ケイの読書日記

個人が書く書評

原田マハ 「サロメ SALOME」

2018-04-04 12:53:57 | その他
 『サロメ』は、言わずと知れたオスカー・ワイルドの代表作。私、大昔、麻美れいさんのサロメを観たような覚えがある。記憶違い…?

 そのオスカー・ワイルドと、サロメの挿絵画家ビアズリーと彼の姉メイベル、そしてワイルドの同性の恋人アルフレッド・ダグラスの、四角関係をメイべルの視点から書いてある。史実を基にしたフィクション。

 しかしまあ、オスカー・ワイルドが同性愛の罪で牢屋に入ったことは事実だし、怖いほどの才能を持ったビアズリーが25歳の若さで結核で命を落としたのも事実。彼は姉さんとも大変仲が良かったようだ。そしてワイルドの愛人・アルフレッド・ダグラスは、素晴らしい美貌の持ち主だった。

 小説内では、オスカー・ワイルドとビアズリーがただならぬ関係になるのだが、自意識過剰のこの痩せこけた結核青年に、ワイルドの食指が動くことはないだろう。
 そうそう、19世紀末のこのヴィクトリア王朝時代(つまりホームズの時代)結核が伝染病だという事を、イギリスの皆さんは知らないんだろうか? それともイギリスには日本ほど結核患者が多くないから、問題視しなかったんだろうか?
 ビアズリーの身内が、彼にピッタリ寄り添って世話をするのは、肉親の情として理解できるが、赤の他人が彼の病気に無頓着なのは不思議。喀血するというのは、結核が相当進行しているのを意味している。
 ホテルで喀血したら、オーナーから追い出されたり、病院に強制入院させられたりすると思うが、そうなっていない。そもそもサナトリウムのような施設は、イギリスにはないんだろうか?
 金持ちや貴族たちが集まるサロンに、どうどうと招待されるというのは…イギリス人が気にしないのかな? もっと危険な病気がいっぱいあるのもね。ヨーロッパには。結核に対する恐怖心がないのは、ビアズリーにとって良い事だったろう。


 文句ばっかりつけてしまったが、岩波文庫のサロメを読んでみようとか、ビアズリーの画集を探してみようとか思わせる1冊。

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