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女性の就業率向上で経済波及効果6兆円超、TPPを遥かに超える - 妨害するのは安倍政権の「育休三年」

2013-08-07 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
電通総研が結婚・出産後の女性の職場復帰によって
直接的効果が3兆円、波及効果は6兆円にのぼると試算した。

これが労働経済学の観点から見て至極当然の結論であり、
寧ろ現内閣が愚劣極まりない「育休3年」でそれを妨害するのが問題なのだ。

出産の際の入院期間や出産退職の実情を見ても、
日本は先進国並みに遠く及ばず、恥ずかしい後進国である。

配偶者控除や第三号被保険者といった女性就業を妨害する制度を廃止するとともに、
確保した予算を育児支援や教育支出のバウチャーに移転し、
福祉・医療分野での低所得労働者の給付付き税額控除に充当すべきである。

福祉・医療部門での労働力不足と育児支援分野の需要増大は明白であり、
多大な手間をかけ消費を増やしている育児世帯を苦しめ、
働かない者を優遇する愚劣な制度を温存しているから日本経済が停滞するのだ。
努力する者に報いる公正な経済に脱皮すべきである。

驚くべきことに、20年ほどの間に日本の低所得層女性の就業率は低下している。
専業主婦志向が異常に強い我が国の高学歴女性とともに、
就業促進策によってこれらの層が日本経済に多大な貢献を行うことになる。

▽ こちらを参照のこと

『夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち』(橘木俊詔,中央公論新社)


女性の非正規雇用は保育・医療・介護の三分野で相当数を吸収できる。
福祉部門で雇用が増えれば人手不足になって非正規労働者の時給も上昇する。
一石二鳥どころか三鳥の良策である。

「大勢の女性非正規労働者が違法な解雇・雇い止めに遭っているのに、
 育休を取得できる環境すらない多くの国民を無視して
 よくも一部の正社員ばかり優遇する施策を提唱できるものである。
 根本的に問題を理解していないと言う以外にない」

「育休延長では税収も増えず生産性も上がらないので
 労働経済学の観点では話にならない愚策な訳で、
 おまけに非正規労働者を切り捨ててしまう社会的不公正拡大策でもある」

「「育休3年」のドイツは平均成長率が北欧よりも低い。
 家族重視のイデオロギーは成長率を抑制するのである」

当ウェブログの指摘がここまで的中するのは残念なことだが
これが今の日本の政治の情けない実情である。

 ↓ 参考

「育休3年」は既に企業が試みた失敗策、職場復帰の障害となる - 所得減と女性採用への悪影響も確実
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d7edfd0602fe3eadfdfa3ed17f6dfe37

また出た自民の差別政策、非正規女性労働者を切り捨て - 育休を取れる正社員だけ所得補償で優遇
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/50a284be189a3e25171aeb3b12b82760

▽ 北欧は育児を集約化するから膨大な数の女性雇用が生まれる



『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』(ケンジ・ステファン・スズキ,角川SCC)


▽ 女性就業率の高いスウェーデンは、労働生産性も成長率も一人当たりGDPも全て日本より高い





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


退職女性の職場復帰で「経済効果6兆円以上」 電通総研が試算(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130725/trd13072517040009-n1.htm
”結婚や出産などで退職した女性が職場復帰した場合、経済波及効果が6兆円以上になるとの試算を25日、電通総研が発表した。政府は成長戦略で「女性の活躍促進」を掲げているが、女性が活躍すれば消費と企業活動の双方に相乗効果をもたらすことが改めて示された。
 国勢調査などから算出した試算によると、結婚や出産を機に退職し、再就職を希望する25~49歳女性は約360万人で全体の18.8%。この全員が希望する就業形態で就職した場合、平均年収が正社員で約275万9千円、パート・アルバイトで約104万4千円増加。消費の増加額は約3兆1732億円となる。
 この増加額を基に、国内の各産業部門への直接効果を試算したところ、計2兆9822億円となり、企業間取引などを含めて算出した経済波及効果は、6兆3962億円となることが見込まれるという。
〔以下略〕”

