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みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

GWの新刊 -『中国不動産バブル』『日ソ戦争』『世界の富裕層は旅に何を求めているか』『体験格差』等

2024-04-30 | こんな本を読んでいます
連休にはいつもの新刊紹介です。

ガザ・イスラエル関連の新刊が揃ってきましたが
どれも自分の言説を売り込もうと必死で煽動ばかり、
冷静に事実を分析し日本が現実的に可能な施策を説いたものは皆無。。
良識ある読者は騙されないようようくれぐれもご注意を!

理由は分かりませんが、自己の宣伝ばかりに終始していたり
視野狭窄で寧ろ賢明な読者から冷笑を受けそうな新刊が多いのは寒心に堪えません。。


『中国不動産バブル』(柯隆,文藝春秋)


 → 著者は優秀なエコノミストで
   中国経済分析において信頼できる数少ない専門家の一人。
   経済誌等で非常に的確な中国経済分析を行っており、
   凡俗な中国経済崩壊論とは比較にならない本格派。


『日ソ戦争 日本最後の戦い』(麻田雅文,中央公論新社)


 → 兵站と兵器を重視したソ連(現ロシア)に惨敗した旧日本軍、
   当時の日本人は現在のウクライナやガザより残虐な暴行や略奪を受け「憎しみしかない」、
   これが元外務省の親ロシア派達が口を噤む歴史的事実である。


『体験格差 』(今井悠介,講談社)


 → ここからは批判的考察が必要な新刊。
   「可哀想だから貧困家庭の子に体験を与えるべき」という上から目線の論理に終始、
    北欧の様な高負担と連帯を無視したトライバリズム(一部特定層のことしか考えない)であり
   本音では我が子にだけ多額の教育投資を行いたい中高所得層から費用対効果の乏しさを厳しく指摘され
   必ずしっぺ返しを受けるであろう。。

   (↓ そうした意味で以下の本と対照的でありながらよく似ている)


『〈共働き・共育て〉世代の本音 新しいキャリア観が社会を変える』(本道敦子 山谷真名 和田みゆき,光文社)


 → 高学歴高所得層の階級利己主義が露骨に出ている一冊、
   彼ら彼女らが子供との時間を増やしたいなら
   まず我が子を預けている保育士がまともな給料を貰える料金を払うこと、
   より低賃金長時間労働のエッセンシャルワーカーやブルーカラーの
   子育て支援を目的とした負担増を容認するのが先ではないのか!
   (欧州労働者のワークライフバランスは平等な重税高負担の上に築かれているからだ)。


『イスラエル戦争の嘘 第三次世界大戦を回避せよ』(手嶋龍一,中央公論新社)


 → ウクライナ問題でも散々ジャミングを繰り返したいつもの大袈裟コンビ、
   第三次世界大戦の危機と騒ぐのがもはや恒例行事になっている。。

   イスラエル極右とガザのテロ組織を日本の外交で抑止という発想自体が空理空論、
   売れさえすれば内容は問わないという安易な出版側の商業主義にそもそも問題がある。


『ガザ紛争の正体: 暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム』(宮田律,平凡社)


 → 露骨なパレスチナ寄り・反イスラエルで、
   ハマスの軍事部門によるテロ攻撃には知らんふりである。
   ただ佐藤や手嶋の一方的な主張を相対化するには役立つ。


『ハマス・パレスチナ・イスラエル-ーメディアが隠す事実』(飯山陽,扶桑社)


 → 分かり易過ぎる程のイスラエル寄り・反パレスチナ、
   但し「日本は仲介役になれる」という
   日本の自称専門家達のウソを厳しく批判している点では評価できる。


『グローバルサウスの逆襲』(池上彰,文藝春秋)


 → 「逆襲」でなく正しくは「混乱」であり、
   池上氏のツッコミで中和されてはいるものの
   第一次中東戦争でのジェノサイドや暴力的な入植を無視した
   佐藤のイスラエル寄りのバイアスに注意が必要。
   (モサド高官を師とする限界だろうか、議論としてはイアン・ブレマーの「G0」の枠内から出ていない)
   「GDPに意味がなくなった」等の放言は大胆だがはっきり言って軽躁で口舌の技に過ぎない。


