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ケイの読書日記

個人が書く書評

田中慎弥「第三紀層の魚」集英社

2025-03-26 11:07:44 | その他
 先回の「共喰い」では、やりたい盛りの男子高校生が主人公でゲンナリしたが、今回の「第三紀層の魚」では、小学校4年生の男の子・信道が主人公。
 釣りが大好きで、ヒマがあれば友達を誘って近所の海に行っては釣りをしている。友人たちが次々と塾に行くようになり、子ども心にいろいろ考えることが多くなっている。父親は早くに病死し母子家庭だが、近くに父親の実家があり、よくそこに預けられていた。今でも遊びに行く。

 この信道のお母さんがしっかりした人なのだ。お母さんはうどん屋で懸命に働いている。その働きが会社に認められ、東京に初出店する店の店長に抜擢される。そして信道を連れて、東京で働いてみようという気になっている。
 信道は、今でも学校の勉強に遅れ気味なのに、東京の学校でついていけるか、東京でも友人ができるか、心配される。でも信道なら、釣りがきっかけで友人の輪が広がっていくんじゃないかな? そんな気がする。

 私も私の周りも、誰も釣りをやらないので、イマイチその面白さが分からない。それに釣り道具の名称もはっきり理解できないので、ぼんやり想像するだけ。でも一番読むのに困るのは、魚の名前。魚って出世魚とかいって、成長に伴い名前が変わるでしょ?それに地域によって呼び方が違うから困るんだよね。
 作中にチヌ(信道の曽祖父はチンと呼ぶ)信道にとって思い入れの強い魚が出てくるが、クロダイの小さいのなんだね。小さいクロダイと記述してほしいね。ホント。

 この信道の曽祖父はかなり高齢で死にかけている。多分、大正の初めの生まれだと思う。3回赤紙が来て3回召集された。そのせいか勲七等の勲章をもらっている。
 この爺さん、国粋主義者という訳でもないだろうに、日の丸が大好きで、祝祭日になると必ず日の丸を掲揚していた。ああ、日の丸。今の若い人は意味が分からないだろうね。昔は祝祭日になると、玄関のそばに日の丸を掲げたのよ。私も覚えているなぁ。昭和40年ごろまでかなぁ。今、見ないね。
 とにかく、その日の丸を家人が失くしてしまったと大騒ぎ。でも爺さんの葬式の時、棺桶の中にその日の丸を広げて入れた。爺さん、さぞ本望だったろうね。
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