みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

「買収」された東京五輪、歴史に残る恥辱になるのか - ロシアのドーピング疑惑と同じ構図に

2016-05-19 | いとすぎから見るこの社会-対アジア・世界
萩生田官房副長官が、今大きな問題になっている世界的なタックスヘイブン問題について、
「リーダーシップを発揮して問題を解決したい」と大見得をきったらしい。

今、日本がどのような立場にあるかを全く理解していないこの発言は
根本的にリテラシーが低く、後で能天気と言われるであろう。

東京五輪の「買収」問題が海外主要メディアに続々と報道され、
ロシアのドーピング問題にも絡んだ疑惑の人物にまつわる裏金は、
シンガポールやスイスといった代表的なタックスヘイブンに振り込まれている。

日本が「リーダーシップを発揮して」この問題を「解決」するなどというのはブラックジョークだ。
そもそも「被告」の立場であるから、この問題を追求する資格は最初からないのである。

狡知の働く英首相は、脛に傷持つ自らの失態から目を逸らすため
自らこの問題への取り組みを表明して「煙幕」を貼っているが、
日本政府はそうした知恵がないらしい。

菅官房長官は「クリーン」だとはっきり言ってしまい、
国内と違って圧力の効かない海外メディアが相手だということを忘れ、
迂闊極まりない言質を与えてしまっている。

これからこの東京五輪「買収」疑惑は、政府の初動ミスにより
益々大きな災厄となり、2020年に忌まわしい影を投げかけるであろう。
後々、安倍政権を象徴する黒い事件として語られる可能性もある。

▽ 国際交渉の内幕を知る諸星裕氏は、国際スポーツ界の金権体質を明言している

『プロ交渉人―世界は「交渉」で動く』(諸星裕,集英社)


当ウェブログは、オリンピックの経済効果が口だけのインチキだと指摘した。
この「買収」疑惑によって、日本には更なる打撃となる可能性が高い。

「東京五輪招致の成功には重大なリスクがあるのを何故誰も言わないのか。
 政治家やメディアの本性は「大衆迎合」であるから仕方なかろうが、
 日本経済にとっては明確なマイナスであると判断できる」

「論より証拠、直近四回の夏のオリンピック開催国を見るがいい。
 程度の差はあれ、全て開催後に経済は悪化している。ギリシャは財政破綻状態である」

「最も参考になるのはイギリスで、ロンドン五輪前後はゼロ成長になっている。
 (ユーロ圏と比較してもGDPへの明確なオリンピック寄与効果は殆どない)」

「その理由は単純明快である。
 オリンピク関連の投資は公共事業が中心であるため
 稼働率は急激に下がって「不良債権」化するリスクが大きいこと、
 観光消費が一時期に集中して他の時期が落ち込むからである。
 つまりただの「消費の付け替え」に過ぎない」

「東京オリンピック招致の成功は、日本経済にとって死活的に重要な
 高齢者バラマキの適正化と女性就業率・出生率の向上、
 高齢層を含めた積極的労働市場政策から
 有権者の目を逸らさせる副作用もある」

としてきた当ウェブログの見通しは、更に下方修正せざるを得ない。

▽ 前回の東京五輪は不況をもたらし、株式市場は先取りで数年前から下落に転じていた

『金融の世界史: バブルと戦争と株式市場』(板谷敏彦,新潮社)


成長率低下・財政危機・歴史に残る恥辱と、
想定される災厄が膨れ上がりつつある。

「あの久保田博幸氏は、オリンピック開催国がその後に財政危機に陥るという
 不吉な事例を紹介している。(当ウェブログでも以前取り上げている)」

「今年の日本の成長率予想が相次いで下方修正され、
 アベノミクスの「次元の低さ」が暴露され「健全」になりつつある日本社会だが、
 2020年を迎える前に重大な局面を迎える可能性がかなりある」

「前回の東京オリンピックで景気はピークアウト、
 所謂証券不況に陥った、というのが厳然たる史実である。
 更に現在の人口動態は60年代と全く違い、世界最速の高齢化で高齢者三経費が膨張している。
 「次元の低い」安倍内閣が現代史すら理解していないのは明白であり、
 オリンピックによる経済成長など今となっては幻想だ」

「しかも経済政策リテラシーの低い自民党政権は、
 消費税引き上げ分を財政悪化の元凶である高齢層バラ撒きに蕩尽している。
 現役世代の育児支援・積極的労働市場政策に投入すれば良かったものを、
 「次元の低い」リテラシーは不治の病で根治不可能と見える」

「かつてのオリンピック前に日経平均が下落し始めた時期は、
 今回の東京オリンピックに当てはめれば2017年前後に該当する。
 不吉なことに政府債務が家計金融資産総額を超えると予想されている時期で、
 その頃には安倍内閣は嘲笑の対象となっている可能性が高い」