『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(室橋祐貴,光文社)


 → ドグマ優先で冷静な分析ができていない、
   日本の若者が公共性軽視・プライベート重視の傾向を強めているのは
   国際比較調査で明白であり異常な売り手市場でスポイルされているのが実態である。
   (台湾とて日本以上の少子化であり著者が無思考に賞賛するのは間違っている)

   また、若年層にも社会分断がある事実は吉川徹氏が明らかにしており、
   橋本健二氏の言う階級的な分断も強く疑われるというのが実態である。
   なぜ韓国のような海外への大規模人材流出が日本で起きないか、真面目に研究すべきだ。


『世界の富裕層は旅に何を求めているか~「体験」が拓くラグジュアリー観光~』(山口由美,光文社)


 → ここからは連休に好適な良書、
   今の日本観光に必要な視点であり客数としては少なくとも
   経済効果は大きくマーケティングや観光政策に活かすべき。
   安倍・菅のような売国・自国貧困化の観光政策は日本にとって有害であるから。


『ウィキペディアでまちおこし――みんなでつくろう地域の百科事典』(伊達深雪,紀伊國屋書店)


 → 発想がユニークで楽しい、計量分析できるような効果は限定的だろうが
   心理的・文化的イノベーションと言えるのでは。


『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ 増補改訂版』(円満字洋介,エクスナレッジ)


 → 最後に連休に相応しいこちら。
   京都は個性豊かな歴史的建築が多いと思っていたが、
   ひとつひとつ固有の物語と背景があるのに驚きである。
   (今のインバウンド観光公害の京都だとなかなかゆっくり廻れなくなっているが。。)

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春の新刊 -『パラサイト難婚社会』『ウルトラ・ニッチ』『「叱らない」が子どもを苦しめる』etc

2024-03-24 | こんな本を読んでいます
恒例の新刊紹介です。
ガザ・イスラエル関連の新刊が少ないのは
日本国民の関心の薄さを示唆するものとしても、
円安・インフレ関連の本が目立たないのは
早くも「喉元過ぎれば」ということなのでしょうか?

今年の大きなテーマがまだ見えないなかで
家族・教育・安全保障・企業社会など人々の関心が
バラけている印象ではあります。


『パラサイト難婚社会』(山田昌弘,朝日新聞出版)


 → 日本のZ世代の結婚観は保守的で昭和と殆ど変わらず、
   しかもタイパ・コスパに拘っていると未婚離婚が確実に増え「難婚社会」必至である。


『なぜ東大は男だらけなのか』(矢口祐人,集英社)


 → これは批判的読み込みが必要な一冊、
   東大が男子学生ばかりで「男が八割」なのは女子含め
   学部選択のジェンダー・バイアスが強固だからであり、
   工学部偏重の歪みを是正して外大・芸大・看護と合併すれば
   大幅に女子学生比率が上がる
という単純な事実すら理解してない。。。


『「叱らない」が子どもを苦しめる』(藪下遊,筑摩書房)


 → 学校で不満なことがあると「いじめ」だと言い出す子供、
   修学旅行がつまらないと苦情を言う親が出現する奇妙な現代日本で
   新しいタイプの不登校が増えている。。


『オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略』(小泉悠,朝日新聞出版)


 → 第二次安倍政権の対ロ交渉が完全な失敗とし、
   優先されるのはMDと主張しているのはいずれも正しい。
   ロシアに媚びる日本の元外務省の論者による口だけリアリズムとはまさに格が違う。


『ウルトラ・ニッチ――小さく始めろ!ニッチを攻めろ!』(浜田寿人,ダイヤモンド社)


