今週の『東洋経済』のメイン特集はいまひとつだった。
普段、歴史を意識していないで急拵えで組んだ記事に見える。
「労多くして功少なし」と編集部でも思っている向きが少なくないだろう。
世界の動乱の原因は常にパワーバランスの変動であり、
それは今も昔も変わらない。軍事や安全保障の基本である。
また、人口動態を全く扱っていないため今日的課題に対し余りにも迂遠に見える。
ソ連崩壊の予言が的中して世界を驚嘆させたエマニュエル・トッドは当然、取り上げるべきだし
今話題の「ユース・バルジ」を唱えたグナル・ハインゾーンも登場していない。
メイン特集以外には、巻頭の阿部彩女史のコラムもがっかりした。
日本国民は「同情より対策」を望んでいるのでは全くない。
「貧困問題に単純化できないと知っていて同情している」のである。
神奈川の事件を我田引水論に利用するのは寧ろ被害者への冒涜ではないのか。
貧困対策を行えば事件を防止できるという証拠がどこにあると言うのか。
加害者の親はメディアに暴言を吐き、少年グループの周辺者はメディアにカネを要求したと報じられている。
この幾重もの要因が絡んだ事件と普遍的な貧困問題とを峻別しない限り、世論は背を向けるだけだ。
予想通り、メイン特集よりサブ特集「活況ベンチャー投資の舞台裏」の方が質は高い。
特に、「明らかなバブルで緊張が緩んでいる」と題した
サイバーエージェントの藤田晋社長へのインタビューは素晴らしい。
(では自社はどうなのか、という問題も当然あるが)
エントリーのサブタイトルはこちらから引用した。
「優秀な企業はベンチャーキャピタルの協力がなくても大きくなる」には激しく同意。
匿名座談会「ベンチャーバブルに踊らされるな」は期待通りの出来で、
IPOでぼろ儲けしようとベンチャーをおだてる中小証券の醜態は、バブルの明白な証拠だ。
第二のグミ懸念として名前が挙がっているのが案の定ながら●●シーと●●●ドワークス。
(矢張り衆目は一致していると言えるだろう)
「ベンチャー経営者がバブルに踊らされている」
「CVC(大企業によるベンチャー直接投資)はリスクを取りたがらない」
といった指摘も的確であり、藤田インタビューよりこちらの方が価値が高いのでは。
あと大企業の将来を不安視する見方と起業コストの低下で
ベンチャーに以前より良い人材が入ってきているとの話は数少ないポジティブ材料だ。
◇ ◇ ◇ ◇
今週の『週刊エコノミスト』の株式特集は懸念したほど悪くなかった。
特にP37「景気減速の影響は米の3倍」、P38「先物買い漁る年金ファンド」が良い。
前者ではTOPIXの半分が海外景気敏感株である点を指摘し、
(成程、だから東証はNYよりもボラティリティが高い訳だ)
後者は先行指標であるダウ輸送株価指数が高値を更新していない米株の危うさを指摘している。
但し後者は東京オリンピック前にバブルが来るのではと書いているが賛成できない。
昨年ですら追加緩和がなければ東証はマイナス圏の可能性があった。
愚かしい人為的な株価操作は市場の女神の裁きを受け、崩壊するものである。
当ウェブログで毎回のように取り上げている富国生命の市岡繁男氏は、
P118で日本企業が海外で儲けても国内投資には向けず、
国内設備投資が低迷したままである現状を明らかにしている。
(だから営業益と経常益の差がかつてない規模に拡大しているのである)
安倍政権になっても国内設備投資は殆ど増えず、
我が国の経済団体の見え透いた利益誘導が日本経済を成長させないのは明白だ。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』の英語特集はかなり良かった!
英語上達のニーズがあれば、の話だが。
(学生や新卒向けの英語学習コーナーを設けた方が良いのでは?)
内容としては、売れるのも当然という印象。
ニーズがあればP46やP64あたりをしっかり読んでおきたい。
一方、サブ特集「春闘狂騒! 遠い景気回復への道」はいま一つだった。
春闘も竜頭蛇尾で実質賃金低迷が変わらないのは大方の予想通りであり、
藻谷浩介氏に依頼して内需の沈滞が一貫して続いている事実を図表にして貰った方が良かっただろう。
(アベノミクスは生産年齢人口減少のもたらす消費減退に全く無力であるから)
女性就労率と出生率を引き上げない限り内需の沈滞は続く。
日本経済と消費は非常に強く人口動態と結びついているからだ。
◇ ◇ ◇ ◇
次週は東洋経済に注目。反貧困関係者の話に引っ張られ、負担とモラルハザードの問題を忘れないよう願いたい。
▽ 東洋経済新報社も一般の水準から見たら裕福であり、貧困対策にカネを出すべき層であるが。。
▽ ダイヤモンドは地政学にフォーカス、今週の東洋経済よりも鋭い視点を期待
▽ エコノミストはタイトルに工夫が必要では?(例:「不動産は「売り」か」)
エコノミストレポートでは、FRBの利上げ後退観測を扱っているようだ。
普段、歴史を意識していないで急拵えで組んだ記事に見える。
「労多くして功少なし」と編集部でも思っている向きが少なくないだろう。
世界の動乱の原因は常にパワーバランスの変動であり、
それは今も昔も変わらない。軍事や安全保障の基本である。
また、人口動態を全く扱っていないため今日的課題に対し余りにも迂遠に見える。
