今年も恒例、2024年のベスト10冊を選びました。
経済・社会に関する新刊の中で価値の高いものです。
研究者や編集者と違い、新味や学術的価値ではなく政策における有用性を重視しています。
直近のダイヤモンドや東洋経済の合併号のリストとは相当違います。
日本社会の喫緊の課題に正面から向き合っているかどうか、という見地です。
「今年も案の定、日本経済は着実に衰退して先進国で最悪水準の低成長、
今年の新刊で、安倍や菅だけでなく与党やヒラメ官僚、そして多くの識者も
海外の政策や事例から謙虚に学ぶ能力も意欲も欠けている事実が鮮明になってしまいました。。」
と2020年に書いたのですが、今も依然として低成長の現実は変わらず。
昨年は「日本政治は保守の自滅が鮮明になってきて妙なポピュリズムが流行り」
と書きましたが2024年は更にそれが酷くなり都知事選でも兵庫知事選でも国政選挙でも
ポピュリスト候補やポピュリスト政党が近視眼なB層の低リテラシー票を集める始末。
良書の必要性は益々、高まっています。
↓ これまでのベスト10
2023年/社会経済書ベスト10『日銀の責任』『ジェンダー格差』『不倫』『国家は巨大ITに勝てるのか
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/7486e68abff17b9c47c8a6871b7e387f
2022年/社会経済書ベスト10『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』『ウクライナ戦争』『統一教会』
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/1098cc3ad3ecc471e8f0173aae806e96
2021年/社会経済書ベスト10-『勤勉革命』『日本経済の長期停滞』『大下流国家』『低度外国人材』等
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e35b9ce85e47ae9ce50681bd919fffa1
2020年/社会経済書ベスト10-『デジタル化する新興国』『移民の経済学』『韓国社会の現在』etc
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/68eddd3d8095ab47d749e358fff26d47
2019年/社会経済書ベスト10-『人口で語る世界史』『貧困専業主婦』『年金「最終警告」』etc
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/7ac26986c0785b472ac1fdb463e8a1ee
2018年/社会経済書ベスト10-『新・生産性立国論』『新・日本の階級社会』『知ってはいけない2』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/896bb23d60c4c76e0757567ab5b70150
2017年/社会経済書ベスト10-『デジタルエコノミーは…』『子育て支援と経済…』『トランプ王国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9cab7d1ddc3a8f2d3acbd9fa08c8fcde
2016年/社会・経済書ベスト10 -『グローバリズム以後』『子育て支援が日本を救う』『教育超格差大国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0a2d0b434eed9677d1697b4a732267d8
2015年/社会・経済書ベスト10 -『奇跡の村』『日本国債暴落』『新・観光立国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60231fb53c5f0c34481596636d9b8f89
2014年/社会・経済書ベスト10 -『日銀、「出口」なし!』『米軍と人民解放軍』『社会保障亡国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/15fdce254ff70decccdc1cae539cd752
さて、それでは2024年のトップ10です。
第1位 『金利を考える』
→ 円安は家計部門を貧しくし輸出企業に富を移転するという
まさに今起きている現実を鋭く衝いている良書。
しかも人材流出を招く弊害が大きいという重要な指摘も。
▽ 最近売れているこちらは主張ごもっともだが、アベノミクス失敗を断罪した類書は何冊も出ている
▽ これは東洋経済が取り上げた、経済統計から見てアベノミクス失敗とする至極当然の結論だが類書多い。。
第2位 『分断国家アメリカ 多様性の果てに』
→ 下手な評論家や作家より遥かに優れたレポートで、
人種や移民、人権問題を巡って保守とリベラルが激しく対立する
米国社会の深刻な現実を如実に描き出している。
特に、不法移民が増える一方で米国市民に不満が高まり
トランプ再選の下地をつくったという事実は重要。
(日本にとってもこの米国社会の歪みは他人事でない)
トランプ再選と移民抑制によって米国経済の成長率低下は間違いない。
▽ 寧ろ、研究者の方が欧米社会の現実を直視せず難民受け入れに固執するという状況
▽ アファーマティブアクションの廃止・退潮についても、研究者より上の読売記者のレポートの方が的確