 → 経済・経営関連では数少ないお勧めできる新刊、
   「失われた30年」でも日本には優れた人材がいることを改めて確信させる。
   日本企業の売上が長らく低迷したままなのは、
   人材ではなく政治と政策が悪いからなのだ。
   (猶これ堀江氏の本ではない、氏は「世界のメジャー」を目指す気概は既にないようだ。。)。


『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』(ウリケ・シェーデ,日経BP/日本経済新聞出版)


 → こちらは批判的検証が必要。
   他者を悲観バイアス呼ばわりする著者こそ確証バイアスの典型で、
   東証の円安バブルがここにも波及したものと思われる、
   これを真に受けて喜ぶのは日本経済衰退の紛れも無い証左。


『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(小林祐児,集英社インターナショナル)


 → 上の著書で賞賛されている日本企業、皮肉なことに組織的病弊が顕在化している。
   何故か日本だけ管理職の健康度が悪化しており、その謎の解明を試みた一冊である。
   (平均寿命が短いことで知られていたサービス業の労働者も改善しているのだが。。)。


『なぜマンションは高騰しているのか』(牧野知弘,祥伝社)


 → 外国マネーによる浮かれた泡沫現象、
   無視された日本国民は中古を買うしかない。
   (タワマンのハイリスクも益々明らかになってきている。。)


『工作・謀略の国際政治 - 世界の情報機関とインテリジェンス戦 -』(黒井文太郎,ワニブックス)


 → お馴染み黒井氏が安全保障と密接に結び付いている諜報の最前線をレポート、
   早くもガザ紛争の裏面を分析しているのが興味深く、
   他にはウクライナでのCIAによる支援なども見ておきたい。
   (CIAも苦戦している中共にもっとページを割くべきと思うが。。)


『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』(高橋真樹,集英社)


 → 理屈として窓重視は理解出来るが湿気の多い日本では鵜呑みに出来ない、
   地中熱やコージェネ、V2Hと組み合わせて考える必要があろう。


『開業医の正体 患者、看護師、お金のすべて』(松永正訓,中央公論新社)


 → 診療所の診療報酬が病院の数倍である(全く同じ医療行為なのに)
   ことを正直に書いた点をまず賞賛したい、
   ただドイツのような開業規制により勤務医と負担を分かち合う発想は全くなさそうだ。。。


『死に方のダンドリ』(冨島佑允/奥真也/坂本綾子/岡信太郎/太田垣章子,ポプラ社)


 → 高齢者が賃貸の大家に忌避されるのは、
   実際に屡々家賃の長期滞納やごみ放置で大損失になるからである。


『サバの味噌煮は、ワインがすすむ 小泉武夫の「わが季節の食卓」』(小泉武夫,日経BP/日本経済新聞出版)


 → 最後にこちら。これは企画の勝利であり、
   ありそうでなかった一冊で先頭の写真も良い。
   日本経済新聞夕刊での連載を纏めたものだそうだが一冊に纏まっていると便利だ。

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新春の新刊 -『未婚と少子化』『戦狼中国の対日工作』『ルポ無料塾』『教養としての財政問題』etc

2024-02-12 | こんな本を読んでいます
連休には恒例の新刊紹介です。
ガザ・イスラエル関連は意外に良書が少ないような。。

しかし少子化・高齢者福祉・中国・台湾・教育と
各分野においてきらり光る新刊は出てますね。


『未婚と少子化 この国で子どもを産みにくい理由』(筒井淳也,PHP研究所)


 → 家庭庁の「こどもまんなか」は少子化対策とは全く関係がなく、
   寧ろ自分の子供を惨めにしないために子供数を抑制していること、
   そして婚姻率の低下こそが少子化の真因であること、
   非婚は経済面でのミスマッチが主因であると理路整然と論じる良書。


『教養としての財政問題』(島澤諭,株式会社ウェッジ)


 → これは昨年末に取り上げているが非常に重要な一冊。
   少子化対策財源には高齢者三経費の削減が最も効果大という指摘が非常に重要、
   (理由は単純明瞭、現役世代の経済負担軽減になるからである)
   但し奈義や下條の出生率急回復から全く学んでいないし、
   政策効果を高める現物給付の計量分析に触れるべきである。