一時の浮かれ騒ぎに幻惑される愚かなポピュリスト政治家ばかりで、
日本経済に必要な真の改革は何一つ実施されていない。

 ↓ 参考

怪し過ぎるオリンピックの経済効果、1964年の東京五輪は不況をもたらした - 山陽特殊製鋼等が次々に倒産
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/f35927bbc347e599c642f7e3b6157546‎

東京五輪招致の3兆円効果は幻想、英国の低成長を見よ - 韓国・ギリシャ・スペインは五輪後に財政危機へ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d2ee3475ec7e8db0172d6ef835ce7632‎

アベノミクスの帰結は1000兆円超の政府債務+金利上昇 - 財務省が財政危機を事実上認める試算発表
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d7d54acd2408cc63f24a9d86b0d67753

▽ 日本の公共事業の乗数効果は大きく低下しており、致命的な人口動態の急速劣化は放置されている

『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房)


萩生田官房副長官「日本がリーダーシップ」 課税逃れ対策(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK15H0D_V10C16A5000000/
”萩生田光一官房副長官は15日午前のフジテレビ番組で、有力政治家らの節税の実態を明らかにした「パナマ文書」に関し、26~27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で租税回避問題が議題になるとの認識を示した。「(課税逃れによる)お金がテロ資金に流れている実態があれば世界の脅威になる。リーダーシップを発揮して問題を解決したい」と語った。”

この発言を知って、仰天した。
この人物は、タックスヘイブンが何なのか全く理解していないのである。


送金直後、高級腕時計を購入…五輪招致不正疑惑(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160517-00050193-yom-spo
”2020年東京五輪・パラリンピック招致活動を巡る不正疑惑で、招致委員会がシンガポールのコンサルタント会社の口座へコンサル料を送金した直後に、この口座の資金が高級腕時計などの購入費用に充てられていたことが17日、仏検察当局関係者への取材でわかった。
 仏当局は、招致委の支払ったコンサル料が、招致活動に絡む贈賄資金として使われた可能性もあるとみて捜査している。
 東京開催は13年9月にブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、約100人のIOC委員の投票によって決まった。〔以下略〕”

シンガポールは、典型的なタックスヘイブンである。
東京五輪招致において、タックスヘイブンでの裏金が関わっていた可能性が高いのだ。


ブラック社と前会長の関係認識、JOC会長修正(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/20160518-OYT1T50114.html
”2020年東京五輪・パラリンピック招致活動を巡る不正疑惑で、招致委員会理事長だった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は18日の衆院文部科学委で、招致委がコンサルタント契約を結んだ「ブラック・タイディングス社」(シンガポール)と、国際オリンピック委員会(IOC)委員で国際陸上競技連盟前会長のラミン・ディアク氏側との関係を認識していたことを明らかにした。
 竹田会長はこれまで「知るよしもなかった」と述べていた。
〔中略〕
 現地の登記簿によると、ブラック社は14年7月4日に事業を停止している。
 竹田会長はこの日、招致委がブラック社と契約したのは、国際陸連人脈の強化が目的だったとし、「ブラック社が前会長を知らないわけがないと思った」と答弁を修正した。過去の答弁は「報道されているような(不正が疑われる)関係とは知らなかった、という意味だ」と釈明した。”