第3位 『未婚と少子化』
→ 家庭庁の「こどもまんなか」は少子化対策とは無関係であること、
寧ろ国民は自分の子を惨めにしないために子供数を抑制していること、
そして婚姻率の低下こそが少子化の真因であること、
非婚は経済面でのミスマッチが主因であること、理路整然と論じる良書。
(但し効果的な対策の提案が皆無に等しいのが残念)
▽ 少子化対策には高齢者三経費の削減が必要、とするのが本来は正論かつ効果的である(昨年に当ウェブログで掲載)
▽ だが高所得層はこの通り、日本の少子化問題より我が家の財布と我が子の利益が優先
第4位 『検証 大阪維新の会 ――「財政ポピュリズム」の正体』
→ 維新が自治体を牛耳るようになっても大阪の経済低迷は変わってない、
所詮は財政ポピュリズムである、と維新の会の実態を鋭く批判した一冊。
(因に、当書では触れていないが大阪は低出生率も一向に改善していない)
猶、維新の財政ポピュリズムはトランプの経済政策とかなり近く両者とも失敗必至である。
▽ 下掲書もそうだが、維新のように少子化対策失敗しても持論が正しいかのように開き直る論者が多過ぎ
第5位 『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』
→ 野口氏の主張は常に、杜撰なリフレ派より遥かに正しい。
ただアメリカ経済に対してはオーバーバリューが顕著で
現役世代1人当たりGDP成長で見ると大したことない。
その強さが人口増加に支えられているのは明白である。
第6位 『教養としての国際政治』
→ テレ東でお馴染みの豊島氏、内容は本格派でパレスチナやウクライナ関連など
はっきり言って元外交官あたりの解説よりかなり優れており参考になる。
(例えば池上氏と組んで番組を持っても良い位の水準である)
あの小泉悠氏が賞賛しているのも当然であろう。
第7位 『日ソ戦争 日本最後の戦い』
→ 兵站と兵器を重視したソ連(現ロシア)に旧日本軍は惨敗した。
当時の日本人は現在のウクライナやガザより残虐な暴行や略奪を受け
「憎しみしかない」との証言すらある。
(しかも政府と軍の上層部から多くの日本人が見捨てられている)
これこそ元外務省の親ロシア派達が今も口を噤む歴史的事実である。
第8位 『中国不動産バブル』
→ 著者は優秀なエコノミストであり
中国経済分析において信頼できる数少ない専門家の一人。
経済誌等で非常に的確な中国経済分析を行っており、
凡俗な中国経済崩壊論とは比較にならない本格派の内容。
▽ 対中関係においてはこちらの方が良いが、経済分析でないので今回の選に漏れた。。
▽ こちらも経済分析ではないが、台湾有事を想定した米側のシビアな予測を紹介しており貴重
第9位 『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』
→ 日本では一人当たり労働時間が減っているとの認識は正しいが、
労働投入の梃入れを諦めてしまい処方箋が良くないのが残念。
「年収の壁」打破によって北欧型の経済への転換、
デジタル化のためインド・ベトナム・東欧の高度人材受け入れが必要な筈である。
第10位 『弱者男性1500万人時代』
→ 日本の男性は女性より不幸でかつ短命・孤独・発達障害が多く
状況が深刻という悲しい現実を初めて指摘した貴重な一冊。
この事実を女性側から認めた功績は大きい、高学歴女性による
上から目線の「男性は降りろ」論より感覚がまともである。
▽ 一般国民と乖離した恵まれた出自で高学歴な著者だと、露骨にジェンダーバイアスが入る。。
▽ 上掲書には皮肉なことに、日本の女性の階層意識は夫の所得や階層から強い影響を受ける
次点 『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』
→ 就職氷河期世代の苦境についての本格研究として評価でき、
女性の就業・正規雇用率の世代差が数年で解消されたことや
出生率への影響が限定的など驚きの事実の数々が明らかになっている。
ただ残念なことに提唱されている処方箋は非力であり
北欧型のフレキシキュリティによる格差是正しか道がない筈だが。。
次点 『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』
→ 北方領土交渉が最初から失敗必至だったことと、「プーチンは既に敗北」は正しい。
但し後者は著者の言うようなウクライナの抵抗によるのではなく旧ソ連のアフガン侵攻と同様に
戦略の誤りによる戦争長期化で国力を損耗し内部から自壊するためと考えるのが至当だろう。
ウクライナ侵攻へのロシア内部での支持が高いのは多くのロシア人に「他人事」であるだけでなく
ウクライナ人への差別があるのではという著者の観察は興味深い。
(確かに、プーチンのロシアに迎合的な鈴木宗男などの論者の傾向を言い当てているようだ)
次点 『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』
→ 中国漁船の乱獲のような一要因だけに偏らないバランスの取れた良書、
ノルウェー漁業や漁獲枠に言及しているのも的確で評価できる。
ただ温暖化の影響については今後研究で判明してゆく新事実もあろう。
次点 『ジャパニーズウイスキー入門』
→ こちらは本当に良い内容。「クラフト蒸留所」というネーミングも絶妙、
近年の日本経済で最も付加価値を高めた分野であると言って良く
この本格派の入門書でジャパニーズウィスキーの洋々たる未来も見えてくる!
番外編1:『天空の庭』
→ 日本には優れた人材は大勢いる。
(経済が不振なのは人口動態老化と政策の失敗によるのだ)
最初はCGにしか見えない珠玉の作品集。
番外編2:『フランス 26の街の物語』
→ フランスの地方の景観は本当に素晴らしい。
インバウンドの上客を地方に誘客したければ
景観はフランスやイタリア、スペインを参考にすべきなのだ。
経済・社会に関する新刊の中で価値の高いものです。
研究者や編集者と違い、新味や学術的価値ではなく政策における有用性を重視しています。
直近のダイヤモンドや東洋経済の合併号のリストとは相当違います。
日本社会の喫緊の課題に正面から向き合っているかどうか、という見地です。
「今年も案の定、日本経済は着実に衰退して先進国で最悪水準の低成長、
今年の新刊で、安倍や菅だけでなく与党やヒラメ官僚、そして多くの識者も
海外の政策や事例から謙虚に学ぶ能力も意欲も欠けている事実が鮮明になってしまいました。。」
と2020年に書いたのですが、今も依然として低成長の現実は変わらず。
昨年は「日本政治は保守の自滅が鮮明になってきて妙なポピュリズムが流行り」
と書きましたが2024年は更にそれが酷くなり都知事選でも兵庫知事選でも国政選挙でも
ポピュリスト候補やポピュリスト政党が近視眼なB層の低リテラシー票を集める始末。
良書の必要性は益々、高まっています。
↓ これまでのベスト10
2023年/社会経済書ベスト10『日銀の責任』『ジェンダー格差』『不倫』『国家は巨大ITに勝てるのか
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/7486e68abff17b9c47c8a6871b7e387f
2022年/社会経済書ベスト10『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』『ウクライナ戦争』『統一教会』
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/1098cc3ad3ecc471e8f0173aae806e96
2021年/社会経済書ベスト10-『勤勉革命』『日本経済の長期停滞』『大下流国家』『低度外国人材』等
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/e35b9ce85e47ae9ce50681bd919fffa1
2020年/社会経済書ベスト10-『デジタル化する新興国』『移民の経済学』『韓国社会の現在』etc
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/68eddd3d8095ab47d749e358fff26d47
2019年/社会経済書ベスト10-『人口で語る世界史』『貧困専業主婦』『年金「最終警告」』etc
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/7ac26986c0785b472ac1fdb463e8a1ee
2018年/社会経済書ベスト10-『新・生産性立国論』『新・日本の階級社会』『知ってはいけない2』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/896bb23d60c4c76e0757567ab5b70150
2017年/社会経済書ベスト10-『デジタルエコノミーは…』『子育て支援と経済…』『トランプ王国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9cab7d1ddc3a8f2d3acbd9fa08c8fcde
2016年/社会・経済書ベスト10 -『グローバリズム以後』『子育て支援が日本を救う』『教育超格差大国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0a2d0b434eed9677d1697b4a732267d8
2015年/社会・経済書ベスト10 -『奇跡の村』『日本国債暴落』『新・観光立国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60231fb53c5f0c34481596636d9b8f89
2014年/社会・経済書ベスト10 -『日銀、「出口」なし!』『米軍と人民解放軍』『社会保障亡国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/15fdce254ff70decccdc1cae539cd752
さて、それでは2024年のトップ10です。
第1位 『金利を考える』
![]() | 『金利を考える』(翁邦雄,筑摩書房) |
→ 円安は家計部門を貧しくし輸出企業に富を移転するという
まさに今起きている現実を鋭く衝いている良書。
しかも人材流出を招く弊害が大きいという重要な指摘も。
▽ 最近売れているこちらは主張ごもっともだが、アベノミクス失敗を断罪した類書は何冊も出ている
![]() | 『異次元緩和の罪と罰』(山本謙三,講談社) |
▽ これは東洋経済が取り上げた、経済統計から見てアベノミクス失敗とする至極当然の結論だが類書多い。。
![]() | 『日本経済の故障箇所』(脇田成,日本評論社) |
第2位 『分断国家アメリカ 多様性の果てに』
![]() | 『分断国家アメリカ 多様性の果てに』 (読売新聞アメリカ総局,中央公論新社) |
→ 下手な評論家や作家より遥かに優れたレポートで、
人種や移民、人権問題を巡って保守とリベラルが激しく対立する
米国社会の深刻な現実を如実に描き出している。
特に、不法移民が増える一方で米国市民に不満が高まり
トランプ再選の下地をつくったという事実は重要。
(日本にとってもこの米国社会の歪みは他人事でない)
トランプ再選と移民抑制によって米国経済の成長率低下は間違いない。
▽ 寧ろ、研究者の方が欧米社会の現実を直視せず難民受け入れに固執するという状況
![]() | 『なぜ難民を受け入れるのか──人道と国益の交差点』(橋本直子,岩波書店) |
▽ アファーマティブアクションの廃止・退潮についても、研究者より上の読売記者のレポートの方が的確
![]() | 『アファーマティブ・アクション-平等への切り札か、逆差別か』(南川文里,中央公論新社) |
第3位 『未婚と少子化』
![]() | 『未婚と少子化 この国で子どもを産みにくい理由』(筒井淳也,PHP研究所) |
→ 家庭庁の「こどもまんなか」は少子化対策とは無関係であること、
寧ろ国民は自分の子を惨めにしないために子供数を抑制していること、
そして婚姻率の低下こそが少子化の真因であること、
非婚は経済面でのミスマッチが主因であること、理路整然と論じる良書。
(但し効果的な対策の提案が皆無に等しいのが残念)
▽ 少子化対策には高齢者三経費の削減が必要、とするのが本来は正論かつ効果的である(昨年に当ウェブログで掲載)
![]() | 『教養としての財政問題』(島澤諭,株式会社ウェッジ) |
▽ だが高所得層はこの通り、日本の少子化問題より我が家の財布と我が子の利益が優先
![]() | 『世帯年収1000万円―「勝ち組」家庭の残酷な真実―』(加藤梨里,新潮社) |
第4位 『検証 大阪維新の会 ――「財政ポピュリズム」の正体』
![]() | 『検証 大阪維新の会 ――「財政ポピュリズム」の正体』(吉弘憲介,筑摩書房) |
→ 維新が自治体を牛耳るようになっても大阪の経済低迷は変わってない、
所詮は財政ポピュリズムである、と維新の会の実態を鋭く批判した一冊。
(因に、当書では触れていないが大阪は低出生率も一向に改善していない)
猶、維新の財政ポピュリズムはトランプの経済政策とかなり近く両者とも失敗必至である。
▽ 下掲書もそうだが、維新のように少子化対策失敗しても持論が正しいかのように開き直る論者が多過ぎ
![]() | 『縮んで勝つ ~人口減少日本の活路~』(河雅司,小学館) |
第5位 『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』
![]() | 『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』(野口悠紀雄,幻冬舎) |
→ 野口氏の主張は常に、杜撰なリフレ派より遥かに正しい。
ただアメリカ経済に対してはオーバーバリューが顕著で
現役世代1人当たりGDP成長で見ると大したことない。
その強さが人口増加に支えられているのは明白である。
第6位 『教養としての国際政治』
![]() | 『日本人にどうしても伝えたい 教養としての国際政治 戦争というリスクを見通す力をつける』(豊島晋作,KADOKAWA) |
→ テレ東でお馴染みの豊島氏、内容は本格派でパレスチナやウクライナ関連など
はっきり言って元外交官あたりの解説よりかなり優れており参考になる。
(例えば池上氏と組んで番組を持っても良い位の水準である)
あの小泉悠氏が賞賛しているのも当然であろう。
第7位 『日ソ戦争 日本最後の戦い』
![]() | 『日ソ戦争 日本最後の戦い』(麻田雅文,中央公論新社) |
→ 兵站と兵器を重視したソ連(現ロシア)に旧日本軍は惨敗した。
当時の日本人は現在のウクライナやガザより残虐な暴行や略奪を受け
「憎しみしかない」との証言すらある。
(しかも政府と軍の上層部から多くの日本人が見捨てられている)
これこそ元外務省の親ロシア派達が今も口を噤む歴史的事実である。
第8位 『中国不動産バブル』
![]() | 『中国不動産バブル』(柯隆,文藝春秋) |
→ 著者は優秀なエコノミストであり
中国経済分析において信頼できる数少ない専門家の一人。
経済誌等で非常に的確な中国経済分析を行っており、
