私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

ムラヴィンスキーに献呈された「サルマノフ/交響曲第4番」

2011-02-11 13:17:33 | 交響曲

 ロシアの作曲家の中にはまだまだ広く知られざる人々も多い。今日取り上げるワディム・サルマノフ(Vadim Salmanov/1912~1978)もそんなひとりではないだろうか。彼は旧レニングラード(現、サンクト・ペテルブルグ)出身で地質学も専攻しその道で活働していたそうだがその後音楽家に本格的転向した人である。作品は室内楽から交響曲の分野まで多彩であるが特に4つの交響曲作品はショスタコヴィチ等の影響がみられ興味をそそる。これら4つの交響曲は全て巨匠エフゲニー・ムラヴィンスキー、レニングラード・フィルにより世界初演、レコーディングされ今回スポットを当てる最後の「第4番ロ短調」はムラヴィンスキーに献呈されている。
 因みにこの「第4番」は1977年に作曲され翌78年1月28日にムラヴィンスキー/レニングラード・フィルで世界初演されこの模様がステレオでライヴ録音された。作品は全3楽章構成をとり第2楽章はイタリア語で「Marciale」(行進曲風に)と表記され金管群が行進曲風のリズムを刻むところなどまさに「ショスタコヴィチ」の交響曲を連想してしまう。写真の1988年にCDとしてリリースされた「ムラヴィンスキーの遺産」と題された「メロディア英国盤ーMCD225」はこのレニングラード音楽院大ホールにおけるコンサート・ライヴが収録されている。ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルの息の合った巧さが光る1枚だ。カップリングされた「ベートーヴェン交響曲第4番」も1973年4月29日の同音楽院大ホールでのステレオ・ライヴ録音である。余談だがこの約1ヶ月後に彼は「レニングラード・フィル」と初来日を果たし同曲をプログラムに取り上げている。

クレンペラー、「1960年ウィーン芸術週間 ー べートーヴェン・ツィクルス・ライヴ盤」

2011-02-10 17:08:13 | 歴史的コンサート・ライヴ

 先頃、巨匠オットー・クレンペラー(Otto Klemperer/1895~1973)が1960年の「ウィーン芸術週間」においての手兵「フィルハーモニア管弦楽団」との「ベートーヴェン交響曲ツィクルス」ライヴ盤が今回復活をプロデュースしたフルトヴェングラー等の歴史的ライヴを多数リリースしている「アーチペル(Archipel)・レーベル」から「アンドロメダ(Andromeda)」レーベルに移して再リリースされた。筆者も早速買い求め全曲を聴いてみた。感想は評判どおり総じて満足がいくものであった。音源は当時の放送音源のたぐいが推測されるが1960年録音にしてモノラルなのがちょっと残念だがジャケットに「24bit/96khz」ニュー・リマスターと記されており一段とクリアーなサウンドで聴けることはありがたい。とかく歴史的ライヴ録音の中には時に貧弱な音質のものも多々あるがこの録音は上位ランクに属すると思う。また「ライヴ録音」を聴く楽しみは演奏家の芸術に浸ることは然ることながら他方にその時代の会場の聴衆の雰囲気等をうかがうことも「ライヴ録音ファン」にとっては興味深いことのひとつではないかと思う。因みにこの録音には演奏終了後の聴衆の拍手も収録されている。
 
 

