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みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

秋の新刊 -『終わらない戦争』『ジェンダー格差』『恋愛結婚の終焉』『日本の絶望』『中流危機』等

2023-10-09 | こんな本を読んでいます
恒例の新刊紹介です。
ウクライナ本のラッシュが過ぎて生成AI関連はやや空回り気味、
中々次のテーマが見えてこない状況ではありますが
玉石混淆の中でも良書はあります。

また、欠点があっても学べる本もあり
例えば『ジェンダー格差』は経済学でも強いバイアスがあることが分かるし
今年のノーベル経済学賞に輝いたゴールディン教授の研究の重要性を
授賞前に日本に紹介しているのは高く評価できます。


『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』(小泉悠,文藝春秋)


 → ジャベリンのような限定的な支援しかないウクライナの善戦が想定外だったなど
   当初の見方が修正されてゆく過程を正直に述べているのが誠実で
   見通しの誤りを何故か認めないトッドや佐藤より的確な視点、
   (文春はあちらの本のオビに「予言通り」など不誠実なセールストークを載せるべきでないと思う)
   矢張りウクライナ侵攻は世界大戦ではなく朝鮮戦争に近いことが分かる。


『中流危機』(NHKスペシャル取材班,講談社)


 → レポートとしては妥当な水準だが、
   デジタル化とリスキリという凡庸そのものの処方箋が全然なってないし
   事例として挙げられている日立はグローバルでは競合企業に勝てていない。

   北欧並みの女性就労で日本のGDPは50兆円近く増えると言われているし、
   現役世代から搾取した年30兆円規模の高齢者向け公費給付が
   少子化と低成長をもたらしている現実を理解すべき。


『ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか』(牧野百恵,中央公論新社)


 → 漸くドグマではなく実証的なジェンダー研究が出始めてきた、
   柔軟な働き方を選好したり長い通勤時間を嫌うといった
   女性自身の選択により所得格差が広がる事実を指摘した功績は大きい。
   但し経済学研究でもジェンダー関連は実証よりドグマの強さが気になる。
   「わずかな事実」が偏見に繋がると決めつけておきながら、
   当書の実証研究も「わずかな事実」程度で結論を出している箇所が複数ある。

   『貧困専業主婦』を見れば分かるように著者が思うより日本のジェンダーは特殊だ。
   世界的に見て家事育児時間が突出して長い日本女性のバイアスなど引き続き研究を望みたい。

▽ 高学歴の上位10%層だと、同性間の格差に他人事という点ではこちらとよく似ている

『女性不況サバイバル』



『恋愛結婚の終焉』(牛窪恵,光文社)


 → 日本は元々離婚大国だった、フェミニズム紛いのイデオロギーの欺瞞と
   自己矛盾を暴く現実的な本だが男女のミスマッチは減らないと思う。。。


『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』(大西広,講談社)


 → 育児支援により結婚できない層がより貧しくなるとの指摘だけは正しいが
   勤労と高負担を強要する厳しい北欧の雇用政策を理解してないのが重大な欠点。
   スウェーデンとフィンランドの出生率格差はなぜ生じたか、
   奈義町や下條村はなぜ明石市より高出生率なのかこの本の理論では説明できない。


『国家は巨大ITに勝てるのか』(小林泰明,新潮社)


 → GAFAMの巨額ロビー資金の威力は凄まじい、
   日本政府ごときは簡単にひねられて向こうのビジネスを公費で助けてしまう。。
   (その走狗になっている日本人もかなりいそうだ)


『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(内田舞,文藝春秋)


 → これは春に出されたものだが内容の心理バイアスが興味深い。
   ソーシャルジャスティスとミーイズムを混同しているきらいがあり
   自分自身の強固なバイアスに無頓着で「社会を診る」と上から目線。。
   (米国の超格差社会や宗教原理主義、拝金的な米国医療の病巣には沈黙して日本社会批判。。)
   米国でも日本と同様に女医が負担重い診療科を避けると指摘する筒井医師の指摘の方が鋭い。