IOCトップの言動は非常に危なっかしい。
リカバーできない性質の問題であるだけでなく、
ダメージコントロールにも失敗しつつある。


東京五輪招致不正疑惑、海外からは厳しい視線 露呈する政府、招致委、電通の対応のずれ(NewSphere)
http://newsphere.jp/national/20160515-1/
”2020 年東京五輪の招致運動に絡み、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会から当時のIOC委員の息子が経営するコンサルティング会社の秘密口座に、多額の資金が流れたとされる買収疑惑で、フランス検察当局が12日、該当口座に招致委員会から約2億2000万円の入金があったことを確認し、捜査中であることを明らかにした。疑惑は、英紙ガーディアンが前日に特ダネとして報じていたが、その内容の信ぴょう性が増した形だ。
 日本側は、招致は「クリーンな形で行われたと認識している」と菅義偉官房長官がコメントするなど“無実”を主張しているが、ガーディアンに続き、AFP、CNNなどの海外主要メディアも続々と「重大な疑惑」として報じている。海外報道では大手広告代理店の電通が背後で動いていたとも詳報されている中、国内報道は比較的あっさりとした傾向にある。日本流の「臭いものに蓋をする」センスで疑惑をうやむやにしようという意志も見え隠れするが、果たして世界にそれが通用するだろうか?
◆汚職にまみれた親子と招致委の“黒い関係”
 「フランスの検察当局は12日、2020年の東京五輪招致への支持を取り付けるために、国際陸上競技連盟(IAAF)のラミーヌ・ディアック元会長の息子に、280万シンガポールドル(約2億2000万円)が支払われた疑いがあると発表した」――。AFPは、このようにはっきりと買収行為を匂わせるトーンで疑惑を報じている。CNNも、フランス検察当局の声明を独自に入手し、東京2020招致委員会から「2013年7月と10月の2度に渡って計約200万米ドルの支払いがあった」と確定的に報じている。
 キーパーソンのラミーヌ・ディアック氏は、1999年から2015年までIAAFの会長を務め、IOCの委員も兼任していた。セネガル出身の元走幅跳選手で、母国やフランスを拠点に活動してきたが、近年は国際スポーツの舞台での汚職疑惑にまみれた人物として有名だ。2011年にはスポーツマーケティング企業から裏金を受け取っていたとしてIOCから警告処分を受け、さらにはやはりガーディアン報道をきっかけに、ロシア選手に蔓延するドーピング問題を隠蔽するために裏金を受け取っていたという疑惑も浮上。これを受け、昨年IAAF会長を自ら辞任した。ロシア絡みの裏金はパリで資金洗浄された疑いがあるとして、現在、フランス当局の捜査が続いている。
 ガーディアンによれば、東京招致委員会からの金の流れは、この資金洗浄の捜査の過程で浮上した。検察の発表によれば、息子のパパ・マッサタ・ディアック氏が所有するシンガポールに拠点を置くコンサルタント会社「ブラック・タイディングス」に、「2020年東京五輪招致」の名目で約2億2000万円が振り込まれた。ガーディアンは、今年1月、このパパ・マッサタ・ディアック氏についても、2016年五輪招致に絡み、「IOCの6人の委員に“小包”を送る陰謀」を主導したとスッパ抜いている。東京五輪招致委員会による送金が買収に絡んでいると欧州で見なされる背景には、このように、ディアック親子は汚職にまみれた人物だという認識が定着していることがある。
◆電通は疑惑を全面否定
 「東京招致委員会によるこの7桁の支払いは、日本の強大な広告代理店、電通の役割についても疑念を抱かせるものだ」と、ガーディアンは、日本のマスメディアには多大な影響力を持つ「電通」にも名指しで疑惑の目を向ける。ディアック親子の不正行為を調査した世界アンチ・ドーピング機関の報告書によれば、東京五輪招致委員会による送金があった「ブラック・タイディングス」の口座は、イアン・タン・トンハンという人物が管理する秘密口座だという。この人物はスイスに拠点を置く電通の子会社「アスリートマネジメント・アンド・サービス」(AMS)のコンサルタントを務めていたと指摘されている。ガーディアンによれば、同社は、IAAFと契約を結び、その商標管理を行う会社だ。
 電通は、父ディアック氏が会長を辞任する直前にIAAFとの包括スポンサー契約を2029年まで延長している。ガーディアンは、これらは電通とディアック親子の黒い関係を匂わすのに十分な情況証拠だとみているようだ。招致委員名義での「ブラック・タイディングス」への送金も、IOC委員への買収資金として電通の関与のもとで行われたのではないかという疑いが強く持たれている。
 電通サイドは、ガーディアンの取材に対し、「ブラック・タイディングス」への支払いについては「何も知らない」とし、イアン・タン・トンハンという人物をコンサルタントとして雇ったこともないと答えている。パパ・マッサダ・ディアック氏についても、電通が直接契約を結んだことはなく、あくまでIAAFと同氏の間の問題だと、疑惑を全面否定。
〔中略〕
◆政府・招致委は「クリーン」だと反論
 疑惑を全面否定する電通に対し、政府の反応はやや異なる。菅官房長官は「2020年東京大会の招致については、クリーンなかたちで行われたと認識している」と送金が買収に当たるという疑惑は否定。ただし、フランス当局と連絡を取っていることは認め、「フランスの司法当局の要請があれば、その内容を踏まえてわが国として適切に対応することになる」と、捜査に協力する姿勢を示している(ロイター)。
 一方、東京五輪組織委員会の小野日子(ひかりこ)広報官は、疑惑の内容について「全く関知していなかった」と、関与を否定。招致委員会の方は、ディアック氏サイドに支払われた2億2000万円は、コンサルティング、招致運動のプランニング、プレゼンの指導。情報・メディア分析などの「プロフェッショナルなサービスへの対価」として支払われたと弁明している(CNN)。
 政府と招致委員会は、送金があったこと自体は認めつつ、その内容に違法性はなかったという線で対抗する方針なようだが、日本側の反応をまとめると、「政府」「組織委員会」「招致委員会」「電通」で認識や対応に温度差あると言わざるを得ない。官民の足並みが揃わないまま疑惑をうやむやにできるほど世界は甘くはないだろう。フランス当局や海外メディアの視線は厳しい。”

安倍政権得意のメディアコントロールも全く通用しない。
ロシアのドーピング問題と日本の東京五輪買収疑惑は、
海外メディアでは同類として報道されているのである。
Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「日本で働きたい」外国人留... | TOP | 『週刊エコノミスト』5月24日... »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | いとすぎから見るこの社会-対アジア・世界