ケイの読書日記

個人が書く書評

「くそじじいと くそばばあの 日本史」大塚ひかり ポプラ新書

2023-04-08 09:26:20 | その他
 そりゃ、善人では日本史に名を残せないでしょうよ。「くそじじい」とはちょっと違うけど、第4章「凄まじきは老人の権勢欲…人はなぜ晩節を汚すのか」に登場する豊臣秀吉は、あまりにもひどくて気の毒ですらある。
 信長にせよ家康にせよ、弱小とはいえ一応戦国大名の家に生まれたが、秀吉は赤貧芋をあらうがごとしの家に生まれ、その才覚が信長の目に留まり、とんとん拍子に出世、ついには太閤にまで上り詰めた人。こういう人って日本史の上で他にいないのでは?

 運もあっただろうが、抜きんでた能力があったんだろう。しかし晩年の朝鮮出兵は狂気の沙汰としか思えない。私の高校時代の日本史の先生は、結核菌が脳に入り一種の痴呆状態になっていたと言っていた。それが本当かどうかわからないが、ただの耄碌じゃない、脳に重大な病気があったんじゃないの?
 明を征服して東アジアに君臨する大帝国をつくる、その足掛かりとしての朝鮮出兵って、誇大妄想狂ってこういう人をいうんだよ。
 なんにせよ、朝鮮出兵は大失敗。400年以上たった今も、その悪評で私たち日本人は肩身の狭い思いをしている。

 もう一つ、秀吉の晩節を汚しているのは「跡継ぎ」問題。無類の女好きで手のついた女の人はどっさりいたが、子どもは生まれなかった。甥の秀次を後継者にしたが、秀頼が生まれると難癖つけ、秀次を殺してしまう。
 しかし、この淀君が生んだ秀頼が自分の子であると、秀吉は本当に思っていたんだろうか?耄碌してるな。もちろん口に出しては言わなかっただろうけど、周囲は誰もが信じていないのに。「秀吉の子であるわけがない!!!」と私の高校時代の日本史教師は力説していた。そうだよね。若くて元気な時に子どもができないのに、よぼよぼの老人になってからできる訳がない。

 源氏物語の中でも、光源氏が自分の義理の母親と関係を持ち、生まれた子が帝位につく。この秀吉の話もそうだが、なぜ日本は中国から技術や文化や制度を輸入していたのに、宦官が仕切る後宮をマネしなかったんだろうか。不思議。
 江戸時代には大奥があるが抜け道だらけ。この矛盾点を取り上げた本がどこかにあるかな? あったら教えてください。
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