『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』(出口保行,SBクリエイティブ)


 → 過保護も過干渉も放置も全て有害という説得力ある分析、
   但しケーススタディの分析は短絡的なものが散見される。


『世界で第何位?-日本の絶望 ランキング集』(大村大次郎,中央公論新社)


 → 日本は主要国の中で対内投資が最低、しかも非正規雇用は最も多いから
   経済低迷に陥ったことが数値から明瞭に理解出来る。
   日本企業が生産拠点を海外移転すると生産性が悪化する、
   という説は現実と合致しており今後の実証研究に期待したい。


『回転寿司からサカナが消える日』(小平桃郎,扶桑社)


 → 世界はインフレ、「安いニッポン」では回転寿司すら買い負け始めており
   国内でのガラパゴス商習慣も奇妙なものばかり(魚介類なのに欠品へのペナルティ等)。


『横山光輝で読む「項羽と劉邦」』(渡邉義浩,潮出版社)


 → 最後にこちら。
   歴史に疎い若年層や自称保守に向いており、
   史実に反しまくっているキングダムより遥かに良い。
   中国の歴史に根付いた戦略的発想や冷酷非情な政治文化を理解できる。

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夏の新刊-『日銀の責任』『シン・男がつらいよ』『ロシアの眼から見た日本』『中国人が日本を買う理由』等

2023-08-10 | こんな本を読んでいます
連休ですので恒例の新刊紹介です。
漸くにしてアベノミクスと異次元緩和が失敗であり、
日本経済衰退をもたらしたと認識されるようになったのは結構なこと。
ただそのために10年も費やす必要があったのか、甚だ疑問です。

ゼロ成長が恒常化してしまった「安い日本」。
急激な少子化の進む中国経済も案の定、ジャパニフィケーションに陥りつつありますが
日本経済の低迷の方が20年以上は早く始まっているので気休めにもなりません。

さて新刊ですが玉石混淆で、少子化や移民問題、ウクライナ問題について
内容の良いもの悪いもの差が激しいので読み手のリテラシーが試されます。


『日銀の責任 低金利日本からの脱却』(野口悠紀雄,PHP研究所)


 → 円安は企業だけ儲けさせ、日本経済を衰退させたことが指標からはっきり分かる。
   GDPが伸びないと賃金は上がらない、至極当然のことなのだが
   リフレ派はこの程度も理解出来ないから常に失敗し下手な言い訳を繰り返す。


『アベノミクスは何を殺したか 日本の知性13人との闘論』(原真人,朝日新聞出版)


 → クルーグマンに散々煽られ、見事に梯子を外されていまった
   猟官リフレ派の底知れないお粗末さをやっと取り上げてくれた本。
   (因に、高齢化した日本に緩和効果は限定的であるともハッキリ指摘されている)。


『シン・男がつらいよ 右肩下がりの時代の男性受難』(奥田祥子,朝日新聞出版)


 → OECDも調査で認めた、日本の男性の辛さは世界でも突出して最悪水準。
   (但しメディアや単純なフェミニストは事実であっても一切見ないふり)。


『教育は遺伝に勝てるか?』(安藤寿康,朝日新聞出版)


 → 親の教育より遺伝の方が何倍も影響大である、
   高所得層は遺伝の影響が強く出るが低所得層は環境の影響が強く出る、
   日本は子供の視点に立とうとするから遺伝的要素が強く出てしまう、
   等々の鋭い研究結果が実に興味深い。


『中国人が日本を買う理由』(中島恵,日本経済新聞出版)


 → 対中国でも完全に「安いニッポン」と化した日本、
   しかし韓国同様に急速な人口縮小と中所得国どまりという二重の罠に陥っている中国は
   これから長く憂鬱な経済停滞を迎え日本への脱出者が増えるのは間違いない。
   (但し、外国人に対する日本の不動産規制が自民党の怠惰によりユル過ぎなのを指摘すべき)


『なぜ少子化は止められないのか』(藤波匠,日経BP 日本経済新聞出版)


