A+C+D  

⇒ ⑤選択的夫婦別姓グループ   夫婦それぞれ、別姓、同性を自由に選択

      欧米等(東欧 北欧 オランダ ギリシャ イギリス アメリカ オーストラリア  ニュージーランド 等): 

         夫婦別姓、夫婦同姓を選択(リ)  

       リ 夫A+B  妻C+D (夫、妻が別姓)

       夫A+B  妻A+D (夫の姓)

       夫C+B  妻C+D (妻の姓)

 

◇国連の動き

 国連では、1979年、男女平等を目的に、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(略称 「女性差別撤廃条約」)(CEDAW)が採択され、日本は、85年にこの条約を締結し、批准している。

 今年は、批准から30年の節目の年に当たるようだ。(下図は、政府内閣府HPより)

      

 この条約の中では、夫婦が望む場合には、結婚後も、夫婦がそれぞれ、結婚前の姓(氏)を称することを認める選択的夫婦別姓制度についても定められている。

 この条約下に、女性差別撤廃委員会が設置され、この委員会が、2003年と、2009年に、“日本の民法で定めている、夫婦同姓、女性の再婚禁止期間等は、差別的な規定である”、と批判し、法改正するよう求めている状況だ。

  しかし日本は、この勧告に従っておらず、14年9月の、委員会への報告では、「法改正は国民の理解を得て行う必要があり、国民意識の動向の把握と、議論が深まるような情報提供に努めている」と弁明しているようだ。(時事ドットコム:夫婦同姓、厳しい国際世論=国連、法改正を勧告 )

 

◇余談:韓国の李さん親子の話

 以前、韓国での会議に出席した折、休日を利用して、観光バスで、古都 慶州(キョンジュ)周辺を廻った事がある。バスの隣席に座った誼で、現地の親子と親しくなった。一緒に食事するなど、打ち解けるうちに、名前を聞き、名刺を貰って驚いたことがある。母親(李)と息子(金)の姓が異なっていたのだ! てっきり、このご婦人は、離婚して子供を引き取ったのだろうか、と思った。

 恐る恐る聞いて見ると、公務員の夫は、単身赴任で他所にいるようで、まともな夫婦であった。 李さんが、笑顔で、“韓国では、結婚しても夫婦の姓は変わらず、子供は父親の姓になるんですよ”と教えてくれたので、ソーだったんだ、と、ほっと一安心した次第。 この母子には、後日、記念の写真を何枚か送ってあげた事である。

 

◎考察

 ◇夫婦別姓(夫婦同姓)の特徴

  一般的には以下のように言われている(夫婦別姓問題どうすればいい…賛否メリットとデメリットが気になる - NAVER まとめ 等より)

 

*夫婦別姓のメリットーー主に女性側から見た評価

   ・男女平等で不公平感や従属感がなくなる

   ・仕事上の不利益や生活手続きの面倒さがなくなる

   ・生まれた時の姓は、自分のアイデンティティ

   ・女性の社会進出がしやすくなる

   ・改姓が無いので女性の個人情報が保護される

 

*夫婦別姓のデメリットーー主に男性側から見た評価

   ・夫婦の姓が異なることの子供への悪影響

   ・家族意識が薄れ、家族の一体感が無くなる

   ・夫婦間の絆が弱まり、不倫や離婚が増える懸念

  (・現状では、別姓のままで事実婚を選ぶと、優遇措置が受けられない→別姓が制度化されれば、解消)

 

◇アンケート調査

 2015年11月下旬、中日新聞が、「選択的夫婦別姓」に関して、アンケート調査を行ったようで、その結果が公表された。調査に応じた対象者は、10~90歳の、7940人の男女である。アンケート結果を、下図に引用している。(夫婦別姓、多数が容認 本紙アンケートに7940人回答:暮らし:中日新聞(CHUNICHI Web)

・現行の、夫婦同姓を支持するという意見は、男は30%と多く、女は、かなり少ない。

・一方、自分は、夫婦同姓が良いが、他の人が別姓を選ぶのは自由、とする意見が、男女ともに、ほぼ同じで、過半数を占めている。これは、現在の習慣が定着している中でも、相手の別姓を支持するということだろう。

・更に、自分は別姓がいいが、他の人が別姓を選ぶのは自由とする、選択的夫婦別姓を支持する意見は、男は、かなり少ないが、女性側に支持者が多いのは頷ける。男女の割合が、夫婦同姓に対する支持の割合と、ほぼ、逆になっているのが面白い。

・この調査からは、総じて、選択的夫婦別姓を支持する意見は、男は70%弱、女は85%強と、国民意識が許容・支持の方向に向いて来ている、と言えるだろうか。

 

◇考察1 個体と名前

 個々の人間を、個体として特定するのに、現代は    

    社会的情報:名前、戸籍情報、個人番号 etc. 

