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法人減税でドイツの水準を目指す安倍政権は、成長率を下げ格差拡大を招く - ドイツ経済の病弊への無知

2014-06-25 | いとすぎから見るこの社会-全般
法人税率でまずドイツの水準(29%)を目指すとした安倍首相は、
ドイツ経済の抱えている問題を全く理解していないことを自ら証明した。

そもそも法人減税で高成長を保つことなどできない。
アイルランドが欧州危機前にマイナス成長に陥った事実からも明らかだ。
しかも安倍首相の挙げたドイツは低成長である。
(原子力比率の高いフランスよりはまし、という水準でしかない)

そもそもドイツ企業は、通貨統合による生産拠点の移転や人材流入を圧力材料とし、
労働コストを押さえ込んできたのである。

また、恒常的に低成長率のドイツより成長率の高いスウェーデンと比較すると、
女性就労率が低く、積極的労働市場政策に劣っているのがドイツである。
社会保障給付では雇用を増やす現物ではなく、現金給付が多く出生率が低いのも特徴だ。

従って、安倍政権が法人減税でドイツを目指すということは、
成長率を低迷させ、所得を増やさず、女性就労率も改善しない愚策である。
(株主や企業経営層に恩恵が集中するので、一部の者だけが喜ぶ)

また、ロイター報道ではドイツ経済は「ユーロ圏で最も不平等」とされている。
二世議員だらけの自民党にとってはおあつらえ向きの目標だろうが、
国民全体にとっては間違いなく悪い選択である。

「日本は声の大きい大企業に甘く、働かない偽弱者にも甘いのだから、
 成長率・生産性・一人当たりGDPの全てでスウェーデンに負けるのは当然だ」

「法人税減税は「大企業の収益の成長政策」であり、
 アメリカを見ればすぐ分かるように経営層と株主に利益が集中する。
 彼らは元々高所得なので消費性向が格段に低く、内需を支えない」

と指摘した当ウェブログの指摘は的中したと言えよう。

▽ 日本は北欧に比べて国内企業に甘く、投資庁を設立して劣等企業・経営者を淘汰すべき

『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』(日本経済新聞出版社)


また、安倍政権には法人減税について根本的な勘違いがある。
我が国では、法人税引き下げはGDPを改善させておらず、
自民党がヘマばかりしていた「失われた20年」の間に法人税率は低下していたのだ。

▽ こちらにはっきり書いてある。

『税金の抜け穴 国民のほとんどが知らない納税で「得する話」「損する話」(大村大次郎,角川書店)


当ウェブログの主張は基本的に事実が証明したと言えよう。

「OECD等の資料によれば、法人減税した国は税収の伸びが鈍く、
 法人減税を行っていない国の方が税収を伸ばしていたという」

「「減税すれば税収が減る」という至極当然の結果である。
 我が国でも90年代後半に所得税減税を行っても消費が増えず、
 家計金融資産ばかり肥え太ったという厳然たる事実がある」

「失われた20年の間に法人税は約10%低下したが給料は上がらず、逆に減少した」

「公益と僭称して自らの懐を肥やそうとする連中、
 納税よりも政治献金で政策を操ろうとする輩は
 アメリカ・イギリス・インド・ロシアに大勢いて富の集中を促進している」

「彼らの病原菌に感染した連中がこの日本にも確実に存在する。
 企業や企業経営層の利益を図る政策を推進して
 あたかもそれが「社会全体の利益である」かのように偽り、
 自らだけでなく人々をも洗脳しようとしているのである」

「警告しておく。決して彼らを信用してはいけない。
 彼らの美辞麗句や国益公益は、彼ら自身の利益と同義である。
 日本が真に公平で豊かな国になるには、彼らの嘘を粉砕しなければならないのだ」

他国の経済から真摯に学ばない安倍政権が、
実力にそぐわない高みから転落し経済史家に断罪されるのは必至である。

 ↓ 参考

胡散臭い「法人税パラドックス」は矢張りプロパガンダだった - 法人減税で税収減少、という当然の結果
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/cbff5074943bfdffe0eba0920ab71728

「六重苦」は日本企業の醜悪な二枚舌 - 円安でも進む海外生産、内部留保は1年で6兆円も急増
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9cf3dc1afa84673f7b3a99479d771008‎

▽ プルトクラート(政治と癒着した超富裕層)は、自己の利益と公益の区別がつかなくなっている

『グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代』(クリスティア・フリーランド,早川書房)


法人税29%目指す=安倍首相(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140625-00000001-jij-pol
”安倍晋三首相は24日夜のテレビ東京の報道番組で、20%台を目指す法人税の実効税率引き下げについて、「われわれが目指しているのは、まずはドイツ(の水準)だ」と述べ、ドイツ並みの29%程度を目標とする考えを明らかにした。
 首相は法人税改革に関し「国際社会の常識の中で競争力を維持しつつ、ただ単に引き下げ競争ということではなく、さまざまな日本の強さを磨いていきたい」と強調した。
 農協改革については、「全国農業協同組合中央会(JA全中)の姿は変えていく」と改めて表明。「今まで60年間、(農協)改革について述べた人は自民党議員の首相でいたか。私が初めてだ。必ず農協改革はやり遂げる」と意欲を示した。”

第一次安倍内閣と第二次安倍内閣で最大の変化はこうした「口先だけのうまさ」である。
中身がないのにいかにも良さそうに聞かせる小手先の技術だけは妙に進歩した。

それにしてもこうした「オレオレ詐欺」的な何ちゃって改革アピールが
政治家として大恥晒しだとなぜ側近は教えないのか。
自分でわざわざアピールしなければならないのは、偽物である何よりの証拠だ。

農業が日本のGDPや雇用の中に占める比率を見れば、
これが成長政策でも何でもないことは明白である。
付加価値の高め方を知らないからこうした口先改革しか語れないのだ。


ドイツの富の分配状況、ユーロ圏で最も不平等=経済研究所(reuters)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA1Q02L20140227
”ドイツ経済研究所(DIW)の調査で、ドイツにおける富の分配状況が、ユーロ圏諸国のなかで最も不平等となっていることが分かった。
 調査によると、最富裕層は国民の1%で、少なくとも80万ユーロ(109万ドル)の個人資産を保有。一方、成人の25%以上が無資産、もしくは純債務の状況となっている。
 DIWのリサーチ・アソシエート、マルクス・グラブカ氏は「ユーロ圏で、ドイツほど富の分配が不平等な国はない」と指摘した。
〔中略〕
 旧西独地域の成人が保有する個人資産は平均9万4000ユーロ、一方旧東独地域では4万1000ユーロ超にとどまっている。
 調査対象となった個人資産には、保有不動産、金融資産、金銭的価値のあるその他資産、および債務が含まれる。”

これが安倍政権が法人減税で目指しているドイツ経済の現状である。
ここには書いていないが、ドイツは北欧より女性就業率や出生率も低いため、
中長期的な経済低迷は確実と言ってよい。

しかも日本にはドイツほどの手厚い社会保障がない。
日本国民を実験台とする傲慢な自民党政権の試みは、無様な失敗に終わるだろう。
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