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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

だいじょうぶ3組

2013-03-21 20:18:39 | た行

最初は本気で
「だいじょうぶ?」と思ったんですけどね(笑)


「だいじょうぶ3組」68点★★★☆


************************

東京郊外の小学校に
二人の先生が赴任してくる。

車椅子に乗った赤尾慎之助(乙武洋匡)と
補助教員・白石優作(国分太一)だ。

生まれつき手と足がない赤尾を補佐するため
幼なじみで教育委員会に務める白石が
補佐をすることになったのだ。

赤尾を前にした
5年3組の子どもたちの反応は――?!

************************

2007年から3年間、
実際に小学校で担任を務めていた乙武氏が
その体験を基に書いた小説の映画化で
本人も映画初出演。

はじめはストーリーよりも
“子役”っぽい子どもたちの芝居にばかり目がいき

うわあ、児童劇団の演技合戦みたいでどうしようと思ったけど、

いや意外に子どもたちが
本当に成長していくのを目の当たりにして、
だんだん集中できました。
熱中していきました(笑)

乙武氏ならではの授業の意味とメッセージが伝わるので
終わりよければよし、かな。

あと
最初にひっかかかたのは
車椅子の先生(乙武洋匡)が
「介助員」役までつけて担任になる必要性と、
そうさせる彼の“我の強さ”に対する違和感。

補佐役にまわる先生(国分太一)の存在意義ってどうなのよ、という点。

しかし観てると
なんだか「わかった!」瞬間が訪れるんですよ。

ハンディキャップのあるなしに関わらず

前に出るタイプの人間と、
後方で支えることを得意とするタイプの人間は
確かに存在しているのだ。

そういう二人がタッグを組むと
仕事でも夫婦でもけっこううまくいったりする。

この二人も、
単にそういう話なのだ、と
そう腑に落ちると、俄然見やすくなります。


子どもたちが乙武氏に会うシーンは
本当に初対面の一発勝負だったそうで、
彼らが乙武さんの見た目のインパクトに驚く様子は
まぎれもなく本物。

そのリアルがあるからこそ
「どうやってごはんを食べるの?」という
素朴な疑問や興味が手に取るようにわかるし、

一緒に生活するうちに
「先生はみんなと違う」でも
「人と違ってみんないい」の結論に至るというわけで。

その
他者理解と共生の精神が
子どもたちのなかに芝居ではなく
真に芽生えたという、確かな感触がありました。


★3/23(土)から全国で公開。

「だいじょうぶ3組」公式サイト


発売中の『週刊朝日』で
国分さんと乙武さんの対談記事を書きました。
よろしければご一読を

年も近い二人は、ホントに映画そのまんま
息のあったコンビぶりで
とてもいい感じでした。
コメント (2)
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ザ・マスター

2013-03-20 20:07:22 | さ行

アカデミー賞作品賞にノミネートされたものだと
すっかり勘違いしてました。

批評家ウケよさそう、と思ったんだけど。


「ザ・マスター」66点★★★

***********************

第二次大戦後。

海軍の兵士フレディ(ホアキン・フェニックス)は
戦争後、メンタル面で不安定になり
アルコールに依存する日々。

仕事も長続きせず、
自堕落な生活を送っていた彼は

あるとき、酔ったまま
船上パーティー中の船に密航する。

翌朝、船員に発見された彼は
船の主であり“マスター”と呼ばれる男(フィリップ・シーモア・ホフマン)と
対面するが――。

***********************

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(07年)の
ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作です。

ファーストシーンから音楽が効果的で、
映像も挑戦的。
ただ事ではない感じ。


第二次大戦で壊れた酒浸りの帰還兵が
作家であり、大金持ちの“マスター”と出会う。
彼の独特なセラピーを体験した彼が
その信奉者となっていく・・・という話で、

新興宗教団体「サイエントロジー」に
インスパイアされたと言われてます。


自分をコントロールできない男の魂の放浪と
「人間、自力で立つためには、
自分自身をマスター=指導者に、せにゃらんのだ」と説いているのだと、
番長は解釈しましたが

公式サイトの最初に
「観る前にお読みください」なんていう監督の序文があって

読むと
うーん、違うのか?(笑)

てか、なんかこういうのって
言い訳がましい感じも・・・(苦笑)


まあ、肝心の映画は
音楽の効果を最大限に活かしているところも計算された絵作りにも

オールドスタイルなよさがあり、
映画体験としては大きいものでしたが

ただ
肝心の話は退屈で、かつかなり混迷。

相当に眠くなっちゃいましたよ。


「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も
最初は正直「う~~む」と思ったんですよね。
でも、これは後でジワジワ効き、
いまも強烈に思い出せる1本になった。

でも、たぶんこの作品は
そうはいかなそうだな・・・。

カリスマ性たっぷりにマスターを演じる
フィリップ・シーモア・ホフマンはさすがだし、

主演のホアキン・フェニックスも
難しい役をよく演じていると思うのですけどね。


★3/22(金)から全国で公開。

「ザ・マスター」公式サイト
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アンナ・カレーニナ

2013-03-18 17:49:42 | あ行

「プライドと偏見」(05年)「つぐない」(07年)と名作を生んできた
ジョー・ライト×キーラ・ナイトレイの鉄板コンビの最新作。

しかし甘んじずに、さらに挑んでくる感じがいいね!