アンドレ・ジョリヴェの「ヴァイオリン協奏曲」

2011-02-09 01:51:54 | 協奏曲

 フランスの前衛的作曲家アンドレ・ジョリヴェ(André Jolivet/1905~1974)の「ヴァイオリン協奏曲」(1972)の世界初演は記録によるとルーベン・ヨルダノフのヴァイオリン、ゲオルグ・ショルティ指揮パリ管弦楽団の演奏で1973年2月27日(パリ)のことであった。因みにルーベン・ヨルダノフは当時のパリ管のコンサート・マスターである。その後31年の歳月を経た2004年にドイツ初演を行ったのが今日紹介するイザベル・ファウストのヴァイオリン、マルコ・レトニア指揮、ミュンヘン交響楽団による演奏であった。筆者は彼女の生の演奏を2008年11月2日、「新日本フィルハーモニー定期公演」(すみだトリフォニー・ホール)で聴いたのが最初である。この時彼女はベルクの「ヴァイオリン協奏曲」をクリスティアン・アルミンクの指揮で披露した。この演奏に筆者も感動し当日会場で求めたのが写真のCDであった。(harmonia mundi/HMC901925)
収録作品はこのジョリヴェの「ヴァイオリン協奏曲」とショーソンの「詩曲」である。指揮は彼女とドイツ初演を行ったマルコ・レトニア、管弦楽は異なりベルリン・ドイツ交響楽団によるもので2005年12月にベルリンのテルデック・スタジオでの録音である。ジョリヴェのこのスケール感と超絶的技巧を要するこの協奏曲を彼女はエネルギッシュに見事に仕上げている。
 

イェジー・セムコフ、セントルイス響音楽監督時代の録音から

2011-02-07 19:25:38 | 交響曲

 今日はイェジー・セムコフ(Jerzy Semkow/1928~ )がセントルイス交響楽団の音楽監督時代にレコーディングした「シューマンの交響曲全集録音」を取り上げてみたいと思う。セムコフはポーランド出身の指揮者で古くはエフゲニー・ムラヴィンスキーの助手も務めていた。その後彼は祖国ポーランド国立歌劇場等の音楽監督を経てアメリカに渡り1975年より79年までこのセントルイス響の音楽監督を務めた人である。現在はフランスの市民権を得てパリに居を構え今も現役で活躍している。彼は古典派の音楽から現代音楽までこなす多彩なレパートリーの持ち主だが特に「ロマン派」の音楽は得意にしておりこのシューマンの録音も素晴らしい。録音は1976年に行われておりオリジナルLPは1977年に「米VOX」からリリースされていた。因みに写真(上・下)はその後1986年にデジタル・リマスターされたCD盤である。(MWCD7116-「第1番・第2番」/MWCD7117ー「第3番・第4番」)
 演奏は全曲を通じて派手さはないがオーケストラを巧みにバランスよくドライブしていくところに魅力を感じてしまう。またセントルイス響の管楽器群の響きのたおやかさも心地良い。また余談ながらこのCD、発売当時としては珍しい「紙ジャケ仕様」でこれも大変魅力的であった。尚、現在では「NAXOS」レーベルで入手可能のようである。

「ドン・コサック合唱団」の懐かしいEPレコード

2011-02-06 11:35:18 | 声楽曲

 今日は17cmEP/LPレコード・コレクションから懐かしい「ドン・コサック合唱団」の写真の1枚を取り上げてみたい。このレコードは今から約半世紀も前に「日本コロムビア」から発売されたモノラル45回転EP盤(EM-102)であるが筆者愛聴の1枚である。「ドン・コサック合唱団」は今から約1世紀近く前に「ドン河」流域を拠点とする「コザック兵士」の優秀な合唱隊で指揮者セルゲイ・ジャーロフ(Sergei Jaroff)のもとで結成されて合唱団でその後世界各地で大好評を得てその活働の拠点をアメリカに移した。
 このレコードには彼らの「十八番」ー「ロシア民謡」を中心に「ヴォルガの舟歌」、「ステンカ・ラージン」など全4曲が収められている。録音の古さこそ感じさせるが「ステンカ・ラージン」の底からこみ上げてくる低音の歌いこみの凄みなどこの合唱団の底力をうかがい知ることができる貴重な1枚である。後にカラヤンがベルリン・フィルとのチャイコフスキー/大序曲「1812年」のレコーディングの際(1966年)この「ドン・コサック合唱団」の声楽を加えた意も充分に頷ける。

ワイセンベルク唯一のモーツアルト「ピアノ協奏曲」録音(?)

