ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖 「幻坂」(まぼろしざか)  メディアファクトリー

2019-02-14 10:12:56 | 有栖川有栖
 子供の頃、大阪の子と文通していて(文通!!!時代を感じるね)大阪には2回ほど行った事がある。駅からすぐ、その子の家に行って、その後、吉本新喜劇や宝塚を観に連れて行ってもらったなぁ。
 そうそう、大阪駅に大きな金色のひょうたんが飾ってあった。金のひょうたんって、秀吉の印なんだね。秀吉は大阪城をつくったから。その時は知らなくて、なんでこんな瓢箪がここにある?!って思ってたけど。

 近くの市場にも一緒に行って、お店のおじさんに「はい、そうです」なんて緊張して標準語で受け答えしていたら、そのおじさんに「あんた、東京の子?」って言われたことがあったなぁ。45年位前だけど。違いますよ。私はバリバリの名古屋弁の名古屋の子です。
 大阪の人って、大阪がすごく好き、という雰囲気があった。

 有栖川有栖も(大学は京都だけど)大阪で生まれ育った。奥さんもそうなんだろう。この小説も「大阪を愛する義父母に」献じられている。
 この本の舞台となった七つの坂(真言坂、源聖寺坂、口縄坂、愛染坂、清水坂、天神坂、逢坂)は、天王寺七坂と呼ばれているらしい。ここら辺は、古くからの神社仏閣が集まっていて、最も古い大阪の雰囲気を残しているようだ。
 本の巻末に簡単な地図があって、こういうのを見ると、ああ、行ってみたいなぁ、私もこの坂を散歩してみたい、としみじみ思う。

 そういえば、同じ筆者の『鍵のかかった男』でも、作品の舞台となった大阪・中之島あたりの地図が載っていて、著しく旅ごころを刺激されたなぁ。ああ、大阪に行って『鍵のかかった男』の舞台となったこの地を歩いてみたい。火村やアリスにどこかですれ違えるかも…と期待しちゃう。
 有栖川有栖は、こういった紀行文っぽいものも得意なんだろうか?


 この『幻坂』に、「枯野」という短編が収められている。これは天王寺七坂の事ではなく、松尾芭蕉の最晩年について書かれている。芭蕉って、大阪で亡くなったんだね。知らなかった。
 俳句で、わび・さびを追求した人だけど、実生活では高尚な事ばかりを言っておれず、弟子たちの仲たがいを仲裁したりして、気苦労が多かったらしい。なんといっても、芸事のお師匠さん。お金がある有力な弟子には、リップサービスしなければ生活が成り立たない。
 ある程度、世間ずれしなければ、やってられないだろう。

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