私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

巨匠ジュリーニの貴重な映像記録

2009-05-21 15:56:26 | 貴重映像
 イタリアの巨匠カルロ・マリア・ジュリーニが指揮するレコード・CD録音は名盤が多数存在し入手も比較的容易だがこと映像記録となると意外に難しいことに気づく。彼は1960年イスラエル・フィル、1975年ウィーン交響楽団、1982年ロス・フィルと計3回の来日を果たし私も1975年ウィーン響との公演には足を運んだがこれらの来日公演の放送記録(ラジオ・テレビ共)の記憶がない。おそらく放送されなかったのではないか(?)と思う。そういった意味でも今日紹介する写真のDVDは大変貴重な映像に属するものではないかと思っている。
 収録内容は南ドイツ放送協会(SDR)が1997年に制作した彼がシュトゥットガルト放送交響楽団に客演した時のブルックナー交響曲第9番ニ短調のリハーサール風景と本番をたっぷりと収録したものである。演奏会はこのオーケストラの本拠地シュトゥットガルトのベートーヴェン・ザールでの収録と思われる。リハーサル風景ではジュリーニの細かな指示がよくわかり大変興味深い。また彼はこの映像制作の約10年前にウィーン・フィルとの同曲のライヴ録音をDGからリリースしているが演奏が対照的なのが面白い。ウィーン・フィル盤の録音とこの映像の演奏では演奏時間にして約9分近くウィーン・フィル盤の方が長い。ウィーン楽友協会大ホールでのライヴ録音ということでホール並びにオーケストラの性格の関係もあるかもしれないが聴き比べも興味がわくところである。平たく表現すればシュトゥットガルトのDVD盤はテンポを速めにとり鋭角的な捉えかたをした演奏、またウィーン・フィル盤はこのオーケストラが持つ弦や金管のたおやかな響きを前面に出しじっくりとうたわせた演奏ということになるのだろうか。いずれにせよ2つの性格の違うオーケストラの特色が良くでた演奏には違いない。

スペイン・オペラの傑作ペネーリャの「山猫」

2009-05-20 15:24:27 | オペラ
 今日はスペイン・オペラの傑作と言われるマヌエル・ペネーリャ(Manuel Penella/1880~1939)の代表作「山猫(El Gato Montés)」を紹介してみたい。この作品は今から90年以上も前に遡る1916年ヴァレンシアのプリンシバル劇場で初演され大成功しその4年後にはニューヨークでも上演され世界的に知られるようになった作品であるがその後作曲者の死と共に忘れ去られていた。
 そして1992年8月、この作品の舞台となったアンダルシアのセビーリャの「ラ・マエストランサ劇場」でこのCD全曲盤と同メンバーで蘇演された。元来スペイン・オペラの原点は17世紀ごろに始まった歌付きの音楽劇ーサルスエラ(Zarzuela)と呼ばれるもので多くは1幕の短いものが多かった。19世紀には入るとスペイン大衆歌劇として大流行したと言われている。「サルスエラ」は台詞の部分と歌の部分が混合した音楽劇だがペネーリャはこの形式を好まず上演中は音楽が途切れない作風に切り替え、このオペラも全3幕台詞部分はなく歌と管弦楽でつなげている。
 物語は村娘ソレアー(CD:(ソプラノ)ベロニカ・ビリャロエル)をめぐる、山猫(CD:(バリトン)ファン・ポンス)と闘牛士ラファエル(CD:(テノール)プラシド・ドミンゴ)三角関係の悲恋の話が根底になっている。一番の聴きどころは第2幕の大詰めのシーンでパソドブレ(スペイン風行進曲)のリズムに乗って闘牛士たちがアレーナ(闘牛場)に登場するところであろう。まさにこのオペラのクライマックスである。この全曲CD盤は先に述べたセビーリャでの蘇演前の1991年12月にマドリードのブラバー劇場で当時のベスト・キャストによりデジタル録音されたものでもちろん世界初CD化であった。
 (演奏)ミゲル・ロア指揮 マドリード交響楽団、サルスエラ劇場合唱団ほか)