 → この辺りからは批判的考察が必要な本。
   現金給付の効果は乏しく、第三子以降支援が殆ど無意味との指摘は正しいが、
   現物給付の優位性を実証した研究には一つも触れないのには驚愕、
   出生率急回復した自治体の事例も分析しないと云う言い訳だらけで保守退嬰の一冊。


『人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン』(毛受敏浩,朝日新聞出版)


 → 日本の政財癒着による事実上の移民政策が
   「低度人材受け入れ」になっている現実を完全に無視し、
   真摯な懸念にも誠実に答えようとしない無責任な議論。
   (著者はこの日本にスラムが出現し、欧州のような極右が台頭する惨状を見ることになろう)。


『ロシアの眼から見た日本 国防の条件を問いなおす』(亀山陽司,NHK出版)


 → 佐藤優・鈴木宗男らとは大違いなリアリズムに基づく冷静な分析、
   ロシアは伝統的に相手の弱みにつけこんでくるから
   安倍の北方領土交渉は最初から失敗必至だったことが分かる。
   (著者によれば、北方領土問題の決定権は日本にないという)
   以下の二冊と比較すれば質の高さは歴然としている。

▽ 中国共産党と同じように「即時停戦」を唱えるというロシア擁護の論者二人

『ウクライナ戦争の嘘-米露中北の打算・野望・本音』(佐藤優
・手嶋龍一,中央公論新社)


▽ EU危機以来ずっと予言が外れ続けているトッド、最後の最後に「ロシアも悪い」と書く姑息な議論

『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(エマニュエル・トッド,朝日新聞出版)




『アフターChatGPT 生成AIが変えた世界の生き残り方』(山本康正,PHP研究所)


 → 著者らしいシンプルで活字の大きい解説書、
   時系列に纏めており各企業の動きを整理してるのは美点で
   同時期に出た文春新書より遥かにお勧めできる。



『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』(辻田真佐憲,講談社)


 → 自称保守がいかに日本の近現代史を理解していないかがよく分かる。
   自民党の保守派が賞揚する戦前日本は、神話と嘘に塗れていた。


『世界を動かした日本の銀』(祥伝社,磯田道史・近藤誠一・伊藤謙ほか)


 → 最後にこちらを。驚きの本格派で面白い、
   磯田道史氏による「世界を動かした日本の銀」が特に秀逸。

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GWの新刊 -『「イクメン」を疑え!』『台湾侵攻戦争』『インドの正体』『統一協会問題の闇』等

2023-05-02 | こんな本を読んでいます
連休ですので例の通り新刊紹介です。
新刊のラインナップではまるでウクライナ問題が過ぎたかのよう。。
アベクロによる異常な緩和策が招いたインフレも忘れかかっている?

ただよくよく見てみるとそれ以外の分野で好著もちらほら。
イクメン関連で興味深い新刊が出てきている他、
安全保障では玉石混淆ながら注目すべきものが出ています。


『「イクメン」を疑え!』(関口洋平,集英社)


 → イクメンの本質はエリートの特権の象徴であり
   フェミニズムを装った新自由主義に立脚していると指摘する鋭い論考、
   非大卒を排除し貧困と非婚を黙殺しているイクメン論の欺瞞性を暴いた功績は大きい。


『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』(山下裕貴,講談社)


 → 米シンクタンクのシミュレーションの方がもっとシビアであり、
   「完全」という割には複数のシナリオに基づく想定が乏しく
   太平洋戦争時の旧日本軍の「希望的観測」にかなり近いため寧ろ懸念が強まる一冊。
   (何年も前の『米軍と人民解放軍』に見劣りする)

   それに「安倍の失われた7年」以来のゼロ成長で防衛予算を増やせなかったこと、
   少子高齢化への無策により自衛隊の人員不足が続いていることも指摘すべきであろう。


『物語 チベットの歴史-天空の仏教国の1400年』(石濱裕美子,中央公論新社)