に加え

   科学的情報:DNA情報、写真、指紋 etc.

があるだろうか。

 改姓で、名前の一部が変わっても、個体の人間としての中身は、何ら変わらないと言える。 

 

◇考察2  姓の重さー姓が変わること

 名前の中で占める、姓(氏 苗字)の重さは、かなり大きなものがあるだろうか。特に、結婚する以前の青少年時代は、学校や友人関係等で、姓名は極めて重要だ。 名前は、個人を識別する、重要な社会的ID(Identity、Idetification)で 個性の一部といえよう。

そして、社会人になってからは、殆の場合、姓(苗字)で区別され、呼ばれることが多い。

 

 この姓が、結婚を機に変わる(女性が96%、男性が4%)ことは、社会生活上、当事者にとっては、極めて大きな変化となる。考察1で述べたように、人間として、個体としては何も変わらないのだがーー。

 学校時代の同級生等の集まりは多いが、特に、女性が多い集まりの名簿では、現姓では思い浮かばず、旧姓をみて、ああ、あの人か、となる場合が多い。実際に顔を見るなり真っ先に思い浮かぶのは、旧姓の名前である。

 社会生活や職場では、結婚すると、多くの場合女性が、改姓し新たな姓で呼ばれることとなる。本人にしてみれば、旧姓が無くなる訳で、どんな気分だろうか。これを嫌って、通称として旧姓を残すケースもあるようだ。

多寡が苗字だが、特に、周囲が慣れるまでの期間は、本人の喪失感も大きいだろうと推測される。

 我が国では、大相撲、歌舞伎、落語などの世界では、名前が変わることが慣例的に行われているが、余ほどのファンでない限り、以前の名前でないと、思い出せないケースが多い。 

     

 歴史的には、社会全体が、父系社会の流れになっていることから、女性の人権が抑圧されて来たが、男女同権の思想から、婦人参政権や、教育の機会均等などで、権利の回復が進められて来ていて、世界では、現在も進行中だ。

 姓についても、夫主体になっていて、殆どの場合、妻側が、一方的な皺寄せで、夫側に改姓をさせられてきている。夫側は、何とも思っていないことが多いだろうが、決して平等ではないのは明白だ。  

 また、上述のように、東洋では、相続権や一族意識から、夫側に都合がいいように、妻側の改姓を認めず、別姓とする流れもある。

 男も女も、結婚する、しないに関わらず、出生時の姓は一生変わらないのが、単純明快でいいだろうか。

 

◇考察3 子供のこと

 結婚すれば、子供が生まれるのは自然だが、その子の名前はどうするだろうか。

  子供は、両親の姓を、そのまま合わせて受け継ぐとすると、代を重ねるにつれて、姓が、どんどん、長くなってしまうので、これを避けるために、片方の親の姓を付けるのが合理的だろう。

日本のように夫婦同姓の場合は明確で問題はないが、夫婦別姓の場合はどうするだろうか。  世界では、父親の姓を一義的に付与するケースが多いようだが、選択制もあるだろうか。

 

  我が国では、夫婦別姓のデメリットとして、先述のように、

   ・夫婦の姓が異なることの子供への悪影響

   ・家族意識が薄れ、家族の一体感が無くなる

等が言われている。 この観点からは、夫婦も、親子も同性が望ましいと言える。

 

 でも、親子関係や夫婦関係は、言うまでもないが、愛情と連携が基本であって、家族関係の中で、姓が異なることは、本質的なことではない、とも言える。余談で触れた、韓国の金さん一家の例もある。

 

◎今後の方向

 社会全体として、男女平等、人権の尊重、といった権利意識の向上の流れがあり、名前も個性の一つとして個性を尊重する流れもある。一方、価値観の多様化が進む中で、互いに違いを許容する社会を実現することが、大きな課題となる時代だろう。

筆者の好きな言葉では、ホモジニアスから、ヘテロジニアスへの転換である。

 

 来週12/16に予定されている、最高裁判決が注目されるが、どの様な判決となるだろうか。

筆者としては、現行の夫婦同姓の強制は違憲である、との判決が出るものと想定している。 国連勧告への対応もあり、女性尊重の観点から、日本としての残された近代化を進める、重要なチャンスでもあろう。 

 若し万一、“現民法の規定は憲法に違反していない”、といった判決が出た場合は、“日本の人権意識や民主主義は、世界最低”と言うしかなく、憲法判断を行う最高裁の、存在意義が疑われるだろう。

 アンケート結果にあるように、受け入れる素地はできつつあると思われ、過渡期では、多少の混乱も予想されるものの、新制度が定着するまでには、そう長くは掛からないだろうと思われる。

 明治以降、夫婦同性を強制して来た制度を改めて、同姓、別姓を自由に選択できる社会が来る日を待ちたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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