巨匠ヨッフムがコンセルトヘボウと遺した名演ライヴ!ブルックナー交響曲第5番

2009-05-19 21:12:58 | 交響曲
 塔の高さが162メートルの世界一を誇る大聖堂があるウルム(Ulm)、かつてカラヤンがここの市立劇場で指揮者として多くの研鑽を積んだ町でもあるがさらにそこから車で南に約60kmほど走ったところにベネディクト派修道院があるオットーボイレン(Ottobeuren)という小さな町がある。その修道院で1964年5月30日、31日にライヴ収録されたオイゲン・ヨッフムとアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現在、ロイヤル・アムステルダム・コンセルトへボウ)によるブルックナー交響曲第5番変ロ長調は彼の数種の同曲録音盤の中でも最高の名演だと私は考えている。現在この録音盤はフィリップスからCD化(写真)されているが1976年にLP2枚組み(PC5520-21/原盤835 225-6AY)でリリースされたレコードを聴くとさらにこの演奏の素晴らしさがよく判る。修道院の残響音も豊かに再生され重厚に響く金管群、まさにブルックナーの響きの音楽の世界にのめりこむ。ちょうどこの当時、彼は若きハイティンクと共にこのオーケストラの常任指揮者を務めておりヨッフム61歳、全盛時代の演奏記録でもある。未聴の方にはぜひおすすめしたい1枚である。

カラヤン&クルーゾ コンビによる最後の映像作品、 ヴェルディ「レクイエム」

2009-05-18 16:43:59 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤンはヴェルディの「レクイエム」をよく好んでコンサートで取り上げた。1979年10月のウィーン楽友協会合唱団を伴って来日した際も2回演奏している。私も10月26日の最終公演を会場の普門館で聴いた。昨年、NHKクラシカルからこの時の10月24日(一部26日公演も含む)公演ライヴがCD化され「カラヤン生誕100周年記念BOX」に収められている。
 今日取り上げる映像は彼が1967年1月、オペラの殿堂ミラノ・スカラ座で聴衆を入れないでミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団他でカラー・フィルム収録したものである。この映像は1960年代にフランスの名匠アンリ=ジョルジュ・クルーゾ監督と組んだ最後の映像作品となった。同時期にカラヤンはこのスカラ座において巨匠トスカニーニ没後10年記念コンサート(1967/1.16)としてこの作品を映像と同メンバーで演奏した。因みに独唱陣はソプラノ、レオンタイン・プライス、メッゾ・ソプラノ、フィオレンツァ・コソット、テノール、ルチアーノ・パヴァロッティ、バス、ニコライ・ギャウロフと名歌手を揃えた。
 カラヤンの当時の映像作品ではあらかじめ録音された音声を映像にシンクロナイズしてかぶせていくやり方がとられていたと思われるがこの作品も例外ではないだろう。映像はフィルム撮影(スタンダード・サイズ)なので画質の限界があるが音声はオリジナル・ステレオである。私、個人的にはライヴ収録でないのが残念だが4人のソリストのドラマティックな歌いぶりが充分堪能できる。カラヤンは当時59歳、まさにあぶらの乗り切った全盛期の作品でもあった。
 彼は晩年の1984年に自らが映像監修も兼ねてウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場合唱団他とビデオ撮影による同作品(テレモンディアル制作)を遺しているがこちらも素晴らしいものに仕上がっている。(当時のCD録音と同メンバー)
 (写真は筆者が最初に購入したミラノ・スカラ座管他による日本ポリードルのVHSビデオ・ソフト)

超廉価DVD! ペーター・マークの貴重な映像記録

2009-05-17 14:03:23 | 貴重映像
 以前のブログでも指揮者ペーター・マーク(Peter Maag/1919~2001)については1960年代の日本フィルとのモーツアルト交響曲第39番/41番リハーサル付きCDで紹介したが今日は彼の貴重な映像記録とも言える超廉価DVD(写真)を紹介しようと思う。
 最近、街の書店でも超廉価な映画作品、ドキュメント作品等々のDVDを販売しているが先日そんなコーナーで偶然にみつけたDVDである。私は前から指揮者ペーター・マークの映像を探していたのだが彼の映像記録はなかなか見つからなかった。彼は「知る人ぞ知る」地味な指揮者だったが1963年日本フィル、1981年3月東京都響の公演には私も会場に足を運んだファンの一人であった。この他にも80年代にはたびたび来日し格調高い演奏を聴かせてくれた。
 最初は自分の目を疑ったが半信半疑でそのDVDを購入し早速再生して驚いた。記録のクレジットによれば「スイス・イタリア語放送1996年制作」で聴衆をいれたライヴ収録で音質(ステレオ)並びに画質、演奏、3拍子揃って申し分ない。これで500円とは有り難いことだが掘り出しものは探せばあるものだとつくづく感じた。オーケストラはミラノからほど近いスイス、ルガノに本拠をおくスイス・イタリア語放送管弦楽団である。(この地域はスイスでもイタリア語を公用語とする)収録曲目はドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、シューポア「クラリネット協奏曲第1番ハ短調作品26(Cl:クルツィオ・ペトラリオ)、ドヴォルジャーク交響曲第9番ホ短調「新世界から」作品95の3曲で収録時間も80分を超える
超お徳用DVDである。演奏は先に述べたようにどれも素晴らしいがメイン・プロのドヴォルジャークはずっしりと手ごたえのある演奏を聴かせてくれている。