『戦狼中国の対日工作』(安田峰俊,文藝春秋)


 → 中共による対日工作活動は既に在日中国人を介して日本に深く浸透しており、
   中国資本による土地取得などより遥かに深刻な問題である。
   自民党政権による中国からの留学生・労働者受け入れがいかに危険かも分かる。


『箱根駅伝は誰のものか: 「国民的行事」の現在地』(酒井政人,平凡社)


 → 箱根駅伝は読売新聞&読売テレビと有名監督のためのもので拝金主義に染まってしまった、
   有力選手は多額の「奨学金」でブランドものを次々買っている。


『台湾の本音』(野嶋 剛,光文社)


 → 台湾のいまをコンパクトに伝える一冊、
   深みにはやや欠けるがタイムリーでバランスが良い。


『日本人が知らない台湾有事』(小川和久,文藝春秋)


 → 漸く米シンクタンクのシビアな台湾有事シミュレーションを取り上げたのは良いが
   飽和攻撃による日本の大打撃予想を意図的に伏せており『米軍と人民解放軍』に遠く及ばない、
   しかも政府に忖度しイージスとパトリオットの有効性を誇張しており大減点。
   (米国の西太平洋への中距離ミサイル配備や日本版THAAD検討と外交カード化の方が遥かに効果的)

▽ 10年以上前の以下の本の方が分析はよりシビアである

『米軍と人民解放軍 米国防総省の対中戦略』(布施哲,講談社)



『ルポ 無料塾 「教育格差」議論の死角』(おおたとしまさ,集英社)


 → 矢張り教育投資で貧困の世代間連鎖は防げないと研究者が認めていた、
   しかも高所得層は「経済力によって受けられる教育が異なるのは当然」という
   利己的かつ自己正当化の論理に染まっている。

▽ 高所得層はこの通り、格差や貧困など完全に無関心で我が家の財布と我が子の利益ばかり考える

『世帯年収1000万円―「勝ち組」家庭の残酷な真実―』(加藤梨里,新潮社)



『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(針貝有佳,PHP研究所)


 → 内容自体は興味深いが北欧やドイツ関連で既出の情報が多く、
   女性就労率の高さや積極的労働市場政策が重要なのに言及していない。


『ギフティッドの子どもたち』(角谷詩織,集英社)


 → ギフテッドの90%以上は天才ではない、
   思考停止した脳天気なギフテッド称賛は有害である。


『なぜ日本は原発を止められないのか?』(青木美希,文藝春秋)


 → あの吉田所長をして「東日本壊滅」を覚悟させた福島原発の過酷事故を経ても猶、
   原発広告と安全神話は垂れ流され原子力研究者はカネのため原発擁護を続ける。。
   (この本に風力とコージェネ、V2Hにより脱原発という具体策が欠けているのが残念)


『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(川本 大吾,文藝春秋)


 → 中国漁船のような一つの要因だけに偏らないバランスの取れた新刊、
   ノルウェー漁業や漁獲枠に言及しているのは良いが
   温暖化の影響は今後研究で新事実が判明してゆくだろう。


『老けない最強食』(笹井恵里子,文藝春秋)


 → 「老ける肉」「老けない肉」ランキングが興味深い、
    巷の極端な健康関連本と違い概ね良識的な内容である。


『インドの食卓: そこに「カレー」はない』(笠井亮平,早川書房)


 → 最後にこちら。軽めの読み物ではあるが、
   いま日本の外食企業がインド進出に挑戦している様子もレポートされている。

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2023年/社会経済書ベスト10『日銀の責任』『ジェンダー格差』『不倫』『国家は巨大ITに勝てるのか

2023-12-26 | こんな本を読んでいます
今年も恒例、2023年のベスト10冊を選びました。
経済・社会に関する新刊の中で価値の高いものです。
研究者や編集者と違い、新味や学術的価値ではなく政策における有用性を重視しています。

