ケイの読書日記

個人が書く書評

倉知淳「過ぎ行く風はみどり色」

2008-03-14 10:08:38 | Weblog
 法月綸太郎が「天然カー」と評したという話だから、とても期待して読んだが、うーん、残念ながら期待はずれ。
 もっとも、本家本元のカーにしても「おい、そんなんありかよ」というトリックが多いので、そういった意味ではカーらしいと言えなくもない。

 世田谷の高級住宅の離れで、引退した金持ち老人が殺された。犯行時刻の少し前から雨が降って、離れの周りの足跡はハッキリ残るはずだが、離れに近づいた形跡は全くなし。
 渡り廊下には複数の目撃者がいて、誰も通っていないと証言。つまり完全な密室。

 この第一の殺人に続いて、第二、第三の殺人が起こる。しかし…雪に閉ざされた山荘というならともかく、警察が介入しているのになんで第1の殺人が解決されないのか、の方が不思議。謎でもなんでもない。

 それに比べると、第二、第三の殺人の方がよっぽどトリックらしいトリック。


 先回の「星降り山荘の殺人」では、UFOの知識をめいっぱい披露していた作者は、今回この作品では超常現象のウンチクを垂れまくり。
 こちらの方面に疎い私には、なかなか興味深かった。

 人間が感じたり考えたりする、あらゆる感情や思考は、ごく弱い電気信号の流れだ、という説は私も聞いた事がある。
 この電気信号は、個人の脳内を流れるだけでなく、微弱ながら外部にも漏れ出ていて、他の人間の脳に影響をあたえるのではないか。
 例えば、ある人物がある場所で『恨めしい』と強く思う、その人が立ち去った後でも『恨めしい』という感情の信号がそのあたりを漂う、そしてそこを通った人の脳がその信号を読み取って、『ぞっとした』『何か恐ろしいものを見た』と感じ、幽霊を見たと主張する。

 仮説だろうけど、なるほどねと思わせる。

 名探偵役の猫丸先輩は、なかなかキュートなキャラだけど、他のメンバーがちょっと魅力不足。
 特に恋愛心理描写はいただけないなぁ。ちょっとキモチ悪い。もっとあっさり出来ないだろうか?
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする