大好き!本・花・旅

日ごろ読んだ本や花、旅について綴ります。

世界一周恐怖航海記 車谷長吉

2007-01-05 17:06:32 | Weblog
 60歳にして初の日本脱出した作家の体験記である。楽を追求する人生は苦手で、「生きることは、死への旅である。人間は、死への過客なり。」と人生の早期から、生の無常を悟った作家は、48歳の奥様の「世界一周に連れてって」という言葉に動かされ、ついに重い腰を上げ、世界一周の船旅に横浜港から出発する。
 船酔いに悩まされ、楽を貪欲に追求する乗船メンバ-の喧騒に嫌気をさしながらの航海の日々が描かれている。
 乗船しながら、彼は環暦を迎えた自分の半生を描いてくれる。次第に船上の生活にも慣れ、世界各地での貴重な人々や経験、風景への出会いを深めていく過程がまるで自分もあこがれの世界一周をしているようでとても楽しかった。アフリカの喜望峰、アフリカの砂漠、そして、パタゴニアの大氷河に出会ったときにはついに、「来てよかった」と著者は叫んでしまう。モアイ像、タヒチ、フィジ-、と夢のような3ヶ月の航海だった。でも船上の食事は意外と質素だと初めてわかった。
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