ケイの読書日記

個人が書く書評

三津田信三 「厭魅の如き憑くもの」(まじもののごときつくもの)

2015-10-05 13:00:21 | Weblog
 憑き物信仰を取材しようと、神々櫛村(かがぐしむら)にやってきた刀城言耶は、そこでとんでもない連続殺人事件に巻き込まれる。
 憑き物筋と、それを忌み嫌う筋の二つの旧家。神隠しで子どもが消え、山神様やカカシ様という神々や、ナガボウズ、厭魅(まじもの)といった化け物たちが徘徊する村。村人は病気になると、医者ではなく巫女に憑き物を落としてもらうような、因習に縛られた村。
 その村で、憑き物筋の旧家の人々が、次々と殺される。村の神・カカシ様の格好をさせられ…。


 険しい山々に囲まれた一僻村でおこる連続殺人は、十分、読みごたえあるが、やっぱり時代設定が気になる。
 作中に、戦争が終わって、しばらくしてから12年たったと書いてあったので、昭和32年~33年ごろの話だろうが、いくらなんでも、ここまで閉鎖的な村ってムリじゃない?
 だいたいテレビが一般家庭に出回るのは、昭和30年ごろからだと思う。(もちろん、お店などでは、それ以前から置いてあったが)田舎でも、ちょっとお金がある家だと、昭和30年あたりには、もう購入していた。
 そして徐々に増え始め、東京オリンピックがあった昭和39年(1964)には、ほとんどの家庭にテレビが普及した。
 その情報量は素晴らしく、小さな村でも、有力者が情報を独り占めすることは、出来なくなった。

 また、集団就職で、村の若者がどんどん都会に出て仕事についたので、地主と小作人の上下関係も薄れていった。
 こういった事が、日本全国、どこの僻地でもおこっていたので、ここに出てくる神々櫛村のように、巫女の婆さんが村を牛耳るのは、昭和32年~33年ごろには、出来なくなっていたと思う。


 どうして、設定年代をもっと昔にしないのかなぁ?思い切って昭和ヒトケタの時代とか。それだと、時代考証が難しくなるけど、この禍々しい雰囲気には、ピタッと来ると思うよ。
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2 コメント

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Unknown (たか@ヒゲ眼鏡)
2015-10-06 13:56:27
TBさせて頂きました。
ボクは本書が、一番初めに読んだ刀城シリーズでした。
なるほど。時代設定にやや無理がありますかね? 金田一シリーズで言うと『悪魔の手毬唄』が確か昭和34年でした。これと時代設定はほぼ同時期かな?
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たかさんへ (kei)
2015-10-07 12:40:09
 TBありがとうございました。こちらからも、させていただきました。
 代々、本家と分家で、婚姻を結んでいたら、そりゃ、子孫に不具合も出てくるでしょう。この小説みたいに。
 でも、そういう事って、戦前の日本では、一般的だったんだよね。
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