本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

桜餅

2013-01-25 09:29:13 | Weblog
 永井荷風の日記に「砂糖少なき世には滅多に得がたき珍羞といふべし」とあるそうだ。
 昭和16年(1941年)9月の日記だから日中戦争さ中で、また太平洋戦争直前である。物不足の折、砂糖は貴重だったのだろう。

 それはともかく「珍羞」とは知らない語彙だ。調べてみると「珍しい食べ物」の意とか。漢和辞典の「羞」には①すすめる、②おいしい食べ物、③はじる、と三つの字義が載っている。普段知り得ているのは、恥ずかしいという意味の羞恥ぐらいだ。
「羞」の部首が羊偏だから、ヒツジは食い物の供物になる。なるほど食べ物に縁がある。

 荷風が「珍羞」としたものは、長命寺の桜餅のことである。
 昨日、寺社巡りに触れたが、その機会に小生も長命寺門前で名物の桜餅を喰ったものだ。砂糖は有り余る時代だが、向島に行かなければこの桜餅は得がたきといふべしだ。