 → かつて軍事国家だったチベットが仏教により変貌したこと、
   元朝も清朝もチベット仏教には寛容であり徹底弾圧した中国共産党だけが異端であること、
   内容充実で学ぶことの多いかなりの力作(但し宗教史の部分は晦渋で一般向けではない)。


『インドの正体-「未来の大国」の虚と実』(伊藤融,中央公論新社)


 → 一筋縄ではいかない厄介な大国インドを多面的に分析した良書、
   但し専門が安全保障の著者なので人口動態での圧倒的優位や
   今後の経済成長については分析がかなり手薄である。


『ポストイクメンの男性育児-妊娠初期から始まる育業のススメ』(平野翔大,中央公論新社)


 → 日本男性は家事育児をやらないのではなく、
   仕事と通勤時間が世界的に見ても長いから難しいというのが実態。

   但し安定高収入の特権的な職種の執筆者であるためか
   休んでいるどころではない庶民男性やシンママ、自営業などを
   税や保険料等で支えるべき自らの立場を忘れ、
   しかも彼等彼女等を完全に排除した筆致なのが気になる。


『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』(小林 よしのり,扶桑社)


 → 小林よりのり氏には身内に統一教会の信者がおり、
   散々ウソをつかれ統一教会には拉致だ監禁だと悪質な中傷を受けたからこそ
   この問題を放っておけなかった、日本の安全保障がカルトに脆弱との指摘はまさに至言!


『国難のインテリジェンス』(佐藤優,新潮社)


 → この辺りからは批判的検討の必要なもの。
   EU絡みでは悉く予言の当たらないトッドの口車に乗って
   冒頭で「第三次世界大戦が始まっている」と書いたのは生涯の汚点になりかねず、
   これから確実に起きるロシアの弱体化を見通せない先見の明の欠如が曝け出された。。


『どうする財源ーー貨幣論で読み解く税と財政の仕組み』(中野剛志,祥伝社)


 → 以前は自称「奇跡」という自画自賛に驚かされたが、今度は
   「安全保障のためには国債発行」という典型的な詭弁に陥ってしまった惨状、
   自説に合う断片を寄せ集める断章取義は天才的だがそれでは口舌の徒にしかなるまい、
   他人にばかり「歴史の教訓を正しく」などと独善的に説教しても空虚に響くだけでは。。。


『官邸官僚が本音で語る権力の使い方』(兼原信克,新潮社)


 → 安倍政権下で小手先の自称改革しか出来なかった理由がよく分かる一冊、
   有事で当然予想される自衛隊の損耗を聞いて驚いた安倍を
   「痛みの分かる心根の優しい」と形容する阿諛追従には仰天させられた。

   「安倍の失われた七年」における戦後最悪の低成長で
   防衛予算を殆ど増やせなかった大失態こそ根本的な問題なのだが、
   この本では全く触れられていないという。。


『とことんエナガ、シマエナガ』(BIRDER編集部,文一総合出版)


 → これズルい! こんなに可愛いなんてズルいにも程がある!
   数ヶ月前の新刊だが思わず紹介してしまう。。


『世界史を動かしたワイン』(内藤博文,青春出版社)


 → 最後にこちらを。中々いい本で連休時期にお薦め、
   ただカラー写真もっと増やせば良かったのに。。。

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早春の新刊 -『日本銀行 我が国に迫る危機』『国費解剖』『第三の大国 インドの思考』『電力危機』等

2023-03-21 | こんな本を読んでいます
休日には恒例の新刊紹介です。
ウクライナ関連では新刊の優勝劣敗の傾向が鮮明で、
小泉悠氏の慧眼とそれ以外の凡庸本との格差が広がっています。

そしてロシアのウクライナ侵攻の影響により、
財政・政策予算・エネルギーに関する新刊も増えており
見るからに玉石混淆という趣。批判的に読むべき本もかなりあります。


『日本銀行 我が国に迫る危機』(河村小百合,講談社)


 → 小渕政権時の教訓を綺麗さっぱり忘れた愚昧な財政出動派が跋扈する現在、
   かつての敗戦直後の日本の預金封鎖と強烈なインフレ税を克明に記した好著。
   内国債ばかりだったのに財政破綻した当時の日本の窮状を克明に描いた章は必見、
   現代日本が「高齢富裕層のための政治」になっているとの指摘も完璧に正しい。


