こんな時代に
こんな贈り物をもらえるなんて
なんて素敵なことだろう。
「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」72点★★★★
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元郵便局員のハーブと
図書館司書のドロシー。
仲良し夫婦がつつましい給料のなか
その審美眼で、世界屈指のアートコレクションを築くまでを紹介した
ドキュメンタリー「ハーブ&ドロシー」(08年)の続編です。
2008年、二人は
全米50州の美術館にコレクションを寄贈するという
素敵なプロジェクトを始めることに。
なぜそんなことをするのか?
作品を送られた地方美術館の人々の言葉などから
二人の思いが明らかになる――。
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前作ほどのインパクトはないけれど、
続編として、これほど適切なものはないと思います。
よき市井の人々の代表のような二人が
なんの迷いもなく
自分たちの集めた価値あるコレクションを社会に還元する。
その姿勢の崇高さ、心の美しさが
今回もバッチリ映っていて
それが一番素晴らしいことだと思う。
夫妻が各地の美術館に出向き、
生き生きとアートに向き合う様子も
とても楽しそうだしね。
なぜアートを地方の美術館に贈るのか?
ひとつには
一ヶ所に保管してなかなか展示されないよりも、
分散させることで多くの人が見ることが叶うから。
それにこんなご時世、美術館の運営は
やっぱり楽じゃない。
そんなとき
「アートをプレゼントします」なんて
サプライズな電話を受けた
各美術館の担当者たちの驚きや悦びを想像するだけで
豊かな気持ちを分けてもらえるんですよね。
さらに
各美術館のアート紹介の様子も興味深い。
とかく「わかりにくい」とされる
コンセプチュアルアートについて
「なるほど」と腑に落ちる解説をしてくれる
ホノルル美術館館長の弁など、見応えがありました。
高齢の夫婦には
悲しい出来事も訪れるけど、
そのへんをしつこく描かないのも監督の敬意の現れだと感じます。
人生の仕舞い仕度の見本としても、
とても参考になりました。
★3/30(土)から新宿ピカデリー、東京写真美術館ほか全国順次公開。
「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」公式サイト