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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ある海辺の詩人-小さなヴェニスで-

2013-03-14 22:35:18 | あ行

しっとりとして、大変に美しい映画でした。

映画「ある海辺の詩人-小さなヴェニスで-」75点★★★★


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イタリア、ヴェニスに近い
港町キオッジャ。

地元の漁師たちが集まる酒場で
中国人女性シュン・リー(チャオ・タオ)が働き始める。

片言のイタリア語の彼女を
はじめはからかい気味に見ていた常連たち。

そんななか老漁師ベーピ(ラデ・シェルベッジア)は
彼女と心を通わせるようになるが――。

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「小さなヴェニス」と呼ばれる素朴な港町で、
国に残した幼い息子のために酒場で働く中国人女性と
老漁師の出会いを描くドラマ。

「詩が好き」という共通点が二人をつなげるんだけど、
実はほかにも共通点がある。

漁師ベーピは30年前に
共産圏ユーゴスラビアからきた移民だったのだ。


いまや地元漁師や仲間に溶け込み、
バーにたむろし、すっかり地元民のようなベーピだけど
しかしどこかに居心地のなさ、所在のなさがある。

そんな“異邦人”感覚が
二人を通じ合わせてるんですねえ。


彼らを見ていると
元来、人は誰もどこかから来た異邦人なんではないかと思う。

しかしちょっと土着すると、すぐに“地元民”顔をして
今度はよそ者を排除しようとする。


自分にも思い当たるところがあって
ちょっと痛いんですけどね。

そんななかで
主人公二人のささやかな絆と交流が
中国人を排除する偏見で断ち切られていくさまは
とても切なく、

その描写に
そこはかとない人間の「身勝手さ」や「罰」が
込められていると感じました。


映画としてはヘビーすぎず、
リアリティもほどよくあり、
叙情的なムードがとてもよい。

ちょっとの雨ですぐに海と道の境目がなくなる町の映像も
部外者からみるとなんかロマンチックで(すいません。笑)

そんな「沈みゆく」町並みと
異邦人感覚が相まって、哀愁にどっぷり浸れる感じ。

それに現地の
魚が美味しそうでたまらないすよ。

プレス資料の表紙のほうが
ポスターよりも、作品に合ってて好きでした。



★3/16(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「ある海辺の詩人-小さなヴェニスで-」公式サイト
コメント (2)
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