『電力危機 私たちはいつまで高い電気代を払い続けるのか?』(宇佐美典也,講談社)


 → これは批判的に読むべき、エネルギー政策は保守退嬰の経産省ではなく
   環境省の関与を強めないと健全化は無理だと改めて確信させられた。

   軽EVへの蓄電で地方が電力自給出来るという点だけは正しいが、
   風力を着床と洋上に分けてすらおらず肝心のコージェネは完全無視で
   相変わらず意味不明の原子力利権擁護は経産省OBの宿痾か。。


『国費解剖 知られざる政府予算の病巣』(日本経済新聞社,日経BP 日本経済新聞出版)


 → これは地味ながら良書、シンプル乍ら効果的な分析手法を高く評価したい。
   ブラックボックスのコロナ対策費やコンサル丸投げの委託事業だけでなく、
   実はキャッシュレス推進政策もとてつもない無駄の塊だった!。


『トッド人類史入門 西洋の没落』(エマニュエル・トッド,文藝春秋)


 → EUについて予言が外れてばかりのトッド、
   多弁過ぎて自らの得意分野から逸脱し精度が著しく低下している。。
   (ウクライナ侵攻で没落するのは、大勢の若者を失い人材流出を招いたプーチンのロシアである


『第三の大国 インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」』(笠井亮平,文藝春秋)


 → 人口でも経済成長でも中国を抜いたインドは今後世界で最も重要な国になる、
   後半にはロシアのウクライナ侵攻を停戦に導こうとする
   インドについての優れた分析あって高く評価できる。
   (トッドや元外務省の論者達より遥かに分析が的確である)


『傷つきやすいアメリカの大学生たち:大学と若者をダメにする「善意」と「誤った信念」の正体』(ジョナサン・ハイト,草思社)


 → 自らの感情が傷付けられたという理由だけで抗議する米大学生の独善性、
   アメリカ社会における人材劣化の証左ではないだろうか。
   (様々な傍証から判断して、日本でも同様の事態が起きつつあると断言できる)


『早慶MARCH大激変 「大学序列」の最前線』(小林哲夫,朝日新聞出版)


 → 「東大を猛追」は誇大広告だが、確かにこれら大学の近年の変化は大きくなっている。
   但しMARCH第一志望が増えたというのは最近の新卒のユルい勤労観と近似性あるのでは。。


『NHK受信料の研究』(有馬哲夫,新潮社)


 → イデオロギー的には全く賛同できない著者だが、
   NHKが官僚支配から生まれたのは確実だろう。
   (今は情けないことに自民党支配に近くなっている。。)


『コーヒーで読み解くSDGs』(Jose.川島良彰,ポプラ社)


 → 好評だった単行本に加筆した新書で強くお薦め出来る、
   開発経済学の入門書ほどの内容だが専門性もあり目配りが良い。


『教養としての日本の城: どのように進化し、消えていったか』(香原斗志,平凡社)


 → 最後にこちらを。タイトルは明らかに他著を意識しているが、
   中世日本の城に大航海時代の世界の痕跡を見出すと云う目の付けどころがユニーク。

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冬の新刊 -『2040年の日本』『英語と中国語 10年後の勝者は』『不倫―実証分析が示す全貌』等

2023-02-23 | こんな本を読んでいます
祝日にも恒例の新刊紹介です。
経済分野では野口悠紀雄氏以外は残念なものが多いですが、
(まるで日本経済低迷の原因を示唆しているような。。)
他の分野では注目すべき新刊が出ています。

視点の鋭さと視野の広さでは『英語と中国語』が良く、
意外な分野での本格的研究としては『不倫』が評価できます。


『2040年の日本』(野口悠紀雄,幻冬舎)


