ロシアの作曲家の中にはまだまだ広く知られざる人々も多い。今日取り上げるワディム・サルマノフ(Vadim Salmanov/1912~1978)もそんなひとりではないだろうか。彼は旧レニングラード(現、サンクト・ペテルブルグ)出身で地質学も専攻しその道で活働していたそうだがその後音楽家に本格的転向した人である。作品は室内楽から交響曲の分野まで多彩であるが特に4つの交響曲作品はショスタコヴィチ等の影響がみられ興味をそそる。これら4つの交響曲は全て巨匠エフゲニー・ムラヴィンスキー、レニングラード・フィルにより世界初演、レコーディングされ今回スポットを当てる最後の「第4番ロ短調」はムラヴィンスキーに献呈されている。
因みにこの「第4番」は1977年に作曲され翌78年1月28日にムラヴィンスキー/レニングラード・フィルで世界初演されこの模様がステレオでライヴ録音された。作品は全3楽章構成をとり第2楽章はイタリア語で「Marciale」(行進曲風に)と表記され金管群が行進曲風のリズムを刻むところなどまさに「ショスタコヴィチ」の交響曲を連想してしまう。写真の1988年にCDとしてリリースされた「ムラヴィンスキーの遺産」と題された「メロディア英国盤ーMCD225」はこのレニングラード音楽院大ホールにおけるコンサート・ライヴが収録されている。ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルの息の合った巧さが光る1枚だ。カップリングされた「ベートーヴェン交響曲第4番」も1973年4月29日の同音楽院大ホールでのステレオ・ライヴ録音である。余談だがこの約1ヶ月後に彼は「レニングラード・フィル」と初来日を果たし同曲をプログラムに取り上げている。