ケイの読書日記

個人が書く書評

角田光代 「水曜日の神さま」

2016-04-09 08:20:40 | 角田光代
 角田光代の、主に旅に関するエッセイをまとめた1冊。角田さんが旅行好きで、売れっ子になる前の若いころ、せっせとアジア各地をバックパッカーとして旅していた事は知っていた。
 しかし…小柄でおめめぱっちりの童顔。一般的に日本人は若く見られるが、その中でも飛びぬけて若く見られるだろう角田さんが、あまり治安の良くない地域を放浪していて、本当に大丈夫だったんだろうかと心配になってくる。
 24歳の時、タイでマラリアに罹り、生死の境をさまよったらしいが、暴漢に襲われたことは無いみたい。

 私の敬愛する岸本葉子さんも、若いころせっせとアジアを旅して旅行エッセイを書いているが、ある時、暴漢に襲われそうになって本当に怖い思いをしたので、それ以降、スパッとそういう仕事を断って、日常エッセイの方向に転換したみたい。
 そうだよね。岸本さんなどすらっとした美人だから、本当に目立ってしまい、狙われるんじゃないかと思う。

 正直なところ、私は旅行記や旅エッセイはあまり好きではない。どうしてかなぁ? 放浪もしたことないし、旅行もそれほど好きではないので、彼女たちの浮き立つような高揚感が理解できないのかも。
 やっぱり、農耕民族なんだよね。遊牧民族ではない。一つ所に落ち着きたい。定着したい。
 『置かれた場所で咲きなさい』という本があるけど、私読んでないけど、よくわかる。隣の芝生が青く見えたって、自分がいるべき場所は、茶色の地べたのここなんだと思う。


 さて、旅気分満載のこのエッセイ集だが、旅に関係していないエッセイも少しだが載っている。『挙動不審になりがちな』がそう。これが面白い。小説家と書店の攻防というか、関係性というか…。
 やっぱり職業として小説を書いている以上、書店に自分の本がどのように並べられているのか、気になるのは当たり前。角田さんは、もともと純文学の作家としてデビューしたから、最初の頃は大きな書店でない限り、置いてもらえなかった。
 知人が「あなたの本は○○書店に置いてなかった」なんて事をわざわざ連絡してくるので、心を閉ざし何か月も書店に行かなかったこともあったらしい。
 今は売れっ子だから、自分の本を書店で多くの人が買っていくのを知っている。
 そうなると今度は、書店での並べ方で一喜一憂するらしい。自分の本が「平積み」されていればホクホクし、発売されたばかりなのに「棚差し」だったのでしょんぼりする、といったような。

 これは、岸本葉子さんもエッセイに書いていた。彼女は書店員さんに、もっと売れるような場所に置いてほしいと直訴したこともあったらしい。こういう所は、岸本さんはしっかりしている。自分は文筆業で食べているんだ!という心構えがある!

 いやぁ、文筆業も大変ですなぁ…。

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