直近のダイヤモンドや東洋経済の合併号のリストとは相当違います。
日本社会の喫緊の課題に正面から向き合っているかどうか、という見地です。

「今年も案の定、日本経済は着実に衰退して先進国で最悪水準の低成長、
 今年の新刊で、安倍や菅だけでなく与党やヒラメ官僚、そして多くの識者も
 海外の政策や事例から謙虚に学ぶ能力も意欲も欠けている事実が鮮明になってしまいました。。」

と三年前に書いたのですが、今年はコロナ明けが海外より遅くなったせいで
昨年より少しましになったものの依然として低成長の現実は変わらず。

日本政治は保守の自滅が鮮明になってきて妙なポピュリズムが流行り、
新刊でもおかしなものが増えているので良書を選ぶのが肝要です。


 ↓ これまでのベスト10

2022年/社会経済書ベスト10『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』『ウクライナ戦争』『統一教会』
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/1098cc3ad3ecc471e8f0173aae806e96

2021年/社会経済書ベスト10-『勤勉革命』『日本経済の長期停滞』『大下流国家』『低度外国人材』等
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e35b9ce85e47ae9ce50681bd919fffa1

2020年/社会経済書ベスト10-『デジタル化する新興国』『移民の経済学』『韓国社会の現在』etc
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/68eddd3d8095ab47d749e358fff26d47

2019年/社会経済書ベスト10-『人口で語る世界史』『貧困専業主婦』『年金「最終警告」』etc
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/7ac26986c0785b472ac1fdb463e8a1ee

2018年/社会経済書ベスト10-『新・生産性立国論』『新・日本の階級社会』『知ってはいけない2』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/896bb23d60c4c76e0757567ab5b70150

2017年/社会経済書ベスト10-『デジタルエコノミーは…』『子育て支援と経済…』『トランプ王国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9cab7d1ddc3a8f2d3acbd9fa08c8fcde

2016年/社会・経済書ベスト10 -『グローバリズム以後』『子育て支援が日本を救う』『教育超格差大国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0a2d0b434eed9677d1697b4a732267d8

2015年/社会・経済書ベスト10 -『奇跡の村』『日本国債暴落』『新・観光立国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60231fb53c5f0c34481596636d9b8f89

2014年/社会・経済書ベスト10 -『日銀、「出口」なし!』『米軍と人民解放軍』『社会保障亡国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/15fdce254ff70decccdc1cae539cd752


さて、それでは今年のトップ10です。


第1位 『日銀の責任 低金利日本からの脱却』

『日銀の責任 低金利日本からの脱却』(野口悠紀雄,PHP研究所)


 → はっきり言って、統計的事実からはアベノミクスは完全に失敗。
   円安で企業だけ儲け、日本経済は衰退したことが数値で示されている。
   GDPが伸びないと賃金は上がらない、言う迄もないことなのだが
   リフレ派はこの程度のことすら理解できず今も言い訳と負け惜しみを続けている。

▽ こちらも推奨、低成長のままで高齢者三経費にバラ撒き続けると社会保障負担が4割増になる未来

『2040年の日本』(野口悠紀雄,幻冬舎)



第2位 『ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか』

『ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか』(牧野百恵,中央公論新社)


 → ノーベル賞を受賞したゴールディン教授の著書よりこちらの方がお薦め。
   ゴールディン教授に限らず様々な実証研究の成果が幅広く紹介されている。

   中でも、柔軟な働き方を選好したり長い通勤時間を嫌うといった
   女性自身の選択により所得格差が広がる事実を指摘した功績は大きい。
   但し著者もバイアスが強く「わずかな事実」が偏見に繋がると決めつけておきながら
   当書の実証研究も「わずかな事実」程度で結論を出している箇所が複数ある。

   『貧困専業主婦』を見れば分かるように著者が思うより日本のジェンダーは特殊だ。
   世界的に見て家事育児時間が突出して長い日本女性のバイアスなど引き続き研究を望みたい。


第3位 『教養としての財政問題』

『教養としての財政問題』(島澤諭,株式会社ウェッジ)


 → こちらを推薦書に取り上げたエコノミストは慧眼だ。
   少子化対策には高齢者三経費の削減が効果大という指摘が非常に重要、
   (現役世代の経済負担軽減に繋がるからである)
   但し奈義や下條の出生率急回復から全く学んでいないし
   効果の大きい現物給付の計量分析に触れていないのは大失点。

   あと著者の立場(大学教員)から言えば若者擁護の姿勢は分からないでもないが
   少子化が進むのに大学を増やしたため若年層の人的資本は明らかに劣化している。
   著者はそれを実感している筈なのに沈黙しているのは怯懦であろう。


▽ 上掲書に比べやる気のなさが目立つこちら、現金給付や第三子支援が下策なのを書いたのはいいのだが。。

『なぜ少子化は止められないのか』(藤波匠,日経BP 日本経済新聞出版)



第4位 『国家は巨大ITに勝てるのか』

『国家は巨大ITに勝てるのか』(小林泰明,新潮社)


 → こちらは読売記者による秀作レポート、
   経済誌が推薦書に入れていないのは節穴と思う。
   所謂GAFAMの強欲さや独占の問題が追及された
   数年前の米国議会でのやり取りを詳細に伝えている。
   特にアップルの執拗な訴訟攻勢やアマゾンの傲慢さが印象的。

   遅きに失した観はあるがさくらインターネット等の
   国内勢への政策援護は絶対必要と改めて実感させられた。


第5位 『不倫―実証分析が示す全貌』

『不倫―実証分析が示す全貌』(五十嵐彰,中央公論新社)


 → 男性は職場に女性が多いこと、女性は自由な時間が多いことが
   不倫の誘因になることを明らかにした客観的で緻密な研究である。
   いずれ女性の不倫率25%も上昇して男女平等になってゆくだろう。。

   本来、ジェンダー平等というのは女性の責任が重くなることでもあり、
   その利己主義や欲望による負の側面が拡大することですらあるのだ。

▽ ジェンダー平等ばかり拘る日本のエリート女性のバイアスは、上掲のような暗部を無視する傾向あり

『さらば,男性政治』(三浦まり,岩波書店)



第6位 『シン・男がつらいよ』

『シン・男がつらいよ 右肩下がりの時代の男性受難』(奥田祥子,朝日新聞出版)


 → 日本の男性の辛さは世界でも突出して最悪水準だと
   OECDも調査で認めた
ことにまず驚かされた。

   日本の高学歴女性が完全無視している領域であり、
   勇敢にもこの問題を世に問うた著者に敬意を表したい。
   また、こうした辛さを男女双方が背負うのが真のジェンダー平等ではないだろうか?


第7位 『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』

『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』(小泉悠,文藝春秋)


 → ジャベリンのような限定的な支援しかないウクライナの善戦が想定外だったなど
   当初の見方が修正されてゆく過程を正直に述べているのが誠実で評価できる。
   見通しの誤りを何故か認めないトッドや佐藤より的確な視点、
   矢張りウクライナ侵攻は世界大戦ではなく朝鮮戦争に近いと思われる。

▽ 「即時停戦」を唱えてしまった論者二人、完全にロシア擁護になってしまっていて黒歴史確実だろう。。

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』(佐藤優
・手嶋龍一,中央公論新社)



第8位 『ロシアの眼から見た日本 国防の条件を問いなおす』

『ロシアの眼から見た日本 国防の条件を問いなおす』(亀山陽司,NHK出版)


 → 佐藤優・鈴木宗男らとは大違いなリアリズムに基づく冷静な分析である。
   ロシアは伝統的に相手の弱みにつけこんでくる外交姿勢だから
   安倍の北方領土交渉は最初から失敗必至だったことが分かる。
   (著者によれば、北方領土問題の決定権は日本にないという)
   但し特に後半が外交偏重、交渉で平和に出来るかのような思い込みが窺われる。。