ソ連崩壊の予言が的中して世界を驚嘆させたエマニュエル・トッドは当然、取り上げるべきだし
今話題の「ユース・バルジ」を唱えたグナル・ハインゾーンも登場していない。
メイン特集以外には、巻頭の阿部彩女史のコラムもがっかりした。
日本国民は「同情より対策」を望んでいるのでは全くない。
「貧困問題に単純化できないと知っていて同情している」のである。
神奈川の事件を我田引水論に利用するのは寧ろ被害者への冒涜ではないのか。
貧困対策を行えば事件を防止できるという証拠がどこにあると言うのか。
加害者の親はメディアに暴言を吐き、少年グループの周辺者はメディアにカネを要求したと報じられている。
この幾重もの要因が絡んだ事件と普遍的な貧困問題とを峻別しない限り、世論は背を向けるだけだ。
『週刊東洋経済』2015年4/4号ビジネスに効く 世界史&宗教/佐藤優の世界史の極意/宗教がわかると世界がみえる/出口治明/[第二特集]スカイマーク破綻続報/[第三特集]ベンチャー投資の舞台裏 | |
予想通り、メイン特集よりサブ特集「活況ベンチャー投資の舞台裏」の方が質は高い。
特に、「明らかなバブルで緊張が緩んでいる」と題した
サイバーエージェントの藤田晋社長へのインタビューは素晴らしい。
(では自社はどうなのか、という問題も当然あるが)
エントリーのサブタイトルはこちらから引用した。
「優秀な企業はベンチャーキャピタルの協力がなくても大きくなる」には激しく同意。
匿名座談会「ベンチャーバブルに踊らされるな」は期待通りの出来で、
IPOでぼろ儲けしようとベンチャーをおだてる中小証券の醜態は、バブルの明白な証拠だ。
第二のグミ懸念として名前が挙がっているのが案の定ながら●●シーと●●●ドワークス。
(矢張り衆目は一致していると言えるだろう)
「ベンチャー経営者がバブルに踊らされている」
「CVC(大企業によるベンチャー直接投資)はリスクを取りたがらない」
といった指摘も的確であり、藤田インタビューよりこちらの方が価値が高いのでは。
あと大企業の将来を不安視する見方と起業コストの低下で
ベンチャーに以前より良い人材が入ってきているとの話は数少ないポジティブ材料だ。
◇ ◇ ◇ ◇
今週の『週刊エコノミスト』の株式特集は懸念したほど悪くなかった。
特にP37「景気減速の影響は米の3倍」、P38「先物買い漁る年金ファンド」が良い。
前者ではTOPIXの半分が海外景気敏感株である点を指摘し、
(成程、だから東証はNYよりもボラティリティが高い訳だ)
後者は先行指標であるダウ輸送株価指数が高値を更新していない米株の危うさを指摘している。
但し後者は東京オリンピック前にバブルが来るのではと書いているが賛成できない。
昨年ですら追加緩和がなければ東証はマイナス圏の可能性があった。
愚かしい人為的な株価操作は市場の女神の裁きを受け、崩壊するものである。
『週刊エコノミスト』2015年 4/7号 | |
当ウェブログで毎回のように取り上げている富国生命の市岡繁男氏は、
P118で日本企業が海外で儲けても国内投資には向けず、
国内設備投資が低迷したままである現状を明らかにしている。
(だから営業益と経常益の差がかつてない規模に拡大しているのである)
安倍政権になっても国内設備投資は殆ど増えず、
我が国の経済団体の見え透いた利益誘導が日本経済を成長させないのは明白だ。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』の英語特集はかなり良かった!
英語上達のニーズがあれば、の話だが。
(学生や新卒向けの英語学習コーナーを設けた方が良いのでは?)
内容としては、売れるのも当然という印象。
ニーズがあればP46やP64あたりをしっかり読んでおきたい。
『週刊ダイヤモンド』2015年4/4号特集1 NHK英語の秘密 TOEIC®の謎 禁断の英語攻略/ NHK英語徹底解剖「おとなの基礎英語」「実践ビジネス英語」…制作現場に潜入!超人気4講座の作られ方/前代未聞の逆解析で判明!TOEIC®最速学習法/最小コストで最大成果!驚異のオンライン英会話 | |
一方、サブ特集「春闘狂騒! 遠い景気回復への道」はいま一つだった。
春闘も竜頭蛇尾で実質賃金低迷が変わらないのは大方の予想通りであり、
藻谷浩介氏に依頼して内需の沈滞が一貫して続いている事実を図表にして貰った方が良かっただろう。
(アベノミクスは生産年齢人口減少のもたらす消費減退に全く無力であるから)
女性就労率と出生率を引き上げない限り内需の沈滞は続く。
日本経済と消費は非常に強く人口動態と結びついているからだ。
◇ ◇ ◇ ◇
次週は東洋経済に注目。反貧困関係者の話に引っ張られ、負担とモラルハザードの問題を忘れないよう願いたい。
▽ 東洋経済新報社も一般の水準から見たら裕福であり、貧困対策にカネを出すべき層であるが。。
『週刊東洋経済』2015年 4/11号 | |
▽ ダイヤモンドは地政学にフォーカス、今週の東洋経済よりも鋭い視点を期待
『週刊ダイヤモンド』2015年 4/11号 | |
▽ エコノミストはタイトルに工夫が必要では?(例:「不動産は「売り」か」)
『週刊エコノミスト』2015年 4/14号 | |
エコノミストレポートでは、FRBの利上げ後退観測を扱っているようだ。