ケイの読書日記

個人が書く書評

森博嗣「封印再度」

2014-11-24 13:47:16 | Weblog
 『WHO INSIDE』と小さいサブタイトルが付いているので、どうして?と不思議だったが、これ、語呂合わせになっているんだ。「封印再度」→「ふういんさいど」→「WHO INSIDE」
こういった言葉遊びが、この本のあちこちにある。

 
 50年前。仏画師の香山風采は息子に、血まみれになった家宝「天地の瓢」と「無我の匣」を遺して、密室の中で謎の死を遂げた。風采の死は自殺か他殺が事故死か、現在でも誰にも解かれていない。そして今度は、息子の林水が死体となって発見された。父親の時と同様、血が付いた「天地の瓢」と「無我の匣」を遺して…。

 密室のトリックや凶器消失のトリックなど、素晴らしい! へぇーーー!そんな物質がこの世にあるの?って心底、驚き感心する。
 ただ、この小説は、縦糸にミステリ、横糸にラブコメディが織り込まれていて、ミステリ部分も素晴らしいが、ラブコメディの要素が強すぎて、どうもそっちに引っ張られてしまう印象がある。

 なにしろ、萌絵さんの犀川先生に対するアプローチがすごい!! ちょっとちょっと、萌絵さん!男ってのは、あんまり追いかけると、かえって及び腰になるもんよ、とアドバイスしたいほど。
 それに、ミステリ部分のおどろおどろさが少し足りないような…。横溝正史を彷彿させるような時代がかった魅力的な謎だけど(森先生には失礼だと思うが)三津田信三のような伝奇・怪奇譚を得意とする作家の方が、うんと不気味な雰囲気がでるだろうね。


PS. 犀川&萌絵が、車で外出先から帰る時、萌絵さんがお腹がすいたといって、ヒルトンホテルの天婦羅屋さんに入店する場面がある。一番安いのでも12000円。5ケタだよ4ケタではない。二人で美味しく食事をするが、犀川先生が「料理は2000円くらいから、コストパフォーマンスが下がる」という話をした。私も激しく同意します。
 萌絵さん、国立大学の助教授の給料など、たかがしれてる。こういった人は収入のほとんどを本につぎ込むんじゃない? こういう時は24時間営業の牛丼屋へ行ってください。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする