ケイの読書日記

個人が書く書評

クリスティ作「カーテン」を読んで

2005-05-11 11:43:26 | Weblog
 この作品も以前呼んだことがある。しかし作中ポアロが死ぬという大事件があったのに、私はサッパリ覚えていない。なぜ以前呼んだことがあると断言できるかといえば、ジョン・フランクリンという科学者が妻バーバラが死んだ後いった言葉『結婚して、およそ1年後には恋から醒めてしまったんですよ。バーバラの方はもっと早く醒めたんじゃないでしょうか』を、ハッキリ覚えているからだ。このセリフをクリスティの小説の中で読んだ覚えがあるが、どれだったろう、と探していたのだ。半分あきらめていた探し物がひょっこり出てきたみたいで、とても嬉しい。

 この作品の中の殺人者のように、自分で手を下すことなく人をそそのかして、殺人を犯させる、といった事件は、小説の中だけで、実際にはありそうもないと思いがちだが、現実にあるから驚く。
 例えば、九州で起きた子ども2人を含む一家6人を殺してバラバラにして海に捨てた事件だが、これも被害者一家の身内の女とその愛人が、家族6人を精神的に追い込み、殺しあうようにしむけたのだった。
 また、元看護婦が昔の同僚だった看護婦2人を言葉たくみに騙し、その夫を殺させ、保険金を自分でかすめとる、といった事件もあった。
 どちらの事件とも首謀者は、死刑を求刑されている。
 しかし、そんなに簡単に人って操れるのかなあ。そんなに簡単に人を思うままに動かすことができるのなら、営業の仕事をやればトップセールスマンになれるだろうに。

 この作品は1975年に発表されたが、実際に執筆されたのは1940年代の前半らしい。つまり第二次世界大戦中だった。(マープルが主人公の『スリーピングマーダー』も同じ時期に書かれ1976年に発表されている。)しかし戦時下を思わせるような描写はほとんど無い。いつ発表するか、本人もはっきり考えていなかったのかもしれない。
 この作品には「ポアロ最後の事件」という副題がついている。実際ポアロはすっかり老いぼれて立つことも歩くことさえままならない。
 しかし、灰色の脳細胞はまだまだしっかり働き、その口の回ること回ること。
 ポアロは食べ物にうるさいので下宿屋の食事を気に入ることはめったにないのだが、この小説の舞台の高級下宿屋の部屋や家具、食事をこきおろしまくる。相棒のヘイスティングスの顔を久しぶりに見たからだろう、不平を並べ続ける。ああ、親愛なるヘイスティングス。彼が登場するとぐっとコメディテイストになります。
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