注意すべきなのは、この経済波及効果の試算が1年間を想定していることだ。
TPPのように10年間という長過ぎる想定ではない。従って、
女性就業率の引き上げはTPP効果の10~20倍に達し得るということである。
女性就業率向上は、企業への利益誘導ではないので注目されにくいが、
(企業は国民経済よりも自社の収益を優先する習性がある)
これこそ真の成長戦略である。
家事に協力したくない怠惰で傲慢な一部の男以外は反対する理由はない。

電通総研の田中理恵主任研究員はマーケティングの観点から分析しているが、
経済成長率の観点から言えば労働投入と可処分所得の増加が重要である。

ただ、産経新聞は政治的理由で政府の政策を正当化しているが、
それは明白な誤りである。この経済効果を阻むのは安倍内閣そのものだ。
大前研一氏が完膚なきまで「育休3年」の愚劣さを批判している。


育休3年は企業負担増で女性が不利になる可能性を大前氏指摘(大前研一)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130801-00000018-pseven-bus_all
”参院選が終わり、衆参のねじれが解消された安倍晋三政権は、成長戦略の目玉の一つに「女性の活用」を掲げている。具体的な施策のひとつとして、育児休業を3年間まで取得できるようになることが大きく取り上げられてきた。だが、その施策は果たして「女性の活用」へと繋がるのか、大前研一氏が解説する。
 * * *
 私はマッキンゼー(かつて所属していた経営コンサルティング会社)でも現在経営しているBBT(ビジネス・ブレークスルー)でも、女性を全く差別せず積極的に採用してきた。
 マッキンゼーでは、日本人女性として初めてMIT(マサチューセッツ工科大学)で電気工学&コンピューターサイエンスの修士号を取得した青木千栄子氏(現在は日本コカ・コーラ副社長)、日本人女性として初めてハーバード大学大学院でDBA(経営学博士号)を取得した石倉洋子氏(現在は慶應義塾大学大学院教授)ら「日本人女性初」の人材を次々に“先物買い”し、学卒者も応募数にほぼ比例した割合で女性を採用した。
 後者の中にDeNA(ディー・エヌ・エー)創業者の南場智子氏や早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の川本裕子氏らがいるが、結果的に女性の能力は男性と何の遜色もなかった。
 そのように多くの優秀な女性を採用してきた経験からすると、安倍晋三政権が成長戦略の目玉の一つに掲げている「女性の活用」は、どこまで本気で取り組むつもりなのか、甚だ疑問である。たとえば「育児休業を3年間まで取得可能にする」と謳っているが、3年間育児休業して元のように復帰するのは、現実問題として無理だろう。
 なぜなら、まず日本企業は、その人が会社にいて自分の仕事のテリトリーを主張しているがゆえに仕事がある、という特徴を持っているからだ。逆に言えば、その人が会社にいなくなったら、その人が受け持っていた仕事はいつの間にか他の人がやるようになり、会社は何事もなかったかのように動いていくのである。
 アメリカ企業などは仕事のスペックがはっきりしているため、仕事はそのままで単に人が入れ替わるが、日本企業はアメーバのような伸縮自在の不思議な会社が多く、人に合わせて仕事の中身が変わるのだ。したがって、3年間も育児休業したら、元のポジションや仕事に戻ることができるとは思えないのである。もし、それが可能な会社があるとすれば、育休を取っている人の周りの社員の負担が重くなるだけである。
 それに、そもそも「育休3年」が、なぜ成長戦略につながるのかわからない。働いていた女性が3年間働かなくなる、もしくは休む期間が今の3倍くらいに延びるわけだから、その間“失業者”が増えるのと同じであり、単純に考えてGDPは縮小するはずだ。ということは、育休中も企業が給料を払い続けないと成長戦略にはならないが、もしそんなことが法制化されたり義務づけられたりしたら、企業はたまらない。
 日本では、産休中の給料は減額となり、育休中の給料は全く出ない企業が多い。育休中も半額程度の給料を払っている企業もあるが、期間が6か月程度だから我慢している。しかし、3年間となればそうはいかない。マッキンゼーやBBTは1年間は基本給を払う制度だが、それでも20年は勤めてもらわないとペイしない。
 要するに、育休を長くすれば女性が社会復帰しやすくなるという発想自体が間違っているのだ。
〔以下略〕”

これが正論であり、当ウェブログから付け加えることはない。
一読して明らかなように、安倍政権もしくは自民党は
この週刊誌の記事よりも低レヴェルなのである。
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