2011-02-04 16:31:37 | 協奏曲

 今日取り上げる写真のCDはアレクシス・ワイセンベルクの現在のところ唯一のモーツアルト/ピアノ協奏曲録音と思われる。その観点からも貴重である。このCDは「EMIクラシックス」24bitリマスタリング・決定盤1300シリーズ(TOCE13211)として2005年に発売されたが国内盤オリジナルLP(原盤は仏パテ)は1979年に東芝EMI/EAC80519でリリースされていた。その後LPが姿を消して20年以上の歳月を経ての国内盤初CD化であった。収録作品は「第9番変ホ長調K.271」と「第21番ハ長調K.467」である。しかも指揮はカルロ・マリア・ジュリーニ、管弦楽は「ウィーン交響楽団」との演奏ということでLP発売当時これもまた興味深かった。ジュリーニは「ウィーン交響楽団」の首席指揮者を1973年から76年まで務めており在任中の75年にはオーケストラと共に来日公演を行い筆者も足を運んだ。因みにこの録音は首席指揮者退任後の1977から78年にかけてウィーンで行われている。
 ジュリーニとワイセンベルクの組み合わせによるレコードはこの他には1972年録音のブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」が同レーベルから出ているがオーケストラは「ロンドン交響楽団」によるものである。

キース・ジャレットのショスタコーヴィチ「24の前奏曲とフーガ」

2011-02-03 19:47:16 | 器楽曲

 米国のジャズ&クラシック・ピアニスト、キース・ジャレット(Keith Jarrett/1945~ )についてはだいぶ以前に指揮者デニス・ラッセル・デーヴィスとのコンビによるモーツアルトの「ピアノ協奏曲」のCD(独ECMレーベル)についてふれたことがあったと思うが今回はピアノ・ソロ録音からショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガ作品87」を取り上げてみたい。(写真/独ECM)
 この作品はショスタコーヴィチが1950年にライプツィヒで開催された「J.S.バッハ没後200年祭」の「第1回国際バッハ・コンクール」の審査員に招かれこのコンクールで見事優勝を飾った当時ソヴィエトのピアニスト、タチアナ・ニコライエーワの演奏に深く感銘したことがきっかけとなり生まれた作品と言われている。事実この作品の全曲初演も1952年に彼女によって行われている。
 キース・ジヤレットは1980年代後半から1990年代にかけて特にクラシック分野に関心を持ち当時、独ECMレーベルに先のモーツアルトをはじめ多くの作品を録音しておりこのショスタコーヴィチの作品も1991年7月にスイスの「ラ・ショー・ド・フォン/La Salle de Musique, La Chaux de Fonds)でレコーディングされた。これはその前に録音されれたJ.S.バッハの「平均律クラヴィア集第1巻・第2巻」、「ゴールドベルク変奏曲」に続く彼の注目されたクラシックのアルバムの一つでもあった。筆者もこの演奏は好んで時々聴いているが彼の驚くべきピアノ・テクニックは一昨日取り上げたジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンスと同様に聴き手の心に何かをはたらきかける鋭い魔力みたいなものを感じてしまうアルバムである。

「ビル・エヴァンス・トリオ」ー東京ライヴ 1973

2011-02-01 20:14:51 | ジャズ

 今日はなぜか久しぶりにジャズのレコードが聴きたくなり写真の「ビル・エヴァンス・トリオ/東京ライヴ1973」のレコードを取り出し針を下ろしてみた。このLPはタイトルの通りアメリカのジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンス(Bill Evans/1929~1980)率いるジャズ・トリオの1973年来日公演ライヴ盤である。(米Fantasy/OJC345)
 ビル・エヴァンスのピアノはフランスの印象主義作曲家ドビュッシーやラヴェルの音楽を彷彿させるところが節々に感じる。また彼のそんな芸風は後のチック・コリアやキース・ジャレットらにも多大な影響を与えている。このLPは1974年にリリースされた東京・郵便貯金ホール(当時)におけるライヴ録音でエヴァンスの優美なピアノ・タッチ、エディ・ゴメスのベース、マーティー・モレルのドラムが見事に調和した見事な「エヴァンス・サウンド」聴けるエレガントなライヴ・アルバムだ。「モーニング・グローリー」から最後に収録された「グリーン・ドルフィン・ストリート」までの全9曲は会場を埋め尽くした聴衆の酔いも充分に伝わってくる。1980年に長年の飲酒・薬物依存の影響で健康は蝕まれ51歳の若さでこの世を去ったエヴァンスだったが彼が遺した数々のアルバムは今後も不滅の名盤として輝き続けることだろう。