凡俗な中国経済崩壊論とは比較にならない本格派の内容。
▽ 対中関係においてはこちらの方が良いが、経済分析でないので今回の選に漏れた。。
![]() | 『戦狼中国の対日工作』(安田峰俊,文藝春秋) |
▽ こちらも経済分析ではないが、台湾有事を想定した米側のシビアな予測を紹介しており貴重
![]() | 『日本企業のための経済安全保障』(布施哲,PHP研究所) |
第9位 『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』
![]() | 『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』(坂本貴志,講談社) |
→ 日本では一人当たり労働時間が減っているとの認識は正しいが、
労働投入の梃入れを諦めてしまい処方箋が良くないのが残念。
「年収の壁」打破によって北欧型の経済への転換、
デジタル化のためインド・ベトナム・東欧の高度人材受け入れが必要な筈である。
第10位 『弱者男性1500万人時代』
![]() | 『弱者男性1500万人時代』(トイアンナ,扶桑社) |
→ 日本の男性は女性より不幸でかつ短命・孤独・発達障害が多く
状況が深刻という悲しい現実を初めて指摘した貴重な一冊。
この事実を女性側から認めた功績は大きい、高学歴女性による
上から目線の「男性は降りろ」論より感覚がまともである。
▽ 一般国民と乖離した恵まれた出自で高学歴な著者だと、露骨にジェンダーバイアスが入る。。
![]() | 『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』 (江森百花,光文社) |
▽ 上掲書には皮肉なことに、日本の女性の階層意識は夫の所得や階層から強い影響を受ける
![]() | 『女性の階級』(橋本健二,PHP研究所) |
次点 『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』
![]() | 『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』(近藤絢子,中央公論新社) |
→ 就職氷河期世代の苦境についての本格研究として評価でき、
女性の就業・正規雇用率の世代差が数年で解消されたことや
出生率への影響が限定的など驚きの事実の数々が明らかになっている。
ただ残念なことに提唱されている処方箋は非力であり
北欧型のフレキシキュリティによる格差是正しか道がない筈だが。。
次点 『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』
![]() | 『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』(駒木明義,朝日新聞出版) |
→ 北方領土交渉が最初から失敗必至だったことと、「プーチンは既に敗北」は正しい。
但し後者は著者の言うようなウクライナの抵抗によるのではなく旧ソ連のアフガン侵攻と同様に
戦略の誤りによる戦争長期化で国力を損耗し内部から自壊するためと考えるのが至当だろう。
ウクライナ侵攻へのロシア内部での支持が高いのは多くのロシア人に「他人事」であるだけでなく
ウクライナ人への差別があるのではという著者の観察は興味深い。
(確かに、プーチンのロシアに迎合的な鈴木宗男などの論者の傾向を言い当てているようだ)
次点 『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』
![]() | 『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(川本 大吾,文藝春秋) |
→ 中国漁船の乱獲のような一要因だけに偏らないバランスの取れた良書、
ノルウェー漁業や漁獲枠に言及しているのも的確で評価できる。
ただ温暖化の影響については今後研究で判明してゆく新事実もあろう。
次点 『ジャパニーズウイスキー入門』
![]() | 『ジャパニーズウイスキー入門 現場から見た熱狂の舞台裏』 (稲垣貴彦,KADOKAWA) |
→ こちらは本当に良い内容。「クラフト蒸留所」というネーミングも絶妙、
近年の日本経済で最も付加価値を高めた分野であると言って良く
この本格派の入門書でジャパニーズウィスキーの洋々たる未来も見えてくる!
番外編1:『天空の庭』
![]() | 『天空の庭』(KAGAYA,河出書房新社) |
→ 日本には優れた人材は大勢いる。
(経済が不振なのは人口動態老化と政策の失敗によるのだ)
最初はCGにしか見えない珠玉の作品集。
番外編2:『フランス 26の街の物語』
![]() | 『フランス 26の街の物語』(池上英洋,光文社) |
→ フランスの地方の景観は本当に素晴らしい。
インバウンドの上客を地方に誘客したければ
景観はフランスやイタリア、スペインを参考にすべきなのだ。