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保守系国会議員は情報保全隊の監視対象外?

2011-01-30 00:22:25 | 現代日本政治
 25日の朝日新聞夕刊で次のベタ記事を読んだ。

「防衛相、任務外の指示」

 陸上自衛官OBで自民党の佐藤正久参院議員が25日、記者会見し、自衛隊からの秘密漏出を防ぐため情報を収集する「自衛隊情報保全隊」が、佐藤氏を監視対象にしている疑いがあると述べた。同氏は「実際に私の会合に保全隊が来ている」と指摘。北沢俊美防衛相が本来の任務と違う調査を保全隊員に指示していたら問題だ、と主張した。

 これに対し、北沢防衛相は同日の記者会見で「特定の人を対象に情報収集を指示した事実は全くない」と否定した。


 佐藤正久議員のホームページを見ると、どうも、産経新聞が24日に1面トップで報道し問題視したらしい。
 MSN産経ニュースを見ると、次の記事が掲載されていた。

国会議員講演会に防諜部隊投入、自衛隊員監視、防衛相直轄部隊が「不当調査」
2011.1.24 01:30

 北沢俊美防衛相直轄の防諜部隊「自衛隊情報保全隊」が、陸上自衛隊OBの佐藤正久自民党参院議員や田母神俊雄元航空幕僚長の講演に潜入し、現職自衛官の参加状況を監視していることが23日、分かった。複数の防衛省・自衛隊幹部が明らかにした。本来任務とは乖離(かいり)した不当調査の疑いがあり、憲法で保障された思想・信条の自由を侵害する監視活動との指摘も出ている。

 自民党は24日召集の通常国会で、自衛隊行事での民間人による政権批判を封じる昨年11月の「事務次官通達」問題と合わせ、保全隊の監視活動についても政府を追及する方針。

 保全隊は佐藤、田母神両氏の講演のほか、田母神氏が会長を務める保守系民間団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」の集会にも隊員を派遣。また、陸上自衛隊唯一の特殊部隊「特殊作戦群」の初代群長を務めた陸自OBの会合なども監視対象にしている。

 監視目的は現職自衛官の参加の有無を確認し、参加している場合は氏名も特定する。佐藤、田母神両氏の発言内容もチェックし、報告書の形でまとめ、提出させている。

 陸自朝霞駐屯地(東京都など)に本部を置く東部情報保全隊の隊員が投入されるケースが多いとされる。保全隊は陸海空3自衛隊の統合部隊で、監視実態が発覚しないよう、空自隊員の参加が想定される田母神氏の講演には隊員同士の面識がない陸自の保全隊員を派遣することもあるという。

 保全隊は外国情報機関によるスパイ活動などから自衛隊の保有情報を防護するのが主任務。自民党政権時代には「日本赤軍」や「オウム真理教」のほか、「暴力革命の方針」(警察庁公表文書)を掲げた共産党が自衛隊を侵食するのを防ぐため、それらの監視活動も行っていた。ただ、保守系の議員や自衛隊OBを監視対象にしたことはない。

 防衛相経験者の石破茂自民党政調会長は「保全隊は自衛隊の安全を守る組織で在任中は恣(し)意(い)的に運用しないよう徹底させていた。何を目的にした監視活動か追及する」と話している。

 監視対象とされていた佐藤氏は「自衛隊への破壊活動とそれを目的とした浸透活動をはかる団体の情報収集は必要だが、対象を際限なく拡大するのは問題だ。自衛隊員は国家に忠誠を尽くすことは求められるが、政党や政治家の私兵ではない」と指摘している。

     ◇

 自衛隊情報保全隊 平成21年8月、陸海空3自衛隊の情報保全隊を統合し、大臣直轄部隊として新編。ネット上での情報流出やイージス艦情報漏(ろう)洩(えい)事件を受け、機密保全強化と自衛隊へのスパイ活動に関する情報収集の効率化のための措置。実動部隊は中央情報保全隊と北部、東北、東部、中部、西部の地域ごとの保全隊で構成する。駐屯地や基地ごとに派遣隊も置き、隊員は約1千人。


 情報保全隊については、数年前に、市民運動を監視対象にしているとして、共産党や朝日新聞が問題にしたことがあったなあ。
 私もこのブログで記事にしたことがある。

   朝日社説「情報保全隊―自衛隊は国民を監視するのか」
   共産党の手法の一例――情報保全隊問題の会見要旨を読んで(1)
   共産党の手法の一例――情報保全隊問題の会見要旨を読んで(2)

 この当時は陸海空の各自衛隊に情報保全隊があったが、産経によると、2009年の8月に統合されたという。知らなかった。

 佐藤も産経も、本来の任務とは異なる調査の疑いがあると指摘しているが、情報保全隊の本来の任務とはいったい何だろうか。

 現在の自衛隊情報保全隊の任務は、2009年7月に浜田靖一防衛相名で発出された「自衛隊情報保全隊に関する訓令」に定められている。
 
(情報保全隊の任務)
第3条 情報保全隊は、部隊等の運用に係る情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うことのほか、統合幕僚監部(自衛隊指揮通信システム隊を含む。第12条において同じ。)、陸上自衛隊(自衛隊体育学校、自衛隊中央病院、陸上幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院及び自衛隊地方協力本部を含む。第12条において同じ。)、海上自衛隊(海上幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院を含む。第13条において同じ。)及び航空自衛隊(航空幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院を含む。第14条において同じ。)における情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うこと並びに施設等機関等における情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うことを任務とする。


 「情報保全業務」とは何か。
 同訓令2条に次のようにある。

(用語の意義)
第2条この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 情報保全業務 情報保全業務の実施に関する訓令(平成15年防衛庁訓令第7号)第2条第1号に規定する情報保全業務をいう。


 その「情報保全業務の実施に関する訓令」第2条第1号にはこうある。

(用語の意義)
第2条この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 情報保全業務 秘密保全、隊員保全、組織・行動等の保全及び施設・装備品等の保全並びにこれらに関連する業務をいう。
 

 「秘密保全、隊員保全、組織・行動等の保全及び施設・装備品等の保全並びにこれらに関連する業務」のために「必要な資料及び情報の収集整理及び配布」。
 これが、自衛隊情報保全隊の「本来の任務」である。
 この点は、上記の1番目の拙記事で引用した、当時の「陸上自衛隊情報保全隊に関する訓令」のものと全く変わっていない。

 産経は、

 保全隊は外国情報機関によるスパイ活動などから自衛隊の保有情報を防護するのが主任務。自民党政権時代には「日本赤軍」や「オウム真理教」のほか、「暴力革命の方針」(警察庁公表文書)を掲げた共産党が自衛隊を侵食するのを防ぐため、それらの監視活動も行っていた。ただ、保守系の議員や自衛隊OBを監視対象にしたことはない。


と、情報保全隊があたかも外国情報機関や日本赤軍、オウム真理教のようなテロ組織、それに準じる共産党などからの防諜のみを目的としているかのように述べているが、そんなことはない。
 公安調査庁じゃあるまいし。

 そして、「保守系の議員や自衛隊OBを監視対象にしたことはない」というのが、はなから彼らを監視対象とはしないことにしていたという意味なら、むしろそちらの方が恣意的な運用と言えるのではないか。
 何故なら、仮に外国情報機関やテロ組織からの防諜を主目的としていたとしても、保守系の議員や自衛隊OBを通じてでも、それは十分有り得ることであろうから。

(関連記事「自衛隊員の政治的自由は制限されている」)


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