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2018年/社会経済書ベスト10-『新・生産性立国論』『新・日本の階級社会』『知ってはいけない2』他

2018-12-31 | こんな本を読んでいます
今年も恒例、2018年のベスト10冊を選びました。
経済・社会に関する新刊の中で価値の高いものです。
研究者と違い、新味や学術的価値ではなく政策における有用性を重視しています。

直近のダイヤモンド合併号の「ベスト経済書」とは内容が全く違います。
日本社会の喫緊の課題に正面から向き合っているかどうか、という見地です。

今年は日本経済については安倍の根本的に間違った政策のため
ほぼ「お手上げ」状態でしたが、政治関連に鋭い新刊が目立ちました。


 ↓ これまでのベスト10

2017年/社会経済書ベスト10-『デジタルエコノミーは…』『子育て支援と経済…』『トランプ王国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9cab7d1ddc3a8f2d3acbd9fa08c8fcde

2016年/社会・経済書ベスト10 -『グローバリズム以後』『子育て支援が日本を救う』『教育超格差大国』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/0a2d0b434eed9677d1697b4a732267d8

2015年/社会・経済書ベスト10 -『奇跡の村』『日本国債暴落』『新・観光立国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/60231fb53c5f0c34481596636d9b8f89

2014年/社会・経済書ベスト10 -『日銀、「出口」なし!』『米軍と人民解放軍』『社会保障亡国論』他
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/15fdce254ff70decccdc1cae539cd752


さて、それでは今年のトップ10です。


第1位 『デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論』

『デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論』(東洋経済新報社)


 → 日本の低生産性は質の低い経営者と就労抑制する女性が原因と喝破。
   しかし最低賃金引き上げより給付付き税額控除の適用の方が
   遥かに経済効果が大きいという点を完全に見落としており、
   (雇用政策や少子化対策としても効果の大きさは自明)
   政策提言としても北欧より劣っているのが残念。


▽ 上掲書と比較すると経産省は「若手」ですら保守退嬰、非力な案ばかりでスウェーデンにも惨敗

『不安な個人、立ちすくむ国家』(文藝春秋)

↑ 『立ちすくむ経産省に不安な国民』が正しいタイトルである


第2位 『新・日本の階級社会』

『新・日本の階級社会』(橋本健二,講談社)


 → 「正規労働者や新中間層は貧困層に冷淡、むしろ敵視している」
   「自民党支持者は排外主義傾向」という事実がほぼ立証されたと判断できる。
   また、日本のアンダークラスは利己的な富裕層とそっくりで
   自分の損得ばかり気にしていることが実によく分かる。
   著者の処方箋は実効性ゼロに等しいが(北欧の政策の勉強が足りない)、
   調査データ分析は冷静で非常に価値が高い。


第3位 『デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義』

『デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義』(福田直子,集英社)


 → SNSを通じたロシアのディスインフォメーション作戦が興味深く、
   ロシアは各国の保守勢力を支援して先進国を分断しているのだ。
   (日本の自称保守の中にもロシアの走狗が間違いなくいる筈だ)
   保守派はリベラルよりも頑迷で他者の意見に耳を貸さないという調査結果も
   アメリカだけでなく日本にも当てはまる説得的な調査結果であろう。


第4位 『医療経済の嘘』

『医療経済の嘘』(森田洋之,ポプラ社)


 → 医療経済学では「病床数が多い地域では医療費負担が増える」という
   興味深い事実が判明している。当該分野では「常識」なのだそうだ。
   恐らく人口当たりの医師数と医療費にも正の相関があるのではないだろうか。
   (日本では勤務時間が明らかに男性医師より短い女医の比率も医療費と正の相関だろう


第5位 『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』

『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』(矢部宏治,講談社)


 → 大反響だった前著の続編で、破壊力が凄い。
   安倍は只の傀儡に過ぎず、「売国」岸信介と同類だと分かる。
   自衛隊の指揮権が簡単に米軍に取り上げられることも知らず、
   哀れな自称保守やネトウヨは「売国」政権を全力で応援しているのだ。


第6位 『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』

『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(吉田裕,中央公論新社)