▽ EU危機以来ずっと予言が外れ続けているトッド、最後に「ロシアも悪い」とする無様さ。。

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(エマニュエル・トッド,朝日新聞出版)



第9位 『英語と中国語 10年後の勝者は』

『英語と中国語 10年後の勝者は』(五味洋治,小学館)


 → 国力低下とともに日本語の存在感も低下している現状だが
   ASEANや東欧等で日本語学習ニーズがあるのに残念ながら教え手は不足。
   経済面や人材獲得から言えば確かに日本版「孔子学院」が必要だ。
   (中国と違いスパイ目的はないから歓迎される筈である)

▽ 上掲書のような戦略眼がなく、自国の都合ばかりだと以下のような単純労働移民受け入れにしかならない。。

『人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン』(毛受敏浩,朝日新聞出版)



第10位 『「イクメン」を疑え!』

『「イクメン」を疑え!』(関口洋平,集英社)


 → イクメンの本質はエリートの特権の象徴であり
   フェミニズムを装った新自由主義に立脚していると指摘する鋭い論考、
   非大卒を排除し貧困と非婚を黙殺しているイクメン論の欺瞞性を暴いた功績は大きい。
   米国では移民を、日本では非大卒を低賃金でケアサービスに使うことで
   高所得層が仕事と家庭を「幸せに」両立させているのだ!

▽ こちらは日本男性の仕事・通勤時間の長さを指摘したのは良いが、自己の特権性に無自覚なのが残念

『ポストイクメンの男性育児-妊娠初期から始まる育業のススメ』(平野翔大,中央公論新社)



次点 『世界で第何位?-日本の絶望 ランキング集』

『世界で第何位?-日本の絶望 ランキング集』(大村大次郎,中央公論新社)


 → こちらは意外な良書で、下手なリフレ派の言い訳より遥かに中身がある。
   日本は主要国の中で対内投資が最低、しかも非正規雇用は最も多いから
   経済低迷
に陥ったことが数値から明瞭に理解出来るのが素晴らしい。
   日本企業が生産拠点を海外移転すると生産性が悪化する
   という説も現実と合致しており今後の実証研究に期待したい!


次点 『ルポ 大学崩壊』

『ルポ 大学崩壊』(田中圭太郎,筑摩書房)


 → これは大学私物化の典型的な例であり必見、
   愚かなポピュリスト政治家が大学無償化を行うと
   こうした無軌道で無法な経営をしている大学にも
   巨額の税が投入され続ける訳で、重大な問題である!


次点 『患者が知らない開業医の本音』

『患者が知らない開業医の本音』(松永正訓,新潮社)


 → これは正直に書いてしまっているのが興味深い。
   矢張り開業は「失敗した人を見たことがない」ような世界で
   著者も例に漏れずすぐ外車を買ってしまった
ことを告白している。。
   他国ではあり得ないような開業自由や情報公開の遅れには触れずに
   日医を弱小団体とするナイーブさにも仰天させられた。


番外編:『バフェット解剖 世界一の投資家は長期投資ではなかった』

『バフェット解剖 世界一の投資家は長期投資ではなかった』(前田昌孝,宝島社)


 → こちらは何度か紹介しているがかなり好著。
   実はバフェットは長期投資ではなく中期短期の取引もあり
   ハイテク銘柄でもかなり儲けていてその代表例がアップルだとか。

   今の東証がバフェット指数では歴史的な割高であることも明示しており
   非常に参考になる本。単純で無思考な賞賛を排した冷静な分析が評価高い。

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晩秋の新刊 -『運は遺伝する』『バフェット解剖』『首都防衛』『どうすれば日本経済は復活できるのか』等

2023-11-23 | こんな本を読んでいます
休日なので新刊紹介です。
暫くするとガザ・イスラエル関連本が一気に出ると思われますが、
ウクライナや生成AI関連の新刊がすっかり減っています。