サン=サーンスの交響曲と言えば・・・

2009-05-16 21:56:50 | 交響曲
 サン=サーンス(1835~1921)の交響曲と言えばもちろん第3番ハ短調「オルガン付き」(1886)が代表作であろう。彼はパリ音楽院で作曲のほかにオルガンを学び1857~77年にかけてパリ、マドレーヌ寺院のオルガニストを務めた人でもある。彼は未完の交響曲を除くと全部で5曲の交響曲を作曲しているがこの第3番以外の作品は1850年から1858年に作曲され彼の若き日の作品(15歳~23歳)である。しかし、今改めて聴いてみるとどの作品もなかなか味わい深いものがある。番号なしの交響曲イ長調やへ長調「首都ローマ」も古典様式による大変美しい旋律的な作品だ。
 写真のCDはジャン・マルティノン指揮フランス国立管弦楽団による1972年から75年録音の交響曲全集で管弦楽の透明度が高い美しい演奏で聴き手をうっとりとさせるお勧めの全集盤である。傑作の第3番も大変華やいだ演奏でベルナール・ガヴォティが弾くアンヴァリッド・サン・ルイ教会のオルガンの響きも素晴らしい。

セル/クリーヴランド管弦楽団、東京ライヴ1970

2009-05-15 03:35:06 | 想い出の演奏会
 1970年、日本は「万国博覧会ーEXPO’70」開催で華やいだ年だった。今思えばなつかしい。また博覧会開催を記念して外来オーケストラの公演も大変賑わった年でもあった。私も以前に書いたようにカラヤン/ベルリン・フィルをはじめとして何回かの来日オーケストラ東京公演に足を運んだ。ちょうどベルリン・フィルと今回取り上げるジョージ・セル(1897~1970)率いるクリーヴランド管弦楽団の来日がほぼ同時期重なりファンの私には至福の時であった。
 そのセル/クリーヴランド管弦楽団の東京ライヴのテープが何年か前に発見されCD化された(写真)。それは実際に私が聴いた5月22日、東京文化会館の公演だった。プログラムはウェーバー:歌劇「オベロン」序曲、モーツアルト:交響曲第40番ト短調K.550、シベリウス:交響曲第2番ニ長調作品43、それに当日のアンコール曲ベルリオーズ:「ファウストの劫罰」から「ラコッツィ行進曲」である。この時の模様は映像でもNHKTVで放送されたがその映像は残っていないとのこと。誠に残念である。この日の演奏やはりメインのシベリウス交響曲第2番の演奏はさすがセルが得意とした曲だけに素晴らしかった。このライヴの記録がセル初来日にして最後のライブ録音になるとは誰もが想像だにしなかった。

