アカデミー賞外国語映画賞受賞、おめでとうございます。
「愛、アムール」74点★★★★
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パリのアパルトマンに暮らす老夫婦
夫ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)と
妻アンヌ(エマニュエル・リヴァ)。
元音楽家の二人は仲むつまじく、
満ち足りた人生を送っている。
だが、ある朝
アンヌに異変が起きる。
突然、人形のように表情をなくし、
返事をしなくなったのだ。
いったい彼女に何が起こったのか――?
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「白いリボン」ミヒャエル・ハネケ監督の新作は
老老介護のシビアな現実を描いたもの。
静かで、不穏で、哀しいけれど
“愛”の灯りがあるのが見事で、
印象の強烈さは
「白いリボン」ほどではないけれど、
惹き付ける作品であることは間違いなしです。
2作品連続、カンヌ国際映画祭<最高賞>受賞でもあるしね。
真っ黒な扉からのファーストシーン。
そして、劇場で舞台を見つめる群衆の長回し。
視覚の法則を熟知しているような、
ある意味トリッキーな絵づくりがすばらしい。
そして
老人特有の緩慢な動作や
病人をベッドに寝かせるまでの一部始終など
長回しを多用して
忍耐強く、観るものを痛め付けるような感じがある。
しかし、そうされることで
主人公の老夫婦が
自分自身か、あるいは身内か、というほど脳裏に焼き付くんですね。
夫ジョルジュが迷い込んできた鳩を捕まえるシーンが
実に切ない。
死に囲まれた家のなかで
「生」の温もりに触れたかったのだろう、と
胸がつぶれそうになりました。
主演女優賞にノミネートされた
エマニュエル・リヴァの演技も、もちろん素晴らしいけれど
ワシはジャン=ルイ・トランティニャンのこの作品での姿を
一生忘れることはないと思います。
★3/9(土)から全国で公開。
「愛、アムール」公式サイト