ただ探してみると矢張り読むべきものはあって、
遺伝・投資・災害・経済などで目を配っておきたい本も出てます。


『運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」』(橘玲/安藤寿康,NHK出版)


 → 普段は露悪的な橘氏も安藤教授に「指導」されてか
   珍しく良識的な言論に終始しており好ましい、
   「東アジアの男性はおとなしい」説については推測に過ぎないので
   (生産年齢人口の急増した時期の戦前日本は決して大人しくなかった)
   今後の研究を待ちたい。島か、半島か、大陸かでも相当違うように思えるが。。


『バフェット解剖 世界一の投資家は長期投資ではなかった』(前田昌孝,宝島社)


 → 実はバフェットは長期投資ではなく中期短期の取引もあり
   ハイテク銘柄でもかなり儲けていてその代表例がアップルである。

   今の東証がバフェット指数では歴史的な割高であることも明示しており
   非常に参考になる本。単純で無思考な賞賛を排した冷静な分析が光る。


『首都防衛』(宮地美陽子,講談社)


 → 屢々メディアに取り上げられる直下地震や富士山噴火、水害だけでなく
   ミサイルもリスク要因に入れなければならなくなった日本社会。
   この本にも大した対策は載っていないが現状の総合的把握には良い。
   (個人的には早くタワマン規制しメトロをシェルター化すべきと思うのが。。)


『どうすれば日本経済は復活できるのか』(野口悠紀雄,SBクリエイティブ)


 → 現状認識は的確だが成長率低下している米国から相変わらず影響受け過ぎで、
   デジタル化は効用創出効果が著しく低いというのが実態であり
   特定層に付加価値が集中する欠点があるという事実を直視した方が良い。
   (但し、日本は出生率向上より就業率向上の方が重要との指摘は正しい)


『インド―グローバル・サウスの超大国』(近藤正規,中央公論新社)


 → 昨今のインド本ブームは、矢張り2020年代が
   インド台頭・中国斜陽の時代となることを物語っているかのようで、
   まだ超大国とは言えないインドについて経済面からその長短を捉えている一冊。


『フィンランドの覚悟』(村上政俊,扶桑社)


 → フィンランド経済の分析(成長率も出生率も低迷している)欠如だけでなく
   著者のイデオロギーのバイアスが強過ぎるので注意を要する。
   フィンランドでの徴兵制復活は地政学的・軍事的理由であり
   目下MDが最重要である日本とは全く状況が異なるのだが、
   冬戦争でソ連赤軍を苦しめた史実などフィンランドの尚武の側面を知らない人には向く。

▽ 上掲の本は安全保障や軍事面の研究が浅く、以下の一冊(既に名著)を読んだ方が遥かに賢明

『米軍と人民解放軍 米国防総省の対中戦略』(布施哲,講談社)



de="osi&th=1&psc=1" style="text-decoration:none;" target="_blank">『朝、起きられない病~起立性調節障害と栄養の関係』(今西康次,光文社)


 → 朝に起きられず不登校の半数近くは原因が栄養素の欠乏、という興味深い説。
    かなり大胆な仮説であり今後の研究を待ちたい 。


『引きこもりの7割は自立できる』(二神能基,新潮社)


 → この分野では草分けである二神氏の新著。
   最近の世代は「やりたいことがない」のが特徴とか。
   (安倍の長期政権の悪影響が強く疑われる)


『高学歴難民』(阿部恭子,講談社)


 → 矢張りロースクールは貧困転落を生み出していたことが分かる、
   海外留学の果てにNPO就職で低所得という体験談も。。。


『認知症にならない100まで生きる食事術』(牧田善二,文藝春秋)


 → 糖質批判でお馴染みの牧田先生、
   奇を衒ったところが少なく良識的。
   あとこの手の健康関連本としては珍しくデザインが工夫されている。


『バロック美術-西洋文化の爛熟』(宮下規久朗,中央公論新社)


 → 最後にこちら。
   新書としては有名作品の写真がかなり多く、
   隙間時間や旅の移動時間に読むのに適する。

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