「アンナ・カレーニナ」71点★★★★


*************************

19世紀末のロシア。

政府高官(ジュード・ロウ)の美貌の妻、
アンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)
社交界の華だ。

ある日、彼女は
騎兵将校のヴロンスキー(アーロン・テイラー・ジョンソン)と出会う。

一目で惹かれ合った二人だが
アンナは理性を保ち、彼を遠ざけようとする。

しかし舞踏会で再会した二人は
もう互いの情熱を止めることができなかった――。

*************************


トルストイの不屈の名作の映画化。

・・・といっても、すいません無教養で
どういう話かちゃんと知りませんでした。

でもって、かなり楽しめました。

140年も前の物語ですが
作り手の「単なる“古典”じゃつまんないじゃん!」という意欲が
すごく感じられる作品なんですね。

とにもかくにも
美術と演出が見事!


特に冒頭~中盤が印象的。

映像が舞台っぽく作られていて
かき割りの使い方、衣装替え、独創的なダンスなどなど
工夫されまくりで、目に楽しい。

カラクリ舞台のような、
美しい装飾の見事なおもちゃ箱のような、
遊び心を存分に味わえます。

キーラ・ナイトレイも悪魔的に美しいしね。


で、中身のほうも
男女の心の真理をつくセリフばかり。

浮気を止めない男に友人が
「満腹なのにさらにパンに手を出すのか」とか
「隣人の妻を愛するなかれ。それは愛ではない。意地汚さだ」とか。

うーん、痛いとこつくねえ!(笑)

そしてなにも悪くない伴侶を利己的に苦しめた人間に
痛いしっぺ返しがくる・・・というのも
世の常かもしれませんね。

見ると確実に
教養ランクがあがりそうな1本。

ただ130分はやっぱりちょっと長かったかなア。
途中、すこーしだけ落ちました。


★3/29(金)からTOHOシネマズ日劇ほか全国で公開。

「アンナ・カレーニナ」公式サイト
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ダイナソー・プロジェクト

2013-03-17 17:53:44 | た行

特に期待が大きかったわけじゃ
ないんですけどね。

「ダイナソー・プロジェクト」11点☆


***************************

100時間を越える実録映像を編集した・・・ということになっている
フェイク映画です。

動物学者で冒険家のジョナサン(リチャード・ディレーン)は
目撃証言が相次ぐ
ある伝説の生物の調査に出発する。

問題児だがメカに強い息子(マット・ケイン)も
同行することになり、

調査隊はアフリカ大陸の秘境へ向かう。

そこで彼らが出会ったのは
驚くべき未知の世界だった――!

***************************


すみません
ド級につまらなかった(苦笑)

「ジュラシックパーク」系の
アドベンチャー映画を想起したんですが

「この映像は本物です」という前提で作られた
フェイク映画だったんですよ。

別にその手法はいいんですが、
中身がねえ・・・。


探検家の父を持つ息子が冒険に出る設定は
まあ許せるとしても
(「センター・オブ・ジ・アース」?あ「サンクタム」もそうか)

手持ちカメラのブレブレ映像とか
(「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」ね)

設置した暗視カメラに写る恐怖の映像とか
(「パラノーマル・アクティビティ」さ)

浅く思い返すだけで
なんだか既視感たっぷりで
ちょっとなアという。

暗視カメラに堂々と写ってるものには
思わず吹いちゃいましたけどね(笑)

あと
探検隊のメンバーのうち、
若い娘がとっとと殺られちゃうのもなア。

ジャングルに行くのに
肌丸だしのタンクトップという
非常識きわまりない彼女だけど(笑)

一応“紅一点要員”であるわけで
エサなんだから、これはダメでしょ。


83分っていうのが唯一の救い。

あまり力まずに見れば
笑って過ごせる、かな・・・。


★3/16(土)からシネクイントほか全国で公開。

「ダイナソー・プロジェクト」公式サイト
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プラチナデータ

2013-03-16 19:24:51 | は行

もっと頭脳系の話かと
思ったんですよねえ。

「プラチナデータ」42点★★★

*****************************

DNAから犯罪者を特定することが
可能になった近未来。

そのシステムを作った警視庁所属の天才科学者・神楽(二宮和也)は
DNA情報をもとに
ズバリ、犯人の顔かたちから足の指の特徴まで言い当てる。

刑事・浅間(豊川悦司)は
その情報を基に犯人を逮捕するが
捜査方法に疑問も感じていた。

そんななか、ある殺人事件が発生する。

採取されたDNAからシステムが導いた犯人は
なんと神楽その人だった――?!

*****************************

東野圭吾原作のミステリーの映画化です。

DNA捜査のシステムを作った本人が
無実の罪を被せられて・・・・・・?って
まあありそうだけど、おもしろそうな設定じゃん――

と、思ったんですが、

すぐに明かされる話だし、たいしたネタバレでないので言っちゃいますが
二宮が二重人格、という時点で
何かが「・・・あ、そういうこと」的にワシのなかで消えていった(苦笑)

それってミステリーでは
よっぽどうまくやらないと、反則技だよねえ。

「主人公がサイキックだった」くらい
あ、そういうこと、と。

そして
もっと理系の頭脳サバイバルっぽい話を期待してたけど
わりと哀愁系というか、過去背負い系だった。


冷淡そうな理系君を演じる二宮氏のキャラは割といいんだけど
とにかく話がもうひとつなんですよねえ。

たどり着く真実も拍子抜け。

二宮氏のアクションシーン(というか逃走シーンか)も
無駄に長くて退屈でした。


★3/16から全国で公開。

「プラチナデータ」公式サイト
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