 → このまま高齢者三経費にバラ撒き続ければ社会保障負担が4割にも達してしまう、
   少子高齢化を放置し女性の就労抑制を温存してきた歴代自民党政権の罪は大きい。
   (但し著者はテクノロジーの効果については見通しが甘いので注意を要する)


『英語と中国語 10年後の勝者は』(五味洋治,小学館)


 → 国力低下とともに存在感も低下する日本語、
   ASEANや東欧等で日本語学習ニーズがあるのに教え手の残念な不足、
   確かに日本版「孔子学院」があった方が良い。
   (中国と違いスパイ目的はないから歓迎される筈)


『不倫―実証分析が示す全貌』(五十嵐彰,中央公論新社)


 → 男性は職場に女性が多いこと、女性は自由な時間が多いことが
   不倫の誘因になることを明らかにした客観的で緻密な研究。
   (いずれ女性の不倫率25%も上昇して男女平等になってゆくだろうと嫌な予感。。)


『世界インフレと日本経済の未来 超円安時代を生き抜く経済学講義』(伊藤元重,PHP研究所)


 → アベノミクスで企業投資も実質賃金も低迷している事実を認めているのに、
   今更に再エネ投資と北欧型のフレキシキュリティを取り上げて
   リフレ派を支持した自らの非を認めないのがとてもとても不思議。。


『給料が上がらないのは、円安のせいですか? 通貨で読み解く経済の仕組み』(永濱利廣,PHP研究所)


 → アベノミクスで実質賃金が悪化したばかりか、潜在成長率も全要素生産性も急落し
   労働分配率は歴史的水準にまで悪化したという厳然たる事実を無視する神経の太さ、
   著者は完全に市場関係者と輸出企業の代弁者であり
   日本の史上最悪の低成長については何一つ語っていない。
   (なおクルーグマンは2014年に、高齢化した日本では金融緩和の効果が低いと言明。。)


『ウィーン・フィルの哲学: 至高の楽団はなぜ経営母体を持たないのか』(渋谷 ゆう子,NHK出版)


 → 日本文化の海外進出やマネタイズに於いて非常に参考になる良書、
   オーストリアの一人当たりGDPが高い理由の一端を教えているようだ。


『さらば,男性政治』(三浦まり,岩波書店)


 → バイアスが相当強いので批判的に読むべき。
   意に沿わない政策は「教条的」と批判するこの著者自身こそ教条的であり、
   経済学・社会学の研究では日本女性の幸福度が夫の収入に左右されるという事実、
   しかも働いていない女性の幸福度の高いのが歴然としている事実、
   そして何より日本女性の多数派が男性政治家に投票しているという苦い事実を直視すべき。


『教育大国シンガポール~日本は何を学べるか』(中野円佳,光文社)


 → こちらも日本的なジェンダーバイアスが強い。
   相変わらず北欧の本場の男女平等を理解せず「女性は被害者」の構図に固執、
   特に政策面の分析は『物語シンガポールの歴史』に大きく劣っており
   シンガポール女性も結構ジェンダーが強固でハイパガミ願望が強いのは興味深いが、
   最後は日本の学歴社会や塾産業への批判に脱線し支離滅裂である。。
   (シンガポールの厳しい早期選別や高額な教育費負担がましとでも言いたいのか?)


『患者が知らない開業医の本音』(松永正訓,新潮社)


 → 率直に書いていて興味深い内容であり、
   開業は矢張り「失敗した人を見たことがない」ような世界で
   例に漏れずすぐ外車を買ってしまったことを告白しているのが微笑ましいのだが、
   他国ではあり得ないような診療報酬格差や限定的な情報公開には触れずに
   日医を弱小団体とするナイーブさには流石に驚愕した。


『ルポ 大学崩壊』(田中圭太郎,筑摩書房)


 → 大学私物化の典型的な例であり必見、高等教育無償化を行うと
   こうした無軌道で無法な経営をしている大学にも巨額の税が投入され続けるのだ。。


『装飾古墳の謎』(文藝春秋,河野 一隆)


 → 最後にこちらを。
   衝撃的な装飾古墳の綺羅びやかさ、日本は古代からアートの国だった?

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