 → 戦前を美化する暗愚で蒙昧な自民党議員(特に二世首相)や
   史実も現実も無視する原理主義者が大嘘つきであることは、
   この一冊が議論の余地のない明確さで証明している。

   日本軍兵士の半数前後が餓死、異常に自殺者が多い、
   公文書偽造に麻薬使用、略奪を実質的に公認してマニュアルを作るなど、
   「皇軍」と僣称してその内実は恥ずべきものだったのである。
   史実を直視しないでイデオロギーに洗脳されているとそれすら見えないのだ。


第7位 『文系と理系はなぜ分かれたのか』

『文系と理系はなぜ分かれたのか』(隠岐さや香,講談社)


 → 新書としては驚愕すべき質の高さで、
   特に、所謂STEMを重視して膨大な公費を集中投入しても
   アップル社など特定の企業が大儲けするだけで雇用は大して増えない、
   と鋭く指摘しているところが本当に素晴らしい。
   (全くその通りで、STEM系への利益誘導を図る財界や半可通は現実を見ていない)


第8位 『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』

『AI×人口減少 これから日本で何が起こるのか』(中原圭介,東洋経済新報社)


 → 中原氏が人口動態の老化を冷静に分析する必読書。
   企業のEPS(1株当たり利益)と賃金が完全に乖離している事実を
   初めて指摘した本ではないだろうか。(当ウェブログは何年も前から予言♩♩)
   社会保障負担が現在より30〜40%も増える「2042年問題」にも要注目。

   ただ少子化対策に関してははっきり言って研究不足で、
   (大した産業基盤のない長野県下條や岡山県奈義の事例を知らないらしい)
   柴田悠・京大准教授の本を熟読して現物給付の重要性を理解して欲しい。


第9位 『日本の公教育 - 学力・コスト・民主主義』

『日本の公教育 - 学力・コスト・民主主義』(中澤渉,中央公論新社)


 → 後半に高等教育の収益率が男女別に出ているので必見。
   日本の高学歴女性は大学を出ても辞めたり就業抑制することが多く、
   高等教育の投資収益率が男性の半分程度という惨憺たる有り様である。

   口だけ安倍の「女性活躍」も「大学無償化」も最初から失敗と決まっており、
   高負担による手厚い育児支援現物給付を行うスウェーデンと比べ余りに程度が低いのだ。


第10位 『ルポ 地域再生 なぜヨーロッパのまちは元気なのか?』

『ルポ 地域再生 なぜヨーロッパのまちは元気なのか?』(志子田徹,イースト・プレス)


 → 地道な取材に基づいた好著でお薦めしたい。
   特にスウェーデンのバイオマス利用(熱利用かコージェネ)は合理的であり、
   大量の熱を捨てしかも輸入燃料という二重に愚かな日本のバイオマス発電は最悪。
   安倍や経産省のエネルギー政策がいかに低次元かよく分かる一冊。

▽ 元経産省の本を見ると、欧州のエネルギー政策に惨敗する保守退嬰ぶりが分かる

『逃げられない世代 ――日本型「先送り」システムの限界』(宇佐美典也,新潮社)



次点 『バブル入社組の憂鬱』

『バブル入社組の憂鬱(相原孝夫,日本経済新聞出版社)


 → 世代の悲劇だと思うのだが、バブル世代の社員への評価は
   「給料を貰い過ぎ」「能力差が大きい(=極端に仕事のできない社員がいる)」
   「自信過剰な割に周囲の評価は低い」「自分は会社から裏切られたと思っている」
   「「50代男性に優秀な人がいる」という回答は50代女性の半分以下」だそうだ。
   今の新卒の「プチバブル世代」も同様の末路を辿る可能性が高く、注意されたい。
   (プライベート重視の比率の高さがそっくり、消費力の格段に低い「プチバブル」だ)


次点 『盗まれる大学:中国スパイと機密漏洩』

『盗まれる大学:中国スパイと機密漏洩』(ダニエル・ゴールデン,原書房)


 → ファーウェイを巡る米中の第二次冷戦を予告したと言っても過言ではない。
   数だけしか見ない愚昧な自民党政権の「留学生30万人計画」が
   日本の安全保障と産業基盤を揺るがす下の下策であることも理解できる。
   (暗愚な安倍はこのタイミングで外国人単純労働力を増やすという売国政策。。)

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