カルロス・クライバー/バイエルン国立管弦楽団 1986年東京・ライヴ

2009-05-14 10:57:00 | FMエア・チェック
 今思えばカルロス・クライバー(Carlos Kleiber/1930~2004)はユニークな指揮者の一人だった。彼のスタジオ録音による録音は極端に少なく、取り上げる作品もある程度限られていた。その中でもベートーヴェンの交響曲第4番と第7番は特に彼がコンサートでプログラムに載せた作品だった。1986年5月バイエルン国立管弦楽団との来日公演でも5月19日、東京人見記念講堂で演奏している。この時の模様はNHKFMでオン・エアされ私のFMエア・チェックコレクション・テープの中でも貴重な録音の一つである。後にイタリアの非正規盤(Topazio)でCD化されたことがある。(写真、但しジャケットには86年東京ライヴのクレジット記載はない。)クライバーらしく非常にスリリングで特に第7番の終楽章の演奏には圧倒される。この他にも同曲は1982年のOrfeo盤やDVDでも1983年アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団とのいずれもライヴで楽しむことができる。
 ところでこの1986年の来日公演を録音した放送がNHKFMで放送された際(1986年6月9日放送)音声トラブルが発生し放送中断となり当日は途中から別の曲に差し替えて放送されるという珍しいアクシデントが発生した。具体的には曲がプツン、プツンと途切れてしまう現象だった。ちょっとエア・チェックも鑑賞にも耐えられない状況だった。翌日の一般紙にもこの事態は報道されたのを覚えている。原因はこの録音がデジタル録音だったためデジタル信号を読み取る装置の不具合かデジタル・テープの不良だったらしい。いずれにせよ放送は10日後の6月19日に再放送され事なきをえた。
 彼は1999年2月バイエルン放送交響楽団との演奏旅行を最後に引退してしまうが2月20日カナリア諸島ヴァレンシアにおける演奏もこのベートーヴェン第4番と第7番の交響曲だった。この時のライブもイタリアMemories盤から発売されたことがある。よほどこの2曲は彼のお気にいりの作品だったのであろう。

カラヤン・「ウィーン国立歌劇場」総監督時代に上演した珍しいオペラ

2009-05-13 18:52:51 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤンがウィーン国立歌劇場の総監督時代に唯一取り上げたオペラの一つに近代イタリア音楽の復古主義を唱え新古典主義音楽を推進したイルデブランド・ピツェッティ(Ildebrando Pizzetti/1880~1968)の「大聖堂の殺人」というタイトルからして推理小説みたいな作品がある。ピツェッティの1957年の作品で日本ではその知名度はほとんどないと思われる。物語は12世紀に実際にカンタベリー大聖堂で起きた時の大司教トマス・ベケット殺害事件を題材に扱ったオペラである。何でもベケットと言う人物は1155年、時の王様ヘンリー2世の大法官時代王に協力し実績をあげ1162年カンタベリー大聖堂の大司教となったそうである。しかしもめ事はいつの時代にもつきものやがて王と対立、フランスに亡命、ほとぼりがさめた1170年に再び古巣に帰任したが1173年、王の側近の騎士に聖堂内で暗殺されたとう事件。ピツェッティはこの話をT.S.エリオットの同名の戯曲を2幕構成のオペラにしたものである。
 カラヤンはこの作品をウィーン国立歌劇場総監督を兼任していた1960年3月から4月にかけ数回上演したがその後の記録はなくこのライヴ盤はその意味においても貴重なものである。主役の大司教トマス・ベケット役に名バス・バリトンのハンス・ホッター起用、録音はモノラルながら聴きごたえある名演に仕上がっている。(1960年3月9日、ウィーン国立歌劇場でのライヴ録音)
 最近大司教をルッジェロ・ライモンディが演じた映像がリリースされたとのことでぜひこちらも見てみたいと思っている。

カラヤン・1980年度レコード・アカデミー受賞、再録音の「アイーダ」

2009-05-12 03:31:13 | ヘルベルト・フォン・カラヤン
 カラヤンのヴェルディ歌劇「アイーダ」全曲盤は新旧の2種類ある。旧盤は彼がウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任した直後の1959年録音、アイーダにレナータ・テバルディをはじめとした当時のイタリア・オペラの名歌手たちを起用したイギリス・デッカ盤、そして今回取り上げる1980年度レコード・アカデミー賞を受賞した1979年録音、まさにカラヤン71歳円熟期の当盤である。どちらも甲乙つげがたい名盤であるが後者はアイーダ・トランペットをヤマハに特注したことでも当時話題になったもので、彼が1980年夏のザルツブルク音楽祭の舞台にかける前の録音であった。管弦楽、合唱団は新旧盤ともウィーン・フィル、ウィーン楽友協会合唱団だが歌手陣にアイーダ:ミレッラ・フレーニ、ラダメス:ホセ・カレーラス、アムネリス:アグネス・バルツァ等、新カラヤン組で構成されさらに抒情性を増した感がある。現在でも私の手元にある発売当時のEMI宣伝パンフレットも4面見開きのオール・カラーの豪華版でこの全曲盤の販売に力を入れていたのが理解できる。カラヤンの不滅の名演盤には違いない。