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胡散臭い「法人税パラドックス」は矢張りプロパガンダだった - 法人減税で税収減少、という当然の結果

2014-02-24 | いとすぎから見るこの社会-全般
少し前に元ソロモンの赤城氏が興味深い指摘を行っており、
昨年の市場活況がアベノミクス要因ではなく海外ファンドの「作った」相場であること、
大企業に公費で恩恵を与えた末に破綻したデトロイトが未来の日本の姿かもしれないこと、
いずれも切れ味鋭い指摘であるのだが、注目したい点は他にもある。

「規制緩和の効果を声高に唱える向きもあるが、
 多くは恩恵を期待する特定の業界、企業の代弁者」

という本質を見抜く洞察力を示していたのである。

当ウェブログも前々から同趣旨の主張を行ってきたのだが、
つい最近の毎日新聞報道が赤城説の正しさを裏付けた。

OECD等の資料によれば、法人減税した国は税収の伸びが鈍く、
法人減税を行っていない国の方が税収を伸ばしていたという。

何のことはない、「減税すれば税収が減る」という至極当然の結果である。
我が国でも90年代後半に所得税減税を行っても消費が増えず、
家計金融資産ばかり肥え太ったという厳然たる事実がある。

尚、元国税の大村氏は「法人減税は労働者の給料を引き下げる」としている。
事実、失われた20年の間に法人税は約10%低下したが給料は上がらず、逆に減少した。

▽ こちらを参照のこと

『税金の抜け穴 国民のほとんどが知らない納税で「得する話」「損する話」(大村大次郎,角川書店)


当ウェブログの主張は以下の通りである。

「日本は声の大きい大企業に甘く、働かない偽弱者にも甘いのだから、
 成長率・生産性・一人当たりGDPの全てでスウェーデンに負けるのは当然だ」

「法人税減税は「大企業の収益の成長政策」であり、
 アメリカを見ればすぐ分かるように経営層と株主に利益が集中する。
 彼らは元々高所得なので消費性向が格段に低く、内需を支えない」

「日本の大企業には根本的な問題がある。
 低収益・経営者の居座り・進まない企業の新陳代謝である。
 優秀な企業もあるがそうでない企業も多いのだ」

「真の成長政策は、経営者同士・企業間の競争を促進し、
 キャッシュを貯め込んで投資も収益も雇用も増やせない
 劣等企業や経営者を追放することである。
 そのためには海外からの対日投資を呼び込む投資庁も必要だ」

「同時に、雇用政策では解雇規制にだけ集中する視野狭窄をやめ、
 北欧型の積極的労働市場政策から学び、
 有能な労働者の流動化を進めるべきである」

「配偶者控除や第3号被保険者、退職金控除といった働かない者へのバラマキをやめ、
 育児・福祉・医療といった労働力不足分野で働く者への支援に所得移転すべきである」

「今年財政破綻した米デトロイト市では、公的資金まで入れて
 巨大企業GMを復活させたが、GMは新規投資も雇用も
 地元では増やさず、法人税も払っていない。

「日本でも声と政治力だけは大きくて成長力の低い大企業を優遇すれば、
 裏切られたデトロイトの二の舞となるであろう」

OECDの資料も以上の主張を裏付けつつあるようだ。

 ↓ 参考

「財政破綻したデトロイトは未来の日本」- 公費で大企業を優遇しても税収・雇用とも増えない
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/50d0ce5dcb89dfa391b6c12944f8cf97

「第三の矢」の大半は経済成長と無関係、大企業へのバラマキだ - 企業と経営者の新陳代謝が足りない
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60ddbf459b3e3bfacb58a872b7262dfc

「六重苦」は日本企業の醜悪な二枚舌 - 円安でも進む海外生産、内部留保は1年で6兆円も急増
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9cf3dc1afa84673f7b3a99479d771008‎

▽ 日本は北欧に比べて国内企業を甘やかし過ぎており、FDIも貧弱

『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』(日本経済新聞出版社)


法人減税:税収と無関係? OECD資料、国内議論影響も(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/2040221k0000m020145000c.html
法人税率を引き下げても、法人税収が増える「法人税パラドックス」という考えが脚光を浴びているが、引き下げた国と引き下げていない国を比較した場合、経済協力開発機構(OECD)などの資料では税収の伸びの因果関係は認められないことが分かった。税収の増減は景気動向の影響が大きいことを示すもので、「法人税パラドックス」に反する内容。
〔中略〕
 OECD諸国のうち、1995年から2011年の間に法人税率を引き下げた英国やドイツなどの28カ国は、95年の法人税収を100とした場合、11年には平均で294にまで上昇した。一方、その間に法人税率を引き下げていない米国、フランスなど4カ国の11年の平均は479で、引き下げた国を上回った。日本は11年に75にまで落ち込んだ。
 ITバブルが崩壊した00~01年と、リーマン・ショックが起きた08~09年は、引き下げた国も引き下げない国も税収が落ちており、景気の悪化の影響を強く受けたとみられる。
 経団連などの経済団体は国際競争力確保の観点から、近隣の中国や韓国と同水準の25%程度への税率引き下げを求めている。安倍晋三首相も引き下げに前向きで、政府の経済財政諮問会議や政府税制調査会で議論が進んでおり、6月に発表する「骨太の方針」の新たな成長戦略の目玉にしたい考え。背景には法人税率を下げれば、企業活動が活発になり、法人税収が増えるとの考えがある。
 法人税の実効税率1%あたりの税収は14年度予算案で約4700億円にのぼる。10%の引き下げは税収全体(50兆円)の1割にあたる約5兆円の減収になることから、財源の確保が課題になっている。【葛西大博】”

この記事はOECDやシンクタンクの見解ではなく、
OECDの資料を元にした執筆者の見解かもしれないが、重要な指摘だ。

税収が増えるということは経済成長率の高さを意味するから、
経済学で言う「税制は経済成長に中立」という命題は矢張り正しかったようだ。
今後も法人税率が税収や成長率、一人当たりGDPに与える影響についての研究を望みたいが、
成長政策を偽称する政治家や財界人、評論家が嘘つきで自分の利得を図っている可能性は濃厚だ。

公益と僭称して自らの懐を肥やそうとする連中、
納税よりも政治献金で政策を操ろうとする輩は
アメリカ・イギリス・インド・ロシアに大勢いて富の集中を促進している。

彼らの病原菌に感染した連中がこの日本にも確実に存在する。
企業や企業経営層の利益を図る政策を推進して
あたかもそれが「社会全体の利益である」かのように偽り、
自らだけでなく人々をも洗脳しようとしているのである。

▽ アメリカ・イギリス・ロシア・インドはみな、「合法的腐敗」の国である

『グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代』(クリスティア・フリーランド,早川書房)

警告しておく。決して彼らを信用してはいけない。
彼らの美辞麗句や国益公益は、彼ら自身の利益と同義である。
日本が真に公平で豊かな国になるには、彼らの嘘を粉砕しなければならないのだ。
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