今週も、IMM取組残高分析活字版をお送りします。
今週番組で使用するデータは、3月04日のIMM市場が終了した時点のものです。
今回、データの対象になった期間のドル円相場は、ロシアの軍事介入が議会承認を受けたとの報道が前週末にあり、ウクライナ情勢が一気に緊迫し、明けの月曜日は円買いが進みました。
しかし、即時介入は無しとの声明で、リスク懸念が後退しつつあるところで締切となっています。ドル円は、どうにか102円台を回復した形ですが、IMMの残高はどのような変化あったでしょうか。
では早速、投機筋のポジションを表すとされる、非実需のデータを見て参ります。
先ずは、ドル円の相場推移と対円におけるドルのネットポジション変化のグラフからです。
<ドル円の相場推移と対円におけるドルのネットポジション変化>
相場は一時101円台前半まで下落したものの、データの締切時点では102円台を回復したことで、相場は概ね横ばいとなりました。
しかし、ネット残高は前回に頭一つ出たドル買いは概ね帳消しとなり、再び、79709コントラクトのドル買い越しに減少しました。
冒頭のチャートを見ても、相場は前回の締切水準まで戻していることが判りますが、ネットのドル買いは回復し切れずに終わっており、今回のデータ締切時点では、円安に対して楽観ムードは影を潜めた格好です。詳細は後程、ブレークダウンで見てみましょう。
<全通貨別ネット残高推移>
次に、各通貨のネット残高のグラフです。
今週も、前週から目立った動きは特になく、ユーロの買い越しがやや目立つ程度となっています。前回は全体的に各通貨が買い戻される傾向がありましたが、今回はその流れを伸ばす通貨と、売り越しに戻る通貨に分かれた印象です。
ブルベアを見てみますと…、
円は、結局買い越し優勢で終わった模様で、しばらく買い越しの壁だった15%を上回っています。つまり、相場は円高から戻してはいたものの、ウクライナ情勢を懸念した円買いムードは払しょくされていなかったようです。
ユーロは、残高グラフが示す通り、ブルが前回より2ポイント優勢でした。ただ、売り越しも増えており、ユーロの上昇には懐疑的な見方もあったことが示されています。
一方ポンドは、ブルが1ポイント増えたものの、ブル/ベア共に残高を減らしており、ポンド買いで一時盛り上がった相場も、やや冷静に戻りつつあったようです。
豪ドルは、ブルとベアが共に増えました。増加率は同程度でブルベア比率は変化なしでしたが、ベアも増えていたところを見ると、戻り売りを試す流れも発生していたことが示唆されています。
<前回データと比較した各通貨のネット残高変化>
続けて、前週と比較した各通貨のネット残高の変化を、3週間追跡したグラフです。
今回も、突出した動きを見せた通貨はありませんでした。中では、ユーロの買い越しは3週連続で小ジッカリしていたことが判り、円は方向転換を示唆する流れにあったようです。
ブレークダウンでは…、
円の買い越しが優勢だったことが良く判り、円のロングが4桁転落目前だった1月14日のデータ以降、2万コントラクトを回復した今回の買い越し額は、最大となっています。
ユーロは買い越しが順調に伸びる中、売り越しは殆ど動きが無く、ユーロ安を諦めた様子は殆ど感知できませんでした。
またポンドは、市場規模を徐々に縮小させており、下落見通しは諦めつつも、一旦は上値に限界感が出はじめていたことが良く判ります。
最後に豪ドルは、ロング・ショート共に増える中、売り越しがやや優勢でした。チャート的には、短期的なトリプルトップのネック水準が既に割れていた地合いがあり、それが一時的なベアの増加に影響したとも推測できます。
<総括と考察>
さて今回のデータ以降、各相場はドル売り円売りが急伸しました。
ウクライナ情勢の武力衝突が当面回避されるとの思惑や、ECBが金融政策の据え置きを決定したこと、或いは底堅いアメリカ株式市場などを受けて、リスクオフの動きが再開したのが、その要因との見方があります。
今となっては、恐らくリスク回避的なポジションは相当圧縮されていると思いますが、先週末のアメリカ雇用統計は改善となったものの、ドル金利の先高観により株価の伸びは限定的となる一方、一部にはドル買いが優勢な動きも出るなど、一概に楽観的な資金の動きとは言えない状況も生じています。
前回のウクライナ緊張による各通貨の下落は、円高が要因だったと言えそうですが、チャイナリスクが新たに顕在化しつつある中、現在はドルが買われやすい地合いになったことは注意すべきで、円高にならないまま、他の通貨がドル買いで下落する可能性を秘めています。
今週は人民元や中国株の動きには一層注目したいと思います。
以上、IMMの取組残高分析の内容は動画でも視聴できます。
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